説明

魚釣用リール

【課題】リール本体に形成される収容部内に設けられる駆動部への浸水を確実に防止でき、水等が浸入し易い過酷な環境下においても常に安定した駆動性能を得ることができる魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、リール本体1に凹状に形成され、ハンドルの操作で連動回転する駆動部材8を収容支持する収容凹部40と、収容凹部40の開口部42aと駆動部材8との間に磁気回路を形成し、この間に磁性流体55を保持することにより開口部42aをシールする磁気シール機構50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルの回転操作で駆動する巻き取り駆動機構や逆転防止機構等の駆動部を収容するリール本体を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、魚釣用リールは、ハンドルを回転操作することで、動力伝達機構を介して釣糸をスプールに巻回するように構成されている。例えば、魚釣用リールとしてのスピニングリールでは、ハンドルの回転操作により駆動軸を介して釣糸案内部を有するロータを回転させ、スプールに釣糸を巻回する。また、このような魚釣用リールには、実釣時にスプールに巻回されている釣糸の繰り出しでロータが逆転しないように、逆転防止装置が装備されている。
【0003】
ところで、魚釣用リールは、海水、砂、異物等が付着・侵入し易い厳しい環境下で使用される。そのため、リールの各部に防水対策が施される。例えば特許文献1に開示されるスピニングリールでは、リール本体の前部に形成される筒状部内の駆動軸との間に設けられる逆転防止機構にシール部材によって防水構造を施し、内部へ水が浸入しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3981219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される前記防水構造は、リール本体の前部に形成される収容部としての前記筒状部の開口をカバー部材によってカバーするとともに、該カバー部材の外周に被覆される弾性部材の内周縁部のリップ部を、前記筒状部内に配設される駆動軸の外周に摩擦接触させることにより、内部への浸水を防止するようになっている。
【0006】
しかしながら、前記防水構造では、部品寸法のバラツキ等の影響により、前記筒状部内に設けられるカバー部材の前記リップ部先端と駆動軸との間の同芯度を高精度に得ることが難しく、そのため、前記リップ部と前記駆動軸との摩擦接触圧が一定せず、防水性能が安定しない。また、使用経過に伴って前記リップ部の先端が摩耗し易く、その場合には、防水性能が低下してしまう。
【0007】
また、摩擦接触圧のバラツキ等の影響により、回転部品の回転性能が低下する(回転が重くなる)等の課題も残されている。
【0008】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、リール本体に形成される収容部内に設けられる駆動部への浸水を確実に防止でき、水等が浸入し易い過酷な環境下においても常に安定した駆動性能を得ることができる魚釣用リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、リール本体に内蔵された巻き取り駆動機構に連結されるハンドルの回転操作により、リール本体に支持されたスプールに釣糸を巻回する魚釣用リールにおいて、リール本体に凹状に形成され、前記ハンドルの操作で連動回転する駆動部材を収容支持する収容凹部と、前記収容凹部の開口部と前記駆動部材との間に磁気回路を形成し、この間に磁性流体を保持することにより前記開口部をシールする磁気シール機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、磁気回路によって磁性流体を保持する磁気シール機構により収容凹部の開口部が効果的且つ確実にシールされるため、収容凹部内への浸水を確実に防止でき、収容凹部内に収容される前記駆動部材を含む様々な駆動要素(例えば、逆転防止機構やギアなど)を海水、砂、異物等から保護することができる。そのため、水等が浸入し易い過酷な環境下においても常に安定した駆動性能(例えば、逆転防止機能、巻き取り駆動性能など)を得ることができる。
【0011】
なお、上記構成において、駆動部材は、回転動作し或いは軸方向に摺動する様々な部材、例えば、ピニオンギア(または、これと一体の軸部材)やハンドル軸、あるいは、そのような部材と共に一体回転し或いは一体摺動する部材等を含む。
【0012】
