説明

魚釣用リール

【課題】防水性能および耐久性が高い防水機構を有するとともに、スプールの高い回転性能を確保できる、小型化に適した魚釣用リールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、回転部材24(6)が2つの軸受42A,42Bを介して非回転部材40(7)に対して回転可能に支持されて成る。2つの軸受42A,42B間には、これらの軸受42A,42Bの内輪42bまたは外輪42a同士の間に挟持されるように弾性部材から成るシール部材60が配設される。シール部材60は、回転部材および非回転部材のうちの一方の周面にシール状態で嵌着する環状の本体部62と、この本体部62から径方向に延在してその端部64aが回転部材および非回転部材のうちの他方の周面にシール接触する延出部64とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関し、特に防水機構に特徴を有する魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リールは、水分に晒される過酷な環境下で使用される製品であるため、防水機構が必須の構成要素である。したがって、例えば従来のスピニングリールにおいては、例えばそのスプール内部のドラグ機構に水分が浸入しないように、スプールの後方側(ロータ側)から防水処理を施すべくシール部材が設けられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この場合、シール部材は、互いに隣接して位置されてスプールを回転可能に支持する2つの軸受の後側(ロータ側)に配設されている。
【0003】
なお、スプールを回転可能に支持する軸受は、スプールの回転性能を高めるために設けられるものであり、複数の軸受を設ける場合には、互いに隣接して配置するよりも互いに軸方向に離間して配置することが好ましい(例えば、特許文献3参照)。そうすることにより、スプールがスプール軸に対して傾くことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−239437号
【特許文献2】特開2001−275533号
【特許文献3】特開2007−209217号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、シール部材が軸受の後側(ロータ側)に配設されているため、ロータとスプールとの間の隙間から浸入してきた水分がそのままの水圧で直接にシール部材に接触する。したがって、シール部材の損耗が激しくなり、シール部材の耐久性に限界がある(防水性能が早期に低下し得る)。また、特許文献2では、防水機構に関与する部品の点数が多く、その組み込みが容易でないとともに、シール部材がOリングであるため、スプールの回転抵抗が大きくなるという問題がある。
【0006】
また、スプールの回転性能を高めるために複数の軸受を設ける従来の形態では、シール部材の設置位置を工夫する必要がある。すなわち、2つの軸受に加えてシール部材を設けるためには、リールの大型化を招かないようにしつつシール部材の設置スペースを確保しなければならない。
【0007】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、防水性能および耐久性が高い防水機構を有するとともに、スプールの高い回転性能を確保できる、小型化に適した魚釣用リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転部材が2つの軸受を介して非回転部材に対して回転可能に支持されて成る魚釣用リールであって、前記2つの軸受間には、これらの軸受の内輪または外輪同士の間に挟持されるように弾性部材から成るシール部材が配設され、前記シール部材は、回転部材および非回転部材のうちの一方の周面にシール状態で嵌着する環状の本体部と、この本体部から径方向に延在してその端部が回転部材および非回転部材のうちの他方の周面にシール接触する延出部とを有することを特徴とする。
【0009】
この請求項1に記載の発明によれば、シール部材が2つの軸受間に配設されているため、シール部材と接触し得る水分は、一方の軸受を通過してその圧力が低下された水分となり、したがって、回転部材の軸支部分に浸入してきた水分がそのままの水圧で直接にシール部材に接触することを防止できる。そのため、シール部材に対する負荷が小さくなり、シール部材の早期の損耗を防止でき、シール部材の耐久性を高めることができる(長期にわたって十分な防水性能を確保できる)。
【0010】
一般に、軸受の内外輪と回転部材または非回転部材との間の隙間は非常に小さく、また、軸受内にはコロ(転動体)、リテーナ、蓋部材などの間の隙間にオイルが充填されているため、軸受の流水抵抗は大きく、したがって、軸受を通過する水分の圧力低下は大きい。そのため、軸受を介して水分をシール部材に接触させる本発明の構成は、防水性能およびシール部材の耐性を高める上で極めて有益である。
