説明

鶏飼料用配合剤及びその製造方法並びに鶏飼料用配合剤を含有する鶏用飼料

【課題】 卵等における鉄分の含有量が増加し、破卵率が低下する等の作用、効果が奏される鶏飼料用配合剤及びその製造方法並びにこの配合剤を含有する鶏用飼料を提供する。
【解決手段】 この飼料用配合剤は、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸(クエン酸等)並びにFeO(特定の方法により製造された酸化され難いFeO等)が溶解されてなる水溶液、又はこの水溶液から水を除去している水除去物を含有する。また、その製造方法は、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸(クエン酸等)の粉末と、FeO粉末(特定の方法により製造された酸化され難いFeO粉末等)と、水とを含有する混合物を加熱し、有機酸の粉末及びFeO粉末を水に溶解させて水溶液とする溶解工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鶏飼料用配合剤及びその製造方法並びに鶏飼料用配合剤を含有する鶏用飼料に関する。更に詳しくは、本発明は、卵等における鉄分の含有量が増加し、破卵率が低下する等の作用、効果が奏される鶏飼料用配合剤及びその製造方法並びに鶏飼料用配合剤を含有する鶏用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄はヘモグロビンとして酸素の体内運搬に必須の元素であるが、カルシウムとともに人体にとって最も欠乏し易い元素の1種である。この鉄分は鶏卵の可食部(全卵)100g当たり1.8mgと高濃度に含有されており、特に卵黄には100g当たり4.6mgもの鉄分が含有されている。このように鶏卵は鉄分の供給源として有用な食品の1種であり、より多くの鉄分を含有する鶏卵の開発は消費者にとっても意義のあることである。
【0003】
しかし、一旦生体に取り込まれた鉄分の損失は極く微量であるため、体内には鉄分の吸収を制限するための巧妙な調節機構が備えられている。即ち、腸管粘膜細胞に一定量の鉄分が取り込まれると、それ以上の鉄分が吸収されないよう遮断する機構があるものと考えられている。従って、より多くの鉄分を鶏卵に移行させるため、腸管で吸収され易い形態の鉄分を摂取させる、及び鉄分の吸収が促進されるような他の物質を同時に摂取させる等の方法が検討されている。
【0004】
より多くの鉄分を鶏卵に移行させるため、例えば、2価の鉄塩に還元作用を有する有機酸を添加溶解して得られた有機酸含有2価の鉄塩を配合してなる飼料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1には、この飼料を用いることにより、家畜等の飼育舎内におけるアンモニア発生量が低減し、畜舎からの臭いの問題が大きく改善された等と説明されている。また、無機鉄、還元作用を有する有機酸を含む2価の鉄塩及びカゼインホスホペプチドを、それぞれ所定量含有し、鶏卵の鉄含有量を増加させることができる飼料が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2には、カゼインホスホペプチドの併用により、安価な無機鉄の吸収が促進され、鶏卵の鉄含有量を増加させることができると説明されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−148937号公報
【特許文献2】特開平4−99449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された飼料は、畜産動物の生産性及び健康面で悪い影響を与えるアンモニア発生量の減少を目的としたものであり、破卵率の低減等についてはまったく言及されていない。また、2価の鉄塩としては実施例で用いられている硫酸第1鉄が記載されているのみである。更に、特許文献2に記載された飼料は、鶏卵の鉄の含有量を増加させることを目的とするものであるが、無機鉄としては硫酸第一鉄及び炭酸鉄が例示されているのみである。また、この特許文献2では、無機鉄と、還元作用を有する有機酸を含む2価の鉄塩とを含有する飼料は、卵黄に含有される鉄量が十分ではない比較例とされており、この飼料はカゼインホスホペプチドを必須の成分とするものである。
【0007】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、卵等に含有される鉄分が増加し、破卵率が低下する等の作用、効果が奏される鶏飼料用配合剤及びその製造方法並びに鶏飼料用配合剤を含有する鶏用飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では種々の有機酸を用いることができるが、環境負荷が少なく、且つ鉄に対するキレート作用に優れるクエン酸に着目して検討した。その結果、従来から知られている金属鉄とクエン酸水溶液とを、特に、沸水中で加熱することでクエン酸第一鉄及びクエン酸第二鉄が生成することが分かった。これらのうち、クエン酸第一鉄(Fe2+)は水溶性に乏しく、Fe2+を十分に供給することができず、クエン酸第二鉄(Fe3+)は水溶性は十分であるが、Fe2+イオンの含有量は全Feイオンの1/4程度であり、Fe2+イオン量が十分ではないことが分かった。また、クエン酸鉄アンモニウム等のイオン結合性の強い化合物は、Fe2+イオンの酸化を抑制する作用が十分ではないことが分かった。
【0009】
これに対して、クエン酸粉末とFeO粉末とを、特に、沸水中で加熱し、水を除去してなる固形物及びペースト、並びにこれらを精製してなる水溶液を乾固してなる固形物等は、それぞれ水に溶解させた場合にFe2+イオン濃度が特異的に高くなり、且つこのFe2+イオンは酸化され難いことを見出した。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
1.カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸並びにFeOが溶解されてなる水溶液を含有することを特徴とする鶏飼料用配合剤。
2.上記水溶液にはFe2+イオンとFe3+イオンとが含有され、該Fe2+イオンと該Fe3+イオンとの合計を100質量%とした場合に、該Fe2+イオンが50〜90質量%である上記1.に記載の鶏飼料用配合剤。
3.上記水溶液に含有されるFe2+イオンの濃度を測定し、その後、該水溶液を168時間静置し、再びFe2+イオンの濃度を測定した場合に、静置後の濃度が静置前の濃度の75%以上である上記1.又は2.に記載の鶏飼料用配合剤。
4.上記有機酸として少なくともクエン酸が含有されている上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤。
5.Fe2+イオン1個に対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが2個配位した二量体錯体と、Fe2+イオン1個に対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが3個配位した三量体錯体と、が含有されている上記4.に記載の鶏飼料用配合剤。
6.カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸並びにFeOが溶解されてなる水溶液から水が除去されてなる水除去物を含有することを特徴とする鶏飼料用配合剤。
7.上記固形物が溶解されてなる水溶液にはFe2+イオンとFe3+イオンとが含有され、該Fe2+イオンと該Fe3+イオンとの合計を100質量%とした場合に、該Fe2+イオンが50〜90質量%である上記6.に記載の鶏飼料用配合剤。
8.上記水溶液に含有されるFe2+イオンの濃度を測定し、その後、該水溶液を168時間静置し、再びFe2+イオンの濃度を測定した場合に、静置後の濃度が静置前の濃度の75%以上である上記7.に記載の鶏飼料用配合剤。
