説明

魚釣用スピニングリール

【課題】ロータ内の異物の滞留を防止すると共に、空気抵抗の影響を受けることなく釣糸放出操作を行うことができる軽量化が可能な魚釣用スピニングリールを提供すること。
【解決手段】ハンドル32を介してロータ60を回転し、スプール50に釣糸を巻回する魚釣用スピニングリール10であって、リール本体12は、ハンドル32を支える軸受36a,36bの前方に突出する前部80に、駆動機構24で駆動される中空駆動軸22を回転自在に支える支持部80aを形成し、ロータ60は、この前部80を受入れる凹部62を後方に向けて開口させ、この凹部62内に、中空駆動軸22に一体的に連結される駆動部68を配置し、この駆動部68の周囲と支持部80aとの間に配置したシール部材90により、リール本体12の前部80内を密封し、スプール50とロータ60との前壁部54,66に貫通孔55,65を形成した魚釣用スピニングリール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体に設けたハンドルの回転操作で釣糸案内部を有するロータを回転駆動し、スプールに釣糸を巻回する魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用スピニングリールでは、リール本体内の駆動機構を介して、ハンドルで回転駆動されるロータが、後方に向けて開口する凹部を有し、この凹部内の深部まで、リール本体の前部を受入れ、駆動機構を介して駆動される駆動軸に連結される。そして、ロータの後端面と略同一面となるフランジ部が、リール本体の周部に一体に形成され、このフランジ部がロータの開口端を閉じることにより、ロータの凹部内への海水や砂等の異物の浸入防止が図られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−24471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような魚釣用スピニングリールでは、リール本体が剛性構造のリールボディの側部開口をボディカバーで閉塞する構造を有しており、これらのリールボディとボディカバーとの双方に形成したフランジ部により、ロータの凹部の後方開口端を閉じ、ロータの凹部内に配置された軸受等の種々の部材に対する防水、防塵を行っている。
【0004】
このようにリールボディとボディカバーとのそれぞれ別個の部材から突出形成されるフランジ部により、ロータの凹部の後方開口端を閉じる場合には、これらのフランジ部の外周部とロータの後方開口端の周縁部との間に隙間が形成される。この隙間は、異物の進入を阻止するために極めて狭く形成されるため、一度、この隙間から水や塵埃等の異物が侵入すると、外部に排出するのが困難で、凹部内に滞留し易く、腐食誘発や機能部材の作動不良等の原因となる。
【0005】
このようなロータの内部からの異物の排除を目的として行う釣後あるいは定期的な内部洗浄の際には、スプールを外した後に、更に工具を用いてロータをリール本体から取外すといった面倒で時間の要する作業が必要となる。
【0006】
また、リール本体から外方に突出してロータの凹部の後方開口端を閉じるフランジ部は、その肉厚の分が重量を増加して魚釣用スピニングリールの釣糸放出操作性を低下させることに加え、釣竿と共に勢いよく振り下ろしながら釣糸放出操作を行う際、リール本体の後部側から前方側に向く空気抵抗を受け易く、飛距離を競う投げ専用リールにおいては、特にこの釣糸放出操作時の風の抵抗が微妙に釣糸放出操作性を低下させる要因となり、飛距離に悪影響を与えることになる。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、ロータ内の異物の滞留を防止すると共に、空気抵抗の影響を受けることなく釣糸放出操作を行うことができる軽量化が可能な魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の魚釣用スピニングリールは、リールボディの側部開口を蓋体で閉塞したリール本体と、このリール本体で回転自在に支えられる釣糸巻回用ハンドルと、このリール本体の前部に回転自在に支えられるロータとを備え、前記ハンドルの回転をリール本体内に収容した駆動機構を介してロータに伝達し、このロータに設けた釣糸案内部を介して、リール本体の前部から前方に突出するスプール軸上のスプールに釣糸を巻回する魚釣用スピニングリールであって、前記リール本体は、前記ハンドルを支えるハンドル装着部の前方に突出する前部に、前記駆動機構で駆動される駆動軸を回転自在に支える支持部を配置し、前記ロータは、前記支持部を受入れる凹部を後方に向けて開口させ、この凹部内に、前記駆動軸に一体的に連結される駆動部を配