説明

黄色ブドウ球菌の検査方法

本発明は、プロテインAに対する抗体を用いた免疫学的測定法により検体中の黄色ブドウ球菌を検査する方法であって、少なくとも1種のマウスIgG1モノクローナル抗体を用いることを特徴とする黄色ブドウ球菌の検査方法、少なくともマウスIgG1抗プロテインAモノクローナル抗体と標識体を検出する試薬を含有する検体中の黄色ブドウ球菌を検査するための検査キットに関する。 これを用いることにより、検体中の黄色ブドウ球菌を、短時間で且つ感度よく検査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、検体中の黄色ブドウ球菌を培養することなく、高感度で検査する方法に関する。
【背景技術】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureusaureus)は、グラム染色で陽性を呈し、顕微鏡下で不規則なブドウの房状を呈するブドウ球菌(Staphylococcus)属に属する細菌で、各種の毒素や酵素を産生し、ヒトや哺乳動物に化膿性疾患を惹起する主要な病原性細菌であり、またヒトの食中毒の原因となる代表的菌種でもある。また、黄色ブドウ球菌の一種であるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、病院感染の原因菌として特に注目されている。
黄色ブドウ球菌の検出は、選択分離培地を用いて前培養を行い、疑わしいコロニーを拾って、菌鑑別のための同定試験を行う培養法が従来から多用され、菌の同定試験は、コアグラーゼ産生能の有無を調べることや、黄色ブドウ球菌が産生するサーモヌクレアーゼ、エンテロトキシン、プロテインAに対する抗体を免疫学的に測定すること(Archivfur Lebensmittelhygiene.35,97(1984)、特開平6−68824号公報、特開平9−211000号公報)等、により行われている。
斯かる従来法は、いずれも菌の培養が必要であり、細菌の同定には長時間を要し、同定結果がでた時点では、既に患者の様態が悪化しており、同定結果が意味をなさないことが多く、また多量の抗菌薬を投与している患者では微量の細菌が血液中に存在していても検出されない可能性もあった。
これに対して、近年、プロテインAを標的とし、試料の前培養が不要な高感度測定法がいくつか報告されている(Journal of Immunological Methods,83(1985)169−177、Journal of Immunological Methods,117(1989)83−89、Journal of Immunological Methods,142(1991)53−59)。これらの方法は、いずれもサンドイッチ酵素免疫測定法が採用されており、それぞれ固相化したウサギ抗プロテインA抗体とアルカリホスファターゼ標識されたウサギ抗プロテインA抗体の組み合わせ、固相化したウサギ抗プロテインA抗体とHRP標識されたウサギ抗プロテインA抗体のF(ab’)2の組み合わせ、そして固相化したニワトリ抗プロテインA抗体(IgY)とビオチン標識されたウサギ抗プロテインA抗体の組み合わせの系から構成されている。
しかしながら、プロテインAは、哺乳類由来の免疫グロブリンG(IgG)のFc部分との結合部位をもつことが知られているため、いずれの測定系においても固相化した抗体と標識した抗体の両方又はいずれか一方の抗体に使用しているIgGとプロテインAのFc結合部位とが相互作用を起こすという問題があった。
一方、迅速かつ高感度に細菌感染を検出する方法として、遺伝子増幅法(加藤郁之進、蛋白質・核酸・酵素、Vol.35,p.2957(1990))も試みられているが、黄色ブドウ球菌は常在菌の一つであるため、外部から微量の細菌遺伝子が混入することによって、非感染者においても陽性判定される恐れが多く、黄色ブドウ球菌のような常在菌による感染症の判定には問題がある。また、MRSAについては、薬剤耐性に関与しているmecA遺伝子を検出することによって、感受性試験の結果を待たずに、MRSAの判定を行える方法が遺伝子増幅法を応用して開発され(生方ら、J.Clin.Microbiol.,30,P.1728−1733(1992))、すでに実用化されているが、mecA遺伝子は黄色ブドウ球菌だけでなく他のブドウ球菌(CNS)でも有していることがあり、mecA遺伝子の検出ではMRSAとCNSが明確に区別できないという問題があった。
【発明の開示】
