説明

高速型ブレードマシン

【課題】キャリヤのボビンから送り出された線材を芯材の外周に編組するブレードマシンであって、キャリヤの走行を案内する軌道に沿ってキャリヤが円滑に走行することにより走行速度を上げることができ、しかも低騒音である高速型ブレードマシンを提供する。
【解決手段】駆動用ガイド盤5の周部の面上に複数の環状溝31が形成されると共に、隣設する環状溝31、31の交差部32の四方に環状溝31の溝底面31aから上方へ突出したガイド塀Gを設けることによって該交差部に2組のガイド塀Gが設けられ、各一対のガイド塀Gは環状溝31の溝底面31aから上方に突出したガイドビスPに連結され、走行するキャリヤ8の2本のガイドボスGが環状溝31の溝底面31aから上方へ突出したガイドビスPの頭部37に当接して押下げることにより、ガイドビスPに連結された一対のガイド塀Gを下降することによってキャリヤ8を走行可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速走行を可能とした複数のキャリヤのボビンから繰り出される線材が芯材の外周を編み上げる高速型ブレードマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チューブ等の可撓性芯材の外周に鋼製ワイヤ等の線材を編組するブレードマシンは、芯材を通過させる中心穴を備えた面盤を有し、その中心穴を囲繞するように2条の溝が互いに交錯する環状軌道を備え、この環状軌道に沿って一対のキャリヤが回転するホーンギヤによって案内されながら走行すると共に、各キャリヤのボビンから繰り出される線材が面盤の中心穴を通過する芯材の外周を編組するように構成されている。
【0003】
上記のように構成されたブレードマシンの従来例として特許文献1を参照すると、円盤形状のデッキ板(上記の「面盤」に相当する)には、デッキ板の周方向に環状を成す第一軌道溝と第二軌道溝がデッキ板の板厚方向に貫通する状態で形成されている。夫々の軌道溝は波打形状を成し、互いに8の字状に交差しつつデッキ板の周方向に形成され、このような一軌道溝と第二軌道溝の夫々に一対の各キャリヤの下部に設けられた船形状を成す誘導部が挟まれた状態で走行案内するものである。
【0004】
また、各キャリヤにはボビン軸と線材の引出孔とが設けられ、該ボビン軸に回転可能に嵌装されたボビンからの線材を引出孔より引き出しながら、デッキ板の中心穴を挿通して該デッキ板の軸線方向に相対移動する可撓性長尺体の外周面に互いに螺旋状に交差することにより巻付編組する構成とされている。
【特許文献1】特開平11−247057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のようにキャリヤの走行を案内するデッキ板に8の字状に交差された軌道溝が形成された構成においては、キャリヤが走行する際、船形状の誘導部が8字形をなす軌道溝に挟まれた状態で走行する際、軌道溝の両側に接触することによって摩擦抵抗が生じ、特に8字形の交差部においては、その角部に誘導部が当たることによって、キャリヤの走行速度が低下し、キャリヤにガタつきが生じ、また騒音が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような不都合を解消するためになされたもので、キャリヤのボビンから送り出された線材を芯材の外周に編組するブレードマシンであって、キャリヤの走行を案内する軌道に沿ってキャリヤが円滑に走行することにより走行速度を上げることができ、しかも低騒音である高速型ブレードマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1の高速型ブレードマシンは、可撓性芯材を上方に向けて通過させる中心穴が形成された駆動用ガイド盤の周部の面上に2条の溝が連続的に環状を成して交差することによって複数の環状溝が形成されると共に、夫々の環状溝の中央に回転駆動されるホーンギヤの周部に形成された複数の案内爪が駆動用ガイド盤の上側に設けられ、各ホーンギヤごとに一対のキャリヤが対向配置されてなる各キャリヤは、ホーンギヤの案内爪