説明

魚釣用リール

【課題】側枠と外側板との間において側枠に構成要素や機構等を好適に設け、また、外側板の取り付けに支障を来さず、無駄な厚みを無くして側枠と外側板とを高い寸法精度で取り付ける。
【解決手段】側枠2aと反ハンドル側の外側板3aとは、リール本体1の竿延在方向におけるスプール5のスプール軸5cの軸心O1から後側となる後部同士が同一平面上で突き合わされているとともに、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1の前方において当該リール本体1の鉛直方向の上側となる前側上部同士が、同一平面よりも反ハンドル側となる位置で突き合わされている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸型の魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リール本体のフレームを構成する側枠間にスプールが回転自在に支持された両軸型の魚釣用リールでは、一般的に、リール本体の側枠と反ハンドル側の外側板とが同一平面上で付き合わされて取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
このような魚釣用リールでは、突き合せ部分が全周にわたって平らとなっているので、側枠と外側板との間に隙間が生じ難く組み付け精度を出すことができる。
【0003】
一方、特許文献2に開示された魚釣用リールでは、リール本体の側枠と反ハンドル側の外側板との突き合せ部分がリール本体の上側において反ハンドル側に膨出しているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106799号公報
【特許文献2】特開平7−264960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リール本体のフレームを構成する側枠は、精度や剛性が高くなっているので、この部分に対してリール本体の構成要素や機構等を設けることが望ましい。
特許文献1の魚釣用リールでは、前記したように、側枠とこの側枠に取り付けられる外側板との突き合せが同一平面上とされているので、側枠と外側板との間にスペースを確保し難く、側枠に対して構成要素や機構等を設けることに限界があった。
【0006】
この点、特許文献2の魚釣用リールでは、リール本体の側枠と反ハンドル側の外側板との突き合せ部分がリール本体の上側において反ハンドル側に膨出しているので、その分、側枠と外側板との間にスペースを確保し易い。
しかしながら、リール本体の上側の前後方向に、膨出した部分が長く延設されており、上面視でスプール軸の軸心に交差する位置まで膨出した部分が設けられているので、設計上の無駄となりやすく、その改善が望まれていた。
特に、上面視でスプーの軸に交差する位置まで膨出した部分が設けられているので、一般的な外側板、例えば、スプールのスプール軸の軸心を中心として回動させながら側枠に取り付けられる外側板は、膨出した部分が邪魔になって、うまく取り付けることができず、採用することができない。
また、特許文献2の魚釣用リールでは、膨出した部分が長く延設されているので、その分、無駄な厚みが生じるおそれがあり、また、側枠と外側板との高い寸法精度も要求される。
【0007】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、側枠と外側板との間において側枠に構成要素や機構等を好適に設けることができ、また、外側板の取り付けに支障を来さず、無駄な厚みを無くして側枠と外側板とを高い寸法精度で取り付けることができる魚釣り用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、左右の側枠を有するフレームにスプールが回転可能に支持され、前記側枠に外側板が取り付けられてなるリール本体を備えた魚釣用リールであって、前記リール本体の前記側枠と反ハンドル側の前記外側板とは、前記リール本体の竿延在方向における前記スプールのスプール軸の軸心から後側となる後部同士が同一平面上で突き合わされているとともに、前記リール本体の竿延在方向における前記スプール軸の軸心の前方において当該リール本体の鉛直方向の上側となる前側上部同士が、前記同一平面よりも反ハンドル側となる位置で突き合わされていることを特徴とする。
【0009】
この魚釣用リールによれば、リール本体の竿延在方向におけるスプール軸の軸心の前方においてリール本体の鉛直方向の上側となる前側上部同士が、スプール軸の軸心から後側で後部同士が突き合わされる同一平面よりも反ハンドル側となる位置で突き合わされているので、側枠と外側板との間にスペースを確保し易い。
また、リール本体の竿延在方向におけるスプール軸の軸心から後側となる後部同士が同一平面上で突き合わされているので、スプール軸の軸心を中心として回動させながら側枠に取り付けられる外側板を採用することができ、取り付けの際に、前側上部同士の突き合せ部分が邪魔にならない。
また、リール本体の鉛直方向の上側となる前側上部同士は、リール本体の竿延在方向におけるスプール軸の軸心の前方において突き合わされているので、スプール軸の軸心から後側となる部分に突き合せ部分が延設されているものに比べて、突き合せ部分を小さく構成することができる。
【0010】
また、本発明の魚釣用リールは、前記側枠の前側上部には、反ハンドル側に向けて湾曲状に膨出した膨出部が形成され、反ハンドル側の前記外側板には、前記膨出部に対応する凹状部が形成されており、前記膨出部と前記凹状部とが相互に当接されることで、前記側枠の前側上部同士が前記同一平面よりも反ハンドル側となる位置で突き合わされており、前記スプール軸に沿う方向において、前記膨出部の膨出幅は、前記スプール軸の軸心から後側における前記側枠の幅よりも幅広とされていることを特徴とする。
【0011】
この魚釣用リールによれば、膨出部の膨出幅は、スプール軸の軸心から後側における側枠の幅よりも幅広とされているので、膨出部に強度および剛性をもたせることができる。
また、相対的にスプール軸の軸心から後側における側枠の幅が狭いので省スペース化を図ることができる。
【0012】
また、本発明の魚釣用リールは、前記側枠の前側上部には、サムレストが一体的に設けられていることを特徴とする。また、この場合に、前記サムレストから前記膨出部にわたって曲線状に形成されている構成とするのがよい。
【0013】
この魚釣用リールによれば、サムレストの高さ位置を低くする、ロープロファイル化が可能である。
