説明

高電圧電子機器用ケーブル

【課題】外部半導電層を高圧絶縁体から容易に剥離除去することができ、かつ電気性能にも優れる高電圧電子機器用ケーブルを提供する。
【解決手段】線心部11外周に、内部半導電層14、高圧絶縁体15、外部半導電層16、遮蔽層18、およびシース19を順に備え、高圧絶縁体15と外部半導電層16との界面が剥離可能である高電圧電子機器用ケーブルであって、外部半導電層16内に、長さ方向に沿って、該外部半導電層16と略同等の体積抵抗率を有する導電性引裂き体17Aを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用CT(computerized tomography)装置やレントゲン装置等の高電圧電子機器に用いられるケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用CT装置やレントゲン装置等の高電圧電子機器用として高電圧直流電圧が課電されるケーブルとして、例えば低圧線心の2条と裸導体の1〜2条とを撚り合わせてなる線心部上に、内部半導電層、高圧絶縁体、外部半導電層、遮蔽層およびシースを順に設けたものが知られている。
【0003】
このようなケーブルにおいては、端末にコネクター等を接続する際に外部半導電層を高圧絶縁体から剥離除去する必要がある。このため、外部半導電層と絶縁体間は剥離可能とされている。そして、その除去作業は、一般に、ナイフ等の切断工具を用いて行われている。すなわち、まずナイフ等で外部半導電層に切り込みを入れた後、その切り込みに沿って外部半導電層を剥ぎ取っていく方法が用いられている。しかしながら、この方法では、外部半導電層に切り込みを入れた際、高圧絶縁体まで傷付けてしまうおそれがある。
【0004】
この種の問題に対し、架橋ポリエチレン絶縁電気ケーブルの外部半導電層内に、カーボンファイバ(繊維)からなるひも状物質を1本以上ケーブル長手方向に連続して入れる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。外部半導電層内に入れたカーボンファイバの端末を引っ張ることで、ナイフ等の工具で切り込みを入れずとも容易に外部半導電層を引裂くことができるようにしたものである。
【0005】
しかしながら、このようなケーブルにおいては、外部半導電層とひも状物質として挿入したカーボンファイバとの導電率に差があるため、電気性能が低下するという問題がある。特に、高電圧電子機器用ケーブルのような細径のケーブルでは、絶縁体や外部半導電層の厚さも薄いため、導電率の差が電気性能に与える影響は大きい。さらに、低誘電率のEPゴム組成物を使用して細径化(例えば、外径が10〜70mm)を図ったケーブルでは、導電率の差が電気性能に与える影響は一段と大きい。このため、上記技術を単純に高電圧電子機器用ケーブルに適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−35319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、外部半導電層を高圧絶縁体から容易に剥離除去することができ、かつ電気性能にも優れる高電圧電子機器用ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様である高電圧電子機器用ケーブルは、線心部外周に、内部半導電層、高圧絶縁体、外部半導電層、遮蔽層、およびシースを順に備え、前記高圧絶縁体と前記外部半導電層との界面が剥離可能である高電圧電子機器用ケーブルであって、前記外部半導電層内に、長さ方向に沿って、該外部半導電層と略同等の体積抵抗率を有する導電性引裂き体を配置したことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様である高電圧電子機器用ケーブルにおいて、前記外部半導電層の体積抵抗率をρとしたとき、前記導電性引裂き体の体積抵抗率ρが、次式を満足する値であるものである。
0.95ρ≦ρ≦1.05ρ
【0010】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様である高電圧電子機器用ケーブルにおいて、前記外部半導電層および前記導電性引裂き体の体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以下であるものである。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかの態様である高電圧電子機器用ケーブルにおいて、前記導電性引裂き体が、導電性ゴム・プラスチックからなるものである。
