説明

魚釣用スピニングリール

【課題】反転用切換部材の脱落を防止しつつ、省スペース化および軽量化を図る。
【解決手段】ロータに設けられ、釣糸放出位置に反転させたベール支持部材2dに連動してリール本体1側に移動する移動部材と、リール本体1に設けられ、ロータ2の釣糸巻取方向の回転により移動部材に当接して、釣糸放出位置にあるベール支持部材2dを釣糸巻取位置に復帰させる反転用切換部材20と、ロータ2の内側においてリール本体1の前部に装着された円筒状のキャップ部材15とを備え、反転用切換部材20は、リール本体1に対するキャップ部材15の装着により、リール本体1に抜け止め固定されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な魚釣用スピニングリールは、リール本体に回転可能に支持されたロータに釣糸案内部を有するベール支持部材が設けられており、このベール支持部材が釣糸巻取位置から釣糸放出位置へ回転可能に支持された構成となっている。そして、ロータは、ハンドルを回転操作することで、リール本体内に収容された駆動機構を介して回転駆動されるようになっており、また、駆動機構によって往復動されるスプールに対して、釣糸が釣糸案内部を介して巻回されるようになっている。
【0003】
そして、釣糸放出時には、ベール支持部材を釣糸巻取位置から釣糸放出位置へ反転操作して釣糸を放出し、釣糸放出後には、ベール支持部材を元の釣糸巻取位置に返してハンドルを回転操作することにより釣糸案内部を介してスプールに釣糸が巻回されるようになっている。
【0004】
ところで、魚釣用スピニングリールに備わる機構として、ハンドルの回転操作により釣糸放出位置にされたベール支持部材を釣糸巻取位置に自動的に反転復帰させる反転復帰機構が知られている。
反転復帰機構は、ロータに設けられ、釣糸放出位置に反転させたベール支持部材に連動してリール本体側に移動する移動部材と、リール本体に設けられ、ロータの釣糸巻取方向の回転により移動部材に当接して、釣糸放出位置にあるベール支持部材を釣糸巻取位置に復帰させる反転用切換部材と、を備えて構成されたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
このうち、特許文献1の魚釣用スピニングリールは、反転用切換部材がリール本体のフランジ部においてリールボディと蓋部材との間に挟持されて固定される構造を有している。
また、特許文献2の魚釣用スピニングリールは、反転用切換部材がリール本体にねじによって固定される構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−299161号公報
【特許文献2】特開2003−274818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の魚釣用スピニングリールでは、リールボディと蓋部材との間に反転用切換部材に形成されたくびれ部を挟み込んでいるだけであるので、反転用切換部材の抜け方向の押さえが不十分であり、抜け落ちが生じるおそれがあった。
【0008】
また、特許文献2の魚釣用スピニングリールでは、ねじによる固定のためのスペースが必要であり、これによる重量増の改善を図りたいという要望があった。
【0009】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、反転用切換部材の脱落を防止しつつ、省スペース化および軽量化を図ることができる魚釣用スピニングリールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決する本発明の魚釣用スピニングリールは、リール本体と、前記リール本体に設けられ、ハンドルの巻取操作に連動回転するロータと、前記ロータのアーム部に設けられ、釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに反転自在に支持されたベール支持部材と、前記ロータに設けられ、釣糸放出位置に反転させた前記ベール支持部材に連動して前記リール本体側に移動する移動部材と、前記リール本体に設けられ、前記ロータの釣糸巻取方向の回転により前記移動部材に当接して、釣糸放出位置にある前記ベール支持部材を釣糸巻取位置に復帰させる反転用切換部材と、を備えた魚釣用スピニングリールであって、前記ロータの内側において前記リール本体の前部に装着された円筒状のキャップ部材を備え、前記反転用切換部材は、前記リール本体に対する前記キャップ部材の装着により、前記リール本体に抜け止め固定されていることを特徴とする。
【0011】
この魚釣用スピニングリールによれば、反転用切換部材は、リール本体に対するキャップ部材の装着により、リール本体に抜け止め固定されているので、リール本体の前部にキャップ部材を装着するだけで、リール本体に反転用切換部材を抜け止め固定することができる。
【0012】
