魚釣用リール
【課題】スムーズな釣糸の放出および巻き取りを実現する。
【解決手段】リール本体1の側板間に回転自在に支持したスプール5と、少なくとも一方の側板に設けた駆動機構10と、スプール5の前方において、駆動機構10のハンドル軸7aの回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、スプール5に釣糸を平行に巻回する釣糸案内体22と、釣糸案内体22に設けられたラインガイド23と、を備え、ラインガイド23は、釣糸案内体22の前方から見て、スプール5の軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされた釣糸案内面を有しており、リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位には、往復動時に当該ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容可能な収容部4a,4bが設けられている構成とした。
【解決手段】リール本体1の側板間に回転自在に支持したスプール5と、少なくとも一方の側板に設けた駆動機構10と、スプール5の前方において、駆動機構10のハンドル軸7aの回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、スプール5に釣糸を平行に巻回する釣糸案内体22と、釣糸案内体22に設けられたラインガイド23と、を備え、ラインガイド23は、釣糸案内体22の前方から見て、スプール5の軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされた釣糸案内面を有しており、リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位には、往復動時に当該ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容可能な収容部4a,4bが設けられている構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール前方の側板間に、スプールに釣糸を平行に巻回案内するレベルワインド機構を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な魚釣用リールは、リール本体に回転可能に支持したスプールを、動力伝達状態のクラッチON状態と動力遮断状態のクラッチOFF状態とに切り換えるクラッチレバーを備えており、このクラッチレバーを操作することで、スプールフリー(クラッチOFF状態)とし、キャスティング操作によって釣糸(仕掛け)を所定のポイントへ放出した後、ハンドルの巻き取り回転操作により、自動的にクラッチON状態に復帰できるように構成されている。
【0003】
そして、ハンドルの巻き取り回転操作により、レベルワインド機構の釣糸案内体に設けられたラインガイドが左右方向に往復移動し、ラインガイドに挿通保持された釣糸がラインガイドを介してスプールに略平行に巻回されるようになっている。
【0004】
ところで、魚釣用リールにおいて、釣糸放出時の抵抗を減少させることにより、飛距離性能の向上や仕掛け落下のスピード(着底までのスピード)を早くしたいという要望があった。
その一方で、巻き取り時の巻き取りムラに起因して、釣糸放出時に抵抗が生じることや、糸絡み等のトラブルが生じるのを回避するために、釣糸の巻き取り時には、スプールに対して釣糸を均一に平行に巻回したいという要望があった。
【0005】
このような要望に対応する魚釣用リールとして、特許文献1に開示されたものが知られている。
この魚釣用リールでは、釣糸を抑える役割をなすピラーが上下方向に移動可能に設けられており、釣糸放出時にピラーを上方向に移動させることにより、釣糸放出時のガイド抵抗を減少させることができ、また、釣糸巻き取り時にはピラーを下方向に移動させることにより、ピラーを釣糸に接触させてガイドすることで、釣糸巻き取り時の巻取精度を向上させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−165329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の魚釣用リールでは、前記したように、釣糸放出時のガイド抵抗を減少させることができるので、スムーズな釣糸の放出が可能である。しかしながら、その一方で、釣糸を案内するためのラインガイドの形状が大きく重量を有したものとなっているとともに構造も複雑であるので、これを支持している回転摺動部や伸縮摺動部の抵抗が大きくなり、釣糸巻き取り時の滑らかさ(軽快さ、感度)に劣るという問題があった。そのため、ルアー釣りに代表されるような釣糸巻き取り時の魚信(当たり)やルアーの動き、さらには水流の変化等が感知し難くなり、これらのことが釣果に影響することもあった。
【0008】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体の側板間に回転自在に支持したスプールと、少なくとも一方の前記側板に設けた駆動機構と、前記スプールの前方において、前記駆動機構のハンドル軸の回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、前記スプールに釣糸を平行に巻回する釣糸案内体と、前記釣糸案内体に設けられたラインガイドと、を備えた魚釣用リールであって、前記ラインガイドは、前記釣糸案内体の前方から見て、前記スプールの軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされた釣糸案内面を有しており、前記リール本体における前記ラインガイドの左右側方部位には、当該ラインガイドの往復動時に、当該ラインガイドの左端部および右端部をそれぞれ収容可能な収容部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この魚釣用リールによれば、ラインガイドは、釣糸案内体の前方から見て、スプールの軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされた釣糸案内面を有しているので、その釣糸案内面を通じて釣糸を放出することができる。つまり、釣糸案内面は、釣糸放出時の釣糸の移動方向、すなわち、スプールの軸線に沿って左右方向に繰り出し位置を変えながら繰り出される釣糸の移動方向に対応したものとなっており、これによって、釣糸放出時には、釣糸案内面上を釣糸が左右方向に繰り出し位置を変えながら通過することとなる。したがって、釣糸放出時のガイド抵抗を減少させることができる。
【0011】
そして、リール本体におけるラインガイドの左右側方部位に収容部が設けられているので、ラインガイドの左端部および右端部を収容部にそれぞれ収容するようにしてラインガイドを左右方向に往復動させることができ、横長形状とされた釣糸案内面を有するラインガイドにおいて、左右方向の往復動を好適に確保することができる。
【0012】
また、本発明は、前記スプールの近傍における前記リール本体の側板内面間の距離をD1、最左端位置に移動したときの前記ラインガイドの左端部位置と、最右端位置に移動したときの当該ラインガイドの右端部位置との間の距離をD2、としたときに、これらの関係が
D1 < D2
であることを特徴とする。
【0013】
この魚釣用リールによれば、前記関係を有しているので、横長形状とされた釣糸案内面を有するラインガイドにおいて、釣糸巻き取り時に、ラインガイドの左端部と右端部とを収容部にそれぞれ好適に逃がしつつ、ラインガイドの左右方向の往復動を好適に確保することができる。
つまり、通常であれば、前記関係とされることで、リール本体の側板内面にラインガイドの左端部と右端部とがそれぞれ当接してしまうところを、収容部に左端部および右端部をそれぞれ位置させることができ、ラインガイドの左右方向の往復動を好適に確保することができる。
【0014】
また、本発明は、前記収容部を、前記リール本体の側板を切欠くことで形成してもよいし、前記リール本体の側板に貫通孔を設けることで形成してもよいし、さらに、前記リール本体の側板に有底の凹状部を設けることで形成してもよい。
【0015】
この魚釣用リールによれば、側板を切欠くことや側板に貫通孔を設けること、さらには、側板に有底の凹状部を設けることで、収容部を簡単に形成することができる。
【0016】
また、本発明は、前記側板が、フレームと、このフレームに装着された外側板とを備えており、前記収容部は、前記フレームに設けられた貫通孔と、この貫通孔に対応するように前記外側板に設けられた有底の凹状部とを含んで構成されていることを特徴とする。
【0017】
この魚釣用リールによれば、ラインガイドの往復動時に、ラインガイドの左端部および右端部を、フレームの貫通孔や外側板の凹状部にそれぞれ挿通するようにして収容することができる。
【0018】
また、本発明は、前記リール本体上部の前記側板間に設けられたサムレストを備え、前記収容部は、前記サムレストによって覆われることを特徴とする。
【0019】
この魚釣用リールによれば、サムレストで覆われる空間内においてラインガイドを左右方向に往復動させることができる。
【0020】
また、本発明は、前記釣糸案内面は、前記ラインガイドの左右方向の中央部に向けて下り傾斜状とされており、前記ラインガイドの前後方向の近傍位置には、前記軸線に沿う釣糸案内部を備えたピラーが上下方向に移動可能に設けられており、前記ピラーは、釣糸巻き取り時に下方向に移動することで、前記釣糸案内面の中央部に前記釣糸案内部で釣糸を誘導して当該中央部に釣糸を保持することを特徴とする。
ここで、前記ピラーとは、釣糸を押下可能な前記釣糸案内部を有する棒状、板状、枠状を呈した部材であり、釣糸案内部としては、水平直線状、傾斜直線状、湾曲状(湾曲凸条、湾曲凹状)、複数の直線を組み合わせた形状、直線と曲線とを組み合わせた形状等がある。
【0021】
この魚釣用リールによれば、釣糸案内面は、ラインガイドの左右方向の中央部に向けて下り傾斜状とされており、ラインガイドの前後方向の近傍位置に設けられたピラーは、釣糸巻き取り時に下方向に移動することで、釣糸案内面の中央部に釣糸案内部で釣糸を誘導して当該中央部に釣糸を保持するようになっているので、釣糸巻き取り時に釣糸は、釣糸案内面の中央部において、左右方向の移動が規制された状態で位置決めされることとなる。
また、ピラーは、スプールの軸線に沿う釣糸案内部を備えているので、ラインガイドの左右方向の往復動時に、ラインガイドの左端部および右端部が収容部にそれぞれ収容される状態においても、釣糸が釣糸案内面の中央部に釣糸案内部で好適に位置決めされることとなり、位置決めされた状態が好適に維持されながらスプールに釣糸が巻回されることとなる。
【0022】
また、本発明は、前記釣糸案内面が、前記ラインガイドの最左端位置および最右端位置における前記スプールへの投影視において、当該釣糸案内面の左右方向における略半分の領域が、前記スプールの軸方向における略半分の巻回範囲に対応したものとなっていることを特徴とする。
【0023】
この魚釣用リールによれば、最左端位置にラインガイドが移動した場合や、最右端位置にラインガイドが移動した場合において、釣糸案内面の左右方向における略半分の領域がスプールの軸方向における略半分の巻回範囲に対応したものとなっているので、ラインガイドが前記した最左端位置や最右端位置にある状態で釣糸の放出が行われたときには、釣糸案内面の略半分の領域を利用した釣糸の繰り出しが行われることとなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、釣糸案内面が左右方向に横長形状とされており、釣糸放出時には、この横長の釣糸案内面上を釣糸が左右方向に繰り出し位置を変えながら通過することとなるので、釣糸の接触抵抗(送出抵抗)が小さくなり、スムーズな釣糸の放出を実現することができる。
これにより、釣糸の放出スピードが減速され難くなり、例えば、キャスティング時の投擲距離を伸ばすことができる。また、船釣り等においては、仕掛け落下のスピードを上げることができる。
【0025】
そして、リール本体におけるラインガイドの左右側方部位に設けられた収容部に、ラインガイドの左端部および右端部をそれぞれ収容するようにしてラインガイドを左右方向に往復動させることができるので、左右方向に往復動する釣糸案内体を介してスプールの左右に釣糸が均等に振分けられ、スプールに釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる魚釣用リールが得られる。
【0026】
また、スプールの近傍におけるリール本体の側板内面間の距離D1よりも、最左端位置に移動したときのラインガイドの左端部位置と最右端位置に移動したときのラインガイドの右端部位置との間の距離D2が大きくなるようにされた構成では、釣糸巻き取り時に、ラインガイドの左端部と右端部とを収容部にそれぞれ好適に逃がしつつ、ラインガイドの左右方向の往復動を好適に確保することができるので、左右方向に往復動する釣糸案内体を介してスプールの左右に釣糸が均等に振分けられ、スプールに釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを好適に実現することができる。
【0027】
また、リール本体の側板を切欠くことやリール本体の側板に貫通孔を設けること、さらには、リール本体の側板に有底の凹状部を設けることで、収容部を形成するようにした構成では、収容部を簡単に形成することができるので、生産性を向上させることができる。
【0028】
また、側板が、フレームと、このフレームに装着された外側板とを備えた構成では、ラインガイドの往復動時に、ラインガイドの左端部および右端部を、フレームの貫通孔や外側板の凹状部に挿通するようにしてそれぞれ収容することができるので、フレームと外側板とにより収容部に剛性をもたせつつ、ラインガイドの左右方向の移動を確保することができ、さらには、フレームと外側板とを備えた構成において左右方向のコンパクト化も図ることができる。
また、フレームの貫通孔が外側板の凹状部で覆われるので、異物の混入防止が可能である。
【0029】
また、リール本体上部の側板間に設けられたサムレストによって収容部が覆われる構成では、サムレストで覆われる空間内においてラインガイドを左右方向に往復動させることができるので、サムレストでラインガイドを保護することができる。
また、例えば、サムレストを回動等によって開閉可能に設けることで、サムレストを開くことにより収容部を開放することができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
また、収容部がサムレストで覆われるので、例えば、側板がフレームと外側板とで構成される場合において、収容部をこれらの合せ部等で形成するようにしたものと比べて、合せ部(合せ面)の形状を単純な形状とすることができる。このことは、生産性の向上に寄与する。
【0030】
また、釣糸案内面が中央部に向けて下り傾斜状とされ、ピラーの釣糸案内部で釣糸を誘導して当該中央部に釣糸を保持するようにした構成では、釣糸巻き取り時に釣糸は、釣糸案内面の中央部において、左右方向の移動が規制された状態で位置決めされることとなるので、左右方向に往復動する釣糸案内体を介してスプールの左右に釣糸が均等に振分けられ、スプールに釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを好適に実現することができる。
【0031】
また、釣糸案内面が、ラインガイドの最左端位置および最右端位置におけるスプールへの投影視において、当該釣糸案内面の左右方向における略半分の領域が、スプールの軸方向における略半分の巻回範囲に対応したものとなっている構成では、ラインガイドが最左端位置や最右端位置にある状態で釣糸の放出が行われたときに、釣糸案内面の略半分の領域を利用した釣糸の繰り出しが行われることとなるので、最左端位置および最右端位置においてもスムーズな釣糸の放出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図であり、(a)は前面図、(b)は上面図である。
【図2】(a)はリール本体の内部構造を示す上面図、(b)ラインガイドとスプールとの関係を示す前面図、(c)はラインガイドの詳細を示す前面図である。
