説明

黒色樹脂組成物及びブラックマトリクス

【課題】本発明は、遮光性、電気特性、および近赤外領域の透過率にも優れたブラックマトリクス、特に薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板に用いるブラックマトリクス、該ブラックマトリクスを作製するための流動性、安定性に優れた黒色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】前記課題は、遮光性黒色顔料と、顔料分散剤と、樹脂と、溶剤とからなる黒色樹脂組成物であって、該遮光性黒色顔料が、平均一次粒子径が50nm以下であり、かつ顔料粒子の縦横比が1:1〜1:2であるペリレン系黒色顔料であることを特徴とする黒色樹脂組成物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられるブラックマトリクス、及びそれを作製するための黒色樹脂組成物に関し、特に薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板に用いるブラックマトリクスに関する。また、該ブラックマトリクスを具備する薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタの赤、緑、青のフィルタセグメントの隙間部分には、コントラスト向上を目的として、遮光性を有するブラックマトリクス(以下、単にBMと記す場合がある)と呼ばれる格子状の黒色パターンを形成するのが一般的である。
ブラックマトリクスには、液晶ディスプレイの画像品質を優れたものとするために、遮光性に優れている事が要求される。中でも近年、より高精細、高輝度化に対応するために、従来のようなカラーフィルタ基板上にブラックマトリクスを形成する方法から、薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板上にブラックマトリクスを形成する、BOA(Black Matrix on Array)方式の検討がなされている。このBOA方式では、素子との位置あわせのためのこれまでのような張り合わせ工程が必要なくなり、ピクセル口径比(開口率)が大幅に増大でき、製造工程の短縮化が可能であることより、表示品位の向上、コストの削減が可能なことから、カラーフィルタ基板上に形成されるBMより優れた点が多い。
【0003】
しかし、アレイ基板側にBMを形成しようとする場合、BM自体が直接液晶の駆動電界にさらされることから、BM自体の誘電率が高い場合は液晶ディスプレイの表示不良を引き起こす。また、BM形成時に行うマスクアライメントは、赤外線カメラを用いて行うため、一定水準の近赤外領域の透過率も必要である。そのため、従来BM材料として主に用いられていたカーボンブラックでは、高い誘電率を示し絶縁性に乏しいだけでなく、近赤外領域における透過率も低いためにアライメントを行うことが困難であり、BOA方式の液晶パネルに用いることは困難である。
【0004】
このような課題を解決する方法としては、カーボンブラックと少なくとも1種の有機顔料を組み合わせる方法(特許文献1参照)、カーボンブラックを用いず、有機顔料の組み合わせのみで遮光性を持たせる方法(特許文献2、3参照)、カーボンブラックと黒色有機系顔料としてペリレン系黒色顔料を用いる方法(特許文献4、5参照)等が開示されてはいるが、ブラックマトリクスの部材に由来する遮光性、電気特性、およびマスクアライメント作業のための近赤外領域の十分な透過率のすべてを満たすことはできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−215150号公報
【特許文献2】特開2009−69822号公報
【特許文献3】特開2009−282251号公報
【特許文献4】特開平6−289602号公報
【特許文献5】特開平4−190362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、遮光性、電気特性、および近赤外領域の透過率にも優れたブラックマトリクス、特に薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板に用いるブラックマトリクス、該ブラックマトリクスを作製するための流動性、安定性に優れた黒色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、遮光性黒色顔料と、顔料分散剤と、樹脂と、溶剤とを含む黒色樹脂組成物であって、該遮光性黒色顔料が、平均一次粒子径が50nm以下であり、かつ顔料粒子の縦横比が1:1〜1:2であるペリレン系黒色顔料であることを特徴とする黒色樹脂組成物により解決される。
【0008】
また本発明は、ペリレン系黒色顔料の平均一次粒子径が、20〜45nmであることを特徴とする前記黒色樹脂組成物に関する。
【0009】
また本発明は、顔料分散剤が、有機顔料の母体骨格と塩基性置換基を有する顔料誘導体であることを特徴とする前記黒色樹脂組成物に関する。
【0010】
また本発明は、有機顔料の母体骨格が、ジオキサジン系顔料またはジケトピロロピロール系顔料のいずれかであることを特徴とする前記黒色樹脂組成物に関する。
【0011】
また本発明は、顔料分散剤が、さらに樹脂型分散剤を含むことを特徴とする前記黒色樹脂組成物に関する。
【0012】
また本発明は、さらにエチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含むことを特徴とする前記黒色樹脂組成物に関する。
【0013】
また本発明は、前記黒色樹脂組成物から形成されてなるブラックマトリクスに関する。
【0014】
また本発明は、乾燥膜厚1.0μmにおける比誘電率が、4.5以下であることを特徴とする前記ブラックマトリクスに関する。
【0015】
また本発明は、乾燥膜厚1.0μmにおける波長1000nmの透過率が、60%以上99%未満であることを特徴とする前記ブラックマトリクスに関する。
【0016】
また本発明は、乾燥膜厚1.0μmにおける光学濃度が、1.30以上であることを特徴とする前記ブラックマトリクスに関する。
【0017】
また本発明は、前記ブラックマトリクスを具備することを特徴とする、薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の黒色樹脂組成物を用いて形成したブラックマトリクスは、遮光性に優れているために、カラー液晶表示装置の表示コントラストに優れ、さらに低誘電率特性であるため液晶の配向乱れやTFT基板上に形成される電極間の導通といったブラックマトリクスの電気特性起因の不具合を生じにくく、かつ近赤外領域の透過率に優れていることにより、マスクアライメント作業も可能であり、薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板にも適している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の黒色樹脂組成物は、遮光性黒色顔料と、顔料分散剤と、樹脂と、溶剤とからなる黒色樹脂組成物であって、該遮光性黒色顔料が、平均一次粒子径が50nm以下、好ましくは20〜45nmであり、かつ顔料粒子の縦横比が1:1〜1:2であるペリレン系黒色顔料であることを特徴とする。