また、本発明は、前記リール本体における前記反転用切換部材の取付部位には、係止受部およびボス部が設けられており、前記反転用切換部材には、前記係止受部に係止されるフック部と、前記ボス部に嵌合される嵌合部と、が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この魚釣用スピニングリールによれば、係止受部にフック部を係止するとともに、取付部位のボス部に嵌合部を嵌合することによって、取付部位に反転用切換部材を配置することができる。
【0014】
また、本発明は、前記キャップ部材が、当該キャップ部材の内方から前記反転用切換部材に向けて突出形成された突出部を備えており、前記突出部は、前記リール本体との間に前記反転用切換部材を抜け止め固定することを特徴とする。
【0015】
この魚釣用スピニングリールによれば、キャップ部材の内方から反転用切換部材に向けて突出形成された突出部を備えているので、キャップ部材の装着による反転用切換部材の抜け止め固定に加えて、突出部により、リール本体との間に反転用切換部材を抜け止め固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リール本体の前部にキャップ部材を装着するだけで、リール本体に反転用切換部材を抜け止め固定することができるので、反転用切換部材の脱落(抜け落ち)を好適に防止することができるとともに、別途、ねじ等の固定部材を必要としないので、省スペース化および軽量化を図ることができる。
また、反転用切換部材の装着でリール本体に反転用切換部材を固定することができるので、固定に係る組み付けが簡単であり、また、固定に際して工具等も必要がないので生産性が向上し、コストの低減に寄与する。
【0017】
また、取付部位に、係止受部およびボス部が設けられ、反転用切換部材に、フック部および嵌合部が設けられた構成では、係止受部にフック部を係止するとともに、取付部位のボス部に嵌合部を嵌合することによって、取付部位に反転用切換部材を配置することができるので、リール本体に反転用切換部材を仮組み付けすることができる。これにより、反転用切換部材の固定が行い易くなり、生産性が向上する。したがって、コストの低減を図ることができる。
また、取付部位の係止受部に対してフック部が係止され、ボス部に対して嵌合部が嵌合されるので、リール本体に対する反転用切換部材の固定強度が高まり、反転用切換部材の脱落をより一層好適に防止することができる。
【0018】
また、キャップ部材が、当該キャップ部材の内方から反転用切換部材に向けて突出形成された突出部を備えた構成では、キャップ部材の装着による反転用切換部材の抜け止め固定に加えて、突出部により、リール本体との間に反転用切換部材を抜け止め固定することができるので、反転用切換部材の固定強度が高まり、反転用切換部材の脱落をより一層好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す図である。
【図2】要部の拡大断面図である。
【図3】反転用切換部材の取付構造をキャップ部材の後側から見た拡大断面図である。
【図4】(a)は右側方の斜め下方から見たリール本体の斜視図、(b)は右側方から見たリール本体の部分側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて反転用切換部材の取付構造をキャップ部材の後側から見た拡大断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて反転用切換部材の取付構造をキャップ部材の後側から見た拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリールの実施形態について図面を参照しながら説明する。各実施形態において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の説明において、「前後」「上下」を言うときは、図1に示した方向を基準とし、「左右」を言うときは、図3に示した方向を基準とする。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示すように、魚釣用スピニングリールは、図示しない釣竿に装着するための脚部1Aが形成されたリール本体1と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ2と、このロータ2の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール3とを有している。
【0022】
リール本体1には、図示しない軸受を介してハンドル軸4が回転可能に支持されており、その図示しない突出端部には、巻取操作されるハンドル5が取り付けられている。ハンドル軸4には、図示しない軸筒が、回り止めされて固定されている。この軸筒には、ロータ2を巻取駆動するための内歯が形成されたドライブギヤ6が一体的に形成されている。このドライブギヤ6は、ハンドル軸4と直交する方向に延出するとともに内部に軸方向に延出する空洞部を有する駆動軸筒8のピニオンギヤ8aに噛合している。