置し、この駆動部の周囲と前記支持部との間に配置した弾性材からなるシール部材により、リール本体の前部内を密封し、前記駆動部が配置されるロータの前壁部と、スプール軸に固定されるスプールの前壁部とに、それぞれ貫通孔を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このような魚釣用スピニングリールによると、ロータの後方に開口する凹部内に配置された駆動部が、リール本体内の駆動機構で駆動される駆動時に一体的に連結され、この駆動部の周囲と、リール本体の前部に配置されて駆動軸を回転自在に支える支持部との間に配置されたシール部材が、リール本体の前部内を密封することにより、リール本体内に異物が侵入する隙間がなくなり、リール本体の前部の防水および防塵が確実に図られる。これにより、このロータの凹部の後方開口端を閉塞するフランジ部をリール本体に設ける必要がなく、しかも、ロータおよびスプールのそれぞれの前壁部に貫通孔が形成されていることにより、ロータの後方開口端から凹部内に侵入した空気がこれらの貫通孔を介して外部に流出することができ、空気抵抗が小さくかつ軽量・小型化が可能な魚釣用スピニングリールが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1から図7は、本発明の好ましい実施形態による魚釣用スピニングリール10を概略的に示す。
【0011】
図1および図2に示すように、魚釣用スピニングリール10は、剛性構造のリールボディ12aの側部開口14aを蓋体12bで閉塞したリール本体12を備え、この蓋体12bの固定ネジ16を取外すことで、内部空間Sを外部に露出させることができる。また、リールボディ12aの後端側には、切欠き14bを形成し、この切欠き14bを後部キャップ18で閉じてあり、この後部キャップ18の固定ネジ20を取外すことにより、後端側でも内部空間Sを開閉することができる。このリール本体12は、リールボディ12aから上方に延出する脚部12cの端部に形成された竿取付部12dを介して図示しない釣竿に取り付けられる。
【0012】
リール本体12内には、通常のスピニングリールと同様に、後述するロータを駆動するための中空駆動軸22を回転駆動する駆動機構24およびこの中空駆動軸22内に挿通されたスプール軸26をこの軸方向に沿って一定のストロークで前後方向に往復動する公知のオシレーティング機構28が収容されており、このオシレーティング機構28の摺動子28aが止めネジ30でスプール軸26の後端部に固定されている。これらの駆動機構24およびオシレーティング機構28は、一端にハンドル32が連結されるハンドル軸34により、互いに同期して作動される。
【0013】
本実施形態のハンドル軸34は中空構造を有し、それぞれリールボディ12aと蓋体12bとに設けられた軸受36a,36bを介してリール本体12で回転自在に支持されている。このハンドル軸34には、後述する駆動歯車34aが一体に形成される。このハンドル軸34の両端部には、雌ネジを形成してあり、一方の端部に、ハンドル32に基端部を枢着ピン38で枢着されたネジ部材40の先端部が螺合することで装着される。したがって、ハンドル軸34は軸受36a,36bと共にハンドル装着部を形成する。
【0014】
このハンドル32を装着するためのネジ部材40は、スタンド部材42に挿通されており、ハンドル32を介してハンドル軸34内に締付けられると、スタンド部材42の内周側突条42aがハンドル軸34の端面に当接し、ネジ部材40の締付け力で、ハンドル32およびスタンド部材42をハンドル軸34に強固に固定する。スタンド部材42は、ハンドル32をリール本体12から離隔させ、後述するロータとの干渉を防止しつつ自由に回転可能とする。また、この内周側突条42aの外周側に配置した外周側突条42bは、リール本体12から突出する環状突起13aを僅かな間隙を介して囲み、リール本体12の内部空間S内に異物が侵入するのを防止する。
【0015】
このネジ部材40を緩め、スタンド部材42とハンドル32との間に間隙を形成すると、枢着ピン38を中心としてハンドル32を回転し、持運びあるいは保管に便利な折り畳み状態とすることができる。この折り畳み状態からハンドル32を介してネジ部材40をハンドル軸34内に締め込むとことで簡単に、釣糸巻取り状態に復帰させることができる。
【0016】
また、ハンドル軸34の反対側には、蓋体12bに形成した環状突起13bを囲む軸受キャップ44を取り付けてあり、異物の侵入が防止されている。この軸受キャップ44を取り外して、ハンドル32およびスタンド部材42を取付けることにより、ハンドル32をリール本体12の一側から他側に自由に付け換えることができる。いずれの場合も、釣糸巻回方向にネジ部材40を締め付けることにより、ハンドル32とハンドル軸34とが一体化され、釣糸巻取り状態とすることができる。
