説明

魚の麻酔方法及び麻酔装置

【課題】魚の養殖現場等において安全かつ簡便に行うことが可能な魚の麻酔方法及び麻酔装置を提供する。
【解決手段】麻酔用炭酸水製造手段18内でポンプ11によって供給される原水に、炭酸ガス供給源12から送られる炭酸ガス及び酸素供給源12aから供給される酸素を溶解させて、対象となる魚に対する麻酔効果を有する濃度の溶存炭酸ガス及び魚が生存するために必要な濃度の溶存酸素を含む麻酔用炭酸水を予め製造し、麻酔を行う麻酔用水槽19に供給しながら、その中に魚を入れ麻酔を行う。一定濃度の溶存炭酸ガス及び溶存酸素を含む新鮮な麻酔用炭酸水が常に麻酔用水槽19に供給されるため、分泌物による水質低下や溶存酸素の不足による、麻酔時における魚の斃死を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の養殖現場等において安全かつ簡便に行うことが可能な魚の麻酔方法及び麻酔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚の養殖現場では、疾病予防のためのワクチン接種、噛み合い防止のためのトラフグの歯切り(例えば、特許文献1参照)を始めとする様々な局面において、作業中に魚が暴れることによる作業性の低下並びに魚体の損傷及び消耗を防止するために麻酔薬が使用されている。現在、食品添加物の一種であるオイゲノール(4−アリル−2−メトキシフェノール)を主成分とする麻酔薬が動物用医薬品として承認を受けており、養殖現場において使用されている(例えば、非特許文献1参照)。
例えば、海中の養殖用生け簀にいる魚に対して麻酔を行う際には、先ず、海水に所定量の麻酔薬を溶解した麻酔液を入れた麻酔用水槽を船や筏等に積んで生け簀の近傍まで運搬するか、空の水槽を積んだ船や筏等で養殖用生け簀等の近傍に移動後、水槽に入れる麻酔液の調製を行う。次いで、麻酔を行う魚を玉網等で取り出し、麻酔用水槽中の麻酔液に浸積すると、鰓等を通して体内に吸収された麻酔薬の作用により魚は麻酔される。
【0003】
しかし、オイゲノールは有効濃度域が狭く、麻酔液中のオイゲノール濃度が高すぎると魚は斃死するため、麻酔液の調製の際には計量を厳密に行う必要がある。また、魚と一緒に麻酔用水槽中に混入する海水により麻酔液が希釈されると、麻酔効果が得られなくなる。更に、麻酔の際にストレスを受けた魚が分泌する粘液やアンモニア等により汚染された麻酔液を繰返し使用すると、それらの影響により魚が斃死する危険性が高くなる。したがって、複数の魚に対して麻酔を行う場合には、作業性の悪い船上で麻酔薬及び水を正確に計量し何度も調製しなおす必要がある。
その際、使用済みの麻酔液は海洋や河川中にやむなく投棄することになるが、これは環境保全の観点から好ましくない上に、高価な麻酔薬の繰返し使用ができないため経済的でない。
更に、食の安全に対する消費者の関心の高まりに伴い、養殖魚の体内に残留するおそれのある麻酔剤の使用が敬遠されるようになりつつある。
【0004】
麻酔薬を用いない魚の麻酔方法として炭酸水による麻酔技術が知られており、活魚の輸送等において用いられている。例えば、特許文献2には活魚の遊泳する水に炭酸水素ナトリウム及び塩酸を添加して得られる炭酸水中で活魚を麻酔することを特徴とする活魚の輸送方法が開示されている。また、特許文献3には炭酸ガス分圧を55〜95mmHgに調節した低温水槽中で活魚を麻酔状態にして輸送する方法が開示されている。
また、最近になって、炭酸塩、有機酸及び固形化促進剤からなる固形発泡剤を用いた簡便な魚類用麻酔剤が開発された(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−027860号公報
【特許文献2】特開昭58−013336号公報
【特許文献3】特開平1−144916号公報
【非特許文献1】和田 功著、「4−Allyl−2−Methoxyphenolの麻酔効果」、FA−100文献集、田辺製薬株式会社、1971年、p.7−9
【非特許文献2】独立行政法人水産総合研究センター、プレスリリース「簡便な魚類用麻酔剤の開発技術を確立」、[online]、平成18年2月7日、独立行政法人水産総合研究センターウェブサイト、[平成18年6月20日検索]、インターネット<URL:http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr17/180207/masui1.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2や非特許文献2に記載の方法では、投入された固体状の炭酸発生剤近傍において溶存炭酸ガス濃度が高くなると共に溶存酸素濃度が低下するため、その付近にいる魚は酸欠死しやすくなる。また、魚のいる麻酔用水槽中に直接炭酸ガスを吹き込む場合にも、吹き込み口近傍の溶存炭酸ガス濃度の局所的な増大や溶存酸素濃度の局所的な減少に起因して魚が斃死するおそれがある。