【図3】(a)は魚釣用リールの側面図、(b)はリール本体の要部を示す縦断面図である。
【図4】クラッチ機構を示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は釣糸巻き取り時における各部の位置関係を示す説明図、(d)〜(f)は釣糸放出時における各部の位置関係を示す説明図である。
【図6】(a)(b)は釣糸巻き取り時におけるラインガイドの位置を示す上面図、(c)はリール本体の側板内面間の距離とラインガイドの左右端部位置間の距離との関係を示した上面図、(d)は釣糸放出時における釣糸の左右方向の動きを示す上面図である。
【図7】(a)は最左端位置にラインガイドが移動したときの前面図、(b)は最右端位置にラインガイドが移動したときの前面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図であり、(a)は前面図、(b)は上面図である。
【図9】収容部を断面で示した図であり、(a)は収容部を縦断面で示した図、(b)は収容部を横断面で示した図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図であり、(a)は前面図、(b)は上面図である。
【図11】収容部を断面で示した図であり、(a)は収容部を縦断面で示した図、(b)は収容部を横断面で示した図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図であり、(a)は前面図、(b)は上面図である。
【図13】収容部を断面で示した図であり、(a)は収容部を縦断面で示した図、(b)は収容部を横断面で示した図である。
【図14】(a),(b)は釣糸巻き取り時における各部の位置関係を示す説明図、(c),(d)は釣糸放出時における各部の位置関係を示す説明図である。
【図15】(a)はサムレストの構造を示した側断面図、(b)は図15(a)におけるA−A線模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後」「左右」「上下」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0034】
(第1実施形態)
図1に示すように、魚釣用リールのリール本体1は、釣糸が巻回されるスプール5を回転可能に支持した左右側板2A,2Bを備え、図2(a)に示すように、右側板2Bに設けた駆動機構10と、スプール5の前方において、駆動機構10のハンドル軸7aの回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、スプール5に釣糸を平行に巻回する釣糸案内体22と、この釣糸案内体22に設けられたラインガイド23と、を備えている。
そして、リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位には、図1(a)(b)、図2(a)に示すように、ラインガイド23の往復動時に、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容可能な収容部4a,4bが設けられている。
また、ラインガイド23の後方における近傍位置には、スプール5の軸線に沿う釣糸案内部31(図2(b)参照)を備えたピラー30が上下方向に移動可能に設けられている。
ここで、リール本体1の「側板」は、図1(b)に示すように、スプール5の軸方向の両端に位置する部材であり、本実施形態では、各種部材が支持されるフレーム体を構成する左右フレーム2a,2bと、これら左右フレーム2a,2bに所定の空間をもって夫々装着される左右外側板(カバー体)3a,3bとから構成される。左右フレーム2a,2bと左右外側板3a,3bとの間には内部空間が形成され、この内部空間には、図2(a)に示すように、駆動機構10、クラッチ機構50(図4参照)、バックラッシュ防止機構70(図2(a)参照)等が設置されるようになっている。なお、左右フレーム2a,2bと左右外側板3a,3bとの形状については、適宜変形することが可能であり、それらを構成する材料は適宜設定することができる。また、これらの装着方法や装着位置についても、リール本体1の構成等により、種々の方法を用いることが可能である。
【0035】
左右フレーム2a,2bは、複数の支柱を介して一体化されており、図1(a)に示すように、下部の支柱2cには、釣竿のリールシート(不図示)に装着される釣竿取付脚1aが設けられている。
また、左右フレーム2a,2b間には、図2(a)に示すように、軸受5a,5bを介してスプール軸5cが回転可能に支持されており、このスプール軸5cにスプール5が取り付けられている。
スプール5は、ハンドル7を回転操作することによって回転させることができるように構成されており、ハンドル7は、右外側板3bから突出したハンドル軸7aの端部に取り付けられ、右外側板3bとの間に介在された逆転防止機構7b(転がり式一方向クラッチ)によって、釣糸巻き取り方向にのみ回転可能となっている。
なお、スプール軸5cを回転可能に支持する軸受5a,5bは、左右フレーム2a,2bの部分に配設されていてもよいし、左右外側板3a,3bの部分に配設されていてもよい。
【0036】
右フレーム2bと右外側板3bとの間には、ハンドル7の回転運動をスプール軸5c、および後記するレベルワインド機構20の螺軸21に伝達する駆動機構10、駆動力の伝達を継脱するクラッチ機構50(図4参照)のほか、魚釣時にスプール5から釣糸が繰り出された際に、スプール5にドラグ力を付与するドラグ機構60等が収容されている。
【0037】
駆動機構10は、公知のように、ハンドル軸7aに回転可能に支持された駆動歯車11と、この駆動歯車11に噛合するピニオン12とを備えている。ピニオン12は、スプール軸5cと同軸上に設置されており、ピニオン軸12cに沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピニオン12の外周には、円周溝12aが形成されており、この円周溝12aに、クラッチ機構50のヨーク57(図4参照)が係合して、ピニオン12を軸方向に移動させるようになっている。すなわち、ピニオン12が軸方向に移動することで、スプール軸5cとの間で継脱がなされ、動力伝達状態(クラッチON状態)/動力遮断状態(クラッチOFF状態)に切り換えられるようになっている。
【0038】
スプール5の前方において、リール本体1の左右側板2A,2B間には、レベルワインド機構20が配置されている。レベルワインド機構20は、駆動機構10を介して回転駆動される螺軸21と、螺軸21に装着されて左右方向に往復動可能に設けられた釣糸案内体22とを備えている。
螺軸21は、左右側板2A,2B間に回転可能に支持されており、駆動機構10を介して回転駆動されるようになっている。螺軸21の端部には、連動歯車21aが取り付けられており、この連動歯車21aには、ハンドル軸7aの駆動歯車11に隣接して設けられた歯車11aが噛合している。これにより、ハンドル7を巻き取り回転操作すると、ハンドル軸7aの回転が、歯車11aおよび連動歯車21aを通じて螺軸21に伝わり、螺軸21が回転駆動される。
【0039】
螺軸21の外周面には、螺旋溝21bが形成されており、この螺旋溝21bには、釣糸案内体22に設けられた摺動子26(図3(b)参照、以下同じ)が係合している。このような螺軸21は、左右側板2A,2B間に架け渡された筒体25(図3(b)参照、以下同じ)内に収容されている。
筒体25は、図3(b)に示すように、断面C字形状を呈して軸方向に延出する開口25aを有しており、この開口25aを通じて螺旋溝21bが部分的に露出している。
【0040】
また、釣糸案内体22は、樹脂で形成され、左右側板2A,2B間において、螺軸21と平行に設けられたガイド軸22aに支持されており、下部が筒体25を囲繞するようにしてこれに回り止め保持されている。そして、釣糸案内体22の下部には、筒体25の開口25aを通じて前記したように螺旋溝21bと係合する摺動子26が配置されている。なお、摺動子26は、袋ナット26aによって釣糸案内体22に固定されている。
これにより、釣糸案内体22は、螺軸21が連動歯車21aによって回転駆動されることで、螺旋溝21bに係合する摺動子26を介してガイド軸22aに沿って左右往復動するようになっている。
【0041】
釣糸案内体22の上部には、釣糸を案内するためのラインガイド23が設けられている。
ラインガイド23には、釣糸挿通孔24が形成されている。釣糸挿通孔24は、図2(b)に示すように、前方から見て、スプール5の軸線O1に沿うようにして左右方向に横長形状とされており、図2(c)に示すように、左右開口幅Cが上下開口高さH1(釣糸挿通孔24の中央部における最大開口高さ)に比べて、大きくなるように形成されている。
釣糸挿通孔24の上部内面24aは、水平面に対して平行とされており、この上部内面24aに連続する左右内面24b,24bは、それぞれ鉛直面とされている。また、これらの左右内面24b,24bに連続する下部内面24cは、釣糸案内体22の前方から見て、スプール5の軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされており、釣糸案内面として機能するようになっている。本実施形態の下部内面24cは、釣糸挿通孔24の中央部としての下部内面中央部24c’に向けて緩やかに直線状に下る傾斜面(凹凸のない面)とされている。
【0042】
ここで、下部内面24cの傾斜角度θは、図2(c)に示すように、水平面に対して1〜30度の範囲に設定されるのが好ましく、より好ましくは、5〜15度の範囲に設定されるのがよい。
また、下部内面24cは、前後方向にも直線状(凹凸のない面)に形成されている。
なお、釣糸挿通孔24の上部内面24aと左右内面24b,24bとの角部、左右内面24b,24bと下部内面24cとの角部は、いずれもアール状とされている。
なお、下部内面24cは、左右方向に直線状とされたものに限られることはなく、左右方向に湾曲状(湾曲凸条、湾曲凹状)、左右方向に複数の直線を組み合わせた形状、さらに、左右方向に直線と曲線とを組み合わせた形状等、種々採用することができる。
また、下部内面24cは、必ずしも前後方向に直線状を有しなくてもよいが、本実施形態のように、直線状として前後方向に奥行きをもたせることで、よりスムーズに釣糸を下部内面中央部24c’に導くことが可能となる。
【0043】
下部内面24cの中央部(下部内面中央部24c’)には、釣糸巻き取り時に釣糸を保持する釣糸案内溝24dが形成されている。釣糸案内溝24dは、下部内面24cの中央部から下方へ向けて湾曲凹状に切り欠かれた溝であり、図3(b)に示すように、釣糸挿通孔24内において前後方向に延設されている。釣糸案内溝24d内には、後記するクラッチレバー53の操作時に、下方へ向けて移動してきたピラー30によって、下部内面24c(図2(b)参照)を下部内面中央部24c’に向けて誘導されてきた釣糸が挿入されるようになっている(図5(a)〜(c)参照)。
【0044】
リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位(リール本体1の左右側板2A,2B)には、収容部4a,4bが設けられている。収容部4a,4bは、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容可能な大きさに形成されており、図3(a)に示すように、側方から見て、リール本体1の先端部1dとサムレスト4の先端部4dとの間において、後方へ向けて湾曲凹状に切り欠かれた形状を呈している。本実施形態では、収容部4a,4bを通じて、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23b(図3(a)では左端部23aを図示)がリール本体1の左右側方にそれぞれ臨むようになっている。
【0045】
ここで、ラインガイド23は、前記したように、左右方向に横長形状とされており、釣糸案内体22よりも左右方向に向けて張り出しているので、釣糸巻き取り時にハンドル7が回転操作されて釣糸案内体22が左右往復動されると、図6(a)(b)、図7(a)(b)に示すように、その左端部23aおよび右端部23bが左右フレーム2a,2b(左右側板2A,2B)に掛かる位置までそれぞれ移動することとなり、収容部4a,4b内に左端部23aおよび右端部23bがそれぞれ位置することとなる。
この場合、図6(c)に示すように、最左端位置に移動したラインガイド23の左端部23aの位置と、最右端位置に移動したラインガイド23の右端部23bの位置との間の距離をD2とし、スプール5の近傍におけるリール本体1の側板内面間の距離(スプール5の近傍における左右フレーム2a,2b間の距離)をD1とすると、これらの関係が次式(1)の関係を有するように設定されている。
D1 < D2 ・・・(1)
【0046】
すなわち、スプール5の近傍における左右フレーム2a,2b間の距離D1よりもラインガイド23の左端部位置と最右端位置との間の距離D2が大きくなるように設定されている。
これにより、横長形状とされたラインガイド23において、釣糸巻き取り時に、ラインガイド23の左端部23aと右端部23bとを収容部4a,4bにそれぞれ好適に逃がしつつ、ラインガイド23の左右方向の往復動を好適に確保することができるようになっている。
つまり、通常であれば、前記関係とされることで、リール本体1の側板内面(左右フレーム2a,2bの内面等)にラインガイド23の左端部23aと右端部23bbとがそれぞれ当接してしまうところを、収容部4a,4bに左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ位置させることができ、ラインガイド23の左右方向の往復動を好適に確保することができるようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、下部内面(釣糸案内面)24cは、ラインガイド23の最左端位置および最右端位置におけるスプール5への投影視において、次の関係を有するように設定されている。
すなわち、図6(b)に示すように、ラインガイド23が最右端位置に移動した状態で、ラインガイド23の左右開口幅C(図2(b)参照)の略半分となる開口幅(開口領域)C/2が、スプール5の軸線に沿う釣糸巻回領域(巻回範囲)Lの略半分となる釣糸巻回領域(巻回範囲)L/2に対応したものとなるように設定されている。また、ラインガイド23が最左端位置に移動した状態においても前記と同様に設定されている。
つまり、ラインガイド23の最左端位置および最右端位置において、ラインガイド23の開口幅C/2がスプール5の釣糸巻回領域L/2に対応しているので、通常釣糸の繰り出しが好ましくない最左端位置および最右端位置においても、スムーズな釣糸の繰り出しが可能となっている。
【0048】
なお、ラインガイド23は、図3(a)に示すように、収容部4a,4bを通じて、全体がリール本体1の左右側方に臨むように構成したが、左端部23a、あるいは右端部23bのみが収容部4a,4bを通じてリール本体1の左右側方に臨むように構成してもよい。
また、収容部4a,4bの形状は、前記した側面視で湾曲凹状のものに限られず、側面視で丸形凹状や角形凹状等、種々の形状を採用しても差し支えない。
【0049】
また、収容部4a,4bの一部を形成しているサムレスト4は、図6(c)に破線で示すように、上面視で、先端部4d’をラインガイド23の上面23dに掛からないように、スプール5側に向けて後退させて形成してもよい。このようにすることで、サムレスト4としての機能を有しながらも、リール本体1の軽量化を図ることができる。この場合、釣糸巻き取り時に、仮に、サムレスト4に載せた指がラインガイド23の左端部23aや右端部23bに上方から触れてこれに引っ掛かっても、収容部4a,4bを通じて左端部23aおよび右端部23bがリール本体1の左右側方にそれぞれ臨むように構成されているので、収容部4a,4bに指を好適に逃がすことができる。これにより、巻き取り操作が妨げられることもない。
【0050】
ピラー30は、図1(a)(b)、図3(b)に示すように、円柱状の棒状部材であり、スプール5とラインガイド23との間において、ラインガイド23の後方の近傍位置で、上下方向に移動可能に配置されている。
