説明

鳴き防止ロール

【課題】耐久性に優れた厚さの薄い鳴き防止ロールを提供する。
【解決手段】カプロラクトン系ジオールを用いたプレポリマーと、2官能ジオールからなる鎖延長剤と、3官能以上の短鎖ポリオールからなる架橋剤とから得られ、前記鎖延長剤と前記架橋剤との総量に対して前記架橋剤が10質量%以上20質量%未満となるように配合され、且つ70℃、22時間、25%の圧縮条件下での圧縮永久ひずみが20%以下で、硬度がAsker Cで60〜70°の発泡ポリウレタンからなり、ロールの厚さが4mm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリウレタンからなる鳴き防止ロールに関し、特に、複写機、ファクシミリ、各種プリンター等の各種OA機器等の各種給紙、搬送を行う給紙搬送用ロール、及びリバースロールなどの紙葉類分離ロールに用いて好適な鳴き防止ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種OA機器の給紙・搬送用のロールは、搬送力が大きく、耐摩耗性に優れることが求められていたが、近年、給紙時の紙等との摩擦による振動により、いわゆる鳴き現象が生じるという点が問題視されている。
【0003】
また、給紙部の重送防止に用いられる分離ロールには、その耐摩耗性、原稿非汚染性の点から、一般的には発泡ポリウレタンが用いられるが、紙さばき後、例えば、給紙ベルトと分離ロールとがつれまわりする際にブブブ、キューという異音(鳴き)が発生する。
【0004】
このため、従来鳴き対策として、種々の検討がなされている。例えば、本出願人は、低硬度化を図りつつ耐久性に優れ、紙粉の影響を受けず安定した摩擦係数を維持することができ、且つ鳴きが発生しない給紙搬送用ロール(特許文献1参照)や、異音発生が防止されるとともに、汚染性がない鳴き防止ロールを提案している(特許文献2及び3参照)。これらのロールの鳴き対策は厚みのあるロールには有効であったが、厚さの薄いロールにおいて、鳴き対策、耐久性、圧縮永久ひずみすべてを満たすものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−165635号公報
【特許文献2】特開2005−059279号公報
【特許文献3】特開2005−154147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、耐久性に優れた厚さの薄い鳴き防止ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、カプロラクトン系ジオールを用いたプレポリマーと、2官能ジオールからなる鎖延長剤と、3官能以上の短鎖ポリオールからなる架橋剤とから得られ、前記鎖延長剤と前記架橋剤との総量に対して前記架橋剤が10質量%以上20質量%未満となるように配合され、且つ70℃、22時間、25%の圧縮条件下での圧縮永久ひずみが20%以下で、硬度がAsker Cで60〜70°の発泡ポリウレタンからなり、ロールの厚さが4mm以下であることを特徴とする鳴き防止ロールにある。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の鳴き防止ロールにおいて、メカニカルフロス成形されたものであることを特徴とする鳴き防止ロールにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、耐久性に優れた厚さの薄い鳴き防止ロールとなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の鳴き防止ロールは、カプロラクトン系ジオールを用いたプレポリマーと、2官能ジオールからなる鎖延長剤と、3官能以上の短鎖ポリオールからなる架橋剤とから得られ、鎖延長剤と架橋剤との総量に対して架橋剤が10質量%以上20質量%未満となるように配合され、且つ70℃、22時間、25%の圧縮条件下での圧縮永久ひずみが20%以下で、硬度がAsker Cで60〜70°の発泡ポリウレタンからなり、ロールの厚さが4mm以下である。
【0011】
このように、カプロラクトン系ジオールを用いたプレポリマーを基材として、鎖延長剤と架橋剤との質量比を規定して配合した発泡ポリウレタンを厚さの薄いロールに用いることにより、耐久性に優れ、鳴きを防止することができる鳴き防止ロールとなる。
【0012】
本発明の鳴き防止ロールは、従来の厚みのあるロールでは鳴きが発生するために鳴き防止ロールに使用することができないとされていた鎖延長剤と架橋剤の配合から得られる発泡ポリウレタンからなるものであるが、厚さの薄いロールには好適なものである。
【0013】
本発明にかかる発泡ポリウレタンは、鎖延長剤と架橋剤の総量に対して、架橋剤が10質量%以上20質量%未満、好ましくは10質量%以上15質量%以下となるように配合されている。つまり、鎖延長剤と架橋剤との質量比が90:10〜80:20(ただし、80:20を除く)、好ましくは90:10〜85:15となるように配合された発泡ポリウレタンである。この範囲に架橋剤を規定することで、ウレタンのハードセグメントが増して強固になるため、厚さが4mm以下のロール形状にすると振動しなくなり、鳴きが発生しなくなる。さらに70℃、22時間、25%の圧縮条件下での圧縮永久ひずみが20%以下となり、硬度はAsker Cで60〜70°となる。この範囲よりも架橋剤を少なくすると、圧縮永久ひずみが20%以上の発泡ポリウレタンとなり、ロールとして使用した際に変形が戻り難くなってしまうため好ましくない。また、この範囲よりも架橋剤を多くすると、厚さが4mm以下のロールでは振動を吸収して鳴きを抑えるという効果がなくなってしまう。
【0014】
なお、ここでいう圧縮永久ひずみは、JIS K6262に準拠し、上述した配合の発泡ポリウレタンからなる外径φ37mm×内径φ17mm×幅12.5mmのサンプルロールを形成し、70℃、22時間、サンプルロールの軸方向上下から25%圧縮して測定したものである。
【0015】
ここで、本発明にかかる発泡ポリウレタンは、ポリε−カプロラクトン系ジオールと、ポリイソシアネートと、鎖延長剤及び架橋剤とを用いてプレポリマー法により製造されるものである。詳述すると、ポリε−カプロラクトン系ジオールと過剰のポリイソシアネート化合物とが反応することで、イソシアネート基が残存したカプロラクトン系プレポリマーができ、このカプロラクトン系プレポリマーの残存したイソシアネート基が、鎖延長剤及び架橋剤と反応することにより、ポリウレタンを製造することができる。
【0016】
カプロラクトン系プレポリマーを製造するためのポリε−カプロラクトン系ポリオールとしては、数平均分子量が1000〜4000のポリオールを用いることができる。また、ポリイソシアネート化合物としては、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)などを挙げることができる。特に、性能およびコスト面で好適なものはMDIである。
【0017】
また、鎖延長剤は、2官能短鎖ジオールであり、例えば、数平均分子量が80〜160の短鎖ジオールである。例えば、プロパンジオール(PD)及びブタンジオール(BD)の少なくとも一方を用いるが、勿論、二種以上混合して用いてもよい。ここで、プロパンジオールとしては1,3−プロパンジオールが、ブタンジオールとしては1,4−ブタンジオールが代表的なものであり、1,3−プロパンジオール及び1,4−ブタンジオールは性能およびコスト面で好適であるが、これに限定されるものではない。
【0018】
一方、架橋剤は3官能以上の短鎖ポリオールであり、例えば、数平均分子量が800以下、好ましくは500以下の3官能ポリオールである。例えば、トリメチロールエタン(TME)及びトリメチロールプロパン(TMP)が挙げられ、少なくとも一方を用いる。
【0019】
本発明の鳴き防止ロールは、上述した原料を所定比率で配合後、発泡成形すればよいが、所定の添加剤を添加してもよい。例えば、発泡剤、整泡剤、老化防止剤、酸化防止剤などを添加してもよい。また、発泡は発泡剤による発泡でもよいが、整泡剤を添加して機械的に発泡させるメカニカルフロスでの発泡でもよい。
【0020】
本発明の鳴き防止ロールは、上述した原料を所定比率で配合することにより、ロールの厚さ4mm以下において鳴きを防止することができ、且つ耐久性、圧縮永久ひずみ性に優れたものとなる。
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0022】
(実施例1)
カプロラクトン系ポリウレタンプレポリマー(RV2600:大日本インキ化学工業株式会社製)100質量部に、整泡剤、老化防止剤を添加し、メカニカルフロスで5分間攪拌した。その後、硬化剤として、鎖延長剤1,4−ブタンジオールと架橋剤トリメチロールプロパン(TMP)との質量比が90:10の混合物を7.3質量部、水0.05質量部とを混合し、メカニカルフロスで1分間攪拌したものを、120℃に加熱した金型に発泡密度0.4g/cm(注型質量/注型金型の容積)となるように注型し、50分後に取り出しロールを得た。得られたロールを研磨し、突っ切りし、外径φ23mm×内径φ17mm×幅24mmの実施例1のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみ(CS)は15%であった。
【0023】
ここで、圧縮永久ひずみは、同様の配合及び方法によって得たφ37mm×φ17mm×幅12.5mmのロール形状物を、JIS K6262に準拠して70℃、22時間、25%圧縮条件下で測定したものである。
【0024】
(実施例2)
発泡密度0.5g/cmとした以外は実施例1と同様にして実施例2のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは15%であった。
【0025】
(実施例3)
発泡密度0.6g/cmとした以外は実施例1と同様にして実施例3のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは16%であった。
【0026】
(実施例4)
外径φ25mm×内径φ17mm×幅24mmとした以外は実施例3と同様にして実施例4のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは16%であった。
【0027】
(実施例5)
鎖延長剤と架橋剤との質量比を85:15とし、外径φ25mm×内径φ17mm×幅24mmとした以外は実施例2と同様にして実施例5のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは15%であった。
【0028】
(比較例1)
鎖延長剤と架橋剤の質量比を60:40にした以外は実施例1と同様にして比較例1のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは3%であった。
【0029】
(比較例2)
鎖延長剤と架橋剤の質量比を60:40にして、ロールを外径φ29mm×内径φ17mm×幅24mmとした以外は、実施例1と同様にして比較例2のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは3%であった。
【0030】
(比較例3)
