説明

鳥獣類忌避合成樹脂製袋

【課題】 飼い主を失った野良犬、野良猫、鼠等の小動物や、カラス等の鳥類による食い散らかしなどの被害を、長期間に渉って防止することを可能とした、合成樹脂フィルムからなる鳥獣類忌避合成樹脂製袋を、比較的低コストで提供する。
【解決手段】 鳥獣害回避用の合成樹脂製袋であって、該袋用の素材となる合成樹脂製フィルムに、鳥獣類の忌避成分として重量比で10〜1000ppmのニコチン若しくはリコリン或いはその両者を、含有若しくは添加せしめた鳥獣類忌避合成樹脂製袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、家庭用や業務用を問わず主として生ごみ等を収納して廃棄するために用いられるごみ袋や、日用品を販売する雑貨店等で使用されている販売用のレジ袋に係り、詳しくはポリエチレン、ポリプロピレン等の各種合成樹脂フィルムから形成される合成樹脂製の袋であって、飼い主を失った野良犬、野良猫、鼠等の小動物や、カラス等の鳥類が該合成樹脂製の袋を襲い内容物を散乱させる等の被害を防止するための鳥獣類忌避合成樹脂製袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種合成樹脂フィルムからなる合成樹脂製の袋は、日用品を販売する雑貨店等で数多く販売され、家庭用、業務用を問わず幅広く利用され、この合成樹脂フィルムからなる袋に日常的に出る生ごみ、紙くず、空き缶等のごみを、燃えるごみと燃えないごみ等に種分けして収納し、決められた日時に所定の場所に集め、自治体等が定期的に収集するためのごみ袋として利用されたり、日用品を販売する雑貨店等で使用されている販売用のレジ袋として幅広く利用されている。
【0003】
ところが近年、収集のために所定の場所に集められたごみ袋として利用されている上記ポリエチレン、ポリプロピレ等の各種合成樹脂フィルムからなる合成樹脂製の袋(以下、単に「袋」と記述することがある。)、とり分け生ごみを収納した袋を、飼い主を失った野良犬、野良猫、或いは鼠等の小動物や、カラス等の鳥類が襲い、袋そのものを食い破り、エサとなる生ごみ等を食いあさるために、袋の内容物が周辺に散乱し、街の美観を破壊するばかりでなく、環境的に不衛生になるという問題が多発して大きな社会問題となっている。
【0004】
このような被害を防止するために、従来から数々の鳥獣類用の忌避手段が提案され試みられているが、それらの多くは袋となる各種合成樹脂フィルムに、予め鳥獣類の忌避する成分を含有させ、その被害を未然に防止しようとするものである。その一例をあげると、鳥獣類用の忌避成分としてサルチル酸低級エステル類およびメントール等から選択される少なくとも1種、あるいは複数を混入して合成樹脂組成物を生成し、該合成樹脂組成物によって形成されるごみ袋等を利用することによって、鳥獣類の嗅覚を利用して忌避効果を得ようとする鳥獣類忌避袋(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
また、鳥獣類用の忌避成分として合成樹脂フィルムに予め、トウガラシの辛味成分であるカプサイシン類を担持せしめ、該合成樹脂フィルムによって形成された袋等を利用することにより、鳥獣類の味覚を利用して忌避効果を得ようとする鳥獣類忌避袋(例えば、特許文献2参照)も提案されている。
【0006】
さらに、合成樹脂組成物からなる不織布に、シトロネラ、ニームオイル、スペアミント等のハーブと称せられる植物精油類を単独または複数ブレンドしたものを含浸させて鳥獣類用の含浸シートを形成し、該含浸シートに対してさらに激辛トウガラシのエキス若しくはニンニクのエキスのいずれか、或いはその両成分を含浸させた含浸シートを得、該含浸シートを貼り付けた合成樹脂シートからなる袋を用いることにより、鳥獣類の嗅覚に加えて味覚をも利用して忌避効果を得ようとする鳥獣類忌避袋(例えば、特許文献3参照)も提案されている。
【0007】
一方、鳥獣類の視覚を利用して忌避効果を得ようとする袋、例えば、全光線透過率が20%以下であって300〜600nmの波長域の光線透過率が、平均値で50%以下となる合成樹脂組成物に、鳥獣類用の忌避成分として辛味成分を添加された合成樹脂フィルムを生成し、該合成樹脂フィルムからなる袋を利用することにより、鳥類特にカラスの視覚に加え、カラスの嫌う刺激性の味覚をも利用して忌避効果を得ようとする鳥獣類忌避袋(例えば、特許文献4参照)も提案されている。
【特許文献1】特開平6−48903
【特許文献2】特開平7−109205
【特許文献3】特開2004−238778
【特許文献4】特開2005−200147
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の各従来技術を含め、鳥獣類による食い散らかしなどの被害を防ぐことを目的として、数々の忌避手段が試みられてきたが、いずれの方法も野良犬、野良猫、或いは鼠等の小動物や、カラス等の鳥類の嗅覚、味覚および視覚を利用した忌避効果に依存する方法であり、即効的な鳥獣類の忌避効果、あるいは一定の期間は忌避効果を持続して、それなりの成果は認められるものと思われる。しかしながら、野良犬、野良猫、或いは鼠等の小動物や、カラス等の鳥類にも経験的学習能力があって、自らの身体に害がないものと判れば再び袋に襲い掛かり、袋を食い破って生ごみ等を食い散らかし、それらを散乱させて街の美観を破壊し、結果的に不衛生な環境を招くという問題が再発しているのが現状であった。
【0009】
従って、長期的な視野で飼い主を失った野良犬、野良猫、或いは鼠等の小動物や、カラス等の鳥類が袋の内容物を散乱させ、環境的に不衛生になるという被害を防止することが斯界の強い要望であった。本発明者らはこのような鳥獣類の本能的性状、経験的学習能力を考慮に入れて、鳥獣類用の忌避手段について研究を重ねた結果、野良犬、野良猫、或いは鼠等の小動物や、カラス等の鳥類が、その経験的学習能力から、毒素成分がある植物等、自らの身体に害を及ぼすようなものには近寄らないという習性に着目し、少量の毒素を忌避成分として含有させた合成樹脂フィルムを生成し、これを用いて袋を形成することにより、長期的な視野での鳥獣類の忌避効果が得られることをつきとめ、本願発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、鳥獣害回避用の合成樹脂製袋であって、該袋用の素材となる合成樹脂製フィルムに、鳥獣類の忌避成分として重量比で10〜1000ppmのニコチンを、含有若しくは添加せしめたことを特徴的構成要件とする鳥獣類忌避合成樹脂製袋を要旨とするものである。
【0011】
また、本願発明による上記鳥獣類忌避合成樹脂製袋において、前記ニコチンが均一に分布するようにして合成樹脂ペレットを生成し、得られた該合成樹脂ペレットによって合成樹脂フィルムを成形し、該合成樹脂フィルムを原料として形成されることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明による上記鳥獣類忌避合成樹脂製袋において、合成樹脂フィルム用の塗料中に予め所定量の前記ニコチンを装入し、該ニコチンが均一に分布するようにしてニコチン含有塗料を生成し、該ニコチン含有塗料を用いて全体若しくは部分的に、印刷若しくは塗布することによって形成されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明による上記鳥獣類忌避合成樹脂製袋はまた、揮発性液状媒体中にニコチンを装入して、含有量が10〜1000ppmのニコチン含有液状物質を調製し、得られた該ニコチン含有液状物質を用いてその全体若しくは部分的に、スプレーすることによって形成されることを特徴とするものである。
【0014】
本発明による上記鳥獣類忌避合成樹脂製袋はさらに、該袋用の素材となる合成樹脂製フィルムに、鳥獣類の忌避成分として前記ニコチンに代えて重量比で10〜1000ppmのリコリンを、含有若しくは添加せしめたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明による上記鳥獣類忌避合成樹脂製袋において、該袋用の素材となる合成樹脂製フィルムに、鳥獣類の忌避成分として重量比で10〜1000ppmのニコチンおよびリコリンの混合成分を、含有若しくは添加せしめたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって得られる合成樹脂フィルムからなる鳥獣類忌避合成樹脂製袋は、素材となるポリエチレンやポリプロピレン等の各種合成樹脂フィルム中に、鳥獣類の忌避成分としての主成分である所定量のニコチン若しくはリコリン或いはその両方を、予め含有させる工程を経て該合成樹脂フィルムを成形させるか、成形された合成樹脂フィルムに対して、所定量の前記忌避成分を含有させた塗料で印刷若しくは塗布するか、合成樹脂フィルムによって形成された袋に対して、前記忌避成分を所定量含有した揮発性液状物質を用いて全体若しくは部分的にスプレーする方法によって得られることを特徴とするものである。従って本願発明によって得られる鳥獣類忌避合成樹脂製袋には、人体には全く影響を及ぼすことはないが、飼い主を失った野良犬、野良猫、或いは鼠等の小動物(以下、単に「小動物」ということがある。)やカラス等の鳥類が、該ごみ袋を食い破ろうとして噛み付いた際に、該ごみ袋を形成する合成樹脂フィルムに含有されるニコチン若しくはリコリンの毒素成分が体内に入り、即効的に多大な作用を及ぼして、当該小動物若しくは鳥類が危機的な苦痛を体験し、その経験的学習能力に強烈な印象を与えて、本能的作用が働いて今後その小動物若しくは鳥類は、当該ごみ袋に対して接触することを避け、結果として害を及ぼさなくなる。また、合成樹脂製フィルムに含有されるニコチン若しくはリコリンの毒素成分は、嗅覚や味覚に依存したり或いは視覚による影響に期待するものでもないところから、径時的変化がなく、その効果が長期間に渡って持続する。
【0017】
本願発明における主要な忌避成分として用いられるニコチンは、主としてタバコの葉に含まれるものであり、趣向品として喫煙されることからも明らかなように、一時に大量に摂取することが無い限り人体には殆ど無害であり、またリコリンはヒガンバナ科の各種植物の全草(茎、花、葉など)とりわけ鱗茎(球根)に比較的多く含まれている。従ってニコチンはタバコの葉、リコリンはヒガンバナ科の植物の全草から抽出することによって、それぞれ容易に且つ比較的に低価格での入手が可能である。忌避成分のニコチンは融点(−7.9℃)が低く、常温では油状の液体である上に、沸点(247℃)が高く高温での性質の安定性が優れているため、素材となるポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂ペレット中に均一に分布させることができ、該忌避成分を含んだ合成樹脂フィルムの成形手段は極めて容易で、従来公知の方法を任意に採用することが可能である。また付随的な忌避成分であるリコリンは、融点(275〜280℃)が原料素材となるポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂ポリマーの融点に近似しているところから、これを含有せしめた合成樹脂フィルムの成形手段も、従来公知の方法を任意に採用することが可能であり、結果として比較的に低価格で鳥獣類忌避袋を提供することができる。なお、ニコチン若しくはリコリンの毒素成分は前述したように小動物や、カラス等の鳥類には強烈に作用するが、人間には極めて多量に摂取した場合を除き、殆ど影響を及ぼすものではないところから、所定の規則に基づいて取り扱う範囲においては、通常の合成樹脂製袋と同様に安心して取り扱うことができ、鳥獣類忌避効果が長期間に渉って持続する合成樹脂製袋を、リーズナブル価格で市場に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本願に係る発明の実施の形態について、実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本願発明は、これによって拘束されるものではなく、本願発明の趣旨の範囲内において、自由に設計変更が可能である。
【0019】
