説明

(メタ)アクリレートの新規の重合開始法

本発明は、(メタ)アクリレートの新規の重合法に関し、その際、該重合は、イソシアネートとイミン構造を有する特定の塩基とによって開始される。この新規でかつ意図的に使用可能な方法を用いて、部分的に狭い分子量分布を有する高分子ポリ(メタ)アクリレートを製造することもできる。さらに、この新規の重合法を用いて、例えばブロック−、星型−又は櫛型ポリマーといった極めて多様なポリマーアーキテクチャーが利用可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレートのための新規の重合法に関し、その際、該重合は、イソシアネートとイミン構造を有する特定の塩基とによって開始される。この新規でかつ意図的に使用可能な方法を用いて、部分的に狭い分子量分布を有する高分子ポリ(メタ)アクリレートを製造することもできる。さらに、この新規の重合法を用いて、例えばブロック−、星型−又は櫛型ポリマーといった極めて多様なポリマーアーキテクチャーが利用可能となる。
【0002】
ここで、(メタ)アクリレート、との表記は、メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等、及び、アクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート等、並びに双方からの混合物を意味する。
【0003】
従来技術
(メタ)アクリレートの重合に関しては、一連の重合法が公知である。とりわけ、フリーラジカル重合が大工業的に極めて重要である。該重合は、塊状−、溶液−、乳化−又は懸濁重合として、しばしば、極めて多様な適用のためのポリ(メタ)アクリレートの合成に使用される。これには、若干の例を挙げると、成形材料、プレキシガラス、塗料バインダー、接着剤又はシーラントにおける添加剤又は成分が含まれる。しかしながら、フリーラジカル重合の欠点は、ポリマーアーキテクチャーにいかなる影響をも及ぼし得ないこと、極めて非特異的にしか機能し得ないこと、及び広い分子量分布を有するポリマーが生じることである。
【0004】
それに対して、高分子及び/又は分布の狭いポリ(メタ)アクリレートは、アニオン重合により入手可能である。一方で、該重合法の欠点は、該方法の実施に対する、例えば湿分排除又は温度に関する要求が高度であること、さらに、ポリマー鎖上の官能基の実現が不可能であることである。今日までさほど重要でないメタクリレートの官能基移動重合についても、同様のことが当てはまる。
【0005】
リビング重合法ないし精密重合法として、アニオン重合の他に、近年の方法である精密ラジカル重合も好適である。分子量のみならず分子量分布も調節可能である。リビング重合として、該重合によってさらに、例えばランダムコポリマー、又さらにはブロックコポリマー構造といったポリマーアーキテクチャーの意図的な構築が可能である。
【0006】
一例は、RAFT重合(reversible addition fragmentation chain transfer polymerization、可逆的付加開裂連鎖移動重合)である。RAFT重合の機序は、EP0910587に詳細に記載されている。RAFT重合の欠点は、とりわけ、短鎖ポリ(メタ)アクリレート又はハイブリッド系の合成可能性が制限されていることと、ポリマー中に硫黄基が残留することである。
【0007】
一方で、NMP法(nitroxide mediated polymerization、ニトロキシドを介した重合)は、極めて限定的にポリ(メタ)アクリレートの合成にのみ使用可能である。この方法は、多岐にわたる官能基及び分子量の意図的な調節に関しては、非常に不利である。
【0008】
ATRP法(atom transfer radical polymerization、原子移動ラジカル重合)は、1990年代にMatyjaszewski教授により開発された重要な方法である(Matyjaszewski et al., J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, p.5614; WO 97/18247; Science, 1996, 272, p.866)。ATRP法により、Mn=10,000〜120,000g/モルの分子量範囲内の、分布の狭いポリマーがもたらされる。欠点は、とりわけ、遷移金属触媒、特に銅触媒の使用であり、該触媒は、生成物から、極めて費用をかけてしか、又は不完全にしか除去することができない。さらに、酸基が重合の際に妨害的であるため、そのような官能基を直接ATRPによって実現することはできない。
【0009】
Okamotoら(J.of Pol. Sci.: Polymer Chemistry, 12, 1974, p.1135-1140)は、トリエチルアミン及びイソシアネートを用いたMMA重合の開始について記載している。しかしながら、この系は20%を下回る収率をもたらすに過ぎない。
【0010】
課題
本発明の課題は、(メタ)アクリレートの重合のための新規の重合法を提供することである。
【0011】
特に、場合により狭い分子量分布を有する高分子ポリ(メタ)アクリレートを20%を上回る収率で製造可能な重合法を提供することが課題である。
【0012】
さらに、もう1つの課題は、可変的かつ多面的に使用可能であり、かつ、妨害となる開始剤−ないし触媒残分、例えば遷移金属をポリマー中に残さない、(メタ)アクリレートのための重合法を提供することである。
【0013】
その他の明示されていない課題は、以下の本願明細書、特許請求の範囲及び実施例の全体の文脈から明らかである。
【0014】
解決法
前記課題は、極めて意想外に見出された新規の開始機序により解決され、該機序によりビニル系モノマーMの重合を開始することができる。ビニル系モノマーMとは、この文脈において、炭素−炭素−二重結合を有するモノマーと理解される。通常は、そのようなモノマーはラジカル及び/又はアニオン重合が可能である。この新規の方法において、モノマーMの重合は成分A及び成分Bの存在により開始される。成分Aはイソシアネート又はカルボジイミドである。成分Bは有機塩基である。
【0015】
ここで、開始の実施に際し、2つの有利な方法が存在する。一方の方法では、成分Aとビニル系モノマーMとの混合物に成分Bが添加される。もう一方の方法では、反対に、成分Bとビニル系モノマーMとの混合物に成分Aが添加される。
【0016】
成分Bは有利には、3級有機塩基、特に有利には、炭素−窒素−二重結合を有する有機塩基であるか、又はトリチオカーボネートである。
【0017】
特に、以下の官能基を有する塩基が、本発明による開始法における使用に好適である:イミン、オキサゾリン、イソキサゾロン、チアゾリン、アミジン、グアニジン、カルボジイミド、イミダゾール又はトリチオカーボネート。
【0018】
イミンとは、(Rx)(Ry)C=N(Rz)基を有する化合物であると理解される。ここで、炭素原子上の基Rxと基Ryとの双方、及び窒素原子上の基Rzは、自由に選択可能であり、互いに異なっているか又は同じであり、かつ、これらの基が1以上の環を形成することも可能である。そのようなイミンの例は、2−メチルピロリン(1)、N−ベンジリデンメチルアミン(BMA、(2))又はN−4−メトキシベンジリデンアニリン(3)である:
【化1】

