説明

魚釣用スピニングリール

【課題】 切換レバーが正逆転可能状態にあるときに、支持部材が釣糸放出位置にあることを規制することが可能な魚釣用スピニングリールを提供する。
【解決手段】 魚釣用スピニングリール10は、リール本体12に設けられたハンドル24の回転操作に連動して回転するロータ14のアーム部14bに釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに反転可能に支持された釣糸案内部14eを有するベール支持部材14cと、ロータの逆回転を防止する逆転防止状態とロータが正回転/逆回転可能な正逆転可能状態とに切換可能な切換レバー62とを備えている。ベール支持部材は、切換レバーが正逆転可能状態にあるときに釣糸巻取位置から釣糸放出位置に反転できないように規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルに連動して回転するロータに、釣糸案内部を有する支持部材を釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに反転自在に支持した魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用スピニングリールは、ロータの支持アームの前部に釣糸案内部を有する支持部材を反転可能に支持するとともに、この支持部材を釣糸巻取位置と釣糸放出位置に振り分けて付勢して保持する振り分け機構を備え、また、釣糸放出位置にある支持部材を釣糸巻取位置に自動復帰させる反転復帰機構や釣糸放出操作時のロータの不用意な回転による誤復帰やロータの破損、損傷を防止するために、ロータの釣糸巻き取り方向の回転を規制する回転規制機構を備えたものが例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2002−281873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
魚釣用スピニングリールには、一般的にロータの回転を逆転防止状態(ON)と正回転および逆回転可能な正逆転可能状態(OFF)との切換え可能な逆転防止機構及び切換レバーを備えており、魚釣操作(釣糸巻き取り操作)時には、通常、逆転防止機構はONの状態に設定される。
【0004】
釣糸を放出操作する前に、例えば釣人は竿先からの仕掛けの垂らし長さを調節するために、逆転防止機構を正逆転可能状態(切換レバーがOFFの位置)に切換えた後、ロータを正回転または逆回転させて適切な垂らし長さに調節する。
【0005】
釣糸が放出される連続的な作業の中で、釣人はうっかりしてロータの正逆回転可能状態(切換レバーがOFFの位置)でベールを起こして釣糸の放出操作を行ってしまうことがあり、釣糸の振り下ろし時の勢いやハンドル位置の影響等によりロータが勢い良く逆回転して釣糸を放出してロータやリール本体に非常に大きな力が作用して回転規制機構や反転復帰機構等にダメージを与えてしまい、リールの寿命を短くしてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、切換レバーが正逆転可能状態にあるときに、支持部材を釣糸放出位置に反転することを規制することが可能な魚釣用スピニングリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る魚釣用スピニングリールは、リール本体に設けられたハンドルの回転操作に連動して回転するロータのアーム部に釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに反転可能に支持された釣糸案内部を有する支持部材と、前記ロータが逆回転するのを防止する逆転防止状態と前記ロータが正回転および逆回転可能な正逆転可能状態とに切換え可能な切換レバーを有する逆転防止機構とを備えている。そして、前記逆転防止機構が逆転防止状態にあるときに、前記支持部材の釣糸巻取位置から釣糸放出位置への反転を許容し、前記逆転防止機構が正逆転可能状態にあるときに、前記支持部材の釣糸巻取位置から釣糸放出位置への反転が出来ないように、前記支持部材を規制する規制手段を備えていることを特徴とする。