【0020】
<遮光性黒色顔料>
本発明における遮光性黒色顔料は、平均一次粒子径が50nm以下であり、縦横比が1:1〜1:2の結晶粒子であるペリレン系黒色顔料である。
平均一次粒子径は5〜50nmが好ましく、より好ましくは20〜45nmである。平均一次粒子径が5nm未満の場合は顔料分散が難しくなる。また、平均一次粒子径が50nmを超えると、遮光性が低下するため好ましくない。すなわち平均一次粒子径が大きくなることで粒子のパッキングが疎になり、隙間が生じることで隠ぺい性が低下する。これに対し、平均一次粒子径を50nm以下に抑えることにより粒子のパッキングが密になり、遮光性が高まる。さらに、縦横比が1:1〜1:2の範囲を超える、例えば針状のような結晶の場合にも、粒子のパッキングが疎になり、隙間が生じることで隠ぺい性が低下するため好ましくない。好ましくは、縦横比が1:1〜1:1.5の範囲に含まれる球状の結晶を呈する場合で、各々の結晶間距離がより均一化されるために隙間が生じにくくなり、隠ぺい性が高まる。
【0021】
黒色樹脂組成物中のペリレン系黒色顔料の含有量は、黒色樹脂組成物の全固形分100重量%中、20〜70重量%であることが好ましく、30〜60重量%であることがより好ましい。ペリレン系黒色顔料の含有量が20重量%未満の場合は充分な遮光性が得られ難く、70重量%より多い場合は分散安定性が得られ難い。
【0022】
<顔料分散剤>
本発明の黒色樹脂組成物は、色素誘導体、樹脂型分散剤、界面活性剤等の顔料分散剤を含むものである。顔料分散剤は、ペリレン系黒色顔料の分散に優れ、分散後のペリレン系黒色顔料の再凝集を防止する効果が大きいものである。なかでも顔料誘導体を用いた場合には、電気特性がよりよくなるために好ましく、さらに樹脂型分散剤を含むことにより、さらなる電気特性の向上と、流動性および安定性との両立のために好ましいものである。
【0023】
(色素誘導体)
色素誘導体としては、有機顔料、アントラキノン、アクリドンまたはトリアジンに、塩基性置換基、酸性置換基、または置換基を有していても良いフタルイミドメチル基を導入した化合物があげられる。
その構造は、下記一般式(1)で示される化合物である。
P−Ln 一般式(1)
[ただし、
P:有機顔料残基、アントラキノン残基、アクリドン残基またはトリアジン残基
L:塩基性置換基、酸性置換基、または置換基を有していても良いフタルイミドメチル基
n:1〜4の整数である。]
Pの有機顔料残基を構成する有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料;アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料;銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料;キナクリドン系顔料;ジオキサジン系顔料;ペリノン系顔料;ペリレン系顔料;チオインジゴ系顔料;イソインドリン系顔料;イソインドリノン系顔料;キノフタロン系顔料;スレン系顔料;金属錯体系顔料等が挙げられる。
本発明においては、母体骨格が有機顔料である顔料誘導体が好ましく、なかでもジオキサジン系顔料およびジケトピロロピロール系顔料が、低誘電正接化の観点から好ましく使用できる。
【0024】
一般式(1)においてLは塩基性置換基である塩基性誘導体が好ましく使用できる。
なかでも有機顔料の母体骨格と塩基性置換基を有する顔料誘導体は、ペリレン系黒色顔料との親和性を付与し、黒色樹脂組成物中の分子配列を均一化し、電荷の偏りを低減するために電気特性改善に寄与するために好ましい。
また、好ましくは、Lは一般式(2)、(3)、及び(4)で示される群から選ばれる置換基である。
【0025】
一般式(2):
【化1】

【0026】
一般式(3):
【化2】



【0027】
一般式(4):
【化3】


[ただし、一般式(2)〜(4)中、
Xは、−SO−、−CO−、−CH−、−CHNHCOCH−、−CHNHSOCH−、又は直接結合であり、
Yは、−NH−、−O−、又は直接結合であり、
nは、1〜10の整数であり、
は、−NH−、−NR58−Z−NR59−、又は直接結合であり、
58、及びR59は、それぞれ独立に、水素結合、置換基を有しても良い炭素数1〜36のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数2〜36のアルケニル基、又は置換基を有しても良いフェニル基であり、
Zは、置換基を有しても良いアルキレン基、又は置換基を有しても良いアリーレン基であり、
50、R51は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜30のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数2〜30のアルケニル基、又はR50とR51とが一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む、置換基を有しても良い複素環であり、
52、R53、R54、及びR55は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有しても良い炭素数6〜20のアリーレン基であり、
56は、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数2〜20のアルケニル基であり、
57は、上記一般式(2)で示される置換基、又は上記一般式(3)で示される置換基であり、
Qは、水酸基、アルコキシル基、上記一般式(2)で示される置換基、又は上記一般式(3)で示される置換基である。]
【0028】
一般式(2)〜(4)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジ ン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニペコチン酸メチル、イソニペコチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエ チルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0029】
本発明の塩基性置換基を有する顔料誘導体、アントラキノン誘導体、及びアクリドン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンに式(5)〜(8)で示される置換基を導入した後、上記置換基と反応して式(2)〜(4)で示される置換基を形成する上記アミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミン、又は4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