【0019】
オキサゾリンは、(Ry)O−C(Rx)=N(Rz)基を有する化合物である。この化合物においても、炭素原子上の基Rx、酸素上の基Ry及び窒素原子上の基Rzは、それぞれ自由に選択可能であり、互いに異なっているか又は同じであり、かつ、これらの基が1以上の環を形成することも可能である。オキサゾリンについての例は、2−エチルオキサゾリン(4)及び2−フェニルオキサゾリン(5)である:
【化2】

【0020】
イソキサゾロンは、構造要素(6)を有する化合物である:
【化3】

【0021】
イソキサゾロンの、炭素原子上の2つの基RxないしRy及び窒素原子上の基Rzについても、これらの基は自由に選択可能であり、かつ互いに異なっていても同じであってもよい。これらの基が1以上の環を形成することも可能である。そのようなイソキサゾロンについての一例は、3−フェニル−5−イソキサゾロン(7)である:
【化4】

【0022】
チアゾリンは、構造要素(8)又は(9)を有する化合物である:
【化5】

【0023】
炭素原子上の基Rx、硫黄原子上の基Ry、第二の硫黄原子上の基Rx’、及び窒素原子上の基Rzについて、これらの基は自由に選択可能であり、かつ互いに異なっていても同じであってもよい。これらの基が1以上の環を形成することも可能である。そのようなチアゾリンについての例は、2−メチルチアゾリン(10)又は2−メチルメルカプトチアゾリン(11)である:
【化6】

