説明

高速炉の炉心

【目的】 本発明の目的は、冷却材による炉心のボイド反応度を小さく抑えることにより、冷却材の流量低下時等の異常時に、炉心の正反応度増加の要因を低減することにより、安全性を向上しつつ、より大きな出力の炉心を得ることができる高速炉の炉心を提供することにある。
【構成】 本発明に係る高速炉の炉心は、核燃料物質を収容する炉心領域22と、この炉心領域に炉心領域の軸方向中心と平行に貫通して設けられたボイド化集合体33とから成り、このボイド化集合体は、内部上方にガスキャビティ41が形成され、軸方向下方に発熱物質47が設けられかつ下部および軸方向中間部に冷却材流入孔44および冷却材流出孔48が穿設されてなる被覆管53によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液体金属を冷却材とする高速炉の炉心に関する。
【0002】
【従来の技術】液体金属を冷却材とする高速炉は、核分裂性物質を充填した多数の燃料集合体を装荷して炉心を構成しており、主に液体ナトリウムが燃料からの熱除去を行う冷却材として使用されている。この液体金属冷却型高速炉においては、何等かの原因により冷却材流量が減少すると、冷却材温度が上昇して冷却材密度が減少し、反応度が投入される。高速炉の反応度は原子炉の出力規模に依存し、小型炉では負であるが、中型炉及び大型炉では正の反応度となり冷却材密度の減少により炉出力を上昇させるおそれがある。
【0003】高速炉は通常冷却材である液体ナトリウムが蒸発してボイド化することはないが、万一の事故を想定し、ナトリウムがボイド化した場合でも原子炉が安全に停止し炉心の安全性が保たれる設計となっている。冷却材であるナトリウムがボイド化したときの原子炉の応答としては、炉心が小型の場合は、中性子の炉心からの洩れが大きいため、上述したように、負の反応度となって炉心を安全に停止させることができる。これに対して高速炉の炉心が大型になると、炉心からの中性子の洩れが少なくなり冷却材であるナトリウムがボイド化したときの反応度が正となる。この正の反応度状態のときに、炉心が安全に停止するか否かは他の反応度要因を含めて詳細に解析を行って炉心の安全性を確認する必要がある。
【0004】冷却材であるナトリウムによる正の反応度は、炉心からの中性子洩れの増大又は中性子スペクトルの軟化により低減できる。このため従来から反応度を抑制して小さくするために、炉心内に中性子吸収物質を装荷したり、炉心高さを低くして偏平化を図って中性子洩れを増大させたり、あるいはベリリウム又は水素化ジルコニウム等の中性子減速材を装荷して中性子スペクトルを軟化させる手段が採られてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】冷却材であるナトリウムのボイド反応度を小さくできれば、炉心の安全性、信頼性がより一層向上させ、原子炉の安全設計上非常に価値がある。
【0006】ところが高速炉のような原子力プラントにおいては、プラントの設計上、炉心安全性の見地から炉心出力を極度に小さく設計することは、発電コストの点で好しくない。また冷却材であるナトリウムが万一ボイド化した場合でも、炉心の反応度を負にするには、炉心出力を例えば、100 MWe程度の小型炉にしなければならず、この炉心出力を上廻るとナトリウムのボイド化反応度が正になるという課題が生じることになる。
【0007】本発明は上記の点を考慮してなされたもので、冷却材による炉心のボイド反応度を小さく抑えることにより、冷却材の流量低下のとき、炉心の過出力のとき、炉心への気泡流入のとき等の異常の場合に炉心の正の反応度投入要因を低減することにより、安全性を向上しつつ、より大きな出力の炉心を得ることができる高速炉の炉心を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明においては、核分裂性物質を収容し液体金属から成る冷却材が内部を下方から上方に流通する炉心領域と、この炉心領域に炉心領域の軸方向中心と平行に貫通して設けられたボイド化領域とから成り、このボイド化領域は、内部上方にガス領域が形成されかつ下部および軸方向中間部に冷却材流入孔および冷却材流出孔が穿設されて成る被覆管によって形成されることを特徴とする高速炉の炉心を提供し、さらには、高速炉の炉心において、前記ボイド化領域を構成する被覆管内の軸方向下方に発熱体を設けることを特徴とする高速炉の炉心を提供する。