また、上記構成において、前記磁気シール機構は、磁石と、前記駆動部材に嵌合されて前記磁石との間で磁気回路を形成する筒状の磁性体と、前記磁石と前記磁性体との間に保持される磁性流体とによって構成されてもよい。これによれば、駆動部材に対して筒状の磁性体を嵌合することにより磁気シールが構成されるため、例えば駆動部材を腐食し易い磁性材料で形成する必要も無く、それにより、駆動部材の腐食等を防止でき(したがって、駆動部材に腐食処理等を施す必要がなく)、また、駆動部材を形成する材料が制約されることもないため、最適な材料を選択することが可能になる。また、嵌合される筒状の磁性体により、シール領域における同芯度(駆動部材と磁気シールとの同芯度)を高精度で得ることができ、したがって、常に確実なシール状態を実現でき、防水性能の安定性に優れる。なお、磁気シール機構を構成する筒状の磁性体は、魚釣用リールの駆動部材に直接に嵌合されなくてもよい。例えば、各種の駆動部材に装着される非磁性の例えばカラー部材等に対して筒状の磁性体が嵌合される構成であってもよい。また、筒状の磁性体は、非磁性のカラー部材の外周面に例えばメッキ、蒸着(物理的蒸着、化学的蒸着など)によって被着される磁性材料から成っていてもよい。
【0013】
また、上記構成において、筒状の前記磁性体は、非磁性の前記駆動部材に回り止め嵌合されてもよく、また、前記磁石は、前記収容凹部の前記開口部をカバーするカバー部材によって支持されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リール本体に形成される収容部内に設けられる駆動部への浸水を確実に防止でき、水等が浸入し易い過酷な環境下においても常に安定した駆動性能を得ることができる魚釣用リールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用リールの一部断面を有する側面図である。
【図2】図1の魚釣用リールの要部の拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用リールの要部の拡大断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用リールの要部の拡大断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る魚釣用リールの要部の拡大断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る魚釣用リールの断面図である。
【図8】図7の魚釣用リールの要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1〜図3は本発明の第1の実施形態に係る魚釣用リールとしてのスピニングリールを示している。図1に示されるように、本実施形態に係るスピニングリールのリール本体1には、釣竿に装着されるリール脚2が一体形成されており、その前方には回転可能に支持されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール4が配設されている。
【0018】
ロータ3は、スプール4の周囲を回転する一対の腕部3aを備えており、各腕部3aの夫々の前端部には、ベール3bの基端部を取り付けたベール支持部材3cが釣糸巻取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。なお、ベール3bの一方の基端部は、ベール支持部材3cに一体的に設けられた釣糸案内部3dに取り付けられている。
【0019】
リール本体1内には、ハンドル軸5が回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル6が取り付けられている。また、ハンドル軸5には、巻き取り駆動機構が係合しており、この巻き取り駆動機構は、ハンドル軸5に一体回転可能に装着された駆動ギヤ7と、この駆動ギヤ7に噛合すると共にハンドル軸5と直交する方向に延出し、内部に軸方向に延出する空洞部が形成されたピニオン8とを備えている。
【0020】
ピニオン8は、軸受9を介してリール本体1内に回転可能に支持されるとともに、スプール4側に向けて延出しており、その先端部において、ロータ3が取り付けられている。なお、軸受9は、リール本体1に螺合される軸受止めネジ30によって保持される。
【0021】
また、ピニオン8には、その中間部分にころがり式一方向クラッチ10が取り付けられており、リール本体1の外部に設けられた切換操作レバー11を回動操作することで一方向クラッチ10を作動させ、ハンドル6(ロータ3)の釣糸繰出し方向の逆回転を防止する公知の逆転防止機構(ストッパ)を構成するようになっている。
【0022】
ピニオン8の内部に形成された空洞部には、ハンドル軸5と直交する方向に延出し、先端側にスプール4を装着したスプール軸12が軸方向に移動可能に挿通されている。また、ピニオン8には、スプール4(スプール軸12)を前後往復動させるための公知のスプール往復動装置13が係合している。
【0023】
このような構成を有する魚釣用スピニングリールにおいて、ハンドル6により巻き取り操作を行うと、ロータ3が巻き取り駆動機構を介して回転駆動される共に、スプール4がスプール往復動装置13を介して前後往復動されるので、釣糸は、釣糸案内部3dを介してスプール4の巻回胴部4aに均等に巻回されるようになっている。
【0024】
