鼓膜圧力均等化管送達システム
耳の鼓膜に自動的に切開を形成し、その切開に鼓膜圧力均等化管を配置するためのシステム及び方法が提供される。システムは、シャフトが延出するハウジングを含む。ハウジングの内部には機構が配置される。シャフトの遠位端を鼓膜に当てて置き、機構を起動して、鼓膜の自動的な切開及び拡張をもたらし、鼓膜圧力均等化管をその拡張された切開内に配置する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本特許出願は2009年7月15日付出願の仮出願第61/225893号の利益を主張するものであり、この出願の開示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して医療装置及び器具に関する。具体的には、本発明は、圧力均等化管を耳の鼓膜に送達するためのシステム及び方法を提供する。
【0003】
中耳炎は、小児科医によって最もよくなされる診断の1つである。小児の過半数は3歳の誕生日までに中耳炎(「耳の痛み」)の症状を少なくとも1度発現する可能性がある。中耳炎は、中耳からの体液を排出する能力を耳管が失うことによってしばしば引き起こされる。中耳炎は抗生物質によってしばしば治療される。
【0004】
かなりの数の小児が、中耳炎、及び/又は浸出を伴う中耳炎の再発を呈する。より重篤なこれらの症例の治療には、中耳からの十分な排液をもたらし、将来の感染の可能性を減らすための、鼓膜を通した鼓膜切開管の配置がしばしば伴う。鼓膜切開管は中耳と外耳との間の流体連通(例えば、圧力均等化)を提供し、典型的には配置から約1年以内に自然に落下する。鼓膜切開管の配置は、小児人口において最もよく行われる外科手術の1つである。毎年1百万を超える鼓膜切開管が配置されている可能性があると推測されており、手術時の典型的な患者年齢は約18ヶ月〜7歳である。
【0005】
鼓膜切開管の配置は、典型的には外来手術として全身麻酔下で行われる。典型的には、まず医師が手持ち式の円錐形の検鏡を用いる顕微鏡的視覚化によって外耳道及び鼓膜を診察する。次いで医師は、典型的には円錐形の検鏡を通して医師が前進させる標準的な小型のプロファイルメスを用いて、鼓膜の切開(「鼓膜切開術」)を行う。多くの場合、次いで医師は、鼓膜切開管を保持して鼓膜切開内へと前進させるために基本ツールを典型的には用いて、鼓膜を通して鼓膜切開管を配置する。次いで医師は、その管を通して吸引装置を中耳へと通過させて、中耳から体液/浸出液を吸引する。
【0006】
広範な種類の鼓膜切開管が市販されていることに加え、その他多くの種類の管が提案されてきた。鼓膜切開術を行うため、及び単一の処置アセンブリを用いて鼓膜切開管を配備するためのシステムもまた提案されてきた。近年では、鼓膜切開を形成するためのレーザーエネルギーを用いるシステム、耳道の撮像のためのビデオシステムなどを含め、耳組織の診断又は処置のためのより複雑かつ高価なシステムが提案されている。鼓膜切開管及び管配置システムに代わるものとして提案されているこれらの様々なシステムは、様々な程度で受け入れられてきた。提案された代替システムの中には、複雑すぎるもの、高価すぎるもの、及び/又は効果的でないものがある。したがって、標準的な管及び管配置術並びに装置が主に使用されてきた。
【0007】
標準的な鼓膜切開管配置術は効果的であり、かつかなり安全である。しかし、更なる改善が望まれる。例えば、上述の標準的な管配置術は複数の道具(検鏡、メス、管配置装置)を必要とし、通常は患者に全身麻酔を施す必要がある。施術者が行う複数の工程及び装置の使用、並びに/又は患者の移動が原因で、腹膜切開管配置のエラーが発生する場合がある。長時間にかけて静止した体位を維持することは小児にとって難しいため、エラーの可能性は、局所麻酔下での小児の手術のときに増す。
【0008】
現在利用可能な管配置法の1つの欠点は、理想より早く鼓膜切開管が鼓膜から落下する可能性があることである。その可能な原因として挙げられるのは、標準的な鼓膜切開管上の遠位フランジが通過できるようにするために鼓膜切開を十分に大きくしなくてはならず、したがって、典型的な鼓膜切開は、管を定位置に保持するために理想的な大きさより大きくなる場合があることである。
【0009】
現在利用可能な管配置法のもう1つの欠点は、鼓膜切開管を挿入するために必要な鼓膜切開が比較的大きく、治癒の過程での瘢痕化の増加を引き起こし得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記を鑑み、圧力均等化管を鼓膜に送達するための改善された装置、システム、及び方法を提供することが望まれるであろう。複数の装置及び施術者による複数の工程を必要としない鼓膜管配置がこれらの改善によって可能になることは、一般的に有用であろう。これらの利点の少なくともいくつかは、本明細書に記述されている実施形態によって提供され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、鼓膜均等化管(すなわち、鼓膜切開管)を鼓膜に自動的に穿刺及び送達するためのシステム及び方法を提供する。
【0012】
一態様において、システムは、圧力均等化管を送達するために提供される。このシステムは、ハンドルを含むハウジングを含む。細長いシャフトアセンブリをハウジングと連結する。シャフトアセンブリは、先の尖っていない(組織を傷つけない)遠位先端部を有する外側シャフトを含む。細長いシャフトの遠位先端部は、外側シャフトの残りの部分の内径以上の内径を有する。カッタは、細長いシャフトの内部で直線的に移動可能である。プッシャは、細長いシャフトの内部でカッタの上に摺動式に配置される。圧力均等化管は、プッシャの遠位端でカッタの周囲に摺動式に配置される。シールドは、プッシャ及び圧力均等化管の上に摺動式に配置される。拡張器は、シールドの上に摺動式に配置される。一代替実施形態において、カッタ及び拡張器は、以下に記述するように1つの特徴として組み合わされ得る。
【0013】
システムはカムアセンブリもまた含む。カムアセンブリは、ハウジングの内部に回転式に連結されたカムシャフトを含む。カムシャフトは、第1のカムプロファイル、第2のカムプロファイル、第3のカムプロファイル、及び第4のカムプロファイルを含む。第1のカムフォロワは、第1のカムプロファイルに可動に連結される。第1のカムフォロワはカッタに取り付けられる。第2のカムフォロワは、第2のカムプロファイルに可動に連結される。第2のカムフォロワはプッシャに取り付けられる。第3のカムフォロワは、第3のカムプロファイルに可動に連結される。第3のカムフォロワはシールドに取り付けられる。第4のカムフォロワは、第4のカムプロファイルに可動に連結される。第4のカムフォロワは拡張器に取り付けられる。
【0014】
一実施形態において、ハウジングとカムシャフトとの間でバネを付勢することができる。バネは、カムシャフト上にねじれを与える巻かれた位置と、解放位置とを有する。
【0015】
解放ボタンはカムシャフトに可動に連結され得る。解放ボタンは、バネを巻かれた位置に維持する第1の位置と、バネが解放位置に移動することを可能にする第2の位置とを有する。解放ボタンを解放位置に移動すると、バネが解放されてカムシャフトを移動し、カムフォロワがシャフトアセンブリのそれぞれ対応する部分を直線的に移動して、カッティング部材を用いて鼓膜に切開を形成し、拡張器を用いて切開を拡張し、プッシャを用いて圧力均等化管をシールドの外に出し切開内に前進させることを引き起こす。
【0016】
別の態様において、耳の鼓膜に切開を形成し、圧力均等化管を配置するための方法が提供される。この方法は、管送達装置のシャフトの先の尖っていない(組織を傷つけない)遠位端を鼓膜と接触することを含む。シャフト遠位端の外にカッタを前進させて、鼓膜に切開を形成する。拡張器は、カッタの少なくとも一部分の上に配置される。カッタの上及び拡張器の内部に配置されたシールドをシャフト遠位端から切開へと前進させて、拡張器を拡張する。シールドを圧力均等化管の上に配置する。カッタをシャフト内に格納する。シールドをシャフト内に格納することにより、圧力均等化管の遠位フランジが拡大構成をとるように圧力均等化管の遠位フランジを解放する。シールド内部に配置されたプッシャを用いて、圧力均等化管をシールドの外に押し出すことにより、圧力均等化管の近位フランジが拡大構成をとるように圧力均等化管の近位フランジを解放する。シールドから押し出された後、圧力均等化管の中間部分は鼓膜の切開の内部に配置され、遠位フランジ及び近位フランジは切開の対向する側に配置される。
【0017】
有利なことに、そのようなシステム及び方法は、システムを耳道へ前進させて解放ボタンを起動するなど、最小限の工程で施術者が鼓膜均等化管の自動送達を行うことを可能にする。
【0018】
発明の性質及び利点を更に理解するために、添付の図と共に下記の説明を参照すべきである。しかし、各図は、あくまで図示及び説明を目的として与えられるものであって、本発明の実施形態の範囲を限定することを目的とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1B】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1C】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1D】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1E】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1F】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1G】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1H】図1A〜1Dの送達システムの分解図。
【図1I】図1E〜1Gの送達システムの分解図。
【図1J】図1A〜1Dの送達システムの内部部分の部分側面図。
【図1K】図1A〜1Dの送達システムの内部部分の部分側面図。
【図1L】図1E〜1Gに図示した送達システムのカム/スイッチ接触面の内部部分の図。
【図1M】図1E〜1Gに図示した送達システムのカム/スイッチ接触面の内部部分の図。
【図1N】図1E〜1Gの送達システムの内部部分の部分側面図。
【図1O】図1E〜1Gの送達システムの内部部分の部分側面図。
【図1P】図1A〜1Gの送達システムの遠位先端の断面図。
【図2A】本発明の一実施形態による変位及び動作図。
【図2B】本発明の一実施形態による変位及び動作図。
【図3】本発明の一実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの斜視図。
【図4A】本発明の2つの実施形態による一体化されたカッティング部材及び拡張器の斜視図及び側面図。
【図4B】本発明の2つの実施形態による一体化されたカッティング部材及び拡張器の斜視図及び側面図。
【図4C】本発明の2つの実施形態による一体化されたカッティング部材及び拡張器の斜視図及び側面図。
【図4D】本発明の2つの実施形態による一体化されたカッティング部材及び拡張器の斜視図及び側面図。
【図4E】本発明の一実施形態による、使用中の送達システムの遠位先端の断面図。
【図4F】本発明の一実施形態による負圧作動システムの概略図。
【図5A】本発明の一実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5B】本発明の一実施形態による鼓膜均等化管の側面図。
【図5C】本発明の一実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5D】本発明の複数の実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5E】本発明の複数の実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5F】本発明の複数の実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5G】本発明の複数の実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態は、鼓膜均等化管を鼓膜に自動的に穿刺し送達するためのシステムを提供することを目的とする。本発明の実施形態によると、鼓膜均等化管送達システムは、専用ハンドグリップを有するハウジング又は把持可能なハウジングを概して含む。シャフトは鼓膜に到達するためにハウジングから延出し、鼓膜均等化管はシャフト先端の内部に収められる。内部のバネ仕掛けのカム系機構はハウジングの内部に位置付けられ、ボタンに連結される。この機構を起動して、鼓膜を穿刺し鼓膜均等化管を送達する迅速かつ自動的なプロセスを開始することができる。鼓膜均等化管は、管の内部に折り畳まれた及び/又は圧縮されたグロメット様の装置であり、鼓膜内に送達されたとき、その形を回復する。
【0021】
使用に際し、施術者はハンドグリップでハウジングを把持し、シャフトの先端を鼓膜と接触させる。次いで、施術者はボタンを押圧することによりカム系機構を起動する。次いで、システムは自動的に鼓膜均等化管を鼓膜に穿刺し挿入する。このように、使用のために要求される施術者による工程が最小限の、シンプルかつ効果的な送達システムが提供される。
【0022】
本発明の実施形態は、視覚化、他の医療装置の案内、鼓膜均等化管の送達、鼓膜の穿刺、及び鼓膜の麻酔のための一連の医療装置と共に使用するための適合性がある。そのような医療装置の例は、同一出願人による米国特許出願第11/749,733号に示されており、その全体は参照により組み込まれる。したがって、米国特許出願第11/749,733号の態様を本明細書に開示されている実施形態と統合すること、組み合わせること、共に使用することが可能である。
【0023】
送達システムの代表的な構成:
以下に、2つの代表的なシステムについて記述し、別々の図(図1A〜1G)に示す。可能な限り同じ番号スキームを使用して、それぞれのシステムの構成要素を識別する。システムの構成要素の機能が異なるときは説明を追加する。
【0024】
図1E〜1Gに図示したシステムは、図1A〜1Dに図示したシステムに勝るいくつかの利点を有する。そのハウジング設計は、よりよい安定性及び人間工学的グリップを提供し、使用中の装置の安定性を高める。バネ114は送達システム100の近位端に移動され、より均等で安定な鼓膜均等化管の送達を助ける。
【0025】
図1A〜1Gは、本発明の一実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システム100を示す。送達システム100は、図1E〜1Gに図示した全体設計に図示されているようなハンドル又は取っ手の設備を有するハウジング102を含む。シャフトアセンブリ104はハウジング102に取り付けられる。シャフトアセンブリ104は1つ以上の細長い管で構築され、耳道又はシャフトアセンブリ104の有意な変形を要さずに、シャフトアセンブリの遠位部分を耳道の蛇行した経路に通すために十分に小さい(例えば2mm)外径を有するように構成される。多くの実施形態において、シャフトアセンブリは、鼓膜への到達を容易にするために予め形成された湾曲を有する。いくつかの実施形態において、シャフトアセンブリは、耳道に通すことを助けるようにユーザによって調整可能な可鍛材料で作製される。鼓膜均等化管(図示せず)は、シャフトアセンブリ104の遠位部の内部に好ましくは収容される。解放ボタン106は、ハウジング102を貫通して突出する。解放ボタン106は、シャフトアセンブリ104による鼓膜の自動穿刺、及びその穿刺された鼓膜への鼓膜均等化管の挿入を引き起こす内部機構を解放するように構成される。使用の際、送達システム100を使用して、シャフトアセンブリの遠位部を患者の耳の鼓膜と接触させる、又はその間近に置く。次いで、解放ボタン106を操作して内部機構を解放すると、シャフトアセンブリは自動的かつ迅速に鼓膜を穿刺し、かつまた迅速に鼓膜均等化管をその穿刺された鼓膜内へ送達する。
【0026】