本発明は、検体中の黄色ブドウ球菌を、短時間で且つ感度よく検査するための方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、プロテインAに対する抗体を用いた免疫学的測定法に関して、鋭意検討したところ、少なくとも1種のマウスIgG1モノクローナル抗体を用いた高感度な免疫学的測定法を行うことによって、黄色ブドウ球菌に感染した患者の血液、尿、喀痰、髄液、胸水、腹水、膿等の体液成分中に存在するプロテインA抗原を、IgGの影響を受けることなく、感度良く検出又は定量でき、検体中の黄色ブドウ球菌が迅速に検査できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、プロテインAに対する抗体を用いた免疫学的測定法により検体中の黄色ブドウ球菌を検査する方法であって、少なくとも1種のマウスIgG1モノクローナル抗体を用いることを特徴とする黄色ブドウ球菌の検査方法を提供するものである。
また本発明は、検体中の黄色ブドウ球菌を検査するためのキットであって、少なくともマウスIgG1抗プロテインAモノクローナル抗体と標識体を検出する試薬を含有する検査キットを提供するものである。
本発明によれば、検体中のIgG等の影響を受けることなくプロテインAを高感度で測定することができ、簡易且つ迅速に黄色ブドウ球菌感染症の有無を検査することができる。また、黄色ブドウ球菌がMRSAであっても、感染症の有無を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、サンドイッチ酵素免疫測定法1によって測定した精製プロテインAの標準曲線を示した図である。
図2は、サンドイッチ酵素免疫測定法2によって測定した精製プロテインAの標準曲線を示した図である。
図3は、培養上清中のプロテインA量を経時的に測定した図である。
図4は、健常人の血清(3人)及び尿中(3人)、黄色ブドウ球菌感染患者の血中(4人)及び尿中(2人)のプロテインAを測定した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の黄色ブドウ球菌の検査方法は、検体中における黄色ブドウ球菌が産生するプロテインAを免疫学的測定法により直接検出するものである。
従って、検体(被検試料)の前培養や、遠心法、カラム分離法、沈殿法等によって検体中のプロテインAを濃縮する操作は特に必要としない。
尚、黄色ブドウ球菌とは、Staphylococcusaureusを意味し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)も包含される。
本発明に用いる検体としては、黄色ブドウ球菌が存在しうる生体試料であればいずれのものでもよく、例えば血液、尿、喀痰、髄液、胸水、腹水、膿等の体液成分等が挙げられる。すなわち、喀痰、尿等の菌濃度が高いものだけでなく、血液、胸水、腹水等の菌濃度が低い(例えば、10〜10cfu/mL)ものであっても、被検試料の前培養や被検試料中のプロテインAを濃縮する操作をすることなく、直接検出又は定量することが可能である。
尚、検体はそのまま用いるだけでなく、リン酸緩衝液等の緩衝液で希釈したものを用いてもよく、斯かる検体の希釈用緩衝液には、抗原を安定化するために、適当な蛋白、例えばBSA、HSA、ゼラチン等の蛋白を共存させることができる。
本発明における免疫学的測定法としては、黄色ブドウ球菌が産生するプロテインAが100pg/mL以下まで、より好ましくは10pg/mL以下まで測定できる高感度な方法であれば特に限定されず、酵素免疫測定法、放射標識免疫測定法(ラジオイムノアッセイ)、イムノクロマト法、蛍光免疫測定法等の公知の免疫学的測定法が使用できるが、特に安全性及び感度の点から酵素免疫測定法が好ましい。
酵素免疫測定法は、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ等の酵素を用いた酵素標識抗体の酵素活性を検出することにより、相関性を有する抗体又は抗原の量を測定するものであるが、当該酵素活性を検出する方法により比色法、蛍光法、化学発光法(化学発光酵素免疫測定法(CLEIA))が知られている。比色法は、過酸化水素/o−フェニレンジアミン、p−ニトロフェニルリン酸、o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド等の酵素基質の酵素による分解反応に伴い生成する発色性物質の発色量を測定して酵素活性を定量するものであり、蛍光法は、酵素の触媒活性により、4−ヒドロキシフェニル酢酸、4−メチルウムベリフェリルリン酸、4−メチルウムベリフェリル−β−ガラクトシド等の蛍光基質を分解して蛍光を発生させた後、この蛍光強度を測定して酵素活性を定量するものである。そして、化学発光法(CLEIA)は、酵素の触媒活性によって化学発光物質が励起状態となり、この状態から基底状態に戻る際に放出される発光量を測定して酵素活性を定量するものである。本発明においては、このうち、化学発光性物質を発光させるため光源が不要であり、比色法及び蛍光法を上回る高感度な検出が可能である化学発光酵素免疫測定法を用いるのが特に好ましい。