【0011】
また、本発明は、2つの軸受間の空間にシール部材を配設する構造を成すため、特に回転部材が回転軸に対して傾かないように2つの軸受が互いに離間される構造では、軸受間の空間を有効利用してシール部材のための新たなスペースを確保せずに済み、省スペース化に寄与できる(リールの小型化を図ることができる)。
【0012】
また、このように弾性部材から成るシール部材が2つの軸受間に配設されていると、リールを落下させた場合など大きな衝撃がかかった際に、シール部材の弾性変形によって軸受間の軸方向距離を変えることができるため、軸受等が破損し難いという利点も得られる。なお、シール部材を構成する弾性部材としては、例えばゴムやエラストマー樹脂を挙げることができる。
【0013】
また、シール部材は、回転部材および非回転部材のうちの一方の周面にシール状態で嵌着する環状の本体部と、この本体部から径方向に延在してその端部が回転部材および非回転部材のうちの他方の周面にシール接触する延出部とを有する弾性部材として形成されているため、回転部材に対して大きな回転抵抗を与えることなく、スラスト方向およびラジアル方向の防水を1部品で実現することができ、部品点数を削減してリールの小型化に寄与できる。
【0014】
更に、上記構成では、互いに離間する2つの軸受によって回転部材が回転可能に支持されるため、回転部材の回転性能を高めることができるとともに、回転部材が回転軸に対して傾かないようにして回転部材の回転安定性を確保することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、リール本体に設けたハンドルの回転操作で釣糸案内部を有するロータを回転駆動して、スプールに釣糸を巻回する構造を成し、前記シール部材は、水分が前記ロータと前記スプールとの間の隙間からスプール内部のドラグ機構へと浸入することを防止することを特徴とする。
【0016】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、スプールの回転性能および回転安定性を高めつつ、ドラグ機構の防水を確実に図ることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記シール部材の前記本体部は、前記2つの軸受の内輪同士の間に挟持された状態で回転部材および非回転部材のうちの一方の外周面に弾性的に嵌着することを特徴とする。
【0018】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、シール部材が弾性締め付け力を利用して回転部材および非回転部材のうちの一方の外周面にシール状態で圧着するため、回転部材または非回転部材に対するシール効果が高まることは無論のこと、軸受内輪に対するシール効果も高めることができ、スラスト方向およびラジアル方向の防水を更に安定して確実に図ることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記2つの軸受の内輪または外輪と接触する前記本体部の両端面には、2つの軸受間で前記本体部を挟持する軸方向の挟持力を回転部材または非回転部材の周面に前記延出部の端部を接触させる径方向の接触力へと変換するための軸方向延在部が設けられることを特徴とする。
【0020】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれか1項にに記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、軸方向延在部の作用により、2つの軸受間にシール部材を挟持させるだけで回転部材および非回転部材の両方のシールを確保できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、防水性能および耐久性が高い防水機構を有するとともに、スプールの高い回転性能を確保できる、小型化に適した魚釣用リールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一部断面を含む側面図である。
【図2】図1の魚釣用スピニングリールのスプール部分の拡大断面図である。
【図3】(a)は図1の魚釣用スピニングリールのスプールを回転可能に支持する軸支部分の要部拡大断面図、(b)は軸支部分に設けられるシール部材の一方側の正面図、(c)はシール部材の側断面図、(d)はシール部材の他方側の正面図である。
【図4】(a)は第2の実施形態に係る軸支部分の要部拡大断面図、(b)は軸支部分に設けられるシール部材の一方側の正面図、(c)はシール部材の側断面図、(d)はシール部材の他方側の正面図である。
