鼻用気体供給装置
【課題】快適な使用感を維持したまま、体内に正圧を印加する。
【解決手段】鼻用気体供給装置1は、鼻孔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズル20と、この一対のノズル20を保持する筐体50を備えるようにし、更に、ノズル20と筐体50の間には、一対のノズル20の間隔を切り換える間隔調整機構30を配置するようにした。
【解決手段】鼻用気体供給装置1は、鼻孔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズル20と、この一対のノズル20を保持する筐体50を備えるようにし、更に、ノズル20と筐体50の間には、一対のノズル20の間隔を切り換える間隔調整機構30を配置するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻の鼻腔に気体を供給する際に用いられる鼻用気体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器を用いた呼吸補助装置では、鼻腔内に酸素等の正圧の気体を供給するものが普及している。この種の呼吸補助装置は、一般的に鼻シーパップ(nasal CPAP(nasal continuous positive airway pressure))装置と呼ばれている。鼻には、鼻用気体供給装置が設置され、これを利用して鼻腔内に陽圧を印加する。
【0003】
従来の鼻用気体供給装置として、大きくは2種類が存在する。一つは、いわゆる鼻マスクであり、少なくとも鼻全体を覆う構造となっている。この鼻マスクにチューブを接続し、外部から気体(例えば高圧酸素)を送り込むことで鼻マスク内を正圧にするものである。もう一つは、一対のノズルを備えたいわゆるカニューレであり、このノズルを鼻腔内に挿入して、加圧された気体を直接的に鼻腔内に印加する。
【0004】
なお、この鼻シーパップ装置は、睡眠時の呼吸障害の患者にも利用される。この呼吸障害は、睡眠中に気道の筋肉が弛緩して舌根部や軟口蓋が下がり、気道を閉塞することによって生じる。この種の呼吸障害の患者に対しても、気道に正圧を印加することが必要となる(特許文献1参照)。この際は鼻マスク装置を用いるのが一般的である。この結果、気道における舌根の周囲の軟部組織が拡張されるので、吸気時の気道狭窄を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2927958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鼻マスク装置は、鼻全体を覆うことで気道に正圧を印加するために、鼻全体が密閉空間となることから、息苦しいような不快感を伴うという問題がある。また、この鼻マスク装置が鼻から離脱することを防止するために、各種バンドによって顔に密着させようとすると、利用者は更に不快感を持ちやすいという問題があった。
【0007】
また、カニューレは、そのサイズが大・中・小などが用意されているものの、ノズルの位置が各個人の鼻腔と完全に一致しないという問題があった。結果、常にノズルと鼻腔の位置ずれによって、鼻腔に外力が付与されるので、利用者は不快感を持ちやすいという問題があった。
【0008】
とりわけ、未熟児などを含む幼児に対してカニューレを利用する際は、ノズルの位置のずれが大きくなる。生まれたての幼児に、ノズルの位置が合わないカニューレを強制的に装着すると、鼻腔側が、このノズルに合わせて変形してしまうという問題があった。
【0009】
また、カニューレ自体又は別体の固定バンドを利用して、このカニューレを鼻下に固定する必要がある。この結果、カニューレが、鼻と唇の間の皮膚に強く押しつけられるので、これによって不快感を持ちやすいという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、装着時の不快感を抑制しながらも、確実に呼吸を補助することが可能な鼻用気体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0012】
即ち、上記目的を達成する本手段は、鼻孔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズルと、前記一対のノズルを保持すると共に、内部に形成される供給流路によって、供給口から供給される前記気体を前記一対のノズルの基端まで案内する筐体と、を備え、前記ノズルと前記筐体の間には、前記一対のノズルの間隔を切り換える間隔調整機構が配置されていることを特徴とする鼻用気体供給装置である。
【0013】
上記手段において、前記間隔調整機構は、前記ノズルの基端側に配置される台座部と、前記筐体に形成されて、前記台座を複数の位置状態で収容する台座収容部と、を備えることが好ましい。
【0014】
上記手段において、前記台座は、前記ノズルの噴出方向と略平行する揺動軸を中心として、複数の角度状態で前記台座収容部に収容され、前記ノズルは、前記台座に対して、前記揺動軸から偏心した位置に設けられることを特徴とすることが好ましい。
【0015】
上記手段において、前記台座は、円形状又は正多角形状であって、板状又は柱状となる回転体を備えて構成され、前記台座収容部は、前記台座の前記回転体を前記複数の角度状態で固定し、前記ノズルは、前記回転体の中心から偏心した位置に設けられることを特徴とすることが好ましい。
【0016】
上記手段において、前記供給口は、前記ノズルの噴出方向と略同じ方向に開口しており、前記筐体を鼻下に設置した際に、該筐体に対して前記気体を供給するための配管が、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続されることを特徴とすることが好ましい。
【0017】
上記手段において、前記筐体における前記一対のノズルの両外側の近傍に下端が固定され、前記鼻の両脇近傍を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の一対の横側保持部材と、前記筐体における前記一対のノズルよりも鼻頭側に下端が固定され、前記鼻の前面側を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の前側保持部材と、前記横側保持部材及び前記前側保持部材を、前記鼻頭よりも上方においてまとめて保持することで、前記筐体の設置角度を調整する位置決め部材と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0018】
上記手段において、前記前側保持部材は、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続される気体供給用の配管を兼ねることを特徴とすることが好ましい。