に係合する主軸ボスと、該主軸ボスの上下に設けられたキャリヤ上部ベースとキャリヤ下部ベースと、該キャリヤ下部ベースの下面の離間位置に突出形成された2個のガイドボスとを有し、各キャリヤの主軸ボスが回転するホーンギヤの案内爪に係合されると共に、各キャリヤの2個のガイドボスが駆動用ガイド盤の環状溝に沿って案内されることによって各ホーンギヤごとに一対のキャリヤが互いに逆方向に走行するようにした高速型ブレードマシンにおいて、隣設する環状溝の交差部の四方に環状溝の溝底面から上方へ突出したガイド塀を設けることによって該交差部に2組のガイド塀が設けられ、各一対のガイド塀は環状溝の溝底面から上方に突出したガイドビスに連結され、走行するキャリヤの2本のガイドボスが環状溝の溝底面から上方へ突出したガイドビスの頭部に当接して押下げることにより、ガイドビスに連結された一対のガイド塀を下降することによってキャリヤを走行可能とする一方、キャリヤが走行可能とされた環状溝に交差した他の環状溝を上昇状態のガイド塀で閉鎖することによってキャリヤの2本のガイドボスの走行案内を行なうようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2の高速型ブレードマシンは、請求項1において、キャリヤの下部に設けられた2個のガイドボスは夫々断面形状が円径を成すと共にキャリヤのキャリヤ下部ベースに対して回転自在に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高速型ブレードマシンは、上記のように構成されているため、駆動用ガイド盤の上側に設けられた各ホーンギヤが回転するに従って、各キャリヤの主軸ボスがホーンギヤの案内爪に係合された状態で回転されると共に、キャリヤの下部の2個のガイドボスが駆動用ガイド盤の周部の上面に形成された環状溝に沿って案内されながら走行することにより、各ホーンギヤごとに一対のキャリヤが互いに逆方向に走行し、各キャリヤに設けられたボビンから線材を送り出すことによって可撓性芯材の外周を編組することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、隣設する環状溝の交差部の左右に環状溝の溝底面から上方へ突出したガイド塀を設けることによって該交差部に2組のガイド塀が設けられ、各一対のガイド塀は環状溝の溝底面から上方に突出したガイドビスに連結された構成とすることにより、走行するキャリヤのガイドボスが環状溝の溝底面から上方へ突出したガイドビスの頭部に当接して押下げられ、ガイドビスに連結された一対のガイド塀を下降することによってキャリヤの2個のガイドボスが通過可能とされる。
【0011】
このとき、環状溝の交差部において、キャリヤが走行可能とされた環状溝に交差した他の環状溝を上昇状態のガイド塀で閉鎖することによってキャリヤの2本のガイドボスの走行案内を行なうようにしてあるため、環状溝の交差部において、溝形状の両側を左右のガイド塀で閉塞して、あたかも一本の曲線状の溝軌道を形成しているかのようにすることができ、従来のように8字形を成す軌道溝の交差部に角部が生じることがなく、キャリヤの2個のガイドボスを円滑に走行案内することができ、キャリヤの走行速度の向上と騒音の低下に有益となる。
【0012】
また、本発明において、キャリヤの下部に設けられた2個のガイドボスは断面形状が円径であって回転自在に構成されているため、各ガイドボスが駆動用ガイド盤の環状溝の軌道に従って案内されながら走行する際、各ガイドボスの外周が環状溝の側部に当った際も回転しながら環状溝の溝内を走行するため、各ガイドボスと環状溝の側部との間に生じる摩擦抵抗が微小であり、キャリヤの円滑な走行が実現され、キャリヤの走行速度を上げることが可能となる。しかも、キャリヤのガイドボスが環状溝の溝内の側部に接触した際にも衝撃音や摩擦音が発生し難く、低騒音で稼動することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に示すように、本発明のブレードマシン1の架台2は鉄骨を組み合わせた矩形箱体から構成されている。この架台2の上部には台板3が固定され、台板3の上側には該台板3に隙間4をあけて駆動用ガイド盤5が設置され、互いに平行な台板3と駆動用ガイド盤5との隙間4には後述する複数の駆動ギヤ6、6…が回転自在に設けられている。