【0030】
式(5): −SOCl
式(6): −COCl
式(7): −CHNHCOCHCl
式(8): −CHCl
【0031】
式(5)〜(8)の置換基と上記アミン成分との反応時、式(5)〜(8)の置換基の一部が加水分解して、塩素が水酸基に置換したものが混在していてもよい。その場合、式(5)、及び式(6)は、それぞれ、スルホン酸基、及びカルボン酸基となるが、何れも遊離酸のままでもよく、又、1〜3価の金属又は上記のモノアミンとの塩であってもよい。
【0032】
又、有機色素がアゾ系色素である場合は、一般式(2)〜(4)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
【0033】
色素誘導体の配合量は、分散性向上の点から、ペリレン系黒色顔料100重量部に対し、好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上、最も好ましくは3重量部以上である。また、耐熱性、耐光性の観点から、ペリレン系黒色顔料100重量部に対し、好ましくは40重量部以下、最も好ましくは35重量部以下である。
【0034】
(樹脂型分散剤)
樹脂型分散剤は、ペリレン系黒色顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、ペリレン系黒色顔料担体と相溶性のある部位とを有し、ペリレン系黒色顔料に吸着してペリレン系黒色顔料のペリレン系黒色顔料担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型分散剤は前記色素誘導体と同様に、ペリレン系黒色顔料および色素誘導体との親和性を付与し、黒色樹脂組成物中の分子配列をより均一化し、電荷の偏りをさらに低減するために電気特性向上にも寄与することから、好ましいものである。
【0035】
特に、ペリレン系黒色顔料と、塩基性置換基を有する顔料誘導体と、酸性樹脂型分散剤とを用いると、流動性と電気特性の両立といった優れた効果を発揮するために好ましい。これは酸性樹脂型分散剤および酸性誘導体が有する塩基性置換基間の相互作用により電荷が中和されるためで、結果として局所的な電荷の偏りが抑制されるために電気特性が向上する。
【0036】
樹脂型分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。また、樹脂型分散剤の酸価は電気特性向上および分散安定性の観点から、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは40〜200mgKOH/g、最も好ましくは100〜200mgKOH/gである。
【0037】
市販の樹脂型分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk−101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155またはAnti−Terra−U、203、204、またはBYK−P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon−WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE−3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、チバ・ジャパン社製のEFKA−46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0038】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等のノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物等のカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0039】
樹脂型分散剤、界面活性剤の添加量は、ペリレン系黒色顔料100重量部に対し、好ましくは0.1〜55重量部、さらに好ましくは0.1〜45重量部である。樹脂型分散剤、界面活性剤の配合量が、0.1重量部未満の場合には、添加した効果が得られ難く、配合量が55重量部より多いと、過剰な分散剤により分散に影響を及ぼすことがある。
【0040】
<樹脂>
樹脂は、遮光性黒色顔料を分散するものであって、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
樹脂としては、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において分光透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂であることが好ましい。また、アルカリ現像型着色レジスト材の形態で用いる場合には、酸性基含有エチレン性不飽和化合物を共重合したアルカリ可溶性ビニル系樹脂を用いることが好ましい。また、さらに光感度を向上させるために、エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることもできる。
特に側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることで、レジスト材の安定性が改善され好ましい。
【0041】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、遮光性黒色顔料を好ましく分散させるためには、10,000〜100,000の範囲が好ましく、より好ましくは10,000〜80,000の範囲である。また数平均分子量(Mn)は5,000〜50,000の範囲が好ましく、Mw/Mnの値は10以下であることが好ましい。
【0042】
後述する感光性黒色樹脂組成物として使用する場合には、遮光性黒色顔料の分散性、現像性、及び耐熱性の観点から、顔料吸着基及び現像時のアルカリ可溶基として働くカルボキシル基、顔料担体及び溶剤に対する親和性基として働く脂肪族基及び芳香族基のバランスが、顔料及び造塩化合物の分散性、現像性、さらには耐熱性にとって重要であり、酸価20〜300mgKOH/gの樹脂を用いることが好ましい。酸価が、20mgKOH/g未満では、現像液に対する溶解性が悪く、微細パターン形成するのが困難である。300mgKOH/gを超えると、微細パターンが残らなくなる。
【0043】
樹脂は、成膜性および諸耐性が良好なことから、ペリレン系黒色顔料の全重量100重量部に対し、30重量部以上の量で用いることが好ましく、遮光性黒色顔料濃度が高く、良好な色特性を発現できることから、500重量部以下の量で用いることが好ましい。
【0044】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、およびポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0045】