図1H/1Iは、送達システム100の部分分解図を示す。ハウジング102は、クラムシェル方式で合体する第1のハウジング部分108と第2のハウジング部分110とから成る。カムシャフト112は、第1のハウジング部分108と第2のハウジング部分110との間に回転式に収容される。カムシャフト112はまた、ハウジング102とカムシャフト112との間で付勢(すなわち、巻回)され得るバネ114に連結される。シャフトアセンブリ104は、4つのカムフォロワ120a、120b、120c及び120dに可動式に取り付けられ、それぞれのフォロワは、ハウジング102の内部にシャフトアセンブリ104の軸A−Aに沿って摺動式に収容される。カムフォロワ120a〜dは、摺動式ブロックとして構成される。解放ボタン106は、ハウジング102の内部に装着されるか、ないしは組み込まれるボタンハウジング116の内部で摺動式に移動可能である。リンク118は、カムシャフト112の一部分と解放ボタン106との間で可動式に接続される。解放ボタン106は、リンク118をカムシャフト112から離脱するために移動又は解放することができ、バネ114が少なくとも部分的にカムシャフト112を巻き戻し回転することを可能にし、それによってカムフォロワ120a〜dを移動し、それによってシャフトアセンブリ104の部分を動かして鼓膜を自動的に穿刺し、かつまた鼓膜均等化管をその穿刺された鼓膜に送達することができる。多くの実施形態は他の起動機構を使用することができ、例えば、1つ以上の溶解可能(fusable)なリンクをボタン106によって作動してもよい。溶解可能なリンクは、摩滅してカムシャフト112から離脱するように作動され得る。いくつかの実施形態では、釣り合い重りバネ147を使用して、バネ114からカムシャフト112及びリンク118を通って解放ボタン106に伝達される荷重を相殺することができる。これは、最小限の力で解放ボタン106がリンク118を移動又は解放することを可能にする。他の実施形態は、取り扱い中に解放ボタンを定位置に保持し、装置の不要な作動の回避を助ける留め金148もまた含む場合がある。
【0027】
図1J/1Kは、第2のハウジング部分110が取り除かれた送達システム100の一部分を示す。第1のカムフォロワ120aは、カッティング部材121aの近位部に接続される。カッティング部材121aは細長いワイヤ又は管であり、その遠位端で鼓膜を穿刺するための突起(例えば、尖れた先端)を有する。第2のカムフォロワ120bは、第1のカムフォロワ120aに直接隣接している。第2のカムフォロワ120bは、プッシャ121bの近位部に接続される。プッシャ121bは細長い管であり、その内部にカッティング部材121aが摺動式に置かれる。第3のカムフォロワ120cは、シールド121cの近位部に接続される。シールド121cは細長い管であり、その内部にプッシャ121bが摺動式に置かれる。第4のカムフォロワ120dは、拡張器121dの近位部に接続される。拡張器121dは、つぼまった位置から拡大した位置へ拡大可能な遠位先端を有する細長い管である。シールド121cは、拡張器121dの内部に摺動式に置かれる。外側シャフト121eは、第1のハウジング部分108に取り付けられる。外側シャフト121eは、遠位に開口部を有する細長い管であり、ステンレススチールのような剛性材料で構築され得る。
【0028】
4つのカムフォロワ120a〜dはピン122a〜dを含み、カムフォロワチャンバ130内に収容される。それぞれのピン122a〜dは、トラック123a〜dの内部で摺動可能であるトラック123a〜dは、カムシャフト112の円周にある凹凸のある溝である。それぞれのピン122a〜dは対応するカムフォロワ120a〜dに取り付けられるので、ピン122a〜dの移動は、対応するカムフォロワ120a〜d及びシャフトアセンブリ104のそれぞれ対応する部分を移動する。例えば、カムシャフト112が回転するとピン122aはトラック123aを辿り、軸A−Aに平行に移動して、カムシャフト112の回転運動を軸A−Aに沿ったカッティング部材121aの直線運動に変換する。同様に、トラック123bはプッシャ121bに対応し、トラック123cはシールド121cに対応し、トラック123dは拡張器121dに対応する。
【0029】
起動機構チャンバ124は、ボタンハウジング116を収容する。起動機構チャンバ124は、ボタン106を通過させるための開口部を含む。第1のハウジング部分108は、カムシャフト112のための回転装着点を含むカムシャフトチャンバ126の内部にカムシャフト112を保持した状態で示されている。カムシャフト112の一部はバネチャンバ128内に延出し、そこでバネ114はカムシャフト112に装着される。バネ114は、カムシャフト112とバネチャンバ128の一部分との間で付勢されるように巻くことができる。カムフォロワ120a〜dは、フォロワチャンバ128の内部で直線配列される。
【0030】
図1L及び1Mは、より一貫した作動運動及び力を提供する改善された起動機構の更なる詳細を示す。
【0031】
図1Lは、カムシャフト112の端から延出するカムシャフト歯150を示す。リンク118から延出するリンク歯151は、リンク118が解放ボタン106によって定位置に保持されたときのカムシャフト112の回転運動を阻止する。
【0032】
図1Mは、解放ボタン106とリンク118との間の接触面152の斜視図を示す。解放ボタン106の横方向の移動は、解放ボタン106とリンク118との間の接触面152を離脱し、リンク118がリンクピン132(図1Lに図示)の周囲を旋回することを可能にし、バネ114がカムシャフト112を少なくとも部分的に巻き戻し回転することを可能にする。上述のように、釣り合い重りバネ147を使用して、バネ114からカムシャフト112及びリンク118を通って解放ボタン106に伝達される荷重を相殺することができる。これは、最小限の力で解放ボタン106がリンク118を移動又は解放することを可能にする。
【0033】
図1N/1Oは、第1のハウジング部分108/110が取り除かれた送達システム100の一部分を示す。第2のハウジング部分110の内部は第1のハウジング部分108とほぼ同様であり、第1のハウジング部分108と合体したときに、起動機構チャンバ124と、カムシャフトチャンバ126と、バネチャンバ128(図示せず)と、フォロワチャンバ130とを形成する内部部材を含む。リンク118は、リンクピン132によって第2のハウジング部分110/108と結合される。リンク118は、解放ボタン106とカムシャフト112の一部分との間でリンクピン132の周囲を旋回する。バネ114(図示せず)は、カムシャフト112とバネチャンバ128の一部分との間で付勢されるように巻かれ、リンク118によって付勢された位置に保持され得る。ボタン106を押圧してリンク118をカムシャフト112から外すことができ、そうすると、巻かれたバネ114が巻き戻り、カムシャフト112が回転する。カムシャフト112は、第1又は第2のハウジング部分108、110の物理的停止部に当たるまで回転することになる。ボタン106は、ボタン106を押すことができるようにするために、オンの位置からオフの位置に切り替えるか若しくは取り外さなくてはならない、例えば摺動式ピン、ボタンカバー、又は留め金のような安全機構(図示せず)に連結することができる。
【0034】
多くの実施形態において、送達システム100は、患者へのショックを軽減するためにノイズ緩和のための突起を含む。バネ114が解放された後、カムシャフト112は第1又は第2のハウジング部分108、110の停止部に当たるまで回転し、患者にショックを与える不要なノイズをもたらす場合がある。カムシャフト112及びバネ114は、潤滑剤、及びゴム停止部149のようなノイズ緩和部材(例えば、図1I〜図1Kに図示したような)を含むことができる。第1又は第2のハウジング部分はまた、急な停止の代わりに、徐々にカムシャフト112を停止する非共中心形の表面を使用してもよい。ハウジング102における音のバフリングは、音を塞ぐため及び/又は直接音を耳から離すために使用してもよい。患者へのショックを軽減するために、送達システム100の使用の直前に、選択した周波数及び振幅での音のチューニングを採用してもよい。音のチューニングを用いてノイズを導入することにより、あぶみ骨とつながっている筋肉が収縮し、内耳へのノイズの伝達が軽減される。送達システム100によって生成されるノイズに患者を慣れさせることによってショックを軽減するために、徐々に患者にもたらされるノイズの生成を音のチューニングに含めてもよい。
【0035】
図1Pは、シャフトアセンブリ104の遠位端の断面図を示す。カッティング部材121aは、伸張ワイヤ136に接続された菱形のカッティングヘッド134である。好ましくは、菱形のカッティングヘッド134は、最小限の軸力で鼓膜を容易に穿刺することができる単一の尖った点へと導かれる複数の小平面で構成される。カッティング部材121aは、菱形のカッティングヘッド134の使用に限定されない。多くの実施形態において、カッティング部材121aは、ナイフエッジ先端又はコアリング針/非コアリング針を採用する。カッティング部材121Aは、鼓膜のより多くの場所へのアクセスを可能にし得る面取られた楔形又は平面形を採用してもよい。概して、カッティング部材121aは、適正なサイズの任意のカッティングヘッド134を使用することができる。いくつかの実施形態において、カッティングヘッド134の形は、TM(鼓膜)にフラップを形成しない鼓膜切開術(すなわち、TMを切開すること)を可能にすることができる。
【0036】
拡張器121dは、つぼまった位置から拡大した位置に拡大可能な折り畳み式先端138を有する。図のように、つぼまった位置にあるときの折り畳み式先端138は、円錐様の形を有する。つぼまった位置にあるときの折り畳み式先端138は、菱形のカッティングヘッド134の裏と隣接する。折り畳み式先端138は、管の遠位端に複数の三角形の切れ目を作って折り畳み部材を形成し、それらの折り畳み部材を畳んで円錐にすることによって形成することができる。折り畳み式先端138は一般には2つの折り畳み部材のみを必要とするが、この実施形態では4つの折り畳み部材が使用されている。
【0037】
シールド121cは、拡張器121dの内部に及び折り畳み式先端138に近位に配置される管である。シールド121cを遠位方向に移動すると、シールド121cは折り畳み式先端138を強制的に開くことができる。真っ直ぐな鼓膜均等化管140は、シールド121cの内部に配置される。鼓膜均等化管140は、シールド121cの内部で拘束され、シールド121cの内部で真っ直ぐな構成に強制された管140の近位フランジ及び遠位フランジは、定位置に留まるためにシールド121cの内径に一定の拡大力を適用する。鼓膜均等化管140は、鼓膜均等化管140の取り出しを可能にするために、菱形のカッティングヘッド134の外径より大きい内径を有することができる。鼓膜均等化管140は、菱形のカッティングヘッド134の移動中の鼓膜均等化管140のわずかな変形/ストレッチを可能にする弾性材料を含むことができるので、鼓膜均等化管140はまた、菱形のカッティングヘッド134の外径以下の内径を有することもできる。プッシャ121bは、折り畳まれた鼓膜均等化管140に近位に配置された管である。プッシャ121bを遠位に移動して、折り畳まれた鼓膜均等化管140をシールド121cから押し出すことができる。
【0038】
外側シャフト121eは拡張器121dを取り囲んでおり、シャフトアセンブリ104の他の部分の動きに対して定常である。外側シャフト121eは、シャフトアセンブリ104に軸方向の剛性を提供するものであり、ステンレススチールのような金属で形成することができる。先端142は、外側シャフト121eの遠位端に取り付けられる。管140の正確な配置を可能にするために、管140、及び送達システム100に隣接する解剖学的構造の視覚化を可能にするよう、透明な材料で先端を構成することができる。あるいは、先端142を外側シャフト121eと同じ材料の片で形成してもよい。先端142は、外側シャフトの内径より大きい内径を含む。先端142のこのより大きい内径は、プッシャ121bによって前進させられたときに、鼓膜均等化管140の近位フランジがその拡大された/拘束されていない構成へと先端142の内部で開かれることを可能にする。先端142の内部での近位フランジのこの拡大は、均等化管140全体の、鼓膜切開を貫通して中耳内への前進を防ぐのに役立つことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、圧力/接触/距離センサを先端142に連結することができる。センサは、先端142が鼓膜と接触したとき又は鼓膜の近くにあるときに信号を提供する。信号はハウジング102上のビジュアルインジケータ(例えば、LED)を起動して、先端142が鼓膜均等化管140を鼓膜へ挿入するための適正な位置にあることを示すことができる。センサは圧電性でも、光学性でも、容量性でもよく、あるいは任意の他の好適なセンサでもよい。信号は、カムシャフト112の起動運動又は本明細書に記述したような音のチューニング動作のような他の動作もまた起動することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、鼓膜によりよくアクセスするようにシャフトアセンブリ104の遠位部を構成することができる。鼓膜は円錐形を有し、耳道の軸に対して角度を成している。したがって、シャフトアセンブリ104の遠位端は、最適でない角度(例えば、垂直でない角度)で鼓膜と接触する可能性がある。この場合、施術者は、圧力均等化(PE)管の完全な送達を確実にするために十分な圧力を鼓膜に適用する前に、誤って停止してしまう可能性がある。他の場合、施術者は過度に補正をし、強すぎる圧力を鼓膜に与え、結果としてシャフトアセンブリ104の先端を鼓膜に貫通させてしまう可能性がある。これらの状況を克服するために、シャフトアセンブリ104の遠位部は、シャフトアセンブリ104の遠位先端が鼓膜によりよくアクセスできるように角度を取り入れることができる。使用の際、施術者はシステム100の全部又は一部を回転させて、シャフトアセンブリ104の遠位先端を鼓膜に対して最適な位置に置くことができる。いくつかの実施形態において、シャフトアセンブリ104は、施術者がシャフトアセンブリ104を所望の位置に曲げることができるように可鍛性である。
【0041】
いくつかの実施形態では、シャフトアセンブリ104の遠位先端が鼓膜を押圧したときに、シャフトアセンブリ104の遠位先端が自動的に最適な位置へと調整されるように、シャフトアセンブリ104の外側シャフト121eは可撓性区域を含む。例えば、外側シャフト121eの一部分は、シャフトアセンブリ104の遠位先端が鼓膜を押圧したときに弾性的又は可塑的に圧縮するバネセクション、アコーディオンセクション、又はステント様のスカフォールドを使用することができる。先端の圧縮は、鼓膜に適用されている圧力の量に関する視覚的なフィードバックを施術者に与えることができる。いくつかの実施形態において、外側シャフト121eは、外側シャフト121eの中間部分と外側シャフト121eの遠位端との間に螺旋セクションが存在するようにレーザーカット部分が取り除かれている。螺旋セクションは、十分な圧力が適用されたときだけに屈曲するように構成することができるので、適正な鼓膜均等化管140の送達を確保するには、施術者は完全に圧縮するために十分な圧力を螺旋セクションの少なくとも1つの側に適用する必要がある。いくつかの実施形態では、シャフトアセンブリ104のすべて又は別個の部分は同様の可撓性区域を含むこと、かつ/又は可撓性材料で構築されることができ、例えば、カッティング部材121aを超弾性材料(例えば、ニッケル−チタン合金)で構築することができる。
【0042】
代表的な送達システムの動作方法:
図2Aは、カムシャフト112の変位図200及びそれに対応して耳道の内部に配置されたシャフトアセンブリ104の遠位先端の略図を示し、先端142は鼓膜TMに当たっている。変位図200は、軸X及びYに沿った対応するそれぞれのトラック123a〜dのパターンを示す。軸Yは、カムシャフト112の円周に沿ったトラック123a〜dの直線変位を表す。軸Xは、トラックの垂直軸Yの直線変位を表す。
【0043】
前述したように、ピン122a〜dは、トラック123a〜dの移動を追従する。ピン122a〜dは、対応するカムフォロワ120a〜dに取り付けられる。したがって、ピン122a〜dの移動は、軸Xに平行な軸A−Aに沿った対応するカムフォロワ120a〜dの移動及びシャフトアセンブリ104のそれぞれ対応する部分の移動をもたらす。それぞれのトラック123a〜dは、様々な位置での変位数値と共に示されている。変位数値は、先端142の遠位端と、関係するシャフトアセンブリ104の部分121a〜dの最遠位部との間の距離を、ミリメートル単位で表す。シャフトアセンブリ104の遠位先端の図は、変位図に対して段階的に増す位置を示すが、シャフトアセンブリ104及びカムシャフト112の移動は1つの連続的な移動である。様々な実施形態において、カムシャフト112は、ボタン106が押圧された後、約5ミリ秒〜約500ミリ秒で初期位置から最終位置に回転することができる。換言すれば、ボタン106が押圧されたときから装置100を用いて圧力均等化管140がTM内に配備されるまでに、約5ミリ秒〜約500ミリ秒かかる場合がある。いくつかの実施形態では、この時間は約30ミリ秒〜約250ミリ秒である場合があり、平均時間は約100ミリ秒〜約130ミリ秒である。他の実施形態では、この時間は上記の範囲外である場合がある。
【0044】
1.カムシャフトの初期位置:
カムシャフト112の初期位置で、シャフトアセンブリ104は図1Pに示したように位置付けられる。この位置では、巻かれたバネ114を解放するために、ボタン106はまだ押圧されていない。シャフトアセンブリ104が耳道内に前進されて、それにより先端142が鼓膜TMの一部分と隣接している。カムシャフトの初期位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の0.25mm後(すなわち、近位)にあり、プッシャ121bは先端142の7.04mm後にあり、シールド121cは先端142の4.09mm後にあり、拡張器121dは先端の1.68mm後にある。