特許文献2に記載の活魚の麻酔方法は、塩酸によるpHの調整に多大な時間を要するため、この方法を養殖現場における麻酔作業に適用することは作業効率の観点から困難である。
また、特許文献3に記載の方法のように低温の炭酸水を用いることは、養殖現場においては現実的でない。
これらの方法を養殖現場において実施する場合には、予め調製された麻酔液を貯留する麻酔用水槽中に魚を入れることにより麻酔を行うが、従来の魚の麻酔方法と同様に、繰返し使用によって、魚と一緒に水槽内に混入する水により麻酔液が希釈されたり、魚からの分泌物により汚染されるという問題が生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、魚の養殖現場等において安全かつ簡便に行うことが可能な魚の麻酔方法及び麻酔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る魚の麻酔方法は、淡水又は海水に炭酸ガスを溶解させ、対象となる魚に対する麻酔効果を有する濃度の溶存炭酸ガス及び前記魚が生存するために必要な濃度の溶存酸素を含む麻酔用炭酸水を予め製造する第1工程と、前記麻酔用炭酸水を前記魚の麻酔を行う麻酔用水槽に供給しながら、前記麻酔用水槽中に前記魚を入れて該魚の麻酔を行う第2工程とを有する。
【0009】
代謝により魚の体組織から排出された炭酸ガスは、血液中に取り込まれ、炭酸水素イオン(HCO)の形で体内を移動した後、鰓において再び炭酸ガスに変換され、拡散によって体外に排出されることが知られているが、外界の水中炭酸ガス分圧が血液中のそれを上回ると、魚は炭酸ガスを排出できなくなる。その結果、血液中のCO濃度が上昇し中枢神経が抑制されるため、魚は麻酔状態になる(炭酸ガスナルコーシス)。第1の発明に係る魚の麻酔方法では、この現象を利用することによりオイゲノール等の麻酔薬を用いることなく魚の麻酔を行うことができる。また、麻酔用炭酸水中の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度を調節することにより、麻酔中に魚が斃死することを防止しつつ安全に麻酔を行うことができる。更に、麻酔用炭酸水を麻酔用水槽に供給しながら魚の麻酔を行うことにより、魚の分泌する粘液やアンモニアをオーバーフローさせて麻酔用水槽の外に排出することができるため、麻酔中に魚が斃死する危険性を更に低減することができる。
【0010】
第1の発明に係る魚の麻酔方法において、前記麻酔用炭酸水は、溶存酸素濃度が1.5mg/L以上飽和酸素濃度以下、pHが5〜7.5であることが好ましい。なお、Lはリットルを示す。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る魚の麻酔装置は、淡水又は海水からなる原水を汲み上げるポンプと、炭酸ガスを第1の流量制御部を介して供給する炭酸ガス供給源と、酸素を第2の流量制御部を介して供給する酸素供給源と、前記ポンプによって供給される原水に、前記炭酸ガス供給源から送られる炭酸ガス及び前記酸素供給源から供給される酸素を溶解させて、対象となる魚に対する麻酔効果を有する濃度の溶存炭酸ガス及び前記魚が生存するために必要な濃度の溶存酸素を含む麻酔用炭酸水を製造する麻酔用炭酸水製造手段と、前記麻酔用炭酸水製造手段から供給される前記麻酔用炭酸水で、前記対象となる魚の麻酔を行う麻酔用水槽とを有する。
【0012】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、前記麻酔用炭酸水製造手段において前記麻酔用炭酸水は連続的に製造されて、前記麻酔用水槽に供給されていてもよい。
【0013】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、前記原水又は前記麻酔用炭酸水の温度を測定する温度センサを有し、該温度センサの測定値によって、前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度を調整する前記第1の流量制御部及び溶存酸素濃度を調整する前記第2の流量制御部のいずれか一方又は双方を制御してもよい。
【0014】
第2の発明にかかる魚の麻酔装置において、前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度センサを有し、該炭酸ガス濃度センサの測定値によって前記第1の流量制御部を制御し前記麻酔用炭酸水の炭酸ガス濃度を制御してもよい。
【0015】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、前記麻酔用炭酸水の溶存酸素濃度を測定する酸素濃度センサを有し、該酸素濃度センサの測定値によって前記第2の流量制御部を制御し前記麻酔用炭酸水の溶存酸素濃度を制御してもよい。
【0016】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、前記第1の流量制御部は、予め決められた複数の設定値を有し、前記原水又は前記麻酔用炭酸水の温度、前記魚の種類、前記魚の量、前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度、前記酸素の供給量のいずれか1又は2以上に応じて前記設定値が選択されてもよい。
