説明

麺類の型詰方法

【目的】 麺線が十分にほぐれ、かつその分布が左右・上下方向に全体に均一となり、次工程の油揚げ処理の際に、油揚げ処理が麺全体にわたり均一に行われ、麺塊の中央部分から外側部分にいたるまで麺線が偏在することなく、得られる油揚げ麺塊の麺質及び形態が良質な即席麺類の製造方法における麺線を型詰めする方法を提供する。
【構成】 所定の長さに切断された麺線をフライリテーナ2内に投入し、該リテーナ2内に収容された麺線群Aを押圧部材3で、下方に押圧することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、即席麺類の製造方法に関し、特に、フライ処理工程の前工程において、フライ用容器(以下、「フライリテーナ」と言う)に所定長さの麺線を型詰めする方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来より即席麺類は、小麦粉、水及びカンスイなどの原料を混練して、麺生地を製造し、該麺生地を圧延した後に、切刃を用いて麺線とする。そして、この麺線を蒸煮した後、所定の長さにカットした麺線を、フライリテーナに型詰めし、これを加熱したフライ油を収容した油揚げ処理槽(フライ処理槽)内に浸漬し、その後、適宜冷却処理することによって製造されている。
【0003】この場合、所定の長さにカットした麺線をフライリテーナに型詰する場合には、麺線が十分にほぐれ、かつその分布が左右・上下方向に全体に均一となっていることが、次工程の油揚げ処理の際に、油揚げ処理が麺全体にわたり均一に行われ、得られる油揚げ麺塊が良質のものとなるために重要である。
【0004】すなわち、麺線をフライリテーナに型詰する場合に、麺線のほぐれが不十分で、及びその分布が不均一であれば、油揚げ処理の際に、該油揚げ処理が不均一となり、麺塊の中央部分で油揚げが不十分となり、いわゆる半生の状態となる一方、外側部分で油揚げが過剰となる。さらには、麺線が偏在することともなり、製品の形態が悪くなる上、喫食の際に熱湯を注加しても、麺線の緻密な中央部分ではその復元状態が悪くなり、喫食に耐え得ないものとなるなどの問題があった。
【0005】かかる問題点を解消するために、従来より、特開昭56−5062号に開示されるように、所定の長さに切断した麺線をシュータを通して落下させ、落下途中でこれに加圧気体を吹きつけて、L字型シュータの水平方向に吹き飛ばし、麺線が対向側壁に突き当たったところでシュータの垂直方向に落下させてこれを油熱処理容器に充填する方法、特開昭62−294053号に開示されるように、容器内に定量の麺線を投入し、該容器の上部開口を開閉可能な蓋体で閉成して、該蓋体に取付られた麺線ほぐし用ノズルを前記麺線に差し込み、差し込まれたノズルから放射方向にエアーを噴射する方法などの、エアーを吹き付けて麺線を流動させ均一にする方法がある。また、従来より、ほぐし棒を用いて、該ほぐし棒を前後左右に揺動させて麺線を容器内に均一に型詰する方法などがあった。
【0006】しかしながら、このようなエアーを吹き付ける方法、及びほぐし棒の揺動により麺線を流動させる方法では、麺線がフライリテーナの外へ飛散することが多く、その結果、機械化された自動化装置の作動が阻害されるおそれがあり、さらには、麺塊の重量が均一とならず製品としては耐え得ないものとなるおそれがあった。
【0007】また、ほぐし棒を用いて揺動させる場合には、麺線が絡みついたり傷つけられやく、又フライ処理において均一にフライできない場合があった。さらには、このような従来の方法では、エアーを吹き付けるため又はほぐし棒を揺動させるために、その装置の構造が複雑で、かつ大規模となるなどの問題点があった。
【0008】本発明は、上述した従来技術ならびにその課題に鑑みて、麺線の分布が左右・上下方向に全体に均一となり、その結果、次工程の油揚げ処理の際に、油揚げ処理が麺全体にわたり均一に行われ、麺塊の中央部分から外側部分にいたるまで麺線が偏在することなく、得られる油揚げ麺塊の麺質及び形態が良質で、かつ、喫食の際に熱湯を注加しても、容易に復元し喫食が可能な、即席麺類の製造方法における麺線を型詰めする方法を提供することを目的とする。 また、本発明は、麺線を型詰する際にも、麺線がフライリテーナの外へ飛散することがなく、その結果、機械化された自動化装置の作動が阻害されず、型詰された麺塊の重量が均一となり、さらには、型詰の際にも、麺線が摩砕・損傷することのない即席麺類の製造方法における麺線を型詰めする方法を提供することを目的とする。