酸性基含有エチレン性不飽和化合物を共重合したビニル系アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂として具体的には、酸性基を有するアクリル樹脂、α−オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、酸性基を有するアクリル樹脂、およびスチレン/スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂、特に酸性基を有するアクリル樹脂は、耐熱性、透明性が高いため、好適に用いられる。
【0046】
エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としては、たとえば以下に示す(a)や(b)の方法により不飽和エチレン性二重結合を導入した樹脂が挙げられる。
【0047】
[方法(a)]
方法(a)としては、例えば、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、他の1種類以上のエチレン性不飽和化合物とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、不飽和エチレン性二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシル基を付加反応させ、更に、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させ、不飽和エチレン性二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0048】
エポキシ基を有する不飽和エチレン性エチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。次工程の不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0050】
多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。カルボキシル基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解すること等もできる。また、多塩基酸無水物として、不飽和エチレン性二重結合を有する、エトラヒドロ無水フタル酸、又は無水マレイン酸を用いると、更に不飽和エチレン性二重結合を増やすことができる。
【0051】
方法(a)の類似の方法として、例えば、カルボキシル基を有する不飽和エチレン性エチレン性不飽和化合物と、他の1種類以上のエチレン性不飽和化合物とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有する不飽和エチレン性エチレン性不飽和化合物を付加反応させ、不飽和エチレン性二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0052】
[方法(b)]
方法(b)としては、水酸基を有する不飽和エチレン性エチレン性不飽和化合物を使用し、他のカルボキシル基を有する不飽和一塩基酸のエチレン性不飽和化合物や、他のエチレン性不飽和化合物とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有する不飽和エチレン性エチレン性不飽和化合物のイソシアネート基を反応させる方法がある。
【0053】
水酸基を有する不飽和エチレン性エチレン性不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。また、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、(ポリ)γ−バレロラクトン、(ポリ)ε−カプロラクトン、及び/又は(ポリ)12−ヒドロキシステアリン酸等を付加した(ポリ)エステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。塗膜異物抑制の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又はグリセロール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
イソシアネート基を有する不飽和エチレン性エチレン性不飽和化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定することなく、2種類以上併用することもできる。
【0055】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびフェノール樹脂等が挙げられる。
【0056】
<溶剤>
本発明の黒色樹脂組成物には、ペリレン系黒色顔料を充分に顔料担体中に分散、浸透させ、ガラス基板、TFT基板等の基板上に乾燥膜厚が0.2〜10μmとなるように塗布することを容易にするために溶剤を含有させる。
溶剤としては、例えば乳酸エチル、ベンジルアルコール、1,2,3−トリクロロプロパン、1,3−ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4−ジオキサン、2−ヘプタノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、4−ヘプタノン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、n−ブチルアルコール、n−ブチルベンゼン、n−プロピルアセテート、o−キシレン、o−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロトルエン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられる。
【0057】
中でも、本発明の遮光性黒色顔料の分散が良好なことから、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類やシクロヘキサノン等のケトン類を用いることが好ましい。溶剤は、1種を単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。
また溶剤は、黒色樹脂組成物を適正な粘度に調節し、目的とする均一な膜厚を形成できることから、ペリレン系黒色顔料100重量部に対し、800〜4000重量部の量で用いることが好ましい。
【0058】
本発明の黒色樹脂組成物は、さらにエチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を添加し、感光性黒色樹脂組成物として使用することが出来る。
【0059】
<エチレン性不飽和化合物>
エチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和二重結合を1個または2個以上有する化合物であり、モノマー、オリゴマーを用いることができる。モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