【0023】
駆動軸筒8は、ピニオンギヤ8aの前側と後側において、軸受12a、12bを介してリール本体1に回転可能に支持されている。また、駆動軸筒8はスプール3側に向けて延出しており、その先端部にロータ2が図示しない締め付けナットを介して取り付けられている。
ピニオンギヤ8aの前側の軸受12aは、図2に示すように、後端がピニオンギヤ8aの前端、およびリール本体1の前端部中央に形成された凹所の支持部1aに突き当てられて保持されている。また、軸受12aは、他端が後記する転がり式一方向クラッチ10との間に介挿される抜け止め部材13によって軸方向で抜け止めされている。
一方、ピニオンギヤ8aの後側の軸受12bは、ピニオンギヤ8aの後端とリール本体1に形成された支持部1bとの間で挟持されることにより軸方向から固定されている。
【0024】
また、軸受12aの前方において駆動軸筒8には、一方向クラッチ10が取り付けられ(配置され)ている。一方向クラッチ10は、ハンドル5(ロータ2、図1参照)の釣糸繰出方向の逆回転を防止する公知の逆転防止機構(ストッパ)を構成している。
一方向クラッチ10は、公知のように、駆動軸筒8に対して回り止め嵌合された内輪10aと、内輪10aの外側に配された保持器10bと、保持器10bの外側に配された外輪10cとを有している。外輪10cの内周面には、保持器10bによって保持された図示しない複数の転動部材が設けられており、複数の転動部材の回転がフリーとなるフリー回転領域と、複数の転動部材の回転が阻止される楔領域とが形成されている。
一方向クラッチ10はリール本体1の下部に設けられた切換部材11に連動しており、切換部材11を回動操作することで、一方向クラッチ10が作動状態と非作動状態とに切り換えられるように構成されている。この場合、切換部材11を作動状態に切り換えることで、ハンドル5(ロータ2)の逆転方向の回転(釣糸放出方向の回転)が防止されるようになっている。
【0025】
駆動軸筒8の内部には、空洞部が形成されており、この空洞部には、ハンドル軸4と直交する方向に延出し、先端側にスプール3を取り付けたスプール軸9が、軸方向に移動可能に挿通されている。
【0026】
スプール軸9の後端部には、スプール軸9を前後動させるためのオシレーティング機構が設けられている。オシレーティング機構は、少なくとも、ドライブギヤ6の歯車6aに噛合する連動歯車6bに設けられた偏芯突部7aと、スプール軸9の後端部に取り付けられた摺動子7と、この摺動子7に設けられ、偏芯突部7aと係合する案内溝7bと、摺動子7と係合して摺動子7の往復動を案内する図示しないガイドと、を含んで構成されている。
【0027】
ロータ2は、図1に示すように、スプール3のスカート部3a内に位置する円筒部2aと、一対のアーム部2b,2cを具備している。各アーム部2b,2cの前端部には、ベール支持部材2d,2eが釣糸巻取位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されており、これらのベール支持部材2d,2e間には、放出状態にある釣糸をピックアップする図示しないベールが配設されている。なお、ベールの一方の基端部は、ベール支持部材2dに一体的に設けられた釣糸案内部2gに取り付けられている。
【0028】
スプール3は、スカート部3aと前側フランジ3bとの間に図示しない釣糸が巻回される釣糸巻回胴部3cを備えており、スプール軸9に図示しないドラグ機構を介して摩擦結合され、ノブ9aを回動操作することでスプール3のドラグ力が調節されるようになっている。
【0029】
このような構成によって、ハンドル5を巻取操作することで、ロータ2がドライブギヤ6およびピニオンギヤ8aを介して回転駆動され、かつスプール3がピニオンギヤ8aおよびオシレーティング機構を介して前後動され、図示しない釣糸は、釣糸案内部2gを介してスプール3の釣糸巻回胴部3cに均等に巻回される。
また、釣糸の放出(仕掛けの投擲)は、ベール支持部材2d、2e(ベール)を反転操作(回動操作)して、釣糸を釣糸案内部2gから外した状態にして、人差し指で釣糸を引っ掛け、図示しない釣竿を振り下ろすことで行われる。
【0030】
そして、ベール支持部材2d,2eは、アーム部2bに設けられた付勢機構30によって、釣糸巻取位置または釣糸放出位置に保持されようになっている。
付勢機構30は、図2に示すように、支軸31を介してアーム部2bに揺動可能に取り付けられた筒状の揺動部材32と、ベール支持部材2dと揺動部材32とを接続し、かつ揺動部材32と協働してベール支持部材2dを2つの位置に振り分ける振分部材33と、振分部材33と揺動部材32との間に介挿された振分付勢バネ34とを備えている。
【0031】