【0009】さらに、本発明は、その装置の構造が簡単で、かつ大規模とならない即席麺類の製造方法における麺線を型詰めする方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の麺類の型詰方法は、上述した目的を達成するために発明なされたものであって、所定の長さに切断された麺線をフライリテーナ内に投入し、該リテーナ内に収容された麺線群を下方に押圧することを特徴とする。
【0011】また、本発明の麺類の型詰方法は、前記押圧に際し、押圧部材をフライリテーナ内に下降することによって、該押圧部材を介して麺線群を下方に押圧することを特徴とする。
【0012】さらに、本発明の麺類の型詰方法は、前記フライリテーナの内寸より、前記押圧部材の外寸が小さいことを特徴とする。
【0013】
【実施例】以下、本発明の麺類の型詰方法について、添付図面に基づいてより詳細に説明する。
【0014】本発明では、先ず、常法に従って、小麦粉、水及びカンスイなどの原料を混練して、麺生地を製造し、該麺生地を圧延した後に、切り出しロールを用いて麺線とする。そして、この麺線を蒸煮した後、所定の長さにカットし、所定の量に計量された麺線を、図1(a)に示したように、カット投入機のホッパー1より、フライリテーナ2内に落下・投入する(図1(b)参照)。
【0015】次に、このフライリテーナ2内に投入された麺線群Aは、図3(a)に示したような円柱状の押圧部材3により、垂直方向下方に押圧して均一にフライリテーナ2内に型詰される(図1(c)参照)。
【0016】その後、図1(d)に示したように、フライリテーナ2の上部開口部を蓋4により閉蓋し、これを予め加熱されたフライ油が収容された油揚げ処理槽(図示せず)内に浸漬することによって、フライリテーナ2の底部に形成された多数の透孔(図示せず)を介して揚油が浸入して、リテーナ2内に収容された麺線群Aが油揚げ処理される。
【0017】上述したように、フライリテーナ2内に収容された麺線群Aを、押圧部材3により、垂直方向下方に押圧することによって、油揚げ処理の際に半生状態となり易いリテーナ中央部の麺線が押圧され、その結果、麺線が下方向及び左右方向に広がり全体に均一な分布状態となる。また、強制的に麺線群Aを押圧することにより、図1(d)に示したように、フライリテーナ2内で収容された麺線群Aの上部と蓋4との間に空間2aが生じて、油揚げ処理の際に、瞬間的に麺線の広がる部分が多くなる。
【0018】従って、このように押圧され、フライリテーナ2内に収容された麺線群Aは、麺線の分布が左右・上下方向に全体に均一となり、その結果、次工程の油揚げ処理の際に、油揚げ処理が麺全体にわたり均一に行われ、麺塊の中央部分から外側部分にいたるまで麺線が偏在することなく、麺質及び形態が良質な油揚げ麺塊が得られる。
【0019】なお、この際、図4に示したように、前記フライリテーナ2の内寸法と押圧部材3の外寸法の間に差を設けて間隙Cを形成しておいた方が、フライリテーナ2内で麺線が下・左右方向に均一に流動するので好ましい。
【0020】また、上記押圧部材3を垂直方向に上下動させる機構としては、従来周知の機構、例えばピストン・シリンダー機構などを用いればよく、特に限定されるべきものではない。
【0021】一方、図2に示したのは、本発明の麺類の型詰方法の第2の実施例であって、基本的には上述した第1実施例と同様な方法であり、相違する点は、押圧部材3の形状を押圧部材3の先端部の周縁部3aを球面状とした(すなわち、Rを形成)点が相違する。これにより、フライリテーナ2内に収容された麺線群Aを押圧した際に、緻密になった中央部の麺線が、球面状の周縁部3aに沿って左右に押し出され、さらにより均一な型詰をすることが可能となる。
【0022】実施例1フライリテーナ内に、常法により製造した麺線(#24角(1.25mmピッチ、15cm)を投入し、(1)φ45.0mm×150.0mmの円柱状の圧縮棒を用いて、(2)φ45mmで先端周縁部にR18mmを形成した圧縮棒を用いて、それぞれフライ処理を実施した(なお、これらの場合、リテーナの上径部と圧縮棒との間隙は9.25mmとなる)。
【0023】この際、圧縮時間(リテーナ上径部から下方へ20mm押圧するのに要する時間)を2秒、圧縮ストローク(リテーナ上径部から麺線群の上面までの距離)を20mm、フライ条件を155℃、2分間とした。
【0024】
【表1】


【0025】表1の結果から明かなように、本発明の麺類の型詰方法によって、麺線群をリテーナーに押圧部材でもって押圧して型詰してフライ処理をした方が、従来方法に比較して、均一な型詰状態となり、かつ均一なフライ処理が行われることが明瞭である。また、図3(b)に示したように、押圧部材の形状を先端部全体を球面状、又は押圧部材の先端部の少なくとも周縁部を球面状(Rを形成)した方が、より一層効果があることがわかる。
【0026】
【発明の効果】本発明の麺類の型詰方法では、フライリテーナ内に収容された麺線群を、押圧部材により、垂直方向下方に押圧することによって、油揚げ処理の際に半生状態となり易いリテーナ中央部の麺線が押圧され、その結果、麺線が下方向及び左右方向に広がり全体に均一な分布状態となる。また、強制的に麺線群を押圧することにより、フライリテーナ内で収容された麺線群の上部と蓋との間に空間が生じて、油揚げ処理の際に、瞬間的に麺線の広がる部分が多くなる。
【0027】従って、このように押圧され、フライリテーナ内に収容された麺線群は、麺線の分布が左右・上下方向に全体に均一となり、その結果、次工程の油揚げ処理の際に、油揚げ処理が麺全体にわたり均一に行われ、麺塊の中央部分から外側部分にいたるまで麺線が偏在することなく、麺質及び形態が良質な油揚げ麺塊が得られる。
【0028】さらに、本発明の麺類の型詰方法で、押圧部材の形状を押圧部材の先端部の少なくとも周縁部を球面状とした(すなわち、Rを形成)もので、麺線群を押圧する方法では、フライリテーナ内に収容された麺線群を押圧した際に、緻密になった中央部の麺線が、球面状の周縁部に沿って左右に押し出され、その結果より均一な型詰をすることが可能となる。
【0029】従って、本発明の方法で製造した即席麺類では、喫食の際に熱湯を注加しても、容易に復元し速やかに喫食が可能となる。
【0030】また、本発明では、麺線を型詰する際にも、麺線がフライリテーナの外へ飛散することがなく、その結果、機械化された自動化装置の作動が阻害されず、型詰された麺塊の重量が均一となり、さらには、型詰の際にも、麺線が摩砕・損傷することのない即席麺類の製造方法における麺線を型詰めする方法を提供できる。
【0031】さらに、本発明は、その装置の構造が簡単で、かつ大規模とならない即席麺類の製造方法における麺線を型詰めする方法を提供できるなどの顕著で特有な作用効果を数多く奏するきわめて優れた発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の麺類の型詰方法の第2の実施例を示す概略図である。
【図2】 図2は、本発明の麺類の型詰方法の第2の実施例を示す概略図である。
【図3】 図3は、本発明の麺類の型詰方法に用いる押圧部材の縦断面図である。
【図4】 図4は、本発明の麺類の型詰方法に用いるフライリテーナと押圧部材との大きさの相違を示す概略図である。
【符号の説明】
1…ホッパー
2…フライリテーナ
3…押圧部材
4…蓋
2a…空間
3a…周縁部
A…麺線群
C…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の長さに切断された麺線をフライリテーナ内に投入し、該リテーナ内に収容された麺線群を下方に押圧することを特徴とする麺類の型詰方法。
【請求項2】 前記押圧に際し、押圧部材をフライリテーナ内に下降することによって、該押圧部材を介して麺線群を下方に押圧することを特徴とする請求項1に記載の麺類の型詰方法。
【請求項3】 前記フライリテーナの内寸より、前記押圧部材の外寸が小さいことを特徴とする請求項2に記載の麺類の型詰方法。
【請求項4】 前記押圧部材の下端が平坦状、又は少なくとも下端周縁部が球面状であることを特徴とする請求項2又は3に記載の麺類の型詰方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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