エチレン性不飽和化合物の含有量は、黒色樹脂組成物中のペリレン系黒色顔料100重量部に対して、10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部の量で用いることができる。
【0060】
<光重合開始剤>
黒色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化させ、フォトリソグラフィー法によりブラックマトリクスを形成する場合は、光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリルs−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が挙げられる。上記光重合開始剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いられる。
光重合開始剤は、ペリレン系黒色顔料100重量部に対して、好ましくは5〜200重量部、より好ましくは10〜150重量部の量で用いることができる。
【0061】
また、感光性黒色樹脂組成物には、増感剤を含有させてもよい。増感剤としては、例えば、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。上記増感剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いられる。
増感剤は、光重合開始剤100重量部に対して、好ましくは0.1〜60重量部の量で用いることができる。
【0062】
感光性黒色樹脂組成物には、塗工性向上、感度の向上、密着性の向上などを目的として、連鎖移動剤、界面活性剤、シランカップリング剤、他の添加剤などを添加しても良い。
【0063】
<黒色樹脂組成物の製造>
本発明の黒色樹脂組成物は、遮光性黒色顔料と、顔料分散剤と、樹脂と、必要に応じて、溶剤、及び添加剤等を混合して、三本ロールミル、二本ロールミル、ニーダー、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、又はアトライター等で分散することにより、各種分散手段を用いて顔料を微細に樹脂溶剤液中に分散し、製造することができる(顔料分散体)。
【0064】
また、感光性黒色樹脂組成物として用いる場合には、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型黒色樹脂組成物として調製することができる。溶剤現像型あるいはアルカリ現像型黒色樹脂組成物は、前記顔料分散体と、エチレン性不飽和化合物と、光重合開始剤と、必要に応じて、溶剤、その他の顔料分散剤、及び添加剤等を混合して調整することができる。溶剤現像型あるいはアルカリ現像型黒色樹脂組成物は、一般的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は感光性樹脂である樹脂と、エチレン性不飽和化合物と、光重合開始剤と、溶剤とを含有する組成物中に顔料を分散させたものである。
【0065】
光重合開始剤は、黒色樹脂組成物を調製する段階で加えてもよく、調製した黒色樹脂組成物に後から加えてもよい。
【0066】
黒色樹脂組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0067】
<ブラックマトリクス>
本発明のブラックマトリクスは、ガラス等の透明基板および薄膜トランジスタ(TFT)基板上に、本発明の黒色樹脂組成物を塗工した後、フォトリソグラフィー法により形成される。
【0068】
薄膜トランジスタ(TFT)基板上にカラーフィルタセグメントおよび/またはブラックマトリクスを形成することにより、液晶表示パネルの開口率を高め、輝度を向上させることができる。
【0069】
ブラックマトリクスの塗布膜厚は、乾燥後の膜厚として、0.2〜10.0μmの範囲、より好ましくは0.2〜5.0μmであることが好ましい。さらに、塗工性と遮光性のバランス取りが容易な0.5〜2.5μmの範囲であることがより好ましい。塗布膜を乾燥させる際には、減圧乾燥機、コンベクションオーブン、IRオーブン、ホットプレート等を使用してもよい。
【0070】
フォトリソグラフィー法によるブラックマトリクスの形成は、下記の方法で行う。すなわち、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色黒色樹脂組成物として調製した感光性黒色樹脂組成物を、透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2〜10.0μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して活性エネルギー線露光を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するか、もしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去し所望のパターンを有するブラックマトリクスを形成することができる。さらに、感光性黒色樹脂組成物の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。フォトリソグラフィー法によれば、印刷法より精度の高いブラックマトリクスが形成できる。
【0071】
現像に際しては、アルカリ現像液として、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0072】
なお、活性エネルギー線露光感度を上げるために、感光性黒色組成物を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ可溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、組成物塗布面側から活性エネルギー線を照射することもできる。
【0073】
活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、400〜500nmの可視光を使用することができる。組成物塗布面側から照射する電子線の線源には、熱電子放射銃、電界放射銃等を使用することができる。また、紫外線および400〜500nmの可視光の線源(光源)には、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等を使用することができる。具体的には、点光源であること、輝度が安定であることから、超高圧水銀ランプ、キセノン水銀ランプが用いられることが多い。組成物塗布面側から照射する活性エネルギー線量は、5〜1000mJの範囲で適時設定できるが、工程上管理しやすい20〜300mJの範囲であることが好ましい。
【0074】