また、魚釣用スピニングリールは、前記支持部材が釣糸放出位置にあるときに前記ロータが釣糸巻き取り方向に回転することを規制し、前記支持部材が釣糸巻取位置にあるときに前記ロータが正回転および逆回転することを許容する回転規制機構をさらに備え、前記規制手段は、前記リール本体に設けられた係合部と、前記係合部に係合して前記逆転防止機構の正逆転可能状態及び逆転防止状態の切換えによって移動する防止部材とを備え、前記逆転防止機構が前記正逆転可能状態にあるとき、または、前記逆転防止状態から前記正逆転可能状態に切換えられたときに、前記係合部に係合した前記防止部材で前記回転規制機構の作動を規制したことが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の魚釣用スピニングリールによれば、切換レバーが正逆転可能状態にあるときに、支持部材を釣糸放出位置に反転できないよう規制する構成としたので、釣人が釣糸放出モードでないことを直接手で支持部材やベールを触れて認識でき、逆転防止機構の正逆転可能状態時での誤った釣糸放出操作を未然に回避できると共に、ロータやリール本体に非常に大きな力を与えてしまうことを防止し、リールの長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール10の全体構成に主要部の構成を合わせた部分断面図を示す。
【0010】
魚釣用スピニングリール10は、例えば金属で剛性構造に形成されたリール本体12と、リール本体12の前方に回転可能に配されたロータ14と、ロータ14の回転運動と同期して前後動可能に配設されたスプール16とを有している。このリール本体12は、ロータ14やスプール16が配設された位置から延出された脚部12aの端部に形成された竿取付部12bを介して図示しない釣竿に取り付けられる。
【0011】
リール本体12内には、ハンドル軸22が回転可能に支持されており、その突出端部には、巻き取り操作されるハンドル24が取り付けられている。ハンドル軸22には、ロータ14を巻き取り駆動するための巻き取り駆動機構が係合されている。この巻き取り駆動機構は、ハンドル軸22に取り付けられ内歯が形成されたドライブギャ32と、このドライブギャ32に噛合し、ハンドル軸22と直交する方向に延出すると共に内部に軸方向に延出する空洞部が形成された筒状のピニオンギャ34とを備えている。ピニオンギャ34は、後述する支持部50に軸受34aを介して回転可能に支持されており、その空洞部には、ハンドル軸22と直交する方向に延出し、先端側にスプール16を取り付けたスプール軸36が軸方向に移動可能に挿通された状態で支持されている。
【0012】
また、ピニオンギャ34には、スプール軸36を前後動させるオシレーティング機構が係合されている。このオシレーティング機構は、スプール軸36と平行に延出された螺軸38と、この螺軸38の外周面に形成された螺旋溝38aに係合すると共に、スプール軸36の基端部にビス止めして取り付けられた係合子40とを有している。螺軸38の端部には、ピニオンギャ34と噛合する連動歯車42が取り付けられており、螺軸38が、ピニオンギャ34及び連動歯車42を介して回転駆動されることで、スプール軸36は螺旋溝38a内に案内される係合子40の係合ピン40aを介して前後動される。
【0013】
ピニオンギャ34はスプール16側に向けて延出されており、その先端部において、ナット44を介してロータ14が取り付けられている。また、ピニオンギャ34には、その中間部分に図2(A)および図3(A)に示す転がり式の一方向クラッチ(逆転防止機構)46が取り付けられている。
【0014】
図2(A)、図3(A)および図4には、リール本体12に配設され、ピニオンギャ34を支える支持部50を示す。この支持部50は、軸受34aの前方に、段部50aを有し、この段部50a内に転がり式一方向クラッチ46を収容し、支持している。この一方向クラッチ46は、ピニオンギャ34の作動部34bに回り止め嵌合された内輪部材52と、前部段部50a内に嵌合された外輪部材56との間に保持器58aで保持されたローラ状の複数の転がり部材58が配設されている。外輪部材56は回り止め部材60により、支持部50内で回り止めされる。
【0015】
転がり部材58は、内輪部材52の滑らかな円筒状面で形成された外周面と外輪部材56の内周面との間で、楔作用するクラッチ46の作動状態(図2(A)参照)と、自由に回転する非作動状態(図3(A)参照)とに移動される。すなわち、保持器58aは、転がり部材58を自由回転領域と回転規制領域との間で移動することができる。そして、この保持器58aからは、作動アーム58bが径方向外方に突出されている。この作動アーム58bには、リール本体12内を前後に延びる操作軸62aを介して、リール本体12の後端部に配置した切換レバー62(図1参照)が連結されている。
【0016】