【0015】
図2は図1の駆動用ガイド盤5を上側から見た平面図であり、中央に描いた一点鎖線CLの左側に複数の駆動ギヤ6、6…が連結された状態を示し、一点鎖線CLの右側に後述するホーンギヤ7の配置状態を示している。台板3には中心穴3aが形成され、また駆動用ガイド盤5には中心穴5aが形成され、これらの中心穴3a、5aを通過して不図示のドラムから供給されるホース等の可撓性芯材C(図1参照)の外周に複数のキャリヤ8、8…の各ボビン9から送り出される線材Wを編組し、架台2に設けられた支柱2aで回動自在に支持されたキャプスタン13の外周に架けて不図示のドラムで巻き取るようにしている。
【0016】
また、図1に示すように、架台2の内部にはモータMが設置され、モータMの駆動力はベルトB、駆動用メインプーリ12、ギヤ類を介してピニオン10aに伝達される。また、ピニオン10aに歯合されたベベルギヤ10bは、台板3と駆動用ガイド盤5との間に設けられた連結ギヤ11に同軸に結合されている。この連結ギヤ11は、図2に示すように、駆動用ガイド盤5の中心穴5aの左右位置に設けられ、各連結ギヤ11、11に歯合された複数の駆動ギヤ6、6…が駆動用ガイド盤5の周部にて回転可能に順次結合されている。
【0017】
さらに、図2に示すように、駆動用ガイド盤5の上側には、上記の各駆動ギヤ6に同軸に結合されたホーンギヤ7が回転可能に設けられ、左右の連結ギヤ11、11の駆動によって回転する夫々の駆動ギヤ6は隣設するもの同士が互いに逆方向に回転され、各駆動ギヤ6の回転に伴って各ホーンギヤ7もまた隣設するもの同士が互いに逆方向に回転する。
【0018】
また、図3(a)(b)に示すように、各ホーンギヤ7の外周には等間隔で4箇所にU字溝形状の案内爪19、19…が形成され、夫々のホーンギヤ7の各案内爪19、19…が隣接するホーンギヤ7ごとに互いに連接状態で回転駆動される構造とされている。そして、いずれかの案内爪19に後述するキャリヤ8の主軸ボス18が係合されてなるキャリヤ8の2個のガイドボス28が駆動用ガイド盤5の周部の上面に形成された環状溝31に沿って案内されながら、その軌道に従って走行する。
【0019】
ここで、上記のキャリヤ8について説明すると、図4(a)、(b)に示すように、キャリヤ8は、キャリヤ上部ベース16とキャリヤ下部ベース17との間に上記の各ホーンギヤ7の案内爪19に係合する主軸ボス18が縦方向に結合された構成とされている。従って、キャリヤ上部ベース16とキャリヤ下部ベース17との隙間は各ホーンギヤ7を収納し得る幅とされている。また、キャリヤ下部ベース17は、厚手のプレートからなる上部ハカマ17aと下部ハカマ17bとを積層してその外側に当てた止め板17c、17cをネジ17dで固定してなる構成とされ、キャリヤ下部ベース17の下面の離間位置には2個のガイドボス28、28が突出した構成とされている。
【0020】
夫々のガイドボス28は下部ハカマ17bから上部ハカマ17aの途中まで貫いて形成された軸穴30に挿着され、各ガイドボス28の外周に設けられたベアリング29の内周が各ガイドボス28の途中に形成された外周凹溝28aに嵌合されることによって、各ガイドボス28はキャリヤ下部ベース17の下面から所定の突出長さを保った突出状態で回転自在とされている。なお、この各ガイドボス28は、後述するように駆動用ガイド盤5の上面の周部に形成された環状溝31に挿着されるものであるが、各ガイドボス28の下面は溝底面31aには接触しないように溝底面31aからやや離間した長さとされ、キャリヤ8の走行時に溝底面31aから抵抗を受けないようにしている。
【0021】
このようなキャリヤ8の走行において、各ガイドボス28は夫々のベアリング29、29で円滑に回転するように構成されているため、各ガイドボス28の外周が環状溝31の溝内の側部に当接すると、各ガイドボス28は回転しながら走行し、キャリヤ8の円滑な走行が実現され、キャリヤ8の走行速度を従来機に比べて約60〜70%アップすることが可能となる。しかも、キャリヤ8のガイドボス28が環状溝31の溝内の側部に接触した際に衝撃音や摩擦音が発生し難く、従来比約30〜40%の低騒音で高速走行することが可能となる。
