説明

鶏舎の空冷装置

【課題】鶏舎内側からパネル状の冷却パネルを着脱できる空冷装置を提供する。
【解決手段】鶏舎の空冷装置1は、通気性を有し通過する空気と冷却用水とが内部で接触して前記通過空気から気化熱を奪うようになした冷却パネル6と、この冷却パネル6上縁に前記冷却用水を給水する給水パイプ7と、前記冷却パネル6を起立状態で載置するとともに、前記冷却パネル6下縁から排水する冷却用水を受ける樋とからなる。前記空冷装置1は、冷却パネル6が外側に倒れないよう上縁の外側を支持する外側支持部材たる上部カバー10の折曲部11と、冷却パネル6上縁の内側に係脱させて支持状態と非支持状態となすよう構成した内側支持部材たる支持板15とを有し、支持板15の前記支持状態において冷却パネル6の起立状態を維持する一方、同じく非支持状態において前記冷却パネル6を鶏舎2の内側で着脱し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏舎外壁に設けられた外気取り入れ口に取り付け、鶏舎内に取り入れる外気を冷却するための空冷装置に係り、特に、二階以上の鶏舎に設置すると好適な鶏舎の空冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏舎の空冷装置には、鶏舎の越屋根に設けられたものがある(特許文献1)。また、空冷装置は、鶏舎の内側に突出するように鶏舎内壁に取り付けると飼育作業用道具などをもった作業員の通行に支障が出るため、鶏舎外壁に取り付ける必要がある。そして、この鶏舎外壁に取り付けるものは、保守点検作業、清掃作業あるいは交換作用の際に冷却パネルを鶏舎の外側から着脱するように構成してある。
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3021044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の鶏舎の加湿冷却板は、越屋根に配置されているので、保守点検作業、清掃作業の際の取り外し作業を前記越屋根に登って行わなければならないので、手間がかかるという問題がある。また、鶏舎の外側から冷却板を着脱するものは、鶏舎の飼育ブロックが複数階にわたって配置されている場合、二階以上の飼育ブロックに対応する空冷装置の冷却パネルを着脱する際に、足場を設けたり、高所作業車を準備しなければならず、費用と手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記各問題を解決することを課題とし、該課題を解決した鶏舎の空冷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に係る本発明は、通気性を有し通過する空気と冷却用水とが内部で接触して前記通過空気から気化熱を奪うようになした冷却パネルと、この冷却パネルに前記冷却用水を給水する給水パイプと、前記冷却パネルを起立状態で載置可能となし、前記冷却パネルから排水する冷却用水を受ける樋とからなり、鶏舎の外気取り入れ口に位置して設置される空冷装置であって、冷却パネルが外側に倒れないようにその上縁の外側を支持する外側支持部材と、冷却パネル上縁の内側に係脱させて支持状態と非支持状態となすよう構成した内側支持部材とを有し、内側支持部材の前記支持状態において冷却パネルの起立状態を維持する一方、前記非支持状態において、鶏舎内側から前記冷却パネルを着脱し得るように構成したものである。
【0007】
また、請求項2に係る本発明は、請求項1に係る発明の構成を備え、冷却パネル上縁の外側を支持する外側支持部材は、鶏舎外壁面に固定し、冷却パネル上縁をカバーするための上部カバーの先端側を下方に折曲した折曲部により構成し、冷却パネル上縁の内側を支持する内側支持部材は、前記上部カバー下面側に分離可能に取り付けるとともに、前記冷却パネル上縁の内側に係止し得る支持板と、この支持板の係止状態を維持するよう支持板を保持する保持部材とで構成したものである。
【0008】
さらに、請求項3に係る本発明は、請求項2に係る発明の構成を備え、支持板は、上部カバー下面に鶏舎内側方向に回転変位するよう枢支するとともに、前記冷却パネル上縁の内側に係止し得る回転支持板であるというものである。
【0009】