【0019】
上記手段において、前記筐体は、前記供給流路から分岐形成され、前記気体を排気口まで案内して外部に放出する排気経路と、分岐後の前記供給経路と前記排気経路を短絡し、前記ノズル側から前記供給経路に呼気が印加された際に、該呼気を前記排気経路側に案内することで、前記供給口から供給される前記気体を前記排出経路側に誘引する短絡路と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、快適な使用感を確保したまま、効率的に鼻腔内に気体を供給できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る鼻用気体供給装置の全体構成を示した図である。
【図2A】ノズルと筐体が分離した状態の同鼻用気体供給装置を拡大して示す斜視図である。
【図2B】ノズルと筐体が結合した状態の同鼻用気体供給装置を拡大して示す斜視図である。
【図3A】同鼻用気体供給装置の筐体の平面図である。
【図3B】図3AにおけるIIIB−IIIB矢視断面図である。
【図4A】図3AにおけるIVA−IVA矢視断面図である。
【図4B】図3AにおけるIVB−IVB矢視断面図である。
【図4C】図3AにおけるIVC−IVC矢視断面図である。
【図5A】同鼻用気体供給装置のノズル及び台座の正面図及び平面図である。
【図5B】同鼻用気体供給装置のノズル及び台座の断面図である。
【図6】同鼻用気体供給装置を装着した状態を模式的に示す側面図である。
【図7A】同鼻用気体供給装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図7B】同鼻用気体供給装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図7C】同鼻用気体供給装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図8】同鼻用気体供給装置を大人の利用者に設置した場合を示す正面図である。
【図9】同鼻用気体供給装置の他の例を示す平面図である。
【図10】同鼻用気体供給装置の他の例を示す平面図である。
【図11】同鼻用気体供給装置の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の例について詳細に説明する。
【0023】
図1には、本実施形態に係る鼻用気体供給装置(以下、供給装置)1を幼児に装着した状態が示されている。この供給装置1は、鼻腔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズル20と、この一対のノズル20を保持する筐体50を備える。筐体50の内部には供給経路(詳細は後述)が形成されており、外部から供給される気体を、この一対のノズル20の基端まで案内するようになっている。なお、ノズル20は弾性を有する比較的柔らかい樹脂素材で構成されており、筐体50は、いわゆるプラスチック素材によって構成されている。
【0024】
図2から図5に示されるように、ノズル20と筐体50の間には、一対のノズル20の間隔を可変に切り換える間隔調整機構30が配置されている。この間隔調整機構30は、ノズル20の基端側に配置されて、ノズル20と一体的に形成される台座部32と、筐体50側に形成されて、台座32を複数の位置に固定させる台座収容部34を備えて構成される。
【0025】
台座32は、図5に示されるように、ノズル20の噴出方向と略平行する揺動軸(回転軸)Yを中心として、複数の角度で台座収容部34に固定される。ノズル20は、この台座32に対して、揺動軸Yから偏心した位置が中心となるように設けられている。従って、台座32が台座収容部34内で回転すると、ノズル20の中心が偏心運動をする。結果、一対のノズル20間隔を調整できる。
【0026】
具体的に、この台座32は、円形かつ柱状となる回転体となっている。また台座収容部34は、円形かつ筒状の凹部となっている。従って、台座32を台座収容部34に挿入することで、互いの摩擦力により両者を位置決めできる。また、凹部内でこの回転体を自在に回転させることができる。既に述べたように、ノズル20は回転体の中心(揺動軸Y)から偏心した位置に設けられているので、この回転体の回転角を変化させることで、一対のノズル20の間隔を自在に調整できる。
【0027】
図4Bに示されるように、台座32の外周面には、環状の溝32Aが形成されている。台座収容部34の内周面には、環状の突起34Aが形成されている。従って、溝32Aと突起34Aを係合させることで、両者の回転軸方向の移動が規制される。
【0028】
更に、台座32の上面には、位置決め用の目盛り32Bが形成されている。同様に、台座収容部34の周囲(筐体50の外周面)にも、位置決め用の目盛り34Bが形成されている。両者の目盛り32B、34Bの相対関係から、一対のノズル20の間隔を目視にて調整可能となっている。
【0029】
図5A、図5Bに示されるように、ノズル20は、円柱状の台座32の上端面に一体的に形成されてる。ノズル20は、大凡、円筒形状になっており、この内部を気体が通過する。ノズル20の途中には、屈曲部20Aが形成されている。この屈曲部20Aは、ノズル20の直径方向の外側に向かって、軸方向断面が円弧形状となるように拡張しており、他の部位よりも軸方向の剛性が低くなっている。ノズル20を鼻腔内に挿入する際に、このノズル20の上端が鼻腔内と接触すると、ノズル20に軸方向の外力が作用する。屈曲部20Aは、この外力によって軸方向に積極的に収縮するようになっている。結果、ノズル20を鼻腔に挿入する際に、ノズル20の突端が鼻腔に干渉しても、鼻腔を傷つけないで済む。台座32には、ノズル20の内周面と連続するようにして流路32Cが形成されている。ノズル20には、この流路32Cを介して気体が供給される。
【0030】
筐体50は、平面から視た場合に、鼻と上唇の間において、上唇に沿って横方向に配置される鼻下部52と、この鼻下部52の中央近傍から、鼻頭方向(唇から離れる方向)に突出するように配置される突出部54を備えて構成される。突出部54の上面には、筐体50内に気体を送り込むための供給口54Aが形成される。鼻下部52の上面には、既に述べた円筒状の凹部となる一対の台座収容部34が形成されている。鼻下部52の上面における一対の台座収容部34の両外側には、余分な気体を排気するための一対の排気口52Aが形成される。詳細は後述するが、この排気口52Aは、自発呼吸における呼気時に、供給口54Aから筐体50内に供給される気体を積極的に放出して、呼気動作の邪魔をしないようになっている。
【0031】