図2に示されるように、前記ころがり式一方向クラッチ10は、ピニオン8に対して回り止め嵌合された内輪21と、内輪21の外側に配された保持器27と、保持器27の外側に配された外輪25とを有している。
【0025】
外輪25の内周面には、保持器27によって保持された複数の転動部材28がフリーに回転できるフリー回転領域と、複数の転動部材の回転を阻止する楔領域とが形成されており、各転動部材は、保持器27に設けられたバネ部材によって楔領域に付勢されている。なお、外輪25は、保持器27の径方向外側に同心的に配置される回り止めプレート37によってリール本体1に対する回転が阻止されている。具体的には、図3に明確に示されるように、回り止めプレート37の周方向の一部には径方向外側に突出する係止凸部37aが設けられており、この係止凸部37aが外輪25の切り欠き25aを通じてリール本体1の係止溝39に係止されることにより、外輪25が係止凸部37aによりリール本体1に対して回り止めされるようになっている。
【0026】
このような構成の一方向クラッチ10において、ピニオン8と共に内輪21が正回転(ロータ3が釣糸巻取り方向に回転)すると、保持器27の転動部材28が外輪25のフリー回転領域に位置され、そのため、内輪21の回転力が外輪25に伝達されず(外輪25によって阻止されず)、したがって、ピニオン8と共にロータ3が支障なく回転する。これに対して、ピニオンギヤ13と共に内輪21が逆回転(ロータ8が釣糸繰出し方向に回転)しようとすると、保持器27の転動部材が外輪25の楔領域に位置するため、内輪21の回転力が外輪25に伝達され、これがストッパとなって、ピニオン8およびロータ3の回転(逆回転)が阻止される。
【0027】
また、このような一方向クラッチ10を伴う逆転防止機構の作動は前記切換操作レバー11によって切り換え制御できるようになっている。具体的には、図2および図3に示されるように、切換操作レバー11は、リール本体1内でスプール軸12と略平行に延びる切り換えカム33を有しており、この切り換えカム33の先端突部33aは作動アーム32の係合孔32aに係合している。また、作動アーム32は、外輪25の切り欠き25bを通じて保持器27に連結されている。したがって、この構成では、切換操作レバー11を回動操作することにより、切り換えカム33および作動アーム32を介して保持器27を回動させれば、保持器27に保持される転動部材28をバネ部材の付勢力に抗して外輪25のフリー回転領域に強制的に保持させる逆転可能位置(ロータ3を逆回転させることができる位置)と、転動部材をバネ部材の付勢力によって外輪25の楔領域に位置させるようにする逆転防止位置(ロータ3の逆回転を防止する位置)との間で選択的に切り換えることができる。
【0028】
次に、上記構成のスピニングリール内に配設される磁気シール機構について説明する。
図2に示されるように、リール本体1には、ハンドル6の操作で連動回転する駆動部材としてのピニオン8(及び/又は、これと一体に回転する内輪21)を部分的に収容して軸受9により支持する収容凹部40が凹状に形成されている。また、収容凹部40は、前述した逆転防止機構の一方向クラッチ10を内部に位置決め状態で収容保持する(収容凹部40内に逆転防止機構が設けられる)とともに、スプール4側に面する前方側に開口40aを有している。この開口40aには図中に矢印で示されるルートを経て水分や異物等が侵入する虞があるため、開口40aがカバー部材42によって部分的に閉じられるとともに、カバー部材42によって部分的に残された開口部42aには、この開口部42aと非磁性材料(例えば、銅合金、アルミ合金等)から成るピニオン8の外周面との間に磁気回路を形成し且つこの間に磁性流体を保持することにより開口部42aをシールする磁気シール機構50が設けられる。なお、カバー部材42は、その外周端部が止めネジ60によってリール本体1に取り付けられるとともに、カバー部材42の外周端部の内面とリール本体1の取り付け端面との間にはシール部材62が介挿されている。
【0029】
一方向クラッチ10やピニオン8等の駆動要素を収容する収容凹部40内をシールする磁気シール機構50は、ピニオン8を所定の隙間を存して囲繞するように配される磁石51と、これを保持する保持部材(磁気リング)52と、ピニオン8に嵌合(外嵌)されて磁石51との間で磁気回路を形成する(したがって、少なくとも保持部材52と対向する軸方向長さを有する)筒状の磁性体53と、磁石51と筒状の磁性体53との間に保持される磁性流体55とにより1つのユニットとして構成される(すなわち、リール本体1からカバー部材42を外せば、カバー部材42と共に磁気シール機構50(磁石51、保持部材52、磁性体53、磁性流体55)も一体で外れる)。
【0030】
この場合、磁石51は、ピニオン8を挿通させるように、所定の厚さを具備してリング状に形成されており、保持部材52は、そのように形成された磁石51を両側から挟持して保持するように構成されている。
【0031】
