説明

麺類の製造方法

【課題】 極めて簡便な方法によって、麺に自然で良好な歯応えのある弾力性を付与する麺類の製造方法を提供する。
【解決手段】 麺原材料に、トリメタリン酸ナトリウムとアルカリ剤を添加して混練し、pHが6.4以上の麺生地を調製した後、これを製麺し蒸し処理を行う。前記トリメタリン酸ナトリウムの添加量は、小麦粉等の麺原料粉に対して0.02重量%以上0.5重量%以下であり、更に好ましくは、麺原料粉に対して0.1重量%以上0.4重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類の製造方法、特に、歯応えがよく弾力性のある優れた食感を有する麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、麺類においては、消費者の商品に対する嗜好性は高く、讃岐うどんのように腰が強く、歯切れの良い麺が全国的に人気の高い商品となっている。しかし、讃岐うどんのように腰が強く、歯切れの良い麺を製造するには麺生地の混捏、熟成等に多くの手間と時間がかかっていた。
【0003】
そこで、より簡便かつ効率的に、腰が強く歯切れの良い食感を有する麺を得るために、種々の原材料や副原料を使用する技術が開発されてきた。例えば、麺の製造において、麺原材料に卵白や増粘多糖類等を添加することによって、食感を改良する方法や、原料小麦粉にリン酸架橋澱粉等の加工澱粉を添加して弾力性を付与しようとする方法がある。
【0004】
しかしながら、麺原材料に卵白や増粘多糖類を加えた場合、麺に硬さを付与することはできるが、その硬さは麺類らしい弾力性とは若干異なるものとなる。また、原料小麦粉にリン酸架橋澱粉を添加することで麺に弾力性を付与する方法は、リン酸架橋澱粉を多量に添加すると、相対的に麺原材料中のグルテン量が減少し、麺生地を形成し難くなる。更に、リン酸架橋澱粉を多く含む麺を茹でると、麺の煮崩れや澱粉の溶出が多くなる。
【0005】
本発明は、麺原材料にトリメタリン酸ナトリウムを添加することを必須とするが、下記特許文献1乃至3に記されている通り、トリメタリン酸ナトリウムはリン酸架橋澱粉の製造において、使用されることが知られている。しかし、これらの特許文献は、いずれも澱粉の加工原料としてトリメタリン酸ナトリウムを用いるものであって、麺の製造工程において用いるものではない。また、麺類の製造に用いられる重合リン酸塩のひとつにポリメタリン酸ナトリウムがあるが、市販のポリメタリン酸ナトリウムは、高重合度の鎖状構造を有するものであり、特殊な環状構造を有するトリメタリン酸ナトリウムを含まない(麺類の製造において、メタリン酸ナトリウムと通称されているものは全てこのポリメタリン酸ナトリウムである)。すなわち、麺類の製造に使用される重合リン酸塩やかんすいにはトリメタリン酸ナトリウムが含まれることはなく、トリメタリン酸ナトリウムは、これまで、麺類の製造に使用されることのないものであった。
【特許文献1】特公昭63−3572号
【特許文献2】特開平5−328921号
【特許文献3】特開2000−93104号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、麺原材料に卵白や増粘多糖類を添加したときのような異質の硬さではなく、また、リン酸架橋澱粉を添加したときのような製麺性の悪化等の問題を有さず、しかも容易に、それでいて自然で歯応えのある良好な弾力性を有する麺類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明者らが鋭意研究した結果、麺の製造において、(1)麺原材料にトリメタリン酸ナトリウムを添加すること、(2)麺原材料に対するアルカリ剤の添加量を調整することにより、麺生地のpHを6.4以上にすること、及び(3)前記麺生地を製麺して得た麺線を蒸すことにより、容易に麺に良好な弾力性を付与することができることを知見し、本発明に至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、麺原材料に、トリメタリン酸ナトリウム及びアルカリ剤を添加してpH6.4以上の麺生地を調製し製麺して麺線を得る工程、及び該麺線を蒸す工程を含むことを特徴とする麺類の製造方法である。
【0009】