またさらに、請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係る発明の構成を備え、保持部材は、折曲部と支持板を接近方向に締め付ける連繋バーであり、前記支持板は連繋バーから離脱可能であるというものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明は、空冷装置における保守点検作業、清掃作業あるいは交換作業で冷却パネルを着脱する際に、鶏舎の二階以上であっても、作業員は鶏舎内側において作業を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0011】
また、請求項2に係る本発明は、請求項1に係る本発明の効果に加えて、支持板を保持部材で離脱可能に保持するので、冷却パネルの着脱を容易に行えるという効果を奏する。
【0012】
さらに、請求項3に係る本発明は、請求項2に係る本発明の効果に加えて、回転変位し得る回転支持板で冷却パネル上縁を係止するので、冷却パネル内側の支持及び支持解除作業が容易であるという効果を奏する。
【0013】
またさらに、請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に係る本発明の効果に加えて、支持板と連繋バーとを離脱可能に締め付けて連繋するので、冷却パネル内側の支持が確実であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好適な第1の実施形態を添付図面の図1〜図5に基づいて説明する。ここにおいて、図1は空冷装置を組み立てる途中の状態を示す部分斜視図、図2は冷却パネルを取り外す途中の状態を示す空冷装置の縦断面図、図3は冷却パネルを支持する部分の拡大縦断面図、図4は鶏舎の横断面図、図5は同じく正面図である。
【0015】
図1〜図5に示すように、空冷装置1は、鶏舎2の一階及び二階にそれぞれ設けた各飼育ブロック3(一階のみ図示)に対応して設けられ、鶏舎2の一方端における一階及び二階の鶏舎外壁4に設けられた外気取り入れ口5と、鶏舎2の一階側部の鶏舎外壁4に設けられた外気取り入れ口5とにそれぞれ設置される。また、空冷装置1は、前記各外気取り入れ口5を閉塞するように配置される複数の冷却パネル6と、これら冷却パネル6の上縁に冷却用水を給水する給水パイプ7と、前記外気取り入れ口5の下側縁部に沿って配置し、前記冷却パネル6を起立状態で載置し得るように構成するとともに、前記冷却パネル6下縁から出る冷却用水を受水する樋8とから構成する。
【0016】
図4及び図5に示すように、鶏舎2の他方端の鶏舎外壁4には複数の排気ファン9が設けてあって、これら排気ファン9の吸引力で飼育ブロック3内の空気を前記鶏舎2の一方端から外部に排出することにより、前記外気取り入れ口5から空冷装置1を経て冷却外気が飼育ブロック3内に流入するように構成してある。そして、流入した冷却外気は、飼育ブロック3内を前記各排気ファン9に向って流れ、多数の飼育鶏から発生する熱気を冷却するのである。
【0017】
図1〜図3に示すように、冷却パネル6は、前記樋8の上に立設し、通気性を有しその内部において通過する空気と徐々に下降する冷却用水とが接触して前記通過空気から気化熱を奪うように構成してある。
【0018】
図1〜図3に示すように、前記空冷装置1は、冷却パネル6が鶏舎2の内側とは反対側に傾かないように支持する外側支持部材と、冷却パネル6の上縁の内側を支持するとともに、前記支持状態を解除可能に構成した内側支持部材とを備え、この内側支持部材の支持解除により、前記冷却パネル6が前記樋8上に位置する冷却パネル6下端を支点として飼育ブロック3側に傾け(図2参照)、持ち上げて取り出し得るように構成する。前記外側支持部材は、鶏舎外壁4に固定して雨や埃から冷却パネル6上縁を保護するための上部カバー10の先端側を折曲した折曲部11により構成する。また、前記冷却パネル6上縁の内側を支持する内側支持部材は、前記上部カバー10内面から下方に突設した補助板12に分離可能に蝶ネジ13及び固定ボルト14によって取り付けるとともに、その先端が冷却パネル6上縁の内側に係止し得る前記支持板15と、前記折曲部11と前記支持板15にその両端を連繋し、前記支持板15との連繋は蝶ネジ16で分離可能となした連繋バー17とで構成する。前記連繋バー17の内側端部には雄螺旋を設け、この雄螺旋は支持板15に設けた透孔(図示せず)に挿出入し得るようにしてあり、前記挿入状態において前記蝶ネジ16を螺合、緊締して、前記支持板15に連繋バー17の内側端部を分離可能に連繋する。また、前記連繋バー17の外側端部は折曲部11に連繋してある。前記連繋バー17、固定ボルト14は複数設けるもので、また、これらに螺合する蝶ネジ13,16も複数設けられている。なお、前記蝶ネジ16と連繋バー17とにより保持部材を構成する。
【0019】
図1及び図2に示すように、前記樋8は、冷却パネル6の内部を下降してきた冷却用水を受けるためのもので、その内側上部に水切りを兼ねた冷却パネル載置板8aを配置したものであり、前記載置された冷却パネル6の下端縁が内外方向に外れないように構成してある。なお、この樋8で受けた冷却用水は、図示しない排水パイプを経て前記給水パイプ7に還元するように構成されている。
【0020】
図1〜図3に示すように、給水パイプ7は、前記連繋バー17上に載置され、各冷却パネル6上縁にそれぞれ対応する部分に給水孔(図示せず)を設ける。また、この給水パイプ7の斜め上方に位置するように前記上部カバー10下面に、設けた給水受け18は、前記給水パイプ7から給水される水を前記冷却パネル6の上縁に効率的に分散させるためのものである。さらに、前記連繋バー17に設けた一対の突起19は、載置した前記給水パイプ7がずれないようにするためのものである。
【0021】
図1〜図3に示すように、前記上部カバー10は、外気取り入れ口5の上縁の外側に沿って水平方向に伸びるように配置され、また、前記樋8は、前記外気取り入れ口5の下縁の外側に沿って水平方向に伸びるように配置される。そして、前記上部カバー10の折曲部11と前記樋8に上下端を連繋した補強枠20は、上部カバー10が風などで煽られないように補強するためのものである。
【0022】
以上のように構成した空冷装置1において、保守点検作業、清掃作業あるいは交換作業を行う際の冷却パネル6の取り外し作業は、先ず、飼育ブロック3において作業員が内側支持部材である支持板15を、各連繋バー17の内側端部から蝶ネジ16を緩めて外すとともに、補助板12から蝶ネジ13を緩めて外し分離する。この支持板15が分離されると、冷却パネル6上縁の内側に対する支持が解除されるので、冷却パネル6は外気取り入れ口5を経て飼育ブロック3側に斜めに倒すことが可能となり、作業員はこの斜め状態の冷却パネル6を持ち上げ、空冷装置1から外す。また、清掃作業などを終えた冷却パネル6は、飼育ブロック3において作業員が斜めにして持ち上げ、その下端を樋8の冷却パネル載置板8aに載置した後、上端側を起こして起立させ、前記支持板15を蝶ネジ13,16で順次補助板12と連繋バー17に連繋することによって、冷却パネル6は、その上端外側が外側支持部材である上部カバー10の折曲部11に当接し、また、その上端内側が内側支持部材である支持板15に係止してそれぞれ支持される。
【0023】
続いて、第2の実施形態を図6に基づいて説明する。ここにおいて、図6は冷却パネルを支持する部分の拡大縦断面図である。
【0024】
本実施形態の空冷装置50は、前述の第1の実施形態とは、内側支持部材のみが相違し、その他の部材の構成は同一であるので、前記内側支持部材のみを説明し、他の部材については、その説明を省略し、図6における前記その他の部材に第1の実施形態と同一の符号を付すに止める。
【0025】
図6に示すように、空冷装置50の、冷却パネル6上縁の内側を支持する内側支持部材は、上部カバー10の下面に蝶番51で飼育ブロック3側(鶏舎2の内側)に回転変位するように枢支するとともに、その先端が冷却パネル6上縁の内側に係止し得る回転支持板52と、前記上部カバー10の外側支持部材たる折曲部11と前記回転支持板52にその両端を連繋した連繋バー54とで構成する。前記連繋バー54の内側端部には雄螺旋を設け、この雄螺旋は回転支持板52に設けた透孔(図示せず)に挿出入し、前記挿入状態において前記蝶ネジ53を螺合させて、前記回転支持板52に連繋バー54の内側端部を分離可能に連繋する。また、前記連繋バー54の反対側端部は折曲部11に連繋してある。なお、前記連繋バー54の上側に設けた一対の突起55は、前記第1の実施形態の突起19と同様に、連繋バー54上に載置した前記給水パイプ7がずれないようにするためのものである。なお、前記連繋バー54及び蝶ネジ53とにより保持部材を構成する。
【0026】