一対の排気口52Aの近傍には、それぞれ、抵抗用開口52Bが形成されている。この抵抗用開口52Bは、自発呼吸における吸気時に、供給口54Aから供給される気体の一部を逃がす(排気する)ことで、ノズル20に対して適切な正圧を印加するようになっている。即ちこの抵抗用開口52Bは、いわゆるリリーフ用の開口として機能している。なお、排気口52A及び抵抗用開口52Bは、供給口54Aから供給される気体に対して、外部の空気を取り込んで適切に混合するエア吸入口としても機能する。
【0032】
図3B及び図4Bに示されるように、筐体50の内部には、供給口54Aから台座収容部34まで気体を案内する供給経路60が形成される。即ち、供給経路60の一端は供給口54Aに接続され、他端は台座収容部34の下端に接続される。なお、供給経路60における台座収容部34の下側は、拡張空間60Aとなっており、この拡張空間60Aを介してノズル20に正圧を印加する。また、供給経路60の途中には、絞り部60Bが形成されており、気体の流れを途中で絞り込むことで、気体を加速させて下流側に放出するようにしている。更に図3B及び図4Aに示されるように、拡張空間60Aには、抵抗用開口52Bに接続される抵抗用排気路60Cが形成されている。この抵抗用排気路60C及び抵抗用開口52Bから、余分な気体が排気される。抵抗用排気路60Cは、敢えて内径を細くすることで気体が流れにくくなっており、拡張空間60Aに適切な正圧が印加されるようにしている。
【0033】
供給経路60における絞り部60Bの出口近傍には、この供給経路60から分岐するようにして排気経路70が形成される。この排気経路70の下流側は、図4Cに示されるように、排気口52Aに接続されている。供給経路60と排気経路70の分岐点には、板状の切換ブレード80が配置さる。この切換ブレード80の上面側は供給経路60となり、下面側が排気経路70となる。この切換ブレード80の上流側の端縁80Aは、絞り部60Bの出口側に対して一定の間隔を空けて対向している。更にこの端縁80Aは、絞り部60Bの出口に対して、排気経路70側に多少偏って配置されている。従って、図3Bに示されるように、供給口54Aから供給される気体は、通常、絞り部60Bを通過して切換ブレード80の上面側を通過して拡張空間60A側に流れる。一方、この切換ブレード80よりも下流側には、分岐後の供給経路60と排気経路70を短絡する短絡路90が形成されてる。図2及び図3Aに示されるように、この短絡路90はいわゆるスリット形状となっており、台座収容部34の真下に形成される。使用者の呼気動作時は、呼気が、ノズル20を介して筐体50内の拡張空間60A側に逆流する。この呼気は更にノズル20の真下にある短絡路90から排気経路70側に放出されて、排気口52Aから排出される。この呼気の排気流によって、排気経路70の上流側、即ち切換ブレード80近傍に負圧が作用し、これによって、絞り部60Bから放出される気体が、排気経路70側に誘引される。結果、呼気動作中は、気体が呼気と共に排気口52A側から排出される。この作用によって、呼気動作中は、拡張空間60Aが減圧するので、呼気動作を円滑に行うことができる。利用者が吸気動作を行うと、供給経路60によって拡張空間60Aに気体が供給され、再び、ノズル20側に素早く正圧が印加されることになる。
【0034】
図1、図2及び図6に示されるように、筐体50における一対のノズル20の両外側の近傍、即ち鼻下部52の両脇近傍には、一対の横側保持部材92の下端が固定されている。この横側保持部材92は紐又は管状の部材となっており、利用者の鼻の両脇を通って、少なくともこめかみ近傍に到達する。また、筐体50における一対のノズル20よりも鼻頭側、即ち突出部54側には、前側保持部材94の下端が固定されている。この前側保持部材94も紐又は管状の部材であり、鼻の前面側(鼻の頭)を通って、少なくともこめかみ近傍に到達する。特に本実施形態では、突出部54に形成される供給口54Aが、ノズル20の噴出方向と略同じ方向(上方向)に開口しているので、この供給口54Aに接続される配管そのものが、前側保持部材94を兼ねることができる。この配管94は、利用者の鼻頭及びこめかみを経て、前額側に延びている。この配管94は、いわゆる酸素供給装置に接続される。
【0035】
更にこの供給装置1は、一対の横側保持部材92、及び前側保持部材94を、鼻よりも上方においてまとめて保持する位置決め部材96を備える。なお特に図示しないが、この位置決め部材96は、バンド等によって前額に固定されることが好ましい。図6のように、筐体50は、各部材92、94の下端によって、少なくとも3箇所が保持される。従って、位置決め部材96から筐体50までにおける、横側保持部材92及び前側保持部材94の長さを調整すれば、筐体50の設置角度を前後左右に自在に調整できる。特に、筐体50を上唇近傍に押しつけないで済むことから、不快感を抑制することができる。
【0036】
図7には、この供給装置1の使用方法が示されている。人間の鼻の大きさは、個人によって異なる。例えば、図7Aには、中型で鼻の低いタイプの利用者に、この供給装置1を設置する場合が示されている。この場合、間隔調整機構30の台座32を回転させて、一対のノズル20の間隔を中間とし、かつノズル20を顔に近づけるように位置決めすれば良い。図7Bには、大型で鼻の高いタイプの利用者に、この供給装置1を設置する場合が示されている。この場合、台座32を回転させて、一対のノズル20の間隔を大きめにし、かつノズル20を顔から遠ざけるように位置決めすればよい。図7Cには、小型で鼻の低いタイプの利用者に、この供給装置1を設置する場合が示されている。この場合、間隔調整機構30の台座32を回転させて、一対のノズル20の間隔を小さめにし、かつノズル20を顔に近づけるように位置決めすれば良い。このように、本供給装置1によれば、台座32を回転させるだけで、ノズル20の間隔や顔との距離を自在に変更することができる。
【0037】
このように、本実施形態の供給装置1によれば、間隔調整機構30によって、鼻腔の位置とノズル20の位置を、個々に一致させることができるので、鼻腔とノズル20が干渉して鼻腔に過渡な外力を作用させないで済む。この結果、常に快適な使用感を得ることが出来る。特に本供給装置1によれば、ノズル20の間隔と、前後方向の距離を同時に調整できるので、様々な形状の鼻に柔軟に対応することができる。また、ノズル20の位置決めは、台座32を回転させるだけで済むので、誰でも容易に間隔を調整できる。
【0038】
更に本供給装置1によれば、筐体50におけるノズル20の基端の真下に、短絡路90が形成されているので、呼気動作時は、この呼気を活用して気体を排気経路70側に流すことができる。この結果、利用者の呼気動作の負担を軽減させることが可能となっている。
【0039】