本発明は、「(1)麺原材料にトリメタリン酸ナトリウムを添加すること」が必須であるが、トリメタリン酸ナトリウムに代えて他の重合リン酸塩、例えば、ポリメタリン酸ナトリウムまたはピロリン酸ナトリウムを添加しても、トリメタリン酸ナトリウムを添加した場合に得られるような良好な弾力性は付与されない。ただし、本発明において、トリメタリン酸ナトリウムに加えてこれらの重合リン酸塩を添加することには何ら差し支えない。
【0010】
トリメタリン酸ナトリウムの添加量は、麺原材料中麺原料粉に対して0.02重量%以上0.5重量%以下とすることが好ましい。前記添加量が0.02重量%に満たない場合、麺に弾力性を付与する効果が充分でない場合があり、一方、前記添加量が0.5重量%を超える場合、麺らしくない違和感のある硬さを感じる場合がある。
【0011】
また、特に好ましいトリメタリン酸ナトリウムの添加量としては、麺原料粉に対して0.1重量%以上0.4重量%以下であり、この範囲で麺に最も自然でかつ充分な弾力性が得られる。なお、本発明でいう麺原料粉とは、通常粉体で添加する主原料粉類、すなわち、小麦粉、穀粉、澱粉、及びこれらの混合物をいう。
【0012】
また、本発明においては、「(2)麺原材料に対するアルカリ剤の添加量を調整することにより、麺生地のpHを6.4以上にすること」が必須であるが、前記麺生地のpHを6.4より低くした場合、麺に良好な弾力性を付与することができなくなるとともに、前記麺生地のつながりが弱くなり製麺性が悪くなる。一方、前記麺生地のpHを11.0より高くした場合、場合によっては、麺に麺類らしくない違和感のある硬さが付与されるため、前記麺生地のpHは11.0以下にするのが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、「(3)前記麺生地を製麺して得た麺線を蒸すこと」が必須であるが、前記麺生地を製麺して得た麺線に蒸し処理を施さない場合、麺に良好な弾力性を付与することができず、更に、喫食時に湯のびが発生しやすい。
【0014】
更に、本発明は、前記麺類が生タイプ即席麺類である場合において最も好適に使用することができる。特に、前記生タイプ即席麺類が中華麺の場合、α化処理後、該麺線を酸液処理するため、かんすいの添加効果が得られず、これまで麺に良好な弾力性を付与することが困難であったが、本発明によれば容易に弾力性を付与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トリメタリン酸ナトリウムを少量添加することで、極めて容易に、歯応えのよい、弾力性を有する本格的な麺類を製造することができる。また、本発明によれば、卵白や増粘多糖類を使用した場合のような違和感のある硬さではなく、より自然な硬さを付与でき、リン酸架橋澱粉を使用した場合のような製麺性の悪化といった問題も生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を製造工程に順じて具体的に説明するが、本発明はそれらの記載に限定されるものではない。
【0017】
まず、麺原材料にトリメタリン酸ナトリウムを添加する。麺原材料としては、麺類製造に際して通常使用される麺原料粉、すなわち、小麦粉、穀粉、澱粉等を使用することができる。澱粉は小麦澱粉、米澱粉等の穀類澱粉、とうもろこし澱粉、いも類澱粉、豆類澱粉等、及びこれらの加工澱粉類を用いることができ、穀粉類としては、そば粉等を用いることができる。また、これらを混合して用いることもできる。本発明では、これら通常粉末で添加される主原材粉を麺原料粉という。トリメタリン酸ナトリウムは粉体のまま直接麺原料粉に添加してもよいが、麺生地により均一に添加するためには、食塩、かんすい等とともに練り水に添加して、溶解させてから添加する方が好ましい。トリメタリン酸ナトリウムの好ましい添加量としては、先述した通り、麺原料粉に対して0.02重量%以上0.5重量%以下、更に好ましくは、0.1重量%以上0.4重量%以下である。
【0018】