【0012】
本発明の第5の態様は、第4の態様である高電圧電子機器用ケーブルにおいて、前記導電性ゴム・プラスチックが、導電性繊維を含有するものである。
【0013】
本発明の第6の態様は、第5の態様である高電圧電子機器用ケーブルにおいて、前記導電性繊維が、炭素繊維であるものである。
【0014】
本発明の第7の態様は、第4の態様乃至第6の態様のいずれかの態様である高電圧電子機器用ケーブルにおいて、前記外部半導電層が、エチレンプロピレンゴム、カーボンブラック、およびステアリン酸を含有するものである。
【0015】
本発明の第8の態様は、第4の態様乃至第7の態様のいずれかの態様である高電圧電子機器用ケーブルにおいて、前記導電性引裂き体は、前記外部半導電層と同時押出により一体に形成されているものである。
【0016】
本発明の第9の態様は、第8の態様である高電圧電子機器用ケーブルにおいて、前記導電性ゴム・プラスチックのタイプAデュロメータ硬さが、前記外部半導電層を形成する樹脂のタイプAデュロメータ硬さより大きいものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の高電圧電子機器用ケーブルによれば、外部半導電層を高圧絶縁体から容易に剥離除去することができるとともに、優れた電気性能を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の高電圧電子機器用ケーブルの第1の実施形態を示す横断面図である。
【図2】図1に示す高電圧電子機器用ケーブルの要部拡大断面図である。
【図3】本発明の高電圧電子機器用ケーブルの第1の実施形態の変形例を示す要部断面図である。
【図4】本発明の高電圧電子機器用ケーブルの第2の実施形態を示す横断面図である。
【図5】図4に示す高電圧電子機器用ケーブルの要部拡大断面図である。
【図6】本発明の高電圧電子機器用ケーブルの他の実施形態を示す横断面図である。
【図7】本発明の高電圧電子機器用ケーブルのさらに他の実施形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明は図面に基づいて行うが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る高電圧電子機器用ケーブルを示す横断面図、図2はその要部を拡大して示す断面図、図3はその変形例を示す断面図である。
【0021】
図1において、符号11は、線心部を示しており、この線心部11は、低圧線心12の2条と、低圧線心12の外径と同径かもしくはそれより小径の高圧線心13の2条とを撚り合わせて構成されている。低圧線心12は、例えば直径0.35mmのすずめっき軟銅線を19本集合撚りしてなる断面積が1.8mmの導体12aと、この導体12a上に設けられた、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる、例えば厚さが0.25mmの絶縁体12bとから構成される。また、高圧線心13は、例えば直径0.18mmのすずめっき軟銅線を50本集合撚りしてなる断面積が1.25mmの裸導体13aから構成される。裸導体13a上には、場合により、半導電性の被覆(図示なし)が設けられていてもよい。
【0022】
この線心部11の外周には、内部半導電層14、高圧絶縁体15および外部半導電層16が順に設けられている。内部半導電層14は、例えばナイロン基材、ポリエステル基材等からなる半導電性テープの巻き付け、および/または、半導電性エチレンプロピレンゴム等の半導電性ゴム・プラスチックの押出被覆により形成されている。内部半導電層14は、例えば5.0mmの外径を有する。
【0023】
また、高圧絶縁体15は、エチレンプロピレンゴム等の絶縁性ゴム・プラスチックの押出被覆により形成されている。この高圧絶縁体15は、例えば2.7mmの厚さを有する。
【0024】
さらに、外部半導電層16は、内部半導電層14と同様、例えばナイロン基材、ポリエステル基材等からなる半導電性テープの巻き付け、および/または、半導電性エチレンプロピレンゴム等の半導電性ゴム・プラスチックの押出被覆により形成されている。内部半導電層14と外部半導電層16は、同じ材料で構成されていても異なる材料で構成されていてもよいが、少なくとも、外部半導電層16は、高圧絶縁体15に対し剥離性を有する材料で形成されている。この外部半導電層16は、例えば0.2mmの厚さを有する
【0025】
この外部半導電層16の内部には、導電性引裂き体として、外部半導電層16と略同等の体積抵抗率を有する紐状の導電性引裂き体(以下、導電性引裂き紐と称する)17Aが1本乃至複数本(図面の例では、2本)、ケーブル長さ方向に沿って埋設されている。導電性引裂き紐17Aの体積抵抗率は、外部半導電層16の体積抵抗率の0.95〜1.05倍、すなわち、外部半導電層16の体積抵抗率をρとしたとき、導電性引裂き紐17Aの体積抵抗率ρは、次式(1)を満足する値であることが好ましい。
0.95ρ≦ρ≦1.05ρ …(1)
【0026】
導電性引裂き紐17Aの体積抵抗率が、外部半導電層16の体積抵抗率の0.95倍未満であるか、もしくは1.05倍を超えると、導電率の差が大きすぎるためケーブルの電気性能が低下する。より信頼性の高い電気性能を得るためには、導電性引裂き紐17Aの体積抵抗率は、外部半導電層16の体積抵抗率の0.98〜1.02倍、すなわち、次式(2)を満足する値であることがより好ましい。
0.98ρ≦ρ≦1.02ρ …(2)
【0027】
また、導電性引裂き紐17Aおよび外部半導電層16の体積抵抗率は、部分放電を防止するという観点から、いずれも1.0×10Ω・cm以下であることが好ましく、1.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下であることがより好ましい。
【0028】
導電性引裂き紐17Aは、導電性フィラーを配合することにより上記のような導電性が付与されたゴム・プラスチックから構成される。導電性フィラーとしては、炭素繊維、炭素粉末の他、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)、Al(アルミ)、Cr(クロム)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、Ni(ニッケル)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Sn(スズ)等の金属、またはこれらの金属の合金からなる粉末または繊維等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらのなかでも、強度、および外部半導電層との体積抵抗率の観点から炭素繊維が好ましい。導電性引裂き紐17Aの導電性は、使用する導電性フィラーの種類やその配合量等により調節することができる。
【0029】
導電性引裂き紐17Aを構成する導電性ゴム・プラスチックには、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、硬さ、引張強さ等を向上させる添加剤等が配合されていてもよい。
【0030】
導電性引裂き紐17Aは、JIS K 6251に準拠して測定される引張強さが7.0MPa以上、同伸びが120%以上であることが好ましい。引張強さが上記範囲未満であるか、または伸びが上記範囲未満であると、外部半導電層16の引裂きに必要な機械的強度が不足し、作業中に切れてしまい引裂きができなくなるおそれがある。
【0031】
導電性引裂き紐17Aの断面形状や大きさは、外部半導電層16を引裂くことができる形状、大きさであれば特に限定されるものではなく、例えば断面形状は、図1、2に示すような半円状や、図3に示すような円形状であってもよい。但し、外部半導電層16を確実に引裂くという観点からは、少なくとも導電性引裂き紐17Aの一部が高圧絶縁体15と接するか、または略接する位置に埋設されていることが好ましく、さらに、その場合、外部半導電層16と高圧絶縁体15との間に空隙を生じることがないように、断面の形状を半円状、特に、高圧絶縁体15の外周面と合致可能な円弧面を有する半円状とし、その円弧面が高圧絶縁体15の外周面に当接するように埋設することが好ましい。また、大きさは、ケーブルの電気性能や外観の点から、外部半導電層16の外周面より突出しない大きさであることが好ましい。さらに、導電性引裂き紐17Aの数については、複数本、周方向に略等しい間隔をおいて埋設することが好ましい。本実施形態では、導電性引裂き紐17Aは、2本、線心部11を挟んで略対向する位置に設けられている。この場合、2本の導電性引裂き紐17Aを反対方向に引っ張ることで外部半導電層16を容易に引裂くことができる。
【0032】
なお、このように内部に導電性引裂き紐17Aが配置された外部半導電層16は、高圧絶縁体15の外周に予め製造しておいた導電性引裂き紐17Aを高圧絶縁体15の外周に沿わせつつ、外部半導電層16となる半導電性テープを巻き付けるか、または半導電性ゴム・プラスチックを押出被覆することにより形成される
【0033】
導電性引裂き紐17Aが配置された外部半導電層16上には、さらに、例えばすずめっき軟銅線の編組からなる厚さ0.3mmの遮蔽層18が設けられ、また、その上に、例えば軟質塩化ビニル樹脂の押出被覆によりシース19が設けられている。
【0034】
このように構成される高電圧電子機器用ケーブルにおいては、外部半導電層16内に導電性引裂き紐17Aが埋設されているので、端末にコネクター等を接続する際に、導電性引裂き紐17Aを外側に引っ張ることにより外部半導電層16を容易に除去することができる。しかも、導電性引裂き紐17Aは、外部半導電層16と略同等の体積抵抗率を有するため、これを配置したことによる外部半導電層16の性能の低下を抑制することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る高電圧電子機器用ケーブルを示す横断面図であり、図5はその要部を拡大して示す断面図である。なお、これ以降の実施形態においては、重複する説明を避けるため、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0036】
図4、5に示すように、第2の実施形態に係る高電圧電子機器用ケーブルは、第1の実施形態の高電圧電子機器用ケーブルにおいて、導電性引裂き紐17Aに代えて、外部半導電層16内に、この外部半導電層16と同時押出することにより一体に形成された導電性引裂き体17Bを配置した構造となっている。
【0037】
この導電性引裂き体17Bは、外部半導電層16と同時押出成形可能であって、硬さが外部半導電層16より硬い材料、具体的には、例えば、外部半導電層16がエチレンプロピレンゴムをベースポリマーとする半導電性材料からなる場合、同様のベースポリマーに前述したような導電性フィラーを配合し体積抵抗率および硬さを調節したゴム・プラスチック材料により形成される。
【0038】
導電性引裂き体17Bを構成するゴム・プラスチックの硬さは、外部半導電層16を構成する硬さの1.5倍以上であることが、外部半導電層16に対する引裂き性の点から好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。但し、過度に硬いと、屈曲性が悪くなるおそれがあることから、外部半導電層16を構成する硬さの2.5倍以下であることが好ましい。また、導電性引裂き体17Bの硬さは、屈曲が悪くなるという観点から、JIS K 6253により測定されるタイプAデュロメータ硬さが100〜180であることが好ましく、100〜150であることがより好ましい。
【0039】
導電性引裂き体17Bの体積抵抗率については、導電性引裂き紐17と同様であり、外部半導電層16と略同等、好ましくは外部半導電層16の体積抵抗率の0.95〜1.05倍、より好ましくは0.98〜1.02倍である。また、導電性引裂き体17Bの体積抵抗率は、部分放電を防止するという観点から、1.0×10Ω・cm以下であることが好ましく、1.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下であることがより好ましい。
【0040】
導電性引裂き体17Bに配合される導電性フィラーとしては、導電性引裂き紐17で例示したものと同様のものが挙げられる。さらに、主として硬さを調整するために必要に応じて配合される添加剤としては、ステアリン酸等が挙げられる。
【0041】
なお、導電性引裂き体17Bは、JIS K 6251に準拠して測定される引張強さが7.0MPa以上、同伸びが120%以上であることが好ましい。引張強さが上記範囲未満であるか、または伸びが上記範囲未満であると、外部半導電層16の引裂きに必要な機械的強度が不足し、引裂きができなくなるおそれがある。
【0042】
また、図4、5に示す例では、導電性引裂き体17Bは外部半導電層16と略同等の厚みを有し、その表面が外部半導電層16の内周面および外周面に共に露出する、つまり高圧絶縁体15と遮蔽層18に共に接するように設けられているが、必ずしも、このように構成されている必要はなく、例えば、外部半導電層16の外周面には露出せず、高圧絶縁体15にのみ接するように設けられていてもよい。しかしながら、外部半導電層16に対する引裂き性の観点からは、図4、5に示す例のように、外部半導電層16の内周面および外周面に共に露出するように設けられていることが好ましい。
【0043】
このように構成される高電圧電子機器用ケーブルにおいては、第1の実施形態と同様、外部半導電層16内に導電性引裂き体17Bが埋設されているので、端末にコネクター等を接続する際に、外部半導電層16を容易に除去することができる。すなわち、外部半導電層16内に配置された導電性引裂き体17Bの端部を、例えばナイフ等を用いて外部半導電層16から分離し、その分離端を外側に向けて引っ張ることにより外部半導電層16を容易に除去することができる。この方法では、ナイフ等を用いるものの、その使用は端部に限定されるため問題となることはない。また、導電性引裂き紐17Aは、外部半導電層16と略同等の体積抵抗率を有するため、これを配置したことによる外部半導電層16の性能の低下を抑制することができる。
【0044】
加えて、本実施形態では、電性引裂き体17Bは外部半導電層16と同時押出により形成されているため、第1の実施形態に比べ、外部半導電層16や高圧絶縁体15との密着性の確保がより容易であり、より良好かつ安定した電気性能が得られる。
【0045】
(その他の実施形態)
上記第1および第2の実施形態では、線心部11が、低圧線心12の2条と高圧線心13の2条とを撚り合わせて構成されているが、例えば、図6に示すように。線心部11が、低圧線心12の2条と高圧線心13(図面の例では、裸導体13a上に半導電性の被覆13bが設けられている)の1条とを撚り合わせた構成とされていてもよい。また、例えば、図7に示すように、線心部11が、裸導体13aのみで構成され、そのような線心部11(裸導体13a)上に、内部半導電層14、高圧絶縁体15、導電性引裂き紐17または導電性引裂き体17Bが配置された外部半導電層16、遮蔽層18およびシース19を順に設けた構造とされていてもよい。なお、図6の高電圧電子機器用ケーブルは、第1の実施形態において、線心部11を、低圧線心12の2条と高圧線心13の1条とを撚り合わせた構成とした例であり、図6の高電圧電子機器用ケーブルは、第1の実施形態において、線心部11を裸導体13aのみで構成した例である。
【0046】
これらの高電圧電子機器用ケーブルにおいても、第1および第2の実施形態と同様、端末にコネクター等を接続する際に、導電性引裂き紐17Aまたは導電性引裂き体17Bにより外部半導電層16を容易に除去することができ、しかも、導電性引裂き紐17Aまたは導電性引裂き体17Bを配置したことによる外部半導電層16の性能の低下を抑制することができる。また、導電性引裂き体17Bを外部半導電層16内に配置した例では、電気性能のさらなる向上、安定化を図ることができる。
た例と同様、裸導体21a上に半導電性の被覆21bが設けられていてもよい。
【0047】
以上、本発明の高電圧電子機器用ケーブルの実施形態を説明してきたが、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であらゆる変形や変更が可能である。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
実施例1
直径0.35mmのすずめっき軟銅線を19本集合撚りしてなる断面積が1.8mmの導体上にポリテトラフルオロエチレンからなる厚さ0.25mmの絶縁体を被覆した低圧線心2条と、直径0.18mmのすずめっき軟銅線を50本集合撚りしてなる断面積が1.25mmの裸導体からなる高圧線心2条とを撚り合わせ、その外周にナイロン基材からなる半導電性テープを巻き付けて厚さ約0.5mmの内部半導電層を設けた。
【0050】
この内部半導電層上に、EPDM(三井化学社製 商品名 三井EPT#1045)100質量部、フュームドシリカ(日本アエロジル社製 商品名 アエロジル300)0.5質量部、およびジクミルパーオキサイド(DCP)2.5重量部をミキシングロールにより均一に混練して調製した絶縁性組成物を押出被覆し、次いで加熱架橋して厚さ2.7mmの高圧絶縁体を形成した。
【0051】
さらに、この高圧絶縁体上に、EPDM(商品名 三井EPT#1045)100質量部、カーボンブラック120質量部、ステアリン酸1質量部、ジクミルパーオキサイド(DCP)8質量部をミキシングロールにより均一に混練して調製した半導電性組成物を押出被覆し、次いで加熱架橋して厚さ約0.15mm、体積抵抗率ρa:1.0×10Ω・cmの外部半導電層を設けた。その際、高圧絶縁体上に、断面半円状(半径0.1mm)の炭素繊維強化プラスチックからなる紐(体積抵抗率ρb:1.0×10Ω・cm、引張強さ:10MPa、引張伸び:250%)2本を線心部を挟んで対向する位置に、線心部に平行に沿わせつつ被覆した。
【0052】
その後、上記外部半導電層上に、すずめっき軟銅線編組からなる厚さ0.3mmの遮蔽層を設け、その外側に軟質塩化ビニル樹脂シースを押出被覆して外径13.2mmの高電圧電子機器用ケーブルを製造した。
【0053】
実施例2〜5、比較例1〜2
炭素繊維強化プラスチックからなる紐として体積抵抗率ρbの異なるものを用いた以外は実施例1と同様にして、表1に示すような体積抵抗率比(ρb/ρa)を有する高電圧電子機器用ケーブルを製造した。
【0054】
上記実施例1〜5および比較例1〜2で得られた高電圧電子機器用ケーブルについて、電気学会電気規格調査会標準規格JEC−0401に基づく部分放電試験を行い、部分放電の有無を調べた。結果を表1に示す。なお、外部半導電層の体積抵抗率ρaは、厚さ1mmのシート試料を作製し、JIS K 6271:2001の6に準拠して測定した。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例6〜9、比較例3〜4
それぞれ、表2に示すような異なる体積抵抗率を有する2種の半導電性組成物を用い、一方の半導電性組成物を押出被覆する際に、他方の半導電性組成物を紐状に同時押出して、図4に示すような導電性引裂き体17Bを備えた外部半導電層16を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして、高電圧電子機器用ケーブルを製造した。
【0057】
上記実施例6〜9および比較例3〜4で得られた高電圧電子機器用ケーブルについて、電気学会電気規格調査会標準規格JEC−0401に基づく部分放電試験を行い、部分放電の有無を調べた。結果を、引裂き紐の引張強さとともに表2に示す。なお、引裂き紐の引張強さは、JIS K 6251に準拠し、160℃で45分間プレス成形して作製した厚さ1mmのダンベル状3号形シート試料について、温度23℃、引張速度500mm/分の条件で測定した。
【0058】
【表2】

【符号の説明】
【0059】
11…線心部、12…低圧線心、12a…導体、12b…絶縁体、13…高圧線心、13a…裸導体、13b…半導電性の被覆、14…内部半導電層、15…高圧絶縁体、16…外部半導電層、17A…導電性引裂き紐、17B…導電性引裂き体、18…遮蔽層、19…シース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線心部外周に、内部半導電層、高圧絶縁体、外部半導電層、遮蔽層、およびシースを順に備え、前記高圧絶縁体と前記外部半導電層との界面が剥離可能である高電圧電子機器用ケーブルであって、
前記外部半導電層内に、長さ方向に沿って、該外部半導電層と略同等の体積抵抗率を有する導電性引裂き体を配置したことを特徴とする高電圧電子機器用ケーブル。
【請求項2】
前記外部半導電層の体積抵抗率をρとしたとき、前記導電性引裂き体の体積抵抗率ρが、次式を満足する値であることを特徴とする請求項1記載の高電圧電子機器用ケーブル。
0.95ρ≦ρ≦1.05ρ
【請求項3】
前記外部半導電層および前記導電性引裂き体の体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の高電圧電子機器用ケーブル。
【請求項4】
前記導電性引裂き体が、導電性ゴム・プラスチックからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の高電圧電子機器用ケーブル。
【請求項5】
前記導電性ゴム・プラスチックが、導電性繊維を含有することを特徴とする請求項4記載の高電圧電子機器用ケーブル。
【請求項6】
前記導電性繊維が、炭素繊維であることを特徴とする請求項5記載の高電圧電子機器用ケーブル。
【請求項7】
前記外部半導電層が、エチレンプロピレンゴム、カーボンブラック、およびステアリン酸を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の高電圧電子機器用ケーブル。
【請求項8】
前記導電性引裂き体は、前記外部半導電層と同時押出により一体に形成されていることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項記載の高電圧電子機器用ケーブル。
【請求項9】
前記導電性ゴム・プラスチックのタイプAデュロメータ硬さが、前記外部半導電層を形成する樹脂のタイプAデュロメータ硬さより大きいことを特徴とする請求項8記載の高電圧電子機器用ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−4040(P2012−4040A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139742(P2010−139742)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)