【0017】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、前記第2の流量制御部は、予め決められた複数の設定値を有し、前記原水又は前記麻酔用炭酸水の温度、前記魚の種類、前記魚の量、前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度、前記炭酸ガスの供給量のいずれか1又は2以上に応じて前記設定値が選択されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係る魚の麻酔方法においては、オイゲノール等の麻酔薬の代わりに安価で毒性の低い炭酸ガスを用いて魚の麻酔を行うため、経済性に優れていると共に麻酔薬の魚体内及び環境中への残留の問題が生じない。また、所望の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度を有する麻酔用炭酸水を予め製造してから麻酔用水槽に供給するため、麻酔用水槽中における局所的な溶存炭酸ガス濃度の上昇又は溶存酸素濃度の低下に起因して魚が斃死する危険性を低減することができる。更に、麻酔用炭酸水を麻酔用水槽に連続的に供給しながら魚の麻酔を行うことにより、魚の分泌物等により汚染された麻酔用炭酸水は麻酔用水槽内に滞留することなくオーバーフローして槽内から除去されるため、麻酔用水槽内の水質の低下に起因して魚が斃死する危険性を低減することができる。
【0019】
特に、第1の発明に係る魚の麻酔方法において、麻酔用炭酸水の溶存酸素濃度が1.5mg/L以上飽和酸素濃度以下、pHが5〜7.5であると、すべての魚種について十分な麻酔効果が得られ、かつ酸欠による斃死を確実に防止することができる。
【0020】
第2の発明に係る魚の麻酔装置においては、第1の流量制御部を介して供給された炭酸ガスを水に溶解させることにより麻酔用炭酸水を製造するため、揺れる船や筏の上で煩雑な炭酸塩や水の計量操作を行うことなく、麻酔用炭酸水中の溶存炭酸ガス濃度を厳密に制御することができる。また、麻酔用炭酸水製造手段において所望の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度を有する麻酔用炭酸水を予め製造してから麻酔用水槽に供給するため、麻酔用水槽中における局所的な溶存炭酸ガス濃度の上昇又は溶存酸素濃度の低下に起因して魚が斃死する危険性を低減することができる。
【0021】
特に、第2の発明に係る魚の麻酔装置において、麻酔用炭酸水製造手段において麻酔用炭酸水が連続的に製造されて、麻酔用水槽に供給される構成とすることにより、魚の分泌物等により汚染された麻酔用炭酸水は麻酔用水槽内に滞留することなくオーバーフローして槽内から除去されるため、麻酔用水槽内の水質の低下に起因して魚が斃死する危険性を低減することができる。
【0022】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、温度センサの測定値によって第1及び第2の流量制御部のいずれか一方又は双方を制御し、麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度のいずれか一方又は双方を制御する構成とすることにより、原水又は麻酔用炭酸水の温度に基づき麻酔用炭酸水中のガス濃度をフィードバック制御することが可能になる。
【0023】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、炭酸ガス濃度センサの測定値によって第1の流量制御部を制御し麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度を制御する構成とすることにより、麻酔用炭酸水の炭酸ガス濃度を常に一定の値に保つことができる。
【0024】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、酸素濃度センサの測定値によって第2の流量制御部を制御し麻酔用炭酸水の溶存酸素濃度を制御する構成とすることにより、麻酔用炭酸水の酸素濃度を常に一定の値に保つことができる。
【0025】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、原水又は麻酔用炭酸水の温度、魚の種類、魚の量、麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度、酸素の供給量に応じて第1の流量制御部の設定値が選択される構成とすることにより、原水又は麻酔用炭酸水の温度、麻酔処理の対象となる魚の種類、一度に麻酔処理を行う魚の頭数、酸素の供給量に応じて、予め設定された炭酸ガス供給量の設定値のうち最適なものを瞬時に選択することができる。