また、本発明においては、アルカリ剤を添加することを必要とする。アルカリ剤はアルカリ性を有するかんすいでも良く、これらを、生成する麺生地のpHが6.4以上になるように添加する。ただし、該麺生地のpHをあまり高くすると、麺類らしくない違和感のある硬さが付与される場合があるので、該麺生地のpHは11.0以下にすることが好ましい。使用することができるアルカリ剤、かんすいとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及びこれらの混合物が一般的であるが、その他アルカリ性のリン酸塩やカルシウム塩等も用いることができる。また、重合リン酸塩を添加することも可能であり、ポリリン酸ナトリウム、ポリメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、及びこれらの混合物も使用することができる。これらは、麺原材料に直接添加してもよく、練り水に添加して溶液とした後、麺原材料に添加してもよい。また、本発明において使用することができる麺原材料としては、これら以外に、卵白、増粘多糖類、食塩、色素、油脂等があり、これらは粉体で、または、練り水に溶かしてもしくは懸濁させて添加する。
【0019】
このように、トリメタリン酸ナトリウム、及びアルカリ剤を添加した原材料を、ミキサー等で混練、熟成して麺生地を調製し、該麺生地から麺線を形成する。なお、この時、真空ミキサー等を用いることで麺線をより緻密にすることができ、従って、より硬い食感を望む場合には真空ミキサー等を使用することが好ましい。麺線を形成する際は、エクストルーダ等を用いて麺生地を押出す、あるいは複数の圧延ロールを通して麺帯とした後、該麺帯を切刃を用いて切出す方法が考えられるが、これらの方法に限られるものではない。
【0020】
麺線形成後、蒸し処理を行うが、蒸し条件としては、即席麺や生タイプ即席麺の製造で用いられる一般的な条件で処理すればよく、例えば、蒸気流量毎時300kg/m、100℃で2分間が挙げられる。なお、麺線の蒸し処理前、及び/または蒸し処理後に茹で処理を行ってもよい。本発明において、形成した麺線を蒸し処理を行わず、茹で処理のみでα化した場合、麺に良好な弾力性を付与することができず、更に、喫食時に湯のびが発生しやすい。
【0021】
麺線をα化した後、必要に応じて、種々の処理を行う。すなわち、α化した麺線を冷却後、そのまま包装しチルド製品や冷凍して冷凍製品としてもよく、また、α化した後、該麺線を乳酸、クエン酸、酢酸等の酸溶液に浸漬、または前記酸溶液を該麺線に噴霧または塗布して酸液処理し、pHを4.8以下として、ほぐれ改良剤を加えて、パウチ、容器等に投入して加熱処理し、生タイプ即席麺としてもよい。特に生タイプ即席麺が中華麺の場合、麺線を酸液処理するために、かんすいによる効果が得られにくく、増粘多糖類等の添加によって硬さを付与していたが、本発明の場合、蒸し工程前の麺生地pHが6.4以上であれば、その後の工程で酸液処理を行ってpHを下げても硬い食感を維持できるので、生タイプ即席麺に特に好ましく使用することができる。また、即席麺やレトルト麺とすることもできる。
【0022】
本発明が適用できる麺類としては、ラーメン、うどん、そば、スパゲティー等が含まれ、従来の如き袋入りの包装麺として商品化される他、ポリスチレン等の容器に、他の調味料、具材とともに収納し、いわゆるカップ入り麺としての商品形態をとることができる。
【実施例】
【0023】
実験例1:麺原材料に添加するリン酸塩の種類による食感への影響
(1)炭酸ナトリウム2.0g、重合リン酸塩1.0g、及び食塩10g、(2)炭酸ナトリウム2.0g、重合リン酸塩1.0g、食塩10g、及びトリメタリン酸ナトリウム1.0g、(3)炭酸ナトリウム2.0g、重合リン酸塩1.0g、食塩10g、及びポリメタリン酸ナトリウム1.0g、(4)炭酸ナトリウム2.0g、重合リン酸塩1.0g、食塩10g、及びピロリン酸ナトリウム1.0gとし、(1)乃至(4)をそれぞれ水に溶解し360mlの練り水を調製した。これらを、それぞれ準強力粉1000gに加えてミキサーで15分間混練した。なお、ここで使用した重合リン酸塩は、麺用として使用される一般的なもので、ポリリン酸ナトリウム0.29g、ポリメタリン酸ナトリウム0.55g、ピロリン酸ナトリウム0.03g、及びリン酸1ナトリウム0.13gを混合したものであり、トリメタリン酸ナトリウムを含まない。ミキサーで混練して得た麺生地を20g取り、水を加えて200gとし完全に溶解させ、常法によりpHを測定したところ、(1)pH7.5(2)pH7.4(3)pH7.4(4)pH7.5であった。該麺生地を圧延ロールにより順次圧延し麺厚1.5mmの麺帯とし、これを20番角刃で切り出して麺線を調製した後、蒸気流量毎時300kgにて100℃で2分間蒸し処理を行った。この蒸した麺を1食当たり135gにカットし、水洗冷却後、1%乳酸溶液に1分間浸漬した。その後、液切りして生タイプ即席麺用パウチ(15.5cm×14.5cm)に充填し、菜種油2mlを添加してシールし、97℃の蒸気殺菌庫で40分間加熱処理し、冷却して生タイプ即席中華麺を得た。