【0045】
2.カムシャフトの第1の位置:
カムシャフトの第1の位置で、ボタン106は押圧されて巻かれたバネ114を解放し、カムシャフト112はカムシャフトの初期位置からカムシャフトの第1の位置へと回転する。したがって、本明細書に記述したように、カムシャフトの移動はカムフォロワ120a〜dによるシャフトアセンブリ104のそれぞれ対応する部分の移動を引き起こす。カムシャフトの第1の位置で、カッティング部材121aは鼓膜TMを穿刺し、拡張器121dは追従して穿刺場所を拡張し、直径を拡大する。プッシャ121b及びシールド121cも前進するが、先端142の後に留まる。カムシャフトの第1の位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の2.79mm前(すなわち、遠位)にあり、プッシャ121bは先端142の1.66mm後にあり、シールド121cは先端142の1.04mm後にあり、拡張器121dは先端142の1.37mm前にある。
【0046】
3.カムシャフトの第2の位置:
カムシャフト112は、第1のカムシャフトの位置から第2のカムシャフトの位置へと回転する。カムシャフトの第2の位置で、シールド121cは先端142を前進して拡張器121bの折り畳み式先端138を開き、穿刺場所を更に拡張し、カッティング部材121aは拡張器121bの後に格納される。プッシャ121bも前進するが、先端142の後に留まる。カムシャフトの第2の位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の0.58mm前にあり、プッシャ121bは先端142の1.55mm後にあり、シールド121cは先端142の0.66mm前にあり、拡張器121dは先端142の1.37mm前に留まる。
【0047】
4.カムシャフトの第3の位置:
カムシャフト112は、カムシャフトの第2の位置からカムシャフトの第3の位置へと回転する。第3のカムシャフトの位置で、カッティング部材121及び拡張器121dは先端142の後に格納される。シールド121cもまた格納され、一方、プッシャ121bは前進して、鼓膜均等化管140を部分的にシールド121cの外へ押し出す。鼓膜均等化管140の内側フランジ144(又は「遠位フランジ」)はシールド121cから押し出され、鼓膜の内側(又は「遠位」)に拡大する。カムシャフトの第3の位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の1.78mm後にあり、プッシャ121bは先端142の1.45mm後にあり、シールド121cは先端142の1.02mm後にあり、拡張器121dは先端142の1.23mm後にある。
【0048】
5.カムシャフトの最終位置:
カムシャフト112は、カムシャフトの第3の位置からカムシャフトの最終位置へと回転する。カムシャフトの最終位置で、カッティング部材121a、シールド121c、及び拡張器121dは、第3のカムシャフトの位置に対して定常である。プッシャ121bは最終位置へと前進するが、先端142の後に留まり、鼓膜均等化管140の外側フランジ146(又は「近位フランジ」)をシールド121cの外へ押し出して、装置100の先端142の内部で鼓膜の外側(又は「近位」)に拡大する。カムシャフトの最終位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の1.78mm後にあり、プッシャ121bは先端142の0.84mm後にあり、シールド121cは先端142の1.02mm後にあり、拡張器121dは先端142の1.23mm後にある。
【0049】
カムシャフト設計の代替実施形態を図2Bに図示する。図示したようにカムのトラックに沿ってわずかに修正された前進点を除き、上述した様々なカムシャフトの位置の参照はこの実施形態にも適用可能である。最も顕著な変化は、カムシャフトの最終位置において、図2Aのカムシャフトの図と比べて、シールド123cがシャフト内の更に奥へ格納されることである。
【0050】
内側フランジ144と外側フランジ146とがTMを挟んだ状態で、圧力均等化管140が上手く配置されたら、次いで、管140を残してシャフトアセンブリ104を耳道から引き出すことができる。次いで、所望により患者のもう一方の耳で第2の装置100を使用して、又は第1の装置100に別の均等化管140を装填して、上記の工程を繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、装置100は再装填可能である場合があり、代替実施形態では、装置100は単回使用装置のみである場合がある。したがって、上述の方法によると、先端142を鼓膜TMに当てて送達システム100を耳道の内部に単純に位置付け、ボタン106を押圧することによって、送達システム100は、鼓膜TMの穿刺と鼓膜均等化管140の送達との両方を1つの効果的な動作によって行う。
【0051】
送達システムの代替構造:
図3を参照すると、一代替実施形態において、鼓膜圧力均等化管送達システム300は、送達システム300を作動するためのペンシルグリップ302ハンドル及びトリガ304を含むことができる。送達システム300は送達システム100と同様に構成されてよく、内部にほぼ同様の鼓膜均等化管送達機構とシャフトアセンブリとを含むことができる。しかし、送達システム300は、標準的な鼓膜切開穿刺刃のグリップと人間工学的に同様であってよいペンシルグリップ302を特徴とする。トリガ304は、図示したシステム300の上部のような任意の便利な人間工学的な場所に配置されてよい。他の代替実施形態では、図1E〜1Gに図示した構成を含む他のハンドル及び/又はトリガの構成を使用してもよい。
【0052】
ここで図4A〜4Dを参照すると、2つの代替実施形態において、TM管送達装置はその遠位端に、カッタと拡張器とを別々に含むのでなく、カッティング拡張器400を含むことができる。換言すると、カッティング拡張器400では、カッティング部材121aと拡張器121dとが一体化されている。カッティング拡張器400は鼓膜を穿刺する能力を有し、穿刺部位を拡張する拡大能力もまた有する。カッティング拡張器400は、円錐形に配置された複数の指402を含む。図の実施例では、4つの指402が使用されている。概して、指402が多いほど容易な拡大が可能である。指402の少なくとも1つは、鼓膜を穿刺するための尖った先端(図4A及び4B)又はカッティングブレード(図4C及び4D)を含む。カッティング拡張器400は、閉じた構成から拡張した構成に拡大可能な任意の好適な材料で作製され得る。例えば一実施形態において、拡張器400は超弾性ニッケル−チタン合金で形成され得る。別の実施形態において、カッティング拡張器400は、カッティング拡張器400が拡張したときにその拡張した構成をほぼ維持するように可鍛材料で形成され得る。
【0053】
一代替実施形態において、図4Eは、シャフトアセンブリ404の遠位端の代替構造及び使用方法を示す。シャフトアセンブリ404は、図1Eに示すシャフトアセンブリ104と同様に構築される。しかし、外側シャフト406は外壁408及び内壁410を含み、それらの間に空間412がある。空間412は、ハウジング102と接続された負の空気圧と流体接続され得る。ハウジング102は、負圧を空間412に付加することを可能にするための追加トリガ装置を含むことができる。例えば、カムシャフト112の回転によって起動されるポート/弁によってなど、負圧を自動プロセスによって有効にすること及び/又は無効にすることもまた可能である。外側シャフト406は、例えば2つの個別の管、間に接続部材を伴う二重壁押出成形品、又は複数のルーメンを含む単一壁押出成形品から構築することができる。典型的な耳道を通した視覚化及びアクセスを可能にし、かつ任意のTMの象限に到達するように、外側シャフト406の直径は、外側シャフト121eと比べて十分に小さく維持される。外側シャフト406は、鼓膜TMの一部分を正常な位置より上昇させるために鼓膜TMに吸引力を提供することができる。
【0054】
鼓膜を上昇させることは、カッティング部材136の貫通の間のノイズアドミタンスの低減をもたらす。鼓膜を上昇させることは、標的場所の局所的安定化の提供もまた可能にしてシステム100の使用の信頼性を高めることにより、貫通の間のカッティング部材136の偶然の偏位又は滑りを防ぐことができる。また、組織の上昇は、後退ポケットを有する患者に特に有用である場合がある。中耳の負圧によって引き起こされる鼓膜の長期後退は、耳道の浸食及び深いポケットの形成を引き起こす。やがてポケットが皮膚を捕捉し、皮膚嚢胞又は真珠腫を形成する場合がある。後退ポケットが更に進行すると、鼓膜の破壊を引き起こす場合がある。組織の上昇は、解剖学的構造から離れる追加的な空間を鼓膜に遠位に提供することによって、貫通及び鼓膜圧力均等化管140の配置の安全性を高める。したがって、鼓膜切開管の配置を必要とするかなりの患者が何らかの後退を有しているので、組織の上昇によってより大きい患者人口の治療もまた可能になる。
【0055】
図2A/2B及び4Eを参照すると、使用の際、ボタン106を押圧する前に負圧を外側シャフト406の空間412に付加することができる。負圧を付加する前又は後に、外側シャフト406の遠位端を鼓膜TMと接触させること又は接触間近にすることができる。負圧は、鼓膜TMを一時的に外側シャフト406の遠位端に付着させる。次いで、鼓膜TMを引くことによって又は外側シャフト406の遠位端を近位に(すなわち、より外耳に向けて)置くことによって、鼓膜TMの現在の位置から上昇させることができる。組織の上昇は点線から実線への移動によって図示されており、それぞれ鼓膜TMの上昇前の位置及び上昇後の位置を示す。したがって、上昇後、貫通及び鼓膜圧力均等化管140の配置のために、解剖学的構造から離れる追加的な空間が鼓膜TMに対して遠位に提供される。鼓膜TMが所望の位置に上昇された後、ボタン106を押圧して鼓膜TMへの鼓膜圧力均等管140の自動配置を開始する一方で、負圧を鼓膜TMに連続的に付加することができる。鼓膜圧力均等化管140が配置された後、外側シャフト406の空間412への負圧の付加を停止することにより、鼓膜TMを外側シャフト406から開放することができる。あるいは、外側シャフト406の空間412への負圧の付加を図2A/2Bに示す方法の他の点、例えば鼓膜均等化管140の内側フランジ144がシールド121cから押出されて鼓膜に対して内側に拡大した後に、停止することができる。
【0056】
上記の代替実施形態への追加は、装置を作動するための手段としての適用負圧の使用を含むことになる。図4Fは、可能な負圧作動システムの概略図を示す。リンク118に接続された送達システム100の内部のピストン又はベローズ400は、負圧に曝露されると移動して、カムシャフト112の回転を起動することができる。ピストン又はベローズへの負圧は、装置の先端142が鼓膜に当たり、したがって鼓膜に対する装置の位置が確保される位置を得たときに生成され得る。
【0057】
システムは、装置の先端142(鼓膜と接触するところ)と送達システム100の近位端との間の連通を提供する切れ目なく連続した密閉されたルーメンを有する真空チャンバ402を含む。チャンバは、真空シリンダ404及びビストン400及び真空ポート406のような、手術室又は他の臨床設定で通常利用可能な真空ラインを通してのような真空源に取り付けることが可能な真空作動式トリガ機構を含む。
【0058】
上記の実施形態の利点は、鼓膜へのPE管のより正確かつ一貫した配備、装置安定性を高める最低限のボタン作動力、及び装置先端が鼓膜と完全に対向したときの送達システムの作動の確保を含む。
【0059】
鼓膜の上昇のための鼓膜への負圧の付加の代わりに、又はそれと組み合わせて、他の機構又は構造を採用してもよい。例えば、接着剤又は粘着性物質、あるいは微小な棘を使用する機械的適用を使用してもよい。
【0060】
鼓膜圧力均等化管:
図5A及び5Bは、本発明の一実施形態による鼓膜圧力均等化管500を示す。この実施形態では、管500は、シリコーン又は他の何らかの柔軟な弾性材料で作製されたグロメットとして構成され、中耳に排気するように鼓膜の内部に配置される。上述のように、送達システムと組み合わせて多数の好適な圧力均等化管500を使用することができるが、一実施形態において、管500は約2.0mm〜約2.5mm、理想的には約2.3mmの軸長を有することができる。管500は約1.1mmの内径を有することができる。
【0061】
管500の中央ルーメン502は、一体式の内側フランジ504と外側フランジ506とに挟まれている。内側フランジ504及び外側フランジ506は、鼓膜に作り出された開口部から管500が落ちることを防ぐ。外側フランジ504は送達システム100の先端142の内部で拡大されることができ、内側フランジは鼓膜を遠位に通過して拡大するように意図されるので、いくつかの実施形態では、図示したように、外側フランジ504は内側フランジ506より直径が小さくてもよい。代替実施形態では、外側フランジ504及び内側フランジ506は同等の直径である。図1Pに示すように、鼓膜均等化管500の外面は、内側フランジ504及び外側フランジ506を送達システムに装填するために一直線にすることを促進する選択的な可撓性区域508を含む。内側フランジ504及び外側フランジ506は、フランジ504、506を一直線にすることを更に促進することができる選択的なノッチ又は切り取り部504a、506aもまた含むことができる。図5Cは、フランジ504、506のそれぞれに3つのノッチ又は切り取り部504a及び506aを含むそのような実施形態の1つを更に示す。他方のフランジと比べて一方のフランジにより多くのノッチを有すること及び選択的な可撓性区域508を含むことも含め、代替実施形態は、当然、フランジ上のこれらの選択的なノッチ又は切り取り部504a及び506aの任意の組み合わせを含むことができる。
【0062】
図5D〜5Gは、本発明の他の代替実施形態による鼓膜圧力均等化管を示す。場合によっては、図1Pに示すように送達システムの内部で長期間一直線の位置で拘束されると、管のフランジは、TM内への効果的な送達のために十分に速くその拘束されていない自然な位置に跳ね戻る(すなわち、拡大する)ことができない場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、管がその自然な形に再び戻ることを助けるために、内部スカフォールディングが管510、514、518、520の壁の内部に含められる場合がある。そのようなスカフォールディングは、例えば、ニッケル−チタン合金、他の金属、又はポリマー、若しくは他の好適な材料のような超弾性材料又は形状記憶材料から構築することができる。また、これらの実施形態のいずれも、上述した選択的な可撓性区域508を含むことができる。
【0063】
図5Dは、内部ワイヤ512を含む鼓膜圧力均等化管510を示す。ワイヤ512は、管510の迅速な形状回復を提供する。図5Eは、内部二重ループ516を含む管514を示す。二重ループ516は管514、特にフランジの、迅速な形状回復を提供する。図5Fは、複数のワイヤ520を含む管518を示す。複数のワイヤ520を使用することは、管518の均一な形状回復を確実にする。図5Gは、管520の均一な形状回復を促進する内部ステントスカフォールディング522を含む管520を示す。
【0064】
多くの実施形態において、本明細書に開示した鼓膜均等化管は、誤って置かれた鼓膜均等化管の回収を助ける特徴を含むことができる。鼓膜に対して遠位に位置付けられた、誤って置かれた鼓膜均等化管は、特に取り出すことが難しい場合がある。そのような特徴は、鼓膜均等化管の任意の部分に取り付けられたテザーを含むことができる。テザーを鼓膜に対して近位に把持して、誤って配置された鼓膜均等化管を耳の外に引っ張り出すために使うことができる。
【0065】
本発明は、発明の本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態として実施することができる。これらの他の実施形態は、以下の「特許請求の範囲」に記載される本発明の範囲に含まれるものとする。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) 鼓膜に切開を形成し、前記切開内に圧力均等化管を送達するためのシステムであって、
ハンドルを含むハウジングと、
前記ハウジングと連結された細長いシャフトアセンブリであって、
先の尖っていない遠位先端部を有する外側シャフト、
前記外側シャフトの内部を直線的に移動可能なカッタ、
前記外側シャフトの内部で前記カッタの上に摺動式に配置されたプッシャ、
前記プッシャの遠位端で前記カッタの周囲に摺動式に配置された圧力均等化管、
前記プッシャ及び前記圧力均等化管の上に摺動式に配置されたシールド、及び、