9.上記有機酸として少なくともクエン酸が含有されている上記6.乃至8.のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤。
10.上記固形物が溶解されてなる水溶液には、Fe2+イオン1個に対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが2個配位した二量体錯体と、Fe2+イオン1個に対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが3個配位した三量体錯体と、が含有されている上記9.に記載の鶏飼料用配合剤。
11.破卵防止に用いられる上記1.乃至10.のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤。
12.上記1.乃至11.のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤を含有することを特徴とする鶏用飼料。
13.カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸の粉末と、FeO粉末と、水とを含有する混合物を加熱し、該有機酸の粉末及び該FeO粉末を該水に溶解させて水溶液とする溶解工程を備えることを特徴とする鶏飼料用配合剤の製造方法。
14.上記水溶液から上記水を除去する乾燥工程を更に備える上記13.に記載の鶏飼料用配合剤の製造方法。
15.上記有機酸として少なくともクエン酸が含有される上記13.又は14.に記載の鶏飼料用配合剤の製造方法。
16.上記FeO粉末は、鉄分を含有する製鉄ダストを造粒してなる造粒物及び/又は鉄分を含有する製鉄ダストと還元剤とを混合し、造粒してなる造粒物、を真空加熱し、その後、真空急冷してなるFeO粉末である上記12.乃至15.のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
有機酸とFeOとが溶解されてなる水溶液を含有する本発明の鶏飼料用配合剤によれば、卵等における鉄分の含有量が増加し、破卵率の低下等の作用、効果が奏される。
また、Fe2+イオンが所定の含有量である場合は、卵等における鉄分がより増加し、破卵率の低下等の作用、効果が十分に奏される。
更に、Fe2+イオン濃度の維持率が75%以上である場合は、卵等における鉄分の含有量の増加が長期に渡って安定して継続される。
また、有機酸として少なくともクエン酸が含有される場合は、卵等における鉄分が特に増加し易くなる。
更に、二量体錯体と三量体錯体とが含有される場合は、Fe2+イオン濃度が高く、且つより酸化され難く、卵等における鉄分の増加が、長期に渡って安定して継続される。
有機酸とFeOとが溶解されてなる水溶液から水が除去されてなる水除去物を含有する本発明の他の鶏飼料用配合剤によれば、卵等における鉄分の含有量が増加し、破卵率の低下等の作用、効果が奏される。
また、Fe2+イオンが所定の含有量である場合は、卵等における鉄分がより増加し、破卵率の低下等の作用、効果が十分に奏される。
更に、Fe2+イオン濃度の維持率が75%以上である場合は、卵等における鉄分の含有量の増加が長期に渡って安定して継続される。
また、有機酸として少なくともクエン酸が含有される場合は、卵等における鉄分が特に増加し易くなる。
更に、二量体錯体と三量体錯体とが含有される場合は、Fe2+イオン濃度が高く、且つより酸化され難く、卵等における鉄分の増加が、長期に渡って安定して継続される。
また、破卵防止に用いられる場合は、特に有用であり、破卵が十分に防止される。
本発明の鶏用飼料によれば、卵等における鉄分の含有量が増加し、破卵率の低下等の作用、効果が奏される。
本発明の鶏飼料用配合剤の製造方法によれば、本発明の鶏飼料用配合剤を安定して、且つ容易に製造することができる。
更に、水溶液から水を除去する乾燥工程を備える場合は、本発明の他の鶏飼料用配合剤を安定して、且つ容易に製造することができる。
また、有機酸として少なくともクエン酸が含有される場合は、卵等における鉄分が特に増加し易くなる。
更に、FeO粉末が特定の方法により製造されたものである場合は、特に酸化され難いFeO粉末とすることができ、本発明の鶏飼料用配合剤及び本発明の他の鶏飼料用配合剤を安定して、且つ容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]鶏飼料用配合剤
本発明の鶏飼料用配合剤は、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸並びにFeOが溶解されてなる水溶液を含有する。
本発明の他の鶏飼料用配合剤は、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸並びにFeOが溶解されてなる水溶液から水が除去されてなる水除去物を含有する。
この鶏飼料用配合剤では、有機酸とFeOとから錯体が形成され、必須の元素である鉄が鶏に安定して供給される。また、この鶏飼料用配合剤により、卵における鉄分の含有量が増加し、特に破卵率の低下等の作用、効果が奏される。即ち、本発明の鶏飼料用配合剤及び本発明の他の鶏飼料用配合剤は、破卵防止用の鶏飼料用配合剤とすることができる。
【0013】
(1)本発明の鶏飼料用配合剤
上記「有機酸」は、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する。この有機酸のうち、カルボキシル基を有する有機酸としては、クエン酸(無水クエン酸を含む。)、酢酸、酒石酸及びシュウ酸等が挙げられる。ヒドロキシル基を有する有機酸としては、アスコルビン酸等が挙げられる。カルボキシル基とヒドロキシル基とを有する有機酸としては、クエン酸及び酒石酸等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの有機酸のうちでは、安定性に優れるクエン酸、酢酸、酒石酸及びシュウ酸が好ましい。また、有機酸とFeOとを含有する水溶液において、有機酸濃度に対するFe2+イオン濃度を高くすることができる、クエン酸、酢酸及び酒石酸がより好ましい。更に、刺激臭がなく、且つ有機酸とFeOとを含有する水溶液において、有機酸濃度に対するFe2+イオン濃度をより高くすることができるクエン酸が特に好ましい。
【0014】
上記「FeO」は、NaCl型の結晶構造を有し、主として鉄と酸素とからなる物質である。このFeOには、鉄原子の一部が遷移金属原子等で置換された物質、及び酸素原子の一部がハロゲン元素などの他の元素で置換された物質が含まれていてもよい。また、原子空孔を有する物質が含まれていてもよい。
【0015】
上記「水溶液」は、有機酸とFeOとが溶解されてなる。即ち、溶解されていない有機酸及びFeOは含有されていない水溶液である。但し、この水溶液は、溶解していない有機酸及び/又は溶解していないFeOが含有される固液共存状態における上澄み液であってもよい。また、溶解した有機酸及びFeOは、どのような形態で存在していてもよい。例えば、この水溶液には有機酸鉄錯体及び有機酸イオン等が含有されていてもよく、これらのうち、特に有機酸鉄錯体が含有されていることが好ましい。更に、クエン酸が含有される場合は、クエン酸鉄錯体が含有されることが好ましい。このクエン酸鉄錯体は、1個のFe2+イオンに対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが複数配位した多量体錯体であることが好ましく、特に二量体錯体が含有されていることがより好ましく、二量体錯体と三量体錯体とが含有されていることが特に好ましい。
【0016】
この水溶液を調製する際の有機酸及びFeOの各々の溶解量は特に限定されないが、通常、水100ml当たり有機酸、特にクエン酸は、0.05g以上、特に0.5〜500g、更に100〜350gであることが好ましい。一方、FeOは、水100ml当たり0.01g以上、特に0.1〜150g、更に10〜100gであることが好ましい。
【0017】