【0009】
【作用】このように構成された高速炉の炉心においては、ボイド化領域を構成する被覆管内の冷却材の液面は、被覆管内に流入する冷却材の圧力変化により変動する。また下部に発熱物質を配置することによって、過出力のときにボイド化領域を構成する被覆管内の冷却材がボイド化する。
【0010】冷却材であるナトリウムが被覆管内でボイド化する原因として、冷却材流量が減少しナトリウム温度が上昇して沸騰する場合、炉心出力が異常に上昇即ち過出力が生じナトリウム温度が上昇する場合及び炉心外で大量の気体が冷却材に混入し炉心に流込む場合が考えられる。
【0011】冷却材流量減少の場合、ボイド化集合体の冷却材圧力の減少により封入気体が膨脹し、拡大された空洞が形成される。燃料集合体で発生した中性子は、この拡大された空洞を介してボイド化集合体から主に炉心上方向に漏洩し反応度が負となる。
【0012】過出力の場合、ボイド化領域を構成する被覆管内の発熱物質に到達する中性子及びガンマ線の量が増加し、この中性子吸収及びガンマ線吸収に伴う発熱物質の発熱量が増加し、ボイド化領域を構成する被覆管内の冷却材が沸騰する。このことにより、燃料集合体で発生した中性子は、この沸騰した冷却材を介してボイド化領域を構成する被覆管から主に炉心上方向に漏洩し、反応度は負となる。
【0013】炉心外から気体が流入する場合は、この気体がボイド化領域を構成する被覆管内の冷却材流路により多く流入する。この結果、冷却材流量減少の場合と同様に、燃料集合体で発生した中性子はボイド化領域を構成する被覆管内から主に炉心上方向に漏洩し反応度が負となる。
【0014】このように冷却材であるナトリウムのボイド反応度を、ボイド化領域を構成する被覆管を装荷しない炉心に比べ低減でき、安全性を向上しつつ、より大きな出力の炉心を得ることができる高速炉の炉心を提供することができる。
【0015】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
【0016】図1は、本発明に係る炉心を備えた高速炉の一実施例を示す縦断面図である。高速炉は、原子炉建屋1のキャビティウォール1aに設けられた原子炉安全容器2を有し、この安全容器2内に原子炉容器3が収容され、二重の容器構造に構成される。原子炉容器3内には核燃料を装荷した炉心部4が収容される。炉心部4は原子炉容器3内に満たされた液体金属冷却材であるナトリウム5中に浸漬状態で設置され、支持構造物6により支持される。原子炉容器3内はこの支持構造物6を境にして上部プレナム7と下部プレナム8とに区画される。炉心部4の上方には、制御棒駆動機構(図示せず)等を収容した炉心上部機構10が設置される。炉心部4の周りには一次冷却材と二次冷却材とを熱交換させる中間熱交換器11及び一次冷却材を原子炉容器3内で強制循環させる循環ポンプ12が設置される。前記中間熱交換器11及び循環ポンプ12は原子炉容器3の上部を覆う上部蓋13及びルーフスラブ14に吊設状態で支持される。ルーフスラブ14の中央部には回転プラグ15が回転自在に設けられ、この回転プラグ15の偏心位置に小回転プラグ16が回転自在に支持される。前記原子炉容器3のナトリウム5面の上方にはカバーガス空間17が形成されており、このカバーガス空間17内には不活性ガスであるカバーガスが充填される。
【0017】図2は、本発明に係る高速炉炉心の第1実施例を示す炉心構成図である。図3は、図2に示す高速炉の炉心を示す横断面図である。高速炉の炉心部4は、図2に示す炉心20の様に構成されている。この炉心20は核分裂性物質を充填した多数の燃料集合体21を多数装荷した炉心領域22を中央に形成しており、この炉心領域22の外周側には径方向ブランケット集合体23を環状に装荷した径ブランケット領域24が形成される。この径ブランケット領域24の外周側には中性子遮蔽体25を装荷した中性子遮蔽領域26が形成される。炉心領域22に装荷された燃料集合体21は上部に親物質が装荷された上部軸ブランケット領域28が、その下部には下部軸ブランケット領域29がそれぞれ形成され、上部軸ブラケット領域28の上方にガスプレナム領域30が設けられる。下部軸ブランケット領域29の下方はガスプレナム領域あるいは中性子遮蔽領域31として構成される。また炉心領域22には、燃料集合体21の他、ボイド化集合体33が複数本装荷されている。さらに炉心領域22には制御棒52が水平方向に分散して配置されている。