【0024】
前記生タイプ即席中華麺は1日放置後、パウチから取り出し、スチロールカップに入れ、麺が完全に浸るまで熱湯を注湯し、麺をほぐした後湯切りし、再びすぐに注湯し、官能検査を行った。官能試験は熟練したパネラー5名によって行い、麺の食感を比較した。
【0025】
練り水に添加したリン酸塩の種類と、それぞれから得た生タイプ即席中華麺の食感の評価を表1に示した。
【0026】
表1乃至3における食感は以下の通りとする。
×硬 …ゴムのような硬さが感じられ、歯切れが悪い
△硬 …少しゴムのような硬さが感じられる
○硬 …やや硬いが弾力感があり良好
◎ …歯応えがあり、良好な弾力感を有している
○柔 …やややわらかいが弾力感があり良好
△柔 …弾力感は感じられるがやわらかい
×柔 …やわらかく弾力性がほとんど感じられない
【0027】
【表1】

【0028】
表1より麺の食感は、練り水にトリメタリン酸ナトリウム0.1重量%を添加した場合、歯応えがよく、良好な弾力性を有する麺が得られた。一方、練り水にポリメタリン酸ナトリウム0.1重量%、またはピロリン酸ナトリウム0.1重量%を添加した場合は、これらを添加しない場合に比べて、麺にやや弾力性は感じられるものの、全体的に柔らかく、良好な弾力感を有する麺は得られなかった。
【0029】
実験例2:麺原材料へのトリメタリン酸ナトリウムの添加量による食感への影響
炭酸ナトリウム2.0g、重合リン酸塩1.0g、食塩10g、及びトリメタリン酸ナトリウムを(1)0g、(2)0.1g、(3)0.2g、(4)0.3g、(5)0.4g、(6)0.5g、(7)0.6g、(8)0.7g、(9)0.8g、(10)0.9g、(11)1.0g、(12)2.0g、(13)3.0g、(14)4.0g、(15)5.0g、または(16)6.0gとし、それぞれ水に溶解して360mlの練り水を調製し、これらを、それぞれ準強力粉1000gに加えてミキサーで15分間混練した。なお、ここで使用した重合リン酸塩は、麺用として使用される一般的なもので、ポリリン酸ナトリウム0.29g、ポリメタリン酸ナトリウム0.55g、ピロリン酸ナトリウム0.03g、及びリン酸1ナトリウム0.13gを混合したものであり、トリメタリン酸ナトリウムを含まない。ミキサーで混練して得た麺生地を20g取り、水を加えて200gとし完全に溶解させ、常法によりpHを測定したところ、前記(1)乃至(16)の麺生地はpH7.5、またはpH7.6であった。該麺生地を圧延ロールにより順次圧延し麺厚1.5mmの麺帯とし、これを20番角刃で切り出して麺線を調製した後、蒸気流量毎時300kgにて100℃で2分間蒸し処理を行った。この蒸した麺を1食当たり135gにカットし、水洗冷却後、1%乳酸溶液に1分間浸漬した。その後、液切りして生タイプ即席麺用パウチ(15.5cm×14.5cm)に充填し、菜種油2mlを添加してシールし、97℃の蒸気殺菌庫で40分間加熱処理し、冷却して生タイプ即席中華麺を得た。
【0030】
前記生タイプ即席中華麺は1日放置後、パウチから取り出し、スチロールカップに入れ、麺が完全に浸るまで熱湯を注湯し、麺をほぐした後湯切りし、再びすぐに注湯し、官能検査を行った。官能試験は熟練したパネラー5名によって行い、麺の食感を比較した。
【0031】
準強力粉1000gに対するトリメタリン酸ナトリウムの添加量と、それぞれから得た生タイプ即席中華麺の食感の評価を表2に示した。
【0032】
【表2】

【0033】
表2より、トリメタリン酸ナトリウムを0g乃至6.0g(準強力粉に対する添加量0重量%乃至0.60重量%)含有する練り水を麺原料粉に添加して麺を調製した場合、トリメタリン酸ナトリウムの添加量がわずか0.1g(同0.01重量%)であっても、わずかではあるが麺に弾力性が付与された。前記添加量が0.2g(同0.02重量%)乃至5.0g(同0.50重量%)の時、良好な弾力感が付与された麺が得られ、特に1.0g(同0.10重量%)乃至4.0g(同0.40重量%)の時、歯応えがあり、最も良好な弾力感を有する麺が得られた。
