説明

麺玉を嵩高形状に乾燥させる方法及び装置

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、麺の積層密度を嵩高とし、麺線間の空隙率を高め、湯もどしと食感の良好な即席麺に乾燥させる麺玉を嵩高形状に乾燥させる方法及び装置に関する。
(従来技術)
一般に、乾燥即席麺(ソバ,ウドン,スパゲッティ,マカロニおよびその他麺類)は、つぎのようにして製造されている。すなわち、まず小麦粉を主体とする原料粉末に水を添加混合し、これを成形機に掛けて圧延することにより生麺帯化し、ついで切刃で細線状に切断して生麺線とする。続いて、得られた生麺線を蒸煮室に入れ蒸荷してα化(α化度90%)し、ついで熱風で予備乾燥して、蒸荷麺線が後工程において麺玉化しうるに足るだけの柔軟性を残すような水分状態(3035wt%)にし、これをカップに入れて麺玉化(玉状に賦形)し、さらに熱風で本乾燥して水分を13wt%(以下「%」と略す)程度まで下げるという一連の工程により製造されている。
そして、従来、蒸煮後のカップに収容された麺玉は、乾燥機内ではそのままの収容状態で乾燥されていた。
(発明が解決しようとする問題点)
しかし、前述のように蒸煮後の麺は、麺玉化しうるに足る水分を含んでいるため、麺玉が重く、カップ搬送中に生じる上下振動を受け、自重によりカップに収容された麺の集積密度が高くなり、背の低い密な麺玉に乾燥固形される。
このため、麺線間の密度が高いから乾燥機内で熱風が通りにくく、麺玉の中側が乾燥しにくい為、麺玉の表面と内部との水分率が不均一となり、内側の麺に対しても所定の水分率まで乾燥させるのに長時間を要し、長大の乾燥機が必要となると共に、その乾燥効率を著しく悪くしていた。
又、この様な積層密度の高い乾燥麺は、一部麺線が決着しているため、喫食時に湯もどしが悪く食感も良くない。
更に、乾燥した麺玉を包装容器に収納するため、乾燥機出口でカップを反転させて、麺玉を取り出さなければならないが、麺玉の積層密度が高いと、該麺玉がカップ内にしっかりと収容された状態のため、カップを反転しても麺玉が容易に落ちないという問題点があった。
本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、麺玉が乾燥機内で乾燥固形する前に、カップ内に収容した麺玉の下部から圧縮空気を吹き上げ、麺玉形状を嵩高状態にして乾燥賦形することにより、湯もどし,食感を良好にする麺玉を嵩高形状に乾燥する方法及び装置を提供することを目的とする。
(問題点を解決する為の手段)
上記の目的を達成する為に、本発明の麺玉を嵩高形状に乾燥させる方法にあっては、麺玉化した蒸煮後の即席麺を多数の通気孔を有するカップに収容し、該麺玉を熱風乾燥させる乾燥工程に於て、カップ内の即席麺が所定の水分率になった所でカップ底面から上方に向けて空気を噴射し、カップ内の麺玉を嵩高形状に形成させることを特徴とする麺玉を嵩高形状に乾燥させる方法によって達成される。又、上記装置は乾燥室内を循環する多数の通気孔を有するカップに収容され、麺玉化した蒸煮後の即席麺を熱風乾燥する乾燥工程に於て、蒸煮後の即席麺が所定の水分率になる位置にカップ底面から上方に向けて空気を噴射するノズルを設けたことを特徴とする麺玉を嵩高形状に乾燥させる乾燥装置によって達成される。
又、ノズルから噴出する空気の温度は、該ノズル位置の乾燥温度と同温又は、それより高い温度が好ましい。
又、設置するノズルの個数は、乾燥中の即席麺が所定の水分率になるまでノズルが搬送方向に沿って一定間隔毎に複数個設けられているとより好ましい。
(作用)
上記の様に構成された乾燥装置に、蒸煮後の多くの水分を含んだ麺玉を乾燥機内を移送するカップに収容して乾燥させていくと、麺玉は移送中の振動を受けて背が低くなり、その積層形状が密度高くなる。カップ内の麺玉をこの状態で乾燥し続けると集積密度の高い麺玉形状に形成されていくが、本発明は、麺玉が所定の水分率になり、その形状が固形化する前にカップ内に積層した麺線に対し、その底部から圧縮空気を吹き上げるから、麺線が浮上され、麺線間の空隙が増え、麺玉を嵩高形状にさせながらその形状で乾燥固形されていく。
そして、所定の位置で麺玉に噴射する圧縮空気の温度は、乾燥温度に等しいか、又はそれより高くすることにより、麺線間の細部にわたって温風が廻るから乾燥を促進させ、嵩高形状で賦形させることが出来る。
(実施例)
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
第1図は、本発明に係る乾燥装置の平面図を示すもので、(1)は麺の蒸煮工程の後に接続される乾燥機を示し、多量の水分を含有した麺玉を、10〜12%の水分率になるまで乾燥させる。
(2)は本発明の要部である温風噴射装置で、麺が所定の水分率になる所に設置される。この水分率は、麺線の直径により多少異なるが、水分率20〜55%の範囲であれば麺線が硬化していく過程であるため、空気噴射による麺玉(4)の嵩上げ作用がきく。好ましくは、水分率40〜50%が良い。
逆に、水分率55%以上の含水量の高い所で圧縮空気を噴射しても麺玉(4)は自重で元の状態に戻るだけでなく、十分にさばけない。
又、水分率20%以下では麺が半硬化状態となるため、圧縮空気を噴射しても麺玉(4)は全体が持ち上げるだけで、麺線間の空隙を増やすことが出来ない。
この温風噴射装置(2)は、乾燥機(1)内のカップ搬送方向を横切る方向で、該カップ搬送コンベア(図示せず)の下方に近接して設けられる。
そして、温風噴射装置(2)から圧縮温風を吹き出すノズル(10)は、搬送されるカップ(3)の中心位置に対応し、カップ(3)の個数分取り付けられる。
このノズル(10)は、麺線間に隙間を作り理想的な形状に仕上げると同時に、喫食時の麺復元ムラをなくすものであるから、多くの麺線に対し空気が通過する放射状に噴射するノズル吐出形状が好ましい。又、1個のカップに対して、1個のノズルではなく、多くのノズルを配置しても良い。
そして、このノズル(10)は乾燥機(1)内を横設した出力管(6)にそれぞれ固設される。この出力管(6)は、温風圧縮空気を供給するため、コンプレッサ(7)の吐出側に接続されると共に、該コンプレッサ(7)の吸気口には乾燥機(1)内の温かい空気を得るため、図示のように吸気管(5)を乾燥機(1)内に配置して得ている。
次に、その作動について第2図を基に説明する。蒸煮処理を経た多くの水分を含んだ麺玉(4)は、カップ(3)に収容された状態で乾燥機(1)内へ搬送され、最終的には水分率10〜20%になるまで乾燥させられる。
この乾燥過程で、乾燥機(1)入口近傍のカップ(3)内の麺玉(4)は、多くの水分を含んでいるため、カップ(3)内の麺玉(4)は自重で密な状態になっているが、乾燥機(1)内を搬送させるに従って麺の水分が蒸発していき、次第にその形状が固形化していく。
この固形化する前に多数の通気孔を有するカップ(3)内の麺玉(4)に対し下方から温風圧縮空気を放射状に噴射することにより、カップ(3)内の麺が浮き上り麺線間に隙間を生じさせる。
そして、カップ(3)が温風噴射装置(2)を通過し圧縮空気の噴射が切れても麺線間に隙間が生じた状態で麺が半固形化しているため、半固形化したお互いの麺線が支えあって、その状態をほぼ維持したままの状態で、更に乾燥、固形化されていくため、麺線間の空隙率を高めた嵩高形状の麺玉形状に乾燥させることが出来る。
これにより、湯もどしした時の麺のぼぐれが良く、食感も良好となる。
次に、従来方法と本発明の効果について説明する。
本発明の実施条件は乾燥開始後2分後の位置に温風噴射装置を設置し、エアー圧力を4.2kgf/cm2とした(その時の麺の水分率=47.6%)。
そして、乾燥機出口の麺玉の高さを測定した結果、下表の結果を得た。