【0026】
第2の発明に係る魚の麻酔装置において、原水又は麻酔用炭酸水の温度、魚の種類、魚の量、麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度、炭酸ガスの供給量に応じて第2の流量制御部の設定値が選択される構成とすることにより、原水又は麻酔用炭酸水の温度、麻酔処理の対象となる魚の種類、一度に麻酔処理を行う魚の頭数、炭酸ガスの供給量に応じて、予め設定された酸素供給量の設定値のうち最適なものを瞬時に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る魚の麻酔装置の説明図、図2(A)は同麻酔装置の第1の流量制御部を示す概略図、図2(B)は第1の流量制御部の第1の変形例を示す概略図、図2(C)は第1の流量制御部の第2の変形例を示す概略図である。
【0028】
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る魚の麻酔装置10について説明する。
麻酔装置10は、原水を汲み上げるポンプ11と、炭酸ガスを第1の流量制御部17を介して供給する炭酸ガス供給源12と、酸素ガスを第2の流量制御部17aを介して供給する酸素供給源12aとを有している。更に麻酔装置10は、ポンプ11によって供給される原水に炭酸ガス供給源12から送られる炭酸ガス及び酸素供給源12aから送られる酸素を溶解させ麻酔用炭酸水を製造する麻酔用炭酸水製造手段18と、麻酔用炭酸水製造手段18から供給される麻酔用炭酸水で対象となる魚の麻酔を行う麻酔用水槽19を有している。
【0029】
炭酸ガス供給源12には、上流側から液化炭酸ガスボンベ13、炭酸ガスの圧力を調整するための圧力制御器の一例である減圧バルブ14、及び第1の流量制御部17が配置され、減圧バルブ14の上流側及び下流側には、それぞれ液化炭酸ガスボンベ13から取り出された炭酸ガスの一次圧を測定する一次圧計15及び減圧バルブ14によって減圧された炭酸ガスの二次圧を測定する二次圧計16が配置されている。
【0030】
酸素供給源12aには、上流側から高圧酸素ボンベ13a、酸素の圧力を調整するための圧力制御器の一例である減圧バルブ14a、及び第2の流量制御部17aが配置され、減圧バルブ14aの上流側及び下流側には、それぞれ液化酸素ボンベ13aから取り出された酸素の一次圧を測定する一次圧計15a及び減圧バルブ14aによって減圧された酸素の二次圧を測定する二次圧計16aが配置されている。
【0031】
なお、酸素供給源において、高圧酸素ボンベの代わりに高圧空気ボンベを用いてもよく、あるいはコンプレッサやエアポンプを用いて圧縮空気を供給してもよい。なお、コンプレッサやエアポンプを用いる場合には、一次圧計は不要である。
【0032】
ポンプ11と麻酔用炭酸水製造手段18の間には原水の温度を測定する温度センサ20が、麻酔用炭酸水製造手段18と麻酔用水槽19の間には麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度センサ21、及び麻酔用炭酸水の溶存酸素濃度を測定する酸素濃度センサ22がそれぞれ設けられている。
温度センサ20は、ポンプ11の前段に設置してもよい。また、麻酔用炭酸水の温度を測定する温度センサを、麻酔用炭酸水製造手段18と麻酔用水槽19の間又は麻酔用水槽19中に設置してもよい。
また、炭酸ガス濃度センサ21及び酸素濃度センサ22は、麻酔用水槽19中に設置してもよい。
【0033】
温度センサ20としては、サーミスタ等の、通常温度測定に使用される任意のセンサを用いることができる。炭酸ガス濃度センサ21としては、溶存炭酸ガス濃度を直接測定するもの以外に、pH電極等の溶存炭酸ガス濃度の関数となる物理量を測定するセンサを用いることもできる。また、酸素濃度センサ22としては、溶存酸素の測定に通常使用される任意のものを用いることができる。
【0034】
また、麻酔用炭酸水製造手段18と麻酔用水槽19の間に開閉弁23を有している。なお、麻酔用炭酸水の製造及び麻酔用水槽19への供給を常に連続的に行う場合には、開閉弁23を省略してもよい。
【0035】
炭酸ガスは、減圧バルブ14を介して液化炭酸ガスボンベ13より取り出され、適当な二次圧(0.11〜0.4MPa)まで降圧された後、第1の流量制御部17に導かれる。麻酔用炭酸水製造手段18に対する炭酸ガスの単位時間あたりの供給量は、麻酔用炭酸水製造手段18で製造される麻酔用炭酸水が、対象となる魚に対する麻酔効果を有する濃度の溶存炭酸ガスを含むために好適な値となるよう、第1の流量制御部17により制御される。
また、酸素は、減圧バルブ14aを介して高圧酸素ボンベ13aより取り出され、適当な二次圧(0.11〜0.4MPa)まで降圧された後、第2の流量制御部17aに導かれる。麻酔用炭酸水製造手段18に対する酸素の単位時間あたりの供給量は、麻酔用炭酸水製造手段18で製造される麻酔用炭酸水が、対象となる魚が生存するに必要な濃度の溶存酸素を含むために好適な値となるよう、第2の流量制御部17aにより制御される。