【0034】
実験例3:麺生地のpHの違いによる食感への影響
アルカリ剤である炭酸ナトリウムを(1)0.2g、(2)0.4g、(3)0.6g、(4)0.8g、(5)1.2g、(6)1.6g、(7)2.0g、(8)4.0gとし、重合リン酸塩1.0g、食塩10g、及びトリメタリン酸ナトリウム1.0gをそれぞれ水に溶解し360mlの練り水を調製し、これを準強力粉1000gに加えてミキサーで15分間混練した。なお、ここで使用した重合リン酸塩は、麺用として使用される一般的なもので、ポリリン酸ナトリウム0.29g、ポリメタリン酸ナトリウム0.55g、ピロリン酸ナトリウム0.03g、及びリン酸1ナトリウム0.13gを混合したものであり、トリメタリン酸ナトリウムを含まない。ミキサーで混練して得た麺生地を20g取り、水を加えて200gとし完全に溶解させ、常法によりpHを測定し、麺生地pHとした。該麺生地を圧延ロールにより順次圧延し麺厚1.5mmの麺帯とし、これを20番角刃で切り出して麺線を調製した後、蒸気流量毎時300kgにて100℃で2分間蒸し処理を行った。この蒸した麺を1食当たり135gにカットし、水洗冷却後、1%乳酸溶液に1分間浸漬した。その後、液切りして生タイプ即席麺用パウチ(15.5cm×14.5cm)に充填し、菜種油2mlを添加してシールし、97℃の蒸気殺菌庫で40分間加熱処理し、冷却して生タイプ即席中華麺を得た。
【0035】
前記生タイプ即席中華麺は1日放置後、パウチから取り出し、スチロールカップに入れ、麺が完全に浸るまで熱湯を注湯し、麺をほぐした後湯切りし、再びすぐに注湯し、官能検査を行った。官能試験は熟練したパネラー5名によって行い、麺の食感を比較した。
【0036】
測定した麺生地のpHと、それぞれの麺生地から得た生タイプ即席中華麺の食感の評価を表3に示した。
【0037】
【表3】

【0038】
表3より麺の食感は、切り出し前の麺生地のpHが6.4以上であれば、歯応えがよく、良好な弾力性を有する麺が得られた。
【0039】
実施例:チルド麺の製造
炭酸ナトリウム7.0g、重合リン酸塩1.0g、食塩10g、及びトリメタリン酸ナトリウム1.0gを水に溶解し360mlの練り水を調製し、これを準強力粉1000gに加えてミキサーで15分間混練した。なお、ここで使用した重合リン酸塩は、麺用として使用される一般的なもので、ポリリン酸ナトリウム0.29g、ポリメタリン酸ナトリウム0.55g、ピロリン酸ナトリウム0.03g、及びリン酸1ナトリウム0.13gを混合したものであり、トリメタリン酸ナトリウムを含まない。ミキサーで混練して得た麺生地を20g取り、水を加えて200gとし完全に溶解させ、常法によりpHを測定したところ、pH9.0であった。該麺生地を圧延ロールにより順次圧延し麺厚1.5mmの麺帯とし、これを20番角刃で切り出して麺線を調製した後、蒸気流量毎時300kgにて100℃で2分間蒸し処理を行った。この蒸した麺を1食当たり135gにカットし、水洗冷却してチルド麺を得た。このチルド麺を冷蔵して1日保存後、パウチから取り出し、スチロールカップに入れ、麺が完全に浸るまで熱湯を注湯し、麺をほぐした後湯切りし、再びすぐに注湯し、熟練したパネラー5名によって官能検査を行った。該チルド麺は歯応えがよく、良好な弾力性を有するものであった。
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺原材料にトリメタリン酸ナトリウム及びアルカリ剤を添加してpH6.4以上の麺生地を調製し製麺して麺線を得る工程、及び該麺線を蒸す工程を含むことを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項2】
麺原材料に添加する前記トリメタリン酸ナトリウムの添加量が、麺原料粉に対し0.02重量%以上0.5重量%以下である請求項1に記載の麺類の製造方法。
【請求項3】
麺原材料に添加する前記トリメタリン酸ナトリウムの添加量が、麺原料粉に対し0.1重量%以上0.4重量%以下である請求項1に記載の麺類の製造方法。
【請求項4】
前記麺類が生タイプ即席麺類である請求項1乃至3のいずれかに記載の麺類の製造方法。