また、溶媒となる水も特に限定されず、種々の水を用いることができる。例えば、純水及びイオン交換水等の高度に精製された水であってもよく、水道水、工業用水、農業用水及び地下水等の一般に使用される水であってもよい。
【0018】
水溶液の調製方法は特に限定されず、例えば、(1)有機酸粉末とFeO粉末と水とを含有する混合物を加熱する、(2)有機酸粉末の全量を予め水に溶解させて有機酸水溶液とし、これにFeO粉末を配合して加熱する、(3)有機酸粉末の全量を予め水に溶解させて有機酸水溶液とし、これに更に有機酸粉末とFeO粉末とを配合して加熱する、(4)有機酸粉末とFeOと水とを混合し、加熱はしない、(5)上記(1)〜(4)において溶解しなかった有機酸粉末及び/又はFeO粉末がある場合は、これらを濾過等の方法で分離し、除去する、等の調製方法が挙げられる。
【0019】
この鶏飼料用配合剤は、水溶液のみからなるものでもよく、水溶液を含有し、更にその他の成分として、アミノ酸、ミネラル及び酵素等の鶏の飼養に有用な成分を含有していてもよい。これらの他の成分が含有される場合、他の成分は、鶏飼料用配合剤を100質量%とした場合に、0.5〜30質量%、5〜20質量%であることが好ましい。
【0020】
(2)本発明の他の鶏飼料用配合剤
本発明の他の鶏飼料用配合剤は、上記(1)における水溶液から水を除去してなる水除去物を含有する。また、この鶏飼料用配合剤は、水除去物のみからなるものでもよく、上記(1)の場合と同様に、水除去物を含有し、更に上記の成分等のその他の成分を含有していてもよい。
【0021】
有機酸及びFeOについては、上記(1)における記載をそのまま適用することができる。
上記「除去」は、水溶液から水の一部又は全部を除去することであるが、通常、残留する水分量は水の全量のうちの90質量%以下である。水除去物は、水分量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下の固形物であってもよく、水分量が60〜90質量%、好ましくは65〜85質量%のペーストであってもよい。この水除去物は、より水分量が少ない固形物であることが好ましい。
尚、この水分量は赤外線水分測定器を用いて測定することができる。
【0022】
水を除去する方法は特に限定されず、減圧加熱乾燥、常圧加熱乾燥、非加熱減圧乾燥、及び凍結乾燥等の方法が挙げられる。これらの除去方法のうちでは、水を除去する過程におけるFe2+の酸化が防止される減圧乾燥が好ましく、より短時間で乾燥させることができる減圧加熱乾燥が特に好ましい。また、この減圧乾燥の他に、酸素濃度の低い雰囲気における乾燥方法であってもよい。
【0023】
水を除去する際に加熱する場合、水溶液の温度は特に限定されないが、150℃を越えるとFe3+イオン濃度が高くなる傾向にあるため、150℃以下に保持することが好ましい。この加熱時の温度は、140℃以下、特に135℃以下、更に130℃以下であることがより好ましい。この温度の下限も特に限定されず、水を除去する際の圧力下で水が蒸散する温度であればよく、例えば、60℃以上、特に80℃以上、更に100℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。
【0024】
また、水を除去する際に減圧にする場合、その圧力は特に限定されないが、0.1〜50kPaとすることができ、0.1〜20kPaであることが好ましく、3〜15kPaであることがより好ましく、4〜10kPaであることが特に好ましい。
【0025】
(3)上記(1)における鶏飼料用配合剤及び上記(2)における鶏飼料用配合剤に共通する事項
本発明の鶏飼料用配合剤における水溶液、及び本発明の他の鶏飼料用配合剤における水除去物を水に溶解させてなる水溶液には、それぞれFe2+イオンとFe3+イオンとが含有され、Fe2+イオンとFe3+イオンとの合計を100質量%とした場合に、Fe2+イオンが50〜90質量%、特に60〜90質量%、更に70〜90質量%含有される水溶液とすることができる。このようにFe2+を高濃度に含有する水溶液とすることができる。この各々のイオン濃度は後記の実施例における方法により測定することができる。
【0026】
特に、有機酸としてクエン酸を用いたときは、上記の各々の水溶液には、1個のFe2+イオンに対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが2個配位した二量体錯体と、1個のFe2+イオンに対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが3個配位した三量体錯体とが含有される。この場合、それぞれの錯体の含有割合は特に限定されず、各々の水溶液全体に対するそれぞれの錯体の含有量も特に限定されない。
【0027】
また、上記の各々の水溶液では、それぞれの水溶液に含有されるFe2+イオンの濃度を測定し、その後、各々の水溶液を168時間静置し、再びFe2+イオンの濃度を測定した場合に、静置後の濃度が静置前の濃度の75%以上である水溶液とすることができる。即ち、酸化されてFe3+となることが抑制され、長期に渡って安定してFe2+イオンが保持され、供給される。但し、水溶液は実質的に紫外線があたらない暗所において温度25℃で静置されたものとする。この各々のイオン濃度は、後記の実施例における方法により測定することができる。
【0028】
更に、上記の各々の水溶液は、紫外線、特に波長200〜380nmの紫外線を照射することにより、Fe2+イオン濃度を向上させることができる。特に、Fe2+イオン濃度が全Feイオン濃度(mg/リットル)の80%以下、更に70%以下(通常、50%以上)である水溶液に対して、波長253nmの紫外線を7.2×10μw・s/cm照射した場合に、Fe2+イオン濃度を85%以上、特に90%以上、更に95%以上(通常、99.9%以下)に向上させることができる。このイオン濃度は、後記の実施例における方法により測定することができる。
【0029】
[2]鶏用飼料
鶏飼料用配合剤は、とうもろこし及びマイロ等の穀類、こめぬか及びふすま等のそうこう類、大豆油かす及び菜種油かす等の植物性油かす類、魚粉等の動物性飼料並びに炭酸カルシウム、動物性油脂、ベタイン、ぶどう糖、デキストラン発酵副産濃縮液及び無水ケイ酸などの各種の鶏用飼料に配合して鶏に給与することができる。鶏用飼料は1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよいが、通常、2種以上の鶏用飼料が用いられる。例えば、市販の配合飼料には数種類の鶏用飼料が配合されており、鶏飼料用配合剤は、この配合飼料に配合して用いることができる。
尚、鶏飼料用配合剤は、鶏の飼養者が鶏用飼料に配合して用いてもよく、業者が予め鶏用飼料に配合したものを用いてもよい。
【0030】
鶏飼料用配合剤と、鶏用飼料(2種以上の鶏用飼料が用いられる場合は、それらの合計量であるとする。)との質量割合は特に限定されないが、鶏用飼料を100質量部とした場合に、鶏飼料用配合剤は、この鶏飼料用配合剤から水を除去してなる固形物換算(2.5質量%以下の水が含有されていてもよい。この水分量は前記のようにして測定することができる。)で0.05〜1.5質量部、特に0.05〜1.2質量部、更に0.07〜1.0質量部であることが好ましい。このような質量割合であれば、卵等における鉄分の含有量の増加により、破卵率の低下等の作用、効果が十分に奏される。
【0031】
鶏飼料用配合剤の配合方法も特に限定されず、モルタルミキサー及びレーディゲミキサー等を用いて配合することができる。配合時の温度も特に限定されず、室温(15〜35℃)でもよく、所定温度に加温してもよい。加温する場合の温度も特に限定されないが、例えば、50〜120℃、特に55〜70℃とすることができる。
この鶏用飼料には、鶏飼料用配合剤の他に更にアミノ酸、ミネラル及び酵素等が含有されていてもよい。これらの他の成分が含有される場合、他の成分は、鶏用飼料を100質量%とした場合に、20質量%以下、特に10〜0.5質量%、更に5〜1質量%であることが好ましい。
【0032】