また本供給装置1によれば、筐体50が、横側保持部材92及び前側保持部材94の下端を利用して3点以上の場所で保持されているので、筐体50を皮膚に押しつけることなく、筐体50の姿勢を自在に調整することができる。結果、様々な鼻の形状に対して、筐体50の角度を自在に変更できるので、より一層、快適な使用感を得ることが出来る。
【0040】
なお、本実施形態では、図1の通り、幼児に対して供給装置1を設置する場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図8に示されるように、幼児以外の子供や大人に対して本供給装置1を装着しても良い。また、位置決め部材96の場所は、前額に限られず、鼻の峰部やこめかみ等にテープ等で固定しても良い。眼鏡やゴーグルなどを利用することも可能である。
【0041】
また、本実施形態では、台座32が円形となる場合に限って示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図9の他の例に示されるように、正多角形(ここでは六角形)の柱状の台座32を、同じ形状の台座収容部34に収容しても良い。このようにすると、例えば60度の間隔で台座32を位置決めできる。また例えば、図10の他の例に示されるように、筐体50に帯状の凹部空間となる台座収容部34を形成しておき、この台座収容部34内に対して、ノズル20を有する台座32を、スライド自在に配置することもできる。この場合、位置決めを容易にするために、台座収容部34には、スライド方向に一定の間隔で係合突起又は係合凹部を形成しておき、台座34と係合させることが好ましい。なお、この場合、台座収容部34における台座34が存在しない場所に隙間が形成される可能性がある。この隙間は、台座34の上面にカバーを設けたり、隙間に別途スペーサーを挿入したりして埋めれば良い。勿論、ノズル20に正圧が印加させる限り、この隙間を残存させても良い。
【0042】
更に本実施形態では、供給口54Aに接続される気体供給用の配管が、筐体50を位置決めする前側保持部材94を兼ねる場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図11に示されるように、配管98は顔の横方向から接続されるようにし、前側保持部材94は専用の紐部材を設けることも可能である。
【0043】
更にまた、本実施形態では、一対のノズル20に設けられる台座32の双方を回転させて、一対のノズル20の間隔を調整する場合を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、一方のノズル20に限って、その位置を可変にすることで、結果として一対のノズル20の間隔を調整することも可能である。
【0044】
尚、本発明の供給装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の鼻用気体供給装置は、気道から肺等にかけて正圧を印加するような、様々な呼吸補助分野で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 鼻用気体供給装置
20 ノズル
30 間隔調整機構
32 台座
34 台座収容部
50 筐体
60 供給経路
70 排気経路
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻の鼻腔に気体を供給する際に用いられる鼻用気体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器を用いた呼吸補助装置では、鼻腔内に酸素等の正圧の気体を供給するものが普及している。この種の呼吸補助装置は、一般的に鼻シーパップ(nasal CPAP(nasal continuous positive airway pressure))装置と呼ばれている。鼻には、鼻用気体供給装置が設置され、これを利用して鼻腔内に陽圧を印加する。
【0003】
従来の鼻用気体供給装置として、大きくは2種類が存在する。一つは、いわゆる鼻マスクであり、少なくとも鼻全体を覆う構造となっている。この鼻マスクにチューブを接続し、外部から気体(例えば高圧酸素)を送り込むことで鼻マスク内を正圧にするものである。もう一つは、一対のノズルを備えたいわゆるカニューレであり、このノズルを鼻腔内に挿入して、加圧された気体を直接的に鼻腔内に印加する。
【0004】
なお、この鼻シーパップ装置は、睡眠時の呼吸障害の患者にも利用される。この呼吸障害は、睡眠中に気道の筋肉が弛緩して舌根部や軟口蓋が下がり、気道を閉塞することによって生じる。この種の呼吸障害の患者に対しても、気道に正圧を印加することが必要となる(特許文献1参照)。この際は鼻マスク装置を用いるのが一般的である。この結果、気道における舌根の周囲の軟部組織が拡張されるので、吸気時の気道狭窄を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2927958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鼻マスク装置は、鼻全体を覆うことで気道に正圧を印加するために、鼻全体が密閉空間となることから、息苦しいような不快感を伴うという問題がある。また、この鼻マスク装置が鼻から離脱することを防止するために、各種バンドによって顔に密着させようとすると、利用者は更に不快感を持ちやすいという問題があった。
【0007】
また、カニューレは、そのサイズが大・中・小などが用意されているものの、ノズルの位置が各個人の鼻腔と完全に一致しないという問題があった。結果、常にノズルと鼻腔の位置ずれによって、鼻腔に外力が付与されるので、利用者は不快感を持ちやすいという問題があった。
【0008】
とりわけ、未熟児などを含む幼児に対してカニューレを利用する際は、ノズルの位置のずれが大きくなる。生まれたての幼児に、ノズルの位置が合わないカニューレを強制的に装着すると、鼻腔側が、このノズルに合わせて変形してしまうという問題があった。
【0009】
また、カニューレ自体又は別体の固定バンドを利用して、このカニューレを鼻下に固定する必要がある。この結果、カニューレが、鼻と唇の間の皮膚に強く押しつけられるので、これによって不快感を持ちやすいという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、装着時の不快感を抑制しながらも、確実に呼吸を補助することが可能な鼻用気体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0012】
即ち、上記目的を達成する本手段は、鼻孔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズルと、前記一対のノズルを保持すると共に、内部に形成される供給流路によって、供給口から供給される前記気体を前記一対のノズルの基端まで案内する筐体と、を備え、前記ノズルと前記筐体の間には、前記一対のノズルの間隔を切り換える間隔調整機構が配置されていることを特徴とする鼻用気体供給装置である。
【0013】
上記手段において、前記間隔調整機構は、前記ノズルの基端側に配置される台座部と、前記筐体に形成されて、前記台座を複数の位置状態で収容する台座収容部と、を備えることが好ましい。
【0014】
上記手段において、前記台座は、前記ノズルの噴出方向と略平行する揺動軸を中心として、複数の角度状態で前記台座収容部に収容され、前記ノズルは、前記台座に対して、前記揺動軸から偏心した位置に設けられることを特徴とすることが好ましい。
【0015】
上記手段において、前記台座は、円形状又は正多角形状であって、板状又は柱状となる回転体を備えて構成され、前記台座収容部は、前記台座の前記回転体を前記複数の角度状態で固定し、前記ノズルは、前記回転体の中心から偏心した位置に設けられることを特徴とすることが好ましい。
【0016】
上記手段において、前記供給口は、前記ノズルの噴出方向と略同じ方向に開口しており、前記筐体を鼻下に設置した際に、該筐体に対して前記気体を供給するための配管が、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続されることを特徴とすることが好ましい。
【0017】
上記手段において、前記筐体における前記一対のノズルの両外側の近傍に下端が固定され、前記鼻の両脇近傍を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の一対の横側保持部材と、前記筐体における前記一対のノズルよりも鼻頭側に下端が固定され、前記鼻の前面側を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の前側保持部材と、前記横側保持部材及び前記前側保持部材を、前記鼻頭よりも上方においてまとめて保持することで、前記筐体の設置角度を調整する位置決め部材と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0018】
上記手段において、前記前側保持部材は、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続される気体供給用の配管を兼ねることを特徴とすることが好ましい。
【0019】
上記手段において、前記筐体は、前記供給流路から分岐形成され、前記気体を排気口まで案内して外部に放出する排気経路と、分岐後の前記供給経路と前記排気経路を短絡し、前記ノズル側から前記供給経路に呼気が印加された際に、該呼気を前記排気経路側に案内することで、前記供給口から供給される前記気体を前記排出経路側に誘引する短絡路と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、快適な使用感を確保したまま、効率的に鼻腔内に気体を供給できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る鼻用気体供給装置の全体構成を示した図である。
【図2A】ノズルと筐体が分離した状態の同鼻用気体供給装置を拡大して示す斜視図である。
【図2B】ノズルと筐体が結合した状態の同鼻用気体供給装置を拡大して示す斜視図である。
【図3A】同鼻用気体供給装置の筐体の平面図である。
【図3B】図3AにおけるIIIB−IIIB矢視断面図である。
【図4A】図3AにおけるIVA−IVA矢視断面図である。
【図4B】図3AにおけるIVB−IVB矢視断面図である。
【図4C】図3AにおけるIVC−IVC矢視断面図である。
【図5A】同鼻用気体供給装置のノズル及び台座の正面図及び平面図である。
【図5B】同鼻用気体供給装置のノズル及び台座の断面図である。
【図6】同鼻用気体供給装置を装着した状態を模式的に示す側面図である。
【図7A】同鼻用気体供給装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図7B】同鼻用気体供給装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図7C】同鼻用気体供給装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図8】同鼻用気体供給装置を大人の利用者に設置した場合を示す正面図である。
【図9】同鼻用気体供給装置の他の例を示す平面図である。
【図10】同鼻用気体供給装置の他の例を示す平面図である。
【図11】同鼻用気体供給装置の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の例について詳細に説明する。
【0023】
図1には、本実施形態に係る鼻用気体供給装置(以下、供給装置)1を幼児に装着した状態が示されている。この供給装置1は、鼻腔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズル20と、この一対のノズル20を保持する筐体50を備える。筐体50の内部には供給経路(詳細は後述)が形成されており、外部から供給される気体を、この一対のノズル20の基端まで案内するようになっている。なお、ノズル20は弾性を有する比較的柔らかい樹脂素材で構成されており、筐体50は、いわゆるプラスチック素材によって構成されている。
【0024】
図2から図5に示されるように、ノズル20と筐体50の間には、一対のノズル20の間隔を可変に切り換える間隔調整機構30が配置されている。この間隔調整機構30は、ノズル20の基端側に配置されて、ノズル20と一体的に形成される台座部32と、筐体50側に形成されて、台座32を複数の位置に固定させる台座収容部34を備えて構成される。
【0025】
台座32は、図5に示されるように、ノズル20の噴出方向と略平行する揺動軸(回転軸)Yを中心として、複数の角度で台座収容部34に固定される。ノズル20は、この台座32に対して、揺動軸Yから偏心した位置が中心となるように設けられている。従って、台座32が台座収容部34内で回転すると、ノズル20の中心が偏心運動をする。結果、一対のノズル20間隔を調整できる。
【0026】
具体的に、この台座32は、円形かつ柱状となる回転体となっている。また台座収容部34は、円形かつ筒状の凹部となっている。従って、台座32を台座収容部34に挿入することで、互いの摩擦力により両者を位置決めできる。また、凹部内でこの回転体を自在に回転させることができる。既に述べたように、ノズル20は回転体の中心(揺動軸Y)から偏心した位置に設けられているので、この回転体の回転角を変化させることで、一対のノズル20の間隔を自在に調整できる。
【0027】
図4Bに示されるように、台座32の外周面には、環状の溝32Aが形成されている。台座収容部34の内周面には、環状の突起34Aが形成されている。従って、溝32Aと突起34Aを係合させることで、両者の回転軸方向の移動が規制される。
【0028】
更に、台座32の上面には、位置決め用の目盛り32Bが形成されている。同様に、台座収容部34の周囲(筐体50の外周面)にも、位置決め用の目盛り34Bが形成されている。両者の目盛り32B、34Bの相対関係から、一対のノズル20の間隔を目視にて調整可能となっている。
【0029】
図5A、図5Bに示されるように、ノズル20は、円柱状の台座32の上端面に一体的に形成されてる。ノズル20は、大凡、円筒形状になっており、この内部を気体が通過する。ノズル20の途中には、屈曲部20Aが形成されている。この屈曲部20Aは、ノズル20の直径方向の外側に向かって、軸方向断面が円弧形状となるように拡張しており、他の部位よりも軸方向の剛性が低くなっている。ノズル20を鼻腔内に挿入する際に、このノズル20の上端が鼻腔内と接触すると、ノズル20に軸方向の外力が作用する。屈曲部20Aは、この外力によって軸方向に積極的に収縮するようになっている。結果、ノズル20を鼻腔に挿入する際に、ノズル20の突端が鼻腔に干渉しても、鼻腔を傷つけないで済む。台座32には、ノズル20の内周面と連続するようにして流路32Cが形成されている。ノズル20には、この流路32Cを介して気体が供給される。
【0030】
筐体50は、平面から視た場合に、鼻と上唇の間において、上唇に沿って横方向に配置される鼻下部52と、この鼻下部52の中央近傍から、鼻頭方向(唇から離れる方向)に突出するように配置される突出部54を備えて構成される。突出部54の上面には、筐体50内に気体を送り込むための供給口54Aが形成される。鼻下部52の上面には、既に述べた円筒状の凹部となる一対の台座収容部34が形成されている。鼻下部52の上面における一対の台座収容部34の両外側には、余分な気体を排気するための一対の排気口52Aが形成される。詳細は後述するが、この排気口52Aは、自発呼吸における呼気時に、供給口54Aから筐体50内に供給される気体を積極的に放出して、呼気動作の邪魔をしないようになっている。
【0031】
一対の排気口52Aの近傍には、それぞれ、抵抗用開口52Bが形成されている。この抵抗用開口52Bは、自発呼吸における吸気時に、供給口54Aから供給される気体の一部を逃がす(排気する)ことで、ノズル20に対して適切な正圧を印加するようになっている。即ちこの抵抗用開口52Bは、いわゆるリリーフ用の開口として機能している。なお、排気口52A及び抵抗用開口52Bは、供給口54Aから供給される気体に対して、外部の空気を取り込んで適切に混合するエア吸入口としても機能する。
【0032】
図3B及び図4Bに示されるように、筐体50の内部には、供給口54Aから台座収容部34まで気体を案内する供給経路60が形成される。即ち、供給経路60の一端は供給口54Aに接続され、他端は台座収容部34の下端に接続される。なお、供給経路60における台座収容部34の下側は、拡張空間60Aとなっており、この拡張空間60Aを介してノズル20に正圧を印加する。また、供給経路60の途中には、絞り部60Bが形成されており、気体の流れを途中で絞り込むことで、気体を加速させて下流側に放出するようにしている。更に図3B及び図4Aに示されるように、拡張空間60Aには、抵抗用開口52Bに接続される抵抗用排気路60Cが形成されている。この抵抗用排気路60C及び抵抗用開口52Bから、余分な気体が排気される。抵抗用排気路60Cは、敢えて内径を細くすることで気体が流れにくくなっており、拡張空間60Aに適切な正圧が印加されるようにしている。
【0033】
供給経路60における絞り部60Bの出口近傍には、この供給経路60から分岐するようにして排気経路70が形成される。この排気経路70の下流側は、図4Cに示されるように、排気口52Aに接続されている。供給経路60と排気経路70の分岐点には、板状の切換ブレード80が配置さる。この切換ブレード80の上面側は供給経路60となり、下面側が排気経路70となる。この切換ブレード80の上流側の端縁80Aは、絞り部60Bの出口側に対して一定の間隔を空けて対向している。更にこの端縁80Aは、絞り部60Bの出口に対して、排気経路70側に多少偏って配置されている。従って、図3Bに示されるように、供給口54Aから供給される気体は、通常、絞り部60Bを通過して切換ブレード80の上面側を通過して拡張空間60A側に流れる。一方、この切換ブレード80よりも下流側には、分岐後の供給経路60と排気経路70を短絡する短絡路90が形成されてる。図2及び図3Aに示されるように、この短絡路90はいわゆるスリット形状となっており、台座収容部34の真下に形成される。使用者の呼気動作時は、呼気が、ノズル20を介して筐体50内の拡張空間60A側に逆流する。この呼気は更にノズル20の真下にある短絡路90から排気経路70側に放出されて、排気口52Aから排出される。この呼気の排気流によって、排気経路70の上流側、即ち切換ブレード80近傍に負圧が作用し、これによって、絞り部60Bから放出される気体が、排気経路70側に誘引される。結果、呼気動作中は、気体が呼気と共に排気口52A側から排出される。この作用によって、呼気動作中は、拡張空間60Aが減圧するので、呼気動作を円滑に行うことができる。利用者が吸気動作を行うと、供給経路60によって拡張空間60Aに気体が供給され、再び、ノズル20側に素早く正圧が印加されることになる。
【0034】
図1、図2及び図6に示されるように、筐体50における一対のノズル20の両外側の近傍、即ち鼻下部52の両脇近傍には、一対の横側保持部材92の下端が固定されている。この横側保持部材92は紐又は管状の部材となっており、利用者の鼻の両脇を通って、少なくともこめかみ近傍に到達する。また、筐体50における一対のノズル20よりも鼻頭側、即ち突出部54側には、前側保持部材94の下端が固定されている。この前側保持部材94も紐又は管状の部材であり、鼻の前面側(鼻の頭)を通って、少なくともこめかみ近傍に到達する。特に本実施形態では、突出部54に形成される供給口54Aが、ノズル20の噴出方向と略同じ方向(上方向)に開口しているので、この供給口54Aに接続される配管そのものが、前側保持部材94を兼ねることができる。この配管94は、利用者の鼻頭及びこめかみを経て、前額側に延びている。この配管94は、いわゆる酸素供給装置に接続される。
【0035】