【0022】
上記のように構成されたキャリヤ8は、図5に示すように、夫々のキャリヤ8の主軸ボス18がホーンギヤ7の案内爪19に係合されると共に、各キャリヤ8の2個のガイドボス28が駆動用ガイド盤5に形成された環状溝31に沿って摺動自在に嵌合し、各キャリヤ8を互いに逆方法の矢印方向に交錯走行する。
【0023】
図4(a)(b)に示すように、キャリヤ8のキャリヤ上部ベース16の上面には支持部材20が固設され、支持部材20と上記のブラケット15との間には、ボビン9を保持するボビン軸21が設けられている。さらに、ボビン9の下部フランジ9aの下側には所定方向に傾斜した複数の係合歯22aを有する回転板22が設けられ、支持部材20の側部に回動自在に軸支されると共に不図示の弾性部材によって弾性付勢されたラチェット23のツメ部材23aが回転板22の係合歯22aに係止されることにより、ボビン9の逆回転を防止し、ボビン9に巻回された線材Wを一方向に引き出すことが可能とされている。
【0024】
また、図4(a)に示すように、テンションロッド14に沿って摺動するオモリ部材24の側部には可動プーリ25が設けられ、オモリ部材24の上方にはテンションロッド14に外装された上下方向に弾発力を有するコイルバネ26が設けられ、このコイルバネ26によってオモリ部材24は下方へ付勢されている。なお、テンションロッド14の他にもう1本のテンションロッド14(不図示)が並設され、これら2本のテンションロッド14の間には傾斜状に軸支された固定プーリ27が設けられ、さらにテンションロッド14の上部にはワイヤ案内係口金33が設けられている。
【0025】
このような構成により、ボビン9から送り出された線材Wは固定プーリ27を介して可動プーリ25に掛けられた状態で上方へ導かれ、キャリヤ8の移動位置に従って変化する線材Wの張力に応じてテンションロッド14のコイルバネ26の弾性力が変動することにより、線材Wの張力を均等に調整することが可能とされ、図1に示す芯材Cの外周に複数のキャリヤ8、8…の各ボビン9から送り出される線材Wを編組することとなる。
【0026】
さらに、本実施例において、駆動用ガイド盤5の周部の面上に形成された環状溝31は、図5に示すように、2条の溝が連続的に環状を成して交差することによって複数の環状溝31、31…が駆動用ガイド盤5の周部に連続的に形成されてなり、夫々の環状溝31の中央にホーンギヤ7が上記のように回転駆動される構成とされている。
【0027】
このような構成において、隣設する環状溝31、31の交差部32の四方に環状溝31の溝底面31aから上方へ突出したガイド塀G(G1、G2、G3、G4)が設けられ、各一対のガイド塀G1、G2又はG3、G4は夫々の環状溝31の溝底面31aから上方に突出したガイドビスP(P1、P2、P3又はP4、P5、P6)に連結され、走行するキャリヤ8の2本のガイドボス28、28が環状溝31の溝底面31aから上方へ突出したガイドビスPの頭部37に当接して押下げることにより、該ガイドビスP(P1、P2、P3又はP4、P5、P6)に連結された一対のガイド塀G1、G2又はG3、G4を下降することによってキャリヤ8を走行可能とし、キャリヤ8が走行可能とされた環状溝31に交差した他の環状溝31を上昇状態のガイド塀Gで閉鎖することによってキャリヤ8の2本のガイドボス28、28の走行案内を行なうことが可能となる。
【0028】
このような構成について詳細に述べると、図6(a)に示すように、隣設する環状溝31、31の交差部32においては、キャリヤ8(図5参照)の走行方向である図示のAからBへ通過する環状溝31ABとCからDへ通過する環状溝31CDが夫々の軌道幅を広げるように互いにずらした状態で交差している。このような隣設する環状溝31、31の交差部32において、例えば、図6(a)の環状溝31ABにおいては交差部32への入口部位と出口部位に環状溝31の溝幅を有する切開穴C1とC2とが成形され、夫々の切開穴C1、C2にガイド塀G1、G2が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入されている。