振分部材33は棒状を呈しており、前端33aが外側に屈曲してベール支持部材2dの回動支持部近傍に保持されている。振分部材33の後端33bは、後方へ向けて延設されており、ベール支持部材2dが釣糸巻取位置から釣糸放出位置に反転された際に、その後端33bが、移動部材を構成するキックレバー35に係合可能となっている。
振分付勢バネ34は、コイル状に構成されて振分部材33を囲繞するように配され、前端が揺動部材32の底部に保持され、前端が振分部材33に設けられたバネ止め突部33cによって抜け止めされたリング33dに保持されている。
【0032】
図2に示すように、ロータ2の円筒部2aのリール本体1側の基端部と、アーム部2bとの間の接続領域には、その後面側において円筒状の支持突起2fが形成されている。この支持突起2fには、ロータ2の図示しない軸心(スプール軸9)と略直交する面内においてキックレバー35が回動可能に支持されている。
キックレバー35は、その略中心位置が支持突起2fに対して回動可能に支持されており、図3に示すように、ねじ36で抜け止め保持されている。なお、キックレバー35は、カバー部材2h(図2参照)の装着によってカバー部材2hの内面で保持されるように構成してもよい。
【0033】
キックレバー35の上端部(一側部)には、アーム部2bの内部空間に位置するように、係合突部35aが突出形成されている。係合突部35aには、ベール支持部材2d(2e、以下同じ)が釣糸放出位置へ反転操作された際に、それに伴って回動する振分部材33の後端33bが係合するようになっている。
【0034】
また、キックレバー35の下端部(他側部)は、支持突起2fを中心としてキックレバー35が回動された際に、ロータ2の軸心側に向けて突出するようになっており、その突出端には、ブレーキ体37が設けられている。ブレーキ体37は、円板状で合成ゴム等の弾性体によって構成されており、キックレバー35の他側部に回転しないように取着されている。
このブレーキ体37は、図2に示すように、リール本体1の前部に装着された円筒状のキャップ部材15の後端外周面に接触して、ロータ2の不用意な回転に対して制動力を付与する機能を備えている。また、図3に破線で示すように、リール本体1に取り付けられた後記する反転用切換部材20に当接して、釣糸放出位置にあるベール支持部材2dを釣糸巻取位置に復帰させる機能を備えている。
なお、ブレーキ体37は、回転可能となるように支持してもよい。この場合、ブレーキ体37については、高圧力状態(ベールの自動反転復帰に影響を与えない程度)でキャップ部材15の後端外周面に接触するように構成することが好ましい。
【0035】
キックレバー35には、図3に示すように、支持突起2fとの間で、フリクションバネ35cが巻回されており、キックレバー35は、常時、ベール支持部材2d内(図3の二点鎖線で示す位置)に位置するように付勢されている。
ここで、図3の二点鎖線で示す位置にブレーキ体37が位置している場合は、ベール支持部材2dが釣糸巻取位置にあるときであり、図3の実線で示す位置にブレーキ体37が位置している場合は、ベール支持部材2dが反転操作されて釣糸放出位置にあるときである。キックレバー35は、アルミ合金のような金属、或いは樹脂等によって形成することが可能である。
【0036】
図1に示すように、リール本体1の前部には、キャップ部材15が装着されている。キャップ部材15は、図2に示すように、ロータ2の円筒部2aの内壁2a1に沿って後方へ延在し、かつ内壁2a1に対して所定間隔を置いて円筒部2aの内側に配されるものである。具体的には、図2に示すように、ロータ2の円筒部2aの内壁2a1と一方向クラッチ10との間に円周壁部15aが配置されて、一方向クラッチ10を包囲するカバー体として構成されている。
【0037】
このキャップ部材15は、キャップ部材15の前側からリール本体1に向けて挿入される図示しないねじの締結によって、リール本体1の前部に固定されるようになっており、固定によって、リール本体1との間に反転用切換部材20を抜け止め固定するようになっている(図4(b)参照)。
キャップ部材15の後端下部には、図4(a)に示すように、キャップ部材15の開口縁から切り欠かれた切欠部15bが形成されている。切欠部15bの形状は、図3にも示すように、リール本体1の前部の下部に形成された張出し部16の外形状に対応したものとなっており、かつ、この張出し部16の周りに取り付けられる反転用切換部材20の外形状にも対応したものとなっている。具体的には、切欠部15bは、図4(a)に示すように、反転用切換部材20に対応する部分に切換部材用切欠部15b1を有しており、キャップ部材15は、図4(b)に示すように、この切換部材用切欠部15b1が反転用切換部材20の右側(円環部22近傍)に当接して、また、図3に示すように、切欠部15bの端部15eが反転用切換部材20の左側(フック部21近傍)に当接して、リール本体1(張出し部16)との間に反転用切換部材20が保持されて固定されるようになっている。