前記シールドの上に摺動式に配置された拡張器、を含む、シャフトアセンブリと、
カムアセンブリであって、
前記ハウジングの内部に回転式に連結されたカムシャフトであって、第1のカムプロファイル、第2のカムプロファイル、第3のカムプロファイル、及び第4のカムプロファイルを含む、カムシャフト、
前記カッタに取り付けられる、前記第1のカムプロファイルに可動に連結された第1のカムフォロワ、
前記プッシャに取り付けられる、前記第2のカムプロファイルに可動に連結された第2のカムフォロワ、
前記シールドに取り付けられる、前記第3のカムプロファイルに可動に連結された第3のカムフォロワ、
前記拡張器に取り付けられる、前記第4のカムプロファイルに可動に連結された第4のカムフォロワ、を含む、カムアセンブリと、
前記ハウジングと前記カムシャフトとの間で付勢されたバネであって、前記カムシャフトにねじれ荷重を与える巻かれた位置及び解放位置を有する、バネと、
前記カムシャフトに可動に連結された解放部材であって、前記バネを前記巻かれた位置に維持する第1の位置及び前記バネが前記解放位置に移動することを可能にする第2の位置を有する、解放部材と、を含み、
前記解放部材を前記解放位置に移動すると、前記バネが解放されて前記カムシャフトを移動し、前記カムフォロワが前記シャフトアセンブリのそれぞれ対応する部分を直線的に移動して、前記カッティング部材を用いて鼓膜に切開を形成し、前記拡張器を用いて前記切開を拡張し、前記プッシャを用いて前記圧力均等化管を前記シールドの外に出し前記切開内に前進させることを引き起こす、システム。
(2) 前記ハウジングが、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを含み、それぞれのハウジング部分がクラムシェル型成形品である、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記ハウジング部分が、カムシャフトチャンバと、カムフォロワチャンバと、バネチャンバと、トリガ機構チャンバとを形成する、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記外側シャフトが剛性管から構築される、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記外側シャフトが、外壁と、内壁と、それらの間の空間とを含み、前記空間に負圧を付加することができる、実施態様1に記載のシステム。
(6) 前記負圧を用いて前記解放部材を作動することができる、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記カッティング部材が、菱形ヘッドの先端を有する細長いワイヤを含む、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記シールドが細長い管を含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記圧力均等化管が、ルーメンと、内側フランジと、外側フランジとを有するグロメットを含む、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記内側フランジ及び前記外側フランジが、前記シールドの内部で圧縮される、実施態様9に記載のシステム。
【0067】
(11) 前記圧力均等化管が、内部ワイヤスカフォールディングを含む、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記圧力均等化管が弾性材料で構築され、前記ルーメンとフランジとの間に可撓性の部分を含む、実施態様10に記載のシステム。
(13) 前記フランジが、前記シールドの内部で前記管の圧縮を促進するノッチを含む、実施態様10に記載のシステム。
(14) 前記プッシャが細長い管を含む、実施態様1に記載のシステム。
(15) 前記拡張器が、遠位先端を有する細長い管を含み、前記遠位先端が、つぼまった位置から開いた位置に拡大可能である、実施態様1に記載のシステム。
(16) 前記遠位先端が、前記つぼまった位置でバネ付勢され、前記開いた位置に強制的に開くことができる複数の部材を含む、実施態様15に記載のシステム。
(17) 前記カムシャフトが、回転式に前記ハウジングに取り付けられた第1及び第2の端と、前記第1及び第2の端の間の中間部と、前記第2の端から延出するバネホルダとを有する細長い円筒を含む、実施態様1に記載のシステム。
(18) 前記カムプロファイルのそれぞれが、前記中間部に模様付き溝を含む、実施態様15に記載のシステム。
(19) 前記カムフォロワのそれぞれが、前記ハウジング内に摺動式に収容されたブロックを含み、それぞれのブロックが、それぞれ対応するカムプロファイルを辿るための駆動ピンを含む、実施態様1に記載のシステム。
(20) 前記ブロックが、前記細長いシャフトに対して直線的に配置される、実施態様19に記載のシステム。
【0068】
(21) リンクは前記解放部材を前記カムシャフトに連結し、前記解放部材が、前記第2の位置に移動されたときに前記リンクを押して前記カムシャフトを解放する、実施態様1に記載のシステム。
(22) リンクは前記解放部材を前記カムシャフトに連結し、前記解放部材が、外側に移動されたときに前記リンクを解放して、前記第2の位置に移動されたときに前記カムシャフトを解放する、実施態様1に記載のシステム。
(23) 前記解放部材が、ボタン、トリガ、又はスイッチを含む群から選択される、実施態様1に記載のシステム。
(24) 耳の鼓膜に切開を形成し、圧力均等化管を配置するための方法であって、
管送達装置のシャフトの先の尖っていない遠位端を鼓膜と接触させる工程と、
前記鼓膜内に切開を形成するために前記シャフトの遠位端の外へカッタを前進させる工程であって、拡張器が前記カッタの少なくとも一部分の上に配置される、工程と、
前記拡張器を拡張するために、前記カッタの上及び前記拡張器の内部に配置されたシールドを前記シャフトの遠位端の外へ、かつ前記切開内へと前進させる工程であって、前記シールドが圧力均等化管の上に配置される、工程と、
前記カッタを前記シャフト内に格納する工程と、
前記シールドを前記シャフト内に格納することにより、前記圧力均等化管の遠位フランジが拡大構成をとるように前記圧力均等化管の前記遠位フランジを解放する工程と、
前記シールド内部に配置されたプッシャを用いて、前記圧力均等化管を前記シールドの外に押し出すことにより、前記圧力均等化管の近位フランジが拡大構成をとるように前記圧力均等化管の前記近位フランジを解放する工程と、を含み、
前記シールドから押し出された後、前記圧力均等化管の中間部分は前記鼓膜の前記切開の内部に配置され、前記遠位フランジ及び前記近位フランジが前記切開の対向する側に配置される、方法。
(25) 前記シールドを格納する工程及び前記均等化管を押す工程が同時に生じる、実施態様24に記載の方法。
(26) 前記前進させる工程、格納する工程、及び押す工程が、前記管送達装置上のボタンを押圧することによって開始される、実施態様24に記載の方法。
(27) 前記ボタンを押す前に、前記管送達装置上の安全部材をオフの位置からオンの位置へ移動する工程を更に含む、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記ボタンを押す前に、前記送達装置から安全ロック部材を取り除く工程を更に含む、実施態様26に記載の方法。
(29) 前記カッタを前進させる工程が、前記管送達装置のカムシャフトを第1のカム位置に回転することを含み、それによって第1のカムフォロワが前記カッタを前記外側シャフトの外へ延出し、かつまた前記第4のカムフォロワが前記拡張器を前記外側シャフトの外へ延出する、実施態様24に記載の方法。
(30) 前記シールドを前進させる工程及び前記カッタを格納する工程が、前記カムシャフトを第2のカム位置に回転することを含み、それによって、第2のカムフォロワが前記シールドを前記シャフトの外へ移動して前記拡張器の遠位部を拡大し、かつまた前記第1のカムフォロワが前記カッティング部材を移動して前記シャフト内に戻す、実施態様29に記載の方法。
【0069】
(31) 前記シールドを格納する工程が、前記カムシャフトを第3のカム位置に回転することを含み、それによって、前記第2のカムフォロワが前記シールドを移動して前記外側シャフト内に戻し、かつまた第4のカムフォロワが前記拡張器を移動して前記外側シャフト内に戻し、かつまた第3のカムフォロワが前記圧力均等化管を移動して、前記外側シャフトから部分的に押し出す、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記圧力均等化管を押す工程が、前記カムシャフトを最終位置に回転することを含み、それによって、前記第3のカムフォロワが前記プッシャを更に移動し、前記圧力均等化管を前記外側シャフトから部分的に更に押し出す、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記カムシャフトが、単一の連続運動によって前記第1の位置から前記最終位置に回転される、実施態様32に記載の方法。
(34) 前記圧力均等化管を押す工程及び前記シールドを格納する工程が同時に生じる、実施態様32に記載の方法。
(35) 前記先の尖っていない遠位端を接触させる工程が、前記シャフトの前記先の尖っていない遠位端で前記鼓膜に負圧を付加してTMを上昇させ、前記シャフトの前記遠位端と前記鼓膜との接触を高めることを含む、実施態様32に記載の方法。
(36) 前記付加される負圧が、前記カムシャフトの回転を作動する、実施態様35に記載の方法。
【背景技術】
【0001】
本特許出願は2009年7月15日付出願の仮出願第61/225893号の利益を主張するものであり、この出願の開示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して医療装置及び器具に関する。具体的には、本発明は、圧力均等化管を耳の鼓膜に送達するためのシステム及び方法を提供する。
【0003】
中耳炎は、小児科医によって最もよくなされる診断の1つである。小児の過半数は3歳の誕生日までに中耳炎(「耳の痛み」)の症状を少なくとも1度発現する可能性がある。中耳炎は、中耳からの体液を排出する能力を耳管が失うことによってしばしば引き起こされる。中耳炎は抗生物質によってしばしば治療される。
【0004】
かなりの数の小児が、中耳炎、及び/又は浸出を伴う中耳炎の再発を呈する。より重篤なこれらの症例の治療には、中耳からの十分な排液をもたらし、将来の感染の可能性を減らすための、鼓膜を通した鼓膜切開管の配置がしばしば伴う。鼓膜切開管は中耳と外耳との間の流体連通(例えば、圧力均等化)を提供し、典型的には配置から約1年以内に自然に落下する。鼓膜切開管の配置は、小児人口において最もよく行われる外科手術の1つである。毎年1百万を超える鼓膜切開管が配置されている可能性があると推測されており、手術時の典型的な患者年齢は約18ヶ月〜7歳である。
【0005】
鼓膜切開管の配置は、典型的には外来手術として全身麻酔下で行われる。典型的には、まず医師が手持ち式の円錐形の検鏡を用いる顕微鏡的視覚化によって外耳道及び鼓膜を診察する。次いで医師は、典型的には円錐形の検鏡を通して医師が前進させる標準的な小型のプロファイルメスを用いて、鼓膜の切開(「鼓膜切開術」)を行う。多くの場合、次いで医師は、鼓膜切開管を保持して鼓膜切開内へと前進させるために基本ツールを典型的には用いて、鼓膜を通して鼓膜切開管を配置する。次いで医師は、その管を通して吸引装置を中耳へと通過させて、中耳から体液/浸出液を吸引する。
【0006】
広範な種類の鼓膜切開管が市販されていることに加え、その他多くの種類の管が提案されてきた。鼓膜切開術を行うため、及び単一の処置アセンブリを用いて鼓膜切開管を配備するためのシステムもまた提案されてきた。近年では、鼓膜切開を形成するためのレーザーエネルギーを用いるシステム、耳道の撮像のためのビデオシステムなどを含め、耳組織の診断又は処置のためのより複雑かつ高価なシステムが提案されている。鼓膜切開管及び管配置システムに代わるものとして提案されているこれらの様々なシステムは、様々な程度で受け入れられてきた。提案された代替システムの中には、複雑すぎるもの、高価すぎるもの、及び/又は効果的でないものがある。したがって、標準的な管及び管配置術並びに装置が主に使用されてきた。
【0007】
標準的な鼓膜切開管配置術は効果的であり、かつかなり安全である。しかし、更なる改善が望まれる。例えば、上述の標準的な管配置術は複数の道具(検鏡、メス、管配置装置)を必要とし、通常は患者に全身麻酔を施す必要がある。施術者が行う複数の工程及び装置の使用、並びに/又は患者の移動が原因で、腹膜切開管配置のエラーが発生する場合がある。長時間にかけて静止した体位を維持することは小児にとって難しいため、エラーの可能性は、局所麻酔下での小児の手術のときに増す。
【0008】
現在利用可能な管配置法の1つの欠点は、理想より早く鼓膜切開管が鼓膜から落下する可能性があることである。その可能な原因として挙げられるのは、標準的な鼓膜切開管上の遠位フランジが通過できるようにするために鼓膜切開を十分に大きくしなくてはならず、したがって、典型的な鼓膜切開は、管を定位置に保持するために理想的な大きさより大きくなる場合があることである。
【0009】
現在利用可能な管配置法のもう1つの欠点は、鼓膜切開管を挿入するために必要な鼓膜切開が比較的大きく、治癒の過程での瘢痕化の増加を引き起こし得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記を鑑み、圧力均等化管を鼓膜に送達するための改善された装置、システム、及び方法を提供することが望まれるであろう。複数の装置及び施術者による複数の工程を必要としない鼓膜管配置がこれらの改善によって可能になることは、一般的に有用であろう。これらの利点の少なくともいくつかは、本明細書に記述されている実施形態によって提供され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、鼓膜均等化管(すなわち、鼓膜切開管)を鼓膜に自動的に穿刺及び送達するためのシステム及び方法を提供する。
【0012】
一態様において、システムは、圧力均等化管を送達するために提供される。このシステムは、ハンドルを含むハウジングを含む。細長いシャフトアセンブリをハウジングと連結する。シャフトアセンブリは、先の尖っていない(組織を傷つけない)遠位先端部を有する外側シャフトを含む。細長いシャフトの遠位先端部は、外側シャフトの残りの部分の内径以上の内径を有する。カッタは、細長いシャフトの内部で直線的に移動可能である。プッシャは、細長いシャフトの内部でカッタの上に摺動式に配置される。圧力均等化管は、プッシャの遠位端でカッタの周囲に摺動式に配置される。シールドは、プッシャ及び圧力均等化管の上に摺動式に配置される。拡張器は、シールドの上に摺動式に配置される。一代替実施形態において、カッタ及び拡張器は、以下に記述するように1つの特徴として組み合わされ得る。
【0013】
システムはカムアセンブリもまた含む。カムアセンブリは、ハウジングの内部に回転式に連結されたカムシャフトを含む。カムシャフトは、第1のカムプロファイル、第2のカムプロファイル、第3のカムプロファイル、及び第4のカムプロファイルを含む。第1のカムフォロワは、第1のカムプロファイルに可動に連結される。第1のカムフォロワはカッタに取り付けられる。第2のカムフォロワは、第2のカムプロファイルに可動に連結される。第2のカムフォロワはプッシャに取り付けられる。第3のカムフォロワは、第3のカムプロファイルに可動に連結される。第3のカムフォロワはシールドに取り付けられる。第4のカムフォロワは、第4のカムプロファイルに可動に連結される。第4のカムフォロワは拡張器に取り付けられる。
【0014】
一実施形態において、ハウジングとカムシャフトとの間でバネを付勢することができる。バネは、カムシャフト上にねじれを与える巻かれた位置と、解放位置とを有する。
【0015】
解放ボタンはカムシャフトに可動に連結され得る。解放ボタンは、バネを巻かれた位置に維持する第1の位置と、バネが解放位置に移動することを可能にする第2の位置とを有する。解放ボタンを解放位置に移動すると、バネが解放されてカムシャフトを移動し、カムフォロワがシャフトアセンブリのそれぞれ対応する部分を直線的に移動して、カッティング部材を用いて鼓膜に切開を形成し、拡張器を用いて切開を拡張し、プッシャを用いて圧力均等化管をシールドの外に出し切開内に前進させることを引き起こす。
【0016】