【図5】(a)は第3の実施形態に係る軸支部分の要部拡大断面図、(b)は軸支部分に設けられるシール部材の一方側の正面図、(c)はシール部材の側断面図、(d)はシール部材の他方側の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について説明する。
【0024】
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態に係る魚釣用リールの一例としての魚釣用スピニングリール1を示している。特に図1に示されるように、魚釣用スピニングリール1は、従来のものと同様に、ボディ部分2、ボディ部分2に回転自在に取り付けられた釣糸巻き取り用のハンドル3、ボディ部分2内に設けた伝動機構等を覆う蓋体4、ハンドル3の回転時にその回転トルクを伝動する図示しない伝動機構に接続されたロータ5、ロータ5の両側に形成され、リール本体1の前方に延在する一対の支持アーム8、支持アーム8の前端に設けられたベール支持部材やラインローラなどの公知の釣糸案内装置を備えており、かつ半環状のベール8aがラインローラを装着したベールアームやベールホルダー等のベール支持部材を介して釣糸巻取位置と釣糸放出位置との間で夫々反転自在に取り付けられている。
【0025】
図2は図1の一部、すなわち、スプール部分を拡大して示した断面図である。図中、6はスプールであって、スプール軸7にドラグ装置9を介して遊嵌されている(具体的には、後述するように回転可能に軸支される)。スプール軸7は、リール本体1内に内蔵された摺動子やトラバースカムからなるトラバース装置(図示せず)により、ハンドル3の回転に連動して前後方向に進退自在にトラバース運動する。このスプール軸7の前端部には、図2に示すようにドラグ調整ノブ35内に軸方向移動可能に回り止め嵌合したナット36に螺合する螺合部7aが形成されている。ナット36は、ドラグ調整ノブ35に装着固定されるカップ状の保持体35a内に設けた螺旋バネ37のバネ力によってドラグ調整ノブ35側に圧接されている。スプール軸7の前部には、ピン44によってスプールメタル40が一体的に連結されており、このスプールメタル44の外周にカップ状で内周に凹凸部が形成されたバネ受91(発音体)が回り止め嵌合されている。そして、保持体35aに係止された環状バネ38の端部がバネ91の凹凸部に係合しており、ドラグ調整ノブ35を回転させることにより節度感のあるクリック音を発生するように構成されている。したがって、ドラグ調整ノブ35を左右いずれかに回すことでナット36をスプール軸7に対して進退させ、それによって螺旋バネ37のバネ力を調節し、ドラグ制動部材90のドラグ力を調節することができる。
【0026】
ここで、ドラグ制動部材90は、スプールメタル40に回り止め嵌合したバネ受91と、外周端に設けた折曲部をスプール6のスプール軸止部24の係止孔24aに係止しスプール6と一体に回転するドラグワッシャ92と、スプールメタル40に回り止め嵌合されたドラグワッシャ93と、バネ受91とドラグワッシャ92,93とスプール軸止部24との間にそれぞれ介挿された複数のライニングワッシャ94とから成っている。
【0027】
以上の構成において、釣糸の巻き取りは、ベール8a(図1)を糸巻き取り位置にしてハンドル3を回転して行なう。すなわち、ハンドル3を回すと歯車伝動機構などを介してロータ5が回転し、それに伴ってリール本体1内に設けた前記トラバース機構により、スプール軸7がリール本体1に対して往復動可能に前後動し、ドラグ機構9を介してスプール軸7に連結されたスプール6もリール本体1に対して前後動する。他方、ロータ5の回転により前記釣糸案内装置のベール8aがスプール6の周りを回転し、スプール6の糸巻胴部10に釣糸を巻回することで、釣糸はスプール6上に一端(前)側から他端(後)側に向かって順次巻回される。
【0028】
また、図2に示されるように、本実施形態において、回転部材としてのスプール6は、そのスプール軸支部24が非回転部材としての筒状のスプールメタル40(したがって、スプール軸7)上に2つの軸受42A,42Bを介して回転可能に支持されている。各軸受42A,42Bは、図3に明確に示されるように、スプール6(スプール軸支部24)と接触する外輪42aと、スプールメタル40に接触する内輪42bと、外輪42aと内輪42bとの間に介挿されて保持器(図示せず)により転動可能に保持されるコロ(転動体)とから成る。なお、軸受42A,42Bの両端には蓋部材42cがある。
【0029】