【0029】
また、図6(a)の軌道溝31ABの溝底面31aには、キャリヤ8(図5参照)が交差部32へ進入する入口部位のガイド塀G1の手前側に形成されたビス穴H1にガイドビスP1が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入され、またキャリヤ8(図5参照)が交差部32から出る出口部位のガイド塀G2の先側に形成されたビス穴H3にガイドビスP3が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入され、さらにこれらの入口部位のガイド塀G1と出口部位のガイド塀G2との略中間位置に形成されたビス穴H2にガイドビスP2が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入されている。
【0030】
なお、これらのガイドビスP1、P3、及びガイドビスP4、P6は、各軌道溝31の溝底面31aの幅方向における略中心位置に設けられているが、ガイドビスP1、P3の中間に設けられたガイドビスP2、及びガイドビスP4、P6の中間に設けられたガイドビスP5は、各軌道溝31の溝底面31aの幅方向において外側に偏心した位置に設けられている。
【0031】
図6(b)は図6(a)を左側から右方向に見た図であり、環状溝31CDに設けられたガイドビスP6、P4は、図示のように位置を多少ずらして描いている。この図6(b)に示すように、ガイド塀G1、G2と、ガイドビスP1、P2、P3は、図6(a)に示すような相対位置関係で上部連結板34に結合されている。即ち、ガイド塀G1、G2は、その下端部を上部連結板34に対して溶接固定し、上記のように環状溝31の溝底面31aの所定位置に形成された切開穴C1、C2に下方から上方へ向けて突出するように挿入され、溝底面31aから例えば環状溝31の溝深さの略半分の高さだけ突出している。
【0032】
なお、上部連結板34は、両端部に設けられたガイド部34aを駆動用ガイド盤5の下部にネジ35bで固定された吊下板35の案内溝35aに挿通することによって、案内溝35aの範囲内で左右にぶれないように上下動することが可能とされている。
【0033】
また、ガイドビスP1、P2、P3は、上部連結板34の所定位置に対してネジ部36aを螺入すると共にナット36bで締結し、各ガイドビスP1、P2、P3のビス頭部37をビス穴H1、H2、H3に下方から上方へ突出するように挿入して上下動自在にすると共に、各ビス穴H1、H2、H3の内部にコイルバネ38の上部を固定して、各コイルバネ38の張引力で上部連結板34及びこれに固定されたガイド塀G1、G2を定位置に吊り下げた状態に保持するようにしてあり、自然状態において各ガイドビスP1、P2、P3のビス頭部37が溝底面31aから突出する高さはガイド塀G1、G2の高さと略同様に調整されている。
【0034】
一方、図6(a)においてCからDへ通過する環状溝31CDにおいても、上記の環状溝31ABの場合と同様に、交差部32への入口部位と出口部位に環状溝31の溝幅を有する切開穴C3とC4とが成形され、夫々の切開穴C3、C4にガイド塀G3、G4が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入されている。
【0035】
また、入口部位のガイド塀G3の手前側に形成されたビス穴H4にガイドビスP4が下方から上方へ上下動自在に挿入され、また出口部位のガイド塀G4の先側に形成されたビス穴H6にガイドビスP6が下方から上方へ上下動自在に挿入され、さらに入口部位のガイド塀G3と出口部位のガイド塀G4との略中間位置に形成されたビス穴H5にガイドビスP5が下方から上方へ上下動自在に挿入されている。
【0036】