【0024】
アミジンは構造要素(12)を有する化合物であり、グアニジンは構造要素(13)を有する化合物である:
【化7】

【0025】
炭素原子上の基Rx、窒素原子上の基Rz、第二の窒素原子上の基Ry及びRy’、及び第三の窒素原子上の基Rx’及びRx’’について、これらの基は自由に選択可能であり、かつ互いに異なっていても同じであってもよい。これらの基が1以上の環を形成することも可能である。アミジンについての例は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、(14))、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN、(15))又はN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール(PDHI、(16))である:
【化8】

【0026】
グアニジンについての例は、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD、(17))、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG、(18))又はN−tert−ブチル−1,1,3,3,−テトラメチルグアニジン(19)である:
【化9】

【0027】
カルボジイミドの群は、構造要素(Rz)−N=C=N−(Rz’)を有する化合物である。窒素原子上の基Rz及びRz’について、これら2つの基は自由に選択可能であり、かつ互いに異なっていても同じであってもよい。これらの基が1以上の環を形成することも可能である。カルボジイミドについての一例は、ジイソプロピルカルボジイミド(20)である:
【化10】

【0028】
さらに使用可能な化合物は、イミダゾール(21)又は1−メチルイミダゾール(22)である:
【化11】

【0029】
C=N結合を有しない、使用可能な有機塩基についての例は、構造要素(23)を有するトリチオカーボネートである:
【化12】

【0030】
2つの硫黄原子上の基Ry及びRy’について、これらの基は自由に選択可能であり、かつ互いに異なっていても同じであってもよい。これらの基が1以上の環を形成することも可能である。トリチオカーボネートについての一例は、エチリデントリチオカーボネート(24)である:
【化13】

【0031】
有機塩基についての例は、本発明を何らかの形に限定するのに適したものではなく、これらの例は、本発明により使用可能な多数の化合物を説明するためのものである。
【0032】
成分Aは、1回、2回又はそれを上回って官能化されていてよいイソシアネートである。以下で、イソシアネート、との表記には、化学当量のチオイソシアネートも含まれる。
【0033】
他の官能基は、一実施態様において、第二、ないしさらなるイソシアネート基であってよい。特別な一実施態様において、他の官能基が、イソシアネート基と一緒に安定な化合物を形成する別の官能基であることも可能である。
【0034】
単官能性イソシアネートについての例は、シクロヘキシルイソシアネート(25)、フェニルイソシアネート(26)及びtert−ブチルイソシアネート(27)である。単官能性チオイソシアネートについての例は、フェニルチオイソシアネート(28)である:
【化14】

【0035】
二個のイソシアネート基を有する二官能性イソシアネートについての例は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、(29))、トルエンジイソシアネート(TDI、(30))及びイソホロンジイソシアネート(IPDI、(31))である:
【化15】

【0036】
他の例は、これら二官能性イソシアネートの縮合物、特に二個のイソシアネート基を有するイソシアネートの三量体、例えばHDI三量体(32)又はIPDI三量体(33)である:
【化16】

【0037】
さらに、単官能性の直鎖イソシアネート、例えばドデシルイソシアネート(34)又はエチルイソシアネート(35)も使用可能である:
【化17】

【0038】
イソシアネートに代えて、カルボジイミドも使用可能である。これは、使用可能な有機塩基に関して説明された通り、すでに記載された構造に相応する構造要素(Rz)−N=C=N−(Rz’)を有する化合物である。イソシアネートに代えて使用可能であるカルボジイミドについての一例は、ジイソプロピルカルボジイミド(20)である:
【化18】

【0039】
カルボジイミドを使用する本発明の特別な一実施態様において、A及びBの両成分は同じであってよい。この実施態様においては、これら両成分の一方を、時間をずらして系に添加することも不要であるため、この実施の例外においては単一成分の開始剤系が存在する。
【0040】
別の一実施態様において、イソシアネート及び有機塩基の両成分からまず最初に付加物を形成させることも可能であり、この付加物自体が同様に重合を開始させることができる。この中間体は単離も可能であるため、これを代替的な開始剤として使用することができる。そのような付加物についての一例は、2分子TMG(18)とHDI(29)とからの反応生成物(36)である:
【化19】

