説明

黒液濃縮方法及び黒液濃縮装置

【課題】黒液中の薬品(苛性ソーダ)の回収効率の向上を図る
【解決手段】濃縮前の黒液(希黒液)にボイラで集塵した回収灰(芒硝)を混合した後に、加熱・濃縮することとした。このように比較的粘性の低い希黒液に回収灰を混合することで、回収灰を黒液中に万遍なく行き渡らせることができる。これにより、黒液中で芒硝が結合して岩塩状となることを防止することができるため、芒硝の燃焼効率が高められる。また、ボイラの黒液噴霧ノズルの詰まりが回避され、黒液をボイラ内に均一に噴霧することができ、黒液の燃焼効率が向上し、黒液中の薬品の回収効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプの製造工程で生じる廃液(希黒液)を加熱濃縮するための方法及び装置、さらには濃縮した黒液を燃焼して黒液中に含まれる苛性ソーダを回収するソーダ回収ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
パルプの製造工程において、木材チップからパルプを抽出すると、樹脂や薬品等を含む廃液(黒液)が生じる。この黒液をそのまま外部へ排出すると環境汚染につながると共に、黒液中の薬品が無駄となる。近年では、黒液をボイラで燃焼して黒液中に含まれる苛性ソーダ等の薬品を回収・再利用することにより、環境汚染を防止、及び薬品の有効利用が図られている。
【0003】
例えば、特許文献1の従来例(同文献の図7)に示されているソーダ回収ボイラによるソーダ回収工程を、図5を用いて以下に示す。
(1)木材チップと薬品(苛性ソーダ等)とを蒸解槽11内で混合して蒸解した後、パルプ洗浄装置12でパルプを抽出する。
(2)前記工程で生じた廃液(希黒液)を黒液濃縮装置(以下、濃縮器)13に移送し、この濃縮器13内で希黒液を加熱・濃縮する。
(3)濃縮した黒液を混合タンク14に移送し、ここで後述のボイラ15で回収した回収灰(主成分:芒硝(NaSO))を濃縮黒液に混合する。
(4)この回収灰と濃縮黒液との混合液をボイラ15で燃焼することで、緑液(主成分:炭酸ナトリウム(NaCO))が得られる。このとき、ボイラ中に飛散した灰(アシュ)を灰回収装置16で集塵し、この回収灰を上記の工程(3)の希黒液に混合して再びボイラで燃焼させる。これにより、回収灰中の芒硝が再び燃焼して炭酸ナトリウムが生成され、薬品を無駄なく回収することができる。
(5)上記工程で得られた緑液を苛性化槽17に移送して白液(苛性ソーダ)を生成し、工程(1)に再利用する。
【0004】
上記工程(2)に用いられる濃縮器として、例えば特許文献2の図4には、内部に複数の熱交換プレートを有し、この濃縮器内部で黒液を熱交換プレートと接触させることにより、黒液を加熱・濃縮するものが示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−12973号公報
【特許文献2】特開平5−9885号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の工程(3)のように、濃縮した黒液にボイラで回収した粉末状の回収灰(芒硝)を混合すると、黒液の粘度が極めて高いために回収灰を黒液中に均一に行き渡らせることができない。これにより、芒硝が結合して岩塩状となるため、芒硝がボイラで燃焼されにくくなり、炭酸ナトリウムとして回収できる割合が低下する。また、岩塩状の芒硝がボイラの黒液噴霧ノズルに詰まり、黒液をボイラ内に均一に噴霧できなくなる恐れがある。これにより、黒液の燃焼効率が低下し、やはり炭酸ナトリウムの回収割合の低下を招く。
【0007】
本発明の課題は、黒液中の薬品の回収効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明は、パルプ製造工程で生じた黒液を濃縮するための方法であって、黒液に回収ボイラで集塵した回収灰を予備混合し、この混合黒液を加熱して濃縮することを特徴とする。
【0009】
このように本発明の黒液濃縮方法では、比較的粘性の低い濃縮前の黒液(希黒液)にボイラで集塵した回収灰(芒硝)を予備混合することで、回収灰を黒液中に万遍なく行き渡らせることができる。これにより、黒液中で芒硝が結合して岩塩状となることを防止することができるため、芒硝の燃焼効率が高められる。また、ボイラの黒液噴霧ノズルの詰まりが回避され、黒液をボイラ内に均一に噴霧することができ、黒液の燃焼効率が向上する。以上より、黒液中の薬品の回収効率が向上する。