鎖延長剤と架橋剤の質量比を60:40にして、ロールを外径φ29mm×内径φ17mm×幅24mmとした以外は、実施例2と同様にして比較例3のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは3%であった。
【0031】
(比較例4)
鎖延長剤と架橋剤の質量比を60:40にした以外は実施例3と同様にしてロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは4%であった。
【0032】
(比較例5)
鎖延長剤と架橋剤の質量比を70:30にした以外は実施例2と同様にしてロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは8%であった。
【0033】
(比較例6)
鎖延長剤と架橋剤の質量比を80:20にした以外は実施例2と同様にして比較例6のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは14%であった。
【0034】
(比較例7)
ロールを外径φ29mm×内径φ17mm×幅24mmのロールとした以外は実施例1と同様にして比較例7のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは15%であった。
【0035】
(比較例8)
鎖延長剤と架橋剤の質量比を95:5にした以外は実施例2と同様にして比較例8のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは26%であった。
【0036】
(比較例9)
架橋剤を配合しなかった以外は実施例2と同様にして比較例9のロール発泡体を得た。なお、圧縮永久ひずみは55%であった。
【0037】
(試験例1):鳴き試験
図1に示すように、固定した各実施例および比較例のロール発泡体11に対して、回転自在に設けられたフリーロール12を、紙13(PPC普通用紙)を挟んで荷重200gfで圧接し、紙13を引張った際の鳴き(異音)発生を官能試験にて確認した。なお、紙13の紙送速度は50mm/secで、試験は常温常湿(23℃、50%RH)環境下で行った。結果を表1に示す。
【0038】
(試験例2):耐久試験
上述した各実施例及び比較例のロール発泡体を、当該ロール発泡体に高負荷を与えるために研磨布を用いて耐久試験を行い、試験前後の各実施例及び各比較例のロール発泡体の外径の変化量を測定した。
【0039】
この耐久試験は、図2に示すように、回転自在に設けられたフリーロール22を、ロール発泡体11に対して、固定した研磨布23(研磨布A-400:(株)光陽社製)を挟んで荷重400gfで圧接し、ロール発泡体を回転速度:500rpmで回転させて行った。なお、ロール発泡体の回転回数は発泡密度によって変更し、発泡密度0.4g/cm:30000回転、発泡密度0.5g/cm:50000回転、発泡密度0.6g/cm:80000回転とした。
【0040】
測定結果を表1に示す。外径摩耗量が0.15mm未満は○、外径摩耗量が0.15mm以上0.3mm未満は△、外径摩耗量が0.3mm以上は×とした。
【0041】
なお、外径は、レーザー測定器にてロールの軸方向端部からそれぞれ5mmの箇所と中央部の計3箇所を測定してその平均をとった値とし、外径摩耗量は耐久試験前から耐久試験後の外径を引いた値とした。
【0042】
【表1】

【0043】
(結果のまとめ)
各実施例のロール発泡体は、いずれも鳴き試験において鳴きが発生せず、耐久試験において外径摩耗量が0.15mm未満であり、耐久性の優れた鳴き防止ロールであった。
【0044】
これに対し、架橋剤の配合割合が多い比較例1〜6のロール発泡体は、圧縮永久ひずみはいずれも小さかったが、いずれも耐久性が優れず、鳴きが発生するものもあった。実施例1とはロールの厚さが異なる比較例7では、鳴きが発生した。また、比較例8及び比較例9のように架橋剤の配合割合が少ないロール発泡体は、鳴きが発生することなく、耐久性も良好であるが、圧縮永久ひずみが大きく、ロールとして用いるのには好ましくないものであった。
【0045】
以上のように、架橋剤の配合割合を規定することで、耐久性に優れ、厚さの薄い鳴き防止ロールとなることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】試験例1の鳴き試験機を示す概略図である。
【図2】試験例2の耐久試験機を示す概略図である。
【符号の説明】
【0047】
11 ロール発泡体
12 フリーロール
13 紙
22 フリーロール
23 研磨布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプロラクトン系ジオールを用いたプレポリマーと、2官能ジオールからなる鎖延長剤と、3官能以上の短鎖ポリオールからなる架橋剤とから得られ、前記鎖延長剤と前記架橋剤との総量に対して前記架橋剤が10質量%以上20質量%未満となるように配合され、且つ70℃、22時間、25%の圧縮条件下での圧縮永久ひずみが20%以下で、硬度がAsker Cで60〜70°の発泡ポリウレタンからなり、ロールの厚さが4mm以下であることを特徴とする鳴き防止ロール。
【請求項2】
請求項1に記載の鳴き防止ロールにおいて、メカニカルフロス成形されたものであることを特徴とする鳴き防止ロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−182326(P2007−182326A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325655(P2006−325655)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】