【0041】
本発明による重合開始法は、基本的には使用される重合法に依存しない。開始法及び引き続く重合は、例えば、溶液−又は塊状重合の形で実施することができる。重合は、バッチ式で実施することもできるし、連続的に実施することもできる。重合はさらに、慣用の様々な温度全体にわたって、かつ過−、常−又は減圧で実施することができる。
【0042】
本発明の特別な一観点は、該方法から得られたポリマーが、極めて幅の広い分子量範囲で生じることである。該ポリマーは、ポリスチレン標準に対するGPC測定によれば、1000〜10000000g/モル、特に5000〜5000000g/モル、極めて特に10000〜2000000g/モルの分子量を有することができる。
【0043】
ビニル系モノマーMは、二重結合を有するモノマーであり、特に、ラジカル及び/又はアニオン重合性の二重結合を有するモノマーである。特に、アクリレート、メタクリレート、スチレン、スチレンから誘導されたモノマー、α−オレフィン又は前記モノマーからの混合物である。
【0044】
以下で、(メタ)アクリレートとの表記は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のアルキルエステルを指す。
【0045】
一般に、該モノマーは、1〜40個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は脂環式アルコールのアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル−(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル−(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート又はフェニル(メタ)アクリレート(これらはそれぞれ非置換であってもよいし、1〜4回置換されたアリール基を有していてもよい);他の芳香族置換(メタ)アクリレート、例えばナフチル(メタ)アクリレート;エーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又は5〜80個のC原子を有するその混合物のモノ(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリルメタクリレート、メトキシ(メ)エトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシプロピルメタクリレート、シクロヘキシル−オキシメチルメタクリレート、ベンジルオキシメチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、アリルオキシメチルメタクリレート、1−エトキシブチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート及びポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレートの群から選択されている。
【0046】
前記の(メタ)アクリレートの他に、他の不飽和モノマーも重合可能である。これにはとりわけ、1−アルケン、例えば1−ヘキセン、1−ヘプテン、分枝鎖アルケン、例えばビニルシクロヘキサン、3,3−ジメチル−1−プロペン、3−メチル−1−ジイソブチレン、4−メチル−1−ペンテン、アクリロニトリル、ビニルエステル、例えばビニルアセテート、スチレン、ビニル基上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環上に1以上のアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、複素環式化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及びイソプレニルエーテルが属する。他のモノマーは、例えばビニルピペリジン、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、水素化ビニルチアゾール及び水素化ビニルオキサゾールである。
【0047】
この新規の方法により製造されたポリマーは、多くの使用分野において使用可能である。これには、この例によって本発明を何らかの形で制限するものではないが、アクリルガラス、成形材料、他の射出成形−又は押出成形適用のための原料、フィルム、鏡フィルム、包装用フィルム、光学的適用のためのフィルム、ラミネート、ラミネート接着剤、フォーム、封止用フォーム、包装用発泡材料、合成繊維、複合材料、塗料バインダー、塗料添加剤、例えば分散助剤又は耐引掻性被覆用粒子、プライマー、接着剤−、ホットメルト接着剤−、感圧性接着剤−、反応性接着剤−又はシーラント用バインダー、ヒートシールワニス、包装材料、歯科用材料、骨セメント、コンタクトレンズ、眼鏡レンズ、例えば工業用適用における他のレンズ、道路標識、床板被覆、プラスチゾル、車両用の底部被覆ないし断熱体、断熱材、医薬製剤における使用のための材料、ドラッグデリバリーマトリックス、油添加剤、例えば流動性改善剤、ポリマー添加剤、例えば耐衝撃性改良剤、相容化剤又は流動性改善剤、紡糸添加剤、化粧品適用における粒子が属しており、また、多孔質鋳型を製造するための原料としても使用される。