【0010】
上記のように、希黒液に回収灰を予備混合すると、回収灰中の芒硝が希黒液中の水分を結晶水として取り込んで結晶成長するため、希黒液の粘度が大幅に増大する。このように黒液の粘度が高められることにより、黒液の熱伝導率が低下する上、黒液を加熱するための加熱部表面にスケールが付着しやすくなる。また、結晶化した芒硝がボイラの黒液噴霧ノズルを詰まらせ、黒液の燃焼効率を低下させる恐れがある。これらの不具合が生じることにより、従来では濃縮前の希黒液に回収灰を混合する手法が採られることはなかった。
【0011】
この点に鑑み、本発明では、内部に黒液を貯留する濃縮缶と、濃縮缶に対して回転可能に取付けられた回転軸と、この回転軸に取り付けられ、前記黒液を加熱するための加熱部とを備えた黒液濃縮装置で混合黒液の加熱濃縮を行う。
【0012】
このように、加熱部を回転させながら黒液を加熱することにより、黒液に対する加熱部の線速度が高められるため、伝熱効率を大幅に向上させることができる。さらに、この回転軸に、外径方向へ突出した攪拌部を設けると、この攪拌部で黒液を攪拌しながら加熱することができる。これにより、黒液に対する加熱部の線速度がより一層高められ、伝熱効率の更なる向上が図られると共に、攪拌部により黒液に混合された回収灰が微粒子化され、芒硝の結晶成長を確実に防止することができる。また、加熱部が回転することにより、加熱部に付着しようとするスケールを遠心力ではじき飛ばすことができる。以上より、この黒液濃縮装置によれば、超高粘度の黒液であっても高濃度に濃縮することが可能となる。
【0013】
この方法による黒液の濃縮は、例えば、濃縮した黒液を黒液濃縮装置から連続的に排出することにより行われる。これによると、黒液濃縮装置への混合黒液の供給、黒液の濃縮、及び濃縮した黒液の排出を連続的に行うことができるため、作業効率の向上が図られる。あるいは、濃縮した黒液を黒液濃縮装置から回分的に排出することにより行うこともできる。これによると、一旦、濃縮装置内の黒液を全て排出して空にして、濃縮装置の内部に希黒液を供給することができるため、この希黒液で装置の内部を洗浄し、内壁等に付着したスケールを除去することができる。
【0014】
上記の黒液濃縮装置によると、超高粘度の黒液でも加熱することが可能であるため、黒液を沸点以上に高温化して粘度を低下させる必要はない。従って、濃縮器内を減圧した状態(例えば0.0845MPa、沸点95℃)で運転することができる。これに対し、上述の特許文献2のように濃縮器内で黒液を流通させる方法では、粘度を下げるために黒液をできるだけ高温に加熱することを要するため、濃縮器内を高圧状態(例えば0.146MPa、沸点110℃)にすることが必須となる。しかし、高圧状態を維持するためには装置が大型化すると共にコスト高を招く。また、昇圧により沸点以上まで加熱した黒液を濃縮器の排出口から排出すると、黒液中の水分が爆発的に気化膨張するため、作業に危険性を伴うと共に、この蒸気(フラッシュベーパー)により周辺設備の汚染や劣化等を招く恐れがある。このようにして、黒液を大気圧以下の減圧状態で80%以上の濃度まで黒液を濃縮した事例は世界的にも前例がなく、本発明が始めて成し得たことである。
【0015】
ボイラで回収した回収灰と黒液とを予備混合して混合黒液を生成する混合タンクと、該混合黒液を加熱濃縮する上記の黒液濃縮装置と、黒液濃縮装置で濃縮した黒液を燃焼するボイラとを備えたソーダ回収ボイラによると、黒液の燃焼効率を高めることができるため、苛性ソーダを効率よく回収することができる。また、黒液が高濃度に濃縮されることでボイラにおける黒液の燃焼温度が高められ、この熱を利用した発電プラントの発電効率が高められる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の黒液濃縮方法によると、黒液中に回収灰(芒硝)を万遍なく行き渡らせることができるため、回収灰及び黒液の燃焼効率を高め、薬品の回収効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るソーダ回収ボイラの構成を示す工程図である。このソーダ回収ボイラは、図5で示す従来のソーダ回収ボイラでは黒液濃縮装置(濃縮器13)とボイラ15との間に設けられていた混合タンク14を、パルプ洗浄装置12と濃縮器13との間に設けたことを特徴とする。尚、図1に示すソーダ回収ボイラのその他の構成は、図5に示す従来品と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