【0018】図4は、図2に示す炉心の燃料集合体とボイド化集合体の関係を示す斜視図である。なお、UPは炉心上端位置(炉心領域の上面位置)、CPは炉心中心位置、LPは炉心下端位置をそれぞれ示す。燃料集合体21およびボイド化集合体33は炉心支持板34の上部支持板35上に支持され、この上部支持板35と下部支持板36との間に高圧プレナム37が形成される。高圧プレナム37には循環ポンプから吐出される一次冷却材であるナトリウム5が供給されるようになっている。前記ボイド化集合体33には、被覆管53の内部に筒状の冷却材流路40が形成されるとともに、この冷却材流路40の上方には封入気体が封入されたガスキャビティ41が形成される。封入気体はアルゴン等の不活性ガスが適当であるが特に制限はない。ボイド化集合体33の冷却材流路40はその脚部であるエントランスノズル部43に形成された冷却材流入孔44を介して高圧プレナム37に連通している。この冷却材流入孔44は燃料集合体21のエントランスノズル部45に形成された冷却材流入孔46より上方に形成される。また冷却材流出孔48は炉心20の軸方向中心付近より下方に形成される。ボイド化集合体33の冷却材流路40に流入した冷却材の液面(自由液面)は、高圧プレナム37内の冷却材の圧力により炉心軸方向に移動する。冷却材液面の高さは、高速炉の通常運転時に、炉心の頂部レベル(炉心領域22の上端)UPより高く設定する。そして冷却材の流量低下事故時には、前記冷却材液面が前記炉心頂部レベルUPより低くなるように冷却材流路40の内部形状や封入気体の量を設定する。具体的な冷却材流路40の冷却材液面は、定常運転時には上部軸ブランケット領域28より上部とし、冷却材流量低下時には、炉心20の軸方向中心部付近に位置するように設定する。このようにして燃料集合体21からボイド化集合体33への中性子洩れを増大させ、負の反応度効果を大きくすることができる。
【0019】次にこのような構成からなる第1の実施例の作用について説明する。高速炉においては、冷却材である液体ナトリウムがボイド化する要因として、冷却材流量の減少によりナトリウム温度が上昇して沸騰する場合及び炉心外で大量のカバーガス等の気体が冷却材に流入して炉心20に流れ込む場合が考えられる。
【0020】冷却材流量が減少した場合、高圧プレナム37内の冷却材圧力が減少し、この圧力減少に伴ってボイド化集合体33内の冷却材圧力も減少し、封入気体が膨脹する。この封入気体の膨脹により冷却材流路40の液面が炉心頂部レベルUPより下方に移動しガスキャビティ41が増大する。この場合、ボイド化集合体33内部の冷却材圧力の減少に伴ってボイド化集合体33内部の冷却材が最初にボイド化する。このボイド化と同時あるいは続いて燃料集合体21内の冷却材も冷却材温度の上昇によりボイド化する。しかしながらボイド化集合体33内の冷却材流路40の冷却材がボイド化しているため、燃料集合体21で発生した中性子は、ボイド化集合体33からガスキャビティ41を介して炉心上部方向に漏洩し、負の反応度が得られる。
【0021】次に炉心外から流入した気体が冷却材に混入して炉心に流れ込む場合を考える。この場合図4に示すように、ボイド化集合体33の冷却材流入孔44が燃料集合体21の冷却材流入孔46よりも鉛直方向上方に設けられている。一方循環ポンプ12から高圧プレナム37に吐出された冷却材に混入する気体は、冷却材より軽いため、上部支持板35付近の下部に蓄積される。このため上部支持板35の下部に蓄積された気体は燃料集合体21に流入する前にボイド化集合体33内に流入し、内部の冷却材流路40をボイド化させる。続いて燃料集合体21にも冷却材に混入して気体が流入するが、冷却材流量減少の場合と同様の作用効果を奏する。炉心外で冷却材への気体混入を考慮しない場合には、ボイド化集合体33の冷却材流入孔44と燃料集合体21の冷却材流入孔46は位置関係は問わない。
【0022】また炉心領域22の各燃料集合体21の間にボイド化集合体33を装荷することにより、燃料集合体21で生じた中性子がボイド化集合体33の軸方向上部のキャビティチャンネル41への漏洩を促進するためガスキャビティ41の上部に中性子吸収体49を図4のように配置するようにしてもよい。