このため、リール本体12の後端部に取り付けられている切換レバー(ストッパ)62を操作することで、操作軸62aを回動させて保持器58aを自由回転領域と回転規制領域との間で移動し、一方向クラッチ46を作動状態(ロータ14が正回転可能な逆転防止状態)(図2(A)参照)と、非作動状態(ロータ14が正回転および逆回転可能な正逆転可能状態)(図3(A)参照)とに切換えるように構成されている。この場合、切換レバー62を逆転防止状態(ON)に切換えることで、ハンドル24(ロータ14)の正転方向の回転(釣糸の巻き取り)を許容し逆転方向の回転(釣糸の放出)が防止され、切換レバー62を正逆転可能状態(OFF)に切換えることで、ハンドル24(ロータ14)の正回転および逆回転が可能となっている。
【0017】
ロータ14は、スプール16のスカート部16a内に位置する筒部(円筒部)14aと、一対のアーム部14ba,14bbを有している。各アーム部14ba,14bb(代表する場合は符号14bとする)の前端部には、第1および第2のベール支持部材14ca,14cb(代表する場合は符号14cとする)が釣糸巻取位置(図5(A)参照)と釣糸放出位置(図5(B)参照)との間で回動自在(反転自在)に支持されている。これらベール支持部材14ca,14cbの間には、釣糸放出状態にある釣糸をピックアップするベール14dが配設されている。この場合、ベール14dの一方の基端部がベール支持部材14caに取り付けられており、他方の基端部がベール支持部材14cbに一体的に設けられた釣糸案内部14eに取り付けられている。
【0018】
スプール16は、スカート部16aと前側フランジ16bとの間に釣糸が巻回される釣糸巻回胴部16cを備えており、スプール軸36に、ドラグノブ72を介して取り付けられている。
【0019】
上記した構成により、ハンドル24を正回転方向に巻き取り操作することで、ロータ14がドライブギャ32およびピニオンギャ34を介して回転駆動され、かつ、スプール16がピニオンギャ34およびオシレーティング機構を介して前後動され、釣糸は、釣糸案内部14eを介してスプール16の巻回胴部16cに均等に巻回される。
【0020】
そして、リール本体12及びロータ14には、ベール14dを釣糸放出位置に配置した際にロータ14が釣糸巻き取り方向に回転することを規制する、ベール14dの反転機構(回転規制機構)80が設けられている。以下、本実施の形態における反転機構80の構成を、図2、図3および図5を参照しながら説明する。
【0021】
図2(B)は図5(A)の2B−2B線に沿う断面図であり、図3(B)は図5(B)の3B−3B線に沿う断面図である。図5(A)および図5(B)は、アーム部14baの外カバー14f(図2(A)および図3(A)参照)を取り外して、復帰用移動部材82を露出させた状態を示す。また、図5(A)は、ベール14dを釣糸巻取位置に回動させた状態を示す図であり、図5(B)は、ベール14dを釣糸放出位置に回動させた状態を示す図である。
【0022】
反転機構80は、ロータ14の一方のアーム部14ba内に配設され、上下方向に移動可能な復帰用移動部材82と、リール本体12の前部に設けられ、復帰用移動部材82の一部が当接可能な復帰用衝接部84とを備えている。この場合、復帰用衝接部84は、リール本体12の前端面の外周部分(フランジ部12c)に突出形成されたものであり、以下に述べる復帰用移動部材82のボス(当接部)82bが当接して、ロータ14の釣糸巻き取り方向への回転を規制する規制部84aを備えている。
【0023】
本実施形態における復帰用移動部材82は、アーム部14ba内に延出するようにロッド状に構成されており、その一端側には外側に向けてボス82aが屈曲形成され、他端側にはアーム部14baから円筒部14a内に入り込むようにしてボス(当接部)82bが屈曲形成されている。
【0024】
アーム部14baに回動可能に支持された第1のベール支持部材14caには、その回動支持部分の近傍に略円弧状の長孔14gが形成されており、この長孔14g内に復帰用移動部材82のボス82a(図2(A)および図3(A)参照)が配設されている。また、アーム部14baの下端部には、上下方向に延出する長孔14hが形成されており、この長孔14h内に復帰用移動部材82のボス82b(図2および図3参照)が配設されている。
【0025】
上記した構成において、ボス82a,82bが形成された復帰用移動部材82と、各長孔14g,14hとは、以下のような位置関係、及び作動するように構成されている。
図5(A)に示すように、ベール14dの支持部材14cが釣糸巻取位置にあるとき、ボス82aは長孔14gの下側端部14mと係合し、かつ、ボス82bは長孔14hの上方に位置している。このとき、図2(A)および図2(B)に示すように、ボス82bは、リール本体12に形成された復帰用衝接部84と干渉しない位置、すなわち、ロータ14が回転しても、ボス82bは、復帰用衝接部84の規制部84aと当接しないようになっている。
【0026】