図2に、濃縮器13の断面図を概略的に示す。この濃縮器13は、内部に黒液を貯留する濃縮缶131と、濃縮缶131の内部で回転可能に設けられた回転軸132と、回転軸132に取付けられた加熱部133と、回転軸に外径方向へ突出して設けられた攪拌部134とを主に備える。
【0020】
濃縮缶131は、内部に黒液を貯留するための密閉空間を有する。濃縮缶131の形状は特に限定されず、例えば図2に示すような円筒状、あるいは球状に形成することができる。濃縮缶131には、混合タンク14で混合された希黒液と回収灰との混合液(以下、混合黒液と称す)を供給する黒液供給口131aと、濃縮後の黒液(以下、濃縮黒液と称す)を排出する黒液排出口131bと、混合黒液の濃縮で生じる蒸気を排出する蒸気排出口131cと、蒸気中のミストを缶内に戻すミスト還流口131dとが設けられる。
【0021】
濃縮缶131に設けられる黒液供給口131aの位置は、加熱時間の延長及び槽内における流体フローの均一化を図るため、内部に貯留した黒液の液面より上、且つ黒液排出口131bよりも上となることが好ましい。また、黒液供給口131aからの混合黒液の供給方法は、槽内における加熱部133の回転を阻害しないように、黒液を濃縮缶131の内壁に当てて加熱部133の回転の接線方向に合流する供給であることが好ましい。黒液排出口131bは、水頭圧分の温度上昇を得るため、及び黒液内の不純物を排出しやすくするため、濃縮缶131の下部に設けることが好ましい。濃縮缶131内の黒液は、濃縮缶131内を満たさずに空間(ベーパーゾーン135)を残して注入する必要がある。このベーパーゾーン135内に充満した蒸気中のミストが重力により沈降し、再び液体黒液中に還元されることで、薬品の回収効率の向上が図られる。尚、濃縮缶131の内部は、減圧状態(ほぼ真空)に維持されている。
【0022】
回転軸132は、濃縮缶131内に対して回転可能に、且つ缶内の密閉性を損なわないように、濃縮缶131の上壁面を内外に貫通した状態で取付けられている。この回転軸132に、加熱部133及び攪拌部134が取付けられている。本実施形態の加熱部133は、回転軸132を中心とした螺旋コイル状に設けられ、より詳しくは、位相が180°異なる同一径の2つの大径側コイル状加熱部と、位相が180°異なる同一径の2つの小径側コイル状加熱部の、合計4つのコイル状加熱部が設けられる。濃縮缶131の上部には、回転軸132及び加熱部133を回転駆動するためのモータ136が設けられる。回転軸132及び加熱部133は、内部を加熱用媒体(例えば水蒸気)が循環する中空管で構成され、この加熱用媒体を介して黒液に熱伝達し、黒液の加熱濃縮が行われる。具体的には、濃縮器13の外部に設けられた加熱循環装置(図示せず)から供給管路21を介して加熱用媒体が回転軸132を介して加熱部133に供給される。この加熱部133の壁面を介して、加熱用媒体と黒液との間で熱交換が行われる。上記のように、加熱部133が4つのコイル状加熱部で構 成されているため、回転軸132から流入した加熱用媒体が4つに分かれて流動するため、各コイル状加熱部における流速を均一にすることができる。その後、温度が低下した加熱用媒体が、回転軸132を通って槽外に排出され、排出管路22を介してドレン回収装置に送られる。尚、コイル状加熱部の設置数は上記に限らず、さらに位相の異なるものを加えてもよい。あるいは、さらに径の異なるものを加えてもよい。また、加熱部133はこれに限らず、例えば加熱部133自身が発熱するものであってもよい。
【0023】
また、本実施形態の攪拌部134は、軸方向に離隔した2箇所に設けられ、回転軸132の外周の円周方向等間隔の複数箇所に設けた攪拌羽根で構成されている。攪拌部134はこれに限らず、回転軸132と共に回転して黒液を攪拌可能である構成であればよい。
【0024】
上記ように、本発明の黒液濃縮方法によると、ボイラで回収した回収灰を濃縮前の希黒液に予備混合するため、黒液中に万遍なく回収灰を行き渡らせることができる。これにより、回収灰中の芒硝の結合を防止し、芒硝の燃焼効率を向上させることができると共に、ボイラの黒液噴霧ノズルの詰まりを防止でき、ボイラへ黒液を均一に噴霧することができる。以上より、薬品(苛性ソーダ)の回収効率を向上させることができる。尚、上記のように希黒液と回収灰とを万遍なく混合するために、希黒液の濃度は60%以下、望ましくは55%以下、より望ましくは50%以下であることが好ましい。また、希黒液の濃度が低すぎると、濃縮器13による加熱濃縮に時間とコストがかかるため、希黒液の濃度は40%以上、望ましくは45%以上であることが好ましい。