更にこの供給装置1は、一対の横側保持部材92、及び前側保持部材94を、鼻よりも上方においてまとめて保持する位置決め部材96を備える。なお特に図示しないが、この位置決め部材96は、バンド等によって前額に固定されることが好ましい。図6のように、筐体50は、各部材92、94の下端によって、少なくとも3箇所が保持される。従って、位置決め部材96から筐体50までにおける、横側保持部材92及び前側保持部材94の長さを調整すれば、筐体50の設置角度を前後左右に自在に調整できる。特に、筐体50を上唇近傍に押しつけないで済むことから、不快感を抑制することができる。
【0036】
図7には、この供給装置1の使用方法が示されている。人間の鼻の大きさは、個人によって異なる。例えば、図7Aには、中型で鼻の低いタイプの利用者に、この供給装置1を設置する場合が示されている。この場合、間隔調整機構30の台座32を回転させて、一対のノズル20の間隔を中間とし、かつノズル20を顔に近づけるように位置決めすれば良い。図7Bには、大型で鼻の高いタイプの利用者に、この供給装置1を設置する場合が示されている。この場合、台座32を回転させて、一対のノズル20の間隔を大きめにし、かつノズル20を顔から遠ざけるように位置決めすればよい。図7Cには、小型で鼻の低いタイプの利用者に、この供給装置1を設置する場合が示されている。この場合、間隔調整機構30の台座32を回転させて、一対のノズル20の間隔を小さめにし、かつノズル20を顔に近づけるように位置決めすれば良い。このように、本供給装置1によれば、台座32を回転させるだけで、ノズル20の間隔や顔との距離を自在に変更することができる。
【0037】
このように、本実施形態の供給装置1によれば、間隔調整機構30によって、鼻腔の位置とノズル20の位置を、個々に一致させることができるので、鼻腔とノズル20が干渉して鼻腔に過渡な外力を作用させないで済む。この結果、常に快適な使用感を得ることが出来る。特に本供給装置1によれば、ノズル20の間隔と、前後方向の距離を同時に調整できるので、様々な形状の鼻に柔軟に対応することができる。また、ノズル20の位置決めは、台座32を回転させるだけで済むので、誰でも容易に間隔を調整できる。
【0038】
更に本供給装置1によれば、筐体50におけるノズル20の基端の真下に、短絡路90が形成されているので、呼気動作時は、この呼気を活用して気体を排気経路70側に流すことができる。この結果、利用者の呼気動作の負担を軽減させることが可能となっている。
【0039】
また本供給装置1によれば、筐体50が、横側保持部材92及び前側保持部材94の下端を利用して3点以上の場所で保持されているので、筐体50を皮膚に押しつけることなく、筐体50の姿勢を自在に調整することができる。結果、様々な鼻の形状に対して、筐体50の角度を自在に変更できるので、より一層、快適な使用感を得ることが出来る。
【0040】
なお、本実施形態では、図1の通り、幼児に対して供給装置1を設置する場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図8に示されるように、幼児以外の子供や大人に対して本供給装置1を装着しても良い。また、位置決め部材96の場所は、前額に限られず、鼻の峰部やこめかみ等にテープ等で固定しても良い。眼鏡やゴーグルなどを利用することも可能である。
【0041】
また、本実施形態では、台座32が円形となる場合に限って示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図9の他の例に示されるように、正多角形(ここでは六角形)の柱状の台座32を、同じ形状の台座収容部34に収容しても良い。このようにすると、例えば60度の間隔で台座32を位置決めできる。また例えば、図10の他の例に示されるように、筐体50に帯状の凹部空間となる台座収容部34を形成しておき、この台座収容部34内に対して、ノズル20を有する台座32を、スライド自在に配置することもできる。この場合、位置決めを容易にするために、台座収容部34には、スライド方向に一定の間隔で係合突起又は係合凹部を形成しておき、台座34と係合させることが好ましい。なお、この場合、台座収容部34における台座34が存在しない場所に隙間が形成される可能性がある。この隙間は、台座34の上面にカバーを設けたり、隙間に別途スペーサーを挿入したりして埋めれば良い。勿論、ノズル20に正圧が印加させる限り、この隙間を残存させても良い。
【0042】
更に本実施形態では、供給口54Aに接続される気体供給用の配管が、筐体50を位置決めする前側保持部材94を兼ねる場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図11に示されるように、配管98は顔の横方向から接続されるようにし、前側保持部材94は専用の紐部材を設けることも可能である。
【0043】
更にまた、本実施形態では、一対のノズル20に設けられる台座32の双方を回転させて、一対のノズル20の間隔を調整する場合を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、一方のノズル20に限って、その位置を可変にすることで、結果として一対のノズル20の間隔を調整することも可能である。
【0044】
尚、本発明の供給装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の鼻用気体供給装置は、気道から肺等にかけて正圧を印加するような、様々な呼吸補助分野で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 鼻用気体供給装置
20 ノズル
30 間隔調整機構
32 台座
34 台座収容部
50 筐体
60 供給経路
70 排気経路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻孔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズルと、
前記一対のノズルを保持すると共に、内部に形成される供給流路によって、供給口から供給される前記気体を前記一対のノズルの基端まで案内する筐体と、を備え、
前記ノズルと前記筐体の間には、前記一対のノズルの間隔を切り換える間隔調整機構が配置されている
ことを特徴とする鼻用気体供給装置。
【請求項2】
前記間隔調整機構は、
前記ノズルの基端側に配置される台座部と、
前記筐体に形成されて、前記台座を複数の位置状態で収容する台座収容部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の鼻用気体供給装置。
【請求項3】
前記台座は、前記ノズルの噴出方向と略平行する揺動軸を中心として、複数の角度状態で前記台座収容部に収容され、