TFT基板上に遮光層を形成する場合には、まずTFT基板の表面上、あるいは該駆動基板の表面に窒化けい素膜等のパッシベーション膜を形成した基板の表面上に、本発明の黒色樹脂組成物を塗布したのち、プレベークまたは減圧乾燥を行って溶剤を蒸発させ、次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、画素を形成する部分を区画するように遮光層を形成する。
【0075】
また、絶縁性の観点からブラックマトリクスの乾燥膜厚1.0μmあたりの比誘電率が4.5以下であることが好ましい。
【0076】
さらに、赤外線を用いたアライメントを行うために、乾燥膜厚1.0μmのブラックマトリクスにおいて、波長1000nmの透過率が60%以上99%未満であることが好ましい。
【0077】
また、高遮光性の観点から、乾燥膜厚1.0μmのブラックマトリクスにおいて、光学濃度は1.30以上であることが好ましい。光学濃度は、高いほど好ましいが、活性エネルギー線が紫外線、可視光である場合に硬化塗膜が得られにくくなることから、概ね4.5以下が望ましい。
【0078】
<薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板>
薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板は、薄膜トランジスタ(TFT)の基板上に、スピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、たとえばレッド、ブルー、グリーンのカラーフィルタセグメントを形成したのち、本発明のブラックマトリクスを形成することにより作製される。
また、前記薄膜トランジスタ(TFT)の基板上にブラックマトリクスを形成し,その上にカラーフィルタセグメントを形成することもできる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。
【0080】
顔料の平均一次粒子径および顔料粒子の縦横比は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定した。具体的には、個々の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその顔料粒子の粒径とした。次に、100個以上の顔料粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を、求めた粒径の立方体と近似して求め、体積平均粒径を平均一次粒子径とした。また、前述の通り、個々の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測した際の、短軸径および長軸径の平均値の比率について、短軸径を1としたときの縦横比を求めた。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)用いた。
【0081】
また、アクリル樹脂の重合平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0082】
まず、実施例および比較例に用いたアクリル樹脂溶液の調製、ペリレン系黒色顔料の製造方法と物性値、および顔料誘導体の構造式について説明する。
【0083】
[アクリル樹脂溶液の調製]
反応容器にシクロヘキサノン800.0部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら100℃に加熱して、同温度でメタクリル酸60.0部、メタクリル酸ブチル65.0部、メタクリル酸メチル65.0部、スチレン60.0部、及びアゾビスイソブチロニトリル10.0部の混合物を1時間かけて滴下し、更に100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル2.0部をシクロヘキサノン50.0部で溶解させたものを添加し、更に100℃で1時間反応を続けて樹脂溶液を合成した。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2.0gをサンプリングして180℃で20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20%となるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製した。尚、アクリル樹脂の重量平均分子量は40000であった。
【0084】
[ペリレン系黒色顔料の物性値]
【表1】

【0085】
ペリレン系黒色顔料1
ペリレン系黒色顔料BASF社製「Lumogen Black FK4280」
ペリレン系黒色顔料2
ペリレン系黒色顔料C.I.Pigment Black 31(BASF社製「Paliogen Black S0084」)
ペリレン系黒色顔料3
ペリレン系黒色顔料C.I.Pigment Black 32(BASF社製「Pペリペリレン系黒色顔料4
ペリレン系黒色顔料BASF社製「Lumogen Black FK4281」
【0086】
ペリレン系黒色顔料5
ペリレン系黒色顔料C.I.Pigment Black 31(BASF社製「Paliogen Black S0084」))を、500部、塩化ナトリウム2500部、及びジエチレングリコール:250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で5時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、ペリレン系黒色顔料5を得た。
【0087】
ペリレン系黒色顔料6
ペリレン系黒色顔料(BASF社製「Lumogen Black FK4281」)を、500部、塩化ナトリウム2500部、及びジエチレングリコール:250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で5時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、ペリレン系黒色顔料6を得た。
【0088】
ペリレン系黒色顔料7
ペリレン系黒色顔料(BASF社製「Lumogen Black FK4281」)を、500部、塩化ナトリウム2500部、及びジエチレングリコール:250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、40℃で12時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、ペリレン系黒色顔料7を得た。
【0089】
ペリレン系黒色顔料8
ペリレン系黒色顔料C.I.Pigment Black 32(BASF社製「Paliogen Black L0086」)を、500部、塩化ナトリウム2500部、及びジエチレングリコール:250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で12時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、表1のペリレン系黒色顔料8を得た。