また、これらの軸受42A,42Bは、水分がロータ5とスプール6との間の隙間からスプール6内部のドラグ装置(ドラグ機構)9へと浸入することを防止する防水機構を一体で備えている。具体的には、2つの軸受42A,42B間には、これらの軸受42A,42Bの内輪42b同士の間に挟持されるように弾性部材から成るシール部材60が配設される。このシール部材60は、ゴムやエラストマー樹脂などによって形成され、非回転部材であるスプールメタル40の外周面にシール状態で弾性的に嵌着する環状の本体部62と、この本体部62から径方向外側に延在してその端部64aが回転部材であるスプール6のスプール軸支部24の内周面にシール接触する延出部64とを有する。この場合、シール部材60の本体部62は、スプールメタル40がシール状態で挿通される内孔60aを有しており、その軸方向両端面62a,62bが軸受42A,42Bの内輪42bとシール状態で接触するとともに、その内周面62cがスプールメタル40の外周面とシール状態で接触する。
【0030】
このように、本実施形態によれば、シール部材60が2つの軸受42A,42B間に配設されているため、シール部材60と接触し得る水分は、一方の軸受(本実施形態では、軸受42B)を通過してその圧力が低下された水分となり、したがって、回転部材であるスプール6の軸支部分に浸入してきた水分がそのままの水圧で直接にシール部材60に接触することを防止できる。そのため、シール部材60に対する負荷が小さくなり、シール部材60の早期の損耗を防止でき、シール部材60の耐久性を高めることができる(長期にわたって十分な防水性能を確保できる)。本実施形態において、軸受42A,42Bの内外輪42a,42bと回転部材および非回転部材であるスプールメタル40およびスプール軸支部24との間の隙間は非常に小さく、また、軸受42A,42B内にはコロ42d、保持器(図示せず)、蓋部材41cなどの間の隙間にオイルが充填されているため、軸受42A,42Bの流水抵抗は大きく、したがって、軸受42Bを通過する水分の圧力低下は大きい。そのため、水分が軸受42Bを介してシール部材60に接触する本実施形態の構成は、防水性能およびシール部材の耐性を高める上で極めて有益である。
【0031】
また、本実施形態では、2つの軸受42A,42B間の空間にシール部材60を配設する構造を成すため、本実施形態のように回転部材であるスプール6が回転軸であるスプール軸7に対して傾かないように2つの軸受42A,42Bが互いに離間される構造では、軸受42A,42B間の空間を有効利用してシール部材60のための新たなスペースを確保せずに済み、有益である(省スペース化に寄与できる)。
【0032】
また、このように弾性部材から成るシール部材60が2つの軸受42A,42B間に配設されていると、リールを落下させた場合など大きな衝撃がかかった際に、シール部材60の弾性変形によって軸受42A,42B間の軸方向距離を変えることができるため、軸受42A,42B等が破損し難いという利点も得られる。
【0033】
また、シール部材60は、スプールメタル40の周面にシール状態で嵌着する環状の本体部62と、この本体部62から径方向に延在してその端部がスプール6のスプール軸支部24の周面にシール接触する延出部64とを有する弾性部材として形成されているため、回転部材であるスプール6に対して大きな回転抵抗を与えることなく、スラスト方向の防水(本体部62の内周面62cとスプールメタル40の外周面との間の防水)およびラジアル方向の防水(内輪42bの端面と本体部62の両端面62a,62bとの間の防水、および、延出部64の端部64aとスプール軸支部24の内周面との間の防水)を1部品で実現することができ、部品点数を削減してリールの小型化に寄与できる。
更に、本実施形態では、互いに離間する2つの軸受42A,42Bによってスプール6が回転可能に支持されるため、スプール6の回転性能を高めることができるとともに、スプール6がスプール軸7に対して傾かないようにしてスプール6の回転安定性を確保することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、シール部材60の本体部62は、2つの軸受42A,42Bの内輪42b同士の間に挟持された状態でスプールメタル40の外周面に弾性的に嵌着するため、すなわち、シール部材60が弾性締め付け力を利用してスプールメタル40の外周面にシール状態で圧着するため、スプールメタル40に対するシール効果が高まることは無論のこと、軸受内輪42bに対するシール効果も高めることができ、スラスト方向の防水(本体部62の内周面62cとスプールメタル40の外周面との間の防水)およびラジアル方向の防水(内輪42bの端面と本体部62の両端面62a,62bとの間の防水)を更に安定して確実に図ることができる。
【0035】
図4は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、シール部材60の形状が第1の実施形態と若干異なっており、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。