これらのガイド塀G3、G4と、ガイドビスP4、P5、P6は、図6(b)に示すように、下部連結板39に対して上記のガイド塀G1、G2と、ガイドビスP1、P2、P3と同様に取り付けられているが、この下部連結板39は上部連結板34とは離間した下方に設けられたことによって、上部連結板34と下部連結板39とが互いの動作に干渉しないようにしている。
【0037】
上記の構成による動作を、図6(a)の隣設する環状溝31、31の交差部32において環状溝31ABに特定して述べると、図7(a)に示すように、キャリヤ8の下部に設けられた2個のガイドボス28、28の先頭が環状溝31の交差部32の入り口側のガイドビスP1のビス頭部37に当たってガイドビスP1を押し下げると、これに従動して上部連結板34が下降するのに従い、他のガイドビスP2、P3及びガイド塀G1、G2が下降し、これによってキャリヤ8の2個のガイドボス28、28が進行する環状溝31の軌道を開き、キャリヤ8はその軌道に従って走行することが可能となる。
【0038】
このとき、他の環状溝31CDのガイド塀G3、G4は溝底面31aから上方へ突出した状態を保つため、環状溝31ABの溝形状の両側を左右のガイド塀G3、G4で閉塞して、あたかも一本の曲線状の溝軌道を形成しているかのように形成することができるため、従来のように8字形を成す軌道溝の交差部に角部が生じることがなく、キャリヤ8の2個のガイドボス28を円滑に走行案内することができ、上記の効果と相俟って、キャリヤ8の走行速度の向上と騒音の低下に有益となる。
【0039】
なお、図7(a)〜(c)に示すように、キャリヤ8の下部に設けられたガイドボス28、28は進行方向に2本設けられ、キャリヤ8が反対方向に後退する場合にも、ガイドボス28、28は同様に作用して、上記のように環状溝31の溝底面31aから突出したガイドビスPの頭部37に接触して押下げることができる。
【0040】
また、各ガイドビスPは、コイルバネ38で元の高さに復帰可能であるため、キャリヤ8の前後のガイドボス28、28のいずれかの押圧が解除された場合、ガイド塀G(G1、G2)が元の高さに復帰してキャリヤ8のガイドボス28、28の進行を妨げることとなるが、図7(a)〜(c)に示すように、キャリヤ8の進行に伴って何れかのガイドボス28、28が何れかのガイドビスP(P1、P2、P3)又はガイド塀G(G1、G2)を押圧して下降状態を保つことができる離間幅を有するため、キャリヤ8のガイドボス28、28は進行を妨げられることなく、円滑に前進又は後退することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の高速型ブレードマシンは、キャリヤのボビンから送り出された線材を芯材の外周に編組するブレードマシンであって、キャリヤの走行を案内する軌道に沿ってキャリヤが円滑に走行することにより走行速度を上げることができ、しかも低騒音である高速型ブレードマシンとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のブレードマシンの全体側面図である。
【図2】本発明のブレードマシンの駆動用ガイド盤を示す平面図である。
【図3】(a)は本発明のブレードマシンに使用するホーンギヤの平面図であり、(b)は本発明のブレードマシンにおける隣設されたホーンギヤの案内爪にキャリヤの主軸ボスが係合された状況を示す要部拡大側面図である。
【図4】(a)は本発明のブレードマシンに使用するキャリヤの側面図(下部を断面で示す)であり、(b)はキャリヤのキャリヤ下部ベースの下面図である。
【図5】本発明のブレードマシンにおける隣設された環状溝と隣設されたホーンギヤと各ホーンギヤの案内爪に係合されながら走行するキャリヤの走行状況を説明するための要部拡大平面図である。
【図6】(a)は本発明のブレードマシンにおける隣設された環状溝の交差部を示す部分図であり、(b)は(a)の交差部及びその近傍に設けられたガイド塀とガイドビス等の連結構成を示す要部側面図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明のブレードマシンにおける隣設された環状溝の交差部のガイド塀とガイドビス等の連結構成と、環状溝を走行するキャリヤのガイドボスとの関係を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ブレードマシン