[3]鶏飼料用配合剤の製造方法
鶏飼料用配合剤の製造方法は特に限定されず、この鶏飼料用配合剤は種々の方法により製造することができるが、例えば、本発明の方法により製造することができる。
この本発明の鶏飼料用配合剤の製造方法は、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸の粉末と、FeO粉末と、水とを含有する混合物を加熱し、有機酸の粉末及びFeO粉末を水に溶解させて水溶液とする溶解工程を備える。
【0033】
上記「有機酸の粉末」は、前記の有機酸を主成分(通常、純度99%以上)とする粉末であり、その純度及び粉末の形態等は特に限定されない。
上記「FeO粉末」は、FeOを主成分とする粉末である。このFeO粉末におけるFeOの含有量は特に限定されないが、通常、粉末全体に対してFeOが50質量%以上であり、60質量%以上(100質量%であってもよい。)であることが好ましい。このFeO粉末は特に限定されない。例えば、後記の特定のFeO粉末、即ち、鉄分を含有する製鉄ダストを造粒してなる造粒品及び/又は鉄分を含有する製鉄ダストと還元剤との混合物を造粒してなる造粒品、を真空加熱し、その後、真空急冷してなるFeO粉末を用いることができる。また、市販の各種FeO粉末を用いることもできる。これらのうちでは、造粒品を真空加熱し、その後、真空急冷して製造された上記の特定のFeO粉末が好ましい。
上記「水」としては、前記の各種の水を用いることができる。
【0034】
上記「混合物」における有機酸の粉末とFeO粉末と水との配合量は特に限定されない。例えば、クエン酸粉末を用いる場合は、クエン酸粉末(純度100%とする。):FeO粉末(純度100%とする。):水(純度100%とする。)を、60〜90:7〜28:3〜20の質量割合で用いることが好ましく、65〜85:10〜24:5〜17.5の質量割合で用いることがより好ましく、68〜72:10〜22:10〜15の質量割合で用いることが特に好ましい。
【0035】
混合物には、有機酸の粉末、FeO粉末及び水の他に更に各種の成分が含有されていてもよい。他の成分が含有される場合、この他の成分は水に溶解していてもよく、溶解していなくてもよい。この他の成分としては、例えば、メタノール及びエタノール等が挙げられる。これらのアルコールを含有させることで、減圧下に水をより迅速に除去することができる。このアルコールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、この他の成分は、最終製品である鶏飼料用配合剤に含有されていてもよく、含有されていなくてもよい。また、製造工程において反応し、その生成物が鶏飼料用配合剤に含有されていてもよい。
【0036】
上記「溶解工程」における上記「加熱」の条件は特に限定されないが、温度が150℃を越えるとFe3+イオン濃度が高くなる傾向にあるため、150℃以下に保持することが好ましい。この温度は140℃以下、特に135℃以下、更に130℃以下であることが好ましい。一方、温度の下限は特に限定されないが、例えば、40℃以上、特に50℃以上、更に60℃以上であることが好ましい。この加熱により、クエン酸等の有機酸がより多く水に溶解され、これにともなってFeOの溶解量も増加し、Fe2+イオン又はFe2+イオン錯体の濃度が高くなるものと推察される。
【0037】
この製造方法では、溶解工程の後、水に不溶の成分を除去する工程を備えていてもよい。この水に不溶の成分としては、溶解しなかった有機酸の粉末及び溶解しなかったFeO粉末等が挙げられる。除去方法は特に限定されないが、濾過による除去が一般的である。即ち、濾過工程を備えていてもよい。この濾過の条件も特に限定されないが、例えば、濾過フィルターとして、孔径10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下のメンブランフィルターを用いることが好ましい。
【0038】
また、本発明の他の鶏飼料用配合剤における水除去物とする場合、通常、溶解工程の後、水溶液から水を除去する乾燥工程を備える。この乾燥工程における乾燥条件は特に限定されず、自然乾燥であってもよいが、前記のようにして乾燥することが好ましい。即ち、減圧加熱により水を除去することが好ましい。減圧加熱により水分を徐々に除去することで、水溶性であり且つ酸化され難いFe2+錯体等のFe2+イオン成分が濃縮され、多くのFe2+イオン成分を含有する水除去物とすることができる。
【0039】
本発明の他の鶏飼料用配合剤における水除去物とする場合、更に精製工程を備えていてもよい。この精製工程は、水溶性成分を精製する工程である。即ち、水溶液から水を除去してなる水除去物を水と接触させて溶解させ、その後、上記と同様にして水に不溶の成分を除去する抽出工程と、この抽出工程で生成した水溶液から水を除去する乾燥工程と、を備えていてもよい。
上記のようにして製造された鶏飼料用配合剤は、前記のようにして鶏用飼料に配合して用いることができる。
【0040】
本発明の鶏飼料用配合剤の製造方法において用いるFeO粉末としては、前記のように、鉄分を含有する製鉄ダストを造粒してなる造粒物及び/又は鉄分を含有する製鉄ダストと還元剤とを造粒してなる造粒物、を真空加熱し、その後、真空急冷してなるFeO粉末であることが好ましい。
【0041】
以下、この特定のFeO粉末について詳しく説明する。
このFeO粉末には、FeOの他に、通常、CaAl、FeAl、CaFeSi、CaSi及びMgFeのうちの少なくとも1種の複酸化物が含有される。これらの複酸化物は1種のみ含有されていてもよく、2種以上が含有されてもよい。また、複酸化物の含有量は、FeO粉末全体を100質量%とした場合に、0.5〜10質量%であることが好ましい。この範囲の含有量であれば特に酸化され難いFeOとすることができる。
【0042】
このFeO粉末の粒子形状は特に限定されない。また、粒径も特に限定されないが、粒径が5000μm以下の多くの異なる粒径の粒子が混在しているFeO粉末であることが好ましい。更に、FeO粉末には多孔性の粒子が含有されていてもよい。
【0043】
製鉄ダストは鉄分を含有するものである。この鉄分としては、酸化鉄等の鉄化合物及び金属鉄が挙げられる。これらは1種のみ含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。製鉄ダストにおける鉄分の含有量は特に限定されないが、通常、製鉄ダスト全体を100質量%とした場合に、金属鉄換算で30質量%以上であり、35〜90質量%、特に40〜80質量%であることが好ましい。また、製鉄ダストには、鉄分の他に各種の成分が含有されてもよい。この成分としては、Zn、Ni、Cu及びMn等が挙げられる。これらは単体金属でもよく、酸化物等の化合物でもよい。これらの成分は1種のみ含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0044】
製鉄ダストの形状は特に限定されず、粉体、小片又は粉体と小片との混合物等のいずれであってもよいが、通常、粉体である。粉体である場合、その平均粒径は特に限定されないが、3〜10μmであることが好ましい。
【0045】
この製鉄ダストとしては、製鋼工程で発生する電気炉ダスト、高炉ダスト、転炉ダスト、キュポラダスト及び鍛造ショット集塵粉等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。特に、塩素分の一部又は全部を水洗により予め除去した製鉄ダストが好ましい。また、製鉄ダストに含有される塩素分は、0.5質量%以下、特に0.4質量%以下、更に0.3質量%以下であることが好ましい。
【0046】
造粒物は、製鉄ダスト、又は製鉄ダストと還元剤とを含有する。造粒により、真空加熱の際にFe、FeからFeOへの還元、又は金属鉄からFeOへの酸化が促進される。この造粒物を構成する粒子の形状は特に限定されず、球体、楕円体、半球体、立方体、直方体、円柱体及びブリケット等のいずれであってもよい。更に、造粒物は緻密体であってもよく、多孔質体であってもよい。また、その粒径(球形であるときは直径、その他の形状であるときは最大寸法)は、25mm以下、特に15mm以下、更に10mm以下(通常3mm以上)であることが好ましい。