別の態様において、耳の鼓膜に切開を形成し、圧力均等化管を配置するための方法が提供される。この方法は、管送達装置のシャフトの先の尖っていない(組織を傷つけない)遠位端を鼓膜と接触することを含む。シャフト遠位端の外にカッタを前進させて、鼓膜に切開を形成する。拡張器は、カッタの少なくとも一部分の上に配置される。カッタの上及び拡張器の内部に配置されたシールドをシャフト遠位端から切開へと前進させて、拡張器を拡張する。シールドを圧力均等化管の上に配置する。カッタをシャフト内に格納する。シールドをシャフト内に格納することにより、圧力均等化管の遠位フランジが拡大構成をとるように圧力均等化管の遠位フランジを解放する。シールド内部に配置されたプッシャを用いて、圧力均等化管をシールドの外に押し出すことにより、圧力均等化管の近位フランジが拡大構成をとるように圧力均等化管の近位フランジを解放する。シールドから押し出された後、圧力均等化管の中間部分は鼓膜の切開の内部に配置され、遠位フランジ及び近位フランジは切開の対向する側に配置される。
【0017】
有利なことに、そのようなシステム及び方法は、システムを耳道へ前進させて解放ボタンを起動するなど、最小限の工程で施術者が鼓膜均等化管の自動送達を行うことを可能にする。
【0018】
発明の性質及び利点を更に理解するために、添付の図と共に下記の説明を参照すべきである。しかし、各図は、あくまで図示及び説明を目的として与えられるものであって、本発明の実施形態の範囲を限定することを目的とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1B】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1C】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1D】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1E】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1F】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1G】本発明の2つの実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの図。
【図1H】図1A〜1Dの送達システムの分解図。
【図1I】図1E〜1Gの送達システムの分解図。
【図1J】図1A〜1Dの送達システムの内部部分の部分側面図。
【図1K】図1A〜1Dの送達システムの内部部分の部分側面図。
【図1L】図1E〜1Gに図示した送達システムのカム/スイッチ接触面の内部部分の図。
【図1M】図1E〜1Gに図示した送達システムのカム/スイッチ接触面の内部部分の図。
【図1N】図1E〜1Gの送達システムの内部部分の部分側面図。
【図1O】図1E〜1Gの送達システムの内部部分の部分側面図。
【図1P】図1A〜1Gの送達システムの遠位先端の断面図。
【図2A】本発明の一実施形態による変位及び動作図。
【図2B】本発明の一実施形態による変位及び動作図。
【図3】本発明の一実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システムの斜視図。
【図4A】本発明の2つの実施形態による一体化されたカッティング部材及び拡張器の斜視図及び側面図。
【図4B】本発明の2つの実施形態による一体化されたカッティング部材及び拡張器の斜視図及び側面図。
【図4C】本発明の2つの実施形態による一体化されたカッティング部材及び拡張器の斜視図及び側面図。
【図4D】本発明の2つの実施形態による一体化されたカッティング部材及び拡張器の斜視図及び側面図。
【図4E】本発明の一実施形態による、使用中の送達システムの遠位先端の断面図。
【図4F】本発明の一実施形態による負圧作動システムの概略図。
【図5A】本発明の一実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5B】本発明の一実施形態による鼓膜均等化管の側面図。
【図5C】本発明の一実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5D】本発明の複数の実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5E】本発明の複数の実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5F】本発明の複数の実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【図5G】本発明の複数の実施形態による鼓膜均等化管の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態は、鼓膜均等化管を鼓膜に自動的に穿刺し送達するためのシステムを提供することを目的とする。本発明の実施形態によると、鼓膜均等化管送達システムは、専用ハンドグリップを有するハウジング又は把持可能なハウジングを概して含む。シャフトは鼓膜に到達するためにハウジングから延出し、鼓膜均等化管はシャフト先端の内部に収められる。内部のバネ仕掛けのカム系機構はハウジングの内部に位置付けられ、ボタンに連結される。この機構を起動して、鼓膜を穿刺し鼓膜均等化管を送達する迅速かつ自動的なプロセスを開始することができる。鼓膜均等化管は、管の内部に折り畳まれた及び/又は圧縮されたグロメット様の装置であり、鼓膜内に送達されたとき、その形を回復する。
【0021】
使用に際し、施術者はハンドグリップでハウジングを把持し、シャフトの先端を鼓膜と接触させる。次いで、施術者はボタンを押圧することによりカム系機構を起動する。次いで、システムは自動的に鼓膜均等化管を鼓膜に穿刺し挿入する。このように、使用のために要求される施術者による工程が最小限の、シンプルかつ効果的な送達システムが提供される。
【0022】
本発明の実施形態は、視覚化、他の医療装置の案内、鼓膜均等化管の送達、鼓膜の穿刺、及び鼓膜の麻酔のための一連の医療装置と共に使用するための適合性がある。そのような医療装置の例は、同一出願人による米国特許出願第11/749,733号に示されており、その全体は参照により組み込まれる。したがって、米国特許出願第11/749,733号の態様を本明細書に開示されている実施形態と統合すること、組み合わせること、共に使用することが可能である。
【0023】
送達システムの代表的な構成:
以下に、2つの代表的なシステムについて記述し、別々の図(図1A〜1G)に示す。可能な限り同じ番号スキームを使用して、それぞれのシステムの構成要素を識別する。システムの構成要素の機能が異なるときは説明を追加する。
【0024】
図1E〜1Gに図示したシステムは、図1A〜1Dに図示したシステムに勝るいくつかの利点を有する。そのハウジング設計は、よりよい安定性及び人間工学的グリップを提供し、使用中の装置の安定性を高める。バネ114は送達システム100の近位端に移動され、より均等で安定な鼓膜均等化管の送達を助ける。
【0025】
図1A〜1Gは、本発明の一実施形態による、鼓膜均等化管を鼓膜に送達するための送達システム100を示す。送達システム100は、図1E〜1Gに図示した全体設計に図示されているようなハンドル又は取っ手の設備を有するハウジング102を含む。シャフトアセンブリ104はハウジング102に取り付けられる。シャフトアセンブリ104は1つ以上の細長い管で構築され、耳道又はシャフトアセンブリ104の有意な変形を要さずに、シャフトアセンブリの遠位部分を耳道の蛇行した経路に通すために十分に小さい(例えば2mm)外径を有するように構成される。多くの実施形態において、シャフトアセンブリは、鼓膜への到達を容易にするために予め形成された湾曲を有する。いくつかの実施形態において、シャフトアセンブリは、耳道に通すことを助けるようにユーザによって調整可能な可鍛材料で作製される。鼓膜均等化管(図示せず)は、シャフトアセンブリ104の遠位部の内部に好ましくは収容される。解放ボタン106は、ハウジング102を貫通して突出する。解放ボタン106は、シャフトアセンブリ104による鼓膜の自動穿刺、及びその穿刺された鼓膜への鼓膜均等化管の挿入を引き起こす内部機構を解放するように構成される。使用の際、送達システム100を使用して、シャフトアセンブリの遠位部を患者の耳の鼓膜と接触させる、又はその間近に置く。次いで、解放ボタン106を操作して内部機構を解放すると、シャフトアセンブリは自動的かつ迅速に鼓膜を穿刺し、かつまた迅速に鼓膜均等化管をその穿刺された鼓膜内へ送達する。
【0026】
図1H/1Iは、送達システム100の部分分解図を示す。ハウジング102は、クラムシェル方式で合体する第1のハウジング部分108と第2のハウジング部分110とから成る。カムシャフト112は、第1のハウジング部分108と第2のハウジング部分110との間に回転式に収容される。カムシャフト112はまた、ハウジング102とカムシャフト112との間で付勢(すなわち、巻回)され得るバネ114に連結される。シャフトアセンブリ104は、4つのカムフォロワ120a、120b、120c及び120dに可動式に取り付けられ、それぞれのフォロワは、ハウジング102の内部にシャフトアセンブリ104の軸A−Aに沿って摺動式に収容される。カムフォロワ120a〜dは、摺動式ブロックとして構成される。解放ボタン106は、ハウジング102の内部に装着されるか、ないしは組み込まれるボタンハウジング116の内部で摺動式に移動可能である。リンク118は、カムシャフト112の一部分と解放ボタン106との間で可動式に接続される。解放ボタン106は、リンク118をカムシャフト112から離脱するために移動又は解放することができ、バネ114が少なくとも部分的にカムシャフト112を巻き戻し回転することを可能にし、それによってカムフォロワ120a〜dを移動し、それによってシャフトアセンブリ104の部分を動かして鼓膜を自動的に穿刺し、かつまた鼓膜均等化管をその穿刺された鼓膜に送達することができる。多くの実施形態は他の起動機構を使用することができ、例えば、1つ以上の溶解可能(fusable)なリンクをボタン106によって作動してもよい。溶解可能なリンクは、摩滅してカムシャフト112から離脱するように作動され得る。いくつかの実施形態では、釣り合い重りバネ147を使用して、バネ114からカムシャフト112及びリンク118を通って解放ボタン106に伝達される荷重を相殺することができる。これは、最小限の力で解放ボタン106がリンク118を移動又は解放することを可能にする。他の実施形態は、取り扱い中に解放ボタンを定位置に保持し、装置の不要な作動の回避を助ける留め金148もまた含む場合がある。
【0027】
図1J/1Kは、第2のハウジング部分110が取り除かれた送達システム100の一部分を示す。第1のカムフォロワ120aは、カッティング部材121aの近位部に接続される。カッティング部材121aは細長いワイヤ又は管であり、その遠位端で鼓膜を穿刺するための突起(例えば、尖れた先端)を有する。第2のカムフォロワ120bは、第1のカムフォロワ120aに直接隣接している。第2のカムフォロワ120bは、プッシャ121bの近位部に接続される。プッシャ121bは細長い管であり、その内部にカッティング部材121aが摺動式に置かれる。第3のカムフォロワ120cは、シールド121cの近位部に接続される。シールド121cは細長い管であり、その内部にプッシャ121bが摺動式に置かれる。第4のカムフォロワ120dは、拡張器121dの近位部に接続される。拡張器121dは、つぼまった位置から拡大した位置へ拡大可能な遠位先端を有する細長い管である。シールド121cは、拡張器121dの内部に摺動式に置かれる。外側シャフト121eは、第1のハウジング部分108に取り付けられる。外側シャフト121eは、遠位に開口部を有する細長い管であり、ステンレススチールのような剛性材料で構築され得る。
【0028】
4つのカムフォロワ120a〜dはピン122a〜dを含み、カムフォロワチャンバ130内に収容される。それぞれのピン122a〜dは、トラック123a〜dの内部で摺動可能であるトラック123a〜dは、カムシャフト112の円周にある凹凸のある溝である。それぞれのピン122a〜dは対応するカムフォロワ120a〜dに取り付けられるので、ピン122a〜dの移動は、対応するカムフォロワ120a〜d及びシャフトアセンブリ104のそれぞれ対応する部分を移動する。例えば、カムシャフト112が回転するとピン122aはトラック123aを辿り、軸A−Aに平行に移動して、カムシャフト112の回転運動を軸A−Aに沿ったカッティング部材121aの直線運動に変換する。同様に、トラック123bはプッシャ121bに対応し、トラック123cはシールド121cに対応し、トラック123dは拡張器121dに対応する。
【0029】
起動機構チャンバ124は、ボタンハウジング116を収容する。起動機構チャンバ124は、ボタン106を通過させるための開口部を含む。第1のハウジング部分108は、カムシャフト112のための回転装着点を含むカムシャフトチャンバ126の内部にカムシャフト112を保持した状態で示されている。カムシャフト112の一部はバネチャンバ128内に延出し、そこでバネ114はカムシャフト112に装着される。バネ114は、カムシャフト112とバネチャンバ128の一部分との間で付勢されるように巻くことができる。カムフォロワ120a〜dは、フォロワチャンバ128の内部で直線配列される。
【0030】
図1L及び1Mは、より一貫した作動運動及び力を提供する改善された起動機構の更なる詳細を示す。
【0031】
図1Lは、カムシャフト112の端から延出するカムシャフト歯150を示す。リンク118から延出するリンク歯151は、リンク118が解放ボタン106によって定位置に保持されたときのカムシャフト112の回転運動を阻止する。
【0032】
図1Mは、解放ボタン106とリンク118との間の接触面152の斜視図を示す。解放ボタン106の横方向の移動は、解放ボタン106とリンク118との間の接触面152を離脱し、リンク118がリンクピン132(図1Lに図示)の周囲を旋回することを可能にし、バネ114がカムシャフト112を少なくとも部分的に巻き戻し回転することを可能にする。上述のように、釣り合い重りバネ147を使用して、バネ114からカムシャフト112及びリンク118を通って解放ボタン106に伝達される荷重を相殺することができる。これは、最小限の力で解放ボタン106がリンク118を移動又は解放することを可能にする。
【0033】
図1N/1Oは、第1のハウジング部分108/110が取り除かれた送達システム100の一部分を示す。第2のハウジング部分110の内部は第1のハウジング部分108とほぼ同様であり、第1のハウジング部分108と合体したときに、起動機構チャンバ124と、カムシャフトチャンバ126と、バネチャンバ128(図示せず)と、フォロワチャンバ130とを形成する内部部材を含む。リンク118は、リンクピン132によって第2のハウジング部分110/108と結合される。リンク118は、解放ボタン106とカムシャフト112の一部分との間でリンクピン132の周囲を旋回する。バネ114(図示せず)は、カムシャフト112とバネチャンバ128の一部分との間で付勢されるように巻かれ、リンク118によって付勢された位置に保持され得る。ボタン106を押圧してリンク118をカムシャフト112から外すことができ、そうすると、巻かれたバネ114が巻き戻り、カムシャフト112が回転する。カムシャフト112は、第1又は第2のハウジング部分108、110の物理的停止部に当たるまで回転することになる。ボタン106は、ボタン106を押すことができるようにするために、オンの位置からオフの位置に切り替えるか若しくは取り外さなくてはならない、例えば摺動式ピン、ボタンカバー、又は留め金のような安全機構(図示せず)に連結することができる。
【0034】
多くの実施形態において、送達システム100は、患者へのショックを軽減するためにノイズ緩和のための突起を含む。バネ114が解放された後、カムシャフト112は第1又は第2のハウジング部分108、110の停止部に当たるまで回転し、患者にショックを与える不要なノイズをもたらす場合がある。カムシャフト112及びバネ114は、潤滑剤、及びゴム停止部149のようなノイズ緩和部材(例えば、図1I〜図1Kに図示したような)を含むことができる。第1又は第2のハウジング部分はまた、急な停止の代わりに、徐々にカムシャフト112を停止する非共中心形の表面を使用してもよい。ハウジング102における音のバフリングは、音を塞ぐため及び/又は直接音を耳から離すために使用してもよい。患者へのショックを軽減するために、送達システム100の使用の直前に、選択した周波数及び振幅での音のチューニングを採用してもよい。音のチューニングを用いてノイズを導入することにより、あぶみ骨とつながっている筋肉が収縮し、内耳へのノイズの伝達が軽減される。送達システム100によって生成されるノイズに患者を慣れさせることによってショックを軽減するために、徐々に患者にもたらされるノイズの生成を音のチューニングに含めてもよい。
【0035】