2 架台
2a 支柱
3 台板
3a 中心穴
4 隙間
5 駆動用ガイド盤
5a 中心穴
6 駆動ギヤ
7 ホーンギヤ
8 キャリヤ
9 ボビン
9a フランジ
10a ピニオン
10b ベベルギヤ
11 連結ギヤ
12 駆動用メインプーリ
13 キャプスタン
14 テンションロッド
15 ブラケット
16 キャリヤ上部ベース
17 キャリヤ下部ベース
17a 上部ハカマ
17b 下部ハカマ
17c 止め板
17d ネジ
18 主軸ボス
19 案内爪
20 支持部材
21 ボビン軸
22 回転板
22a 係合歯
23 ラチェット
23a ツメ部材
24 オモリ部材
25 可動プーリ
26 コイルバネ
27 固定プーリ
28 ガイドボス
28a 外周凹溝
29 ベアリング
30 軸穴
31 環状溝
31AB 環状溝
31CD 軌道溝
31a 溝底面
32 交差部
33 ワイヤ案内係口金
34 上部連結板
34a ガイド部
35 吊下板
35a 案内溝
36a ネジ部
36b ナット
37 ビス頭部
38 コイルバネ
39 下部連結板
B ベルト
C1、C2 切開穴
CL 一点鎖線
G、G1、G2、G3、G4 ガイド塀
H1、H2、H3、H4、H5、H6 ビス穴
M モータ
P、P1、P2、P3、P4、P5、P6 ガイドビス
W 線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性芯材を上方に向けて通過させる中心穴が形成された駆動用ガイド盤の周部の面上に2条の溝が連続的に環状を成して交差することによって複数の環状溝が形成されると共に、夫々の環状溝の中央に回転駆動されるホーンギヤの周部に形成された複数の案内爪が駆動用ガイド盤の上側に設けられ、各ホーンギヤごとに一対のキャリヤが対向配置されてなる各キャリヤは、ホーンギヤの案内爪に係合する主軸ボスと、該主軸ボスの上下に設けられたキャリヤ上部ベースとキャリヤ下部ベースと、該キャリヤ下部ベースの下面の離間位置に突出形成された2個のガイドボスとを有し、各キャリヤの主軸ボスが回転するホーンギヤの案内爪に係合されると共に、各キャリヤの2個のガイドボスが駆動用ガイド盤の環状溝に沿って案内されることによって各ホーンギヤごとに一対のキャリヤが互いに逆方向に走行するようにした高速型ブレードマシンにおいて、
隣設する環状溝の交差部の四方に環状溝の溝底面から上方へ突出したガイド塀を設けることによって該交差部に2組のガイド塀が設けられ、各一対のガイド塀は環状溝の溝底面から上方に突出したガイドビスに連結され、走行するキャリヤの2本のガイドボスが環状溝の溝底面から上方へ突出したガイドビスの頭部に当接して押下げることにより、ガイドビスに連結された一対のガイド塀を下降することによってキャリヤを走行可能とする一方、
キャリヤが走行可能とされた環状溝に交差した他の環状溝を上昇状態のガイド塀で閉鎖することによってキャリヤの2本のガイドボスの走行案内を行なうようにしたことを特徴とする高速型ブレードマシン。
【請求項2】
キャリヤの下部に設けられた2個のガイドボスは夫々断面形状が円径を成すと共にキャリヤのキャリヤ下部ベースに対して回転自在に設けられたことを特徴とする請求項1記載の高速型ブレードマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−90485(P2010−90485A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258416(P2008−258416)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【特許番号】特許第4325735号(P4325735)
【特許公報発行日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(504289495)株式会社葛生鉄工所 (9)
【Fターム(参考)】