なお、張出し部16内には、図2に示すように、切換部材11に連動して回動するロッド11aが支持されている。ロッド11aの前端部は、一方向クラッチ10に接続されている。
【0038】
なお、キャップ部材15は、一方向クラッチ10をシールする機能、いわゆる各種部品の防水体として機能を兼ね備えていてもよい。具体的には、図2に示すように、キャップ部材15は、その前端側が駆動軸である駆動軸筒8に向けて径方向内側に屈曲された底部15dを具備しており、その底部15dの中央に開口が形成され、この開口に磁気シール機構19が配設されている。
磁気シール機構19は、駆動軸である駆動軸筒8とともに一体回転する回転部との間に設けられていればよく、駆動軸筒8が挿通される一方向クラッチ10の内輪10aの開口部分にユニット体として設置されている。磁気シール機構19は、磁性流体(磁性膜)を形成して、一方向クラッチ10をシールしている。なお、径方向に当接するゴムリング(パッキン)等によって構成することも可能である。
なお、キャップ部材15については、軽量化が図れるように、樹脂等によって形成することが可能である。
また、キャップ部材15は、完全な円筒状の他、一部に平面部や凹凸部を有していてもよく、正多角形のような、実質的に略円筒状であればよい。
【0039】
反転用切換部材20は、張出し部16に固定された状態で、図3に示すように、反転用切換部材20の一部(後記する第1の下面21d、第2の下面21eを含む反転用切換部材20の下部)が、軸方向の後面視でキャップ部材15の外周面よりも下側(径方向外側)に膨出配置されるようになっている。
なお、張出し部16の下部16bの下面は、キャップ部材15の外周面と面一な円弧面となっている。これにより、この周囲に配置されるロータ2の回転に、張出し部16の下部16bが妨げとならず、ロータ2の好適な回転が確保されている。
【0040】
キャップ部材15の切欠部15bの縁部には、図3、図4(a)(b)に示すように、略平板状の突出部15cが一体的に形成されている。突出部15cは、後記するように反転用切換部材20を抜け止め固定する固定部材として機能するようになっている。
突出部15cは、キャップ部材15の内方(左方)へ向けて略水平に突出しており、リール本体1の前部にキャップ部材15を取り付けた状態で、図3、図4(b)に示すように、先端部が張出し部16に設けられたボス部16cの側方に位置し、右側面16c1に当接するようになっている。なお、突出部15cは、図4(b)に示すように、前後方向の長さが、ボス部16cに装着される反転用切換部材20の後記する円環部22(嵌合部)の外径よりも大きく形成されており、前後方向に亘ってボス部16cと円環部22とに当接するようになっている。
【0041】
なお、切換部材用切欠部15b1は、その切欠縁が若干の隙間をもって反転用切換部材20に対峙するように構成してもよく、または、その切欠縁が反転用切換部材20に密着して当接するように構成してもよい。前者の場合には、部品公差、組付公差を吸収することができる。また、後者の場合には、リジットな組み付けを実現することができ、反転用切換部材20の固定強度を高めることができる。
【0042】
次に、図3を参照して、張出し部16の周りの構造について説明する。
張出し部16には、反転用切換部材20が取り付けられる他、リール本体1の左側方から装着される本体カバー1B(図1参照)の取付ボス17bが固定される。取付ボス17bは、下方へ向けて延設された鍔部17cを有しており、張出し部16の左側面16aに取付ボス17bがねじ18で固定された状態で、左側面16aと鍔部17cとの間に隙間が形成されるようになっている。この隙間には、後記するように反転用切換部材20を構成するフック部21を挿入して装着することが可能である。なお、本体カバー1B(図1参照)には、他の取付ボス17a(図3参照)が形成されており、取付ボス17aは、キャップ部材15の内側においてリール本体1の図示しない取付部にねじによって取り付けられるようになっている。
【0043】
張出し部16の左側部の下端部には、左側方へ向けて突出する突出部16b1が形成されている。この突出部16b1は、前記した隙間に挿入される反転用切換部材20のフック部21の引掛部として機能するようになっている。ここで、「前記した隙間および突出部16b1」は、特許請求の範囲における「係止受部」に相当する。
張出し部16の下部16bは、突出部16b1に連続して下方へ膨出しており、下面が円弧面状に(下面が略キャップ部材15の外周面に連続する凹凸のない円弧面に)形成されている。
張出し部16の右側部には、右側方へ向けて突出するボス部16cが形成されている。ボス部16cには、反転用切換部材20の後記する円環部22が外嵌されるようになっている。また、リール本体1の前部にキャップ部材15が取り付けられることで、ボス部16cの右側面16c1には、キャップ部材15の突出部15cの先端部が当接されるようになっている。
【0044】