図1Pは、シャフトアセンブリ104の遠位端の断面図を示す。カッティング部材121aは、伸張ワイヤ136に接続された菱形のカッティングヘッド134である。好ましくは、菱形のカッティングヘッド134は、最小限の軸力で鼓膜を容易に穿刺することができる単一の尖った点へと導かれる複数の小平面で構成される。カッティング部材121aは、菱形のカッティングヘッド134の使用に限定されない。多くの実施形態において、カッティング部材121aは、ナイフエッジ先端又はコアリング針/非コアリング針を採用する。カッティング部材121Aは、鼓膜のより多くの場所へのアクセスを可能にし得る面取られた楔形又は平面形を採用してもよい。概して、カッティング部材121aは、適正なサイズの任意のカッティングヘッド134を使用することができる。いくつかの実施形態において、カッティングヘッド134の形は、TM(鼓膜)にフラップを形成しない鼓膜切開術(すなわち、TMを切開すること)を可能にすることができる。
【0036】
拡張器121dは、つぼまった位置から拡大した位置に拡大可能な折り畳み式先端138を有する。図のように、つぼまった位置にあるときの折り畳み式先端138は、円錐様の形を有する。つぼまった位置にあるときの折り畳み式先端138は、菱形のカッティングヘッド134の裏と隣接する。折り畳み式先端138は、管の遠位端に複数の三角形の切れ目を作って折り畳み部材を形成し、それらの折り畳み部材を畳んで円錐にすることによって形成することができる。折り畳み式先端138は一般には2つの折り畳み部材のみを必要とするが、この実施形態では4つの折り畳み部材が使用されている。
【0037】
シールド121cは、拡張器121dの内部に及び折り畳み式先端138に近位に配置される管である。シールド121cを遠位方向に移動すると、シールド121cは折り畳み式先端138を強制的に開くことができる。真っ直ぐな鼓膜均等化管140は、シールド121cの内部に配置される。鼓膜均等化管140は、シールド121cの内部で拘束され、シールド121cの内部で真っ直ぐな構成に強制された管140の近位フランジ及び遠位フランジは、定位置に留まるためにシールド121cの内径に一定の拡大力を適用する。鼓膜均等化管140は、鼓膜均等化管140の取り出しを可能にするために、菱形のカッティングヘッド134の外径より大きい内径を有することができる。鼓膜均等化管140は、菱形のカッティングヘッド134の移動中の鼓膜均等化管140のわずかな変形/ストレッチを可能にする弾性材料を含むことができるので、鼓膜均等化管140はまた、菱形のカッティングヘッド134の外径以下の内径を有することもできる。プッシャ121bは、折り畳まれた鼓膜均等化管140に近位に配置された管である。プッシャ121bを遠位に移動して、折り畳まれた鼓膜均等化管140をシールド121cから押し出すことができる。
【0038】
外側シャフト121eは拡張器121dを取り囲んでおり、シャフトアセンブリ104の他の部分の動きに対して定常である。外側シャフト121eは、シャフトアセンブリ104に軸方向の剛性を提供するものであり、ステンレススチールのような金属で形成することができる。先端142は、外側シャフト121eの遠位端に取り付けられる。管140の正確な配置を可能にするために、管140、及び送達システム100に隣接する解剖学的構造の視覚化を可能にするよう、透明な材料で先端を構成することができる。あるいは、先端142を外側シャフト121eと同じ材料の片で形成してもよい。先端142は、外側シャフトの内径より大きい内径を含む。先端142のこのより大きい内径は、プッシャ121bによって前進させられたときに、鼓膜均等化管140の近位フランジがその拡大された/拘束されていない構成へと先端142の内部で開かれることを可能にする。先端142の内部での近位フランジのこの拡大は、均等化管140全体の、鼓膜切開を貫通して中耳内への前進を防ぐのに役立つことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、圧力/接触/距離センサを先端142に連結することができる。センサは、先端142が鼓膜と接触したとき又は鼓膜の近くにあるときに信号を提供する。信号はハウジング102上のビジュアルインジケータ(例えば、LED)を起動して、先端142が鼓膜均等化管140を鼓膜へ挿入するための適正な位置にあることを示すことができる。センサは圧電性でも、光学性でも、容量性でもよく、あるいは任意の他の好適なセンサでもよい。信号は、カムシャフト112の起動運動又は本明細書に記述したような音のチューニング動作のような他の動作もまた起動することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、鼓膜によりよくアクセスするようにシャフトアセンブリ104の遠位部を構成することができる。鼓膜は円錐形を有し、耳道の軸に対して角度を成している。したがって、シャフトアセンブリ104の遠位端は、最適でない角度(例えば、垂直でない角度)で鼓膜と接触する可能性がある。この場合、施術者は、圧力均等化(PE)管の完全な送達を確実にするために十分な圧力を鼓膜に適用する前に、誤って停止してしまう可能性がある。他の場合、施術者は過度に補正をし、強すぎる圧力を鼓膜に与え、結果としてシャフトアセンブリ104の先端を鼓膜に貫通させてしまう可能性がある。これらの状況を克服するために、シャフトアセンブリ104の遠位部は、シャフトアセンブリ104の遠位先端が鼓膜によりよくアクセスできるように角度を取り入れることができる。使用の際、施術者はシステム100の全部又は一部を回転させて、シャフトアセンブリ104の遠位先端を鼓膜に対して最適な位置に置くことができる。いくつかの実施形態において、シャフトアセンブリ104は、施術者がシャフトアセンブリ104を所望の位置に曲げることができるように可鍛性である。
【0041】
いくつかの実施形態では、シャフトアセンブリ104の遠位先端が鼓膜を押圧したときに、シャフトアセンブリ104の遠位先端が自動的に最適な位置へと調整されるように、シャフトアセンブリ104の外側シャフト121eは可撓性区域を含む。例えば、外側シャフト121eの一部分は、シャフトアセンブリ104の遠位先端が鼓膜を押圧したときに弾性的又は可塑的に圧縮するバネセクション、アコーディオンセクション、又はステント様のスカフォールドを使用することができる。先端の圧縮は、鼓膜に適用されている圧力の量に関する視覚的なフィードバックを施術者に与えることができる。いくつかの実施形態において、外側シャフト121eは、外側シャフト121eの中間部分と外側シャフト121eの遠位端との間に螺旋セクションが存在するようにレーザーカット部分が取り除かれている。螺旋セクションは、十分な圧力が適用されたときだけに屈曲するように構成することができるので、適正な鼓膜均等化管140の送達を確保するには、施術者は完全に圧縮するために十分な圧力を螺旋セクションの少なくとも1つの側に適用する必要がある。いくつかの実施形態では、シャフトアセンブリ104のすべて又は別個の部分は同様の可撓性区域を含むこと、かつ/又は可撓性材料で構築されることができ、例えば、カッティング部材121aを超弾性材料(例えば、ニッケル−チタン合金)で構築することができる。
【0042】
代表的な送達システムの動作方法:
図2Aは、カムシャフト112の変位図200及びそれに対応して耳道の内部に配置されたシャフトアセンブリ104の遠位先端の略図を示し、先端142は鼓膜TMに当たっている。変位図200は、軸X及びYに沿った対応するそれぞれのトラック123a〜dのパターンを示す。軸Yは、カムシャフト112の円周に沿ったトラック123a〜dの直線変位を表す。軸Xは、トラックの垂直軸Yの直線変位を表す。
【0043】
前述したように、ピン122a〜dは、トラック123a〜dの移動を追従する。ピン122a〜dは、対応するカムフォロワ120a〜dに取り付けられる。したがって、ピン122a〜dの移動は、軸Xに平行な軸A−Aに沿った対応するカムフォロワ120a〜dの移動及びシャフトアセンブリ104のそれぞれ対応する部分の移動をもたらす。それぞれのトラック123a〜dは、様々な位置での変位数値と共に示されている。変位数値は、先端142の遠位端と、関係するシャフトアセンブリ104の部分121a〜dの最遠位部との間の距離を、ミリメートル単位で表す。シャフトアセンブリ104の遠位先端の図は、変位図に対して段階的に増す位置を示すが、シャフトアセンブリ104及びカムシャフト112の移動は1つの連続的な移動である。様々な実施形態において、カムシャフト112は、ボタン106が押圧された後、約5ミリ秒〜約500ミリ秒で初期位置から最終位置に回転することができる。換言すれば、ボタン106が押圧されたときから装置100を用いて圧力均等化管140がTM内に配備されるまでに、約5ミリ秒〜約500ミリ秒かかる場合がある。いくつかの実施形態では、この時間は約30ミリ秒〜約250ミリ秒である場合があり、平均時間は約100ミリ秒〜約130ミリ秒である。他の実施形態では、この時間は上記の範囲外である場合がある。
【0044】
1.カムシャフトの初期位置:
カムシャフト112の初期位置で、シャフトアセンブリ104は図1Pに示したように位置付けられる。この位置では、巻かれたバネ114を解放するために、ボタン106はまだ押圧されていない。シャフトアセンブリ104が耳道内に前進されて、それにより先端142が鼓膜TMの一部分と隣接している。カムシャフトの初期位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の0.25mm後(すなわち、近位)にあり、プッシャ121bは先端142の7.04mm後にあり、シールド121cは先端142の4.09mm後にあり、拡張器121dは先端の1.68mm後にある。
【0045】
2.カムシャフトの第1の位置:
カムシャフトの第1の位置で、ボタン106は押圧されて巻かれたバネ114を解放し、カムシャフト112はカムシャフトの初期位置からカムシャフトの第1の位置へと回転する。したがって、本明細書に記述したように、カムシャフトの移動はカムフォロワ120a〜dによるシャフトアセンブリ104のそれぞれ対応する部分の移動を引き起こす。カムシャフトの第1の位置で、カッティング部材121aは鼓膜TMを穿刺し、拡張器121dは追従して穿刺場所を拡張し、直径を拡大する。プッシャ121b及びシールド121cも前進するが、先端142の後に留まる。カムシャフトの第1の位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の2.79mm前(すなわち、遠位)にあり、プッシャ121bは先端142の1.66mm後にあり、シールド121cは先端142の1.04mm後にあり、拡張器121dは先端142の1.37mm前にある。
【0046】
3.カムシャフトの第2の位置:
カムシャフト112は、第1のカムシャフトの位置から第2のカムシャフトの位置へと回転する。カムシャフトの第2の位置で、シールド121cは先端142を前進して拡張器121bの折り畳み式先端138を開き、穿刺場所を更に拡張し、カッティング部材121aは拡張器121bの後に格納される。プッシャ121bも前進するが、先端142の後に留まる。カムシャフトの第2の位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の0.58mm前にあり、プッシャ121bは先端142の1.55mm後にあり、シールド121cは先端142の0.66mm前にあり、拡張器121dは先端142の1.37mm前に留まる。
【0047】
4.カムシャフトの第3の位置:
カムシャフト112は、カムシャフトの第2の位置からカムシャフトの第3の位置へと回転する。第3のカムシャフトの位置で、カッティング部材121及び拡張器121dは先端142の後に格納される。シールド121cもまた格納され、一方、プッシャ121bは前進して、鼓膜均等化管140を部分的にシールド121cの外へ押し出す。鼓膜均等化管140の内側フランジ144(又は「遠位フランジ」)はシールド121cから押し出され、鼓膜の内側(又は「遠位」)に拡大する。カムシャフトの第3の位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の1.78mm後にあり、プッシャ121bは先端142の1.45mm後にあり、シールド121cは先端142の1.02mm後にあり、拡張器121dは先端142の1.23mm後にある。
【0048】
5.カムシャフトの最終位置:
カムシャフト112は、カムシャフトの第3の位置からカムシャフトの最終位置へと回転する。カムシャフトの最終位置で、カッティング部材121a、シールド121c、及び拡張器121dは、第3のカムシャフトの位置に対して定常である。プッシャ121bは最終位置へと前進するが、先端142の後に留まり、鼓膜均等化管140の外側フランジ146(又は「近位フランジ」)をシールド121cの外へ押し出して、装置100の先端142の内部で鼓膜の外側(又は「近位」)に拡大する。カムシャフトの最終位置で、カッティング部材121aは先端142の最遠位端の1.78mm後にあり、プッシャ121bは先端142の0.84mm後にあり、シールド121cは先端142の1.02mm後にあり、拡張器121dは先端142の1.23mm後にある。
【0049】
カムシャフト設計の代替実施形態を図2Bに図示する。図示したようにカムのトラックに沿ってわずかに修正された前進点を除き、上述した様々なカムシャフトの位置の参照はこの実施形態にも適用可能である。最も顕著な変化は、カムシャフトの最終位置において、図2Aのカムシャフトの図と比べて、シールド123cがシャフト内の更に奥へ格納されることである。
【0050】
内側フランジ144と外側フランジ146とがTMを挟んだ状態で、圧力均等化管140が上手く配置されたら、次いで、管140を残してシャフトアセンブリ104を耳道から引き出すことができる。次いで、所望により患者のもう一方の耳で第2の装置100を使用して、又は第1の装置100に別の均等化管140を装填して、上記の工程を繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、装置100は再装填可能である場合があり、代替実施形態では、装置100は単回使用装置のみである場合がある。したがって、上述の方法によると、先端142を鼓膜TMに当てて送達システム100を耳道の内部に単純に位置付け、ボタン106を押圧することによって、送達システム100は、鼓膜TMの穿刺と鼓膜均等化管140の送達との両方を1つの効果的な動作によって行う。
【0051】
送達システムの代替構造:
図3を参照すると、一代替実施形態において、鼓膜圧力均等化管送達システム300は、送達システム300を作動するためのペンシルグリップ302ハンドル及びトリガ304を含むことができる。送達システム300は送達システム100と同様に構成されてよく、内部にほぼ同様の鼓膜均等化管送達機構とシャフトアセンブリとを含むことができる。しかし、送達システム300は、標準的な鼓膜切開穿刺刃のグリップと人間工学的に同様であってよいペンシルグリップ302を特徴とする。トリガ304は、図示したシステム300の上部のような任意の便利な人間工学的な場所に配置されてよい。他の代替実施形態では、図1E〜1Gに図示した構成を含む他のハンドル及び/又はトリガの構成を使用してもよい。
【0052】
ここで図4A〜4Dを参照すると、2つの代替実施形態において、TM管送達装置はその遠位端に、カッタと拡張器とを別々に含むのでなく、カッティング拡張器400を含むことができる。換言すると、カッティング拡張器400では、カッティング部材121aと拡張器121dとが一体化されている。カッティング拡張器400は鼓膜を穿刺する能力を有し、穿刺部位を拡張する拡大能力もまた有する。カッティング拡張器400は、円錐形に配置された複数の指402を含む。図の実施例では、4つの指402が使用されている。概して、指402が多いほど容易な拡大が可能である。指402の少なくとも1つは、鼓膜を穿刺するための尖った先端(図4A及び4B)又はカッティングブレード(図4C及び4D)を含む。カッティング拡張器400は、閉じた構成から拡張した構成に拡大可能な任意の好適な材料で作製され得る。例えば一実施形態において、拡張器400は超弾性ニッケル−チタン合金で形成され得る。別の実施形態において、カッティング拡張器400は、カッティング拡張器400が拡張したときにその拡張した構成をほぼ維持するように可鍛材料で形成され得る。
【0053】
一代替実施形態において、図4Eは、シャフトアセンブリ404の遠位端の代替構造及び使用方法を示す。シャフトアセンブリ404は、図1Eに示すシャフトアセンブリ104と同様に構築される。しかし、外側シャフト406は外壁408及び内壁410を含み、それらの間に空間412がある。空間412は、ハウジング102と接続された負の空気圧と流体接続され得る。ハウジング102は、負圧を空間412に付加することを可能にするための追加トリガ装置を含むことができる。例えば、カムシャフト112の回転によって起動されるポート/弁によってなど、負圧を自動プロセスによって有効にすること及び/又は無効にすることもまた可能である。外側シャフト406は、例えば2つの個別の管、間に接続部材を伴う二重壁押出成形品、又は複数のルーメンを含む単一壁押出成形品から構築することができる。典型的な耳道を通した視覚化及びアクセスを可能にし、かつ任意のTMの象限に到達するように、外側シャフト406の直径は、外側シャフト121eと比べて十分に小さく維持される。外側シャフト406は、鼓膜TMの一部分を正常な位置より上昇させるために鼓膜TMに吸引力を提供することができる。