【0023】この結果、本実施例の炉心のナトリウムボイド反応度はボイド化集合体の無い炉心に比べ低減でき零又は負にすることができる。例えば炉心高さ60cm、炉心直径約300cm の偏平炉心の場合、キャビティ集合体が無い場合の365 日燃焼後の炉心高さ部におけるナトリウムボイド反応度は約3$である。ボイド化集合体33を図3R>3に示すように配置した場合の同一サイズの炉心でのナトリウムボイド反応度は、ボイド化集合体33が上部軸ブランケット領域(厚さ35cm)28の上端高さから炉心中心高さまでボイド化し、燃料集合体21の炉心領域22がボイド化した場合には約−0.5 $となる。キャビティ集合体33が上部軸ブランケット領域28の高さよりさらに30cm上部までボイド化し、燃料集合体21の炉心領域22がボイド化した場合には約−2$となる。
【0024】このように本実施例によれば、高速炉の炉心において、多数の燃料集合体を装荷して炉心領域を形成し、この炉心領域の燃料集合体間に、内部に筒状の冷却材流路を形成し、不活性ガス等の封入気体が封入されたボイド化集合体が装荷される。このボイド化集合体の冷却材流路に冷却材を出し入れ可能な冷却材流入孔を設け、前記冷却材の圧力変化により冷却材流路の冷却材液面が炉心軸方向に変更するように設定する。原子炉容器内を循環する冷却材流量が低下すると、冷却材圧力が減少する。そして、この冷却材圧力の減少によってボイド化集合体内の冷却材圧力が低下して封入気体が膨脹し、ボイド化集合体内が初めにボイド化して冷却材流路の液面が低下する。この液面低下により、燃料集合体で発生した中性子はボイド化集合体から炉心上方向に主に漏洩し、ナトリウムボイド反応度を小さく保つことができる。また、ボイド化集合体の冷却材流路への冷却材流入孔を燃料集合体への冷却材流入孔より上方位置に設けている。このため炉心外のカバーガス等の気体が冷却材に混入する場合でも、混入された気体は冷却材との密度差により上方に蓄積され、ボイド化集合体の冷却材流入口から燃料集合体よりも前に流入する。このため冷却材流量減少の場合と同様な作用効果を奏する。このように、ナトリウムボイド反応度を小さく保つことができ、より大きな出力の炉心を得ることができると共に、大型炉心であっても炉の安全性又は健全性を充分に保つことができる。次に本発明の第2の実施例を図5を参照して説明する。
【0025】なお図5において、図4と同一部分には同一符号を付し、その部分の構成の説明は省略する。キャビティ集合体33には、隣接する燃料集合体21の炉心下端位置LPよりも下方に相当する位置に、発熱物質47が配置される。この発熱物質47は、中性子吸収あるいはガンマ線吸収による発熱量が大きい物質が望ましい。例えば、炭化ホウ素B4 C、タングステンが適当である。また発熱物質47は、冷却材と化学反応を起こさないように、ステンレスで構成された被覆管によって被覆されている。ボイド化集合体33内の通常運転時の冷却流量は、発熱物質47が適切に冷却され、かつボイド化集合体33内では沸騰が生じないようにする。更に過出力時には、発熱物質47の発熱量増加に起因して、ボイド化集合体33内の冷却材が沸騰するように、冷却材流入孔44及び冷却材流出孔48の孔の大きさ、個数等を調整することにより適切な値に維持するようにしている。
【0026】第2の実施例の作用を説明する。過出力が生じ、ナトリウム温度が上昇する場合を考える。過出力が生じた場合、燃料集合体21内の冷却材温度が上昇することは勿論であるが、ボイド化集合体33においても、燃料集合体21において発生する中性子及びガンマ線の量が増加するため、発熱物質47に到達する中性子及びガンマ線の量も増加する。それに応じて、発熱物質47の中性子吸収あるいはガンマ線吸収による発熱量が増加し、冷却材温度が上昇する。ここで通常運転時におけるボイド化集合体33の冷却材流出孔48での冷却材温度を、燃料集合体21の冷却材出口温度より高くし、ボイド化集合体33内の冷却材のボイド化までの裕度を少なくしておく。このため燃料集合体21よりも先にボイド化集合体33内の冷却材がボイド化することになる。
【0027】従って過出力において燃料集合体21内の冷却材がボイド化する前に、ボイド化集合体33内の冷却材がボイド化し、中性子はボイド化集合体33のガスキャビティ41を介して炉心上部方向に漏洩し負の反応度効果が得られ、炉心の安全性が向上する。