なお、保持部材52は、リング状の磁石51を挟持して保持し且つその内側に周方向に沿って凹所51Aが生じるように形成されており、磁石51と共にカバー部材42によって支持される。具体的には、保持部材52は、その一方側で対面接触するカバー部材42とその他方側で対面接触し且つカバー部材42の内面に取着される支持板63との間に挟圧保持されており、カバー部材42と保持部材52との間にはシール部材69が介挿される。また、保持部材52は、筒状の磁性体53の外表面との間に僅かな隙間Gが生じるように構成されている。
【0032】
筒状の磁性体53は、鉄系の材料、例えば、鋼材、SUS430、SUS440C、SUS630等によって形成されており、これにより、磁石51によって、これを保持する保持部材52および筒状の磁性体53との間に磁気回路が形成されるようになっている。なお、筒状の磁性体53の長さについては、前記磁気回路が生じる程度の長さ(磁性流体55を安定して保持できる程度の長さ)を有していれば良く、保持部材51がカバーされるように、保持部材52の軸方向長さよりも多少長く形成される。また、磁性体53は、一端が一方向クラッチ10の内輪21の端面に当て付けられ且つ他端がロータ3の端面に当て付けられることによって位置決めされている。この場合、磁性体53は、非磁性のピニオン8に対して回り止め嵌合されることが好ましい。すなわち、筒状の磁性体53がピニオン8と一体回転するように回り止め嵌合(円形嵌合支持)されることにより、磁性体53の内周とピニオン8の外周との間に水分等が侵入することを効果的に抑制できる。
【0033】
磁性流体55は、例えばFeのような磁性微粒子を、界面活性剤およびベースオイルに分散させて構成されたものであり、粘性があって磁石を近づけると反応する特性を備えている。このため、磁性流体55は、図2に示されるように、磁石51、これを保持する保持部材52、および、筒状の磁性体53によって形成される磁気回路によって、前記凹所51A内および前記隙間G内に安定して保持され、開口部42aをシールする。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、磁気回路によって磁性流体55を保持する磁気シール機構50により収容凹部40の開口部42aが効果的且つ確実にシールされるため、収容凹部40内への浸水を確実に防止でき、収容凹部40内に収容されるピニオン8を含む様々な駆動要素(例えば、逆転防止機構の一方向クラッチ10など)を海水、砂、異物等から保護することができる。そのため、水等が浸入し易い過酷な環境下においても常に安定した駆動性能(例えば、逆転防止機能、巻き取り駆動性能など)を得ることができる。
【0035】
また、上記構成において、磁気シール機構50は、磁石51と、ピニオン8に嵌合されて磁51石との間で磁気回路を形成する筒状の磁性体53と、磁石51と磁性体53との間に保持される磁性流体55とによって構成されている。このように、ピニオン8に対して筒状の磁性体53を嵌合することにより磁気シールが構成されれば、例えばピニオン8を腐食し易い磁性材料で形成する必要も無く、それにより、ピニオン8の腐食等を防止でき(したがって、ピニオン8に腐食処理等を施す必要がなく)、また、ピニオン8を形成する材料が制約されることもないため、最適な材料を選択することが可能になる。また、嵌合される筒状の磁性体53により、シール領域における同芯度(ピニオン8と磁気シールとの同芯度)を高精度で得ることができ、したがって、常に確実なシール状態を実現でき、防水性能の安定性に優れる。
【0036】
図4は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、一方向クラッチ10の内輪21と磁気シール機構50の磁性体53とが一体に形成されている。なお、それ以外の構成は前述した第1の実施形態と同一である。したがって、第1の実施形態と同一の作用効果を得ることができるとともに、部品点数を減らすことができ有益である。
【0037】
図5は本発明の第3の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、磁石51を保持する保持部材52がカバー部材42を兼用している。すなわち、保持部材52および磁石51がカバー部材42としての機能を果たしている。なお、それ以外の構成は前述した第1の実施形態と同一である。したがって、第1の実施形態と同一の作用効果を得ることができるとともに、部品点数を減らすことができ有益である。
【0038】
図6は本発明の第4の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、前述した磁気回路を構成する磁石51を、保持部材に保持させるのではなく、直接にカバー部材42によって支持している。すなわち、磁石51をカバー部材42と支持板63とによって挟持し、磁石51とカバー部材42との間にシール部材69を介挿させている。この場合、磁石51を予めリング状に形成しておくと共に、その内周面に、磁性流体55を保持するように、凹溝51aが形成されている。すなわち、この凹溝51aは、筒状の磁性体53の外周面に対向するように周方向に沿って形成されており、凹溝51a内に磁性流体55が保持されるようになっている。このような構成によれば、構造を簡略化して、部品点数を削減することができ有益である。