【0054】
鼓膜を上昇させることは、カッティング部材136の貫通の間のノイズアドミタンスの低減をもたらす。鼓膜を上昇させることは、標的場所の局所的安定化の提供もまた可能にしてシステム100の使用の信頼性を高めることにより、貫通の間のカッティング部材136の偶然の偏位又は滑りを防ぐことができる。また、組織の上昇は、後退ポケットを有する患者に特に有用である場合がある。中耳の負圧によって引き起こされる鼓膜の長期後退は、耳道の浸食及び深いポケットの形成を引き起こす。やがてポケットが皮膚を捕捉し、皮膚嚢胞又は真珠腫を形成する場合がある。後退ポケットが更に進行すると、鼓膜の破壊を引き起こす場合がある。組織の上昇は、解剖学的構造から離れる追加的な空間を鼓膜に遠位に提供することによって、貫通及び鼓膜圧力均等化管140の配置の安全性を高める。したがって、鼓膜切開管の配置を必要とするかなりの患者が何らかの後退を有しているので、組織の上昇によってより大きい患者人口の治療もまた可能になる。
【0055】
図2A/2B及び4Eを参照すると、使用の際、ボタン106を押圧する前に負圧を外側シャフト406の空間412に付加することができる。負圧を付加する前又は後に、外側シャフト406の遠位端を鼓膜TMと接触させること又は接触間近にすることができる。負圧は、鼓膜TMを一時的に外側シャフト406の遠位端に付着させる。次いで、鼓膜TMを引くことによって又は外側シャフト406の遠位端を近位に(すなわち、より外耳に向けて)置くことによって、鼓膜TMの現在の位置から上昇させることができる。組織の上昇は点線から実線への移動によって図示されており、それぞれ鼓膜TMの上昇前の位置及び上昇後の位置を示す。したがって、上昇後、貫通及び鼓膜圧力均等化管140の配置のために、解剖学的構造から離れる追加的な空間が鼓膜TMに対して遠位に提供される。鼓膜TMが所望の位置に上昇された後、ボタン106を押圧して鼓膜TMへの鼓膜圧力均等管140の自動配置を開始する一方で、負圧を鼓膜TMに連続的に付加することができる。鼓膜圧力均等化管140が配置された後、外側シャフト406の空間412への負圧の付加を停止することにより、鼓膜TMを外側シャフト406から開放することができる。あるいは、外側シャフト406の空間412への負圧の付加を図2A/2Bに示す方法の他の点、例えば鼓膜均等化管140の内側フランジ144がシールド121cから押出されて鼓膜に対して内側に拡大した後に、停止することができる。
【0056】
上記の代替実施形態への追加は、装置を作動するための手段としての適用負圧の使用を含むことになる。図4Fは、可能な負圧作動システムの概略図を示す。リンク118に接続された送達システム100の内部のピストン又はベローズ400は、負圧に曝露されると移動して、カムシャフト112の回転を起動することができる。ピストン又はベローズへの負圧は、装置の先端142が鼓膜に当たり、したがって鼓膜に対する装置の位置が確保される位置を得たときに生成され得る。
【0057】
システムは、装置の先端142(鼓膜と接触するところ)と送達システム100の近位端との間の連通を提供する切れ目なく連続した密閉されたルーメンを有する真空チャンバ402を含む。チャンバは、真空シリンダ404及びビストン400及び真空ポート406のような、手術室又は他の臨床設定で通常利用可能な真空ラインを通してのような真空源に取り付けることが可能な真空作動式トリガ機構を含む。
【0058】
上記の実施形態の利点は、鼓膜へのPE管のより正確かつ一貫した配備、装置安定性を高める最低限のボタン作動力、及び装置先端が鼓膜と完全に対向したときの送達システムの作動の確保を含む。
【0059】
鼓膜の上昇のための鼓膜への負圧の付加の代わりに、又はそれと組み合わせて、他の機構又は構造を採用してもよい。例えば、接着剤又は粘着性物質、あるいは微小な棘を使用する機械的適用を使用してもよい。
【0060】
鼓膜圧力均等化管:
図5A及び5Bは、本発明の一実施形態による鼓膜圧力均等化管500を示す。この実施形態では、管500は、シリコーン又は他の何らかの柔軟な弾性材料で作製されたグロメットとして構成され、中耳に排気するように鼓膜の内部に配置される。上述のように、送達システムと組み合わせて多数の好適な圧力均等化管500を使用することができるが、一実施形態において、管500は約2.0mm〜約2.5mm、理想的には約2.3mmの軸長を有することができる。管500は約1.1mmの内径を有することができる。
【0061】
管500の中央ルーメン502は、一体式の内側フランジ504と外側フランジ506とに挟まれている。内側フランジ504及び外側フランジ506は、鼓膜に作り出された開口部から管500が落ちることを防ぐ。外側フランジ504は送達システム100の先端142の内部で拡大されることができ、内側フランジは鼓膜を遠位に通過して拡大するように意図されるので、いくつかの実施形態では、図示したように、外側フランジ504は内側フランジ506より直径が小さくてもよい。代替実施形態では、外側フランジ504及び内側フランジ506は同等の直径である。図1Pに示すように、鼓膜均等化管500の外面は、内側フランジ504及び外側フランジ506を送達システムに装填するために一直線にすることを促進する選択的な可撓性区域508を含む。内側フランジ504及び外側フランジ506は、フランジ504、506を一直線にすることを更に促進することができる選択的なノッチ又は切り取り部504a、506aもまた含むことができる。図5Cは、フランジ504、506のそれぞれに3つのノッチ又は切り取り部504a及び506aを含むそのような実施形態の1つを更に示す。他方のフランジと比べて一方のフランジにより多くのノッチを有すること及び選択的な可撓性区域508を含むことも含め、代替実施形態は、当然、フランジ上のこれらの選択的なノッチ又は切り取り部504a及び506aの任意の組み合わせを含むことができる。
【0062】
図5D〜5Gは、本発明の他の代替実施形態による鼓膜圧力均等化管を示す。場合によっては、図1Pに示すように送達システムの内部で長期間一直線の位置で拘束されると、管のフランジは、TM内への効果的な送達のために十分に速くその拘束されていない自然な位置に跳ね戻る(すなわち、拡大する)ことができない場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、管がその自然な形に再び戻ることを助けるために、内部スカフォールディングが管510、514、518、520の壁の内部に含められる場合がある。そのようなスカフォールディングは、例えば、ニッケル−チタン合金、他の金属、又はポリマー、若しくは他の好適な材料のような超弾性材料又は形状記憶材料から構築することができる。また、これらの実施形態のいずれも、上述した選択的な可撓性区域508を含むことができる。
【0063】
図5Dは、内部ワイヤ512を含む鼓膜圧力均等化管510を示す。ワイヤ512は、管510の迅速な形状回復を提供する。図5Eは、内部二重ループ516を含む管514を示す。二重ループ516は管514、特にフランジの、迅速な形状回復を提供する。図5Fは、複数のワイヤ520を含む管518を示す。複数のワイヤ520を使用することは、管518の均一な形状回復を確実にする。図5Gは、管520の均一な形状回復を促進する内部ステントスカフォールディング522を含む管520を示す。
【0064】
多くの実施形態において、本明細書に開示した鼓膜均等化管は、誤って置かれた鼓膜均等化管の回収を助ける特徴を含むことができる。鼓膜に対して遠位に位置付けられた、誤って置かれた鼓膜均等化管は、特に取り出すことが難しい場合がある。そのような特徴は、鼓膜均等化管の任意の部分に取り付けられたテザーを含むことができる。テザーを鼓膜に対して近位に把持して、誤って配置された鼓膜均等化管を耳の外に引っ張り出すために使うことができる。
【0065】
本発明は、発明の本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態として実施することができる。これらの他の実施形態は、以下の「特許請求の範囲」に記載される本発明の範囲に含まれるものとする。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) 鼓膜に切開を形成し、前記切開内に圧力均等化管を送達するためのシステムであって、
ハンドルを含むハウジングと、
前記ハウジングと連結された細長いシャフトアセンブリであって、
先の尖っていない遠位先端部を有する外側シャフト、
前記外側シャフトの内部を直線的に移動可能なカッタ、
前記外側シャフトの内部で前記カッタの上に摺動式に配置されたプッシャ、
前記プッシャの遠位端で前記カッタの周囲に摺動式に配置された圧力均等化管、
前記プッシャ及び前記圧力均等化管の上に摺動式に配置されたシールド、及び、
前記シールドの上に摺動式に配置された拡張器、を含む、シャフトアセンブリと、
カムアセンブリであって、
前記ハウジングの内部に回転式に連結されたカムシャフトであって、第1のカムプロファイル、第2のカムプロファイル、第3のカムプロファイル、及び第4のカムプロファイルを含む、カムシャフト、
前記カッタに取り付けられる、前記第1のカムプロファイルに可動に連結された第1のカムフォロワ、
前記プッシャに取り付けられる、前記第2のカムプロファイルに可動に連結された第2のカムフォロワ、
前記シールドに取り付けられる、前記第3のカムプロファイルに可動に連結された第3のカムフォロワ、
前記拡張器に取り付けられる、前記第4のカムプロファイルに可動に連結された第4のカムフォロワ、を含む、カムアセンブリと、
前記ハウジングと前記カムシャフトとの間で付勢されたバネであって、前記カムシャフトにねじれ荷重を与える巻かれた位置及び解放位置を有する、バネと、
前記カムシャフトに可動に連結された解放部材であって、前記バネを前記巻かれた位置に維持する第1の位置及び前記バネが前記解放位置に移動することを可能にする第2の位置を有する、解放部材と、を含み、
前記解放部材を前記解放位置に移動すると、前記バネが解放されて前記カムシャフトを移動し、前記カムフォロワが前記シャフトアセンブリのそれぞれ対応する部分を直線的に移動して、前記カッティング部材を用いて鼓膜に切開を形成し、前記拡張器を用いて前記切開を拡張し、前記プッシャを用いて前記圧力均等化管を前記シールドの外に出し前記切開内に前進させることを引き起こす、システム。
(2) 前記ハウジングが、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを含み、それぞれのハウジング部分がクラムシェル型成形品である、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記ハウジング部分が、カムシャフトチャンバと、カムフォロワチャンバと、バネチャンバと、トリガ機構チャンバとを形成する、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記外側シャフトが剛性管から構築される、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記外側シャフトが、外壁と、内壁と、それらの間の空間とを含み、前記空間に負圧を付加することができる、実施態様1に記載のシステム。
(6) 前記負圧を用いて前記解放部材を作動することができる、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記カッティング部材が、菱形ヘッドの先端を有する細長いワイヤを含む、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記シールドが細長い管を含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記圧力均等化管が、ルーメンと、内側フランジと、外側フランジとを有するグロメットを含む、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記内側フランジ及び前記外側フランジが、前記シールドの内部で圧縮される、実施態様9に記載のシステム。
【0067】
(11) 前記圧力均等化管が、内部ワイヤスカフォールディングを含む、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記圧力均等化管が弾性材料で構築され、前記ルーメンとフランジとの間に可撓性の部分を含む、実施態様10に記載のシステム。
(13) 前記フランジが、前記シールドの内部で前記管の圧縮を促進するノッチを含む、実施態様10に記載のシステム。
(14) 前記プッシャが細長い管を含む、実施態様1に記載のシステム。
(15) 前記拡張器が、遠位先端を有する細長い管を含み、前記遠位先端が、つぼまった位置から開いた位置に拡大可能である、実施態様1に記載のシステム。
(16) 前記遠位先端が、前記つぼまった位置でバネ付勢され、前記開いた位置に強制的に開くことができる複数の部材を含む、実施態様15に記載のシステム。
(17) 前記カムシャフトが、回転式に前記ハウジングに取り付けられた第1及び第2の端と、前記第1及び第2の端の間の中間部と、前記第2の端から延出するバネホルダとを有する細長い円筒を含む、実施態様1に記載のシステム。
(18) 前記カムプロファイルのそれぞれが、前記中間部に模様付き溝を含む、実施態様15に記載のシステム。
(19) 前記カムフォロワのそれぞれが、前記ハウジング内に摺動式に収容されたブロックを含み、それぞれのブロックが、それぞれ対応するカムプロファイルを辿るための駆動ピンを含む、実施態様1に記載のシステム。
(20) 前記ブロックが、前記細長いシャフトに対して直線的に配置される、実施態様19に記載のシステム。
【0068】
(21) リンクは前記解放部材を前記カムシャフトに連結し、前記解放部材が、前記第2の位置に移動されたときに前記リンクを押して前記カムシャフトを解放する、実施態様1に記載のシステム。
(22) リンクは前記解放部材を前記カムシャフトに連結し、前記解放部材が、外側に移動されたときに前記リンクを解放して、前記第2の位置に移動されたときに前記カムシャフトを解放する、実施態様1に記載のシステム。
(23) 前記解放部材が、ボタン、トリガ、又はスイッチを含む群から選択される、実施態様1に記載のシステム。
(24) 耳の鼓膜に切開を形成し、圧力均等化管を配置するための方法であって、
管送達装置のシャフトの先の尖っていない遠位端を鼓膜と接触させる工程と、
前記鼓膜内に切開を形成するために前記シャフトの遠位端の外へカッタを前進させる工程であって、拡張器が前記カッタの少なくとも一部分の上に配置される、工程と、
前記拡張器を拡張するために、前記カッタの上及び前記拡張器の内部に配置されたシールドを前記シャフトの遠位端の外へ、かつ前記切開内へと前進させる工程であって、前記シールドが圧力均等化管の上に配置される、工程と、
前記カッタを前記シャフト内に格納する工程と、
前記シールドを前記シャフト内に格納することにより、前記圧力均等化管の遠位フランジが拡大構成をとるように前記圧力均等化管の前記遠位フランジを解放する工程と、
前記シールド内部に配置されたプッシャを用いて、前記圧力均等化管を前記シールドの外に押し出すことにより、前記圧力均等化管の近位フランジが拡大構成をとるように前記圧力均等化管の前記近位フランジを解放する工程と、を含み、
前記シールドから押し出された後、前記圧力均等化管の中間部分は前記鼓膜の前記切開の内部に配置され、前記遠位フランジ及び前記近位フランジが前記切開の対向する側に配置される、方法。
(25) 前記シールドを格納する工程及び前記均等化管を押す工程が同時に生じる、実施態様24に記載の方法。
(26) 前記前進させる工程、格納する工程、及び押す工程が、前記管送達装置上のボタンを押圧することによって開始される、実施態様24に記載の方法。
(27) 前記ボタンを押す前に、前記管送達装置上の安全部材をオフの位置からオンの位置へ移動する工程を更に含む、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記ボタンを押す前に、前記送達装置から安全ロック部材を取り除く工程を更に含む、実施態様26に記載の方法。
(29) 前記カッタを前進させる工程が、前記管送達装置のカムシャフトを第1のカム位置に回転することを含み、それによって第1のカムフォロワが前記カッタを前記外側シャフトの外へ延出し、かつまた前記第4のカムフォロワが前記拡張器を前記外側シャフトの外へ延出する、実施態様24に記載の方法。
(30) 前記シールドを前進させる工程及び前記カッタを格納する工程が、前記カムシャフトを第2のカム位置に回転することを含み、それによって、第2のカムフォロワが前記シールドを前記シャフトの外へ移動して前記拡張器の遠位部を拡大し、かつまた前記第1のカムフォロワが前記カッティング部材を移動して前記シャフト内に戻す、実施態様29に記載の方法。