CLEIAに用いられる酵素としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素等が挙げられ、化学発光物質としては、ルミノール誘導体、イソルミノール誘導体等のルミノール類、ルシゲニン(N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウムナイトレート)、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)オキザレート等が挙げられ、このうち、ルミノール/過酸化水素の基質とペルオキシダーゼとの組み合わせが好ましい(辻章夫ら、蛋白質・核酸・酵素、別冊Vol.31、p.51−63(1987))。そして、必要があればD−(−)−ルシフェリン、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、p−ヨードフェノール等を化学発光反応系に共存させることによって、その発光を増発光させることができる。
本発明の免疫学的測定法は、測定手段は特に限定されるものでなく、競合法又はサンドイッチ法の何れでもよいが、高感度な測定が可能なことから、二抗体サンドイッチ法が好ましい。
本発明の免疫学的測定法においては、プロテインAに対する抗体として、少なくとも1種のマウスIgG1モノクローナル抗体が用いられ、これは一次抗体であっても、二次抗体であってもよい。
マウス由来のモノクローナル抗体であって、抗体のサブクラスがIgG1であるマウスIgG1モノクローナル抗体は、プロテインAにおける免疫グロブリンのFc結合部位との親和性が低い。従って、これを用いることにより、哺乳動物由来の抗体と非免疫学的に結合する物質(免疫グロブリンのFc結合部位を有する物質)やそれを生産する微生物、或いはIgGが混在している検体であってもプロテインAを確実に測定でき、黄色ブドウ球菌を特異的に且つ高感度で検査することが可能となる。
二抗体法を用いる場合、一次抗体又は二次抗体の少なくとも一方にマウスIgG1モノクローナル抗体であって、プロテインAのFc非結合部位を認識する抗体を用い、他方は前記マウスIgG1モノクローナル抗体とは認識部位の異なるマウスIgG1モノクローナル抗体の他、マウス以外の哺乳動物(例えば、ウサギ、ヤギ等)由来のポリクローナル抗体IgGをペプシン等の酵素処理や還元処理によってFc部位を切断して得られる抗体断片(F(ab’)2、Fab’、Fab断片等)、IgG1以外のモノクローナル抗体のFc部位を切断して得られる抗体断片(F(ab’)2、Fab’、Fab断片等)であって、プロテインAのFc非結合部位を認識する抗体、ラット由来IgG抗体、哺乳動物由来IgM抗体、ニワトリ由来IgY抗体等のプロテインAのFc結合部位とは反応しない抗体を用いるのが好ましく、特に哺乳動物由来のポリクローナル抗体IgGをペプシン処理して得られるF(ab’)2断片を用いるのが好ましい。
斯かる抗体を選択することにより、IgGとプロテインAのFc結合部位との相互作用を完全に排除することができる。
マウスIgG1モノクローナル抗体は、例えば、常法に従って、プロテインAを認識するマウスモノクローナル抗体を作製後、マウスIgGのサブクラスタイピングキットによって、サブクラスがIgG1のモノクローナル抗体を選択すればよい。
また、上記、抗プロテインAポリクローナル抗体、モノクローナル抗体についても、精製抗原を用いて、公知の方法により調製することにより得ることができる。
以下に、マウスIgG1モノクローナル抗体を一次抗体として用いたサンドイッチ法の一例を具体的に説明する。
1)適当な固相担体の表面にマウスIgG1抗プロテインAモノクローナル抗体を吸着固定する。
2)該抗体と黄色ブドウ球菌を含有する検体とを接触せしめ、検体中の黄色ブドウ球菌が産生するプロテインAを固相担体に固定された抗体と特異的に結合させ、検体中のプロテインAを固相担体に固定する。
3)プロテインAが固定された担体を、標識されたプロテインAに対する抗体(二次抗体)を含有する溶液と接触せしめ、当該二次抗体を、固定化抗プロテインA抗体及びプロテインAを介して、固相担体に結合させる。
4)固定された二次抗体を二次抗体の標識体に応じて測定することにより、検体中のプロテインAを検出又は定量する。
一次抗体の固相化に用いられる固相担体としては、ガラス製やプラスチック製のチューブ、プレート、ウェル又はビーズ、磁性粒子、ラテックス、膜、繊維等、特に限定されるものではない。
固相化の方法としては、物理吸着法のほか、グルタールアルデヒド、カルボジイミド等の各種架橋剤による化学結合法を用いることができる。例えば、抗体をリン酸緩衝液で希釈した後、これを固相担体の表面に接触させ、37℃にて60分間インキューベートすればよい。
二次抗体の標識は、放射性同位元素、酵素、ビオチン、蛍光物質、化学発光物質、金コロイド、ラテックス、フェライト粒子等で直接標識すればよいが、上述したように、安全性が高く、良好な測定結果が期待できる点から酵素標識するのが好ましい。好適な標識酵素としては、安定性に優れ、酵素活性が測定しやすいペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼ等が挙げられる。
結合された二次抗体の検出又は定量は、任意の公知の方法に従って行うことができる。例えば、酵素、発光体、蛍光体等で標識された二次抗体自体を、直接検出または測定することも可能であるし、二次抗体に対して特異的な三次抗体を用い、この三次抗体を種々の方法により標識しておき、三次抗体の標識を検出又は定量することもできる。
好適な検出法としては、上述のとおり、酵素標識された二次抗体に対して、当該その酵素に特異的な基質(発色基質、蛍光基質、化学発光基質)を反応させ、発色、蛍光、発光等を生じさせてそのシグナルを測定機器で検出する方法が挙げられ、特に高感度検出が可能な化学発光基質を用いる方法が好ましい。
本発明の黄色ブドウ球菌感染症の検査用キットは、上記の検体中の黄色ブドウ球菌の検査方法を実施するためのキットであり、少なくとも上記のマウスIgG1抗プロテインAモノクローナル抗体の他、酵素等の標識体を検出する試薬を含み、必要に応じて検体の希釈緩衝液、各種の試薬希釈用緩衝液、洗浄液等を含むものである。
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
(1)一次抗体固相化プレートの作製
マウスIgG1抗プロテインAモノクローナル抗体を150mM Nacl含有25mMリン酸緩衝液(PBS)で、10μg/mLに希釈したものを50μL/ウェルずつプレートへ入れ、4℃で一晩放置し抗体の固相化を行った。翌日、プレートから内容物を除去後、ブロックエース(大日本製薬社製)を精製水で4倍希釈したものを280μL/ウェルずつ加え、4℃で一晩以上放置した。使用時には、0.05%Tween20含有PBS溶液(PBS−T)で3回洗浄したものを反応に供した。
(2)ビオチン化二次抗体の作製
ヤギ抗プロテインAポリクローナル抗体をペプシン消化して得たヤギ抗プロテインA抗体F(ab’)2の500μL(1mg/mL)を0.1M炭酸水素ナトリウムで透析した。抗体液を攪拌しながら、Sulfo−NHS−LC−Biotin(Pierce社製)0.05mgを50μLの同炭酸緩衝液に溶解したものを滴下した。室温で4時間攪拌後、4℃でPBS中一晩透析したものをビオチン化二次抗体として使用した。
【実施例2】
(1)サンドイッチ酵素免疫測定法によるプロテインAの測定1
実施例1の(1)で調製したマウスIgG1抗プロテインAモノクローナル抗体を固相化したマイクロタイタープレートに精製水で10倍希釈したブロックエース(希釈ブロックエース)で0.5、1、5、10、50ng/mLに希釈した精製プロテインAを50μL/ウェルずつ加える。4℃で一晩反応後、各ウェルをPBS−Tで洗浄する。実施例1のビオチン化二次抗体を希釈ブロックエースで2.9μg/mLに希釈したものを50μL/ウェルずつ加える。更に、室温で1時間反応後、各ウェルをPBS−Tで洗浄する。アビジン化HRP(Zymed社製)を0.2%BSA−PBSで4000倍希釈し、50μL/ウェルずつ加え、室温で1時間反応させる。洗浄後、2mg/mLオルトフェニレンジアミンと5.9mM過酸化水素を含む0.1Mクエン酸緩衝液pH5を50μL/ウェルずつ加え、室温で30分間反応を行った後、1.5N硫酸50μL/ウェルずつ加え反応を停止し、ELISAプレートリーダーの波長492nmで測定を行った。得られた標準曲線を図1に示す。
プロテインA濃度0.5から50ng/mLの範囲で測定可能であった。
(2)サンドイッチ酵素免疫測定法によるプロテインAの測定2