ピラー30は、図4に示すように、クラッチ機構50のクラッチ駆動部材51に一体的に設けられた腕部51aに対して一端部が支持されており、後記するようにクラッチ駆動部材51が駆動されることにより、左右フレーム2a,2bに形成された湾曲長溝2a’,2b’(図3(b)参照、一方のみ図示)に沿うようにして上下方向に移動可能に設けられている。
ピラー30は、図2(b)に示すように、スプール5の軸線O1に沿う釣糸案内部31(下部外周面、図3(a)参照)を備えており、スプール5とラインガイド23との間において、この釣糸案内部31で釣糸を押下可能である。
なお、ピラー30は、円柱状の棒状部材とされたものに限られることはなく、釣糸を押下可能な釣糸案内部31を有する板状としてもよい。また、釣糸案内部31としては、左右方向に直線状とされたものに限られることはなく、左右方向に傾斜する直線状、湾曲状(湾曲凸条、湾曲凹状)、左右方向に複数の角度の直線を例えば連続して組み合わせた形状、左右方向に直線と曲線とを組み合わせた形状等としてもよい。
【0051】
このようなピラー30は、クラッチ機構50により、スプール5に対する釣糸の巻き取りを可能にするクラッチON状態(釣糸巻き取り時)で下方向に移動するようになっており、その際に、釣糸挿通孔24内に挿通された釣糸を下部内面中央部24c’に誘導し、当該下部内面中央部24c’(釣糸案内溝24d)に釣糸を保持する第1の位置を採るようになっている。また、ピラー30は、スプール5から釣糸の繰り出しを可能にするクラッチOFF状態(釣糸放出時)で上方向に移動するようになっており、その際に第1の位置から退避して前記した釣糸の保持を解除する第2の位置を採るようになっている。
【0052】
ここで、ピラー30は、図3(b)に示すように、スプール軸5cの軸心O2を通る水平面(不図示)よりも上方となる領域において、上下移動可能に設けられており、これによって、第1の位置から第2の位置に向かう上方向の移動時には、上方向の移動成分とともに後方のスプール5に近づく方向の移動成分を含んで移動するようになっている。
また、第2の位置から第1の位置に向かう下方向の移動時には、下方向の移動成分とともに前方のラインガイド23に近づく方向の移動成分を含んで移動するようになっている。
【0053】
本実施形態では、クラッチ駆動部材51の腕部51aに対して、ピラー30が軸受30a,30b(図1(b)参照)を介して軸回りに回動可能に支持されており、釣糸巻き取り時の巻き取り抵抗および釣糸放出時の放出抵抗が低減されるようになっている。
【0054】
クラッチ機構50は、図4に示すように、右フレーム2bに沿って回動可能に支持されたクラッチ駆動部材51と、このクラッチ駆動部材51を駆動するクラッチレバー53とを含んで構成されている。
【0055】
クラッチ駆動部材51は、公知のように、右フレーム2bに対して回動可能に支持され、振分けバネ56によって、図4において実線で示した動力伝達状態(クラッチON状態)と、図4において二点鎖線で示した動力遮断状態(クラッチOFF状態)とに振分け保持されるようになっている。また、クラッチ駆動部材51の表面には、ピニオン12(図2(a)参照、以下同じ)の円周溝12a(図2(a)参照)に嵌合したヨーク57と係合可能な一対のカム面58,58が形成されている。
そして、クラッチ駆動部材51の前部には、前方へ向けて延設された腕部51aが一体的に設けられており、この腕部51aの先端部に、前記したようにピラー30の一端部が支持されている。
【0056】
ヨーク57の先端側は、右フレーム2bに突設された支持ピン59,59によって保持されており、ヨーク57は、各支持ピン59,59に配設されたバネ部材(図示せず)によって常時、クラッチ駆動部材51側に付勢された状態となっている。なお、図4では、ヨーク57が不図示のバネ部材によってクラッチ駆動部材51側に付勢された状態を示しており、このとき、ピニオン12は、スプール軸5cの端部に形成されている係合部に嵌合してクラッチON状態となっている。
【0057】
クラッチ駆動部材51の後端部は、支持部材53aを介してクラッチレバー53と連結されており、図4において矢印X1で示すように、クラッチレバー53が押下げ操作されると、クラッチ駆動部材51は、図中反時計回り方向に回動され、ヨーク57を介して、ピニオン12をスプール軸5cの端部に形成されている係合部から離脱させる(クラッチOFF状態に切り換える)ように作用する。また、この状態は、振分けバネ56によって保持される。
また、このようなクラッチレバー53の押下げ操作によって、クラッチ駆動部材51が図中反時計回り方向に回動されると、腕部51aの先端部が上方向に移動し、これによって、ピラー30が上方向に移動して第2の位置に配置される。
つまり、クラッチレバー53を操作することで、クラッチ駆動部材51は、クラッチON状態(釣糸巻き取り位置)と、クラッチOFF状態(釣糸放出位置)と、に位置決めされるようになっており、この位置決めに連動して、ピラー30が第1の位置と第2の位置とに位置決めされるようになっている。
【0058】
次に、スプール5、ピラー30および釣糸挿通孔24の高さの関係について、図5を参照して説明する。
図5(a)〜(c)は釣糸巻き取り時における各部の位置関係を示した図であり、クラッチ機構50(図4参照)が動力伝達状態(クラッチON状態)とされて、ピラー30が第1の位置に配置されている状態を示している。
【0059】
ここで、リール本体1の釣竿取付脚1aの下面を基準として、スプール5の釣糸巻回位置5eまでの高さをh1、ピラー30の釣糸案内部31(図3(b)参照、以下同じ)までの高さをh2、釣糸挿通孔24の上部内面24a(図2(c)参照、以下同じ)までの高さをh3、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’までの高さをh4、としたときに、釣糸巻き取り時には、次式(2)かつ(3)の関係を有するように設定されている。
なお、釣糸巻回位置は、通常、規定の釣糸量を巻いたときの外径に相当しており、また、その位置が明確でない場合においては、スプールの最大外径(=フランジ5dの外径)の98%で定義される径位置とする。
h1 ≧ h3 > h2 ・・・(2)
h4 ≧ h2 ・・・(3)
【0060】
すなわち、釣糸巻き取り時においては、リール本体1の下端部を基準として、スプール5の釣糸巻回位置5eまでの高さh1以下となるように、釣糸挿通孔24の上部内面24aまでの高さh3が設定され、さらにこの高さh3よりも低くなるようにピラー30の釣糸案内部31までの高さh2が設定されている。そして、さらに、ピラー30の釣糸案内部31までの高さh2は、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’までの高さh4以下となるように設定されている。
これにより、ピラー30は、第1の位置に移動されると、釣糸挿通孔24の上部内面24aよりも低い位置において、下部内面中央部24c’と同じかあるいはこれよりもさらに低くなる位置に釣糸案内部31が位置する状態となる。
【0061】
したがって、クラッチレバー53の操作やハンドル7の操作によってクラッチOFF状態からクラッチON状態に切り換えられると、第2の位置から第1の位置にピラー30が移動する過程で釣糸案内部31により釣糸が押し下げられ、その際に、釣糸は、釣糸挿通孔24の下部内面24cに沿って傾斜面を下部内面中央部24c’に向けて移動する。そして、ピラー30が第1の位置まで移動されることで、釣糸案内溝24d内に釣糸が誘導される。これによって、釣糸は釣糸案内溝24d内に好適に保持される。
【0062】
このように、釣糸案内溝24d内に釣糸が保持された状態で、前記式(2)(3)により、釣糸には、ピラー30の釣糸案内部31による押圧でテンションが付与された状態となる。したがって、釣糸巻き取り時には、ピラー30で押さえられて釣糸が暴れ難くなり、これによって、釣糸案内溝24d内から釣糸が外れ難くなる。
【0063】
ここで、リール本体1の下端部を基準として、釣糸案内溝24dの底部までの高さをh0とすると、釣糸巻き取り時には、次式(4)の関係を有するように設定されることが特に好ましい。
h4 ≧ h2 > h0 ・・・(4)
【0064】
この場合には、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’までの高さh4以下となるように、ピラー30の釣糸案内部31までの高さh2が設定され、さらにこの高さh2よりも低くなるように釣糸案内溝24dの底部までの高さh0が設定されることとなる。これによって、ピラー30は、第1の位置に移動されると、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’と同じかまたはそれよりも低い位置において、釣糸案内溝24dの底部よりも高い位置に釣糸案内部31が位置する状態となる。
したがって、釣糸案内溝24d内に釣糸が確実に保持されるようになり、釣糸案内溝24d内から釣糸がより一層外れ難くなる。
なお、軽い仕掛けを使用する釣種の場合には、大きなテンションを釣糸に付与したいので、 h2 ≦ h0 としてもよい。
【0065】
一方、図5(d)〜(f)は釣糸放出時における各部の高さの関係を示した図であり、クラッチ機構50(図4参照)が動力遮断状態(クラッチOFF状態)とされて、ピラー30が第2の位置に配置されている状態を示している。
ここで、釣糸放出時には、次式(5)かつ(6)の関係を有するように設定されている。
h1 ≧ h3 ・・・(5)
h2 > h3 ・・・(6)
【0066】
すなわち、釣糸放出時において、リール本体1の下端部を基準として、スプール5の釣糸巻回位置5eまでの高さh1以下となるように、釣糸挿通孔24の上部内面24aまでの高さh3が設定され、かつ、ピラー30の釣糸案内部31までの高さh2が釣糸挿通孔24の上部内面24aまでの高さh3よりも大きくなるように設定されている。
これにより、ピラー30は、第2の位置に移動されると、スプール5の釣糸巻回位置5eと同じかまたはこれよりも低い位置において、釣糸挿通孔24の上部内面24aよりも高い位置に釣糸案内部31が位置する状態となる。
【0067】
したがって、クラッチレバー53の操作によってクラッチON状態からクラッチOFF状態に切り換えられると、第1の位置から第2の位置にピラー30が移動して退避される過程で、釣糸案内溝24d内における釣糸の保持が解除され、前記式(5)の関係により、釣糸挿通孔24の上部の横長のスペースに釣糸が移動することとなる。したがって、スムーズな釣糸の放出を行うことができる。
また、第2の位置にピラー30が移動した状態では、前記式(5)(6)の関係から、ピラー30の釣糸案内部31が、釣糸挿通孔24の上部内面24aとスプール5の釣糸巻回位置5eとの間に架け渡された釣糸の上方に間隔を隔てて位置することとなる。したがって、スプール5から繰り出される釣糸にピラー30が接触せず、これによって、スムーズな釣糸の放出を行うことができる。
【0068】
なお、釣糸巻き取り時には、図6(a)(b)、図7(a)(b)に示すように、ハンドル7の巻き取り回転操作により、ラインガイド23が左右方向に往復移動し、ラインガイド23の釣糸案内溝24dに挿通保持された釣糸が、ピラー30を介してスプール5に略平行に巻回される。
【0069】
本実施形態では、ラインガイド23の釣糸案内溝24dが、スプール5の巻回幅いっぱいに往復移動して、釣糸をスプール5に案内するように位置調整されている。
その際、ラインガイド23は、図6(a)(b)、図7(a)(b)に示すように、その左端部23aおよび右端部23bが、左右フレーム2a,2bに掛かる位置までそれぞれ移動し、リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位に設けられた収容部4a,4bに逃がされる。
これによって、横長形状とされたラインガイド23の左右方向の往復移動が確保され、釣糸案内溝24dがスプール5の巻回幅いっぱいに往復移動可能となる。
【0070】
また、釣糸放出時には、図6(d)に示すように、ラインガイド23の釣糸挿通孔24の左右開口の範囲内で釣糸が放出可能である。
なお、図6(d)では、ラインガイド23が略中央に位置した場合を示したが、図6(a)、図7(a)に示すように、左端にラインガイド23が移動した場合や、図6(b)、図7(b)に示すように、右端にラインガイド23が移動した場合においても、ラインガイド23の釣糸挿通孔24の略半分の開口幅(開口領域)C/2がスプール5の軸方向の釣糸巻回領域(巻回範囲)L/2に対応したものとなっているので、スムーズな釣糸の繰り出しが可能である。
【0071】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、下部内面(釣糸案内面)24cが左右方向に横長形状とされており、釣糸放出時には、この横長の下部内面24c上を釣糸が左右方向に繰り出し位置を変えながら通過することとなるので、釣糸の接触抵抗(送出抵抗)が小さくなり、スムーズな釣糸の放出を実現することができる。
これにより、釣糸の放出スピードが減速され難くなり、例えば、キャスティング時の投擲距離を伸ばすことができる。また、船釣り等においては、仕掛け落下のスピードを上げることができる。
【0072】
そして、リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位に設けられた収容部4a,4bに、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容するようにしてラインガイド23を左右方向に往復動させることができるので、左右方向に往復動する釣糸案内体22を介してスプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる魚釣用リールが得られる。
【0073】
また、スプール5の近傍におけるリール本体1の側板内面間(左右フレーム2a,2b間)の距離D1よりも、最左端位置に移動したときのラインガイド23の左端部23aの位置と最右端位置に移動したときのラインガイド23の右端部23bの位置との間の距離D2が大きくなるようにされているので、釣糸巻き取り時に、ラインガイド23の左端部23aと右端部23bとを収容部4a,4bにそれぞれ好適に逃がしつつ、ラインガイド23の左右方向の往復動を好適に確保することができる。したがって、左右方向に往復動する釣糸案内体22を介してスプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを好適に実現することができる。
【0074】
また、収容部4a,4bは、リール本体1のリール本体1の左右側板2A,2Bを切欠くことで簡単に形成することができる。したがって、生産性が高い。
【0075】
また、釣糸巻き取り時に釣糸は、下部内面中央部24c’において、左右方向の移動が規制された状態で位置決めされることとなるので、左右方向に往復動する釣糸案内体22を介してスプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを好適に実現することができる。
【0076】
また、ラインガイド23の下部内面(釣糸案内面)24cにおける開口幅(開口領域)C/2が、釣糸巻回領域(巻回範囲)L/2に対応したものとなっているので、ラインガイド23が最左端位置や最右端位置にある状態で釣糸の放出が行われたときに、下部内面24cにおける略半分の開口幅(開口領域)C/2を利用した釣糸の繰り出しが行われることとなり、最左端位置および最右端位置においてもスムーズな釣糸の放出を実現することができる。
【0077】
(第2実施形態)
図8、図9を参照して第2実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第1実施形態と異なるところは左右側板2A,2Bの内側に収容部4a,4bが形成されている点である。
【0078】
収容部4a,4bは、図8(a)(b)に示すように、左右側板2A,2Bの左右フレーム2a,2bに側方へ向けた有底の凹状部を設けることで形成されている。収容部4a,4bは、図9(a)(b)に示すように、縦方向の断面および横方向の断面が、最左端位置および最右端位置に移動したときのラインガイド23の左端部23a,右端部23bの外形状に沿う内面を有しており、左端部23a,右端部23bをそれぞれ収容可能に構成されている。
ここで、図9(a)に示すように、収容部4a,4bの下面14a,14bは、ラインガイド23の下面23e,23fに対応した傾斜面とされており、リール本体1の内側に向けて下り傾斜状とされている。これによって、収容部4a,4b内に、仮に、水分や塵埃等の異物が入り込んでも、これが下面23e,23f上に留まり難くなり、収容部4a,4b外に好適に排出することができる。したがって、長期的に安定したラインガイド23の往復動を実現することができる。
【0079】
この魚釣用リールによれば、左右側板2A,2Bの左右フレーム2a,2bに、有底の凹状部を設けることで収容部を簡単に形成することができる。したがって、生産性の向上された魚釣用リールが得られる。
また、収容部4a,4bが有底の凹状部を設けることで形成され、左右外側板3a,3bに収容部4a,4bが露出していないので、左右外側板3a,3b側からの異物の混入を防止することができる。
【0080】
(第3実施形態)
図10、図11を参照して第3実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第1,第2実施形態と異なるところは、図10(a)(b)に示すように、左右側板2A,2Bに貫通孔を設けることで収容部4a,4bが形成されている点である。
【0081】
収容部4aは、図11(a)(b)に示すように、左フレーム2aに形成された貫通孔2a1と、この貫通孔2a1に連通して左外側板3aに形成された貫通孔3a1とから構成されており、左外側板3aに貫通孔3a1の開口4a1が形成されている。また、収容部4bは、図11(a)(b)に示すように、右フレーム2bに形成された貫通孔2b1と、この貫通孔2b1に連通して右外側板3bに形成された貫通孔3b1とから構成されており、右外側板3bに貫通孔3b1の開口4b1が形成されている。
【0082】
本実施形態では、ラインガイド23の最左端位置(図11(a)(b)で二点鎖線で示す位置)において、左端部23aが、収容部4aの貫通孔2a1を通じてこれよりも左側(外側)の貫通孔3a1内に位置するように構成されている。また、ラインガイド23の最右端位置(図11(a)(b)で実線で示す位置)において、右端部23bが、収容部4bの貫通孔2b1を通じてこれよりも右側(外側)の貫通孔3b1内位置するように構成されている。なお、最左端位置および最右端位置のいずれにおいても、左端部23aおよび右端部23bは、開口4a1,4b1に位置しておらず、貫通孔3a1,3b1内に位置している。
【0083】
つまり、最左端位置に移動したラインガイド23の左端部23aが収容部4aから突出しないように構成されており、また、最右端位置に移動したラインガイド23の右端部23bが収容部4bから突出しないように構成されている。
これにより、添えた指に左端部23aや右端部23bが当たることがなく、リール本体1を握る指や手のひらに、違和感を覚えることもない。
【0084】
この魚釣用リールによれば、左右側板2A,2Bの左右フレーム2a,2bおよび左右外側板3a,3bに、貫通孔2a1,2b1および貫通孔3a1,3b1を設けることで収容部を簡単に形成することができる。したがって、生産性の向上された魚釣用リールが得られる。
また、収容部4a,4bが左右フレーム2a,2bおよび左右外側板3a,3bからなるので、剛性をもたせつつ、ラインガイド23の左右方向の移動を確保することができるとともに、左右フレーム2a,2bおよび左右外側板3a,3bとを備えた構成において左右方向のコンパクト化も図ることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、貫通孔3a1,3b1内に左端部23a,右端部23bがそれぞれ位置するように構成したが、これに限られることはなく、左右フレーム2a,2bの貫通孔2a1,2b1内に左端部23a,右端部23bがそれぞれ位置するように構成してもよい。また、貫通孔2a1,2b1と貫通孔3a1,3b1との境目部分に左端部23a,右端部23bがそれぞれ位置するように構成してもよい。
【0086】
また、貫通孔3a1,3b1の開口4a1,4b1を閉塞して、貫通孔3a1,3b1が有底の凹状部となるように形成してもよい。
この場合には、貫通孔2a1,2b1が左右外側板3a,3bの凹状部で覆われることとなるので、異物の混入防止が可能である。
【0087】
(第4実施形態)
図12〜図15を参照して第4実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第1〜第3実施形態と異なるところは、リール本体1の上部の左右側板2A,2B間に設けられたサムレスト40が、クラッチレバー53の切り換え操作に連動して上下方向に移動可能に設けられており、そのサムレスト40の内側に収容部4a,4bが形成されている点である。
【0088】
サムレスト40の前部は、図12(a)(b)に示すように、ラインガイド23を覆うように前方へ向けて延設されており、ラインガイド23の左右側方部位となるサムレスト40の内側には、図13(a)(b)にも示すように、収容部4a,4bが形成されている。つまり、釣糸巻き取り時にラインガイド23は、サムレスト40の前部の内側において左右方向に移動するように構成されている。
【0089】
サムレスト40の前部の下面には、図14(a)(c)に示すように、支持部41を介してピラー30が回転可能に支持されている。ピラー30は、サムレスト40を閉じた状態(先端を下方向へ回動して第1の位置にピラー30を移動させた状態)で、図14(a)に示すように、ラインガイド23の後方の近傍位置に配置されるようになっており、その位置で釣糸を押し下げて、釣糸案内溝24dに釣糸を誘導するように構成されている。
【0090】
サムレスト40の前端部40aは、下方へ向けて折曲されており、その先端下部には、図12(a)に示すように、釣糸挿通用の開口40bが形成されている。この開口40bは、サムレスト40を閉じた状態(図14(a)参照)においても前方へ向けて開いており、釣糸巻き取り時における釣糸の挿通が可能となっている。
サムレスト40の上面中央部には、図12(b)に示すように、段差部43が形成されており、この段差部43を介してサムレスト40の後部側が左右方向に幅狭に形成されている。そして後部側には、クラッチレバー53が連結されている。
クラッチレバー53は、サムレスト40と一体成形部材であってもよいし、別体であってもよい。別体の場合には、支持部材53aを介してクラッチ機構50に連結される。
サムレスト40の中央部の下部には、図15(a)に示すように、円環部44が一体的に設けられている。この円環部44は、図15(b)に示すように、左右フレーム2a,2bの内側に設けられた、スプール軸5cと同芯円環状の突設部(フランジ)43a,43bに対して外嵌可能であり、これらの突設部43a,43bに円環部44,44がそれぞれ外嵌されることで、サムレスト40は、スプール軸5c周りに回動可能に取り付けられ、クラッチレバー53の切り換え操作に連動して(先端部側が)上下方向に移動可能に設けられている。
【0091】
そして、スプール5に対する釣糸の巻き取りを可能にするクラッチON状態にクラッチレバー53を切り換え操作することにより、サムレスト40が下方向へ移動し(図14(a)参照)、この移動によりピラー30が第1の位置に移動して、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’の釣糸案内溝24dに釣糸が保持される。
また、スプール5からの釣糸放出を可能にするクラッチOFF状態にクラッチレバー53を切り換え操作することにより、サムレスト40が上方向へ移動し(図14(c)参照)、この移動によりピラー30が第2の位置に移動して、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’の釣糸案内溝24dから釣糸が離れる。
【0092】
本実施形態の魚釣用リールによれば、釣糸放出(仕掛けの投入)から釣糸巻き取りまでの一連の操作をスムーズに行うことができ、操作性に優れ、釣果の向上を期待することができる。
そして、サムレスト40内に設けられた収容部4a,4bに、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容するようにしてラインガイド23を左右方向に往復動させることができるので、左右方向に往復動する釣糸案内体22を介してスプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる魚釣用リールが得られる。
【0093】
また、サムレスト40で覆われる空間内においてラインガイド23を左右方向に往復動させることができるので、サムレスト40でラインガイド23を保護することができる。
また、例えば、サムレスト40を回動等によってさらに大きく開閉可能に設けることで、サムレスト40を開くことにより収容部4a,4bを開放することができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
また、収容部4a,4bがサムレスト40で覆われるので、前記第3実施形態で示した魚釣用リールのように(図11参照)、左右フレーム2a,2bと左右外側板3a,3bとの合せ部等で収容部4a,4bを形成するようにしたものと比べて、合せ部(合せ面)の形状を単純な形状とすることができる。このことは、生産性の向上に寄与する。
【0094】
なお、サムレスト40とピラー30とが一緒に移動するので、サムレスト40がピラー30の移動に邪魔にならず、ピラー30の上下方向の移動量を大きく設定することができ、ラインガイド23を上下方向(高さ方向)に大きく形成することも可能である。これによって、釣糸放出時に釣糸挿通孔24の内面と釣糸との放出抵抗(接触抵抗)が小さくなる。これによって、スムーズな釣糸の放出を実現することができる。
また、ピラー30を下方向に移動させたときには、サムレスト40も下がるので、違和感なくパーミング(把持)しながら、釣糸の巻き取り操作を行うことができ、操作性に優れる。
【0095】
なお、サムレスト40の前部左右に設けた側板42a,42b(図14(a)参照)は、必ずしも設けなくてもよく、排除することで、収容部4a,4bが左右側方に臨むように構成してもよい。この場合には、側板42a,42bが排除された分、サムレスト40の軽量化を図ることができる。
【0096】
なお、前記各実施形態では、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’に釣糸案内溝24dを設けたが、釣糸案内溝24dは必ずしも設けなくてもよく、下部内面中央部24c’の谷部によって釣糸が位置決め保持されるようにしてもよい。
【0097】
また、前記各実施形態では、ピラー30を上下方向に移動可能に構成したが、これに限られることはなく、ピラー30を固定して、ラインガイド23を上下方向に移動可能に構成してもよく、また、ラインガイド23およびピラー30の両方を上下方向に移動可能に構成してもよい。
また、前記各実施形態では、ラインガイド23およびピラー30を前後方向に一対設けたが、これに限られることなく、1つのラインガイド23に対して2以上のピラー30を設けてもよい。この場合に、ラインガイド23を前後のそれぞれにピラー30を設けてもよい。
また、ピラー30は棒状としたが、内側に釣糸が挿通可能な枠状(環状)としてもよい。
【0098】
また、各実施形態において、釣糸放出時にラインガイド23は、左右方向に静止状態であるが、スプール5の回転と連動させて、左右往復動させてもよく、この場合にも、釣糸放出時の抵抗を減少させることができる。
【0099】
また、各実施形態において、クラッチON状態にしてドラグフリー状態にしたときに、ラインガイド23とピラー30とが離れる方向に移動可能とする構成にしてもよい。この場合には、ラインガイド23とピラー30との距離を変化させる操作部をクラッチ機構50とは切り離して別個に設ければよい。
【0100】
また、ラインガイド23は、釣糸挿通孔24を有するものに限られることはなく、釣糸案内体22の左右方向に二又に延び、上面が下部内面24cと同様の傾斜面とされた延設部と、この延設部の左右端部から上方へ向けて立ち上げられた左側部,右側部と、を備え、上方が開放された略コ字形状を呈したものでもよい。この場合には、左側部,右側部が収容部4a,4bに収容されるように構成することで、ラインガイド23の往復動を好適に確保することができ、前記各実施形態で説明したような作用効果を得ることができる。
【0101】
なお、釣糸挿通孔24が設けられたラインガイド23において、図示しない切欠き部をラインガイド23に設けることによって、その切欠き部を通じて釣糸挿通孔24内に釣糸を通すように構成してもよい。この場合には、釣糸挿通孔24に直接に釣糸を通すときのような手間がかからない。したがって、操作性のよい魚釣用リールが得られる。
【符号の説明】
【0102】
1 リール本体 23 ラインガイド
2A,2B 左右側板 23a 左端部
2a,2b フレーム 23b 右端部
2a1,2b1 貫通孔 24c 下部内面(釣糸案内面)
3a,3b 左右外側板 24c’ 下部内面中央部(中央部)
3a1,3b1 貫通孔 30 ピラー
4a,4b 収容部 31 釣糸案内部
5 スプール 40 サムレスト
7 ハンドル D1 距離
7a ハンドル軸 D2 距離
10 駆動機構 O1 軸線
20 レベルワインド機構 C/2 領域
22 釣糸案内体 L/2 領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール前方の側板間に、スプールに釣糸を平行に巻回案内するレベルワインド機構を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な魚釣用リールは、リール本体に回転可能に支持したスプールを、動力伝達状態のクラッチON状態と動力遮断状態のクラッチOFF状態とに切り換えるクラッチレバーを備えており、このクラッチレバーを操作することで、スプールフリー(クラッチOFF状態)とし、キャスティング操作によって釣糸(仕掛け)を所定のポイントへ放出した後、ハンドルの巻き取り回転操作により、自動的にクラッチON状態に復帰できるように構成されている。
【0003】
そして、ハンドルの巻き取り回転操作により、レベルワインド機構の釣糸案内体に設けられたラインガイドが左右方向に往復移動し、ラインガイドに挿通保持された釣糸がラインガイドを介してスプールに略平行に巻回されるようになっている。
【0004】
ところで、魚釣用リールにおいて、釣糸放出時の抵抗を減少させることにより、飛距離性能の向上や仕掛け落下のスピード(着底までのスピード)を早くしたいという要望があった。
その一方で、巻き取り時の巻き取りムラに起因して、釣糸放出時に抵抗が生じることや、糸絡み等のトラブルが生じるのを回避するために、釣糸の巻き取り時には、スプールに対して釣糸を均一に平行に巻回したいという要望があった。
【0005】
このような要望に対応する魚釣用リールとして、特許文献1に開示されたものが知られている。
この魚釣用リールでは、釣糸を抑える役割をなすピラーが上下方向に移動可能に設けられており、釣糸放出時にピラーを上方向に移動させることにより、釣糸放出時のガイド抵抗を減少させることができ、また、釣糸巻き取り時にはピラーを下方向に移動させることにより、ピラーを釣糸に接触させてガイドすることで、釣糸巻き取り時の巻取精度を向上させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−165329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の魚釣用リールでは、前記したように、釣糸放出時のガイド抵抗を減少させることができるので、スムーズな釣糸の放出が可能である。しかしながら、その一方で、釣糸を案内するためのラインガイドの形状が大きく重量を有したものとなっているとともに構造も複雑であるので、これを支持している回転摺動部や伸縮摺動部の抵抗が大きくなり、釣糸巻き取り時の滑らかさ(軽快さ、感度)に劣るという問題があった。そのため、ルアー釣りに代表されるような釣糸巻き取り時の魚信(当たり)やルアーの動き、さらには水流の変化等が感知し難くなり、これらのことが釣果に影響することもあった。
【0008】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体の側板間に回転自在に支持したスプールと、少なくとも一方の前記側板に設けた駆動機構と、前記スプールの前方において、前記駆動機構のハンドル軸の回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、前記スプールに釣糸を平行に巻回する釣糸案内体と、前記釣糸案内体に設けられたラインガイドと、を備えた魚釣用リールであって、前記ラインガイドは、前記釣糸案内体の前方から見て、前記スプールの軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされた釣糸案内面を有しており、前記リール本体における前記ラインガイドの左右側方部位には、当該ラインガイドの往復動時に、当該ラインガイドの左端部および右端部をそれぞれ収容可能な収容部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この魚釣用リールによれば、ラインガイドは、釣糸案内体の前方から見て、スプールの軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされた釣糸案内面を有しているので、その釣糸案内面を通じて釣糸を放出することができる。つまり、釣糸案内面は、釣糸放出時の釣糸の移動方向、すなわち、スプールの軸線に沿って左右方向に繰り出し位置を変えながら繰り出される釣糸の移動方向に対応したものとなっており、これによって、釣糸放出時には、釣糸案内面上を釣糸が左右方向に繰り出し位置を変えながら通過することとなる。したがって、釣糸放出時のガイド抵抗を減少させることができる。
【0011】
そして、リール本体におけるラインガイドの左右側方部位に収容部が設けられているので、ラインガイドの左端部および右端部を収容部にそれぞれ収容するようにしてラインガイドを左右方向に往復動させることができ、横長形状とされた釣糸案内面を有するラインガイドにおいて、左右方向の往復動を好適に確保することができる。
【0012】
また、本発明は、前記スプールの近傍における前記リール本体の側板内面間の距離をD1、最左端位置に移動したときの前記ラインガイドの左端部位置と、最右端位置に移動したときの当該ラインガイドの右端部位置との間の距離をD2、としたときに、これらの関係が
D1 < D2
であることを特徴とする。
【0013】
この魚釣用リールによれば、前記関係を有しているので、横長形状とされた釣糸案内面を有するラインガイドにおいて、釣糸巻き取り時に、ラインガイドの左端部と右端部とを収容部にそれぞれ好適に逃がしつつ、ラインガイドの左右方向の往復動を好適に確保することができる。
つまり、通常であれば、前記関係とされることで、リール本体の側板内面にラインガイドの左端部と右端部とがそれぞれ当接してしまうところを、収容部に左端部および右端部をそれぞれ位置させることができ、ラインガイドの左右方向の往復動を好適に確保することができる。
【0014】
また、本発明は、前記収容部を、前記リール本体の側板を切欠くことで形成してもよいし、前記リール本体の側板に貫通孔を設けることで形成してもよいし、さらに、前記リール本体の側板に有底の凹状部を設けることで形成してもよい。
【0015】
この魚釣用リールによれば、側板を切欠くことや側板に貫通孔を設けること、さらには、側板に有底の凹状部を設けることで、収容部を簡単に形成することができる。
【0016】
また、本発明は、前記側板が、フレームと、このフレームに装着された外側板とを備えており、前記収容部は、前記フレームに設けられた貫通孔と、この貫通孔に対応するように前記外側板に設けられた有底の凹状部とを含んで構成されていることを特徴とする。
【0017】
この魚釣用リールによれば、ラインガイドの往復動時に、ラインガイドの左端部および右端部を、フレームの貫通孔や外側板の凹状部にそれぞれ挿通するようにして収容することができる。
【0018】
また、本発明は、前記リール本体上部の前記側板間に設けられたサムレストを備え、前記収容部は、前記サムレストによって覆われることを特徴とする。
【0019】
この魚釣用リールによれば、サムレストで覆われる空間内においてラインガイドを左右方向に往復動させることができる。
【0020】
また、本発明は、前記釣糸案内面は、前記ラインガイドの左右方向の中央部に向けて下り傾斜状とされており、前記ラインガイドの前後方向の近傍位置には、前記軸線に沿う釣糸案内部を備えたピラーが上下方向に移動可能に設けられており、前記ピラーは、釣糸巻き取り時に下方向に移動することで、前記釣糸案内面の中央部に前記釣糸案内部で釣糸を誘導して当該中央部に釣糸を保持することを特徴とする。
ここで、前記ピラーとは、釣糸を押下可能な前記釣糸案内部を有する棒状、板状、枠状を呈した部材であり、釣糸案内部としては、水平直線状、傾斜直線状、湾曲状(湾曲凸条、湾曲凹状)、複数の直線を組み合わせた形状、直線と曲線とを組み合わせた形状等がある。
【0021】
この魚釣用リールによれば、釣糸案内面は、ラインガイドの左右方向の中央部に向けて下り傾斜状とされており、ラインガイドの前後方向の近傍位置に設けられたピラーは、釣糸巻き取り時に下方向に移動することで、釣糸案内面の中央部に釣糸案内部で釣糸を誘導して当該中央部に釣糸を保持するようになっているので、釣糸巻き取り時に釣糸は、釣糸案内面の中央部において、左右方向の移動が規制された状態で位置決めされることとなる。
また、ピラーは、スプールの軸線に沿う釣糸案内部を備えているので、ラインガイドの左右方向の往復動時に、ラインガイドの左端部および右端部が収容部にそれぞれ収容される状態においても、釣糸が釣糸案内面の中央部に釣糸案内部で好適に位置決めされることとなり、位置決めされた状態が好適に維持されながらスプールに釣糸が巻回されることとなる。
【0022】
また、本発明は、前記釣糸案内面が、前記ラインガイドの最左端位置および最右端位置における前記スプールへの投影視において、当該釣糸案内面の左右方向における略半分の領域が、前記スプールの軸方向における略半分の巻回範囲に対応したものとなっていることを特徴とする。
【0023】
この魚釣用リールによれば、最左端位置にラインガイドが移動した場合や、最右端位置にラインガイドが移動した場合において、釣糸案内面の左右方向における略半分の領域がスプールの軸方向における略半分の巻回範囲に対応したものとなっているので、ラインガイドが前記した最左端位置や最右端位置にある状態で釣糸の放出が行われたときには、釣糸案内面の略半分の領域を利用した釣糸の繰り出しが行われることとなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、釣糸案内面が左右方向に横長形状とされており、釣糸放出時には、この横長の釣糸案内面上を釣糸が左右方向に繰り出し位置を変えながら通過することとなるので、釣糸の接触抵抗(送出抵抗)が小さくなり、スムーズな釣糸の放出を実現することができる。
これにより、釣糸の放出スピードが減速され難くなり、例えば、キャスティング時の投擲距離を伸ばすことができる。また、船釣り等においては、仕掛け落下のスピードを上げることができる。
【0025】
そして、リール本体におけるラインガイドの左右側方部位に設けられた収容部に、ラインガイドの左端部および右端部をそれぞれ収容するようにしてラインガイドを左右方向に往復動させることができるので、左右方向に往復動する釣糸案内体を介してスプールの左右に釣糸が均等に振分けられ、スプールに釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる魚釣用リールが得られる。
【0026】
また、スプールの近傍におけるリール本体の側板内面間の距離D1よりも、最左端位置に移動したときのラインガイドの左端部位置と最右端位置に移動したときのラインガイドの右端部位置との間の距離D2が大きくなるようにされた構成では、釣糸巻き取り時に、ラインガイドの左端部と右端部とを収容部にそれぞれ好適に逃がしつつ、ラインガイドの左右方向の往復動を好適に確保することができるので、左右方向に往復動する釣糸案内体を介してスプールの左右に釣糸が均等に振分けられ、スプールに釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを好適に実現することができる。
【0027】
また、リール本体の側板を切欠くことやリール本体の側板に貫通孔を設けること、さらには、リール本体の側板に有底の凹状部を設けることで、収容部を形成するようにした構成では、収容部を簡単に形成することができるので、生産性を向上させることができる。
【0028】
また、側板が、フレームと、このフレームに装着された外側板とを備えた構成では、ラインガイドの往復動時に、ラインガイドの左端部および右端部を、フレームの貫通孔や外側板の凹状部に挿通するようにしてそれぞれ収容することができるので、フレームと外側板とにより収容部に剛性をもたせつつ、ラインガイドの左右方向の移動を確保することができ、さらには、フレームと外側板とを備えた構成において左右方向のコンパクト化も図ることができる。
また、フレームの貫通孔が外側板の凹状部で覆われるので、異物の混入防止が可能である。
【0029】
また、リール本体上部の側板間に設けられたサムレストによって収容部が覆われる構成では、サムレストで覆われる空間内においてラインガイドを左右方向に往復動させることができるので、サムレストでラインガイドを保護することができる。
また、例えば、サムレストを回動等によって開閉可能に設けることで、サムレストを開くことにより収容部を開放することができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
また、収容部がサムレストで覆われるので、例えば、側板がフレームと外側板とで構成される場合において、収容部をこれらの合せ部等で形成するようにしたものと比べて、合せ部(合せ面)の形状を単純な形状とすることができる。このことは、生産性の向上に寄与する。
【0030】
また、釣糸案内面が中央部に向けて下り傾斜状とされ、ピラーの釣糸案内部で釣糸を誘導して当該中央部に釣糸を保持するようにした構成では、釣糸巻き取り時に釣糸は、釣糸案内面の中央部において、左右方向の移動が規制された状態で位置決めされることとなるので、左右方向に往復動する釣糸案内体を介してスプールの左右に釣糸が均等に振分けられ、スプールに釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを好適に実現することができる。
【0031】
また、釣糸案内面が、ラインガイドの最左端位置および最右端位置におけるスプールへの投影視において、当該釣糸案内面の左右方向における略半分の領域が、スプールの軸方向における略半分の巻回範囲に対応したものとなっている構成では、ラインガイドが最左端位置や最右端位置にある状態で釣糸の放出が行われたときに、釣糸案内面の略半分の領域を利用した釣糸の繰り出しが行われることとなるので、最左端位置および最右端位置においてもスムーズな釣糸の放出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図であり、(a)は前面図、(b)は上面図である。
【図2】(a)はリール本体の内部構造を示す上面図、(b)ラインガイドとスプールとの関係を示す前面図、(c)はラインガイドの詳細を示す前面図である。
【図3】(a)は魚釣用リールの側面図、(b)はリール本体の要部を示す縦断面図である。
【図4】クラッチ機構を示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は釣糸巻き取り時における各部の位置関係を示す説明図、(d)〜(f)は釣糸放出時における各部の位置関係を示す説明図である。
【図6】(a)(b)は釣糸巻き取り時におけるラインガイドの位置を示す上面図、(c)はリール本体の側板内面間の距離とラインガイドの左右端部位置間の距離との関係を示した上面図、(d)は釣糸放出時における釣糸の左右方向の動きを示す上面図である。
【図7】(a)は最左端位置にラインガイドが移動したときの前面図、(b)は最右端位置にラインガイドが移動したときの前面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図であり、(a)は前面図、(b)は上面図である。
【図9】収容部を断面で示した図であり、(a)は収容部を縦断面で示した図、(b)は収容部を横断面で示した図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図であり、(a)は前面図、(b)は上面図である。
【図11】収容部を断面で示した図であり、(a)は収容部を縦断面で示した図、(b)は収容部を横断面で示した図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る魚釣用リールの構成を示す図であり、(a)は前面図、(b)は上面図である。
【図13】収容部を断面で示した図であり、(a)は収容部を縦断面で示した図、(b)は収容部を横断面で示した図である。
【図14】(a),(b)は釣糸巻き取り時における各部の位置関係を示す説明図、(c),(d)は釣糸放出時における各部の位置関係を示す説明図である。
【図15】(a)はサムレストの構造を示した側断面図、(b)は図15(a)におけるA−A線模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後」「左右」「上下」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0034】
(第1実施形態)
図1に示すように、魚釣用リールのリール本体1は、釣糸が巻回されるスプール5を回転可能に支持した左右側板2A,2Bを備え、図2(a)に示すように、右側板2Bに設けた駆動機構10と、スプール5の前方において、駆動機構10のハンドル軸7aの回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、スプール5に釣糸を平行に巻回する釣糸案内体22と、この釣糸案内体22に設けられたラインガイド23と、を備えている。
そして、リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位には、図1(a)(b)、図2(a)に示すように、ラインガイド23の往復動時に、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容可能な収容部4a,4bが設けられている。
また、ラインガイド23の後方における近傍位置には、スプール5の軸線に沿う釣糸案内部31(図2(b)参照)を備えたピラー30が上下方向に移動可能に設けられている。
ここで、リール本体1の「側板」は、図1(b)に示すように、スプール5の軸方向の両端に位置する部材であり、本実施形態では、各種部材が支持されるフレーム体を構成する左右フレーム2a,2bと、これら左右フレーム2a,2bに所定の空間をもって夫々装着される左右外側板(カバー体)3a,3bとから構成される。左右フレーム2a,2bと左右外側板3a,3bとの間には内部空間が形成され、この内部空間には、図2(a)に示すように、駆動機構10、クラッチ機構50(図4参照)、バックラッシュ防止機構70(図2(a)参照)等が設置されるようになっている。なお、左右フレーム2a,2bと左右外側板3a,3bとの形状については、適宜変形することが可能であり、それらを構成する材料は適宜設定することができる。また、これらの装着方法や装着位置についても、リール本体1の構成等により、種々の方法を用いることが可能である。
【0035】
左右フレーム2a,2bは、複数の支柱を介して一体化されており、図1(a)に示すように、下部の支柱2cには、釣竿のリールシート(不図示)に装着される釣竿取付脚1aが設けられている。
また、左右フレーム2a,2b間には、図2(a)に示すように、軸受5a,5bを介してスプール軸5cが回転可能に支持されており、このスプール軸5cにスプール5が取り付けられている。
スプール5は、ハンドル7を回転操作することによって回転させることができるように構成されており、ハンドル7は、右外側板3bから突出したハンドル軸7aの端部に取り付けられ、右外側板3bとの間に介在された逆転防止機構7b(転がり式一方向クラッチ)によって、釣糸巻き取り方向にのみ回転可能となっている。
なお、スプール軸5cを回転可能に支持する軸受5a,5bは、左右フレーム2a,2bの部分に配設されていてもよいし、左右外側板3a,3bの部分に配設されていてもよい。
【0036】
右フレーム2bと右外側板3bとの間には、ハンドル7の回転運動をスプール軸5c、および後記するレベルワインド機構20の螺軸21に伝達する駆動機構10、駆動力の伝達を継脱するクラッチ機構50(図4参照)のほか、魚釣時にスプール5から釣糸が繰り出された際に、スプール5にドラグ力を付与するドラグ機構60等が収容されている。
【0037】
駆動機構10は、公知のように、ハンドル軸7aに回転可能に支持された駆動歯車11と、この駆動歯車11に噛合するピニオン12とを備えている。ピニオン12は、スプール軸5cと同軸上に設置されており、ピニオン軸12cに沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピニオン12の外周には、円周溝12aが形成されており、この円周溝12aに、クラッチ機構50のヨーク57(図4参照)が係合して、ピニオン12を軸方向に移動させるようになっている。すなわち、ピニオン12が軸方向に移動することで、スプール軸5cとの間で継脱がなされ、動力伝達状態(クラッチON状態)/動力遮断状態(クラッチOFF状態)に切り換えられるようになっている。
【0038】
スプール5の前方において、リール本体1の左右側板2A,2B間には、レベルワインド機構20が配置されている。レベルワインド機構20は、駆動機構10を介して回転駆動される螺軸21と、螺軸21に装着されて左右方向に往復動可能に設けられた釣糸案内体22とを備えている。
螺軸21は、左右側板2A,2B間に回転可能に支持されており、駆動機構10を介して回転駆動されるようになっている。螺軸21の端部には、連動歯車21aが取り付けられており、この連動歯車21aには、ハンドル軸7aの駆動歯車11に隣接して設けられた歯車11aが噛合している。これにより、ハンドル7を巻き取り回転操作すると、ハンドル軸7aの回転が、歯車11aおよび連動歯車21aを通じて螺軸21に伝わり、螺軸21が回転駆動される。
【0039】
螺軸21の外周面には、螺旋溝21bが形成されており、この螺旋溝21bには、釣糸案内体22に設けられた摺動子26(図3(b)参照、以下同じ)が係合している。このような螺軸21は、左右側板2A,2B間に架け渡された筒体25(図3(b)参照、以下同じ)内に収容されている。
筒体25は、図3(b)に示すように、断面C字形状を呈して軸方向に延出する開口25aを有しており、この開口25aを通じて螺旋溝21bが部分的に露出している。
【0040】
また、釣糸案内体22は、樹脂で形成され、左右側板2A,2B間において、螺軸21と平行に設けられたガイド軸22aに支持されており、下部が筒体25を囲繞するようにしてこれに回り止め保持されている。そして、釣糸案内体22の下部には、筒体25の開口25aを通じて前記したように螺旋溝21bと係合する摺動子26が配置されている。なお、摺動子26は、袋ナット26aによって釣糸案内体22に固定されている。
これにより、釣糸案内体22は、螺軸21が連動歯車21aによって回転駆動されることで、螺旋溝21bに係合する摺動子26を介してガイド軸22aに沿って左右往復動するようになっている。
【0041】
釣糸案内体22の上部には、釣糸を案内するためのラインガイド23が設けられている。
ラインガイド23には、釣糸挿通孔24が形成されている。釣糸挿通孔24は、図2(b)に示すように、前方から見て、スプール5の軸線O1に沿うようにして左右方向に横長形状とされており、図2(c)に示すように、左右開口幅Cが上下開口高さH1(釣糸挿通孔24の中央部における最大開口高さ)に比べて、大きくなるように形成されている。
釣糸挿通孔24の上部内面24aは、水平面に対して平行とされており、この上部内面24aに連続する左右内面24b,24bは、それぞれ鉛直面とされている。また、これらの左右内面24b,24bに連続する下部内面24cは、釣糸案内体22の前方から見て、スプール5の軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされており、釣糸案内面として機能するようになっている。本実施形態の下部内面24cは、釣糸挿通孔24の中央部としての下部内面中央部24c’に向けて緩やかに直線状に下る傾斜面(凹凸のない面)とされている。
【0042】
ここで、下部内面24cの傾斜角度θは、図2(c)に示すように、水平面に対して1〜30度の範囲に設定されるのが好ましく、より好ましくは、5〜15度の範囲に設定されるのがよい。
また、下部内面24cは、前後方向にも直線状(凹凸のない面)に形成されている。
なお、釣糸挿通孔24の上部内面24aと左右内面24b,24bとの角部、左右内面24b,24bと下部内面24cとの角部は、いずれもアール状とされている。
なお、下部内面24cは、左右方向に直線状とされたものに限られることはなく、左右方向に湾曲状(湾曲凸条、湾曲凹状)、左右方向に複数の直線を組み合わせた形状、さらに、左右方向に直線と曲線とを組み合わせた形状等、種々採用することができる。
また、下部内面24cは、必ずしも前後方向に直線状を有しなくてもよいが、本実施形態のように、直線状として前後方向に奥行きをもたせることで、よりスムーズに釣糸を下部内面中央部24c’に導くことが可能となる。
【0043】
下部内面24cの中央部(下部内面中央部24c’)には、釣糸巻き取り時に釣糸を保持する釣糸案内溝24dが形成されている。釣糸案内溝24dは、下部内面24cの中央部から下方へ向けて湾曲凹状に切り欠かれた溝であり、図3(b)に示すように、釣糸挿通孔24内において前後方向に延設されている。釣糸案内溝24d内には、後記するクラッチレバー53の操作時に、下方へ向けて移動してきたピラー30によって、下部内面24c(図2(b)参照)を下部内面中央部24c’に向けて誘導されてきた釣糸が挿入されるようになっている(図5(a)〜(c)参照)。
【0044】
リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位(リール本体1の左右側板2A,2B)には、収容部4a,4bが設けられている。収容部4a,4bは、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容可能な大きさに形成されており、図3(a)に示すように、側方から見て、リール本体1の先端部1dとサムレスト4の先端部4dとの間において、後方へ向けて湾曲凹状に切り欠かれた形状を呈している。本実施形態では、収容部4a,4bを通じて、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23b(図3(a)では左端部23aを図示)がリール本体1の左右側方にそれぞれ臨むようになっている。
【0045】
ここで、ラインガイド23は、前記したように、左右方向に横長形状とされており、釣糸案内体22よりも左右方向に向けて張り出しているので、釣糸巻き取り時にハンドル7が回転操作されて釣糸案内体22が左右往復動されると、図6(a)(b)、図7(a)(b)に示すように、その左端部23aおよび右端部23bが左右フレーム2a,2b(左右側板2A,2B)に掛かる位置までそれぞれ移動することとなり、収容部4a,4b内に左端部23aおよび右端部23bがそれぞれ位置することとなる。
この場合、図6(c)に示すように、最左端位置に移動したラインガイド23の左端部23aの位置と、最右端位置に移動したラインガイド23の右端部23bの位置との間の距離をD2とし、スプール5の近傍におけるリール本体1の側板内面間の距離(スプール5の近傍における左右フレーム2a,2b間の距離)をD1とすると、これらの関係が次式(1)の関係を有するように設定されている。
D1 < D2 ・・・(1)
【0046】
すなわち、スプール5の近傍における左右フレーム2a,2b間の距離D1よりもラインガイド23の左端部位置と最右端位置との間の距離D2が大きくなるように設定されている。
これにより、横長形状とされたラインガイド23において、釣糸巻き取り時に、ラインガイド23の左端部23aと右端部23bとを収容部4a,4bにそれぞれ好適に逃がしつつ、ラインガイド23の左右方向の往復動を好適に確保することができるようになっている。
つまり、通常であれば、前記関係とされることで、リール本体1の側板内面(左右フレーム2a,2bの内面等)にラインガイド23の左端部23aと右端部23bbとがそれぞれ当接してしまうところを、収容部4a,4bに左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ位置させることができ、ラインガイド23の左右方向の往復動を好適に確保することができるようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、下部内面(釣糸案内面)24cは、ラインガイド23の最左端位置および最右端位置におけるスプール5への投影視において、次の関係を有するように設定されている。
すなわち、図6(b)に示すように、ラインガイド23が最右端位置に移動した状態で、ラインガイド23の左右開口幅C(図2(b)参照)の略半分となる開口幅(開口領域)C/2が、スプール5の軸線に沿う釣糸巻回領域(巻回範囲)Lの略半分となる釣糸巻回領域(巻回範囲)L/2に対応したものとなるように設定されている。また、ラインガイド23が最左端位置に移動した状態においても前記と同様に設定されている。
つまり、ラインガイド23の最左端位置および最右端位置において、ラインガイド23の開口幅C/2がスプール5の釣糸巻回領域L/2に対応しているので、通常釣糸の繰り出しが好ましくない最左端位置および最右端位置においても、スムーズな釣糸の繰り出しが可能となっている。
【0048】
なお、ラインガイド23は、図3(a)に示すように、収容部4a,4bを通じて、全体がリール本体1の左右側方に臨むように構成したが、左端部23a、あるいは右端部23bのみが収容部4a,4bを通じてリール本体1の左右側方に臨むように構成してもよい。
また、収容部4a,4bの形状は、前記した側面視で湾曲凹状のものに限られず、側面視で丸形凹状や角形凹状等、種々の形状を採用しても差し支えない。
【0049】
また、収容部4a,4bの一部を形成しているサムレスト4は、図6(c)に破線で示すように、上面視で、先端部4d’をラインガイド23の上面23dに掛からないように、スプール5側に向けて後退させて形成してもよい。このようにすることで、サムレスト4としての機能を有しながらも、リール本体1の軽量化を図ることができる。この場合、釣糸巻き取り時に、仮に、サムレスト4に載せた指がラインガイド23の左端部23aや右端部23bに上方から触れてこれに引っ掛かっても、収容部4a,4bを通じて左端部23aおよび右端部23bがリール本体1の左右側方にそれぞれ臨むように構成されているので、収容部4a,4bに指を好適に逃がすことができる。これにより、巻き取り操作が妨げられることもない。
【0050】
ピラー30は、図1(a)(b)、図3(b)に示すように、円柱状の棒状部材であり、スプール5とラインガイド23との間において、ラインガイド23の後方の近傍位置で、上下方向に移動可能に配置されている。
ピラー30は、図4に示すように、クラッチ機構50のクラッチ駆動部材51に一体的に設けられた腕部51aに対して一端部が支持されており、後記するようにクラッチ駆動部材51が駆動されることにより、左右フレーム2a,2bに形成された湾曲長溝2a’,2b’(図3(b)参照、一方のみ図示)に沿うようにして上下方向に移動可能に設けられている。
ピラー30は、図2(b)に示すように、スプール5の軸線O1に沿う釣糸案内部31(下部外周面、図3(a)参照)を備えており、スプール5とラインガイド23との間において、この釣糸案内部31で釣糸を押下可能である。
なお、ピラー30は、円柱状の棒状部材とされたものに限られることはなく、釣糸を押下可能な釣糸案内部31を有する板状としてもよい。また、釣糸案内部31としては、左右方向に直線状とされたものに限られることはなく、左右方向に傾斜する直線状、湾曲状(湾曲凸条、湾曲凹状)、左右方向に複数の角度の直線を例えば連続して組み合わせた形状、左右方向に直線と曲線とを組み合わせた形状等としてもよい。
【0051】
このようなピラー30は、クラッチ機構50により、スプール5に対する釣糸の巻き取りを可能にするクラッチON状態(釣糸巻き取り時)で下方向に移動するようになっており、その際に、釣糸挿通孔24内に挿通された釣糸を下部内面中央部24c’に誘導し、当該下部内面中央部24c’(釣糸案内溝24d)に釣糸を保持する第1の位置を採るようになっている。また、ピラー30は、スプール5から釣糸の繰り出しを可能にするクラッチOFF状態(釣糸放出時)で上方向に移動するようになっており、その際に第1の位置から退避して前記した釣糸の保持を解除する第2の位置を採るようになっている。
【0052】
ここで、ピラー30は、図3(b)に示すように、スプール軸5cの軸心O2を通る水平面(不図示)よりも上方となる領域において、上下移動可能に設けられており、これによって、第1の位置から第2の位置に向かう上方向の移動時には、上方向の移動成分とともに後方のスプール5に近づく方向の移動成分を含んで移動するようになっている。
また、第2の位置から第1の位置に向かう下方向の移動時には、下方向の移動成分とともに前方のラインガイド23に近づく方向の移動成分を含んで移動するようになっている。
【0053】
本実施形態では、クラッチ駆動部材51の腕部51aに対して、ピラー30が軸受30a,30b(図1(b)参照)を介して軸回りに回動可能に支持されており、釣糸巻き取り時の巻き取り抵抗および釣糸放出時の放出抵抗が低減されるようになっている。
【0054】
クラッチ機構50は、図4に示すように、右フレーム2bに沿って回動可能に支持されたクラッチ駆動部材51と、このクラッチ駆動部材51を駆動するクラッチレバー53とを含んで構成されている。
【0055】
クラッチ駆動部材51は、公知のように、右フレーム2bに対して回動可能に支持され、振分けバネ56によって、図4において実線で示した動力伝達状態(クラッチON状態)と、図4において二点鎖線で示した動力遮断状態(クラッチOFF状態)とに振分け保持されるようになっている。また、クラッチ駆動部材51の表面には、ピニオン12(図2(a)参照、以下同じ)の円周溝12a(図2(a)参照)に嵌合したヨーク57と係合可能な一対のカム面58,58が形成されている。
そして、クラッチ駆動部材51の前部には、前方へ向けて延設された腕部51aが一体的に設けられており、この腕部51aの先端部に、前記したようにピラー30の一端部が支持されている。
【0056】
ヨーク57の先端側は、右フレーム2bに突設された支持ピン59,59によって保持されており、ヨーク57は、各支持ピン59,59に配設されたバネ部材(図示せず)によって常時、クラッチ駆動部材51側に付勢された状態となっている。なお、図4では、ヨーク57が不図示のバネ部材によってクラッチ駆動部材51側に付勢された状態を示しており、このとき、ピニオン12は、スプール軸5cの端部に形成されている係合部に嵌合してクラッチON状態となっている。
【0057】
クラッチ駆動部材51の後端部は、支持部材53aを介してクラッチレバー53と連結されており、図4において矢印X1で示すように、クラッチレバー53が押下げ操作されると、クラッチ駆動部材51は、図中反時計回り方向に回動され、ヨーク57を介して、ピニオン12をスプール軸5cの端部に形成されている係合部から離脱させる(クラッチOFF状態に切り換える)ように作用する。また、この状態は、振分けバネ56によって保持される。