このような張出し部16に取り付けられる反転用切換部材20は、釣糸放出位置にあるベール支持部材2dを釣糸巻取位置に復帰させる部材であり、ロータ2の軸心側に向けて突出されたキックレバー35のブレーキ体37が当接する位置に設けられている。つまり、反転用切換部材20は、リール本体1の前部の下部において、ロータ2の釣糸巻取方向の回転によるブレーキ体37の回動軌跡上に配置されている。
【0045】
反転用切換部材20は、合成樹脂製であり、下方へ向けて膨出する略円弧状を呈している。反転用切換部材20の左端部にはフック部21が形成され、右端部には円環部22が形成されている。
フック部21の上部には、上方へ向けて突出する挿入部21aが形成されている。この挿入部21aは、張出し部16の左側面16aと取付ボス17bの鍔部17cとの間に形成される隙間に挿入可能である。挿入部21aの下部には、左方へ向けてアンダーカットされた凹部21bが形成されている。この凹部21bは、張出し部16の突出部16b1に掛止可能(係止可能)となっている。
反転用切換部材20の上面には、凹部21bに連続して湾曲凹設された凹設部21cが形成されている。凹設部21cは、張出し部16の下部16bの下面に対応した円弧状の上面を有しており、下部16bを下側から包むようにして下部16bの下面に装着されるようになっている。
【0046】
円環部22は、軸方向を左右水平方向に向けて立設されており、張出し部16のボス部16cに外嵌される。円環部22の右側面は、ボス部16cに円環部22が外嵌された状態で、ボス部16cの右側面16c1と略面一とされている。
【0047】
反転用切換部材20の下部には、緩やかに傾斜しつつ下方へ膨出する第1の下面21dと、この第1の下面21dに連続して膨出形成され、キャップ部材15の外周面と同心円状の円弧面とされた第2の下面21eとが形成されている。ここで、キックレバー35のブレーキ体37は、図3に示した矢印方向に回動するようになっており、その回動途中で反転用切換部材20の第1の下面21dに当接して、アーム部2b側に押し戻されるようになっている。なお、第1の下面21dに連続している第2の下面21eによって、キックレバー35がアーム部2b側に確実に戻されるようになっている。
【0048】
このような反転用切換部材20は、例えば次のようにして張出し部16に取り付けられる。
まず、リール本体1の前部からキャップ部材15が外された状態で、反転用切換部材20のフック部21を張出し部16の左側面16aに近付け、張出し部16の左側面16aと取付ボス17bの鍔部17cとの間に形成される隙間に、フック部21の挿入部21aを挿入する。
その後、前記隙間に挿入した挿入部21aを中心として、反転用切換部材20を張出し部16の下面に被せる方向に回動させる。このとき、反転用切換部材20の凹部21bが張出し部16の突出部16b1に引っ掛かるように当接して、反転用切換部材20の回動がスムーズに行われる。
【0049】
その後、反転用切換部材20の円環部22が張出し部16のボス部16cに近付いたら、反転用切換部材20の弾性を利用して反転用切換部材20の円環部22をボス部16cに外嵌する。これにより、反転用切換部材20を張出し部16に取り付けることができる。
【0050】
張出し部16に反転用切換部材20が取り付けられると、反転用切換部材20の凹設部21cが張出し部16の下部16bを包むようにして当接する。
また、張出し部16の右側下面とこれに対向する反転用切換部材20の上面との間には、若干の間隙Sが形成されるようになっている。
この間隙Sは、取付時に、反転用切換部材20の弾性を利用して反転用切換部材20の円環部22をボス部16cに外嵌する際の、反転用切換部材20の弾性変形代として機能する。また、取付後には、この間隙Sを反転用切換部材20の弾性変形代として、反転用切換部材20に弾力性を付与することができる。これにより、反転用切換部材20に当接するブレーキ体37を介してアーム部2b側にキックレバー35を好適に押し戻すことができる。
なお、キックレバー35のブレーキ体37が乗り上げてくる側となる、反転用切換部材20のフック部21側では、張出し部16の左側面16aと取付ボス17bの鍔部17cとの間に形成される隙間に挿入部21aが挿入保持され、また、張出し部16の突出部16b1に反転用切換部材20の凹部21bが掛止され、さらに、張出し部16の下部16bを反転用切換部材20の凹設部21cが包むように当接して保持されている。したがって、フック部21側において反転用切換部材20の取付剛性が高められており、ブレーキ体37が乗り上げてくる際の衝撃等に十分耐え得るものとなっている。
【0051】
張出し部16に反転用切換部材20を取り付けたら、図4(a)に示すように、リール本体1の前方からスプール軸9に通すようにしてキャップ部材15を近付け、図4(b)に示すように、リール本体1の前部にキャップ部材15を取り付ける。
キャップ部材15には、切欠部15bに切換部材用切欠部15b1が形成されているので、この切換部材用切欠部15b1を通じて、反転用切換部材20の第1の下面21dおよび第2の下面21eをキャップ部材15の下方へ突出させることができる。
【0052】
そして、図3に示すように、リール本体1にキャップ部材15が取り付けられると、キャップ部材15の内面から突出形成された突出部15cの先端が、前後方向に亘ってボス部16cと円環部22とに当接した状態となる(図4(b)参照)。この当接によって、ボス部16cから円環部22が抜け落ちることが規制され、反転用切換部材20の脱落が防止される。
【0053】
このような構成において、釣糸巻取位置から釣糸放出位置へベール支持部材2dが反転操作されると、振分部材33の後端33bがキックレバー35に係合し、ロータ2の軸心側に向けてブレーキ体37が突出する。
これによって、ブレーキ体37がキャップ部材15の後端外周面に当接し、ロータ2に制動力が付与される。したがって、ロータ2の不要な回転が防止され、釣糸ピックアップ位置の変化や釣糸放出操作時のロータ2の回転による誤復帰が解消される。
【0054】
この状態からハンドル5を釣糸巻取方向に回転操作すると、ハンドル5の回転駆動力がロータ2に伝わり、ブレーキ体37による制動力に抗してロータ2が回転する。そして、ロータ2の回転に伴ってブレーキ体37が反転用切換部材20に移動すると、図3において破線で示すように、ブレーキ体37が反転用切換部材20の第1の下面21dに乗り上げるようにして当接する。
そうすると、ブレーキ体37がアーム部2b側に押し戻され、フリクションバネ35cにより、アーム部2b内にブレーキ体37が収容され、このブレーキ体37の移動に伴ってキックレバー35が回動する。このキックレバー35の回動により、振分部材33が回動し、釣糸放出位置にあるベール支持部材2dが釣糸巻取位置に復帰する。
【0055】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールによれば、反転用切換部材20は、リール本体1に対するキャップ部材15の装着により、キャップ部材15に保持されてリール本体1に抜け止め固定されているので、リール本体1の前部にキャップ部材15を装着するだけで、リール本体1に反転用切換部材20を抜け止め固定することができる。
したがって、反転用切換部材20の脱落を好適に防止することができるとともに、別途、ねじ等の固定部材を必要としないので、省スペース化および軽量化を図ることができる。
また、反転用切換部材20の装着でリール本体1に反転用切換部材20を固定することができるので、固定に係る組み付けが簡単であり、また、固定に際して工具等も必要がないので生産性が向上し、コストの低減に寄与する。
【0056】
張出し部16の左側部にフック部21を掛止するとともに、ボス部16cに円環部22を外嵌することによって、取付部位となる張出し部16の周りに反転用切換部材20を配置することができるので、リール本体1に反転用切換部材20を仮組み付けすることができ、反転用切換部材20の固定が行い易くなる。したがって、生産性が向上し、コストの低減に寄与する。
また、反転用切換部材20は、張出し部16の左側部に対するフック部21の掛止、およびボス部16cに対する円環部22の外嵌を伴って固定されるので、リール本体1に対する反転用切換部材20の固定強度が高まり、反転用切換部材20の脱落をより一層好適に防止することができる。
【0057】
また、キャップ部材15の切換部材用切欠部15b1や端部15eの当接による反転用切換部材20の抜け止め固定に加えて、突出部15cにより、リール本体1(張出し部16のボス部16c)との間に反転用切換部材20を抜け止め固定することができるので、反転用切換部材20の固定強度が高まり、反転用切換部材20の脱落をより一層好適に防止することができる。
【0058】
なお、突出部15cは平板状のものに限られることはなく、前後方向に亘ってボス部16cと円環部22とに当接するものであれば、種々の形状のものを採用し得る。なお、突出部15cは、ボス部16cと円環部22の片側とに当接するものであってもよいし、ボス部16cと円環部22の両側とに当接するものであってもよい。
【0059】
(第2実施形態)
本実施形態では、図5に示すように、反転用切換部材20Aの右側部にもフック部22Aが形成されている点が前記第1実施形態と異なっている。
フック部22Aは、張出し部16のボス部16cに突設された引掛部16c2に掛止(係止)可能な掛止部22aを有している。
【0060】
また、キャップ部材15に形成された切欠部15bの縁部には、後面視で三角形状の突出部15c1が一体的に形成されている。突出部15c1は、リール本体1の前部にキャップ部材15を装着することによって、フック部22Aの右側面22bに位置し、先端部が右側面22bに当接して、反転用切換部材20Aを抜け止め固定するようになっている。
【0061】