【0025】
このように希黒液に回収灰を加えることにより、回収灰中の芒硝が黒液中の水分を結晶水として取り込んで結晶成長する。この芒硝の塊状の結晶物がバーナーのノズルの閉塞事故を引き起こす恐れがあるため、従来法ではかかる結晶体を含む黒液を加熱濃縮することは不可能とされていた。
【0026】
そこで、本発明の黒液濃縮装置(濃縮器13)を用いた濃縮方法では、モータ136によって回転軸132及び加熱部133を一体に回転させながら黒液の加熱濃縮を行う。これにより、加熱部133の黒液に対する線速度を大きくすることができるため、黒液の伝熱効率を高めることができる。さらに、この回転軸132に外径方向へ突出した攪拌部134が設けられていることにより、この攪拌部134で黒液を攪拌しながら加熱することができるため、黒液に対する加熱部133の線速度がより一層高められ、伝熱効率の更なる向上が図られる。また、攪拌部134により黒液に混合された回収灰が微細化され、芒硝の結晶成長を確実に防止することができる。また、加熱部133が回転することにより、加熱部133の表面に付着しようとするスケールが遠心力で弾き飛ばされるため、スケールの付着を防止することができる。以上より、このような回転式の濃縮器13によれば、回収灰を混合した超高粘度の黒液を加熱し、濃縮することが可能となる。本発明者らの検証によると、本発明の濃縮方法により、黒液を最高82%の濃度まで濃縮することができることが判明した。このように黒液を高濃度に濃縮、すなわち黒液中の水分を低減することで、ボイラにおける黒液の燃焼効率が向上し、燃焼時の発熱量が増大し、この熱を利用する発電プラントの発電効率を向上させることができる。さらに、黒液の燃焼効率の向上により排ガス量が低減されるため、周辺環境の汚染を抑えることが可能となる。水の蒸発熱による燃焼温度の低下を抑えると共に、燃焼で蒸発する水分も低減されるため、周辺設備の劣化を防ぐことができる。
【0027】
また、本発明に係る黒液濃縮装置によると、超高粘度の黒液でも加熱することが可能であるため、黒液を沸点以上に高温化する必要はない。従って、濃縮器内を比較的低圧にした状態で運転することができるため、装置のコンパクト化及び運転の低コスト化が図られると共に、フラッシュベーパーによる周辺設備の汚染等を防止することができる。
【0028】
ところで、ソーダ回収ボイラでは、多量の排水及び排ガスが生じる。具体的には、濃縮器で黒液を加熱することにより黒液中から蒸発した蒸気A、及び、濃縮器の加熱部を循環する加熱用媒体として使用される蒸気Bが主に排出される(図2参照)。これらの蒸気をそのまま外部へ排出すると、周辺環境を汚染すると共に、水等の資源の消費量が甚大となる。従って、これらの蒸気を低減あるいは再利用することで、環境汚染の抑止や資源消費量の低減を図ることが求められている。本実施形態にかかるソーダ回収装置では、以下のような対策を講じることで、これらを実現している。
【0029】
(1)蒸気Aに関する対策
(a)ミストセパレータ
濃縮器で黒液から生じた蒸気Aは、蒸気排出口131cから排出され、排出管を通ってミストセパレータ31に送られる。ミストセパレータで分離したミスト(蒸気中に含まれた薬品)は配管を通ってミスト還流口131dから濃縮器内へ戻される。これにより、蒸気中に含まれた薬品がソーダ回収装置外へ排出されることはなく、周辺環境の汚染を防止できると共に、薬品を無駄なく再利用することができる。
(b)ベーパーコンデンサー
ミストセパレータ31でミストを除去した蒸気はベーパーコンデンサー32に送られ、蒸気中に含まれる水分が凝縮される。この凝縮水を装置内の他の設備、例えば脱臭設備等に使用することで、水分排出量を抑えると共に、回収した水を装置内で循環使用することができる。
(c)無排水型真空排気装置