【0036】
麻酔用炭酸水の原料となる原水は、ポンプ11により汲み上げられ麻酔用炭酸水製造手段18へ供給される。麻酔の対象となる魚種に応じて海水及び淡水のいずれも原水として用いることができる。船や筏の上で使用する場合には、生け簀及びその近傍から汲み上げた海水又は淡水を使用することが好ましいが、陸送用の輸送車輌まで養殖魚を運搬する場合等には、図示されないタンク等に貯蔵した水を原水として用いてもよい。また、原水中の浮遊物等を除去するために、プレフィルター等のろ過装置をポンプ11の前段に設けてもよい。
【0037】
ポンプ11により供給された原水は、麻酔用炭酸水製造手段18内で、第1の流量制御部17で設定された流量で炭酸ガス供給源12より供給される炭酸ガス及び第2の流量制御部17aで設定された流量で酸素供給源12aより供給される酸素と混合され、麻酔用炭酸水となる。
麻酔用炭酸水製造手段18としては、スタティックミキサー、カーボネータ等の水中へのガス溶解に通常用いられる任意の装置を用いることができる。なお、炭酸ガス及び酸素を原水中に吹き込む際には、水中への溶解効率を向上させるために炭酸ガス及び酸素の気泡を微細化することが好ましい。また、ガス透過性膜を介して炭酸ガス及び酸素を水中に拡散させる膜透過式溶解器を用いてもよい。
【0038】
麻酔用炭酸水製造手段18で製造された麻酔用炭酸水は、配管等を介して麻酔用水槽19に供給される。麻酔用炭酸水は、可能であれば、ポンプ11の与圧、又は麻酔用炭酸水製造手段18において原水中に溶解しなかった炭酸ガス及び酸素の圧力で麻酔用水槽19に供給してもよいが、更に加圧が必要ならば、麻酔用炭酸水製造手段18と麻酔用水槽19との間に、麻酔用炭酸水を麻酔用水槽19に供給するためのポンプを設けてもよい。
麻酔用水槽19の容量は、麻酔処理の対象となる魚の大きさや数に応じて適宜決定される。また、麻酔用水槽19の材質及び形状については特に制限はないが、上部に開口を有していると、麻酔対象となる魚の出し入れが容易であり、汚染された麻酔用炭酸水をオーバーフローさせて開口部から排出することができるため好ましい。なお、オーバーフローした麻酔用炭酸水を排出するためのオーバーフロー管を麻酔用水槽19の上部側面に設置すると、オーバーフローした麻酔用炭酸水により濡らされた床で作業者が転倒する危険を低減できるため好ましい。
【0039】
次に図2(A)を参照して、第1の流量制御部17及び第2の流量制御部17aについて説明する。なお、ここでは第1の流量制御部17についてのみ説明し、同様の構成要素よりなる第2の流量制御部17aについては説明を省略する。
第1の流量制御部17は、炭酸ガスの単位時間あたりの供給速度を目視でモニタするための流量計24及び流量調整バルブ25を含んで構成される。
流量計24としては、マスフローメータ、面積式流量計等の任意の流量計を用いることができる。また、流量調整バルブ25としては、手動によりバルブ開度を連続的に変化させることができるニードルバルブ等を用いることができる。
【0040】
対象となる魚に対する麻酔効果を有する濃度の溶存炭酸ガス及び魚が生存するために必要な濃度の溶存酸素を有する麻酔用炭酸水を得るために好適な炭酸ガス及び酸素の供給量を、対象となる魚の種類及び数、水温、溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度の種々の麻酔処理条件に応じて予め決定しておけば、流量調整バルブ25の開度を調整することにより、個々の麻酔処理条件に応じて好適な溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度を有する麻酔用炭酸水を得ることができる。第1の流量調制御部17は、麻酔処理条件が変化する度に手動で流量調整バルブ25の開度を調整する必要があるが、構成が単純で低コストであるという利点を有している。
【0041】
図2(B)は、第1の変形例に係る第1の流量制御部17bを示す。第1の流量制御部17bは、流量計24、電磁弁26及び電磁弁制御部27を含んで構成される。電磁弁制御部27には、温度センサ20、炭酸ガス濃度センサ21及び酸素濃度センサ22が接続されているが、これらのいずれか1及び複数の測定値によって電磁弁26を制御し麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度の制御を行う。なお、このような制御を行わない場合、あるいは麻酔用炭酸水の温度、溶存炭酸ガス濃度、及び溶存酸素濃度が明確である場合には、温度センサ20、溶存炭酸ガス濃度センサ21、及び溶存酸素濃度センサ22のいずれか1又は複数を省略してもよい。
炭酸ガス流量に基づき電磁弁26の制御を行う場合には、流量計24として、測定値を目視によりモニタできることに加え、測定値を電気信号に変換して出力する機能を有するものが用いられる。
【0042】
電磁弁26としては、弁の開閉により炭酸ガスの流量を制御することができるピエゾ又はソレノイドアクチュエータを備えた電磁弁等を用いることができる。