【0069】
(31) 前記シールドを格納する工程が、前記カムシャフトを第3のカム位置に回転することを含み、それによって、前記第2のカムフォロワが前記シールドを移動して前記外側シャフト内に戻し、かつまた第4のカムフォロワが前記拡張器を移動して前記外側シャフト内に戻し、かつまた第3のカムフォロワが前記圧力均等化管を移動して、前記外側シャフトから部分的に押し出す、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記圧力均等化管を押す工程が、前記カムシャフトを最終位置に回転することを含み、それによって、前記第3のカムフォロワが前記プッシャを更に移動し、前記圧力均等化管を前記外側シャフトから部分的に更に押し出す、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記カムシャフトが、単一の連続運動によって前記第1の位置から前記最終位置に回転される、実施態様32に記載の方法。
(34) 前記圧力均等化管を押す工程及び前記シールドを格納する工程が同時に生じる、実施態様32に記載の方法。
(35) 前記先の尖っていない遠位端を接触させる工程が、前記シャフトの前記先の尖っていない遠位端で前記鼓膜に負圧を付加してTMを上昇させ、前記シャフトの前記遠位端と前記鼓膜との接触を高めることを含む、実施態様32に記載の方法。
(36) 前記付加される負圧が、前記カムシャフトの回転を作動する、実施態様35に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼓膜に切開を形成し、前記切開内に圧力均等化管を送達するためのシステムであって、
ハンドルを含むハウジングと、
前記ハウジングと連結された細長いシャフトアセンブリであって、
先の尖っていない遠位先端部を有する外側シャフト、
前記外側シャフトの内部を直線的に移動可能なカッタ、
前記外側シャフトの内部で前記カッタの上に摺動式に配置されたプッシャ、
前記プッシャの遠位端で前記カッタの周囲に摺動式に配置された圧力均等化管、
前記プッシャ及び前記圧力均等化管の上に摺動式に配置されたシールド、及び、
前記シールドの上に摺動式に配置された拡張器、を含む、シャフトアセンブリと、
カムアセンブリであって、
前記ハウジングの内部に回転式に連結されたカムシャフトであって、第1のカムプロファイル、第2のカムプロファイル、第3のカムプロファイル、及び第4のカムプロファイルを含む、カムシャフト、
前記カッタに取り付けられる、前記第1のカムプロファイルに可動に連結された第1のカムフォロワ、
前記プッシャに取り付けられる、前記第2のカムプロファイルに可動に連結された第2のカムフォロワ、
前記シールドに取り付けられる、前記第3のカムプロファイルに可動に連結された第3のカムフォロワ、
前記拡張器に取り付けられる、前記第4のカムプロファイルに可動に連結された第4のカムフォロワ、を含む、カムアセンブリと、
前記ハウジングと前記カムシャフトとの間で付勢されたバネであって、前記カムシャフトにねじれ荷重を与える巻かれた位置及び解放位置を有する、バネと、
前記カムシャフトに可動に連結された解放部材であって、前記バネを前記巻かれた位置に維持する第1の位置及び前記バネが前記解放位置に移動することを可能にする第2の位置を有する、解放部材と、を含み、
前記解放部材を前記解放位置に移動すると、前記バネが解放されて前記カムシャフトを移動し、前記カムフォロワが前記シャフトアセンブリのそれぞれ対応する部分を直線的に移動して、前記カッティング部材を用いて鼓膜に切開を形成し、前記拡張器を用いて前記切開を拡張し、前記プッシャを用いて前記圧力均等化管を前記シールドの外に出し前記切開内に前進させることを引き起こす、システム。
【請求項2】
前記ハウジングが、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを含み、それぞれのハウジング部分がクラムシェル型成形品である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハウジング部分が、カムシャフトチャンバと、カムフォロワチャンバと、バネチャンバと、トリガ機構チャンバとを形成する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記外側シャフトが剛性管から構築される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記外側シャフトが、外壁と、内壁と、それらの間の空間とを含み、前記空間に負圧を付加することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記負圧を用いて前記解放部材を作動することができる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記カッティング部材が、菱形ヘッドの先端を有する細長いワイヤを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記シールドが細長い管を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記圧力均等化管が、ルーメンと、内側フランジと、外側フランジとを有するグロメットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記内側フランジ及び前記外側フランジが、前記シールドの内部で圧縮される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記圧力均等化管が、内部ワイヤスカフォールディングを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記圧力均等化管が弾性材料で構築され、前記ルーメンとフランジとの間に可撓性の部分を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記フランジが、前記シールドの内部で前記管の圧縮を促進するノッチを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記プッシャが細長い管を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記拡張器が、遠位先端を有する細長い管を含み、前記遠位先端が、つぼまった位置から開いた位置に拡大可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記遠位先端が、前記つぼまった位置でバネ付勢され、前記開いた位置に強制的に開くことができる複数の部材を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記カムシャフトが、回転式に前記ハウジングに取り付けられた第1及び第2の端と、前記第1及び第2の端の間の中間部と、前記第2の端から延出するバネホルダとを有する細長い円筒を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記カムプロファイルのそれぞれが、前記中間部に模様付き溝を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記カムフォロワのそれぞれが、前記ハウジング内に摺動式に収容されたブロックを含み、それぞれのブロックが、それぞれ対応するカムプロファイルを辿るための駆動ピンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記ブロックが、前記細長いシャフトに対して直線的に配置される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
リンクは前記解放部材を前記カムシャフトに連結し、前記解放部材が、前記第2の位置に移動されたときに前記リンクを押して前記カムシャフトを解放する、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
リンクは前記解放部材を前記カムシャフトに連結し、前記解放部材が、外側に移動されたときに前記リンクを解放して、前記第2の位置に移動されたときに前記カムシャフトを解放する、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記解放部材が、ボタン、トリガ、又はスイッチを含む群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項1】
鼓膜に切開を形成し、前記切開内に圧力均等化管を送達するためのシステムであって、
ハンドルを含むハウジングと、
前記ハウジングと連結された細長いシャフトアセンブリであって、
先の尖っていない遠位先端部を有する外側シャフト、
前記外側シャフトの内部を直線的に移動可能なカッタ、
前記外側シャフトの内部で前記カッタの上に摺動式に配置されたプッシャ、
前記プッシャの遠位端で前記カッタの周囲に摺動式に配置された圧力均等化管、
前記プッシャ及び前記圧力均等化管の上に摺動式に配置されたシールド、及び、
前記シールドの上に摺動式に配置された拡張器、を含む、シャフトアセンブリと、
カムアセンブリであって、
前記ハウジングの内部に回転式に連結されたカムシャフトであって、第1のカムプロファイル、第2のカムプロファイル、第3のカムプロファイル、及び第4のカムプロファイルを含む、カムシャフト、
前記カッタに取り付けられる、前記第1のカムプロファイルに可動に連結された第1のカムフォロワ、
前記プッシャに取り付けられる、前記第2のカムプロファイルに可動に連結された第2のカムフォロワ、
前記シールドに取り付けられる、前記第3のカムプロファイルに可動に連結された第3のカムフォロワ、
前記拡張器に取り付けられる、前記第4のカムプロファイルに可動に連結された第4のカムフォロワ、を含む、カムアセンブリと、
前記ハウジングと前記カムシャフトとの間で付勢されたバネであって、前記カムシャフトにねじれ荷重を与える巻かれた位置及び解放位置を有する、バネと、
前記カムシャフトに可動に連結された解放部材であって、前記バネを前記巻かれた位置に維持する第1の位置及び前記バネが前記解放位置に移動することを可能にする第2の位置を有する、解放部材と、を含み、
前記解放部材を前記解放位置に移動すると、前記バネが解放されて前記カムシャフトを移動し、前記カムフォロワが前記シャフトアセンブリのそれぞれ対応する部分を直線的に移動して、前記カッティング部材を用いて鼓膜に切開を形成し、前記拡張器を用いて前記切開を拡張し、前記プッシャを用いて前記圧力均等化管を前記シールドの外に出し前記切開内に前進させることを引き起こす、システム。
【請求項2】
前記ハウジングが、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを含み、それぞれのハウジング部分がクラムシェル型成形品である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハウジング部分が、カムシャフトチャンバと、カムフォロワチャンバと、バネチャンバと、トリガ機構チャンバとを形成する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記外側シャフトが剛性管から構築される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記外側シャフトが、外壁と、内壁と、それらの間の空間とを含み、前記空間に負圧を付加することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記負圧を用いて前記解放部材を作動することができる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記カッティング部材が、菱形ヘッドの先端を有する細長いワイヤを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記シールドが細長い管を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記圧力均等化管が、ルーメンと、内側フランジと、外側フランジとを有するグロメットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記内側フランジ及び前記外側フランジが、前記シールドの内部で圧縮される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記圧力均等化管が、内部ワイヤスカフォールディングを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記圧力均等化管が弾性材料で構築され、前記ルーメンとフランジとの間に可撓性の部分を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記フランジが、前記シールドの内部で前記管の圧縮を促進するノッチを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記プッシャが細長い管を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記拡張器が、遠位先端を有する細長い管を含み、前記遠位先端が、つぼまった位置から開いた位置に拡大可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記遠位先端が、前記つぼまった位置でバネ付勢され、前記開いた位置に強制的に開くことができる複数の部材を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記カムシャフトが、回転式に前記ハウジングに取り付けられた第1及び第2の端と、前記第1及び第2の端の間の中間部と、前記第2の端から延出するバネホルダとを有する細長い円筒を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記カムプロファイルのそれぞれが、前記中間部に模様付き溝を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記カムフォロワのそれぞれが、前記ハウジング内に摺動式に収容されたブロックを含み、それぞれのブロックが、それぞれ対応するカムプロファイルを辿るための駆動ピンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記ブロックが、前記細長いシャフトに対して直線的に配置される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
リンクは前記解放部材を前記カムシャフトに連結し、前記解放部材が、前記第2の位置に移動されたときに前記リンクを押して前記カムシャフトを解放する、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
リンクは前記解放部材を前記カムシャフトに連結し、前記解放部材が、外側に移動されたときに前記リンクを解放して、前記第2の位置に移動されたときに前記カムシャフトを解放する、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記解放部材が、ボタン、トリガ、又はスイッチを含む群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図1K】
【図1L】
【図1M】
【図1N】
【図1O】
【図1P】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図1K】
【図1L】
【図1M】
【図1N】
【図1O】
【図1P】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【公表番号】特表2012−533359(P2012−533359A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520778(P2012−520778)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/042128
【国際公開番号】WO2011/008948
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(506353574)アクラレント インコーポレイテッド (22)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/042128
【国際公開番号】WO2011/008948
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(506353574)アクラレント インコーポレイテッド (22)
[ Back to top ]