説明

黄色ブドウ球菌制圧剤

【課題】 院内感染MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は医療現場では、深刻な問題となっている。
【解決の手段】 有機性残渣処理水が、特に黄色ブドウ球菌に対し、強い抗菌活性のあることが、宮崎大学工学部物質環境化学科(林幸男教授教室)の実験によって証明された。
器物、手指の接触感染、飛沫を吸い込む飛沫感染、治療器具(各種カテーテルなど)からの感染などに対し、処理水は、液体での洗滌、噴霧器での散布などに活用できる。薬害なく、廉価な黄色ブドウ球菌制圧剤を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄色ブドウ球菌に対する有機性残渣処理水の活用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、黄色ブドウ球菌など細菌に対しては、それぞれの細菌に対応する抗生物質によって予防、治療を行ってきた。
しかし、1961年英国にて初めて報告され、わが国でも1980年代に報告された抗生物質に耐性をもつMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による院内感染は、深刻な問題となっている。
【0003】
現在、抗MRSA剤として、化合物を有効成分として含有する薬剤(特許文献1参照)また、抗菌性色素剤と抗菌薬及び有機酸を含有した消毒剤(特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許公開2004−339015
【特許文献2】特許公開2005−112801
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗生物質の使用は、すぐまた、その耐性菌を発生させるという新たな問題を引き起こしている。これまで提案されている抗菌剤や消毒剤などは、僅かながら薬害や価格面で難点があった。
本発明は、これらの問題点を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
有機性残渣処理水を活用するのを特徴とする黄色ブドウ球菌制圧剤である。
【発明の効果】
【0007】
有機性残渣処理水は、廃棄物などから得られるものなので、生産コストも低く廉価で提供でき、そのうえ薬害の心配のないのが特長である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この有機性残渣処理水は、無害の液体として、植物などの灌水に利用される中で、水道水や井戸水と違う、植物の生育や防疫などの作用があると見られるようになった。
このような処理水の抗菌作用を、現在、注目されている院内感染MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に活用するものである。
【0009】
以下、宮崎大学工学部物質環境化学科(林幸男教授教室)による「抗菌試験結果」によると、
処理水を使って5種類の微生物(バクテリア、酵母、カビ)を用いて抗菌試験を行った。無菌ろ過した処理水、または精製水に微生物を懸濁し30℃で1日間(2日間)放置した後、寒天培地(プレート)上で培養した。その結果、精製水に比べ処理水に懸濁した微生物の増殖が抑制された。特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus subsp.aureus)では、全く増殖が見られなかった。
このことから、処理水が、特に黄色ブドウ球菌に対して強い抗菌活性を示すことが分かった。
【0010】
実験方法は
▲1▼懸濁液5ULに滅菌水を500UL加え、30℃で保温。
▲2▼懸濁液5ULに有機性残渣の分解処理水(PH5.6滅菌フィルター0.2Um濾過したもの)を500UL加え、30℃で保温。
▲3▼懸濁液5ULに有機性残渣の分解処理水(PH8.6滅菌フィルター0.2Um濾過したもの)を500UL加え、30℃で保温。
いずれも1日後に50ULを採取し、平板培地に塗布し培養した。
その結果
▲1▼では、黄色ブドウ球菌は、全面に撒いたように増殖していた。
▲2▼では、黄色ブドウ球菌は、5個のコロニーが散在していた。
▲3▼では、黄色ブドウ球菌は、2個のコロニーが見られた。
また、2日後に50ULを採取し、平板培地に塗布し培養した。
その結果
▲4▼では、全面に散開した状態で、黄色ブドウ球菌は広がっていた。
▲5▼と▲6▼では、いずれも黄色ブドウ球菌は根絶している。
【0011】
MRSA出現の背景には、医療現場での抗生物質の乱用が指摘されており、感染の予防がますます重視されている。しかし、消毒剤耐性を獲得したMRSAが院内感染の主流を占めているといわれ、より深刻な状態となっている。
この処理水は、黄色ブドウ球菌に対し、強い抗菌活性を示すことが証明された。
【0012】
汚染された器物、手指を介した接触感染、飛沫を吸い込むことで起きる飛沫感染、治療器具(各種カテーテル等)を介した感染などに対し、処理水は、液体での洗滌、噴霧器での散布、加湿器への使用など手広く利用できる、黄色ブドウ球菌制圧剤として提供するものである。
また、特に薬害がなく、黄色ブドウ球菌が引き起こす食中毒の予防剤として給食施設での用途も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】

【図1】黄色ブドウ球菌を精製水と処理水で1日後採取培養した比較
【図2】黄色ブドウ球菌を精製水と処理水で2日後採取培養した比較
【符号の説明】
【0014】
▲1▼精製水で、1日後採取、培養したもの
▲2▼処理水PH5.6で、1日後採取、培養したもの
▲3▼処理水PH8.6で、1日後採取、培養したもの
▲4▼精製水で、2日後採取、培養したもの
▲5▼処理水PH5.6で、2日後採取、培養したもの
▲6▼処理水PH8.6で、2日後採取、培養したもの

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性残渣処理水を活用するのを特徴とする黄色ブドウ球菌制圧剤

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−328035(P2006−328035A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178495(P2005−178495)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(504401857)
【Fターム(参考)】