【0028】更に第3の実施例を図6および図7を参照して説明する。図6は本発明に係る高速炉の炉心の第3実施例を示す炉心構成図である。図7は、図6に示す高速炉の炉心を示す横断面図である。この実施例に示された高速炉の炉心は図2及び図3に示された炉心構造に加えて多数の燃料集合体21を装荷して構成される炉心領域22の中央部にボイド化集合体33を複数本まとめて集中的に配置したものである。他の炉心構成は図2及び図3に示すものと基本的に異ならないので同一符号を付して説明を省略する。この高速炉の炉心においては、炉心中心部に炉心軸方向にまとめて配置されるボイド化集合体33により、冷却材であるナトリウムのボイド時に、炉心中心方向への中性子漏洩効果が促進される構成となっている。さらにボイド化集合体33を偏平炉心の炉心領域22に配置される制御棒52に隣接して装荷したり、周方向に沿って環状に装荷することにより制御棒方向への中性子漏洩を積極的に利用することも考えられる。その際燃料集合体21の上部軸ブランケット領域50と炉心領域22の中間にプレナム領域51を配置するか又は軸方向ブランケット領域50を削除すると上部方向へ漏洩した中性子がプレナム領域51を通してより漏洩しやすくなる。なお本発明の実施例では、炉心領域の各燃料集合体間にボイド化集合体を配置した例を示したが、ボイド化集合体33の配置又はボイド化集合体内の構成は上記の例に限られるものでない。ボイド化集合体の配置は冷却材であるナトリウムのボイド時にナトリウムボイド反応度が小さくなるように配置すればよく、その形状、構造は上記作用を満足するように設定されていれば良い。また本発明は、大型炉のみならず、元来ボイド反応度が小さい小型炉においても、安全性向上効果が上記同様に得ることができる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、冷却材による炉心の反応度を小さく抑えることにより、冷却材の流量低下時、炉心の過出力時、炉心への気泡流入時等の異常の場合の炉心の正反応度増加の要因を低減することにより、安全性を向上しつつ、より大きな出力の炉心を得ることができる高速炉の炉心を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る炉心を備えた高速炉の一実施例を示す縦断面図。
【図2】本発明に係る高速炉の炉心の第1実施例を示す炉心構成図。
【図3】図2に示す高速炉の炉心を示す横断面図。
【図4】図2に示す炉心の燃料集合体とボイド化集合体の関係を示す斜視図。
【図5】本発明に係るボイド化集合体の第2実施例を示す斜視図。
【図6】本発明に係る高速炉の炉心の第3実施例を示す炉心構成図。
【図7】図6に示す高速炉の炉心を示す横断面図。
【符号の説明】
5…ナトリウム
20…炉心
21…燃料集合体
22…炉心領域
24…径ブランケット領域
26…中性子遮断領域
28,50…上部軸ブランケット領域
29…下部軸ブランケット領域
30,51…ガスプレナム領域
31…ガスプレナム領域または中性子遮蔽領域
33…ボイド化集合体
40…冷却材流路
41…ガスキャビティ
44…冷却材流入孔
46…冷却材流入孔
47…発熱物質
48…冷却材流出孔
53…被覆管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 核分裂性物質を収容し液体金属から成る冷却材が内部を下方から上方に流通する炉心領域と、この炉心領域に炉心領域の軸方向中心と平行に貫通して設けられたボイド化領域とから成り、このボイド化領域は、内部上方にガス領域が形成されかつ下部および軸方向中間部に冷却材流入孔および冷却材流出孔が穿設されて成る被覆管によって形成されることを特徴とする高速炉の炉心。
【請求項2】 請求項1記載の高速炉の炉心において、前記ボイド化領域を構成する被覆管内の軸方向下方に発熱体を設けることを特徴とする高速炉の炉心。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【公開番号】特開平5−134073
【公開日】平成5年(1993)5月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−296951
【出願日】平成3年(1991)11月13日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)