【0047】
還元剤は、2価以上に酸化された鉄化合物を還元する作用を有する成分である。還元剤としては、金属鉄、カーボン及びこれらを含有する混合物等を用いることができる。この還元剤としては、鉄切削屑、鉄研磨屑、鉄粉、銑鉄及び鋼製造等において用いられる還元剤、並びにタイヤ屑、木材廃材等の各種廃材等が好ましい。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
還元剤の性状は特に限定されないが、製鉄ダストとの接触面積を大きくすることができるため、粉末、顆粒及び小片等が好ましく、粉末がより好ましい。更に、粉末等である場合、平均粒径は200μm以下、特に180μm以下であることが好ましい。また、還元剤の含有量も特に限定されないが、製鉄ダストを100質量部とした場合に、100質量部以下、特に90質量部以下、更に80質量部以下(通常、30質量部以上)であることが好ましい。
【0049】
造粒物には、通常、バインダが配合される。このバインダの種類は特に限定されないが、アルミナセメントが好ましい。その配合量は、製鉄ダスト、又は製鉄ダストと還元剤との合計を100質量部とした場合に、3〜20質量部、特に3〜15質量部、更に3〜12質量部であることが好ましい。この範囲の配合量であれば、造粒が容易であり、且つ造粒物の脆化を抑制することもできる。
【0050】
真空加熱によりFeO粉末に含有されるFeOの濃度を高くすることができる。この真空加熱の際の真空度は特に限定されないが、0.1〜13.3kPa、特に2.6〜13.3kPa、更に4.0〜6.7kPaとすることが好ましい。この範囲の真空度であれば、金属鉄の残留及びFeOのFe等への酸化を十分に抑えることができる。
尚、この真空雰囲気における酸素分圧と同等の酸素分圧である不活性ガス雰囲気において、真空加熱の場合と同様に加熱することでFeO粉末を製造することもできる。
【0051】
真空加熱の際の加熱温度(造粒物そのものの測定値)は、600〜1100℃、特に800〜950℃とすることが好ましい。また、造粒物が還元剤を含有する場合は、800℃以上とすることが好ましい。この範囲の温度であれば、FeO含有量が特に高いFeO粉末とすることができ、加熱過程での製鉄ダストの溶融を防止することもできる。更に、加熱時間も特に限定されないが、30分以上(より好ましくは30分以上且つ6時間以内)とすることが好ましい。
尚、製鉄ダストに酸化亜鉛等が含有される場合は、還元されて金属亜鉛等となり、この金属亜鉛等は、600℃以上、且つ1.56kPa程度の真空下で蒸発させて回収することができる。これによりFeOの純度を更に向上させることができる。
【0052】
真空急冷により真空加熱により生成した高温のFeO粉末を酸化させることなく冷却することができる。この真空急冷の際の真空度は特に限定されないが、13.3kPa以下、特に6.7kPa以下(通常、5.3kPa以上)とすることが好ましい。また、降温速度も特に限定されないが、5〜150℃/分とすることができ、5〜50℃/分とすることが好ましい。この真空急冷によりFeO粉末を300℃以下、特に200℃以下、更に150℃以下にまで冷却することが好ましい。
【0053】
FeO含有量のより多いFeO粉末とするためには、金属鉄を含有する造粒物を用いることが好ましい。金属鉄の含有量は、造粒物に含有される鉄分の全量を100質量%とした場合に、5質量%以上、特に5〜85質量%、更に8〜50質量%であることが好ましい。このような造粒物を用いた場合は、例えば、鉄分の全量に対するFeOの含有量が80質量%以上、特に85質量%以上、更に90質量%以上であるFeO粉末とすることができる。
【0054】
この金属鉄を含有する造粒物を製造するための製鉄ダスト及び製鉄ダストと還元剤との組合せとしては(1)電気炉ダストと鉄粉等の金属鉄との混合物、(2)高炉ダストと鉄粉等の金属鉄との混合物、(3)転炉ダストのみ、(4)鍛造ショット集塵屑のみ、及び(5)鍛造ショット集塵屑と鉄粉等の金属鉄との混合物等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[1]FeO粉末の製造
Feが35.8質量%、Znが22.7質量%、Cが5.95質量%、Caが2.92質量%、MnとClが各々2.89質量%、Siが2.16質量%、Pbが1.48質量%及びCrが1.24質量%含有され、平均粒径が10μmである電気炉ダスト(製鉄ダスト)を、還元剤としてアルミナセメントを用いて直径8mm、且つ長さ約20mmの円柱形に造粒した。この造粒物を真空加熱槽に収容し、800℃で30分間、その後、850℃で30分間、次いで、900℃で1時間、それぞれ真空加熱した。その後、加熱された造粒物を真空急冷槽に収容し、降温速度20℃/分で400℃まで真空急冷し、次いで、真空冷却槽の雰囲気を窒素置換により窒素雰囲気とし、その後、降温速度13℃/分で200℃まで更に冷却し、次いで、室温にまで降温させてFeO粉末を製造した。
【0056】
[2]水除去物の製造
クエン酸(純度99%以上)15.4kgと水5.6kgとを耐圧容器により混合し、液温を80℃まで徐々に昇温させた。そして、液温が80℃に到達した時点で上記[1]で製造したFeO粉末を3.3kg投入した。その後、4時間かけて液温を130℃まで昇温させた。そして、液温が130℃に到達した時点で容器の内部を約8kPaまで減圧にし、この減圧状態を100分間保持した。このようにして固形の水除去物17kgを製造した。その後、この固形の水除去物を粉砕機により粉砕して粉末にした。
【0057】
[3]Fe2+イオン濃度の測定
(1)Fe2+イオン濃度
上記[2]で製造した水除去物を、濃度10g/リットル(1.0質量%)となるように、温度20℃のイオン交換水に投入し、約5分間撹拌し、混合して溶解させた。その後、孔径1μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、水溶液を得た。次いで、紫外・可視光分光光度計(株式会社島津製作所製、形式「UV1240」)に水質測定パックを装着し、上記の水溶液に含有されるFe2+イオンと全Feイオン量とを測定した(全Feイオン量からFe2+イオン量を減じたものをFe3+イオン量とする。)。
尚、全Feイオン量及びFe2+イオン濃度はJIS K0102に基づくフェナントロリン吸光光度法により測定した。また、この測定は直射日光の差し込まない室内において行った。
【0058】
上記の測定の結果、Fe2+イオン濃度は389mg/リットル、Fe3+イオン濃度は186mg/リットルであり、Fe2+イオンとFe3+イオンとの合計を100質量%とした場合にFe2+イオンは68質量%であった。即ち、上記の水溶液には質量比でFe2+イオンがFe3+イオンの2.1倍含有されており、Fe2+イオン濃度が高い水溶液であることが分かる。
【0059】
(2)水除去物の濃度とFe2+イオン濃度との相関
上記(1)と同様にして、上記[2]で製造した水除去物を表1に記載の濃度となるように調製した水溶液におけるFe2+イオン濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1によれば、いずれの濃度においても水除去物の質量あたりのFe2+イオン濃度が高いことが分かる。即ち、効率よくFe2+イオンが供給されることが分かる。
【0062】
[4]酸化され難さの評価
(1)室内放置の場合
上記[2]で製造した水除去物を使用し、上記[3]と同様にして、水除去物の濃度が表2に記載の値となるように調製した実験例1−1〜1−4の水溶液を得た。これらの実験例の水溶液について上記[3]と同様にしてFe2+イオン濃度を測定し、その後、そのまま室内に放置し、表2に記載の時間毎に同様にしてFe2+イオン濃度を測定した。結果を表2に併記する。また、図1は、この結果をグラフ化したものである。
【0063】
【表2】

【0064】
表2によれば、水除去物の濃度にかかわりなく、初期の濃度からの変動が小さく抑えられており、酸化され難いことが分かる。例えば、表2及び図1のように、実験例1−1では初期値に対して82.3%以上、実験例1−2では初期値に対して81.9%以上、実験例1−3では初期値に対して80.7%以上、実験例1−4では初期値に対して87.3%以上と、いずれにおいても初期のFe2+濃度に対して80%以上のイオン濃度が長期に渡って保持されている。このように、長期に渡って酸化され難いことが分かる。
【0065】
(2)加速試験の場合
上記[2]で製造した水除去物を使用し、上記[3]と同様にして得た実験例2[水除去物の濃度は10g/リットル(1.0質量%)である。]及び実験例3[水除去物の濃度は5g/リットル(0.5質量%)である。]の各々の水溶液について、加速試験を行った。即ち、エアーポンプを用いて実験例2及び3の各々の水溶液(200ミリリットル)に毎分0.6リットルの空気を送入してバブリングさせ、表3に記載の時間毎に上記[3]と同様にしてFe2+イオン濃度を測定した。結果を表3に併記する。また、図2は、この結果をグラフ化したものである。
【0066】
【表3】

【0067】
表3及び図2によれば、加速試験においても濃度変動が小さく抑えられており、酸化され難いことが分かる。特に、濃度が1.0質量%の実験例2では、初期値に対して240時間(10日間)経過後でも77%のFe2+濃度が保持されており、酸化され難いことが分かる。
【0068】
[5]紫外線照射による評価
上記[2]で製造した水除去物を使用し、上記[3]と同様にして実験例4[水除去物の濃度は6g/リットル(0.6質量%)である。]の水溶液を得た。この実験例4の水溶液の調製直後のFeイオン濃度は、全Feイオン濃度が824mg/リットルであり、そのうちFe2+イオン濃度が534mg/リットルであった。その後、この実験例4の水溶液90リットルに、波長253nmの紫外線を72×10μw・s/cmの照射量で18時間照射した。照射後、Feイオン濃度を測定したところ、照射直後では、全Feイオン濃度が824mg/リットルであり、そのうちFe2+イオン濃度が810mg/リットルであった。その後、水溶液を暗所で21日間保存し、再びFeイオン濃度を測定した。その結果、Fe2+イオン濃度は調製直後と同程度にまで回復していた。
【0069】
この結果から、紫外線照射によっても酸化されず、むしろFe3+イオンがFe2+イオンへと変換される反応が進んでいることが分かる。従って、従来の無機化合物を主成分とするFe2+イオン溶液と異なり、太陽光及び紫外線による酸化劣化の問題がなく、保存安定性に優れていることが分かる。
【0070】
[6]質量分析による評価
上記[2]で製造された水除去物を使用し、上記[3]と同様にして実験例5[水除去物の濃度は10g/リットル(1.0質量%)である。]の水溶液を得た。この実験例5の水溶液の調製直後のFeイオン濃度は、全Feイオン濃度が486mg/リットルであり、そのうちFe2+イオン濃度が330mg/リットルであった。その後、この実験例5の水溶液をメタノールで10倍量に希釈した。そして、この希釈液に含まれる物質についてエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESIMS)により質量分析を行った。測定装置としてはMicromass社製、型式「Q−TOF」を使用し、イオン化法としてエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を用いた。更に、イオン化モードは正イオンモード、キャピラリー電圧は3000V、コーン電圧は20V、脱溶媒温度は120℃の条件で測定した。図3は、この測定結果を示すチャートである。
【0071】
また、比較試験として、クエン酸鉄(III)(和光純薬社製、FeC、全Feイオン濃度584mg/リットル、Fe2+イオン濃度142mg/リットル)の同様な溶液、及び無水クエン酸(和光純薬社製、C)の同様な溶液について、同様に測定した。この測定結果を図3のチャートに併記する。更に、この図3のチャートのうちの質量439のピークについて、Arガスを衝突(衝突エネルギーは120eVである。)させて質量分析を行ったところ、質量55.9にピークを生じた。この結果から質量439にピークがみられる化合物には、Feが含有されることが分かる。図4は、この測定結果を示すチャートである。
【0072】
図3及び図4によれば、無水クエン酸を用いたときのチャートから、実験例5のチャートにみられる質量215[(C+Na)]及び質量407「[2(C)+Na]」のピークは、クエン酸に由来するものであると推察される。また、質量439の再分析の結果から質量439にピークが現れる化合物にはFeが含有されることが分かる。このFeに相当する質量を減じるとクエン酸2個分の質量となり、質量439のピークは、Feイオンに対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが2個配位した二量体錯体によるものであると推察される。同様に、質量631のピークは、Feイオンに対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが3個配位した三量体錯体によるものであると推察され、質量823のピークはFeイオンに対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが4個配位した四量体錯体によるものであると推察される。更に、クエン酸鉄(III)を溶解した水溶液(全Feイオン濃度は584mg/リットル、Fe2+イオンは濃度142mg/リットル)の場合は、質量439及び質量631のピークが小さく、相対的な含有量が少ないことが予測される。
【0073】
以上の結果から、水除去物には、クエン酸鉄(III)水溶液に比べてより多くの二量体錯体及び三量体錯体が特異的に含有され、それにより、多量のFe2+イオンが生成し、且つこのFe2+イオンは酸化され難く、更には紫外線に対して安定であって、むしろFe2+イオンが増加するのではないかと推察される。
【0074】
[7]鶏用飼料の評価
(1)鶏用飼料
市販の配合飼料、及びこの配合飼料と、上記[2]で製造した水除去物(鶏飼料用配合剤、鉄分の含有量は8.9質量%である。)とを、モルタルミキサーにより混合して製造した鶏用飼料について評価した。配合飼料としては、商品名「とり王17」を用いた。この市販の配合飼料の飼料成分は、その表示票によると、粗蛋白質17.0%、粗脂肪3.5%、粗繊維6.0%、粗灰分14.0%、カルシウム2.75%、リン0.55%、ME/kg2800kcalであり、鉄分の含有量は飼料100g当たり17mgである。
【0075】
評価は、水除去物を配合しない市販の配合飼料のみを1区(対照区)、この配合飼料100質量部に対して水除去物を0.1質量部配合した2区、水除去物を0.5質量部配合した3区、及び水除去物を1.0質量部配合した4区の各々について行った(この水除去物の配合量は、水溶液を減圧加熱乾燥により乾燥させ、前記の方法により測定した水の含有量を2.5質量%以下とした固形分換算の値である。)。評価開始前の2週間を調査期間(各々の表では「開始前」と表記した。)とし、その後、2週間を1期として6期(84日間になる。)を飼料給与の試験期間とした。
尚、評価には290日齢の白色レグホーン種雌56羽(銘柄「マリア」)を用いた。
【0076】
(2)評価項目
(A)産卵成績
(a)ヘンディ産卵率
ヘンディ産卵率の評価結果は表4のとおりである。
【0077】
【表4】

【0078】
表4によれば、ヘンディ産卵率は6期の平均値で、3区が94.1%と最高値であり、1区を3.3%上回っている。また、4区は、水除去物の配合によるFeが配合飼料100g当たり89mgであり、市販の配合飼料に含有されている100g当たり17mgのFeとの合計でFe含有量が106mgとなる。一方、日本飼養標準によれば、産卵鶏の鉄要求量は飼料100g当たり5mgとなっている。従って、4区では飼養標準の21.2倍のFeが含有されていることになり、対照区である1区でも飼養標準の3.4倍のFeが含有されていることになる。このように、4区は鉄を大量摂取した場合の影響についても検討するため設定したものであるが、この4区の産卵率は91.3%であり1区を0.5%上回っている。これは、飼養標準の20倍程度の鉄を鶏に摂取させても、産卵には特に悪影響がないことを示唆するものである。
【0079】
(b)産卵日量
1日1羽当たりの産卵日量の評価結果は表5のとおりである。
【0080】
【表5】

【0081】
表5によれば、産卵日量は4区が57.0gで最高値であり、1区を1.4g上回っている。これは4区の平均卵重が6期の平均値で62.4gとなり、1区の61.2gを1.2g上回っていたことによるものである。この結果から、鉄の大量摂取によって、卵重が減少するといった傾向はみられないことが分かる。
【0082】
(B)外部卵質調査
(a)破卵率
破卵率の評価結果は表6のとおりである。
【0083】
【表6】

【0084】
表6によれば、1〜4区の破卵率は6期の平均値で、1区が3.08%で最も高く、次いで2区の1.51%、4区0.40%、3区0.37%の順となり、水除去物の配合量が多い3区及び4区で破卵率が特に大きく低下している。分散分析の結果、区間に5%水準で有意義があった。そこでTukeyの多重検定法によって平均値の有意差を検定したところ、1区と3区及び4区との間に有意差があった。これらの結果は、水除去物が配合された鶏用飼料の給与によって破卵率が低下することを裏付けるものである。
【0085】
(b)卵殻厚
卵殻厚の評価結果は表7のとおりである。
【0086】
【表7】

【0087】
表7によれば、この卵殻厚についても、1区の0.399mmに対して、水除去物が配合された鶏用飼料を給与した2〜4区では、1区を0.005〜0.011mm(平均0.007mm)上回った。
【0088】
(c)卵殻強度
卵殻強度の評価結果は表8のとおりである。
【0089】
【表8】

【0090】
表8によれば、卵殻強度は、1区の3.16kg/cmに対して、2区は3.50kg/cmであり、1区との間に有意差があった。4区でも1区を0.20kg/cm上回った。3区では1区と差がなかった。この3区は評価の開始前において全区のうちで卵殻強度が最低値であり、これが結果に影響しているものと推察される。
【0091】
(C)内部卵質調査
(a)卵白高
卵白高の評価結果は表9のとおりである。
【0092】
【表9】

【0093】
表9によれば、卵白高は、1区が7.69mmで最低値であり、水除去物を含有する配合飼料を給与した2〜4区のすべてが1区を上回った。卵白高は、1区を100とした比率で、2〜4区では101.3〜108.1%となり、水除去物の配合により1.3〜8.1%(平均4.0%)向上していることが分かる。そこで、1区と2〜4区とを比較して分散分析を行ったところ、1区と2〜4区とでは5%水準で有意差があった。これは、水除去物が配合された鶏用飼料の給与は卵白高の改善に有効であることを裏付けるものである。
【0094】
(b)ハウユニット
ハウユニットの評価結果は表10のとおりである。
【0095】
【表10】

【0096】
表10によれば、このハウユニットには、卵白高と同様の傾向がみられ、1区が87.5で最低値であり、水除去物を含有する配合飼料を給与した2〜4区は、1区を0.8〜3.4(平均1.9%)上回った。分散分析の結果、1区と2〜4区との間に5%水準で有意差があった。これは、ハウユニットについても水除去物が配合された鶏用飼料の給与が有効であることを裏付けるものである。
【0097】
(D)卵の鉄含有量
測定は給与開始4週間後(2期、1回目)、8週間後(4期、2回目)、12週間後(6期、3回目)の3回実施し、毎回各区当たり10個ずつを個体別に測定した。結果は表11のとおりである。
【0098】
【表11】

【0099】
表11によれば、1回目は1区が可食部100g当たり1.54mgで最低値であり、4区が1.64mgで最高値であった。1区を100とした比率で4区は106.5となり、卵の鉄含有量は6.5%増加したことになる。
【0100】
2回目は1区が1.43mgであったのに対して、2区は1.49mg、3区は1.68mg、4区は1.73mgであり、水除去物の配合量の多い区ほど鉄の含有量が増加する傾向にあった。1区を100%とした比率では、2区は104.2%、3区は117.5%、4区は121.0%となり、水除去物を含有する鶏用飼料の給与によって、鉄含有量は4.2〜21.0%(平均14.2%)増加したことになる。統計的にも1区と3区及び4区との間には有意差があり、この水除去物が配合された鶏用飼料の給与は卵の鉄含有量の増加に有効であることが裏付けられた。
【0101】
また、1区の市販の配合飼料には100g当たり17mgの鉄が含有され、2区の水除去物が配合された鶏用飼料には100g当たり25.9mgの鉄が含有されており、1区の配合飼料を100%とした比率で、2区は152%となる。同様に、3区は61.5mgで362%、4区は106.0mgで624%となる。そこで、鶏用飼料に含有される鉄量と卵への移行量とを検討してみると、卵における鉄の含有量は、1区を100とした比率で、2区が104.2%、3区が117.5%、4区が121.0%であり、含有される鉄量が1区の6倍以上である4区でも、増加率は約20%であり、卵へ移行する効率は必ずしも十分ではないが、これは生体における鉄の吸収を規制する機構の作用によるものと推察される。更に、3回目も同様の傾向であった。この一連の評価結果から、鉄強化卵として商品化する場合は、市販の配合飼料に水除去物が0.5%以上配合された鶏用飼料とするのが好ましいと考えられる。
【0102】
(E)波動測定による卵の品質評価
測定は水除去物が配合された鶏用飼料の給与を開始してから8週間後に実施した。結果は表12のとおりである。
【0103】
【表12】

【0104】
表12によれば、測定した10項目の平均値で、4区が+6.4で最高値であり、次いで3区の+5.9、2区の+5.5の順となり、対照区である1区は+5.0で最低値であった。即ち、水除去物の配合量が多い区ほど測定値は高くなり、4区において波動測定による品質評価としては、最高の評価となった。分散分析の結果、区間には0.5以下の高水準で有意差があった。そこで、平均値の間の有意差を検定したところ、1区と3区及び4区との間には有意差があった。これは、配合飼料に水除去物を0.5%以上配合した鶏用飼料を給与することにより、波動測定による卵の品質が有意に向上することを裏付けるものである。
【0105】
項目別に人の健康との関連を検討してみると、特に向上がみられない項目もあるが、低下する項目はまったくない。また、特に「貧血」の項目では1区が+5であるのに対して、2〜4区は+7〜+9となり、1区を2〜4上回った。また、4区の場合、1区を100%とした比率で180%となり、「貧血」という項目に対する品質は80%向上したことになる。このように、水除去物が配合された鶏用飼料の給与により生産された卵は貧血の改善に有効であると推察される。
尚、表4〜12におけるアルファベット小文字は、Tukey−KramerのHSD検定で、異なるアルファベット小文字が付されている数値間には有意差があることを意味する。
【0106】
尚、本発明では上記の実施例に限られず、目的、用途等によって本発明の範囲内において種々変更した実施例とすることができる。例えば、市販の配合飼料に鶏飼料用配合剤が配合された鶏用飼料を鶏に給与した場合、飼料に含まれる鉄分は卵の他、鶏の肝臓及び鶏糞等に移行する。特に、この鉄分が移行した鶏糞は、これを用いて有効な鉄分を多く含む肥料とすることができる。4区で6期84日間飼料を給与したときについて、鶏糞への鉄分の移行量を推定してみると以下のようになる。
【0107】
飼料摂取量は、鶏1羽当たりの1日の摂取量を107.3gとすると、6期84日間で計9013.2gとなる。また、増加する鉄分の累計量は、4区の飼料では1区に比べて100g当たり89mgの鉄分が増加するため、9013.2gでは9013.2×89/100=8021.75mgとなる。一方、肝臓への移行による肝臓における鉄分の増加量は、4区の飼料を給与した鶏の肝臓に含有される鉄分から、1区(対照区)の飼料を給与した鶏の肝臓に含有される鉄分を減じて得られた100g当たりの値である2.10mgを、鶏の肝臓の平均重量である70g当たりに換算すると1.47mgとなる。また、卵への移行による卵における鉄分の増加量は、4区の飼料を給与した鶏の卵に含有される鉄分から、1区(対照区)の飼料を給与した鶏の卵に含有される鉄分を減じて得られた、卵の可食部100g当たりの値である0.360mgを、卵1個の平均可食部重量である57g当たりに換算すると0.205mgになり、1日に卵を1個生むとすると、6期84日間で全鉄分増加量は0.205×84=17.22mgになる。
【0108】
糞への鉄分の移行量、即ち、増加する鉄分の累計量から肝臓への移行量及び卵への移行量を減じた値は8021.75−(1.47+17.22)=8003.06mgとなり、増加する鉄分の全量のうちの99.77%が糞に含有されて排出されることになる。
このように多くの鉄分が含有される鶏糞となり、この鶏糞は鉄分を含有する肥料として有用であることが推察される。
【0109】
更に、この鶏飼料用配合剤は、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を備える有機酸粉末と、FeO粉末とを含有するものとすることもできる。有機酸粉末としては前記(1)における有機酸の粉末を用いることができ、FeO粉末としては前記(1)におけるFeOの粉末を用いることができる。これらの有機酸及びFeOについては前記(1)の記載をそのまま適用することができる。この鶏飼料用配合剤には実質的に水は含有されておらず(前記の方法により測定した場合、10質量%以下、特に5質量%以下の水が含有されていてもよい。)、固形物であり、通常、粉末である。
【0110】
この固形物も鶏用飼料に配合し、これを鶏に給与することができる。鶏用飼料としては、前記(1)の場合と同様の鶏用飼料を特に限定されることなく用いることができる。固形物と鶏用飼料との質量割合も特に限定されないが、鶏用飼料を100質量%とした場合に、固形物は0.05〜1.5質量%、特に0.05〜1.2質量%、更に0.07〜1.0質量%であることが好ましい。このような質量割合であれば、卵等における鉄分の含有量が十分に増加し、破卵率の低下等の作用、効果が奏される。
固形物の配合方法も特に限定されず、前記[2]と同様にして配合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】水除去物を溶解した水溶液を静置した時間とFe2+イオン濃度との相関を表すグラフである。
【図2】水除去物を溶解した水溶液に対して酸化のための加速試験をした際の経過時間とFe2+イオン濃度との相関を表すグラフである。
【図3】質量分析によるチャートであり、このうち上段が水除去物を溶解した水溶液であり、中段がクエン酸鉄(3価)であり、下段が無水クエン酸である。
【図4】図3の上段の水除去物の水溶液のチャートにおける質量439のピークについて、更にArガスを衝突させ、その後、測定したチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸並びにFeOが溶解されてなる水溶液を含有することを特徴とする鶏飼料用配合剤。
【請求項2】
上記水溶液にはFe2+イオンとFe3+イオンとが含有され、該Fe2+イオンと該Fe3+イオンとの合計を100質量%とした場合に、該Fe2+イオンが50〜90質量%である請求項1に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項3】
上記水溶液に含有されるFe2+イオンの濃度を測定し、その後、該水溶液を168時間静置し、再びFe2+イオンの濃度を測定した場合に、静置後の濃度が静置前の濃度の75%以上である請求項1又は2に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項4】
上記有機酸として少なくともクエン酸が含有されている請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項5】
Fe2+イオン1個に対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが2個配位した二量体錯体と、Fe2+イオン1個に対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが3個配位した三量体錯体と、が含有されている請求項4に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項6】
カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸並びにFeOが溶解されてなる水溶液から水が除去されてなる水除去物を含有することを特徴とする鶏飼料用配合剤。
【請求項7】
上記固形物が溶解されてなる水溶液にはFe2+イオンとFe3+イオンとが含有され、該Fe2+イオンと該Fe3+イオンとの合計を100質量%とした場合に、該Fe2+イオンが50〜90質量%である請求項6に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項8】
上記水溶液に含有されるFe2+イオンの濃度を測定し、その後、該水溶液を168時間静置し、再びFe2+イオンの濃度を測定した場合に、静置後の濃度が静置前の濃度の75%以上である請求項7に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項9】
上記有機酸として少なくともクエン酸が含有されている請求項6乃至8のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項10】
上記固形物が溶解されてなる水溶液には、Fe2+イオン1個に対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが2個配位した二量体錯体と、Fe2+イオン1個に対してクエン酸及び/又はクエン酸イオンが3個配位した三量体錯体と、が含有されている請求項9に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項11】
破卵防止に用いられる請求項1乃至10のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤を含有することを特徴とする鶏用飼料。
【請求項13】
カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機酸の粉末と、FeO粉末と、水とを含有する混合物を加熱し、該有機酸の粉末及び該FeO粉末を該水に溶解させて水溶液とする溶解工程を備えることを特徴とする鶏飼料用配合剤の製造方法。
【請求項14】
上記水溶液から上記水を除去する乾燥工程を更に備える請求項13に記載の鶏飼料用配合剤の製造方法。
【請求項15】
上記有機酸として少なくともクエン酸が含有される請求項13又は14に記載の鶏飼料用配合剤の製造方法。
【請求項16】
上記FeO粉末は、鉄分を含有する製鉄ダストを造粒してなる造粒物及び/又は鉄分を含有する製鉄ダストと還元剤とを混合し、造粒してなる造粒物、を真空加熱し、その後、真空急冷してなるFeO粉末である請求項13乃至15のうちのいずれか1項に記載の鶏飼料用配合剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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