マウスIgG1抗プロテインAモノクローナル抗体を固相化した白色マイクロタイタープレート(Dynex technologies社製)に希釈ブロックエースで0.01、0.1、1.0、10ng/mLに希釈した精製プロテインAを50μL/ウェルずつ加える。4℃で一晩反応後、各ウェルをPBS−Tで洗浄する。実施例1のビオチン化二次抗体を希釈ブロックエースで2.9μg/mLに希釈したものを50μL/ウェルずつ加える。更に、室温で1時間反応後、各ウェルをPBS−Tで洗浄する。アビジン化HRP(Zymed社製)を0.2%BSA−PBSで4000倍希釈し、50μL/ウェルずつ加え、室温で1時間反応させる。洗浄後、Super Signal ELISA Femto Substrate(Pierce社製)を100μL/ウェルずつ加え、ルミノメーターで10秒間の発光量を積算した。得られた標準曲線を図2に示す。
プロテインA濃度0.01から10ng/mLの範囲で測定可能であった。
実施例3 培養上清中のプロテインA量の経時的測定
黄色ブドウ球菌の臨床分離株(MRSA1932)の一夜培養液80μLをheart−infusion broth 10mLに加え培養する。その後、経時的に1mLずつ採取し、2分間遠心して上清を取り、0.2μmのフィルターろ過したものをサンプルとして測定するまで、−30℃に保存した。菌の増殖に応じたプロテインA分泌量を測定するため、前記サンプルを希釈ブロックエースで25から200倍に希釈して、ELISA法で測定した結果を図3に示す。
その結果、菌の増殖フェイズに応じて、静止期よりも対数増殖期にプロテインAの産生量の増加が確認できた。
実施例4 患者血清及び尿中のプロテインAの測定
実施例2の(2)の方法に従って黄色ブドウ球菌感染患者及び健常人の血清及び尿中のプロテインAを測定した結果を図4に示す。
健常人の血清中にはプロテインAがほとんど検出されないのに対し、感染患者の血清及び尿中にはプロテインAの存在が確認された。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインAに対する抗体を用いた免疫学的測定法により検体中の黄色ブドウ球菌を検査する方法であって、少なくとも1種のマウスIgG1モノクローナル抗体を用いることを特徴とする黄色ブドウ球菌の検査方法。
【請求項2】
免疫学的測定法が二抗体サンドイッチ酵素免疫測定法である請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
一次抗体又は二次抗体のいずれか一方にマウスIgG1モノクローナル抗体を用い、他方に哺乳動物由来のポリクローナル抗プロテインA抗体を酵素処理によって該抗体のFc部位を切断して得られる抗体断片を用いるものである請求項2記載の検査方法。
【請求項4】
マウスIgG1モノクローナル抗体が、プロテインAのFc非結合部位を認識する抗体である請求項1〜3のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項5】
酵素免疫測定法が化学発光酵素免疫測定法である請求項2〜4のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項6】
化学発光酵素免疫測定法が、標識酵素としてペルオキシダーゼ、化学発光物質としてルミノール類を用いるものである請求項5記載の検査方法。
【請求項7】
検体が体液成分である請求項1〜6のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項8】
黄色ブドウ球菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌である請求項1〜7のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項9】
検体中の黄色ブドウ球菌を検査するためのキットであって、少なくともマウスIgG1抗プロテインAモノクローナル抗体と標識体を検出する試薬を含有する検査キット。

【国際公開番号】WO2004/048975
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555016(P2004−555016)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014946
【国際出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(390037327)第一化学薬品株式会社 (111)