そして、ベール14dを図5(B)に示すように、釣糸放出位置に向けて回動させると、長孔14gの上側端部14nがボス82aと係合し、ボス82a(復帰用移動部材82)を下方に向けて押し下げる。最終的に釣糸放出位置に回動されると、下端側のボス82bは、図5(B)に示すように、長孔14hの下方に位置するようになっている。このとき、ボス82bは、図3(A)および図3(B)に示すように、復帰用衝接部84と干渉する位置にあり、すなわち、ボス82aが釣糸放出位置にあるときにロータ14を正回転させる(ロータ14を釣糸巻き取り方向に回転させる)と、ボス82bが復帰用衝接部84の規制部84aに当接して、その回転が規制されるようになっている。
【0027】
図2、図3および図6に示すように、上記した構成のスピニングリール10において、リール本体12及びロータ14には、切換レバー62がOFFの位置で、ベール14dが釣糸巻取位置から釣糸放出位置に反転しないように移動することを規制する(ベール14dを釣糸巻取位置に留める)規制機構(規制手段)90が設けられている。
【0028】
規制機構90は、リール本体12のフランジ部12cに設けられ復帰用衝接部84よりも内側(スプール軸36に近接する側)に配設された複数の凸部(係合部)92と、切換レバー62がOFFのときに復帰用移動部材82のボス82bの位置が釣糸巻取位置から釣糸放出位置に移動することを防止する略円環状の防止カラー(防止部材)94と、この防止カラー94を凸部92に向かって付勢する付勢手段としてのコイルバネ96とを有する。
【0029】
防止カラー94は、操作軸62aに配設され、切換レバー62のON/OFF操作(切換)により所定の範囲内で回動される(図6参照)。この防止カラー94には、例えば所定の間隔に矩形状の複数の開口94aが形成されている。また、凸部92も、防止カラー94と同じ間隔に形成されている。すなわち、リール本体12には、例えば所定の間隔に複数の凸部92が形成されている。
【0030】
そして、防止カラー94は、リール本体12に設けられた複数の凸部92に載置されている。一方、凸部92には、斜面92aと、この斜面92aに連続する平面92bとが形成されている。そして、凸部92は、防止カラー94の矩形状の開口94aに対して出し入れ可能に配設されている。このため、防止カラー94が切換レバー62の切換によって回動するのにともなって、凸部92の斜面92aに沿って防止カラー94が昇降する(図6(B)参照)。特に、凸部92の斜面92aの向きが規定され、切換レバー62の操作範囲も規定されているので、防止カラー94は切換レバー62をONの位置に配置したときには、図6(B)に示す実線の位置に配設され、切換レバー62をOFFの位置に配置したときには、図6(B)に示す破線の位置に配設される。
【0031】
そして、コイルバネ96の一端(図2(B)および図3(B)中の上端)は、リール本体12に固定された抜け止め部材98に当接されている。一方、コイルバネ96の他端(下端)は、防止カラー94に当接されている。このため、防止カラー94は、コイルバネ96により図2(B)および図3(B)中の下側に向かって付勢されている。
【0032】
したがって、切換レバー62をONからOFFの状態に切換えたときには、コイルバネ96の付勢力に抗して防止カラー94が凸部92の斜面92aを図6(B)中の矢印の方向に上って平面92b上に載置される。一方、切換レバー62をOFFからONの状態に切換えたときには、コイルバネ96の付勢力によって防止カラー94が凸部92の斜面92aを図6(B)中の矢印の方向に滑り降りる。
【0033】
なお、第2のベール支持部材14cbを回動可能に支持するアーム部14bbの内部には、ベール支持部材14cを釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに振り分け付勢保持する振り分け機構(反転機構)100が配設されている。具体的には、この振り分け機構100は、支軸102を介してアーム部14bbに揺動可能に取り付けられた筒状の揺動部材104と、ベール支持部材14cbと揺動部材104とを接続し且つ揺動部材104と協働してベール支持部材14cを2つの位置に振り分ける振り分け部材106と、振り分け部材106と揺動部材104との間に介挿された圧縮コイルバネ108とを備えている。
【0034】
ベール支持部材14cbは、アーム部14bbの内部でピン110aによって回動可能に支持された略半円環状の取付部110を有している。この取付部110は、アーム部14bbの円弧状の内面とピン110aの外周面との間に形成される円弧空間110bによって案内支持されるようになっている。
【0035】