また、サムレストから膨出部にわたって曲線状に形成されることで、サムレストから膨出部にわたる広い範囲を指載せ部として利用することができる。また、サムレストから膨出部への指位置の移動、膨出部からサムレストへの指位置の移動をスムーズに行うことができる。
【0014】
また、本発明の魚釣用リールは、前記膨出部の下方に、前記リール本体の構成要素を配置可能なスペースが形成されていることを特徴とする。
【0015】
この魚釣用リールによれば、膨出部の下方に形成されるスペースにリール本体の構成要素や機構等を設けることができ、膨出部で上方から構成要素や機構等を覆うことができる。
【0016】
また、本発明は、前記膨出部のハンドル側となる前記側枠の側部に、反ハンドル側へ向けた凹部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この魚釣用リールによれば、凹部を利用して膨出部のハンドル側に位置する構成要素や機構等を配置することができる。
【0018】
また、反ハンドル側の前記外側板は、前記スプール軸の軸心周りに回動させることにより、前記側枠に対して着脱可能に設けられており、当該外側板の前端部には、前記スプール軸の軸心周りの回動により前記側枠の前端部に係脱可能な係合部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この魚釣用リールによれば、側枠に対して外側板を着脱することができ、着脱時には外側板の前端部に設けられた係合部により、外側板の前端部を側枠の前端部に係脱することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、側枠と外側板との間にスペースを確保し易く、側枠に対して構成要素や機構等を好適に設けることができる。ここで、側枠は外側板に比べて剛体であり、また、寸法精度が高く、特に他の機構との相対的な位置関係において精度が高いので、この部分に構成要素や機構等を設けることにより、魚釣用リールの作動精度や品質を高めることができる。
【0021】
また、スプール軸の軸心を中心として回動させながら側枠に取り付けられる外側板を採用することができるので、外側板の取り付け構造が簡単になり、コストの低減を図ることができる。取り付けの際に、前側上部同士の突き合せ部分が邪魔にならない。
【0022】
また、前側上部同士は、リール本体の竿延在方向におけるスプール軸の軸心の前方において突き合わされ、スプール軸の軸心から後側となる部分に突き合せ部分が延設されているものに比べて、突き合せ部分を小さく構成することができるので、寸法精度の高い側枠に構成要素や機構等を設けることができる構成でありながら、無駄な厚みを無くして、突き合せ部分の小型化を図ることができ、コストの低減を図ることができる。
また、スプール軸の軸心から後方側の省スペース化を図ることができ、軽量化を図ることができる。
【0023】
また、膨出部の膨出幅が、スプール軸の軸心から後側における側枠の幅よりも幅広とされている構成では、膨出部に強度および剛性をもたせることができるので、サムレストを好適に接合(一体成形のサムレストを含む)することができ、また、構成要素や機構等を精度良く好適に設けることができる。
また、膨出部を指載せ部として利用することができ、リール操作性が向上する。
【0024】
さらに、相対的にスプール軸の軸心から後側における側枠の幅が狭く省スペース化を図ることができるので、剛性を有しながらも軽量化された魚釣用リールが得られる。
【0025】
また、側枠の前側上部にサムレストが一体的に設けられている構成では、ロープロファイル化が可能であるとともに剛性や強度を併せ備えた魚釣用リールが得られる。
さらに、一体的に設けられていることにより、サムレスト上に載置した指への振動伝達が向上されリール操作時のフィーリング(感度)が高まる。
【0026】
また、サムレストから膨出部にわたって曲線状に形成された構成では、サムレストから膨出部にわたる広い範囲を指載せ部として利用することができ、サムレストから膨出部への指位置の移動、膨出部からサムレストへの指位置の移動をスムーズに行うことができるので、操作性がよく、フィーリング(感度)のよい保持を実現することができる。
さらに、指位置の移動範囲において、部材同士を組み合わせたときのような境界部分(隙間)が生じることがなく、ゴミが付着したり、水分が浸入したりすることもない。したがって、好適な操作感が持続され、長期的に安定した動作で操作することができる魚釣用リールが得られる。
【0027】
また、膨出部の下方に、リール本体の構成要素を配置可能なスペースが形成されている構成では、膨出部で上方から構成要素や機構等を覆うことができるので、例えば、雨の日の釣行において、仮に、水分が浸入するような事態が生じたとしても、膨出部が庇の役割をなして、その下方に水分が伝うのを防止することができる。
【0028】
また、膨出部のハンドル側となる側枠の側部に、反ハンドル側へ向けた凹部が形成されている構成では、凹部を利用して膨出部のハンドル側に位置する構成要素や機構等を配置することができるので、レイアウトの自由度を高めることができる。また、魚釣用リールのコンパクト化を図ることもできる。
【0029】
また、反ハンドル側の外側板が、側枠に対して着脱可能に設けられ、外側板の前端部に、スプール軸の軸心周りの回動により側枠の前端部に係脱可能な係合部が設けられている構成では、外側板の前端部を側枠の前端部に係合して固定することができるので、外側板が取り付け取り外しできる構成でありながら、側枠に対する外側板の前端部の取付剛性を高めることができる。
【0030】
また、前側上部同士の突き合せ部分が曲線状とされている場合に、これが直線とされている場合に比べて突き合せ部分の寸法精度が低くなるおそれがあるが、係合部によって側枠に対する外側板の前端部の取付剛性を高めることができるので、突き合せ部分に隙間等が生じるのを阻止することができ、組み付け精度を高めることができる。これにより、剛性感を備えた魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールの正面図、(b)は上面図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールの内部構造を示す上面図、(b)は膨出部の関係を示した説明図である。
【図3】フレームと外側板とを示す斜視図である。
【図4】フレームを示す図であり、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は正面図、(e)は後面図、(f)はスプール軸を通る縦断面図、(g)は外側板を取り付けたときの状態を示す後面図である。