【0017】
リール本体12の内部空間S内では、ハンドル軸34と一体に形成された駆動歯車34aと共に駆動機構24を形成するピニオン22aが、ハンドル軸34と直交する方向に延設された中空駆動軸22の外周部に形成されており、このピニオン22aは駆動歯車34aと常時噛合した状態に配置されている。このピニオン22aを形成した中空駆動軸22は、ハンドル軸34の軸受36a,36bを配置したハンドル装着部から前方に突出する前部内で前方に延び、ハンドル軸34に近接した後端側を軸受46aを介してリール本体12で支えられ、前方部位を、リール本体12の前部内に配置した軸受46bを介して支えられ、前端側がこの前部から突出し、リール本体12に対して自由に回転することができる。この中空駆動軸22は、軸方向に貫通する内孔内に、先端部にスプール50を装着するスプール軸26を前後方向に摺動自在に案内する。
【0018】
このスプール軸26は、中空駆動軸22の先端側から突出する先端部に断面非円形部26aと、ネジ部26bとを順に形成してあり、この断面非円形部26aにストッパ48aを介して装着されたスプール50が、袋ナット状に形成した締付けネジ48bにより、スプール軸26の先端部に取外し可能に装着される。
【0019】
本実施形態では、ストッパ48aは断面非円形部26aに対応した挿通孔を有する板状に形成してあり、この断面非円形部26aの後端部に回り止めされた状態で係止され、後方すなわちリール本体12側への移動を阻止されている。そして、スプール50は、円筒状あるいはテーパ状の周面を有する胴部52の前後に、径方向外方に突出するフランジ部52a,52bを形成し、この胴部52の前端側を閉じる前壁部54の中央部から、後方の開口側に向けて、短軸部56が突出する。
【0020】
この短軸部56には、断面非円形部26aに対応する断面形状を有する挿通孔が軸方向に貫通しており、この断面非円形部26a上で回り止めされた状態でスプール軸26に装着され、締め付けネジ48bをネジ部26bに締付けることにより、ストッパ48aに締付けられ、固定される。
【0021】
また、短軸部56が配置される前壁部54には、短軸部56を囲んで、多数の軸方向貫通孔55を等間隔に形成してある(図3)。これらの貫通孔55は、スプール50を軽量化すると共に、魚釣り操作時の空気抵抗を小さくする構造に形成してあり、外方に開口する後端側には、釣糸が内部に入り込むのを防止するスカートあるいは内側フランジ部58が形成される。なお、胴部52に、周方向に沿って多数の凹溝を形成してもよく、この場合には、スプール50に巻き取った釣糸が移動して緩むのを防止することができる。
【0022】
このスプール50をスプール軸26に取付ける締付けネジ48bは、釣糸が引っ掛かるのを防止するために、前壁部54からの突出量をできる限り小さくし、また、その周部は可能な限り滑らかな外面で形成することが好ましい。
【0023】
スプール50に釣糸を巻回するロータ60は、後方に向けて凹部62を開口させた周壁部64有し、前壁部66に設けた筒状の駆動部68を介して中空駆動軸22に連結される。この駆動部68を囲む周壁部64には、後方開口端すなわちハンドル軸34側の径方向に対向した部位で、一対の腕部70,70が径方向外方に突設されている。これらの腕部70,70は、ロータ60の後方開口端から前方に向けてスプール軸26の軸方向に沿って先細状に延び、周壁部64との間に、スプール50の胴部52を受け入れる間隙を形成する。
【0024】
これらの腕部70,70の先端部に取付けられたベール72は、図1に示す釣糸巻取位置と図示しない釣糸放出位置との間を自在に反転することができる。このベール72の一方の端部は、釣糸案内部72aを装着した支持脚73を介して腕部70に取り付けられ、図2に一部を概略的に示す振り分けバネ機構74により、釣糸巻取位置と釣糸放出位置との一方に保持され、ハンドル32を釣糸巻回方向に反転後、ベール72を手動操作で釣糸巻取位置へ復帰させたり、図示しない反転復帰機構により、図1に示す釣糸巻取位置へ自動復帰される。。
【0025】
このロータ60の前壁部66には、駆動部68の周部に沿って軸方向貫通孔65が等間隔に形成してあり(図3)、この前壁部66の外周部には、例えば、スプール50の後方から内側に落込んだ釣糸のスプール軸への巻き込みを防止する薄肉構造の筒状のガードリング76が前方に突出する状態で螺合、接着等の手段で取り付け固定されている。また、駆動部68を囲む周壁部64は、前端側を前壁部66で閉じた円筒状部として形成してあり、軸方向の中間部位の屈曲部64aを挟んで、前方よりも後方側でより大きな角度で径方向外方に向けて拡径する。この周壁部64の後方開口端に隣接する部位には、この周壁部64を径方向に貫通する開口部63が形成されており、この開口部63は、周壁部64の後方開口端から屈曲部64aを超えて前壁部66側の位置まで、開口幅を狭めつつ軸方向に沿って延びる。