また、振り分け部材106は、ピン110aの中心から偏心した位置で取付部110に回動可能に係合接続される係合部106bを有する接続端部106aと、揺動部材104の筒状部内に挿入される軸部106cとを有している。また、軸部106cの外周には圧縮コイルバネ108が巻装されており、圧縮コイルバネ108の一端側は、揺動部材104内に挿入されて揺動部材104の底部で受けられているとともに、圧縮コイルバネ108の他端側は、振り分け部材106のバネ受け面106dで受けられている。
【0036】
図7(A)は、第2のベール支持部材14cbが圧縮コイルバネ108の付勢力によって釣糸巻取位置に振り分け保持された状態を示している。この状態において、圧縮コイルバネ108は、ベール支持部材14cに対しこれを図7(A)中反時計回りに回転させる方向で付勢力を付与し、ベール支持部材14cbの取付部110の端部110cをアーム部14bbの突き当て部112に当て付かせている。この釣糸巻取位置から、手動でベール14dの第2のベール支持部材14cbを圧縮コイルバネ108の付勢力に抗して図7(A)中時計回り方向に回動させる(この時、ベール14dを介して第2のベール支持部材14cbと接続する第1のベール支持部材14caも図中時計回り方向に回動する)と、第2のベール支持部材14cbに係合接続された振り分け部材106は、第2のベール支持部材14cbと共に移動しながら、係合部106bを中心に第2のベール支持部材14cbに対して反時計回りに相対的に回動するとともに、揺動部材104内に受けられたその軸部106cによって揺動部材104を支軸102を中心に反時計回りに揺動させる。また、この時、振り分け部材106は、その軸部106cが揺動部材104内に入り込むことにより、揺動部材104との間に介挿された圧縮コイルバネ108を圧縮する。そして、振り分け機構100のデッドポイントを越える領域まで第2のベール支持部材14cbが時計回りに回動された時点で、圧縮コイルバネ108は、第2のベール支持部材14cbに対しこれを図中時計回りに回転させる方向(釣糸放出位置へ回動させる方向)で付勢力を付与するようになり、その後、第2のベール支持部材14cbは、圧縮された圧縮コイルバネ108の付勢力によって、釣糸放出位置に保持される。その状態が図7(B)に示されている。
【0037】
また、この図7(B)に示される釣糸放出位置から、手動で第2のベール支持部材14cbを圧縮コイルバネ108の付勢力に抗して図中反時計回り方向に回動させると、第2のベール支持部材14cbに係合接続された振り分け部材106は、第2のベール支持部材14cbと共に移動しながら、係合部106bを中心として第2のベール支持部材14cbに対して時計回りに相対的に回動するとともに、その軸部106cによって揺動部材104を支軸102を中心に時計回りに揺動させる。そして、振り分け機構100のデッドポイントを越える領域まで第2のベール支持部材14cbが反時計回りに回動された時点で、圧縮コイルバネ108は、第2のベール支持部材14cbに対しこれを図中反時計回りに回転させる方向(釣糸巻取位置へ回動させる方向)で付勢力を付与するようになり、その後、第2のベール支持部材14cb(および、ベール14dを介して第2のベール支持部材14cbと接続する第1のベール支持部材14ca)は、手動によらず、伸長する圧縮コイルバネ108の付勢力によって、釣糸巻取位置へと回動されて、この位置(図7(A)の位置)で保持される。
【0038】
以下、上述したような魚釣用スピニングリール10の作用について説明する。
通常、釣糸の放出(仕掛けの投擲)に際しては、切換レバー62をONの位置の逆転防止状態に配置し、第1および第2のベール支持部材14ca,14cb(ベール14d)を、釣糸巻取位置(図2(A)、図5(A)、図7(A)参照)から振り分け機構100によって釣糸放出位置(図5(B)、図7(B)参照)に反転操作して、釣糸を釣糸案内部14eから外した状態とし、釣竿を振り下ろすことで成される。
【0039】
このように、ベール14dを図5(A)に示す釣糸巻取位置から振り分け機構100によって図5(B)に示す釣糸放出位置に回動させると、復帰用移動部材82は、上端側のボス82aに当て付く長孔14gの上側端部14nによって押し下げられ、図5(B)に示す位置に移動される。これにより下端側のボス82bは、規制機構90の規制を受けることなく復帰用衝接部84の規制部84aに当接可能な位置に入り込む。
【0040】