【図5】側板を示す図であり、(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は正面図、(e)は後面図、(f)は図5(a)のA−A線断面図である。
【図6】(a)は外側板を取り外した状態の側面図、(b)は外側板の内側の構成を示した側面図である。
【図7】(a)は外側板の係止状態を示す側面図、(b)は外側板をずらした状態を示す側面図である。
【図8】(a)〜(d)は作用説明図である。
【図9】(a)は本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールの上面図、(b)は膨出部の関係を示した説明図である。
【図10】(a)はフレームの正面図、(b)はフレームの上面図である。
【図11】魚釣用リールの斜視図である。
【図12】フレームと外側板とを示した斜視図である。
【図13】(a)は外側板を取り外した状態の側面図、(b)は外側板の内側の構成を示した側面図である。
【図14】(a)は魚釣用リールの側面図、(b)は外側板をずらした状態を示す側面図である。
【図15】(a),(b)は釣糸巻き取り時における各部の位置関係を示す説明図、(c),(d)は釣糸放出時における各部の位置関係を示す説明図である。
【図16】サムレストの構造を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「上下」「前後」「左右」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0033】
(第1実施形態)
図1に示すように、魚釣用リールのリール本体1は、左右一対の側枠2a,2bを複数の支柱2cで連結して一体の枠体構造を形成するフレーム2を有し、この側枠2a,2bのそれぞれの外側に、外側板3a,3bを取付けてハウジングとして形成され、釣竿取付脚2c1を介して図示しない釣竿に固定される。
ここで、左側の側枠2aと外側板3aとの間、右側の側枠2bと外側板3bとの間には内部空間がそれぞれ形成され、このうち側枠2aと外側板3aとの間に形成される内部空間には、リール本体1の構成要素として係止機構20や遠心ブレーキ装置30A等が設置されるようになっている。また、右側の側枠2bと外側板3bとの間に形成される内部空間には、駆動機構10、クラッチ機構50、ドラグ機構35等が設置されるようになっている。
そして、本実施形態では、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1の前方(軸心O1に交差する部分を含まない前側となる部位)においてリール本体1の鉛直方向(図1(a)の矢印上下方向)の上側となる前側上部同士が、反ハンドル側(左側、以下同じ)となる膨出された位置にて突き合わされている。
【0034】
左右の側枠2a,2bは、複数の支柱2c(図3参照)を介して一体化されており、そのうちの下部に設けられた支柱2cには、釣竿のリールシート(不図示)に装着される釣竿取付脚2c1が設けられている。
また、図2(a)に示すように、左側の外側板3aと右側の側枠2b間には、軸受5a,5bを介してスプール軸5cが回転可能に支持されており、このスプール軸5cにスプール5が取り付けられている。
【0035】
フレーム2は、図3に示すように、左右に間隔を空けて配置された側枠2a,2bと、側枠2a,2bを連結する複数の支柱2cと、側枠2a,2bの前側上部に架け渡されたサムレスト4と、側枠2aの前側上部から反ハンドル側(左側)に向けて膨出形成された膨出部4bと、を備え、これらが一体的に構成されてなる。
また、側枠2a,2bの前端部2a2,2b2には、フレーム2と別体で形成された前枠2dが取り付けられるようになっている。
【0036】
側枠2aは、図4(a)に示すように、側面視で、前端部2a2が前方に向けて上下方向に窄まるように延設された略楕円形状の平板状を呈しており、その周縁に対して外側板3a(図3参照)の周縁が突き合わされて取り付けられるようになっている。
側枠2aは、図4(b)に示すように、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1から後側(軸心O1に交差する部分を含んで後側)となる後部周縁部(後部)2a4が、これに対峙する外側板3aの後部周縁部3a4(図3参照)と同一平面上に位置するように平に形成されている。
【0037】
一方、竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1の前方となる側枠2aの前側上部には、図3、図4各図に示すように、膨出部4bが形成されている。膨出部4bは、図4各図に示すように、反ハンドル側に向けて湾曲状に膨出する湾曲板状を呈しており、図2(b)に示すように、外側縁部4b1が、前記した突き合せ面となる後部周縁部(後部)2a4の位置する同一平面よりも反ハンドル側に位置している。
膨出部4bの外側縁部4b1は、図4(b)に示すように、上面視で略S字形状に形成されている。
膨出部4bは、図3に示すように、側枠2aおよびこれに連続するサムレスト4と一体的に設けられており、上面がサムレスト4から続く曲線状とされている。
【0038】
このような膨出部4bは、竿延在方向において釣竿取付脚2c1の中心を通る線O2(図2(a)参照)を基準線として、図2(b)に示すように、この基準線から側枠2aの内側面2a5までの距離をL1、後部周縁部2a4までの距離をL2、膨出部4bを構成している第1曲面4a1の膨出端までの距離をL3、膨出部4b(第2曲面4a2)の外側縁部4b1までの距離をL4としたときに、L1<L2<L3<L4の関係となるように設定されている。つまり、膨出部4b(第2曲面4a2)の外側縁部4b1は、同一平面となる後部周縁部2a4よりも(L4−L2)で表される最大寸法分、反ハンドル側となる位置に膨出しており、このように膨出した状態で外側板3aに突き合わされるようになっている。つまり、膨出部4bの膨出幅(L4−L1)は、スプール軸5cの軸心O1から後側における側枠2aの幅(L2−L1)よりも幅広とされている。
【0039】
本実施形態では膨出部4bが前記したように湾曲板状を呈しており、図4各図に示すように、後部周縁部2a4を含む同一平面から膨出部4bのみが反ハンドル側へ膨出(突出)しているので、図6(a)に示すように、膨出部4bの下方には、側枠2aの側面との間にリール本体1の構成要素である止めリング6a、係止部材6bおよび係止ばね6c等を配置可能なスペースS1が形成されている。
なお、膨出部4bの下面は、湾曲凹状に形成されているので、図6(a)に示すように、スペースS1において膨出部4bの下面内側に入り込むようにして、支持軸6dや止めリング6a、係止部材6bの一部を側枠2aに配置することができる。
【0040】
側枠2aの前端側面には、係合受部45が設けられている。係合受部45には、外側板3aの後記する係合部40が係脱可能である。
係合受部45は、図4(b)に示すように、平面視で略L字形状を呈しており、側枠2aの前端側面から左側方へ向けて突設された突設部46と、突設部46に連続して折り曲げられた折曲部47とを備えている。そして、折曲部47の内側部47aに、外側板3aの係合部40(内側部42a)が係脱可能となっている。
【0041】
図3、図4(b)に示すように、係合受部45の下部には、凹溝48が形成されている。凹溝48は、側枠2aの下縁を切欠いて形成されており、スプール軸5cの軸心O1を中心として側枠2aに外側板3aを取り付け取り外しする際の、係合部40の回動軌跡に重なる位置に形成されている。
また、係合受部45の上方における近傍位置には、前枠2dを係止するための係止突部49が設けられている。
【0042】
前枠2dは、側枠2a,2bの前端部2a2,2b2に掛け渡されるようにして装着され、右端部が側枠2bに図示しないねじで固定される。また、前枠2dの左端部には、前記した係止突部49に係止される枠部2d1が設けられており、この枠部2d1を係止突部49に引っ掛けるようにして、前枠2dの左端部が側枠2aの前端部2a2に取り付けられる。
前枠2dの左上部には、傾斜部2d3が形成されており、前端部2a2に前枠2dが取り付けられた状態で、傾斜部2d3が、側枠2aの膨出部4bに接続されるようになっている。これにより、膨出部4bから傾斜部2d3にかけて連続した傾斜面が形成され、膨出部4bから前枠2dにかけて連続した面が形成されるようになっている。
【0043】
外側板3aは、図5(b)〜(e)に示すように、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1から後側となる後部周縁部3a4が、側枠2aの後部周縁部(後部)2a4と同一平面で突き合わされるように平に形成されている。
そして、図3、図5(b)(d)に示すように、外側板3aには、側枠2aの膨出部4bに対応する位置に凹状部3b1が形成されている。凹状部3b1は、膨出部4bに対応する湾曲凹状とされており、側枠2aに外側板3aを取り付けた際に、膨出部4bに突き合わされるようになっている。
なお、膨出部4bと凹状部3b1との突き合せ形状は、図1(b)に示すように、略S字形状とされている。
本実施形態では、後記するようにしてスプール軸5cの軸心O1を中心として回動させることで、側枠2aに対して外側板3aが取り付けられるようになっており、取り付け時の回動により側枠2aの膨出部4bに外側板3aの凹状部3b1が突き合わされるようになっている。
【0044】
また、側枠2aには、図6(a)に示すように、開口2a3の外周縁に、円周方向に所定の間隔(略90度間隔)を置いて、外側板3aの後記する舌片状の係合片31cが係合可能な溝状の係合溝部2h1〜2h4が設けられている。なお、係合溝部2h1、2h4は、必ずしも設けなくてもよい。
【0045】
外側板3aの前端内側面には、図3、図5(b)(d)に示すように、係合部40が設けられている。この係合部40は側枠2aの係合受部45に係脱可能となっており、平面視で略L字形状(図5(b)参照)を呈している。係合部40は、外側板3aの前端内側面から右側方へ向けて突設された突設部41と、突設部41に連続して折り曲げられた折曲部42とを備えている。そして、折曲部42の内側部42aが、側枠2aの係合受部45(内側部47a)に係脱可能となっている。
外側板3aの内側部42aは、図5(d)に示すように、上部の角部が面取りされており、側枠2aの係合受部45の内側部47aに対して係合し易くなっている。
また、係合部40の下方における外側板3aの下縁には、側枠2aの凹溝48に係合可能な係合突出部43が設けられている。
【0046】
また、図6(b)に示すように、外側板3aのブレーキリング31aには、その円筒状の外周縁に側枠2aの係合溝部2h1〜2h4にそれぞれ係合可能な舌片状の係合片31cが突設されている。これにより、側枠2aに外側板3aを取り付ける際には、側枠2aの側面に外側板3aを合わせるようにして、スプール軸5cの軸心O1を中心として回動させることで、各係合溝部2h1〜2h4に外側板3aの係合片31cがそれぞれ係合し、これによって、側枠2aに脱落不能に外側板3aが取り付けられることとなる。
【0047】
ここで、外側板3aの内面には、係止機構20が設けられている。係止機構20は、操作ボタン21(図7(a)参照)と、この操作ボタン21の操作に連動して揺動する係止部材22とを備えて構成されている。操作ボタン21は、樹脂製であり、外側板3aのボス部3c(図5(a)参照)内に図示しないばね部材を介して押し下げ操作可能に収容されている。
【0048】
係止部材22は、平板状の金属製の部材であり、側面視で略く字形状を呈している。係止部材22は、一端部が操作ボタン21に連結され、他端部が側枠2aに設けられた受部2e(図6(a)参照)に係脱可能とされており、一対の支持腕25a,25bを支点として、外側板3aに揺動可能に支持されている。
そして、操作ボタン21を押し下げ操作することにより、係止部材22が側枠2aの受部2eから外れて、これらの係止状態が解除され、図7(a)に示すように、側枠2aに外側板3aが取り付けられている状態から、図7(b)に示すように、側枠2aから外側板3aを回動させるようにして、外側板3aの取り外しが可能となる。また、取り付け時には、外側板3aをスプール軸5cの軸心O1を中心として回動させることで、係止部材22が受部2eに自動的に係止され、側枠2aに対して外側板3aが取り付けられる。
【0049】
スプール5は、ハンドル7を回転操作することによって回転させることができるように構成されており、ハンドル7は、外側板3bから突出したハンドル軸7aの端部に取り付けられて、外側板3bとの間に介在された逆転防止機構7b(転がり式一方向クラッチ)によって、釣糸巻き取り方向にのみ回転可能となっている。
なお、スプール軸5cを回転可能に支持する軸受5aは、外側板3aに設けられた支持部材31の中央部に配設されている。また、軸受5bは、側枠2bに配設されている。なお、軸受5bは、外側板3bに配設してもよい。
【0050】
スプール軸5cの端部には、スプール軸5cの過回転を防止して、釣糸放出時のバックラッシュを防止する遠心ブレーキ装置30Aが設けられている。この遠心ブレーキ装置30Aは、外側板3aの内側に固定保持されたブレーキリング31aと、このブレーキリング31aの内周側に形成された図示しない制動面に摺接するブレーキカラー32とを有する。このブレーキカラー32は、スプール軸5cから半径方向外方に延設した支持杆5dに摺動自在に装着されており、スプール軸5cが回転したときに作用する遠心力に応じて形成される摩擦力により、スプール5の回転に適度のブレーキ力を作用させるようになっている。
【0051】
側枠2bと外側板3bとの間には、前記したように、ハンドル7の回転運動をスプール軸5c、およびレベルワインド機構15の螺軸16に伝達する駆動機構10、駆動力の伝達を継脱するクラッチ機構50のほか、魚釣時にスプール5から釣糸が繰り出された際に、スプール5にドラグ力を付与するドラグ機構35等が収容されている。
【0052】
駆動機構10は、公知のように、ハンドル軸7aに回転可能に支持された駆動歯車11と、この駆動歯車11に噛合するピニオン12とを備えている。ピニオン12は、スプール軸5cと同軸上に設置されており、ピニオン軸12cに沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピニオン12の外周には、円周溝12aが形成されており、この円周溝12aに、クラッチ機構50のヨーク57が係合して、ピニオン12を軸方向に移動させるようになっている。すなわち、ピニオン12が軸方向に移動することで、スプール軸5cとの間で継脱がなされ、動力伝達状態(クラッチON状態)/動力遮断状態(クラッチOFF状態)に切り換えられるようになっている。
【0053】
スプール5の前方において、側枠2a,2b間には、レベルワインド機構15が配置されている。レベルワインド機構15は、駆動機構10を介して回転駆動される螺軸16と、螺軸16に装着されて左右方向に往復動可能に設けられた釣糸案内体17と、この釣糸案内体17に設けられたラインガイド18とを備えている。
螺軸16は、側枠2a,2b間に回転可能に支持されており、駆動機構10を介して回転駆動されるようになっている。螺軸16の端部には、連動歯車16aが取り付けられており、この連動歯車16aには、ハンドル軸7aの駆動歯車11に隣接して設けられた歯車11aが噛合している。これにより、ハンドル7を巻き取り回転操作すると、ハンドル軸7aの回転が、歯車11aおよび連動歯車16aを通じて螺軸16に伝わり、螺軸16が回転駆動される。
【0054】
螺軸16の外周面には、螺旋溝16bが形成され、この螺旋溝16bには、釣糸案内体17に設けられた図示しない摺動子が係合している。これにより、釣糸案内体17のラインガイド18は、螺軸16が連動歯車16aによって回転駆動されることで、螺旋溝16bに係合する図示しない摺動子を介して左右往復動するようになっている。
【0055】
また、図1(a)(b)、図2(a)に示すように、側枠2a,2b間には、補助操作部6が回動可能に支持されている。補助操作部6は、駆動機構10の駆動歯車11(図2(a)参照)を介してスプール5(図2(a)参照)を補助的に巻き取り操作できるように構成されている。補助操作部6は、側枠2a,2b間に回動可能に設けられた駆動軸(図6(a)参照)6dに固定され、後方斜め上方へ向けて突出するように配置されている。
【0056】
図6(a)に示すように、支持軸6dの左端部は、側枠2aの側方において、膨出部4bの下方に露出しており、支持軸6dには、止めリング6aで連結部材6cが連結されている。また、連結部材6cには、側枠2aとの間で付勢ばね6bが取り付けられており、これによって、補助操作部6は、常時前方向に回動する方向に付勢されている。
【0057】
なお、図6(a)に示すように、付勢ばね6bの下方には、レベルワインド機構15(図2(a)参照)の螺軸16の左端部が露出するようにして支持されており、止めリング16cで係止されている。
【0058】
次に、側枠2aから外側板3aを取り外す際の作用について説明する。
ここで、側枠2aに外側板3aが取り付けられた状態では、図7(a)に示すように、係止機構20の係止部材22が側枠2aの受部2eに係止されているとともに、側枠2aの係合溝部2h1〜2h4に外側板3aの係合片31cがそれぞれ係合している。
また、側枠2aの前端部2a2の係合受部45(内側部47a)に、外側板3aの係合部40(内側部42a)が係合し、側枠2aの前端部2a2と外側板3aの前端部とが噛み合うようにして固定されている。
ここで、図8(a)に示すように、係合受部45に係合部40が係合した状態で、係合部40の突設部41は、係止突部49に係止されている前枠2dの枠部2d1に達しており、この枠部2d1に当接している。したがって、係止突部49と枠部2d1との係合状態が係合受部45と係合部40との係合によって好適に維持されており、側枠2aに対して前枠2dが脱落不能に固定されている。
【0059】
係止機構20(図7(a)参照)の操作ボタン21を操作して、外側板3aをスプール軸5c(図2(a)参照)の軸心O1を中心として回動させると、図8(b)に示すように、係合受部45に対して係合部40が外れる方向に移動するとともに、係止突部49と枠部2d1との係合状態が解除可能状態にされ、さらに、側枠2aの凹溝48から外側板3aの係合突出部43が外れて、係合部40の突設部41が妨げられることなく凹溝48内に侵入する。
ここで、側枠2aは、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1から後側となる後部周縁部(後部)2a4が、これに対峙する外側板3aの後部周縁部3a4(図3参照)と同一平面上に位置するように平に形成されているので、スプール軸5cの軸心O1を中心として回動させながら外側板3aを取り外すことができる。
【0060】
その後、さらに外側板3aを回動させると、図8(c)に示すように、係合受部45から係合部40が外れ、係止突部49と枠部2d1との係合状態が解除される。これとともに、係合部40が、側枠2aの凹溝48内を通過する。
【0061】
そして、さらに外側板3aを回動させると、図8(d)に示すように、係合部40が側枠2aの凹溝48から外れる位置まで回動し、これとともに、外側板3aの舌片状の係合片31c(図6(b)参照)が側枠2aの係合溝部2h1〜2h4(図6(a)参照)からそれぞれ外れる状態となり、側枠2aから外側板3aが取り外し可能となる。
なお、外側板3aを側枠2aに取り付ける際には、前記した回動操作と逆の方向に外側板3aを回動操作することで、側枠2aに取り付けることができる。
【0062】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1の前方において、側枠2aと外側板3aとの前側上部同士(膨出部4b、凹状部3b1)が、スプール軸5cの軸心O1から後側の突合せ面である同一平面よりも反ハンドル側となる位置で突き合わされているので、側枠2aと外側板3aとの間にスペースを確保し易い。
これにより、側枠2aに対して構成要素や機構等(止めリング6a、係止部材6b、係止ばね6c等)を好適に設けることができる。ここで、側枠2aは外側板3aに比べて剛体であり、また、寸法精度が高く、特に他の機構との相対的な位置関係において精度が高いので、この部分に構成要素や機構等を設けることにより、魚釣用リールの作動精度や品質を高めることができる。
【0063】
また、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1から後側となる後部同士が同一平面上で突き合わされているので、スプール軸5cの軸心O1を中心として回動させながら側枠2aに取り付けられる外側板3aを採用することができ、取り付けの際に、前側上部同士の突き合せ部分が邪魔にならない。
【0064】
また、前側上部同士は、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1の前方において突き合わされているので、スプール軸5cの軸心O1から後側となる部分に突き合せ部分が延設されているものに比べて、突き合せ部分を小さく構成することができる。したがって、寸法精度の高い側枠2aに構成要素や機構等を設けることができる構成でありながら、突き合せ部分の小型化を図ることができ、コストの低減を図ることができる。
また、スプール軸5cの軸心O1から後方側の省スペース化を図ることができ、軽量化を図ることができる。
【0065】
また、膨出部4bの膨出幅は、スプール軸5cの軸心O1から後側における側枠2aの幅よりも幅広とされているので、膨出部4bに強度および剛性をもたせることができる。これにより、サムレスト4を好適に接合することができ、また、構成要素や機構等を精度良く好適に設けることができる。
さらに、膨出部4bを指載せ部として利用することができ、リール操作性が向上する。
また、相対的にスプール軸5cの軸心O1から後側における側枠2aの幅が狭いので省スペース化を図ることができる。これにより、剛性を有しながらも軽量化された魚釣用リールが得られる。
【0066】
さらに、側枠2aの前側上部にサムレスト4が一体的に設けられているので、ロープロファイル化が可能であるとともに剛性や強度を併せ備えた魚釣用リールが得られる。
また、一体的に設けられていることにより、サムレスト4上に載置した指への振動伝達が向上されリール操作時のフィーリング(感度)が高まる。
【0067】
また、サムレスト4から膨出部4bにわたって、上面が曲線状に形成されているので、サムレスト4から膨出部4bにわたる広い範囲を指載せ部として利用することができ、サムレスト4から膨出部4bへの指位置の移動、膨出部4bからサムレスト4への指位置の移動をスムーズに行うことができるので、操作性がよく、フィーリング(感度)のよい保持を実現することができる。
さらに、指位置の移動範囲において、部材同士を組み合わせたときのような境界部分(隙間)が生じることがなく、ゴミが付着したり、水分が浸入したりすることもない。したがって、好適な操作感が持続され、長期的に安定した動作で操作することができる魚釣用リールが得られる。
【0068】
また、膨出部4bの下方に、リール本体1の構成要素を配置可能なスペースS1が形成されている構成では、膨出部4bで上方から構成要素や機構等を覆うことができるので、例えば、雨の日の釣行において、仮に、水分が浸入するような事態が生じたとしても、膨出部4bが庇の役割をなして、その下方に水分が伝うのを防止することができる。
【0069】
また、係合部40と係合受部45との係合により外側板3aの前端部を側枠2aの前端部2a2に固定することができるので、外側板3aが取り付け取り外しできる構成でありながら、側枠2aに対する外側板3aの前端部の取付剛性を高めることができる。
【0070】
また、前側上部同士の突き合せ部分が曲線状(略S字形状)とされているので、これが直線とされている場合に比べて突き合せ部分の寸法精度が低くなるおそれがあるが、係合部40と係合受部45との係合によって側枠2aに対する外側板3aの前端部の取付剛性を高めることができるので、突き合せ部分に隙間等が生じるのを阻止することができ、組み付け精度を高めることができる。これにより、剛性感を備えた魚釣用リールが得られる。
【0071】
(第2実施形態)
図9〜図16を参照して第2実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第1実施形態と異なるところは、リール本体1の上部の側枠2a,2b間に設けられたサムレスト60が、クラッチレバー53の切り換え操作に連動して上下方向に移動可能に設けられているとともに、サムレスト60の前部が左右方向に幅広に形成されている点である。
【0072】
サムレスト60は、図9(a)に示すように、左側前部60aおよび右側前部60bが左右方向に幅広に形成されて左右方向にそれぞれ膨出しており、これに対応するように、側枠2a,2bの前側上部(膨出部4b)が左右方向に膨出して、外側縁部4b1が、突き合せ面となる後部周縁部(後部)2a4の位置する同一平面よりも反ハンドル側に位置している。
そして、側枠2a,2bの前側上部における内側部2a6,2b6が側枠2a,2b膨出方向に向けてそれぞれ凹状に形成されている。
【0073】
この内側部2a6,2b6を利用して、図10(a)(b)に示すように、側枠2a,2bの内側には、収容部2a1,2b1が形成されている。この収容部2a1,2b1には、図11に示すように、略三角形状の挿通孔2p1,2p2がそれぞれ形成されており、これに対応するようにして、外側板3a,3bにも挿通窓3p1,3p2が形成されている。
本実施形態では、これらの挿通孔2p1,2p2、挿通窓3p1,3p2が左右方向に幅広とされたラインガイド23の、左右移動時における収容スペースとして機能するようになっている。
【0074】
そして、前側上部は、竿延在方向において釣竿取付脚2c1の中心を通る線(不図示)を基準線として、図9(b)に示すように、この基準線から側枠2aの内側面2a5までの距離をL11、後部周縁部2a4までの距離をL12、内側部2a6までの距離をL13、第1曲面4a1の膨出端(外周縁部4b1)までの距離をL14としたときに、L11<L12<L13<L14の関係となるように設定されている。つまり、膨出部4bの第1曲面4a1は、同一平面となる後部周縁部2a4よりも(L14−L12)で表される最大寸法分、反ハンドル側となる位置に膨出しており、このように膨出した状態で外側板3aに突き合わされるようになっている。
そして、サムレスト60から膨出部4bの突き合せ部にかけて、上面がサムレスト60から続く曲線状とされている。
【0075】
また、側枠2aの前端側面には、係合受部45が設けられている。係合受部45には、外側板3aの係合部40が係脱可能である。
図13(a)に示すように、係合受部45の下部には、凹溝48aが形成されている。凹溝48aは、側枠2aの下縁を切欠いて形成されており、スプール軸5cの軸心O1を中心として側枠2aに外側板3aを取り付け取り外しする際の、係合部40および外側板3aの前端下縁部43aの回動軌跡に重なる位置に形成されている。
【0076】
外側板3aは、図9(a)、図10(b)に示すように、リール本体1の竿延在方向におけるスプール軸5cの軸心O1から後側となる後部周縁部3a4が、側枠2aの後部周縁部(後部)2a4と同一平面で突き合わされるように平に形成されている。
そして、外側板3aには、図12にも示すように、側枠2aの膨出部4bに対応する位置に凹状部3b1が形成されている。凹状部3b1は、膨出部4bに対応する湾曲凹状とされており、側枠2aに外側板3aを取り付けた際に、膨出部4bに突き合わされるようになっている。
なお、膨出部4bと凹状部3b1との突き合せ形状は、図1(b)に示すように、略S字形状とされている。
本実施形態においても、スプール軸5cの軸心O1を中心として回動させることで、側枠2aに対して外側板3aが取り付けられるようになっており、取り付け時の回動により側枠2aの膨出部4bに外側板3aの凹状部3b1が突き合わされるようになっている。
【0077】
また、側枠2aには、図13(a)に示すように、開口2a3の外周縁に、円周方向に不均一な間隔を空けて、外側板3aの係合片31cが係合可能な溝状の係合溝部2h1〜2h3が設けられている。
側枠2aの前端上部には、略三角形状の挿通孔2p1が形成されている。また、側枠2bの前端上部にも、略三角形状の挿通孔2p2が形成されている。
【0078】
外側板3aの前端内側面には、図12、図13(b)に示すように、側枠2aの係合受部45に係脱可能な係合部40が設けられている。
外側板3aの前端上部には、略三角形状の挿通窓3p1が形成されている。また、外側板3bの前端上部にも、略三角形状の挿通窓3p2が形成されている。
なお、図14(a)に示すように、外側板3aの外側面には、前後方向に延びる窓3eが開口しており、窓3e内には、挿通窓3p1や制動装置30Bの制動力を調節する調節つまみ36が配置されている。
【0079】
このような外側板3aは、操作ボタン21を押し下げ操作することにより、係止部材22が側枠2aの受部2eから外れて、これらの係止状態が解除され、図14(a)に示すように、側枠2aに外側板3aが取り付けられている状態から、図14(b)に示すように、側枠2aから外側板3aを回動させるようにして、外側板3aの取り外しが可能となる。また、取り付け時には、外側板3aをスプール軸5cの軸心O1を中心として回動させることで、係止部材22が受部2eに自動的に係止され、側枠2aに対して外側板3aが取り付けられる。
【0080】
サムレスト60は、図15(a)に示すように、ラインガイド23を覆うように前方へ向けて延設されている。サムレスト60の下面には、支持部61を介してピラー63が回転可能に支持されている。ピラー63は、円柱状の部材であり、サムレスト60を閉じた状態(先端を下方向へ回動してピラー63を移動させた状態)で、ラインガイド23の後方の近傍位置に配置されるようになっており、その位置で釣糸を押し下げて、釣糸案内溝24dに釣糸を誘導するように構成されている。
【0081】
サムレスト60の前端部60dと前枠2dとの間には、サムレスト60を閉じた状態で、図9(a)にも示すように、釣糸挿通用の開口60cが形成されており、釣糸巻き取り時における釣糸の挿通が可能となっている。
サムレスト60の後部側には、クラッチレバー53が連結されている。クラッチレバー53は、サムレスト60と一体成形部材であってもよいし、別体であってもよい。
【0082】
図16に示すように、クラッチ機構50のクラッチ駆動部材51は、公知のように、側枠2bに対して回動可能に支持され、振分けバネ56によって、動力伝達状態(クラッチON状態)と、動力遮断状態(クラッチOFF状態)とに振分け保持されるようになっている。また、クラッチ駆動部材51の表面には、ピニオン12(図2(a)参照、図2(a)と同様)の円周溝12a(図2(a)参照、図2(a)と同様)に嵌合したヨーク57と係合可能な一対のカム面58,58が形成されている。
【0083】
ヨーク57の先端側は、側枠2bに突設された支持ピン59,59によって保持されており、ヨーク57は、各支持ピン59,59に配設されたバネ部材(図示せず)によって常時、クラッチ駆動部材51側に付勢された状態となっている。
サムレスト60の中央部の下部には、円環部64が一体的に設けられている。この円環部64は、側枠2a,2bの内側に設けられた、スプール軸5cと同芯円環状の突設部(不図示)に対して外嵌可能であり、外嵌されることでサムレスト60は、スプール軸5cの軸心O1周りに回動可能に取り付けられ、クラッチレバー53の切り換え操作に連動して(先端部側が)上下方向に移動可能に設けられている。
【0084】
そして、スプール5に対する釣糸の巻き取りを可能にするクラッチON状態にクラッチレバー53を切り換え操作することにより、サムレスト60が下方向へ移動し(図15(a)参照)、この移動によりピラー63が移動して、釣糸挿通孔24の下部内面中央部の釣糸案内溝24dに釣糸が保持される(図15(b)参照)。
また、スプール5からの釣糸放出を可能にするクラッチOFF状態にクラッチレバー53を切り換え操作することにより、サムレスト60が上方向へ移動し(図15(c)参照)、この移動によりピラー63も移動して、釣糸挿通孔24の下部内面24cの中央部の釣糸案内溝24dから釣糸が離れる(図15(d)参照)。
【0085】
釣糸案内体17の上部には、釣糸を案内するためのラインガイド23が設けられている。
ラインガイド23は、図15(b)に示すように、前方から見て、左右方向に横長形状とされており、釣糸挿通孔24が形成されている。釣糸挿通孔24の下部内面中央部には、釣糸巻き取り時に釣糸を保持する釣糸案内溝24dが形成されている。釣糸案内溝24dは、下部内面24cの中央部から下方へ向けて湾曲凹状に切り欠かれた溝であり、図15(a)に示すように、釣糸挿通孔24内において前後方向に延設されている。釣糸案内溝24d内には、クラッチレバー53の操作時に、下方へ向けて移動してきたピラー63によって誘導されてきた釣糸が挿入されるようになっている(図15(a)(b)参照)。
【0086】
このようなラインガイド23は、側枠2a,2bに形成された収容部2a1,2b1の挿通孔2p1,2p2に対して、左端部および右端部をそれぞれ収容するようにして往復動可能である。なお、外側板3a,3bに形成された挿通窓3p1,3p2にラインガイド23の左端部および右端部をそれぞれ収容するようにして往復動させることもできる。このような往復動により、スプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる。
【0087】
また、サムレスト60で覆われる空間内においてラインガイド23を左右方向に往復動させることができるので、サムレスト60でラインガイド23を保護することができる。
また、例えば、サムレスト60を回動等によってさらに大きく開閉可能に設けることで、サムレスト60を開くことにより収容部2a1,2b1を開放することができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0088】
なお、サムレスト60とピラー63とが一緒に移動するので、サムレスト60がピラー63の移動に邪魔にならず、ピラー63の上下方向の移動量を大きく設定することができ、ラインガイド23を上下方向(高さ方向)に大きく形成することも可能である。これによって、釣糸放出時に釣糸挿通孔24の内面と釣糸との放出抵抗(接触抵抗)が小さくなる。これによって、スムーズな釣糸の放出を実現することができる。
また、ピラー63を下方向に移動させたときには、サムレスト60も下がるので、違和感なくパーミング(把持)しながら、釣糸の巻き取り操作を行うことができ、操作性に優れる。
【0089】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、膨出部4bのハンドル側となる側枠2aの内側部、またこれとは反対側となる側枠2bの反ハンドル側となる内側部に、収容部(凹部)2a1,2b1が形成されているので、この収容部2a1,2b1を利用してラインガイド23の左端部および右端部を収容することができる。また、その他の構成要素や機構等を配置することもできる。
したがって、レイアウトの自由度を高めることができる。また、魚釣用リールのコンパクト化を図ることもできる。
【0090】
また、反ハンドル側の外側板3aが、側枠2aに対して着脱可能に設けられ、外側板3aの前端部に、スプール軸5cの軸心O1周りの回動により側枠2aの前端部に係脱可能な係合部40が設けられているので、外側板3aの前端部を側枠2aの前端部2a2に係合して固定することができるので、外側板3aがその前端上部に挿通窓3p1が設けられ、さらに側枠2aに対して取り付け取り外しできる構成でありながら、側枠2aに対する外側板の前端部の取付剛性を高めることができる。
【0091】
なお、前側上部同士の突き合せ形状は、略S字形状とされたものに限られることはなく、膨出、凹状を複数含む曲線状であってもよいし、部分的に直線部分を含んだ形状であってもよい。
【0092】
また、係合部40と係合受部45とは、略L字形状であるものを示したが、これに限られることはなく、鉤形形状等、種々の形状による係合構造のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 リール本体 4b 膨出部
2 フレーム 5 スプール
2a,2b 側枠 5c スプール軸
3a 外側板 40 係合部
4 サムレスト S1 スペース
O1 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側枠を有するフレームにスプールが回転可能に支持され、前記側枠に外側板が取り付けられてなるリール本体を備えた魚釣用リールであって、
前記側枠と反ハンドル側の前記外側板とは、
前記リール本体の竿延在方向における前記スプールのスプール軸の軸心から後側となる後部同士が同一平面上で突き合わされているとともに、
前記リール本体の竿延在方向における前記スプール軸の軸心の前方において当該リール本体の鉛直方向の上側となる前側上部同士が、前記同一平面よりも反ハンドル側となる位置で突き合わされていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記側枠の前側上部には、反ハンドル側に向けて湾曲状に膨出した膨出部が形成され、反ハンドル側の前記外側板には、前記膨出部に対応する凹状部が形成されており、
前記膨出部と前記凹状部とが相互に当接されることで、前記側枠の前側上部同士が前記同一平面よりも反ハンドル側となる位置で突き合わされており、
前記スプール軸に沿う方向において、
前記膨出部の膨出幅は、前記スプール軸の軸心から後側における前記側枠の幅よりも幅広とされていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記側枠の前側上部には、サムレストが一体的に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記側枠の前側上部には、サムレストが一体的に設けられており、前記サムレストから前記膨出部にわたって曲線状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記膨出部の下方には、前記リール本体の構成要素を配置可能なスペースが形成されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記膨出部のハンドル側となる前記側枠の側部には、反ハンドル側へ向けた凹部が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
反ハンドル側の前記外側板は、前記スプール軸の軸心周りに回動させることにより、前記側枠に対して着脱可能に設けられており、
当該外側板の前端部には、前記スプール軸の軸心周りの回動により前記側枠の前端部に係脱可能な係合部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−139159(P2012−139159A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293827(P2010−293827)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】