【0036】
すなわち、本実施形態では、2つの軸受42A,42Bの内輪42bと接触する本体部62の両端面62a,62bに、2つの軸受42A,42B間で本体部62を挟持する軸方向の挟持力をスプール軸支部24の内周面に延出部64の端部64aを接触させる径方向の接触力へと変換するための軸方向延在部が設けられている。具体的に、本実施形態において、前記軸方向延在部は、延出部64の延在方向と反対側の径方向に向かって(すなわち、径方向内側に向かって)本体部62の軸方向寸法を徐々に拡大させるテーパ面62a’,62b’として形成される。すなわち、この構成では、2つの軸受42A,42B間で本体部62を挟持する(若干押し潰す)ことにより、テーパ面62a’,62b’の作用で本体部62が径方向に弾性的に変形して延出部64が径方向外側に延びるように立ち上がって延出部64の端部64aがスプール軸支部24の内周面にシール状態で圧接するようになる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、前記軸方向延在部の作用により、2つの軸受42A,42B間にシール部材60を挟持させるだけで回転部材(スプール軸支部24)および非回転部材(スプールメタル40)の両方のシールを確保できる。また、テーパ面62a’,62b’によって軸方向の挟持力を径方向の接触力へと効率的に変換できる。
【0038】
図5は本発明の第3の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、シール部材60の前記軸方向延在部が軸方向に半球状に突出する突出部69として形成されており、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。
【0039】
このような構成によれば、軸方向延在部の簡単な形状により軸方向の挟持力を径方向の接触力へと変換でき、有益である。
【0040】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では本発明がスピニングリールに適用されているが、本発明は両軸受型リールなどの他のリールにも適用できる。また、前述した実施形態ではシール部材60が軸受42A,42Bの内輪42b間で挟持されているが、シール部材60が軸受42A,42Bの外輪42a同士の間で挟持されてもよい。その場合には、本体部62が回転部材であるスプール6のスプール軸支部24の周面にシール状態で嵌着し、延出部64の端部64aがが非回転部材であるスプールメタル40の周面にシール接触してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 魚釣用リール
5 ロータ
6 スプール(回転部材)
24 スプール軸支部(回転部材)
40 スプールメタル(非回転部材)
42A,42B 軸受
60 シール部材
62 本体部
62a’,62b’ テーパ面
64 延出部
69 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材が2つの軸受を介して非回転部材に対して回転可能に支持されて成る魚釣用リールであって、
前記2つの軸受間には、これらの軸受の内輪または外輪同士の間に挟持されるように弾性部材から成るシール部材が配設され、
前記シール部材は、回転部材および非回転部材のうちの一方の周面にシール状態で嵌着する環状の本体部と、この本体部から径方向に延在してその端部が回転部材および非回転部材のうちの他方の周面にシール接触する延出部とを有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
リール本体に設けたハンドルの回転操作で釣糸案内部を有するロータを回転駆動して、スプールに釣糸を巻回する構造を成し、
前記シール部材は、水分が前記ロータと前記スプールとの間の隙間からスプール内部のドラグ機構へと浸入することを防止することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記シール部材の前記本体部は、前記2つの軸受の内輪同士の間に挟持された状態で回転部材および非回転部材のうちの一方の外周面に弾性的に嵌着することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記2つの軸受の内輪または外輪と接触する前記本体部の両端面には、2つの軸受間で前記本体部を挟持する軸方向の挟持力を回転部材または非回転部材の周面に前記延出部の端部を接触させる径方向の接触力へと変換するための軸方向延在部が設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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