次に、実釣時の釣糸放出前の作業の中で、切換レバー62をOFFの位置に配置したとき、防止カラー94がコイルバネ96の付勢力に抗して回動しながら、凸部92の平面92bの上側に載置される。すなわち、防止カラー94は切換レバー62がONの位置に対してスプール軸36の軸方向に沿って図3(A)中の上側に移動する。このとき、防止カラー94は凸部92の上側に載置された状態にあるので、切換レバー62(逆転防止機構)が正逆転可能状態時に、仮に、釣人がうっかりしてベール支持部材14ca,14cbを釣糸巻取位置から釣糸放出位置へ反転操作しようとしても、復帰用移動部材82のボス82bが防止カラー94によって、図3(A)および図3(B)中の下方に移動すること(釣糸巻取位置から釣糸放出位置への移動)が規制される。すなわち、釣糸巻取位置から釣糸放出位置にベール14dが回動する(ベール14dを起こす)ことが防止される。そうすると、釣人が直接手でベール14dを反転操作できないことにより、釣糸放出モードでないことを確実に認識できて、通常の逆転防止状態に切換操作する。これにより、釣竿の振り下ろし時の勢いやハンドル24の位置の影響等により、ロータ14が不意に勢い良く逆回転して、ロータ14やリール本体12の反転機構80、アーム部14b等に大きな力が加えられることが防止される。
【0041】
一方、復帰用移動部材82が釣糸巻取位置の状態で、切換レバー62をOFFからONの位置に切換えると、切換レバー62に連結された操作軸62aが回動する。そして、防止カラー94は、復帰用移動部材82のボス82bから離隔して図6(B)中に実線で示す位置に移動する。このとき、復帰用移動部材82のボス82bと防止カラー94とは離れた状態にあり、ボス82bはアーム部14bの下端部の長孔14hの範囲内を移動可能である。このため、復帰用移動部材82のボス82bは、図2(B)中の実線(釣糸巻取位置)および破線(釣糸放出位置)の間を移動可能である。すなわち、ベール支持部材14cが釣糸巻取位置(図5(A)参照)と釣糸放出位置(図5(B)参照)との間で回動自在である。
【0042】
切換レバー62がONの位置のとき、ロータ14は、転がり式の一方向クラッチ46によって逆転方向の回転が阻止されている。この状態でベール14dを釣糸放出位置に回動させる際には、正転方向にのみ回転可能となっているが、ロータ14を回転操作すると、下端側のボス82bが規制部84aに当接し、これにより、ロータ14は正転方向への回転も規制されてしまい、正転および逆転不能状態となる。
【0043】
すなわち、仕掛けを投擲する際には、転がり式一方向クラッチ46の逆回転防止作用、及び反転機構80の正回転防止作用によって、ロータ14が固定される。
【0044】
そして、仕掛け投擲後に、ベール14dを図5(A)に示す釣糸巻取位置に回動させると、図2(B)に実線で示すように、復帰用移動部材82の下端側のボス82bは、復帰用衝接部84と干渉しない位置に移動される。したがって、ロータ14は正転方向に自由に回転可能な状態となる。
【0045】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下のことが言える。
切換レバー62をONの位置に配置した状態のとき、復帰用移動部材82を釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに自在に変更することができる。または、ベール14dを回動させて、復帰用移動部材82を釣糸巻取位置と釣糸放出位置との間に移動させても、切換レバー62はONの位置を維持することができる。
【0046】
一方、切換レバー62をOFFの位置に配置した状態のとき、復帰用移動部材82は防止カラー94によって釣糸巻取位置にのみ規制を受けることなく配設され、釣糸放出位置に移動することが規制され支持部材14ca,14cbを釣糸放出位置へ反転操作できないように規制されている。
【0047】
したがって、切換レバー62がOFFの位置では、ベール14dの復帰用移動部材82を釣糸巻取位置から釣糸放出位置に反転させることができないので、釣人が切換レバー62の位置がキャストモードでないことを確実に認識でき、切換レバー62がOFFの位置での釣糸放出操作などの誤操作を未然に防止することができる。
【0048】
なお、この実施の形態では、スプール軸36を中心として同心状に1つのコイルバネ(大径のコイルバネ)96が配設されたものとして説明したが、複数のコイルバネ(小径のコイルバネ)が防止カラー94が配置された位置に適当な間隔をおいて配設されていることも好適である。また、防止カラー94を図2(B)および図3(B)中の下側に向かって付勢することができるのであれば、付勢手段はコイルバネ96に限らず、種々のバネや弾性体を用いることができる。
【0049】
また、この実施の形態では防止カラー96を環状であるものとして説明したが、環状ではなく、復帰用移動部材82のボス82bを押圧可能な範囲だけに形成されていることも好適である。
更に、防止カラー94の前後動移動方法は、カム係合に代わって、リール本体12との螺合方法で切換レバー62の回転を防止カラー94の前後動に変換しても良い。