前記ノズルは、前記台座に対して、前記揺動軸から偏心した位置に設けられることを特徴とする、
請求項2に記載の鼻用気体供給装置。
【請求項4】
前記台座は、円形状又は正多角形状であって、板状又は柱状となる回転体を備えて構成され、
前記台座収容部は、前記台座の前記回転体を前記複数の角度状態で固定し、
前記ノズルは、前記回転体の中心から偏心した位置に設けられることを特徴とする、
請求項3に記載の鼻用気体供給装置。
【請求項5】
前記供給口は、前記ノズルの噴出方向と略同じ方向に開口しており、
前記筐体を鼻下に設置した際に、該筐体に対して前記気体を供給するための配管が、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続されることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の鼻用気体供給装置。
【請求項6】
前記筐体における前記一対のノズルの両外側の近傍に下端が固定され、前記鼻の両脇近傍を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の一対の横側保持部材と、
前記筐体における前記一対のノズルよりも鼻頭側に下端が固定され、前記鼻の前面側を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の前側保持部材と、
前記横側保持部材及び前記前側保持部材を、前記鼻頭よりも上方においてまとめて保持することで、前記筐体の設置角度を調整する位置決め部材と、を備えることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の鼻用気体供給装置。
【請求項7】
前記前側保持部材は、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続される気体供給用の配管を兼ねることを特徴とする、
請求項6に記載の鼻用気体供給装置。
【請求項8】
前記筐体は、
前記供給流路から分岐形成され、前記気体を排気口まで案内して外部に放出する排気経路と、
分岐後の前記供給経路と前記排気経路を短絡し、前記ノズル側から前記供給経路に呼気が印加された際に、該呼気を前記排気経路側に案内することで、前記供給口から供給される前記気体を前記排出経路側に誘引する短絡路と、
を備えることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の鼻用気体供給装置。
【請求項1】
鼻孔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズルと、
前記一対のノズルを保持すると共に、内部に形成される供給流路によって、供給口から供給される前記気体を前記一対のノズルの基端まで案内する筐体と、を備え、
前記ノズルと前記筐体の間には、前記一対のノズルの間隔を切り換える間隔調整機構が配置されている
ことを特徴とする鼻用気体供給装置。
【請求項2】
前記間隔調整機構は、
前記ノズルの基端側に配置される台座部と、
前記筐体に形成されて、前記台座を複数の位置状態で収容する台座収容部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の鼻用気体供給装置。
【請求項3】
前記台座は、前記ノズルの噴出方向と略平行する揺動軸を中心として、複数の角度状態で前記台座収容部に収容され、
前記ノズルは、前記台座に対して、前記揺動軸から偏心した位置に設けられることを特徴とする、
請求項2に記載の鼻用気体供給装置。
【請求項4】
前記台座は、円形状又は正多角形状であって、板状又は柱状となる回転体を備えて構成され、
前記台座収容部は、前記台座の前記回転体を前記複数の角度状態で固定し、
前記ノズルは、前記回転体の中心から偏心した位置に設けられることを特徴とする、
請求項3に記載の鼻用気体供給装置。
【請求項5】
前記供給口は、前記ノズルの噴出方向と略同じ方向に開口しており、
前記筐体を鼻下に設置した際に、該筐体に対して前記気体を供給するための配管が、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続されることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の鼻用気体供給装置。
【請求項6】
前記筐体における前記一対のノズルの両外側の近傍に下端が固定され、前記鼻の両脇近傍を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の一対の横側保持部材と、
前記筐体における前記一対のノズルよりも鼻頭側に下端が固定され、前記鼻の前面側を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の前側保持部材と、
前記横側保持部材及び前記前側保持部材を、前記鼻頭よりも上方においてまとめて保持することで、前記筐体の設置角度を調整する位置決め部材と、を備えることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の鼻用気体供給装置。
【請求項7】
前記前側保持部材は、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続される気体供給用の配管を兼ねることを特徴とする、
請求項6に記載の鼻用気体供給装置。
【請求項8】
前記筐体は、
前記供給流路から分岐形成され、前記気体を排気口まで案内して外部に放出する排気経路と、
分岐後の前記供給経路と前記排気経路を短絡し、前記ノズル側から前記供給経路に呼気が印加された際に、該呼気を前記排気経路側に案内することで、前記供給口から供給される前記気体を前記排出経路側に誘引する短絡路と、
を備えることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の鼻用気体供給装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−115376(P2012−115376A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266299(P2010−266299)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000138060)株式会社メトラン (23)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000138060)株式会社メトラン (23)
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