前記工程を経た蒸気は、真空排気装置33に送られる。この真空排気装置33の機構を図3に示す。ベーパーコンデンサー32から送られた蒸気を、ガスエゼクター40で昇圧する。この昇圧により、真空ポンプ41におけるシール水の水温に関わらず一定の真空系を形成することができる。その後、蒸気を真空ポンプ41に送り、真空ポンプ41で減圧した蒸気を脱臭スクラバー42に送る。この脱臭スクラバー42は、蒸気内に混入した臭化物を除去することを目的とし、スクラバー42内で上昇させた蒸気に冷却水を噴霧することにより行われる。この冷却水は、スクラバーの下部に溜まり、スクラバー42からポンプ43でクーラー44に送られ、再びスクラバー42の噴霧に使用される。また、クーラー44で冷却された水の一部は、真空ポンプ41に送られる。このように、スクラバー42及び真空ポンプ41で使用される水をクーラー44で間接冷却することにより、冷却水が汚染されることがないため、水を循環使用することができる。本発明では、図3に矢印Cで示すように、スクラバー42から排気される蒸気をガスエゼクター40に還流して使用ことにより、臭気を帯びた排気量を低減することができる。以上のように、この真空排気装置は、装置から排出される水分がほとんどなく、無排水型真空排気装置として装置内で循環使用することを可能としている。
【0030】
(2)蒸気Bに関する対策
図2で示すように、濃縮器13で使用された加熱用媒体としての蒸気Bは、排出管路を経て濃縮器13の外部へ排出される。このとき、蒸気が冷却されるため、蒸気は微細な水滴を含むドレンとして排出される。このドレンをドレン回収装置23で回収し、全てボイラ給水槽(図示省略)に還元することにより、蒸気Bを100%再利用している。
【0031】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、図4に示すソーダ回収ボイラでは、濃縮器13とボイラ15との間に加熱器18を備えている。これにより、濃縮器13から送られた濃縮黒液をさらに加熱することができるため、黒液の粘度を低減し、ボイラ15内への供給をスムーズに行うことができる。この加熱器18は、例えば濃縮器13と同様の構成を有するものを使用することができる(図示省略)。このとき、加熱器18の内部には、ベーパーゾーンを確保する必要は無く、内部を黒液で満たした状態で加熱すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る黒液濃縮装置を組み込んだソーダ回収ボイラの構成を示す説明図である。
【図2】黒液濃縮装置を示す断面図である。
【図3】真空排気装置の構成を示す説明図である。
【図4】ソーダ回収ボイラの他の構成を示す説明図である。
【図5】従来のソーダ回収ボイラの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
11 蒸解槽
12 パルプ洗浄装置
13 濃縮器(黒液濃縮装置)
131 濃縮缶
132 回転軸
133 加熱部
134 攪拌部
14 混合タンク
15 ボイラ
16 灰回収装置
17 苛性化槽
23 ドレン回収装置
31 ミストセパレータ
32 ベーパーコンデンサー
33 真空排気装置
41 真空ポンプ
42 脱臭スクラバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ製造工程で生じた黒液を濃縮するための方法であって、
黒液に回収ボイラで集塵した回収灰を予備混合した後、この混合黒液を加熱して濃縮することを特徴とする黒液濃縮方法。
【請求項2】
前記黒液の加熱濃縮を、内部に黒液を貯留する濃縮缶と、濃縮缶に対して回転可能に取付けられた回転軸と、この回転軸に取り付けられ、前記黒液を加熱するための加熱部とを備えた黒液濃縮装置で行うことを特徴とする請求項1記載の黒液濃縮方法。
【請求項3】
濃縮した黒液を黒液濃縮装置から連続的又は回分的に排出することを特徴とする請求項1又は2記載の黒液濃縮方法。
【請求項4】
前記黒液の加熱濃縮を、減圧環境下で行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の黒液濃縮方法。
【請求項5】
内部に黒液を貯留する濃縮缶と、黒液を加熱するための加熱部とを備えた黒液濃縮装置において、
濃縮缶に対して回転可能に取付けられた回転軸を設け、この回転軸に前記加熱部を取付けたことを特徴とする黒液濃縮装置。
【請求項6】
前記回転軸に、外径方向へ突出した攪拌部を設けたことを特徴とする請求項5記載の黒液濃縮装置。
【請求項7】
ボイラで回収した回収灰と黒液とを予備混合して混合黒液を生成する混合タンクと、該混合黒液を加熱濃縮する請求項5又は6記載の黒液濃縮装置と、黒液濃縮装置で濃縮した黒液を燃焼するボイラとを備えたソーダ回収ボイラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate