説明

魚釣用スピニングリール

【課題】 ロータを駆動軸筒に締結する締結部材の締結状態を良好に維持でき、ロータとスプールとの間に釣糸が入ったときにスプール軸への糸絡みを防止でき、ロータとスプール軸との間を防水できる魚釣用スピニングリールを提供すること。
【解決手段】 魚釣用リール10のロータ14の前面には、スプール軸42との間の防水を図るパッキン134が配設されたカバー部材132が配設される。カバー部材は、ナット110が軸筒34aに対して回転規制するとともにナットと協働してゴムパッキンをスプール軸との間に配置する嵌合部158と、嵌合部よりも径方向外方に延出され、ロータの縁部73を覆う延出部146と、ロータよりも径方向外方に突出し釣糸がスプール16とロータとの隙間からロータの前方への移動を防止する突出部152と、ロータにスプール軸に対してネジ122a,122b,122cで固定される円形孔154とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には魚釣用スピニングリールにおいて、ロータをメインシャフト(スプール軸)に固定するための締結部材(例えば、ナット)の緩みを防止する多角形孔と、ロータとスプールとの間に入った釣糸がメインシャフト(スプール軸)に絡むのを防止するリング部とを有する糸落ち防止リングをロータ本体の前面に設ける構造が知られている。
一方、ロータとメインシャフト(スプール軸)との間の防水構造として特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−3014号公報
【特許文献2】特許第3934663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術ではナットが糸落ち防止リングの多角形孔から前方に飛び出した状態で固定されるので、特許文献1の技術に防水技術を有する特許文献2を採用する場合、ナットの前方をシールするシール材を押さえるために蓋部材を糸落ち防止リングにネジ留めする必要がある。
このように引用文献1、2の構造を組み合わせる場合、糸落ち防止リングと蓋部材との両者をロータの前面に配置する必要があり、魚釣用スピニングリールに対する糸落ち防止リングの組込性が悪くなる(生産性が悪くなる)。また、糸落ち防止リングをロータの前面に固定するために2つのネジを配置する位置は中心軸に対して対向する位置であり、かつ、蓋部材をロータに配置するために1つのネジを配置する位置は他の任意の位置であるので、ロータの重量バランスに影響を与え、強度バランスにも問題が生じるおそれがある。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ロータを駆動軸筒に締結する締結部材の締結状態を良好に維持でき、ロータとスプールとの間に釣糸が入ったときに釣糸のメインシャフトへの糸絡みを防止でき、かつ、ロータとメインシャフトとの間を防水できるとともに、そのような機能を発揮させる際の部品点数の削減による組込性の向上やコストダウンを図ることが可能な魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る、メインシャフトが挿通した筒状の駆動軸筒に対して締結部材で回転不能に固定される円板部と前記円板部の後側に設けられる円筒部とを有するロータと、前記ロータの前側に配置され、前記ロータの円板部及び円筒部を覆うスカート部を有し、前記メインシャフトにより前記ロータに対して前後動されるスプールとを具備する魚釣用スピニングリールにあっては、前記ロータには、前記ロータの円板部に対して固定部材で固定され、前記メインシャフトとの間の防水を図るためのシール部材が配設されたカバー部材が配設され、前記カバー部材は、前記締結部材が前記駆動軸筒に対して移動するのを規制するとともに前記締結部材と協働して前記シール部材を前記メインシャフトとの間に配置する規制部と、前記規制部よりも径方向外方に延出され、前記ロータの円板部及び円筒部の縁部を覆う延出部と、前記ロータの円板部よりも径方向外方に突出し釣糸が前記スプールのスカート部と前記ロータの円筒部との隙間から前記ロータの前方側に移動するのを防止する突出部と、前記ロータの円板部に対して前記固定部材で固定するための固定部とを有することを特徴とする。
【0007】
前記延出部は、前記ロータの円板部の前面に対向するリブと、前記リブ同士を連結し前記ロータの円板部から離隔した離隔面とを有することが好ましい。
前記ロータの円板部は、前記カバー部材の固定部に嵌合される嵌合部を有することが好ましい。