そして、清掃作業などを行う際の冷却パネル6の取り外し作業は、先ず、飼育ブロック3において作業員が蝶ネジ53を外し、連繋バー54の内側端部から回転支持板52を外し、飼育ブロック3側に回転変位すると、該回転支持板52による冷却パネル6の上縁の内側に対する支持が解除されるので、冷却パネル6を飼育ブロック3側に傾けることが可能となり、作業員はこの傾けた状態の冷却パネル6を持ち上げキャリーなどに積んで所定の場所に運び、清掃作業などを行う。また、前記清掃作業などを終えた冷却パネル6は、飼育ブロック3において作業員が斜めにして持ち、その下端を樋の冷却パネル載置板に載置した後、上端側を起こして起立させ、前記回転支持板52を蝶ネジ53で連繋バー54に連繋する。このようにして冷却パネル6は、その上端の外側が外側支持部材である上部カバー10の折曲部11により、また、その上端の内側が内側支持部材である回転支持板52によりそれぞれ支持される。
【0027】
なお、本発明は、上記各実施形態になんら限定されるものではなく、例えば、外側支持部材は、冷却パネル6が鶏舎2の外側に傾かないように支持するものであれば、上部カバー10の折曲部11とは異なる構成をもつものでもよいほか、内側支持部材は、冷却パネル6の上縁の内側を支持するとともに、前記支持状態を解除可能に構成したものであれば、支持板15や回転支持板52とは異なる構成をもつものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態における、空冷装置を組み立てる途中の状態を示す部分斜視図。
【図2】第1の実施形態における、冷却パネルを取り外す途中の状態を示す空冷装置の縦断面図。
【図3】第1の実施形態における、冷却パネルを支持する部分の拡大縦断面図。
【図4】第1の実施形態における、鶏舎の横断面図。
【図5】第1の実施形態における、鶏舎の正面図。
【図6】第2の実施形態における、冷却パネルを支持する部分の拡大縦断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 空冷装置
2 鶏舎
3 飼育ブロック
4 鶏舎外壁
5 外気取り入れ口
6 冷却パネル
7 給水パイプ
8 樋
8a 冷却パネル載置板
9 排気ファン
10 上部カバー
11 折曲部
12 補助板
13 蝶ネジ
14 固定ボルト
15 支持板
16 蝶ネジ
17 連繋バー
18 給水受け
19 突起
20 補強枠
50 空冷装置
51 蝶番
52 回転支持板
53 蝶ネジ
54 連繋バー
55 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有し通過する空気と冷却用水とが内部で接触して前記通過空気から気化熱を奪うようになした冷却パネルと、この冷却パネルに前記冷却用水を給水する給水パイプと、前記冷却パネルを起立状態で載置可能となし、前記冷却パネルから排水する冷却用水を受ける樋とからなり、鶏舎の外気取り入れ口に位置して設置される空冷装置であって、冷却パネルが外側に倒れないようにその上縁の外側を支持する外側支持部材と、冷却パネル上縁の内側に係脱させて支持状態と非支持状態となすよう構成した内側支持部材とを有し、内側支持部材の前記支持状態において冷却パネルの起立状態を維持する一方、前記非支持状態において、鶏舎内側から前記冷却パネルを着脱し得るように構成したことを特徴とする鶏舎の空冷装置。
【請求項2】
冷却パネル上縁の外側を支持する外側支持部材は、鶏舎外壁面に固定し、冷却パネル上縁をカバーするための上部カバーの先端側を下方に折曲した折曲部により構成し、冷却パネル上縁の内側を支持する内側支持部材は、前記上部カバー下面側に分離可能に取り付けるとともに、前記冷却パネル上縁の内側に係止し得る支持板と、この支持板の係止状態を維持するよう支持板を保持する保持部材とで構成したことを特徴とする請求項1記載の鶏舎の空冷装置。
【請求項3】
支持板は、上部カバー下面に鶏舎内側方向に回転変位するよう枢支するとともに、前記冷却パネル上縁の内側に係止し得る回転支持板であることを特徴とする請求項記載2の鶏舎の空冷装置。
【請求項4】
保持部材は、折曲部と支持板を接近方向に締め付ける連繋バーであり、前記支持板は連繋バーから離脱可能であることを特徴とする請求項2又は3記載の鶏舎の空冷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−136643(P2010−136643A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314253(P2008−314253)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(593066830)東西産業貿易株式会社 (3)
【Fターム(参考)】