【0039】
図7および図8は本発明の第5の実施形態を示している。前述した実施形態では、魚釣用リールとしてスピニングリールを例示したが、この第5の実施形態では、本発明が両軸受型リールに適用される。
【0040】
図示のように、両軸受型リールのリール本体101は、左右フレーム102a,102bと、これら左右フレーム102a,102bに所定の空間をもって装着される左右側板103a,103bとを備えている。左右フレーム102a,102b(左右側板103a,103b)間には、スプール軸105が回転可能に支持されており、このスプール軸105には、釣糸が巻回されるスプール106が取り付けられている。
【0041】
右側板103b側には、ハンドル108を装着したハンドル軸109が回転可能に支持されている。このハンドル軸109には、巻き取り駆動機構が連結されており、ハンドル108を回転操作することで、巻き取り駆動機構を介してスプール106が回転駆動されるようになっている。なお、ハンドル軸109は、右側板との間に介在された一方向クラッチ110によって、釣糸巻取方向にのみ回転可能となっている。
【0042】
前記巻取り駆動機構は、ハンドル軸109にドラグ機構を介して回転可能に支持された駆動歯車112とこの駆動歯車112に噛合するピニオン113とを備えている。ピニオン113は、公知のクラッチ機構を介してスプール軸105と継脱されるように構成されており、クラッチON状態では、ハンドル108の回転駆動力を駆動歯車112およびピニオン113を介してスプール106に伝達し、クラッチOFF状態では、駆動力伝達状態を解除してスプール106をフリー回転状態にするようになっている。なお、上記したクラッチ動作は、リール本体101から突出した操作レバー(図示せず)を操作することで行なわれる。
【0043】
左右側板103a,103b間には、スプール106の前方に、レベルワインド機構120が設けられている。レベルワインド機構120は、スプール106の前方で左右に往復動すると共に、釣糸が挿通される挿通孔を具備した釣糸案内体121と、左右側板103a,103b間に支持され、外周にエンドレスカム溝123aが形成されたウォームシャフト123とを有している。
【0044】
このウォームシャフト123は、左右フレーム間に固定され、軸方向に沿って貫通孔が形成されている円筒部材125内に回転可能に収容されており、この貫通孔を介して前記釣糸案内体121に保持された係合ピンがエンドレスカム溝123aと係合して、釣糸案内体121を左右に往復駆動するようになっている。また、前記釣糸案内体121は、往復駆動する際、ウォームシャフト123の回りでの回り止めが成されるように、左右フレーム間に支持された案内ピラー(図示せず)に支持されている。
【0045】
前記ウォームシャフト123の右側板側の端部には、前記駆動歯車112と一体回転可能に軸方向に連設された歯車112aと噛合する歯車130が嵌合するように設けられている。この歯車130には、ハンドル108の巻取り操作による回転駆動力がハンドル軸109、駆動歯車112及び歯車112aを介して入力され、その回転駆動力がウォームシャフト123に出力されるようになっている。
【0046】
また、本実施形態において、リール本体101の右側板103bには、ハンドル6の操作で連動回転する駆動部材としてのハンドル軸109を部分的に収容して軸受149により支持する収容凹部150が凹状に形成されている。また、この収容凹部150は、前述した逆転防止機構の一方向クラッチ110を内部に位置決め状態で収容保持する(収容凹部150内に逆転防止機構が設けられる)とともに、ハンドル108側に開口部150aを有している。そして、この開口部150aには、該開口部150aと非磁性材料(例えば、銅合金、アルミ合金等)から成るハンドル軸109の外周面との間に磁気回路を形成し且つこの間に磁性流体を保持することにより開口部150aをシールする磁気シール機構200が設けられる。
【0047】
本構成において、ハンドル軸109の右端部には、公知のドラグ機構170を構成する操作体171が螺合されている。この操作体171を回動操作すると、ハンドル軸109に軸方向移動可能に且つ一体回転可能に嵌合されたカラー部材である第1の押圧体173が軸方向に移動し、皿バネ175を介して一方向クラッチ110の内輪を兼ねる第2の押圧体177を押圧し、摩擦部材178を所望の押圧力で押圧し、ハンドル軸109と歯車112aとの間で制動力を生じさせる。
【0048】
ハンドル軸109の右端部は、前述したようにリール本体101(リール本体101を構成する右側板103bに形成された収容凹部150を形成する円筒状支持部190)に対して、軸受149によって回転可能に支持されている。この場合、軸受149は、カラー部材である第1の押圧体173上に設置されている。
【0049】
軸受149および一方向クラッチ110をシールする磁気シール機構200は、軸受149に対してハンドル108側に設置されており、ハンドル軸109を囲繞するように配されるリング状磁石51と、これを保持(挟持)する保持部材52と、ハンドル軸109に嵌合された第1の押圧体173に一体回転可能に嵌合(外嵌)され且つ少なくとも保持部材52と対向する長さを有する筒状の磁性体53と、リング状磁石51と筒状の磁性体53との間に保持される磁性流体(図示せず)とを備えて構成されている。なお、筒状の磁性体53は、軸受149の内輪内周に嵌合されて留め具で軸方向規制されており、第1の押圧体173が軸方向移動しても追従して移動しないようになっている。
【0050】
筒状の磁性体53は、磁石51と保持部材52との間で磁気回路が生じる程度の長さを有していれば良く、本実施形態では、基端部にフランジ53dを形成して、軸受149を抜け止め保持するようにしている。
【0051】
上記構成の磁気シール機構200のリング状磁石51、これを保持する保持部材52はいずれも、前記円筒状支持部190の内面に、軸受149に隣接して嵌合(内嵌)されており、保持部材52の一方が円筒状支持部190の内面に止め輪192を介して抜け止め保持される非磁性のワッシャ193によって抜け止めされ、保持部材52の他方が、非磁性のワッシャ197を介在させて軸受149に対して当て付けられている。
【0052】
このような磁気シール機構200によっても、上記した磁気シール機構と同様、収容凹部150内を確実にシールできるとともに、ハンドル軸109を磁性体で形成する必要がなくなり、腐食を防止できる。
【0053】
また、本実施形態では、第1の押圧体173を磁性体で構成しても良い。このように構成することで、筒状の磁性体53が不要となり、ドラグ機構の押圧体としての機能と、磁気シール機構の筒状の磁性体としての機能とを兼ね備えることが可能になる。
【0054】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、上記構成の磁気シール機構は、各種の魚釣用リールの収容凹部(駆動部材を含む様々な駆動部を収容する凹状の空間)の開口部に適用可能であり、対象となるリールの種別や、その設置位置、設置形態は特に限定されるものではない。また、駆動部材に嵌合される筒状の磁性体については、外嵌されるものであってもよく、あるいは、内嵌されるものであってもよい。更に、磁気シール機構を構成するに際して、磁性流体を保持する磁石の構成、および、磁石を保持する構成、その保持部材の形状等についても適宜変形することが可能である。無論、図6に示した構成のように、保持部材を設けることなく、磁石を直接にリール本体に取着する構成であってもよい。更に、各図面に示した各構成については、適宜、組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 リール本体
4 スプール
6 ハンドル
8 ピニオン(駆動部材)
10,110 一方向クラッチ
40 収容凹部
42 カバー部材
50,200 磁気シール機構
51 磁石
52 保持部材
53 磁性体
55 磁性流体
109 ハンドル軸(駆動部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に内蔵された巻き取り駆動機構に連結されるハンドルの回転操作により、リール本体に支持されたスプールに釣糸を巻回する魚釣用リールにおいて、
リール本体に凹状に形成され、前記ハンドルの操作で連動回転する駆動部材を収容支持する収容凹部と、
前記収容凹部の開口部と前記駆動部材との間に磁気回路を形成し、この間に磁性流体を保持することにより前記開口部をシールする磁気シール機構と、
を備えることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記磁気シール機構は、磁石と、前記駆動部材に嵌合されて前記磁石との間で磁気回路を形成する筒状の磁性体と、前記磁石と前記磁性体との間に保持される磁性流体とによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
筒状の前記磁性体は、非磁性の前記駆動部材に回り止め嵌合されることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記磁石は、前記収容凹部の前記開口部をカバーするカバー部材によって支持されることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記収容凹部内に逆転防止機構が設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−187566(P2010−187566A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33227(P2009−33227)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】