【0026】
なお、ガードリング76は、ロータ60およびスプール50のそれぞれの前壁部66,54に形成した貫通孔65,55を介する空気の流れを阻害しあるいは閉塞しないものであれば、適宜の形状に形成することが可能であり、その周部に、開口を設けても良い。また、ロータ60に一体化することも可能である。
【0027】
図4に最も良く示すように、本実施形態のロータ60は、4つの径方向開口部63が、周壁部64の後方開口端に隣接した部位で径方向に対向させて形成してあり、各腕部70にも周壁部64の径方向開口部63に対応した径方向開口部71が形成してある。この腕部70の径方向開口部71は、周壁部64の径方向開口部63と径方向に整合した位置に配置されており、後方に向けて開口する。したがって、腕部70に形成した径方向開口部71は、周壁部64の対応する径方向開口部63と連続した開口部を形成する。これにより、いずれの径方向開口部63,71も、内部に配置したリール本体12の前部80を外部に大きく露出し、この径方向開口部63,71を介して、外部から例えば蓋体12bの固定ネジ16を締付けあるは取外すことができる。
【0028】
一方、周壁部64の腕部70,70間に形成された2つの径方向開口部63の内の一方は、弧状の連結片67をその後端部に設けてあり、この周壁部64と一体形成される部位によって、ベール72および釣糸案内部72a等のアンバランス部材に対するバランス化を図り、ロータ60を滑らかに回転させることができる。リール本体12から突出する軸受キャップ44及びハンドル軸34に連結するスタンド部材42を、リール本体12の前部80にフランジ部が形成されていないので、従来のような形状的な制約が少なくなり、ロータ60の後端部の極近接する位置まで、ロータ60の凹部62内にリール本体12の前部80を挿入することが可能となり、魚釣用スピニングリール10の軸方向寸法を可級的に短くすることができる。
【0029】
このように形成されるロータ60の凹部62内に挿入されるリール本体12の前部80は、脚部12cから前方に向けて、上下方向の寸法が次第に減少する。なお、本明細書中で、リール本体12の前部80は、特に限定した場合を除き、ハンドル装着部すなわちハンドル軸34を支える軸受36a,36bを配した部位よりもロータ60側の前部に配置されるリールボディ12aおよび蓋体12bの部分を指す。したがって、これらの軸受36a,36bと上下方向にほぼ整合した位置に配置される脚部12c、ハンドル軸34、スタンド部材42および軸受キャップ44は、この前部80に含まれない。
【0030】
図2に示すように、このリール本体12の前部80内では、中空駆動軸22のピニオン22aよりも前方部位が、断面非円形の外面形状を有してロータ60の駆動部68を回り止め嵌合する作動部22bとして形成してあり、この作動部22bの後端部に、前側軸受46bであるボール軸受が装着される。
【0031】
更に、図5および図6に示すように、この筒状の前部80内では、軸受46bの前方にスペーサ82を介して一方向クラッチ84を装着し、押え板86とリテーナ88との間に介挿したシール部材90をリールボディ12aの先端面に固定する止めネジ92により、前方に抜出るのを防止している。これらの軸受46bおよび一方向クラッチ84は、リールボディ12aの内面側に形成された段部で、外周側後端部を係止し、後方への移動を阻止しされる。したがって、前部80の先端部すなわち軸受46bおよび一方向クラッチ84を収容する部位は、前部80内で、中空駆動軸22を軸方向移動を阻止しつつ回転自在に支える支持部80aを形成する。
【0032】
なお、この前部80に配置された一方向クラッチ84は、リール本体の後端部に配置した操作レバーL(図1参照)を切換操作することにより、釣糸繰り出し方向への中空駆動軸22、つまりロータ60の逆回転を阻止する逆転防止位置と、正回転および逆回転を許容する規制解除位置とに自由に切換えることができる。
【0033】
図5および図6に示すように、シール部材90は、環状のリテーナ88で押圧される環状の基部90aの内周側から前方かつ半径方向内方に向けて傾斜した状態に延びるリップ部90bを有する環状の板状に形成されている。このリップ部90bは、先端すなわち内周側に向けて肉厚が次第に減少し、内周縁部は丸められている。これにより、リップ部90bがどの位置にあっても、相手方のロータ60の駆動部68の外周面に損傷を与えることなくわずかに内周が拡開変形して弾力的にシール係合する。これにより、前部80の内部が密封される。
【0034】
図5に示すように、このシール部材90が駆動部68の周囲すなわち外周面に摺接係合する駆動部68の外径68aは、外部の圧力で内方に湾曲してシール効果が低下するのを防止するため、駆動部68の前方側外径68bより段部68cを介して小径に形成されている。また、このシール部材90は駆動部68の外周面との間に好適なシール効果を形成するものであれば適宜材料の弾性材で形成することができるが、ゴム製の材料で形成することが好ましい。いずれの場合も、シール部材90は、径方向開口部63よりも前壁部66側に配置し、スプール50が前方に移動した場合であっても、径方向開口部63を介して外部に露出させないことが好ましい。
【0035】
図7は、リール本体12からスプール50およびロータ60を分離した状態を示す。
【0036】
組立てる場合は、図7の(C)に示すリール本体12の前部80に設けた支持部80aを、(B)に示すロータ60の後方に開口する凹部62内に挿入する。そして、支持部80aから突出する中空駆動軸22の作動部22bに、ロータ60の凹部62内に突出する駆動部68を装着し、この駆動部68の外周にシール部材90のリップ部90をシール係合させ、締付けナット94(図2参照)を作動部22bの先端に形成したネジ部(図示せず)に螺合する。この締付けナット94を締め込むことにより、駆動部68の後端面でスペーサ82の先端面を押圧させ、ロータ60と中空駆動軸22とを一体的に結合する。ロータ60を中空駆動軸22の作動部22bに固定した後、ガードリング76を前壁部66の外周部に螺合等により装着する。
【0037】
この後、ストッパ48aをスプール軸26の断面非円形部に装着し、(A)に示すスプール50を、後端側開口部から、ロータ60のガードリング76および周壁部64を受入れつつ、周壁部64と腕部70との間の間隙内に胴部52を挿入し、短軸部56をストッパ48aに当接させ、ネジ部26bに締付けネジ48bを締付け、このスプールをスプール軸26に固定することで、魚釣用スピニングリール10の組立てが完了する。
【0038】
この魚釣用スピニングリール10によると、ロータ60の後方に開口する凹部62内に配置された駆動部68が、リール本体12内の駆動機構24で駆動される中空駆動軸22に一体的に連結され、この駆動部68の周囲と、中空駆動軸22を回転自在に支える支持部を収容した前部80の支持部80aとの間に配置されたシール部材90が、リール本体12の前部80内を密封することにより、異物の侵入する隙間がなくなり、リール本体12の前部80の防水および防塵が確実に図られる。また、このシール部材90は、周壁部64で囲まれていることにより、スプール50が最も前方に移動した場合であっても、確実に保護される。
【0039】
これにより、このロータ60の凹部62の後方開口端を閉塞するための従来のフランジ部をリール本体12に設ける必要がなく、しかも、ロータ60およびスプール50のそれぞれの前壁部66,54に貫通孔65,55が形成されていることにより、ロータ60の後方開口端から凹部62内に侵入した空気がこれらの貫通孔65,55を介して外部に流出することができ、空気抵抗が小さくかつ軽量・小型化が可能な魚釣用スピニングリール10が提供される。
【0040】
特に、釣竿と共に勢いよく振り下ろしながら釣糸放出操作を行う飛距離を競う投げ専用リールにおいては、リール本体の後部側から前方側に向く空気抵抗を受け易く、特にこの釣糸放出操作時の風の抵抗が微妙に釣糸放出操作性を低下させる要因となっていたものであるが、上述のようなリール本体12の前部80のフランジレス構造に加え、ロータ60およびスプールの貫通孔65,55による空気抵抗の減少は、釣糸放出操作性を向上させることを可能とし、投げ専用リールに極めて好適に用いることができる。
【0041】
前記リール本体12の前部80のフランジレス構造に加えて、更に、ロータ60の周壁部64が後方開口端側で拡径していることにより、リール本体12の前部80をハンドル軸34に近接する位置まで凹部62内に配置した場合であっても、リール本体12の側部に突設する、例えば蓋体12bに取付けられる軸受キャップ44の外周部がロータ60と干渉することがなく、したがって、軸方向寸法を短く形成することができる。また、ロータ60の周壁部64および腕部70に径方向開口部63,71が形成され、更に、前壁部66には貫通孔65が形成されていることにより、ロータ60が軽量化され、小さな力でも効率よく回転することができる。また、スプール50の前壁部54に形成した貫通孔55も軽量化を促進する。
【0042】
更に、ロータ60の凹部62内に浸入した海水、砂、塵埃等の異物は、外部から例えばシャワー等で洗浄し、径方向開口部63,71および貫通孔55,65を介して容易に洗い流すことができると共に、通気性も良くなり、内部に水分、異物等の滞留もなくなり、腐食の誘発や機能部材の作動不良を防止できる。
【0043】
図8および図9は、径方向開口部を省略した魚釣用スピニングリール10Aの実施形態を示す。この魚釣用スピニングリール10Aは、ロータ60に径方向開口部を形成してない点でのみ上述の実施形態と相違しており、したがって、上述の実施形態と同様な部位に同様な符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
この実施形態においても、ロータ60の駆動部68の周囲と、リール本体12の前部80に形成した支持部80aとの間に配置されたシール部材90が、リール本体12の前部80内を密封することにより、異物の侵入する隙間がなくなり、リール本体12の前部80の防水および防塵が確実に図られる。これにより、このロータ60の凹部62の後方開口端を閉塞するための従来のフランジ部をリール本体12に設ける必要がなく、リール本体12の前部80をフランジレス構造に形成し、魚釣用スピニングリールの軽量・小型化が可能となる。
【0045】
更に、リール本体12の前部80が上述のようにフランジレス構造に形成されると共に、ロータ60の前壁部66に貫通孔65が形成され、スプール50の前壁部にも貫通孔50が形成されることにより、例えば釣竿と共に勢いよく振り下ろしながら釣糸放出操作を行う際、リール本体12の後部側から前方側に向く空気抵抗を受ける場合であっても、ロータ60の後方開口端から凹部62内に侵入した空気がこれらの貫通孔65,55を介して外部に流出することができ、空気抵抗が小さくかつ軽量・小型化が可能となり、特に、ルアーの飛距離を競う投げ専用リールとして極めて優れた釣糸放出操作性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の好ましい実施形態による魚釣用スピニングリールの側面図。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図。
【図3】図1のIII−III線の方向から見た図。
【図4】図1の魚釣用スピニングリールのロータの斜視図。
【図5】図2の円IVで囲んだ部分の拡大図。
【図6】図1の魚釣用スピニングリールのリール本体の前部に配置したシール部材を示す断面図。
【図7】図1の魚釣用スピニングリールを分解した状態を示し、(A)はスプールの側面図、(B)はロータの側面図、(C)はリール本体の側面図。
【図8】変形例による魚釣用スピニングリールの図1と同様な図。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0047】
10…魚釣用スピニングリール、12…リール本体、12a…リールボディ、12b…蓋体、14a…側部開口、22…中空駆動軸、24…駆動機構、32…ハンドル、50…スプール、54,66…前壁部、55,65…貫通孔、60…ロータ、62…凹部、68…駆動部、72a…釣糸案内部、80…前部、80a…支持部、90…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールボディの側部開口を蓋体で閉塞したリール本体と、このリール本体で回転自在に支えられる釣糸巻回用ハンドルと、このリール本体の前部に回転自在に支えられるロータとを備え、前記ハンドルの回転をリール本体内に収容した駆動機構を介してロータに伝達し、このロータに設けた釣糸案内部を介して、リール本体の前部から前方に突出するスプール軸上のスプールに釣糸を巻回する魚釣用スピニングリールであって、
前記リール本体は、前記ハンドルを支えるハンドル装着部の前方に突出する前部に、前記駆動機構で駆動される駆動軸を回転自在に支える支持部を配置し、前記ロータは、前記前部を受入れる凹部を後方に向けて開口させ、この凹部内に、前記駆動軸に一体的に連結される駆動部を配置し、この駆動部の周囲と前記支持部との間に配置した弾性材からなるシール部材により、リール本体の前部内を密封し、前記駆動部が配置されるロータの前壁部と、スプール軸に固定されるスプールの前壁部とに、それぞれ貫通孔を形成したことを特徴とする魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−295372(P2008−295372A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145374(P2007−145374)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】