本発明において忌避成分として用いられるニコチンは、一般式C1014で表されるタバコの葉に主に含まれるアルカロイド系の毒素成分である。ニコチンは犬、猫、鼠等の小動物やカラス等の鳥類に対しては、短い潜伏時間、即ち即効的に悪心、嘔吐、下痢等の消化器系の症状や、脈拍上昇、呼吸促迫等の刺激、興奮症状を生じさせ、さらには多量に摂取した場合は徐脈、痙攣、意識障害、呼吸麻痺等の抑制症状を生じせしめ、場合によっては死に至る可能性もある。然しながらこのニコチンは、タバコの誤食をしない限り、人体に対して重篤な中毒症状を招くことはない。本発明の鳥獣類忌避合成樹脂製袋には毒素としてのニコチンが、該合成樹脂製の袋を形成する合成樹脂フィルム中に重量比で10〜1000ppmと、極めて少量しか含有されてないため、人体には全く影響はないが、身体の小さい犬、猫、鼠等の小動物やカラス等の鳥類には、場合によっては死に至らしめるほどに多大の作用が及ぼされる。
【0020】
一方、本発明においてもう一つの忌避成分であるリコリンは、一般式C1617NOで表されるヒガンバナ科植物の全草(茎、花、葉等)に含まれるニコチンと同じアルカロイド系の毒素成分で、特にその球根には多量に含まれている。リコリンは犬、猫、鼠等の小動物やカラス等の鳥類に対しては、短い潜伏時間、即ち即効的に悪心、嘔吐、下痢等の消化器系の症状を生じさせ、さらには多量に摂取した場合は神経麻痺等の神経的な症状や呼吸不全等の循環器系の症状をも生じせしめ、場合によっては死に至る可能性もある。然しながらこのリコリンは、人体に対して重篤な中毒症状を招くことはなく、例えば健康な成人が、リコリンが多量に含まれるという球根を1個摂取した(リコリン2〜3gの服用に相当)場合であっても、約30分後に嘔吐や下痢など消化器系の症状を呈することがある程度で、神経系や循環器系の症状を呈することもなく、初期に嘔吐することによって症状の持続時間も短く、該消化器系の症状も3時間程度で解消する。本発明の鳥獣類忌避合成樹脂製袋には毒素としてのリコリンが、該合成樹脂製の袋を形成する合成樹脂フィルム中に重量比で10〜1000ppmと、極めて少量しか含有されてないため、人体には全く影響はないが、身体の小さい鼠や猫などの小動物や鳥類には、場合によっては死に至らしめるほどに多大の作用が及ぼされる。
【0021】
本発明において、鳥獣類忌避合成樹脂製袋に形成される合成樹脂フィルムは、通常市販のポリオレフィンペレットを原料とし、これを従来公知のインフレーション法によるフィルム成形手段によって、所定の径を有するチューブ状の合成樹脂フィルムを成形した後、該チューブ状の合成樹脂フィルムを所定の長さに切断して、その一方の端部をヒートシールすることによって袋体とするものであるが、本発明においては、前記ポリオレフィンペレットに忌避成分として用いられるニコチンまたはリコリン若しくはその両者の混合成分(以下、単に「忌避成分」ということがある。)を、予め所定量が均一な状態で分布するように含有せしめ、得られた忌避成分含有の該ポリオレフィンペレットを原料として、チューブ状の合成樹脂フィルムを成形することが望ましい。この際、上記忌避成分の装入は、ポリオレフィンペレット中に該忌避成分を予め所定量の割合で装入し、溶融状態で攪拌混合することにより、忌避成分が均一な状態で分布するポリオレフィンペレットを生成し、該ペレットを原料としてインフレーション法によるチューブ状フィルムを成形する方法が一般的であるが、該忌避成分含有フィルムの成形手段については特に限定されるものではなく、インフレーション法によるチューブ状フィルムの成形時に、原料のポリオレフィンペレットを装入するホッパーに、所定量の忌避成分を逐次装入することによって、忌避成分を含有するチューブ状フィルムを成形することも可能であり、フィルムそのものをインフレーション法以外の方法、例えばカレンダー法やTダイ法或いは溶液法で成形することも可能であり、選択肢の一つとして推奨することができるが、コスト面で考慮した場合は前記インフレーション法が最も好ましい。
【0022】
上記の方法により、所定量の忌避成分が均一に分布したポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂フィルムを成形し、本発明の鳥獣類忌避合成樹脂製袋が形成されることが最も好ましい形態の一つであるが、それ以外の方法として、合成樹脂フィルムを着色したり、所定のデザインを施すために用いる塗料に、予め所定量の前記忌避成分を装入し、該忌避成分が均一な状態に混合するようにして忌避成分含有塗料を調製し、得られた該忌避成分含有塗料を用いて全体若しくは部分的に印刷するか、或いは塗布を施して合成樹脂フィルムからなる鳥獣類忌避合成樹脂製袋を形成することも可能である。また、揮発性の液状媒体中に所定量の前記忌避成分を装入し、均一な状態になるよう攪拌混合せしめることによって忌避成分含有液状物質を調製し、得られた該忌避成分含有液状物質を用いて合成樹脂フィルムから形成した袋全体に、或いは部分的にスプレーすることによって鳥獣類忌避合成樹脂製袋を形成することも可能である。このように、本願発明の鳥獣類忌避合成樹脂製袋は、素材となる合成樹脂フィルムを形成する段階で忌避成分となるニコチン若しくはリコリン、或いはその両者を含有させる方法以外にも、塗料に混ぜて印刷若しくは塗布する方法、液状物質を形成してスプレーする方法などがあり、いずれの方法を選択する場合であっても、本願発明に基づく忌避成分が施された鳥獣類忌避合成樹脂製袋の形態を保つことが可能である。
【0023】
また、前記合成樹脂フィルムの原料となるポリオレフィンペレットは、通常市販のポリオレフィン系ペレット、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリオレフィン系樹脂の中から適宜選択して採用することが可能であるが、中でも直鎖状または高圧ラジカル重合の低密度ポリエチレンペレット(LLDPE、HPLDPE)、或いは高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく用いられる。
【実施例1】
【0024】
溶融状態とした直鎖状低密度ポリエチレンペレット(LLDPE)に液状のニコチンを装入し、ポリエチレンポリマーに対するニコチンの添加量が、100ppmとなるように調整したポリエチレンペレットを合成した。次いで得られたニコチン含有の該ポリエチレンペレットを原料として、インフレーション法のフィルム成形装置を介して、幅350mm、奥行き150mm、厚みが30μmのインフレーションフィルムに成形した。成形されたインフレーションフィルム中に含有されるニコチンを、ヘッドスペース・ガスマトグラフの分析によって測定した結果92ppmであった。次いで該インフレーションフィルムを長さ450mmに切断し、一方の端部を熱溶着することによって、本願発明に基づく第1実施例による容量20lの鳥獣類忌避合成樹脂製袋(1)を得た。得られた本実施例による該合成樹脂製袋(1)と、ニコチンを含まない以外は実質的に同一の市販の合成樹脂製袋(1A)とに、それぞれパン屑、チーズ各々320gを装入して、幅2m、奥行き2m、高さが0.75mの金網製の檻に入れ、そのほぼ中央に2個の袋が接するように並べて置き、ついでその檻の中に柴犬と雑種犬それぞれ1匹づつ入れて観察した結果、30秒経過後に雑種犬は市販の合成樹脂製袋(1A)に近寄り、該袋(1A)を食い破って中身のパン屑及びチーズを食べ、時を置かずに柴犬も後に続いた。一方、本実施例によって得られた鳥獣類忌避合成樹脂製袋(1)には、近寄ったものの全く反応を示すことが無かった。また、同一の条件で設けられた檻の中に、上記の犬に代えて3匹の猫を入れて観察した結果、ほぼ同様の結果が確認された。
【実施例2】
【0025】
ポリエチレンポリマーに対するニコチンの添加量が、800ppmとなるように調整してポリエチレンペレットを合成した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを成形した。成形されたインフレーションフィルム中に含有されるニコチンを、実施例1と同様ヘッドスペース・ガスマトグラフの分析によって測定した結果787ppmであった。次いで該インフレーションフィルムを長さ450mmに切断し、一方の端部を熱溶着することによって、本願発明に基づく第2実施例による鳥獣類忌避合成樹脂製袋(2)を得た。得られた該合成樹脂製袋(2)と、ニコチンを含まない以外は実質的の同一の合成樹脂製フィルムからなる市販の合成樹脂製袋(2A)とに、それぞれ実施例1と同一の内容のチーズおよびパン屑を装入し、実施例1と同一の檻の中に置いて実施例と同一の条件で犬および猫の動向を観察した結果、実施例1とほぼ同様の反応が確認された。
【実施例3】
【0026】
合成樹脂フィルムの原料となるポリオレフィンペレットとして、高圧ラジカル重合低密度ポリエチレンペレット(HPLDPE)を選択し、ポリエチレンポリマーに対するニコチンの添加量が、500ppmとなるように調整してポリエチレンペレットを合成した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを成形した。成形されたインフレーションフィルム中に含有されるニコチンを、実施例1と同様ヘッドスペース・ガスマトグラフの分析によって測定した結果491ppmであった。次いで該インフレーションフィルムを長さ450mmに切断し、一方の端部を熱溶着することによって、本願発明に基づく第3実施例による鳥獣類忌避合成樹脂製袋(3)を得た。得られた該合成樹脂製袋(3)と、ニコチンを含まない以外は実質的の同一の合成樹脂製フィルムからなる市販の合成樹脂製袋(3A)とに、それぞれ実施例1と同一の内容のチーズおよびパン屑を装入し、実施例1と同一の檻の中に置いて実施例と同一の条件で犬および猫の動向を観察した結果、実施例1とほぼ同様の反応が確認された。
【実施例4】
【0027】
合成樹脂フィルム用塗料として牡丹(上海牡丹油墨有限公司製)を用意し、該塗料中に液状のニコチンを添加してその含有量が、重量比で300ppmになるように調整してニコチン含有印刷用塗料を合成し、該印刷用塗料を用いてインフレーションフィルムの表裏全面に、広告用デザインを施した以外は実質的に実施例1と同様にして、本願発明に基づく第4実施例による鳥獣類忌避合成樹脂製袋(4)を得た。得られた該合成樹脂製袋(4)と、ニコチンを含まない以外は実質的の同一の合成樹脂製フィルムからなる市販の合成樹脂製袋(4A)とに、それぞれ実施例1と同一の内容のチーズおよびパン屑を装入し、実施例1と同一の檻の中に置いて実施例と同一の条件で犬および猫の動向を観察した結果、実施例1とほぼ同様の反応が確認された。
【実施例5】
【0028】
揮発性液状媒体としてエチルアルコールの含有量が85%のアルコール溶液を用意し、該アルコール溶液に対するニコチンの添加量が、重量比で300ppmになるように調整してニコチン含有揮発性液状物質を合成し、該揮発性液状物質を用いて合成樹脂製フィルムからなる合成樹脂製袋の表裏全面に、スプレーによる塗布を施した以外は実質的に実施例1と同様にして、本願発明に基づく第5実施例による鳥獣類忌避合成樹脂製袋(5)を得た。得られた該合成樹脂製袋(5)と、ニコチン含有揮発性物質による塗布を施さなかった以外は実質的の同一の合成樹脂製フィルムからなる市販の合成樹脂製袋(5A)とに、それぞれ実施例1と同一の内容のチーズおよびパン屑を装入し、実施例1と同一の檻の中に置いて実施例と同一の条件で犬および猫の動向を観察した結果、実施例1とほぼ同様の反応が確認された。
【実施例6】
【0029】
忌避成分としてニコチンに代えて同量のリコリンを用いた以外は、実質的に実施例1と同様にしてリコリン含有鳥獣類忌避合成樹脂製袋(6)を得た。得られた該合成樹脂製袋(6)と、リコリンを含まない以外は実質的の同一の合成樹脂製フィルムからなる市販の合成樹脂製袋(6A)とに、それぞれ実施例1と同一の内容のチーズおよびパン屑を装入し、実施例1と同一の檻の中に置いて実施例と同一の条件で犬および猫の動向を観察した結果、実施例1とほぼ同様の反応が確認された。
【実施例7】
【0030】
ニコチンとリコリンが50対50の割合で均一に混合した忌避成分を合成して、ポリエチレンポリマーに対する該忌避成分の添加量が、800ppmとなるように調整してポリエチレンペレットを合成した以外は、実施例2と同様にしてインフレーションフィルムを成形した。成形されたインフレーションフィルム中に含有されるニコチンとリコリンとからなる忌避成分の総量を、実施例1と同様のヘッドスペース・ガスマトグラフの分析によって測定したところ791ppmであった。次いで該インフレーションフィルムを長さ450mmに切断し、一方の端部を熱溶着することによって、本願発明に基づく第7実施例による鳥獣類忌避合成樹脂製袋(7)を得た。得られた該合成樹脂製袋(7)と、忌避成分を含まない以外は実質的の同一の合成樹脂製フィルムからなる市販の合成樹脂製袋(7A)とに、それぞれ実施例1と同一の内容のチーズおよびパン屑を装入し、実施例1と同一の檻の中に置いて実施例と同一の条件で犬および猫の動向を観察した結果、実施例1とほぼ同様の反応が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記各実施例からも明らかなように、本願発明による鳥獣類忌避合成樹脂製袋は、飼い主を失った野良犬、野良猫、或いは鼠等の小動物や、カラス等の鳥類に対応する忌避成分として、該合成樹脂製袋を形成する合成樹脂フィルム中に、ニコチン若しくはリコリンを主成分とした少量の毒素成分を含有させることにより、当該小動物や鳥類に対してピンポイントで即効的な危機意識を促すものであり、これを口に含んだそれらの小動物や鳥類が、瞬間的に生命の危険を感ずる程度の衝撃を受け、その経験的学習能力に加えて本能的作用をも喚起して、再び該合成樹脂製袋に近づくことを避けるという効果が確認された。しかも本発明によるこれらの作用は、嗅覚や味覚、或いは視覚による忌避効果とは異なり、本能的に生命の危機を感ずるものであるところから、その忌避効果には径時的変化や慣れによる退潮も見られず、長期間に渉って持続することが可能である。しかも本発明によって用いられる鳥獣類忌避成分としてのニコチンおよびリコリンは、人体に対しては全く無害な程度に少量であり、これを用いて形成される本願発明の鳥獣類忌避合成樹脂製袋は、従来公知の方法で極めて低コストで市場に提供することが可能であるため、家庭用または業務用の生ごみ廃棄用ごみ袋のみならず、日用品を販売する雑貨店等で使用されている販売用のレジ袋としても幅広く用いられることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥獣害回避用の合成樹脂製袋であって、該袋用の素材となる合成樹脂製フィルムに、鳥獣類の忌避成分として重量比で10〜1000ppmのニコチンを、含有若しくは添加せしめたことを特徴とする鳥獣類忌避合成樹脂製袋。
【請求項2】
前記ニコチンが均一に分布するようにして合成樹脂ペレットを生成し、得られた該合成樹脂ペレットによって合成樹脂フィルムを成形し、該合成樹脂フィルムを原料として形成されることを特徴とする請求項1に記載の鳥獣類忌避合成樹脂製袋。
【請求項3】
合成樹脂フィルム用の塗料中に予め所定量の前記ニコチンを装入し、該ニコチンが均一に分布するようにしてニコチン含有塗料を生成し、該ニコチン含有塗料を用いて全体若しくは部分的に、印刷若しくは塗布することによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の鳥獣類忌避合成樹脂製袋。
【請求項4】
揮発性液状媒体中にニコチンを装入して、含有量が10〜1000ppmのニコチン含有液状物質を調製し、得られた該ニコチン含有液状物質を用いてその全体若しくは部分的に、スプレーすることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の鳥獣類忌避合成樹脂製袋。
【請求項5】
鳥獣害回避用の合成樹脂製袋であって、該袋用の素材となる合成樹脂製フィルムに、鳥獣類の忌避成分として重量比で10〜1000ppmのリコリンを、含有若しくは添加せしめたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鳥獣類忌避合成樹脂製袋。
【請求項6】
鳥獣害回避用の合成樹脂製袋であって、該袋用の素材となる合成樹脂製フィルムに、鳥獣類の忌避成分として重量比で10〜1000ppmのニコチンおよびリコリンの混合成分を、含有若しくは添加せしめたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の鳥獣類忌避合成樹脂製袋。

【公開番号】特開2008−56623(P2008−56623A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237262(P2006−237262)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(597026331)
【Fターム(参考)】