本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、フック部22Aにより、反転用切換部材20Aの右側部を張出し部16に簡単に固定することができる。
また、キャップ部材15をリール本体1に装着すると、フック部22Aが突出部15c1によって好適に押さえられるので、この突出部15c1によっても反転用切換部材20Aを好適に抜け止め固定することができる。
【0062】
(第3実施形態)
本実施形態では、図6に示すように、反転用切換部材20Bの左側部に形成されるフック部21B、および右側部に形成される取付部22Bが、キャップ部材15の内面を利用してそれぞれ係止されるように構成されている点が前記第1、第2実施形態と異なっている。
【0063】
張出し部16に固定される取付ボス17bは、前記した鍔部17c(図3参照)を有しておらず、フック部21Bは、取付ボス17bの下面17b1に当接しつつ、張出し部16の左側面16aと、キャップ部材15の一端縁部15gの内面15g1と、キャップ部材15の端部15eと、にそれぞれ当接するようにして、保持されるようになっている。
一方、取付部22Bは、張出し部16のボス部16cの右側面16c1と、キャップ部材15の他端縁部15fの内面15f1と、切換部材用切欠部15b1と、にそれぞれ当接するようにして保持されるようになっている。
【0064】
本実施形態においても、前記第1、第2実施形態と同様の作用効果が得られ、また、キャップ部材15を、前記した突出部15c(図3参照)を必要としない単純な形状とすることができ、生産性が高くなる。
また、前記第1〜第3実施形態では、キックレバー35がロータ2の軸心に向けて(軸心に直交する方向に)出没する構造のものを示したが、これに限られることはなく、振分部材33に連動するロッド(移動部材)がロータ2の軸方向に沿って後方へ出没する構造のものに本発明を採用しても差し支えない。
この場合には、例えば、キャップ部材15の装着により脱落不能に固定された反転用切換部材20の前面に、ロッド(移動部材)を押し戻すための案内面を形成して、この案内面にロッドの後端が当接することによって釣糸放出位置から釣糸巻取位置にベール支持部材2dが復帰するように構成することで、前記した作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0065】
また、前記第1、第2実施形態で示した突出部15cは必ずしも設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 リール本体
2 ロータ
2b アーム部
2d ベール支持部材
5 ハンドル
15 キャップ部材
15c 突出部
16 張出し部
16c ボス部
20 反転用切換部材
20A 反転用切換部材
20B 反転用切換部材
21 フック部
21B フック部
22 円環部(嵌合部)
35 キックレバー(移動部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、前記リール本体に設けられ、ハンドルの巻取操作に連動回転するロータと、前記ロータのアーム部に設けられ、釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに反転自在に支持されたベール支持部材と、前記ロータに設けられ、釣糸放出位置に反転させた前記ベール支持部材に連動して前記リール本体側に移動する移動部材と、前記リール本体に設けられ、前記ロータの釣糸巻取方向の回転により前記移動部材に当接して、釣糸放出位置にある前記ベール支持部材を釣糸巻取位置に復帰させる反転用切換部材と、を備えた魚釣用スピニングリールであって、
前記ロータの内側において前記リール本体の前部に装着された円筒状のキャップ部材を備え、
前記反転用切換部材は、前記リール本体に対する前記キャップ部材の装着により、前記リール本体に抜け止め固定されていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記リール本体における前記反転用切換部材の取付部位には、係止受部およびボス部が設けられており、
前記反転用切換部材には、前記係止受部に係止されるフック部と、前記ボス部に嵌合される嵌合部と、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記キャップ部材は、当該キャップ部材の内方から前記反転用切換部材に向けて突出形成された突出部を備えており、前記突出部は、前記リール本体との間に前記反転用切換部材を抜け止め固定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−239451(P2012−239451A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115263(P2011−115263)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】