また、このようなクラッチレバー53の押下げ操作によって、クラッチ駆動部材51が図中反時計回り方向に回動されると、腕部51aの先端部が上方向に移動し、これによって、ピラー30が上方向に移動して第2の位置に配置される。
つまり、クラッチレバー53を操作することで、クラッチ駆動部材51は、クラッチON状態(釣糸巻き取り位置)と、クラッチOFF状態(釣糸放出位置)と、に位置決めされるようになっており、この位置決めに連動して、ピラー30が第1の位置と第2の位置とに位置決めされるようになっている。
【0058】
次に、スプール5、ピラー30および釣糸挿通孔24の高さの関係について、図5を参照して説明する。
図5(a)〜(c)は釣糸巻き取り時における各部の位置関係を示した図であり、クラッチ機構50(図4参照)が動力伝達状態(クラッチON状態)とされて、ピラー30が第1の位置に配置されている状態を示している。
【0059】
ここで、リール本体1の釣竿取付脚1aの下面を基準として、スプール5の釣糸巻回位置5eまでの高さをh1、ピラー30の釣糸案内部31(図3(b)参照、以下同じ)までの高さをh2、釣糸挿通孔24の上部内面24a(図2(c)参照、以下同じ)までの高さをh3、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’までの高さをh4、としたときに、釣糸巻き取り時には、次式(2)かつ(3)の関係を有するように設定されている。
なお、釣糸巻回位置は、通常、規定の釣糸量を巻いたときの外径に相当しており、また、その位置が明確でない場合においては、スプールの最大外径(=フランジ5dの外径)の98%で定義される径位置とする。
h1 ≧ h3 > h2 ・・・(2)
h4 ≧ h2 ・・・(3)
【0060】
すなわち、釣糸巻き取り時においては、リール本体1の下端部を基準として、スプール5の釣糸巻回位置5eまでの高さh1以下となるように、釣糸挿通孔24の上部内面24aまでの高さh3が設定され、さらにこの高さh3よりも低くなるようにピラー30の釣糸案内部31までの高さh2が設定されている。そして、さらに、ピラー30の釣糸案内部31までの高さh2は、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’までの高さh4以下となるように設定されている。
これにより、ピラー30は、第1の位置に移動されると、釣糸挿通孔24の上部内面24aよりも低い位置において、下部内面中央部24c’と同じかあるいはこれよりもさらに低くなる位置に釣糸案内部31が位置する状態となる。
【0061】
したがって、クラッチレバー53の操作やハンドル7の操作によってクラッチOFF状態からクラッチON状態に切り換えられると、第2の位置から第1の位置にピラー30が移動する過程で釣糸案内部31により釣糸が押し下げられ、その際に、釣糸は、釣糸挿通孔24の下部内面24cに沿って傾斜面を下部内面中央部24c’に向けて移動する。そして、ピラー30が第1の位置まで移動されることで、釣糸案内溝24d内に釣糸が誘導される。これによって、釣糸は釣糸案内溝24d内に好適に保持される。
【0062】
このように、釣糸案内溝24d内に釣糸が保持された状態で、前記式(2)(3)により、釣糸には、ピラー30の釣糸案内部31による押圧でテンションが付与された状態となる。したがって、釣糸巻き取り時には、ピラー30で押さえられて釣糸が暴れ難くなり、これによって、釣糸案内溝24d内から釣糸が外れ難くなる。
【0063】
ここで、リール本体1の下端部を基準として、釣糸案内溝24dの底部までの高さをh0とすると、釣糸巻き取り時には、次式(4)の関係を有するように設定されることが特に好ましい。
h4 ≧ h2 > h0 ・・・(4)
【0064】
この場合には、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’までの高さh4以下となるように、ピラー30の釣糸案内部31までの高さh2が設定され、さらにこの高さh2よりも低くなるように釣糸案内溝24dの底部までの高さh0が設定されることとなる。これによって、ピラー30は、第1の位置に移動されると、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’と同じかまたはそれよりも低い位置において、釣糸案内溝24dの底部よりも高い位置に釣糸案内部31が位置する状態となる。
したがって、釣糸案内溝24d内に釣糸が確実に保持されるようになり、釣糸案内溝24d内から釣糸がより一層外れ難くなる。
なお、軽い仕掛けを使用する釣種の場合には、大きなテンションを釣糸に付与したいので、 h2 ≦ h0 としてもよい。
【0065】
一方、図5(d)〜(f)は釣糸放出時における各部の高さの関係を示した図であり、クラッチ機構50(図4参照)が動力遮断状態(クラッチOFF状態)とされて、ピラー30が第2の位置に配置されている状態を示している。
ここで、釣糸放出時には、次式(5)かつ(6)の関係を有するように設定されている。
h1 ≧ h3 ・・・(5)
h2 > h3 ・・・(6)
【0066】
すなわち、釣糸放出時において、リール本体1の下端部を基準として、スプール5の釣糸巻回位置5eまでの高さh1以下となるように、釣糸挿通孔24の上部内面24aまでの高さh3が設定され、かつ、ピラー30の釣糸案内部31までの高さh2が釣糸挿通孔24の上部内面24aまでの高さh3よりも大きくなるように設定されている。
これにより、ピラー30は、第2の位置に移動されると、スプール5の釣糸巻回位置5eと同じかまたはこれよりも低い位置において、釣糸挿通孔24の上部内面24aよりも高い位置に釣糸案内部31が位置する状態となる。
【0067】
したがって、クラッチレバー53の操作によってクラッチON状態からクラッチOFF状態に切り換えられると、第1の位置から第2の位置にピラー30が移動して退避される過程で、釣糸案内溝24d内における釣糸の保持が解除され、前記式(5)の関係により、釣糸挿通孔24の上部の横長のスペースに釣糸が移動することとなる。したがって、スムーズな釣糸の放出を行うことができる。
また、第2の位置にピラー30が移動した状態では、前記式(5)(6)の関係から、ピラー30の釣糸案内部31が、釣糸挿通孔24の上部内面24aとスプール5の釣糸巻回位置5eとの間に架け渡された釣糸の上方に間隔を隔てて位置することとなる。したがって、スプール5から繰り出される釣糸にピラー30が接触せず、これによって、スムーズな釣糸の放出を行うことができる。
【0068】
なお、釣糸巻き取り時には、図6(a)(b)、図7(a)(b)に示すように、ハンドル7の巻き取り回転操作により、ラインガイド23が左右方向に往復移動し、ラインガイド23の釣糸案内溝24dに挿通保持された釣糸が、ピラー30を介してスプール5に略平行に巻回される。
【0069】
本実施形態では、ラインガイド23の釣糸案内溝24dが、スプール5の巻回幅いっぱいに往復移動して、釣糸をスプール5に案内するように位置調整されている。
その際、ラインガイド23は、図6(a)(b)、図7(a)(b)に示すように、その左端部23aおよび右端部23bが、左右フレーム2a,2bに掛かる位置までそれぞれ移動し、リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位に設けられた収容部4a,4bに逃がされる。
これによって、横長形状とされたラインガイド23の左右方向の往復移動が確保され、釣糸案内溝24dがスプール5の巻回幅いっぱいに往復移動可能となる。
【0070】
また、釣糸放出時には、図6(d)に示すように、ラインガイド23の釣糸挿通孔24の左右開口の範囲内で釣糸が放出可能である。
なお、図6(d)では、ラインガイド23が略中央に位置した場合を示したが、図6(a)、図7(a)に示すように、左端にラインガイド23が移動した場合や、図6(b)、図7(b)に示すように、右端にラインガイド23が移動した場合においても、ラインガイド23の釣糸挿通孔24の略半分の開口幅(開口領域)C/2がスプール5の軸方向の釣糸巻回領域(巻回範囲)L/2に対応したものとなっているので、スムーズな釣糸の繰り出しが可能である。
【0071】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、下部内面(釣糸案内面)24cが左右方向に横長形状とされており、釣糸放出時には、この横長の下部内面24c上を釣糸が左右方向に繰り出し位置を変えながら通過することとなるので、釣糸の接触抵抗(送出抵抗)が小さくなり、スムーズな釣糸の放出を実現することができる。
これにより、釣糸の放出スピードが減速され難くなり、例えば、キャスティング時の投擲距離を伸ばすことができる。また、船釣り等においては、仕掛け落下のスピードを上げることができる。
【0072】
そして、リール本体1におけるラインガイド23の左右側方部位に設けられた収容部4a,4bに、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容するようにしてラインガイド23を左右方向に往復動させることができるので、左右方向に往復動する釣糸案内体22を介してスプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる魚釣用リールが得られる。
【0073】
また、スプール5の近傍におけるリール本体1の側板内面間(左右フレーム2a,2b間)の距離D1よりも、最左端位置に移動したときのラインガイド23の左端部23aの位置と最右端位置に移動したときのラインガイド23の右端部23bの位置との間の距離D2が大きくなるようにされているので、釣糸巻き取り時に、ラインガイド23の左端部23aと右端部23bとを収容部4a,4bにそれぞれ好適に逃がしつつ、ラインガイド23の左右方向の往復動を好適に確保することができる。したがって、左右方向に往復動する釣糸案内体22を介してスプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを好適に実現することができる。
【0074】
また、収容部4a,4bは、リール本体1のリール本体1の左右側板2A,2Bを切欠くことで簡単に形成することができる。したがって、生産性が高い。
【0075】
また、釣糸巻き取り時に釣糸は、下部内面中央部24c’において、左右方向の移動が規制された状態で位置決めされることとなるので、左右方向に往復動する釣糸案内体22を介してスプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを好適に実現することができる。
【0076】
また、ラインガイド23の下部内面(釣糸案内面)24cにおける開口幅(開口領域)C/2が、釣糸巻回領域(巻回範囲)L/2に対応したものとなっているので、ラインガイド23が最左端位置や最右端位置にある状態で釣糸の放出が行われたときに、下部内面24cにおける略半分の開口幅(開口領域)C/2を利用した釣糸の繰り出しが行われることとなり、最左端位置および最右端位置においてもスムーズな釣糸の放出を実現することができる。
【0077】
(第2実施形態)
図8、図9を参照して第2実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第1実施形態と異なるところは左右側板2A,2Bの内側に収容部4a,4bが形成されている点である。
【0078】
収容部4a,4bは、図8(a)(b)に示すように、左右側板2A,2Bの左右フレーム2a,2bに側方へ向けた有底の凹状部を設けることで形成されている。収容部4a,4bは、図9(a)(b)に示すように、縦方向の断面および横方向の断面が、最左端位置および最右端位置に移動したときのラインガイド23の左端部23a,右端部23bの外形状に沿う内面を有しており、左端部23a,右端部23bをそれぞれ収容可能に構成されている。
ここで、図9(a)に示すように、収容部4a,4bの下面14a,14bは、ラインガイド23の下面23e,23fに対応した傾斜面とされており、リール本体1の内側に向けて下り傾斜状とされている。これによって、収容部4a,4b内に、仮に、水分や塵埃等の異物が入り込んでも、これが下面23e,23f上に留まり難くなり、収容部4a,4b外に好適に排出することができる。したがって、長期的に安定したラインガイド23の往復動を実現することができる。
【0079】
この魚釣用リールによれば、左右側板2A,2Bの左右フレーム2a,2bに、有底の凹状部を設けることで収容部を簡単に形成することができる。したがって、生産性の向上された魚釣用リールが得られる。
また、収容部4a,4bが有底の凹状部を設けることで形成され、左右外側板3a,3bに収容部4a,4bが露出していないので、左右外側板3a,3b側からの異物の混入を防止することができる。
【0080】
(第3実施形態)
図10、図11を参照して第3実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第1,第2実施形態と異なるところは、図10(a)(b)に示すように、左右側板2A,2Bに貫通孔を設けることで収容部4a,4bが形成されている点である。
【0081】
収容部4aは、図11(a)(b)に示すように、左フレーム2aに形成された貫通孔2a1と、この貫通孔2a1に連通して左外側板3aに形成された貫通孔3a1とから構成されており、左外側板3aに貫通孔3a1の開口4a1が形成されている。また、収容部4bは、図11(a)(b)に示すように、右フレーム2bに形成された貫通孔2b1と、この貫通孔2b1に連通して右外側板3bに形成された貫通孔3b1とから構成されており、右外側板3bに貫通孔3b1の開口4b1が形成されている。
【0082】
本実施形態では、ラインガイド23の最左端位置(図11(a)(b)で二点鎖線で示す位置)において、左端部23aが、収容部4aの貫通孔2a1を通じてこれよりも左側(外側)の貫通孔3a1内に位置するように構成されている。また、ラインガイド23の最右端位置(図11(a)(b)で実線で示す位置)において、右端部23bが、収容部4bの貫通孔2b1を通じてこれよりも右側(外側)の貫通孔3b1内位置するように構成されている。なお、最左端位置および最右端位置のいずれにおいても、左端部23aおよび右端部23bは、開口4a1,4b1に位置しておらず、貫通孔3a1,3b1内に位置している。
【0083】
つまり、最左端位置に移動したラインガイド23の左端部23aが収容部4aから突出しないように構成されており、また、最右端位置に移動したラインガイド23の右端部23bが収容部4bから突出しないように構成されている。
これにより、添えた指に左端部23aや右端部23bが当たることがなく、リール本体1を握る指や手のひらに、違和感を覚えることもない。
【0084】
この魚釣用リールによれば、左右側板2A,2Bの左右フレーム2a,2bおよび左右外側板3a,3bに、貫通孔2a1,2b1および貫通孔3a1,3b1を設けることで収容部を簡単に形成することができる。したがって、生産性の向上された魚釣用リールが得られる。
また、収容部4a,4bが左右フレーム2a,2bおよび左右外側板3a,3bからなるので、剛性をもたせつつ、ラインガイド23の左右方向の移動を確保することができるとともに、左右フレーム2a,2bおよび左右外側板3a,3bとを備えた構成において左右方向のコンパクト化も図ることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、貫通孔3a1,3b1内に左端部23a,右端部23bがそれぞれ位置するように構成したが、これに限られることはなく、左右フレーム2a,2bの貫通孔2a1,2b1内に左端部23a,右端部23bがそれぞれ位置するように構成してもよい。また、貫通孔2a1,2b1と貫通孔3a1,3b1との境目部分に左端部23a,右端部23bがそれぞれ位置するように構成してもよい。
【0086】
また、貫通孔3a1,3b1の開口4a1,4b1を閉塞して、貫通孔3a1,3b1が有底の凹状部となるように形成してもよい。
この場合には、貫通孔2a1,2b1が左右外側板3a,3bの凹状部で覆われることとなるので、異物の混入防止が可能である。
【0087】
(第4実施形態)
図12〜図15を参照して第4実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第1〜第3実施形態と異なるところは、リール本体1の上部の左右側板2A,2B間に設けられたサムレスト40が、クラッチレバー53の切り換え操作に連動して上下方向に移動可能に設けられており、そのサムレスト40の内側に収容部4a,4bが形成されている点である。
【0088】
サムレスト40の前部は、図12(a)(b)に示すように、ラインガイド23を覆うように前方へ向けて延設されており、ラインガイド23の左右側方部位となるサムレスト40の内側には、図13(a)(b)にも示すように、収容部4a,4bが形成されている。つまり、釣糸巻き取り時にラインガイド23は、サムレスト40の前部の内側において左右方向に移動するように構成されている。
【0089】
サムレスト40の前部の下面には、図14(a)(c)に示すように、支持部41を介してピラー30が回転可能に支持されている。ピラー30は、サムレスト40を閉じた状態(先端を下方向へ回動して第1の位置にピラー30を移動させた状態)で、図14(a)に示すように、ラインガイド23の後方の近傍位置に配置されるようになっており、その位置で釣糸を押し下げて、釣糸案内溝24dに釣糸を誘導するように構成されている。
【0090】
サムレスト40の前端部40aは、下方へ向けて折曲されており、その先端下部には、図12(a)に示すように、釣糸挿通用の開口40bが形成されている。この開口40bは、サムレスト40を閉じた状態(図14(a)参照)においても前方へ向けて開いており、釣糸巻き取り時における釣糸の挿通が可能となっている。
サムレスト40の上面中央部には、図12(b)に示すように、段差部43が形成されており、この段差部43を介してサムレスト40の後部側が左右方向に幅狭に形成されている。そして後部側には、クラッチレバー53が連結されている。
クラッチレバー53は、サムレスト40と一体成形部材であってもよいし、別体であってもよい。別体の場合には、支持部材53aを介してクラッチ機構50に連結される。
サムレスト40の中央部の下部には、図15(a)に示すように、円環部44が一体的に設けられている。この円環部44は、図15(b)に示すように、左右フレーム2a,2bの内側に設けられた、スプール軸5cと同芯円環状の突設部(フランジ)43a,43bに対して外嵌可能であり、これらの突設部43a,43bに円環部44,44がそれぞれ外嵌されることで、サムレスト40は、スプール軸5c周りに回動可能に取り付けられ、クラッチレバー53の切り換え操作に連動して(先端部側が)上下方向に移動可能に設けられている。
【0091】
そして、スプール5に対する釣糸の巻き取りを可能にするクラッチON状態にクラッチレバー53を切り換え操作することにより、サムレスト40が下方向へ移動し(図14(a)参照)、この移動によりピラー30が第1の位置に移動して、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’の釣糸案内溝24dに釣糸が保持される。
また、スプール5からの釣糸放出を可能にするクラッチOFF状態にクラッチレバー53を切り換え操作することにより、サムレスト40が上方向へ移動し(図14(c)参照)、この移動によりピラー30が第2の位置に移動して、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’の釣糸案内溝24dから釣糸が離れる。
【0092】
本実施形態の魚釣用リールによれば、釣糸放出(仕掛けの投入)から釣糸巻き取りまでの一連の操作をスムーズに行うことができ、操作性に優れ、釣果の向上を期待することができる。
そして、サムレスト40内に設けられた収容部4a,4bに、ラインガイド23の左端部23aおよび右端部23bをそれぞれ収容するようにしてラインガイド23を左右方向に往復動させることができるので、左右方向に往復動する釣糸案内体22を介してスプール5の左右に釣糸が均等に振分けられ、スプール5に釣糸が均一かつ平行(平坦)に巻き取られる。これにより、スムーズな釣糸の放出が可能でありながら、スムーズな釣糸の巻き取りを実現することができる魚釣用リールが得られる。
【0093】
また、サムレスト40で覆われる空間内においてラインガイド23を左右方向に往復動させることができるので、サムレスト40でラインガイド23を保護することができる。
また、例えば、サムレスト40を回動等によってさらに大きく開閉可能に設けることで、サムレスト40を開くことにより収容部4a,4bを開放することができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
また、収容部4a,4bがサムレスト40で覆われるので、前記第3実施形態で示した魚釣用リールのように(図11参照)、左右フレーム2a,2bと左右外側板3a,3bとの合せ部等で収容部4a,4bを形成するようにしたものと比べて、合せ部(合せ面)の形状を単純な形状とすることができる。このことは、生産性の向上に寄与する。
【0094】
なお、サムレスト40とピラー30とが一緒に移動するので、サムレスト40がピラー30の移動に邪魔にならず、ピラー30の上下方向の移動量を大きく設定することができ、ラインガイド23を上下方向(高さ方向)に大きく形成することも可能である。これによって、釣糸放出時に釣糸挿通孔24の内面と釣糸との放出抵抗(接触抵抗)が小さくなる。これによって、スムーズな釣糸の放出を実現することができる。
また、ピラー30を下方向に移動させたときには、サムレスト40も下がるので、違和感なくパーミング(把持)しながら、釣糸の巻き取り操作を行うことができ、操作性に優れる。
【0095】
なお、サムレスト40の前部左右に設けた側板42a,42b(図14(a)参照)は、必ずしも設けなくてもよく、排除することで、収容部4a,4bが左右側方に臨むように構成してもよい。この場合には、側板42a,42bが排除された分、サムレスト40の軽量化を図ることができる。
【0096】
なお、前記各実施形態では、釣糸挿通孔24の下部内面中央部24c’に釣糸案内溝24dを設けたが、釣糸案内溝24dは必ずしも設けなくてもよく、下部内面中央部24c’の谷部によって釣糸が位置決め保持されるようにしてもよい。
【0097】
また、前記各実施形態では、ピラー30を上下方向に移動可能に構成したが、これに限られることはなく、ピラー30を固定して、ラインガイド23を上下方向に移動可能に構成してもよく、また、ラインガイド23およびピラー30の両方を上下方向に移動可能に構成してもよい。
また、前記各実施形態では、ラインガイド23およびピラー30を前後方向に一対設けたが、これに限られることなく、1つのラインガイド23に対して2以上のピラー30を設けてもよい。この場合に、ラインガイド23を前後のそれぞれにピラー30を設けてもよい。
また、ピラー30は棒状としたが、内側に釣糸が挿通可能な枠状(環状)としてもよい。
【0098】
また、各実施形態において、釣糸放出時にラインガイド23は、左右方向に静止状態であるが、スプール5の回転と連動させて、左右往復動させてもよく、この場合にも、釣糸放出時の抵抗を減少させることができる。
【0099】
また、各実施形態において、クラッチON状態にしてドラグフリー状態にしたときに、ラインガイド23とピラー30とが離れる方向に移動可能とする構成にしてもよい。この場合には、ラインガイド23とピラー30との距離を変化させる操作部をクラッチ機構50とは切り離して別個に設ければよい。
【0100】
また、ラインガイド23は、釣糸挿通孔24を有するものに限られることはなく、釣糸案内体22の左右方向に二又に延び、上面が下部内面24cと同様の傾斜面とされた延設部と、この延設部の左右端部から上方へ向けて立ち上げられた左側部,右側部と、を備え、上方が開放された略コ字形状を呈したものでもよい。この場合には、左側部,右側部が収容部4a,4bに収容されるように構成することで、ラインガイド23の往復動を好適に確保することができ、前記各実施形態で説明したような作用効果を得ることができる。
【0101】
なお、釣糸挿通孔24が設けられたラインガイド23において、図示しない切欠き部をラインガイド23に設けることによって、その切欠き部を通じて釣糸挿通孔24内に釣糸を通すように構成してもよい。この場合には、釣糸挿通孔24に直接に釣糸を通すときのような手間がかからない。したがって、操作性のよい魚釣用リールが得られる。
【符号の説明】
【0102】
1 リール本体 23 ラインガイド
2A,2B 左右側板 23a 左端部
2a,2b フレーム 23b 右端部
2a1,2b1 貫通孔 24c 下部内面(釣糸案内面)
3a,3b 左右外側板 24c’ 下部内面中央部(中央部)
3a1,3b1 貫通孔 30 ピラー
4a,4b 収容部 31 釣糸案内部
5 スプール 40 サムレスト
7 ハンドル D1 距離
7a ハンドル軸 D2 距離
10 駆動機構 O1 軸線
20 レベルワインド機構 C/2 領域
22 釣糸案内体 L/2 領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の側板間に回転自在に支持したスプールと、少なくとも一方の前記側板に設けた駆動機構と、前記スプールの前方において、前記駆動機構のハンドル軸の回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、前記スプールに釣糸を平行に巻回する釣糸案内体と、前記釣糸案内体に設けられたラインガイドと、を備えた魚釣用リールであって、
前記ラインガイドは、前記釣糸案内体の前方から見て、前記スプールの軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされた釣糸案内面を有しており、
前記リール本体における前記ラインガイドの左右側方部位には、当該ラインガイドの往復動時に、当該ラインガイドの左端部および右端部をそれぞれ収容可能な収容部が設けられていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記スプールの近傍における前記リール本体の側板内面間の距離をD1、
最左端位置に移動したときの前記ラインガイドの左端部位置と、最右端位置に移動したときの当該ラインガイドの右端部位置との間の距離をD2、としたときに、これらの関係が、
D1 < D2
であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記収容部は、前記リール本体の側板を切欠くことで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記収容部は、前記リール本体の側板に貫通孔を設けることで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記収容部は、前記リール本体の側板に有底の凹状部を設けることで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記側板は、フレームと、このフレームに装着された外側板とを備えており、
前記収容部は、前記フレームに設けられた貫通孔と、この貫通孔に対応するように前記外側板に設けられた有底の凹状部とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
前記リール本体上部の前記側板間に設けられたサムレストを備え、
前記収容部は、前記サムレストによって覆われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項8】
前記釣糸案内面は、前記ラインガイドの左右方向の中央部に向けて下り傾斜状とされており、
前記ラインガイドの前後方向の近傍位置には、前記軸線に沿う釣糸案内部を備えたピラーが上下方向に移動可能に設けられており、
前記ピラーは、
釣糸巻き取り時に下方向に移動することで、前記釣糸案内面の中央部に前記釣糸案内部で釣糸を誘導して当該中央部に釣糸を保持することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項9】
前記釣糸案内面は、
前記ラインガイドの最左端位置および最右端位置における前記スプールへの投影視において、当該釣糸案内面の左右方向における略半分の領域が、前記スプールの軸方向における略半分の巻回範囲に対応したものとなっていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項1】
リール本体の側板間に回転自在に支持したスプールと、少なくとも一方の前記側板に設けた駆動機構と、前記スプールの前方において、前記駆動機構のハンドル軸の回転操作に連動して左右方向に往復動可能に設けられ、前記スプールに釣糸を平行に巻回する釣糸案内体と、前記釣糸案内体に設けられたラインガイドと、を備えた魚釣用リールであって、
前記ラインガイドは、前記釣糸案内体の前方から見て、前記スプールの軸線に沿うようにして左右方向に横長形状とされた釣糸案内面を有しており、
前記リール本体における前記ラインガイドの左右側方部位には、当該ラインガイドの往復動時に、当該ラインガイドの左端部および右端部をそれぞれ収容可能な収容部が設けられていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記スプールの近傍における前記リール本体の側板内面間の距離をD1、
最左端位置に移動したときの前記ラインガイドの左端部位置と、最右端位置に移動したときの当該ラインガイドの右端部位置との間の距離をD2、としたときに、これらの関係が、
D1 < D2
であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記収容部は、前記リール本体の側板を切欠くことで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記収容部は、前記リール本体の側板に貫通孔を設けることで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記収容部は、前記リール本体の側板に有底の凹状部を設けることで形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記側板は、フレームと、このフレームに装着された外側板とを備えており、
前記収容部は、前記フレームに設けられた貫通孔と、この貫通孔に対応するように前記外側板に設けられた有底の凹状部とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
前記リール本体上部の前記側板間に設けられたサムレストを備え、
前記収容部は、前記サムレストによって覆われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項8】
前記釣糸案内面は、前記ラインガイドの左右方向の中央部に向けて下り傾斜状とされており、
前記ラインガイドの前後方向の近傍位置には、前記軸線に沿う釣糸案内部を備えたピラーが上下方向に移動可能に設けられており、
前記ピラーは、
釣糸巻き取り時に下方向に移動することで、前記釣糸案内面の中央部に前記釣糸案内部で釣糸を誘導して当該中央部に釣糸を保持することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項9】
前記釣糸案内面は、
前記ラインガイドの最左端位置および最右端位置における前記スプールへの投影視において、当該釣糸案内面の左右方向における略半分の領域が、前記スプールの軸方向における略半分の巻回範囲に対応したものとなっていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−95560(P2012−95560A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244257(P2010−244257)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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