【0090】
[顔料誘導体の構造式]
【表2】

【0091】
[実施例1]
(黒色顔料分散体1)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し、黒色樹脂組成物(黒色顔料分散体1)を作製した。
【0092】
ペリレン系黒色顔料7 : 6.5部
顔料誘導体1 : 0.7部
樹脂型分散剤1 : 1.4部
「BYK−110」ビックケミー・ジャパン社製(酸価53mgKOH/g)
アクリル樹脂溶液 :33.6部
溶剤;シクロヘキサノン :57.8部
【0093】
[実施例2〜13、比較例1、2、4〜9]
(黒色顔料分散体2〜13、17〜22)
表3に示す組成、および配合量に変えた以外は、実施例1(黒色顔料分散体1)と同様にして、黒色顔料分散体2〜13、17〜22を作製した。
【0094】
【表3】

【0095】
表3中の略語および化合物について、下記に示す。
顔料
R/B/Y顔料混色1:PR177/PB15:6/PY139=50/40/10の重量比率で混合し黒色としたもの
R/B/Y顔料混色2:PR179/PB15:6/PY185=50/40/10の重量比率で混合し黒色としたもの
顔料誘導体
誘導体1〜4:それぞれ表4に示す顔料誘導体1〜4
樹脂型分散剤
樹脂型分散剤1:酸性樹脂型分散剤「BYK−110」
ビックケミー・ジャパン社製(酸価53mgKOH/g)
樹脂型分散剤2:酸性樹脂型分散剤「BYK−111」
ビックケミー・ジャパン社製(酸価129mgKOH/g)
樹脂型分散剤3:酸性樹脂型分散剤「BYK−171」
ビックケミー・ジャパン社製(酸価13mgKOH/g)
樹脂型分散剤4:塩基性樹脂型分散剤ビックケミー・ジャパン社製「BYK−6919」
溶剤;シクロヘキサノン
【0096】
[比較例3]
(黒色顔料分散体16)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し黒色顔料分散体15を作製した。
カーボンブラック(三菱化学(株)製#45) : 6.5部
顔料誘導体1 : 0.7部
アクリル樹脂溶液 :33.6部
樹脂型分散剤1 : 1.2部
「BYK−110」ビックケミー・ジャパン社製(酸価53mgKOH/g)
溶剤;シクロヘキサノン :57.8部
【0097】
[黒色顔料分散体の粘度評価と経時変化率]
黒色顔料分散体の粘度は、顔料分散体調整当日25℃において、E型粘度計(TVE−20L型粘度計(東機産業社製))を用いて回転数20rpmにおける粘度(初期粘度)を測定した。
そして、黒色顔料分散体調整当日から数えて40℃において7日間で静置した黒色顔料分散体について、25℃にサンプル温度を戻した後に、上記粘度測定法に従い、経時粘度を測定し、下式から経時変化率を求めた。
経時変化率(%)=(経時粘度)/(初期粘度)×100
また、経時変化率は下記の基準で3段階評価した。
結果を表4に示す。
○:経時変化率110%未満
△:経時変化率110%以上、140%未満
×:経時変化率140%以上
【0098】
[光学濃度]
黒色顔料分散体をスピンコート法により100mm×100mmのガラス基板に塗工し、真空乾燥した後、230℃で20分加熱した。このようにして膜厚1.0μmの黒色顔料分散体塗工基板を作製し、この基板の光学濃度(OD)を、マクベス濃度計(GRETAG D200−II)により測定し、膜厚1.0μmにおける光学濃度(OD)を求めた。
結果を表4に示す。
【0099】
[透過率]
黒色顔料分散体をスピンコート法により100mm×100mmのガラス基板に塗工した後、230℃で20分の焼成工程を経て乾燥膜厚1.0μmの塗膜を作成した。得られた黒色顔料分散体塗工基板の透過率を、分光光度計(HITACHI U-3900H)により測定し、透過率を求め、下記の基準で3段階評価した。
結果を表4に示す。
○:透過率(波長1000nm)80%以上
△:透過率(波長1000nm)60%以上80%未満
×:透過率(波長1000nm)60%未満
【0100】
【表4】

【0101】
本発明の特徴である遮光性黒色顔料として、平均一次粒子径が50nm以下であり、かつ顔料粒子の縦横比が特定の値を有するペリレン系黒色顔料と、顔料分散剤と、樹脂と、溶剤とからなる黒色顔料分散体は、いずれも流動性、安定性がよく、さらにOD値が高く良好な遮光性を示し、透過率も優れていた。
また、顔料誘導体と樹脂型分散剤をともに用いることにより、良好な経時安定性を示し、特に酸性樹脂型分散剤を使用した場合はより良好であった(実施例1〜6、11、12)。
【0102】
[実施例14]
(レジスト材1)
次いで、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、感光性黒色樹脂組成物(レジスト材1)を得た。
黒色顔料分散体1 :48.0部
アクリル樹脂溶液 :17.2部
光重合開始剤 : 0.4部
(チバ・ジャパン社製「イルガキュアOXE−02」)
エチレン性不飽和エチレン性不飽和化合物: : 2.9部
(東亞合成社製「アロニックス M−402」)
表面調整剤 : 1.0部
(ビックケミー・ジャパン社製「BYK−330」(不揮発分50重量%)2部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート98部で希釈した溶液)
溶剤;シクロヘキサノン :30.5部
【0103】
[実施例15〜26、比較例10〜18]
(レジスト材2〜22)
表5に示す黒色顔料分散体に変えた以外は、実施例14(レジスト材1)と同様にして、レジスト材2〜22を作製した。
【0104】
[光学濃度]
レジスト材をスピンコート法により100mm×100mmのガラス基板に塗工し、真空乾燥した。その後、超高圧水銀ランプを用い、紫外線を100mJ/cm露光した。次いで、炭酸ナトリウム水溶液を用いて未露光部をスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し未露光部を取り除き、230℃で20分加熱し、膜厚1.0μmのレジスト材塗工基板を作製した。このようにして得られた基板の光学濃度(OD)を、マクベス濃度計(GRETAG D200−II)により測定し、膜厚1.0μmにおける光学濃度(OD)を求めた。
結果を表5に示す。
【0105】
[透過率]
レジスト材をスピンコート法により100mm×100mmのガラス基板に塗工した後、230℃で20分の焼成工程を経て乾燥膜厚1.0μmの塗膜を作成した。得られたレジスト材塗工基板の透過率を、分光光度計(HITACHI U-3900H)により測定し、透過率を求め、下記の基準で3段階評価した。
結果を表5に示す。
○:透過率(波長1000nm)80%以上
△:透過率(波長1000nm)60%以上80%未満
×:透過率(波長1000nm)60%未満
【0106】
[比誘電率、tanδ(誘電正接)]