その結果、本発明によれば従来装置と比較し、麺玉高さを7.5mmも嵩上げすることが出来、湯もどし、食感とも優れた結果を得た。
特に、今回実施の即席麺は大きな直径を有する製品であるため、一食分の容量に換算すると製品の高さは一般品より低い為、7.5mmの嵩上げ結果は麺線間に十分な隙間を作ることが出来た。
(発明の効果)
以上のように本発明は、乾燥中の麺が乾燥保形する直前の所定の水分率なった所で、カップに収容された麺玉に対し、その底面から上方に向けて圧縮空気を噴射したから、カップ内の積層麺が浮き上がり、麺線間の空隙率を高めた形状で乾燥賦形させることが出来る。
このため、麺線間の密着がなくなり、隙間が生じるから湯が通り易くなり、麺を均一に復元させることが出来、食感も良好となる。これにより、品質の一定な即席麺を製造することができる。
又、麺が嵩高形状で乾燥賦形されるため、麺とカップ内壁との密着性が疎となり、カップ内の麺玉を反転取り出しする時の麺鷹の剥離性が良くなる。
このため、従来装置のように、カップ反転工程でカップ内の麺玉が残存しているというトラブルが皆無となった。
又、噴射空気の温度をノズル付近の温度と等しいか、又はそれ以上の高い温度にしておけば、噴射空気が麺玉の内部にまでゆきわたるため、麺玉を嵩高形状にさせながらその乾燥を早め、その形状で麺玉を固形化させることが出来る。
更に、乾燥中の即席麺が所定の水分率になるまでノズルを搬送方向に沿って一定間隔毎に複数個設けることにより、麺玉の嵩高形状をより確実に行なわせることが出来る。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の一実施例を示すもので、第1図は乾燥機の平面図、第2図は乾燥過程の動作説明図を示す。
(1)……乾燥機、(2)……温風噴射装置、
(3)……カップ、(4)……麺玉、
(10)……ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】麺玉化した蒸煮後の即席麺を多数の通気孔を有するカップに収容し、該麺玉を熱風乾燥させる乾燥工程に於て、カップ内の即席麺が所定の水分率になった所で、カップ底面から上方に向けて空気を噴射し、カップ内の麺玉を嵩高形状に形成させることを特徴とする麺玉を嵩高形状に乾燥させる方法。
【請求項2】乾燥室内を循環する多数の通気孔を有するカップに収容され、麺玉化した蒸煮後の即席麺を熱風乾燥する乾燥工程に於て、蒸煮後の即席麺が所定の水分率になる位置にカップ底面から上方に向けて空気を噴射するノズルを設けたことを特徴とする麺玉を嵩高形状に乾燥させる乾燥装置。
【請求項3】ノズルから噴出する空気の温度が、該ノズル位置の乾燥温度と同温である請求項2記載の麺玉を嵩高形状に乾燥させる乾燥装置。
【請求項4】乾燥中の即席麺が所定の水分率になるまでノズルが搬送方向に沿って一定間隔毎に複数個設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の麺玉を嵩高形状に乾燥させる乾燥装置。

【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2666224号
【登録日】平成9年(1997)6月27日
【発行日】平成9年(1997)10月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−48963
【出願日】平成2年(1990)2月27日
【公開番号】特開平3−251148
【公開日】平成3年(1991)11月8日
【出願人】(999999999)鐘紡株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭56−5062(JP,A)
【文献】特開 昭58−23757(JP,A)
【文献】特開 昭60−196160(JP,A)
【文献】特開 昭60−227647(JP,A)