説明

麻酔用マスク

【課題】患者に経鼻的に麻酔ガスを供給して麻酔を掛ける際に、麻酔用ガスを安定的に供給することにより麻酔の効果を安定させるとともに、麻酔ガスによる環境汚染の発生を抑制可能な麻酔用マスクを提供すること。
【解決手段】麻酔用マスク10であって、麻酔装置との間で麻酔ガスを流通する麻酔ガス管路が接続される麻酔ガス導入部12が形成され、口部を覆うことが可能とされたマスク本体11と、鼻の穴を閉塞する鼻穴被覆部材16とを備え、前記鼻穴被覆部材16は、左右の前記鼻穴を各別に閉塞可能に構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、経鼻的な麻酔を容易に行うことが可能な麻酔用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、全身麻酔を掛ける際に、気管チューブを鼻穴を経由して患者に挿入して麻酔ガスを供給する経鼻的な全身麻酔が普及しつつある。
チューブを鼻穴から挿管することが可能な麻酔用マスクとして、例えば、特許文献1に示すような、麻酔ガスを供給しながらカテーテル等のチューブが挿管可能とされた麻酔用マスクに関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−262621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記麻酔用マスクを用いる場合、麻酔ガスを供給する気管チューブを鼻穴から挿管すると患者に気管チューブが挿管された状態で麻酔用マスクを口から取り外せないために、患者の鼻穴を介して経鼻的に麻酔ガスの供給をすることが困難である。
そこで、気管チューブを挿管する前に麻酔を掛けて患者を眠らせて鼻穴から気管チューブを挿管させることにより経鼻的に安定して麻酔ガスの供給を可能とし、かつ麻酔ガスが漏出することにより環境が汚染されることがない麻酔用マスクの要求がある。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、患者に経鼻的に麻酔ガスを供給して麻酔を掛ける際に、麻酔用ガスを安定的に供給することにより麻酔の効果を安定させるとともに、麻酔ガスによる環境汚染の発生を抑制可能な麻酔用マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、麻酔ガスを供給する麻酔ガス管路が接続される麻酔ガス導入部を有するとともに口部を被覆可能とされたマスク本体と、鼻穴被覆部材とを備え、前記鼻穴被覆部材は、左右の鼻穴を各別に被覆可能に構成されていることを特徴とする。
【0006】
この発明に係る麻酔用マスクによれば、左右格別の鼻穴に被覆可能な鼻穴被覆部材と、口部を被覆するマスク本体とを有しているので、気管チューブを挿管する側の鼻穴のみ鼻穴被覆部材を取り外して気管チューブを鼻穴経由で気管に容易に挿入することができる。
この場合、気管チューブが挿入されない側の鼻穴は鼻穴被覆部材により被覆可能とされるので麻酔ガスの漏出が抑制される。
その結果、気管チューブが鼻穴から挿入された状態で患者への麻酔ガスの供給が可能とされるとともに麻酔ガスの漏出による汚染を抑制することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の麻酔用マスクであって、前記鼻穴被覆部材は、前記左右の鼻穴に対応して各1つ設けられ、前記マスク本体と索状体を介して連結されていることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る麻酔用マスクによれば、鼻穴被覆部材が、左右の鼻穴に対応して各1つ設けられるとともにマスク本体と索状体を介して連結されているので、気管チューブを挿管する側の鼻穴の鼻穴被覆部材のみを容易に取りはずすとともに鼻穴被覆部材を容易に取り扱うことが可能とされる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る麻酔用マスクによれば、患者に経鼻的に麻酔ガスを供給して麻酔を掛ける際に麻酔用ガスを安定的に供給して麻酔の効果を安定させるとともに、麻酔ガスによる環境汚染が発生することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1、図2は、一実施形態に係る麻酔用マスク10を示す図であり、麻酔用マスク10は、マスク本体11と、鼻穴閉塞栓(鼻穴被覆部材)16とを備え、鼻穴閉塞栓16は左右の鼻穴に対応して各別に一つずつの鼻穴閉塞栓16R、16L設けられ、それぞれの鼻穴閉塞栓16R、16Lは、マスク本体11に、紐(索状体)17R、17Lによって連結されている。
【0011】
マスク本体11は、図1に示すように、患者Kが起立して装着した場合に正面視して下方側が円弧の略半月形とされ外方(口部K1と反対側)に向かってわずかに膨出した形態とされており、一体成形され円形断面を有する環状体からなり患者Kの口部K1を囲繞して口部K1の周囲に当接するパッド部11Aと、パッド部11Aの口部K1周囲の当接部とは反対側に接続されパッド部11Aを覆う被覆壁部11Bとを備え、マスク本体11の内方がマスク10の外部と気密に口部K1を被覆可能とされている。
また、被覆壁部11Bの口部K1前方の中央部には、麻酔装置(図示せず)から麻酔ガスを供給する麻酔ガス管路2が接続される円筒状の麻酔ガス導入部12が形成されている。
【0012】
パッド部11Aは、例えば、エラストマ等の柔軟な樹脂により成形され、被覆壁部11Bは、麻酔用マスク10を装着した状態で保形可能な略均一な厚さの樹脂により形成され、口部K1を良好に被覆可能とするとともに患者Kの口部K1の前方及び周囲には麻酔ガスが流通可能な空間部13が形成されている。
【0013】
それぞれの鼻穴閉塞栓16R、16Lは、例えば、発泡ポリスチレン等の柔軟性を有し鼻穴K2に挿入可能に容易に変形可能な樹脂等により略円柱状に形成されており、その外径は患者の鼻穴K2の内径よりもわずかに大きな径とされ、患者Kへの苦痛を抑制しつつ鼻穴K2を気密に閉塞可能とされている。
なお、鼻穴閉塞栓16の外径は、例えば、大人用、小人用、幼児用、新生児用等、その用途によって設定することが可能である。
【0014】
以下に、麻酔用マスク10の作用について説明する。
まず、図2(A)に示すように、麻酔用マスク10を患者Kに装着して、患者Kの口部K1を覆う。このとき、鼻穴K2は鼻穴閉塞栓16が挿入されることにより気密に閉塞される。
次に、麻酔ガス導入部12に麻酔ガス管路2を接続し、図示しない麻酔装置を起動して、麻酔装置で生成した麻酔ガスを口部K1経由で患者Kに供給し患者Kを眠らせる。
【0015】
患者Kが眠ったら、図2(B)に示すように、一方の側の鼻穴閉塞栓16を取り除いて鼻穴K2から気管内チューブ3を挿管し、気管内チューブ3経由で患者Kに麻酔ガスを供給するとともに麻酔用マスク10を取りはずす。
例えば、大人用の気管内チューブ3には、先端部分にカフ(バルーン)3Bが設けられていて、このカフ3Bを膨らませて気管が閉塞されて、気管内チューブ3を介して呼吸するようになっている。(小児用の場合には、気管が細いためにカフが必要とされない場合がある。)
その後は、気管内チューブ3を通じて麻酔ガスを供給して麻酔を継続しつつ手術を継続して行う。
この場合、一方の鼻穴K2は鼻穴閉塞栓16により閉塞され、気管内チューブ3が挿管された側の鼻穴K2は気管内チューブ3が挿入されることにより流路が小さくなり麻酔ガスの漏出が抑制される。
【0016】
上記実施形態に係る麻酔用マスク10によれば、麻酔が掛かっていない状態ではマスク本体11により口部K1を被覆するとともに鼻穴K2を鼻穴閉塞栓16により閉塞してマスク本体11内に麻酔ガスを供給することにより、気管内チューブ3を鼻穴K2に挿管することなく麻酔を掛けて眠らせることができる。
【0017】
また、通常の麻酔マスクを使用する場合、気管チューブ挿管時の呼吸を確保するためには自発呼吸を残して挿管する必要があり、挿管行為に生体が反応することにより気道が収縮してスムースな挿管が困難な場合や、挿管にともなう咳反射等が発生する場合があるが、麻酔用マスク10を使用した場合、呼吸を確保して完全麻酔下における挿管が可能となり、その結果、気道の収縮、咳反射等が発生せず、容易な挿管が可能となる。
【0018】
また、鼻穴閉塞栓16が左右の鼻穴K2に対応して各1つずつ設けられているので、鼻穴閉塞栓16を取り外して鼻穴K2を露出することにより、容易かつ確実に気管内チューブ3を鼻穴K2に挿管することができる。
この場合、気管内チューブ3が挿入されていない鼻穴K2は鼻穴閉塞栓16により閉塞され、気管内チューブ3が挿入された側の鼻は気管内チューブ3が挿入されて流路が小さくなっているので麻酔ガスの漏出が抑制可能とされ、患者Kに麻酔ガスを供給しつつ気管内チューブ3を挿管することができる。
その結果、患者Kの覚醒を抑制しつつ、患者Kへの気管内チューブ3による処置を容易に行うことができる。
【0019】
また、鼻穴閉塞栓16がマスク本体11と紐17により連結されているので、鼻穴閉塞栓16を容易に取り扱うことが可能とされる。
【0020】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態においては、マスク本体11に鼻穴被覆部材16が紐17により連結される場合について説明したが、チェーンその他の索状体を用いてもよい。
また、マスク本体11を形成する材料は、樹脂の材質、色、形態等を自在に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る麻酔用マスクを示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る麻酔用マスクの使用状態を示す図であり、(A)は口から麻酔ガスを供給している状態を、(B)は気管チューブを用いて麻酔をしている状態を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0022】
K1 口部
K2 鼻穴
2 麻酔ガス管路
10 麻酔用マスク
11 マスク本体
12 麻酔ガス導入部
16、16R、16L 鼻穴閉塞栓
17 紐(索状体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻酔ガスを供給する麻酔ガス管路が接続される麻酔ガス導入部を有するとともに口部を被覆可能とされたマスク本体と、鼻穴被覆部材とを備え、
前記鼻穴被覆部材は、
左右の鼻穴を各別に被覆可能に構成されていることを特徴とする麻酔用マスク。
【請求項2】
請求項1に記載の麻酔用マスクであって、
前記鼻穴被覆部材は、
前記左右の鼻穴に対応して各1つ設けられ、前記マスク本体と索状体を介して連結されていることを特徴とする麻酔用マスク。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−142330(P2009−142330A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319863(P2007−319863)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)