感光性黒色樹脂組成物を、100mm×100mm、電極用にアルミ蒸着した、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて、下記の加熱工程後に膜厚1.0μm厚みになる回転数で塗布し、塗布基板を得た。次に、減圧乾燥後、超高圧水銀ランプを用いて、積算光量100mJ/cm、照度25mW/cmで紫外線露光を行った。塗布基板を230℃で20分加熱、放冷後、得られた硬化塗膜上に3.464E−4m面積の電極用のアルミを蒸着し、硬化塗膜をアルミ電極で挟んだサンプルを作製した。得られたサンプルの比誘電率およびtanδを、インピーダンスアナライザー(ソーラトロン社製「1260型」インピーダンスアナライザー)を用いて、印過電圧100mVで測定を行った。比誘電率は下記の基準で3段階評価した。
○:比誘電率3.5未満
△:比誘電率3.5以上4.5以下
×:比誘電率4.5を超える
tanδは下記の基準で3段階評価した。
○:tanδ0.1未満
△:tanδ0.1以上0.2未満
×:tanδ0.2以上
結果を表5に示す。
【0107】
【表5】

【0108】
表5に示すように、遮光性黒色顔料として平均一次粒子径が50nm以下で、縦横比が1:1〜1:2の結晶粒子を有するペリレン系黒色顔料と、顔料分散剤と、樹脂と、溶剤とを用いた本発明のレジスト材は、光学濃度が高く、遮光性に優れており、低誘電率で、さらに近赤外領域の透過率にも優れた結果であった。それに対し、ペリレン顔料が特定の平均粒子径と縦横比のいずれかの値を満たさない場合には、光学濃度が低く、遮光性が悪いだけでなく、電気特性も悪い結果であった。
【0109】
中でも顔料分散剤として有機顔料の母体骨格と塩基性置換基を有する顔料誘導体を用いたレジスト材は電気特性でより優れた結果を示しており、有機顔料の母体骨格がジオキサジンまたはジケトピロロピロールであるレジスト材はtanδもさらに良化した。
【0110】
さらに顔料誘導体と酸価が100〜200mgKOH/gである酸性樹脂型分散剤をともに用いたレジスト材はtanδがさらに良化し、初期粘度も低く抑えられ、安定性も良好であった。
【0111】
また、遮光性黒色顔料として有機顔料の混合により黒色樹脂組成物とした比較例10、11(レジスト材12、13)では、比誘電率および透過率は実用レベルであるが、光学濃度が低く、カーボンブラックを用いた比較例12(レジスト材14)は、光学濃度に優れるものの、比誘電率および近赤外領域の透過率が非常に悪い結果であった。
【0112】
また、ペリレン顔料が特定の平均粒子径と縦横比のいずれかの値を満たさない比較例13〜17(レジスト材15〜19)には、光学濃度が低く、遮光性が悪いだけでなく、電気特性も悪い結果であった。
【0113】
これらのように、比較例はいずれも比誘電率、透過率、および遮光性のすべてを満たすことは出来なかった。
【0114】
<カラー液晶表示装置の作製>
カラー液晶表示装置は従来公知の方法、例えば特開2000−162643に示す方法で作製することができる。
【0115】
本発明の黒色樹脂組成物から形成されてなるブラックマトリクスを具備する薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板を用いて作製した。
まず、(第1の)ガラス基板上の表面にTFT及び透明ITO電極層をパターニングし、その上にRGBのカラーフィルタを形成した。前記カラーフィルタ上に画素電極となるITO膜を形成、所定のパターンにエッチングした後、ブラックマトリクスをRGB画素間に形成して、アレイ基板を作製した。
他方、別の(第2)のガラス基板上の表面に透明ITO電極層をパターニングし、その上にポリイミド配向層を形成し、対向基板を作製した。
このようにして準備されたアレイ基板および対向基板を電極層同士が対面するよう対向させて配置し、スペーサビーズを用いて両基板の間隔を一定に保ちながら位置合わせし、液晶組成物注入用開口部を残すように周囲を封止剤で封止した。開口部から液晶組成物を注入した後、開口部を封止した。このようにして作製した液晶表示装置をバックライトユニットの3波長CCFL光源と組み合わせてカラー表示装置を作製した。
【0116】
その結果、本発明の黒色樹脂組成物を用いて形成したブラックマトリクスを具備する薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板を有するカラー表示装置は、いずれも遮光性に優れているために、カラー液晶表示装置の表示コントラストに優れ、さらに低誘電率特性であるため液晶の配向乱れといった電気特性に悪影響が小さく、かつ近赤外領域の透過率に優れていることにより、マスクアライメント作業も可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光性黒色顔料と、顔料分散剤と、樹脂と、溶剤とを含む黒色樹脂組成物であって、該遮光性黒色顔料が、平均一次粒子径が50nm以下であり、かつ顔料粒子の縦横比が1:1〜1:2であるペリレン系黒色顔料であることを特徴とする黒色樹脂組成物。
【請求項2】
ペリレン系黒色顔料の平均一次粒子径が、20〜45nmであることを特徴とする請求項1に記載の黒色樹脂組成物。
【請求項3】
顔料分散剤が、有機顔料の母体骨格と塩基性置換基を有する顔料誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色樹脂組成物。
【請求項4】
有機顔料の母体骨格が、ジオキサジン系顔料またはジケトピロロピロール系顔料のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の黒色樹脂組成物。
【請求項5】
顔料分散剤が、さらに樹脂型分散剤を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の黒色樹脂組成物。
【請求項6】
さらにエチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項に記載の黒色樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項に記載の黒色樹脂組成物から形成されてなるブラックマトリクス。
【請求項8】
乾燥膜厚1.0μmにおける比誘電率が、4.5以下であることを特徴とする請求項7記載のブラックマトリクス。
【請求項9】
乾燥膜厚1.0μmにおける波長1000nmの透過率が、60%以上99%未満であることを特徴とする請求項7または8に記載のブラックマトリクス。
【請求項10】
乾燥膜厚1.0μmにおける光学濃度が、1.30以上であることを特徴とする請求項7ないし9いずれか1項に記載のブラックマトリクス。
【請求項11】
請求項7ないし10いずれか1項に記載のブラックマトリクスを具備することを特徴とする、薄膜トランジスタ(TFT)方式カラー液晶表示装置の駆動用基板。


【公開番号】特開2012−18384(P2012−18384A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78192(P2011−78192)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】