【0050】
これまで、一実施形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、反転復帰機構80、逆転防止機構46、規制機構90、振り分け機構100等は、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成に主要部の構成を合わせた部分断面図。
【図2】(A)は一実施の形態に係る魚釣用スピニングリールの図1に示す断面図の拡大図であって復帰用移動部材を釣糸巻取位置に配置した図、(B)は図2(A)中の符号2Bで示す部分の拡大図。
【図3】(A)は一実施の形態に係る魚釣用スピニングリールの図1に示す断面図の拡大図であって復帰用移動部材を釣糸放出位置に配置した図、(B)は図3(A)中の符号3Bで示す部分の拡大図。
【図4】図2(A)および図3(A)中のIV−IV線に沿う概略的な断面図。
【図5】(A)は復帰用移動部材を釣糸巻取位置に配置した図、(B)は復帰用移動部材を釣糸放出位置に配置した図。
【図6】(A)は図2(A)および図3(A)中の6A−6A線に沿う概略的な断面図、(B)は図6(A)中の6B−6B線に沿う概略的な断面図。
【図7】(A)はアーム部の内部に設けられた振り分け機構の、釣糸巻取位置のときの断面図、(B)はアーム部の内部に設けられた振り分け機構の、釣糸放出位置の断面図。
【符号の説明】
【0052】
10…魚釣用スピニングリール、12…リール本体、12a…脚部、12b…竿取付部、14…ロータ、14a…筒部、14b…アーム部、14c…ベール支持部材、14d…ベール、14e…釣糸案内部、14f…外カバー、14g…長孔、14h…長孔、14m…下側端部、14n…上側端部、16…スプール、16a…スカート部、16b…前側フランジ、16c…釣糸巻回胴部、22…ハンドル軸、24…ハンドル、32…ドライブギャ、34…ピニオンギャ、34a…軸受、34a…作動部、36…スプール軸、38…螺軸、38a…螺旋溝、40…係合子、40a…係合ピン、42…連動歯車、44…ナット、46…一方向クラッチ、50…支持部、50a…前部段部、52…内輪部材、54…保護キャップ、56…外輪部材、58…転がり部材、58a…保持器、58b…作動アーム、60…回り止め部材、62…切換レバー、62a…操作軸、72…ドラグノブ、80…反転復帰機構、82…復帰用移動部材、82a…ボス、82b…ボス、84…復帰用衝接部、84a…規制部、90…規制機構、92…凸部(係合部)、92a…斜面、92b…平面、94…防止カラー(防止部材)、94a…開口、96…コイルバネ、98…抜け止め部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に設けられたハンドルの回転操作に連動して回転するロータのアーム部に釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに反転可能に支持された釣糸案内部を有する支持部材と、
前記ロータが逆回転するのを防止する逆転防止状態と前記ロータが正回転および逆回転可能な正逆転可能状態とに切換え可能な切換レバーを有する逆転防止機構と
を具備する魚釣用スピニングリールにおいて、
前記逆転防止機構が逆転防止状態にあるときに、前記支持部材の釣糸巻取位置から釣糸放出位置への反転を許容し、前記逆転防止機構が正逆転可能状態にあるときに、前記支持部材の釣糸巻取位置から釣糸放出位置への反転が出来ないように、前記支持部材を規制する規制手段を備えていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記支持部材が釣糸放出位置にあるときに前記ロータが釣糸巻き取り方向に回転することを規制し、前記支持部材が釣糸巻取位置にあるときに前記ロータが正回転および逆回転することを許容する回転規制機構をさらに具備し、
前記規制手段は、
前記リール本体に設けられた係合部と、
前記係合部に係合して前記逆転防止機構の正逆転可能状態及び逆転防止状態の切換えによって移動する防止部材と
を備え、
前記逆転防止機構が前記正逆転可能状態にあるとき、または、前記逆転防止状態から前記正逆転可能状態に切換えられたときに、前記係合部に係合した前記防止部材で前記回転規制機構の作動を規制したことを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−153497(P2009−153497A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338317(P2007−338317)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】