前記カバー部材の比重は前記ロータの比重よりも小さいことが好ましい。
前記スプールのスカート部には、前記カバー部材の突出部を視認可能な窓部が形成されていることが好ましい。
前記カバー部材と前記ロータの円板部との間は、シール材でシールされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
カバー部材の固定部を固定部材でロータの円板部に固定した状態で、カバー部材の規制部により締結部材を嵌合した状態に維持できるので、締結部材の緩みを防止できる。また、締結部材及びカバー部材が協働してメインシャフトにシール部材を当接した状態を維持できるのでシール部材から後側の防水機能を良好に発揮できる。また、カバー部材の突出部をロータの円板部よりも径方向外方に突出させることによって、スプールのスカート部とロータとの間からメインシャフトに釣糸が到達して釣糸が絡むのを防止できる。
【0009】
延出部にリブと離隔面とを有することにより、カバー部材とロータの円板部との間に空間を形成して軽量化を図ることができるとともに、断面二次モーメントを大きくできる。このため、カバー部材の軽量化と剛性及び強度の向上を両立できる。
カバー部材とロータの円板部とを嵌合させることによって、固定部材を用いなくともロータに対してカバー部材が回転するのを防止できる。このため、カバー部材とロータの円板部とを固定部材に負荷がかからず、より小さく軽量の固定部材を使用できる。
カバー部材の比重をロータの比重よりも小さいものを用いることにより、軽量化を図ることができる。
スカート部に窓部を設けることにより、ロータとスプールとの間に釣糸が入ったときであっても、突出部に釣糸が当たった状態等を容易に視認することができる。
カバー部材とロータの円板部との間をシール材でシールすることにより、ロータとカバー部材との間を防水できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1から第3実施形態に係る魚釣用スピニングリールを示す概略的な部分断面図。
【図2】第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータに装着又は貫通される部品を示す概略的な分解斜視図。
【図3】第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータにフロントカバーを装着した状態を示す概略的な縦断面図であって、(A)は図5(A)中の3A−3A線に沿う縦断面図、(B)は図5(A)中の3B−3B線に沿う縦断面図。
【図4】第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータにフロントカバーを装着した状態を示す概略的な縦断面図であって、図3(A)に示す符号IVで示す部位の拡大図。
【図5】第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータに装着されるフロントカバーのカバー部材を示し、(A)は(C)中の矢印5A方向から観察した状態を示す正面図、(B)は(C)中の矢印5B方向から観察した状態を示す底面図、(C)は(A)中の5C−5C線に沿う断面図。
【図6】第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータに装着されるフロントカバーのカバー部材のうち、図5(A)中のVI−VI線に沿う断面図。
【図7】第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータに装着されるフロントカバーのカバー部材を示し、(A)は(C)中の矢印7A方向から観察した状態を示す正面図、(B)は(C)中の矢印7B方向から観察した状態を示す底面図、(C)は(A)中の7C−7C線に沿う断面図。
【図8】第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータにフロントカバーを装着した状態を示す概略的な縦断面図であって、(A)は図7(A)中の8A−8A線に沿う縦断面図、(B)は図7(A)中の8B−8B線に沿う縦断面図。
【図9】第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータに装着されるフロントカバーのカバー部材のうち、図7(A)中のIX−IX線に沿う断面図。
【図10】第3実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータに装着されるフロントカバーのカバー部材を示し、(A)は(C)中の矢印10A方向から観察した状態を示す正面図、(B)は(C)中の矢印10B方向から観察した状態を示す底面図、(C)は(A)中の10C−10C線に沿う断面図。
【図11】第3実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータにフロントカバーを装着した状態を示す概略的な縦断面図であって、(A)は図10(A)中の11A−11A線に沿う縦断面図、(B)は図10(A)中の11B−11B線に沿う縦断面図。
【図12】第3実施形態に係る魚釣用スピニングリールのロータに装着されるフロントカバーのカバー部材のうち、図10(A)中のXII−XII線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
第1の実施の形態について図1から図6を用いて説明する。
図1に示すように、魚釣用スピニングリール10は、例えば金属材で剛性構造に形成されたリール本体12と、リール本体12の前方に回転可能に配設されたロータ14と、ロータ14の前方にロータ14の回転運動と同期して前後動可能に配設されたスプール16とを有している。このリール本体12は、脚部12aの端部に形成された竿取付部12bを介して図示しない釣竿に取り付けられる。
【0013】
リール本体12内には、ハンドル軸22が回転可能に支持されており、その突出端部には、巻き取り操作されるハンドル24が取り付けられている。ハンドル軸22には、ロータ14を巻き取り駆動するための巻き取り駆動機構が係合されている。巻き取り駆動機構は、ハンドル軸22に取り付けられ内歯が形成されたドライブギヤ32と、このドライブギヤ32に噛合する筒状のピニオンギヤ(駆動軸筒)34とを備えている。ピニオンギヤ34は、軸筒(空洞部)34aをハンドル軸22に対して直交する方向(リール本体12の前側)に延出した状態に有し、リール本体12に軸受36a,36bを介して回転可能に支持されている。そして、このピニオンギヤ34の遠位端部の雄ネジ部34bには、後述するカラー114及び軸受116を内周面の一部に有するナット(締結部材)110によりロータ14が取り付けられている(図2及び図4参照)。
【0014】
ハンドル軸22と直交する方向にはスプール軸(メインシャフト)42が、軸筒34aを有するピニオンギヤ34を貫通している。この場合、スプール軸42は、ピニオンギヤ34と同心的に配設され、後述するオシレーティング機構(往復動機構)により、ハンドル軸22と直交する方向に沿って前後動できる。また、スプール軸42の遠位端部には釣糸が巻回されるスプール16が取り付けられている。
【0015】
リール本体12は、スプール軸42を軸方向に沿って往復駆動(前後動)させ、スプール16をハンドル軸22と直交する方向に前後動させるオシレーティング機構(往復動機構)を有する。
オシレーティング機構は、いわゆるギヤ方式のものであり、ハンドル軸22の外周に固定された歯車52と、この歯車52に噛み合ってこれと連動回転する連動歯車54と、連動歯車54に突設され且つ連動歯車54の回転中心軸から偏心して位置する係合突起(係合部)56と、スプール軸42の後端部にビス58を介して取り付けられ且つ係合突起56と係合するカム溝60aを有する摺動子(摺動体)60と、摺動子60と係合して摺動子60の往復動を案内するガイドレール62とを備えている。
【0016】
このようなオシレーティング機構は、ハンドル軸22がハンドル24の回転操作によって回転されると、ハンドル軸22上の歯車52と噛み合う連動歯車54が回転し、それに伴って、連動歯車54の係合突起56が回転するとともに、係合突起56と係合するカム溝60aの案内によって摺動子60が前後に往復動する。したがって、摺動子60に取り付けられたスプール軸42が軸方向に沿って往復駆動(前後動)する。
【0017】
以上の構成によれば、ハンドル24を回転操作してハンドル軸22を回転させると、オシレーティング機構を介してスプール軸42の遠位端部に取り付けられたスプール16が前後に往復動するとともに、ドライブギヤ32及びピニオンギヤ34を介してロータ14が回転駆動する。したがって、スプール16の後述する胴部92には、ロータ14の後述する釣糸案内部80を介して釣糸が均等に巻回される。
【0018】
図1及び図2に示すように、ロータ14は、中心に軸筒34a及びスプール軸42が配設される貫通孔72aを有する円板部72と、円板部72から後方に延出された円筒部74と、円筒部74から外方前側に延出された1対のアーム76a,76bと、1対のアーム76a,76b間に配設され釣糸放出状態にある釣糸をピックアップするベール78と、1対のアーム76a,76bのうちの一方のアーム76aに配設された釣糸案内部80とを有する。ベール78は釣糸巻取位置と釣糸放出位置との間で回動自在(反転自在)に支持されている。
なお、ロータ14のうち、円板部72、円筒部74及び1対のアーム76a,76bは、例えばカーボン繊維強化プラスチック(例えば比重1.5)等により一体に形成されている。そして、一方のアーム76aには、スプール16の後述する窓部98を通してスプール16の内部を視認するための開口77が形成されている。
【0019】
図3(A)に示すように、ロータ14の円板部72及び円筒部74で形成される空間の内側には、ロータ14の逆回転(釣糸繰り出し方向の回転)を防止する周知の一方向クラッチ82を備えている。一方向クラッチ82は、ピニオンギヤ34の軸筒34aに対して回り止め嵌合された内輪84と、内輪84の外側に配され且つ複数の転動部材Rを保持する保持器86と、保持器86の外側に配された外輪88とを有する。そして、一方向クラッチ82はシール機構90により内部を防水することができる。
【0020】
図1に示すように、スプール16は、釣糸が巻回される胴部92と、スカート部94とを有し、スプール軸42の遠位端部にドラグノブ96を介して取り付けられている。スカート部94はロータ14の円板部72及び円筒部74の前側を覆うことが可能である。スカート部94は、スプール16の内部(例えばロータ14の円板部72及び円筒部74の縁部73の近傍)を視認できるように窓部98を有する。窓部98は胴部92に近接する前側に形成されていることが好ましい。このため、後述するカバー部材132の突出部(糸落ち防止部)152に釣糸が引っ掛かっているか否か容易に確認できる。なお、窓部98は開口として形成されていても良いし、スプール16内に指等が入らないように透明な樹脂材等が配設されていても良い。また、窓部98の形状は矩形状や円形状等、種々の形状が許容される。
【0021】
図2に示すように、ロータ14の円板部72の前面にはピニオンギヤ34の軸筒34aが配設される貫通孔72aに連続して形成された環状かつ略矩形状の凹部102が形成されていることが好ましい。凹部102が形成されている場合には例えばステンレス鋼材等で環状かつ略矩形状に形成されたロータ補強部材112が配設される。凹部102及びロータ補強部材112が略矩形状に形成されていることによって、ピニオンギヤ34の軸筒34aがロータ14の円板部72に対して回り止めされる。そして、ロータ補強部材112はナット110とロータ14の円板部72との間に狭持される。
【0022】
凹部102の外側であって、ロータ14の円板部72の前面には、円環状の凹部104が形成されていることが好ましい。凹部104は円板部72の中心に対して同心状に形成され、この凹部104には、後述するOリング(シール部材)118が配設される。そして、後述するカバー部材132の円環状面160でOリング118が凹部104に押圧されることにより、ロータ14の円板部72の前面とカバー部材132との間を防水できる。
【0023】
凹部104の外側であって、ロータ14の円板部72の前面には3つの凸部(ボス部)106a,106b,106cが円板部72の前面に対して突出した状態に形成されている。各凸部106a,106b,106cはロータ14の円板部72の中心に対して互いに等距離等角度だけ離れた位置に中心を有する。そして、各凸部106a,106b,106cはそれぞれ同じ外径を有する略円柱状に形成されている。各凸部106a,106b,106cの中心には後述する雄ネジ122a,122b,122cがそれぞれ螺合される雌ネジ108a,108b,108cが形成されている。
なお、この実施形態ではロータ14の円板部72の前面に3つの凸部(ボス部)106a,106b,106cを有するものとして説明するが、ロータ14の円板部72の前面に3つの凹部を形成し、後述するカバー部材132の円形孔154に凹部に嵌合する凸部を形成して両者を嵌合させることも好ましい。
【0024】
そして、図3(A)及び図3(B)に示すように、ロータ14の円板部72の前面の略矩形状の凹部102にロータ補強部材112を配置した状態で、ロータ14の円板部72がピニオンギヤ34の軸筒34aの遠位端部で螺合される六角ナット(締結部材)110と一方向クラッチ82の内輪84との間に挟持固定されている。この場合、ナット110の内周面には雌ネジ110aが形成されており、この雌ネジ110aをピニオンギヤ34の軸筒34aの遠位端部の外周面に形成された雄ネジ34bに螺合させることより、ナット110がピニオンギヤ34の軸筒34aに締結される。
なお、図4に示すように、六角ナット110は、その後端側の内周面に雌ネジ110aが形成され、先端側の内周面にスプール軸42を軸方向移動及び回転可能に挿通させるように、カラー114及び軸受116が配設されている。
【0025】
図2、図3及び図5(A)に示すように、ロータ14の円板部72の前面側には、フロントカバー120が雄ネジ(固定部材)122a,122b,122cにより着脱可能に固定されている。
フロントカバー120は、カバー部材132と、ゴムパッキン(シール材)134とを着脱可能又は一体的に有する。カバー部材132はメッキ処理されたABS樹脂材(比重1.05)等、ロータ14よりも比重が小さい材料が用いられる。カバー部材132をメッキ処理するのは後述する突出部(糸落ち防止部)152等に釣糸が引っ掛かったときにその部分をできるだけ明るくして、釣糸の状態を見易くするためである。
【0026】
図5(A)から図5(C)に示すカバー部材132は、スプール軸42を貫通するための貫通孔132aが中心に形成された略円盤状に形成されている。貫通孔132aの周囲には、スプール軸42の外周を囲うようにゴムパッキン134が例えば接着等により一体化され、又は、取り外し可能に装着されている。
【0027】
カバー部材132は、その中心側から外側に向かって、ロータ14の円板部72との間にナット110を収容するようにロータ14の円板部72の前面に対して突出した第1ボス部142と、第1ボス部142の外側に形成され第1ボス部142よりも突出量が低く抑えられた第2ボス部144と、第2ボス部144から径方向外方に放射状に延出された6つの延出部146と、隣接する延出部146の間に形成された6つの底面部148とを有する。
第1ボス部142はカバー部材132の中心を含む貫通孔132aを有するので、ピニオンギヤ34の軸筒34aのハブとして形成されている。
【0028】
6つの延出部146および6つの底面部148は、それらの最外周に、リング状の円環状部150と、円環状部150から径方向外方に突出した突出部(糸落ち防止部)152とを有する。なお、突出部(糸落ち防止部)152は円環状(円環状部150の外側全周)に形成されていることが補強効果が高いので好適であるが、延出部146の外側だけに形成され、又は、底面部148の外側だけに形成されていても良い。また、突出部152は適宜の間隔に形成されていることも好適である。
また、突出部152は図5(C)に示すようにロータ14の円板部72の前面よりも前側の位置にあるが、同一面上又は後側にあっても良い。
【0029】
なお、6つの延出部146及び各延出部146に隣接する6つの底面部148はともにカバー部材132の中心に対して略対称の位置に形成されていることが好ましい。
このうち、延出部146は、図6に示すように、ロータ14の円板部72の略径方向に延出され、かつ、リール本体12の前後方向に肉厚を有する1対のリブ146aと、リブ146a間を連結し円板部72の前面から離隔した離隔面146bとを有する。
したがって、延出部146のリブ146aにより、カバー部材132の断面二次モーメントを大きくすることができる。すなわち、延出部146の延出方向の一点を支持して延出部を撓ませようとしたときに、剛性、強度を高めているので、形状を維持することができる。また、延出部146の離隔面146bにより延出部146を略ドーム状に形成しているので、リブ146aによる補強効果を向上させることができる。
そして、図5(B)及び図6に示す延出部146には、ロータ14の円板部72の前面との間に空間を形成する中空部162が形成されている。中空部162は、2つの延出部146のそれぞれ1対のリブ146aと、2つの円形孔154の縁部と、第2ボス部144の底面部148側の縁部144aと、後述する円環状面160の一部とにより囲まれる空間である。そして、この実施形態では3つの中空部162が形成されている。
したがって、延出部146のリブ146aでカバー部材132の剛性、強度を維持しつつ、中空部162を形成することによりカバー部材132を軽量化することができる。
また、ロータ14の円板部72の薄肉化を図り、ロータ14とフロントカバー120とを合わせたロータ全体の可及的な軽量化も可能となる。
【0030】
第2ボス部144には、ロータ14の円板部72の前面に突出した円柱状の凸部106a,106b,106cがそれぞれ配設される3つの貫通したネジ受部である円形孔(固定部)154が、隣接する延出部146の間に形成されている。円形孔154はカバー部材132の中心に対して互いに等距離等角度だけ離れた位置に中心を有する。すなわち、円形孔154はスプール軸42の中心軸に対して略対称の位置にある。そして、円形孔154の内径の大きさは凸部106a,106b,106cの外径よりも僅かに大きい。このため、カバー部材132の円形孔154を凸部106a,106b,106cに合わせて嵌合したとき、延出部146のリブ146a及び底面部148がロータ14の円板部72に対向して当接される。
【0031】
このように、カバー部材132の円形孔154がロータ14の円板部72の円柱状の凸部106a,106b,106cに嵌合されるので、ロータ14に対してカバー部材132は回転しない。したがって、雄ネジ(固定部材)122a,122b,122cを円柱状の凸部106a,106b,106cの雌ネジ部108a,108b,108cに対して締めなくても、カバー部材132はロータ14に対して回転しない。このため、カバー部材132をロータ14の円板部72に固定する雄ネジ122a,122b,122cには大きな負荷がかからず、小さいネジや軽比重のネジを使用できる。
【0032】
なお、ロータ14の円板部72の円柱状の凸部106a,106b,106cやフロントカバー120のカバー部材132の円形孔154は、スプール軸42の中心に対して略対称の位置(略等距離等角度離れた位置)に3つ以上あると、フロントカバー120をロータ14の円板部72に配設した状態でロータ14を回転させたときのロータ14の回転バランスをより良好にすることができる。すなわち、スプール軸42の中心に正三角形、正方形、正五角形等の重心が一致し、かつ、正三角形、正方形、正五角形等の略頂点の位置に、ロータ14の円板部72の円柱状の凸部106a,106b,106c,…やフロントカバー120のカバー部材132の円形孔154があることが好ましい。
ただし、円板部72の凸部106a,106b,106c,…及びカバー部材132の円形孔154が互いに嵌合でき、かつ、重量バランスや回転バランスが良好な状態を維持できれば、スプール軸42の中心に正三角形、正方形、正五角形等の重心が一致したときに正三角形、正方形、正五角形等の略頂点の位置にロータ14の円板部72の凸部106a,106b,106c,…やフロントカバー120のカバー部材132の円形孔154が配置される必要はなく、多少のズレが許容される。
また、図2及び図5(A)中、ネジ122a,122b,122cは六角穴付きボルトを用いる例について示しているが、それ以外のネジを用いても良いことはもちろんである。
【0033】
カバー部材132の裏面側の最外周位置、すなわち、6つの延出部146及び6つの底面部148の遠位位置には、円環状縁部156が形成されている。この円環状縁部156は、ロータ14の円板部72と円筒部74とにより形成される縁部73を覆うように形成されている。この実施形態では、円環状縁部156は縁部73の全周を覆っている。
【0034】
ここで、図5(A)に示す第1ボス部142の裏面側は、図5(B)及び図5(C)に示すように、六角ナット110に着脱可能に嵌合する嵌合部(規制部)158が形成されている。嵌合部158は六角ナット110が嵌合され、周方向の移動が規制されるように、六角ナット110の角に合わせて周方向に凹凸が形成されている。ここでは、スプール軸42の中心に対して30度おき12箇所の位置のうちの6つを使って六角ナット110の角を回り止めした状態に保持するように形成されているが、例えば20度おき18箇所の位置のうちの6つを使って六角ナット110の角を保持するようにしても良い。
そして、カバー部材132の円形孔154に対してロータ14の円板部72の凸部106a,106b,106cを嵌合するので、カバー部材132は周方向に移動しない。このため、周方向に移動しないカバー部材132によって六角ナット110を回り止め嵌合(ナット110の回転を規制)して、六角ナット110の緩みを防止することができる。
【0035】
嵌合部158の外周には、円環状の凹部104に対向し、エラストマー材からなるOリング118をその凹部104に向かって押圧する円環状面160が形成されている。なお、円環状面160の径方向幅はOリング118及び凹部104よりも広く形成されている。このため、ロータ14の円板部72の前面からナット110やスプール軸42に向かって水が浸入するのを防止できる。また、Oリング118はロータ14の円板部72及びカバー部材132の振動抑制効果も有し、その振動抑制効果は巻き取りフィーリングの向上やネジ122a,122b,122cの緩みの防止に貢献する。
そして、カバー部材132の円形孔154に対してロータ14の円板部72の凸部106a,106b,106cを嵌合した状態で凸部106a,106b,106cの雌ネジ部108a,108b,108cに雄ネジ122a,122b,122cを固定したとき、ゴムパッキン134はスプール軸42の外周に当接している。また、ナット110の頭部でゴムパッキン134をカバー部材132の第1ボス部142の裏面に押圧している。このため、スプール軸42にゴムパッキン134が当接された位置から後側に水が浸入するのを防止できる。
したがって、ゴムパッキン134及びOリング118によりロータ14の円板部72の前面とゴムパッキン134との間を防水できる。すなわち、ナット110の内周面に配設されたカラー114や軸受116に水が浸入するのを防止できる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、ロータ14よりも低比重のカバー部材132を有するフロントカバー120を用いることによって、ロータ14の重量バランス、強度バランスを取りつつ、釣糸がロータ14とスプール16との間から入り込んでスプール軸42に絡みつくのを防止でき、スプール軸42とロータ14との間、ロータ14とカバー部材132との間の防水を図ることができる。そして、釣糸がロータ14とスプール16との間に入り込んだ場合であっても、ロータ14の一方のアーム76aの開口77と、スプール16の窓部98とを通してカバー部材132の突出部152の近傍を視認できるので、釣糸を取り出し易くできる。
また、ロータ14の円板部72の凸部106a,106b,106cにカバー部材132の円形孔154を嵌合することでナット110の緩みを防止することができ、ネジ122a,122b,122cを凸部106a,106b,106cの雌ネジ部108a,108b,108cに螺合するだけでロータ14にカバー部材132を固定できるので、少ない部品で多種の機能を発揮でき、組立性も良好である。また、ロータ14の円板部72の凸部106a,106b,106cとカバー部材132の円形孔154とはスプール軸42の中心に対して互いに等距離等角度だけ離れた位置(スプール軸42に対して略対称の位置)にあるので、ロータ14の重量バランス、強度バランスだけでなく、回転バランスも良好な状態にすることができる。
また、ロータ14の前側に低比重、高強度のカバー部材132を配置することで、カバー部材132による補強効果によりロータ14全体としての軽量化、或いは高強度化を図ることができる。
したがって、この実施形態によるロータ14の円板部72の前面にフロントカバー120を配置することにより、ナット110の緩み防止、防水、糸落ち防止の各機能を維持しつつ、部品点数の削減による組込性の向上やコストダウンを図った魚釣用リール10を提供できる。
【0037】
次に、第2実施形態について図7から図9を用いて説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例である。
この実施形態に係る図7(A)から図7(C)に示すフロントカバー120のカバー部材132は、第1実施形態のカバー部材132の6つの底面部148を除去し、6つの貫通孔172を形成している。
【0038】
このため、図8及び図9に示すように、この実施形態に係るカバー部材132のうち、ロータ14の円板部72の前面に当接するのは円環状部150の円環状縁部156、円環状面160及び延出部146のリブ146a、第2ボス部144の縁部144aである。
カバー部材132をこのように形成することにより、第1実施形態で説明したカバー部材132より更に軽量化を図ることができる。
なお、図示しないが、ロータ14の円板部72に貫通孔を形成しても良く、ロータ14全体としては同様の効果が得られる。
【0039】
次に、第3実施形態について図10から図12を用いて説明する。この実施形態は第1および第2実施形態の変形例である。
この実施形態に係る図10(A)から図10(C)に示すフロントカバー120のカバー部材132は、第1実施形態の底面部148だけでなく、第2実施形態のカバー部材132の円環状部150を除去し、延出部146の遠位端部に円弧状部182を形成している。この円弧状部182には、径方向外方に突出した突出部(糸落ち防止部)184が形成されている。また、この円弧状部182には、ロータ14の円板部72及び円筒部74の縁部73に引っ掛けられる円弧状縁部186を形成している。
【0040】
このため、図11及び図12に示すように、この実施形態に係るカバー部材132のうち、ロータ14の円板部72の前面に当接するのは円弧状部182の円弧状縁部186、円環状面160及び延出部146のリブ146a、第2ボス部144の縁部144aである。
【0041】
カバー部材132をこのように形成することにより、第1及び第2実施形態で説明したカバー部材132より更に軽量化を図ることができる。
【0042】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【符号の説明】
【0043】
10…魚釣用スピニングリール、12…リール本体、14…ロータ、16…スプール、22…ハンドル軸、24…ハンドル、32…ドライブギヤ、34…ピニオンギヤ、34a…駆動軸筒、34b…雄ネジ部、36a,36b…軸受、42…スプール軸、72a…貫通孔、72…円板部、73…縁部、74…円筒部、76a,76b…アーム、77…開口、94…スカート部、98…窓部、102…凹部、104…凹部、106a,106b,106c…凸部、108a,108b,108c…雌ネジ部、110…六角ナット、110a…雌ネジ、112…ロータ補強部材、114…カラー、116…軸受、118…Oリング、120フロントカバー、122a,122b,122c…雄ネジ、132…カバー部材、132a…貫通孔、134…ゴムパッキン、142…ボス部、144…ボス部、144a…縁部、146…延出部、146a…リブ、146b…離隔面、148…底面部、150…円環状部、152…突出部、154…円形孔、156…円環状縁部、158…嵌合部、160…円環状面、162…中空部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインシャフトが挿通した筒状の駆動軸筒に対して締結部材で回転不能に固定される円板部と前記円板部の後側に設けられる円筒部とを有するロータと、
前記ロータの前側に配置され、前記ロータの円板部及び円筒部を覆うスカート部を有し、前記メインシャフトにより前記ロータに対して前後動されるスプールと
を具備する魚釣用スピニングリールであって、
前記ロータには、前記ロータの円板部に対して固定部材で固定され、前記メインシャフトとの間の防水を図るためのシール部材が配設されたカバー部材が配設され、
前記カバー部材は、
前記締結部材が前記駆動軸筒に対して移動するのを規制するとともに前記締結部材と協働して前記シール部材を前記メインシャフトとの間に配置する規制部と、
前記規制部よりも径方向外方に延出され、前記ロータの円板部及び円筒部の縁部を覆う延出部と、
前記ロータの円板部よりも径方向外方に突出し釣糸が前記スプールのスカート部と前記ロータの円筒部との隙間から前記ロータの前方側に移動するのを防止する突出部と、
前記ロータの円板部に対して前記固定部材で固定するための固定部と
を有することを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記延出部は、前記ロータの円板部の前面に対向するリブと、前記リブ同士を連結し前記ロータの円板部から離隔した離隔面とを有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記ロータの円板部は、前記カバー部材の固定部に嵌合される嵌合部を有することを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記カバー部材の比重は前記ロータの比重よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項5】
前記スプールのスカート部には、前記カバー部材の突出部を視認可能な窓部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項6】
前記カバー部材と前記ロータの円板部との間は、シール材でシールされていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1に記載の魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−24028(P2012−24028A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166223(P2010−166223)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】