電磁弁制御部27による電磁弁26の開閉制御は、キーボード等の入力手段を介して電磁弁制御部27に入力された設定値に基づいて行ってもよいが、温度センサ20、炭酸ガス濃度センサ21及び酸素濃度センサ22のいずれか1及び複数の測定値に基づいて行う場合には、麻酔用水槽内19の諸条件の変化に対応して自動的に炭酸ガスの供給速度を制御することができるため、作業者の負担を軽減しつつ麻酔の効果及び安全性を向上させることができる。
【0043】
あるいは、電磁弁制御部27に予め記憶させた複数の設定値から、原水又は麻酔用炭酸水の温度、麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度、麻酔対象となる魚の種類、一度に麻酔処理される魚の量、酸素の供給量(第2の流量制御部の場合は炭酸ガスの供給量)のいずれか1又は2以上に応じて選択された設定値に基づいて電磁弁26の制御を行ってもよく、この場合には、麻酔用水槽内の条件の変化に対応して最適な設定値を選択することにより麻酔の効果及び安全性を向上させることができる。
設定値の選択はキーボード等の入力手段を介して行ってもよく、温度センサ20、炭酸ガス濃度センサ21、酸素濃度センサ22、及び流量計24のいずれか1及び複数の測定値に基づいて行ってもよい。
【0044】
図2(C)は、第2の変形例に係る第1の流量制御部17cを示す。第1の流量制御部17cは、並列に接続された複数(図2(C)には一例として3つが接続された場合を示す)の流量計24及び各流量計24に接続された流量調整バルブ25、流路切替器28、流路切替器制御部29を含んで構成される。各流量調整バルブ25は、それぞれ異なる流量に設定されており、原水又は麻酔用炭酸水の温度、麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度、麻酔対象となる魚の種類、一度に麻酔処理される魚の量、酸素の供給量(第2の流量制御部の場合は炭酸ガスの供給量)のいずれか1又は2以上に応じて、それらの設定値のうち最適な値が設定された流路が流路切替器28によって選択される。
【0045】
流路切替器制御部29には、温度センサ20、炭酸ガス濃度センサ21、酸素濃度センサ22及び流量計24が接続されているが、これらのいずれか1及び複数の測定値によって流路切替器28を制御し麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度の制御を行う。このような制御を行わない場合、あるいは麻酔用炭酸水の温度、溶存炭酸ガス濃度、及び溶存酸素濃度が明確である場合には、温度センサ20、炭酸ガス濃度センサ21、及び酸素濃度センサ22のいずれか1又は複数を省略してもよい。また、流路切替器28が手動式のものである場合、流路切替器制御部29を省略してよい。
なお、流路切替器としては、例えば、並列に接続された複数組の流量計及び流量調整バルブのうち選択された1組のみに対して流路を開放することのできる、多方切替弁等を用いることができる。
【0046】
魚の麻酔装置10を使用した本発明の一実施の形態に係る魚の麻酔方法について次に説明する。
麻酔装置10を用いた魚の麻酔方法は、魚の養殖現場における、ワクチンの接種、噛み合い防止のためのトラフグ等の歯切り、陸送用の輸送車輌までの養殖魚の運搬等の局面において、主に、養殖魚のいる生け簀の近傍に停泊した船や筏の上、又は養殖現場付近の沿岸から陸送用の輸送車輌まで養殖魚を運搬する車輌上において実施される。
本方法により麻酔を行うことのできる魚種に特に制限はなく、コイ等の淡水魚、及びブリ、フグ、タイ、マグロ等の海水魚のいずれに対しても適用可能である。
【0047】
まず、原水に炭酸ガス供給源12から供給された炭酸ガス及び酸素供給源12aから供給された酸素を溶解させ、麻酔用炭酸水製造手段18で、対象となる魚に対する麻酔効果を有する濃度の溶存炭酸ガス及び魚が生存するために必要な濃度の溶存酸素を含む麻酔用炭酸水を製造し、次いでこの麻酔用炭酸水を麻酔用水槽19に供給しながら、その中に魚を入れる。
麻酔用炭酸水における溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度の最適値は、麻酔対象となる魚の種類、大きさ、成長段階等により異なるため、一義的に決定することは困難であるが、溶存酸素濃度が1.5mg/L以上飽和酸素濃度以下、pHが5〜7.5であれば、全ての魚種において十分な麻酔効果が得られ、かつ麻酔処理に起因する酸欠死を確実に防止できる。
麻酔用炭酸水中に魚を長時間放置すると、麻酔が深くなり呼吸が停止するため、斃死する危険性が高くなる。斃死の危険なしに麻酔用炭酸水中に魚を入れておくことのできる時間は、最長でも20分以内であるが、麻酔後すぐに麻酔用水槽から取り出されるのがより好ましい。
ただし、溶存酸素濃度及びpHの下限値付近の条件下で魚を麻酔開始から10分間以上麻酔用炭酸水中に放置すると斃死する危険性が高くなる。そのため、例えば、一度に多数の魚に対して麻酔処理を行う場合等のように長時間麻酔用炭酸水中に置かれる魚が生じるおそれがある場合には、麻酔用炭酸水における溶存酸素濃度が4mg/L以上飽和酸素濃度以下、pHが5.3〜6.5となるよう調整することにより、麻酔効果を損なうことなく魚が斃死する危険性を低減させることができ、より好ましい。
【0048】
このようにして麻酔用炭酸水製造手段18から供給される麻酔用炭酸水で満たされた麻酔用水槽内19に、生け簀から玉網等で捕獲された魚を浸積する。麻酔用炭酸水内の溶存炭酸ガス濃度は、魚の血中溶存炭酸ガス濃度よりも高いため、魚は炭酸ガスを排出できなくなり、数分後には麻酔状態になる。麻酔された魚は平衡を失い、横転し又は腹部を上にして浮上すると共に刺激に対して応答しなくなるため、麻酔状態になったことは目視により容易に確認することができる。麻酔された魚を、玉網等を用いて麻酔用水槽から取り出し、必要な処理を行った後、生け簀に戻すと、魚は炭酸ガスを再び体外に排出できるようになるため、覚醒する。
また、麻酔により魚が不動化される時間が長くなると呼吸の維持が困難になり斃死率が高まるため、処置が完了したら速やかに元の生け簀等に戻すのが好ましい。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1:炭酸海水による麻酔効果の確認)
水温20℃の海水200Lに、炭酸水素ナトリウム191g、濃塩酸190mL(ミリリットル)を溶解し理論濃度500ppmの炭酸海水を調製した。この炭酸海水にカンパチ(平均体重600g)を投入したところ、2分後には全てのカンパチが激しく暴れだし、4分後には全てが麻酔状態となった。麻酔されたカンパチを、水温20℃の海水中に戻すと、4〜10分で全てのカンパチが覚醒した。その後24時間観察を続けたが、カンパチの斃死は観察されなかった。この結果から、炭酸海水には魚の麻酔効果があり、安全性が高いことが確認された。
【0050】
(実施例2:炭酸海水の溶存炭酸ガス濃度及び麻酔時間と蘇生率の関係)
水温18℃の海水200Lを500L水槽に取り、エアストーンを介して、液化炭酸ガスボンベより炭酸ガス(流量20L/分)を噴射し、得られた炭酸海水の溶存酸素濃度及びpHを測定した。噴射時間と溶存酸素濃度及びpHの関係を図4に示す。
炭酸ガスを4分間噴射した炭酸海水(溶存酸素濃度5.1mg/L、pH5.5。以下「炭酸海水A」という)及び炭酸ガスを20分間噴射した炭酸海水(溶存酸素濃度1.5mg/L、pH5.0。以下「炭酸海水B」という)に、それぞれマダイ稚魚(平均体重30g)及びモジャコ(平均体重25g)を一定時間浸積後、水温18℃の海水に戻し、蘇生した個体数を全体の個体数で割り、蘇生率を求めた。
【0051】
炭酸海水Bに浸漬したマダイについては、浸積後10分以内に海水に戻すと全個体が正常に蘇生した。しかし、15分間浸漬後の蘇生率は60%に低下し、20分間浸漬すると、全個体が酸欠死した。それに対して、炭酸海水Aに浸漬したマダイは、20分間浸漬したものについても全個体が正常に蘇生した。
【0052】
一方、炭酸海水Bに浸漬したモジャコについては、浸漬時間5分間以内の蘇生率は100%であったが、10分間以上浸漬後の蘇生率は0%であった。それに対して、炭酸海水Aに浸漬したモジャコについては、10分間浸漬後の蘇生率は100%であった。しかし、浸漬時間を15分間にすると蘇生率は25%に低下し、20分間浸漬後は全個体が蘇生しなかった。
【0053】
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の魚の麻酔方法及び装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、第1の流量制御部及び第2の流量制御部はそれぞれ異なる構成要素よりなるものであってもよい。
また、図2(C)に示した第2の変形例に係る第1の流量制御部17cにおいて、図2(B)に示した第1の変形例に係る第1の流量制御部17bのように、流量調整バルブ25の代わりに、電磁弁及び電磁弁制御部を設けて、温度センサ20、炭酸ガス濃度センサ21及び酸素濃度センサ22のいずれか1及び複数の測定値によって電磁弁を制御し麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度の制御を行ってもよい。
また、例えば、麻酔用水槽内で魚の覚醒処理をも行うことができるようにするため、ポンプから麻酔用炭酸水製造手段を経由せずに直接原水を麻酔用水槽に供給するための切替弁及び給水管を更に有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係る魚の麻酔装置の概略図である。
【図2】(A)は第1の流量制御部を示す概略図、(B)は第1の流量制御部の第1の変形例を示す概略図、(C)は第1の流量制御部の第2の変形例を示す概略図である。
【図3】海水中への炭酸ガスの噴射時間と溶存酸素濃度及びpHの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
10:魚の麻酔装置、11:ポンプ、12:炭酸ガス供給源、12a:酸素供給源、13:液化炭酸ガスボンベ、13a:高圧酸素ボンベ、14、14a:減圧バルブ、15、15a:一次圧計、16、16a:二次圧計、17:第1の流量制御部、17a:第2の流量制御部、17b、17c:第1の流量制御部、18:麻酔用炭酸水製造手段、19:麻酔用水槽、20:温度センサ、21:炭酸ガス濃度センサ、22:酸素濃度センサ、23:開閉弁、24:流量計、25:流量制御バルブ、26:電磁弁、27:電磁弁制御部、28:流路切替器、29:流路切替器制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
淡水又は海水に炭酸ガスを溶解させ、対象となる魚に対する麻酔効果を有する濃度の溶存炭酸ガス及び前記魚が生存するために必要な濃度の溶存酸素を含む麻酔用炭酸水を予め製造する第1工程と、
前記麻酔用炭酸水を前記魚の麻酔を行う麻酔用水槽に供給しながら、前記麻酔用水槽中に前記魚を入れて該魚の麻酔を行う第2工程とを有することを特徴とする魚の麻酔方法。
【請求項2】
請求項1記載の魚の麻酔方法において、前記麻酔用炭酸水は、溶存酸素濃度が1.5mg/L以上飽和酸素濃度以下、pHが5〜7.5であることを特徴とする魚の麻酔方法。
【請求項3】
淡水又は海水からなる原水を汲み上げるポンプと、
炭酸ガスを第1の流量制御部を介して供給する炭酸ガス供給源と、
酸素を第2の流量制御部を介して供給する酸素供給源と、
前記ポンプによって供給される原水に、前記炭酸ガス供給源から送られる炭酸ガス及び前記酸素供給源から供給される酸素を溶解させて、対象となる魚に対する麻酔効果を有する濃度の溶存炭酸ガス及び前記魚が生存するために必要な濃度の溶存酸素を含む麻酔用炭酸水を製造する麻酔用炭酸水製造手段と、
前記麻酔用炭酸水製造手段から供給される前記麻酔用炭酸水で、前記対象となる魚の麻酔を行う麻酔用水槽とを有することを特徴とする魚の麻酔装置。
【請求項4】
請求項3記載の魚の麻酔装置において、前記麻酔用炭酸水製造手段において前記麻酔用炭酸水は連続的に製造されて、前記麻酔用水槽に供給されていることを特徴とする魚の麻酔装置。
【請求項5】
請求項3及び4のいずれか1項に記載の魚の麻酔装置において、前記原水又は前記麻酔用炭酸水の温度を測定する温度センサを有し、該温度センサの測定値によって、前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度を調整する前記第1の流量制御部及び溶存酸素濃度を調整する前記第2の流量制御部のいずれか一方又は双方を制御することを特徴とする魚の麻酔装置。
【請求項6】
請求項3及び4のいずれか1項に記載の魚の麻酔装置において、前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度センサを有し、該炭酸ガス濃度センサの測定値によって前記第1の流量制御部を制御し前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度を制御することを特徴とする魚の麻酔装置。
【請求項7】
請求項3、4及び6のいずれか1項に記載の魚の麻酔装置において、前記麻酔用炭酸水の溶存酸素濃度を測定する酸素濃度センサを有し、該酸素濃度センサの測定値によって前記第2の流量制御部を制御し前記麻酔用炭酸水の溶存酸素濃度を制御することを特徴とする魚の麻酔装置。
【請求項8】
請求項3及び4のいずれか1項に記載の魚の麻酔装置において、前記第1の流量制御部は、予め決められた複数の設定値を有し、前記原水又は前記麻酔用炭酸水の温度、前記魚の種類、前記魚の量、前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度、前記酸素の供給量のいずれか1又は2以上に応じて前記設定値が選択されることを特徴とする魚の麻酔装置。
【請求項9】
請求項3及び4のいずれか1項に記載の魚の麻酔装置において、前記第2の流量制御部は、予め決められた複数の設定値を有し、前記原水又は前記麻酔用炭酸水の温度、前記魚の種類、前記魚の量、前記麻酔用炭酸水の溶存炭酸ガス濃度及び溶存酸素濃度、前記炭酸ガスの供給量のいずれか1又は2以上に応じて前記設定値が選択されることを特徴とする魚の麻酔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−54559(P2008−54559A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234162(P2006−234162)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000251130)林兼産業株式会社 (16)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)
【Fターム(参考)】