【実施例】
【0048】
実施例
実施例1〜38からのポリマーの質量平均分子量を、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。この測定を、Polymer Laboratories Inc.社のPL-GPC 50 Plusを用いて、40℃でTHF中でポリスチレン標準に対して実施した。Mwに関する測定限界は約400000g/モルである。
【0049】
実施例43〜48からのポリマーの質量平均分子量を、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いてDIN 55672−1により測定した。この測定を、Polymer Laboratories Inc.社のGPCを用いて、炉温度35℃でTHF中で、運転時間48分で、ポリスチレン標準に対して実施した。Mwに関する測定限界は、15000000g/モル超である。
【0050】
単離したポリマーを、真空乾燥棚中で60℃でかつ20ミリバールで、恒量になるまで乾燥させた後に秤量することによって、収率を測定した。
【0051】
実施例1〜21に関する共通の実施規定
25mL丸底フラスコ中に、メチルメタクリレート(MMA)2.5g(2.65mL、25ミリモル)、塩基(使用する塩基+MMAに対するモル比:第1表を参照のこと)及び場合により溶剤(3mL;表を参照のこと)を装入し、25℃で撹拌する。氷−食塩−混合物を用いて外部冷却し、それに対して絶え間なく撹拌しながら、イソシアネート(使用するイソシアネート+MMAに対するモル比:第1表を参照のこと)を添加する。25℃で撹拌下に反応時間t(第1表を参照のこと)が経過した後、得られた混合物をクロロホルム15mL中に溶解させ、濾過する。その後、この溶液を精製のために氷冷メタノール300mL中で滴加により沈殿させる。PMMAは白色固体として沈殿し、これを濾別し、メタノールで3回洗浄し、かつ真空乾燥棚中で60℃でかつ20ミリバールで恒量になるまで乾燥させる。結果は第1表を参照のこと。
【0052】
実施例22〜27に関する共通の実施規定
25mL丸底フラスコ中に、メチルメタクリレート(MMA)2.5g(2.65mL、25ミリモル)及び塩基(使用する塩基+MMAに対するモル比:第1表を参照のこと)を装入し、25℃で撹拌する。この溶液に、イソシアネート(使用するイソシアネート+MMAに対するモル比:第2表を参照のこと)を添加し、還流下に加熱する。これは、通常は90℃の溶液温度に相当する。溶液の沸点で時間t(第2表を参照のこと)撹拌した後、ますます粘度増加が生じる。この溶液を冷却し、粘性の油状物をクロロホルム10ml中に溶解させ、氷冷n−ヘキサン300mL中で滴加により沈殿させ、得られた固体を濾別する。得られたPMMAをn−ヘキサンで数回洗浄し、真空乾燥棚中で60℃でかつ20ミリバールで恒量になるまで乾燥させる。
【0053】
沈殿の濾液からn−ヘキサンを留去して、そこから得られた残滓を再度重合に使用することができる。このような後精製の場合、塩基/イソシアネートの系に関して5%〜27%の質量損失を考慮しなければならない。結果は第2表を参照のこと。
【0054】
実施例28〜32に関する共通の実施規定
塩基(使用する塩基+MMAに対するモル比:第3表を参照のこと)を、25mL丸底フラスコ中でCHCl3 3mL中に溶解させる。この溶液に、MMA 2.5g(2.65mL、25ミリモル)及びイソシアネート(使用するイソシアネート+MMAに対するモル比:第3表を参照のこと)を添加し、還流下に加熱する。これは、通常は90℃の溶液温度に相当する。溶液の沸点で時間t(第3表を参照のこと)撹拌した後、ますます粘度増加が生じる。この溶液を冷却し、粘性の油状物をクロロホルム10ml中に溶解させ、氷冷n−ヘキサン300mL中で滴加により沈殿させ、得られた固体を濾別する。得られたPMMAをn−ヘキサンで数回洗浄し、真空乾燥棚中で60℃でかつ20ミリバールで恒量になるまで乾燥させる。
【0055】
沈殿の濾液からn−ヘキサンを留去して、そこから得られた残滓を再度重合に使用することができる。このような後精製の場合、塩基/イソシアネートの系に関して5%〜27%の質量損失を考慮しなければならない。結果は第3表を参照のこと。
【0056】
実施例33〜36及び比較例V1〜V4に関する共通の実施規定
25mL丸底フラスコ中に混合物A(組成は第4表を参照のこと)を装入し、25℃で撹拌する。氷−食塩−混合物を用いて外部冷却し、それに対して絶え間なく撹拌しながら混合物Bを添加する。25℃で撹拌下に18時間が経過した後、得られた混合物をクロロホルム15mL中に溶解させ、濾過する。その後、この溶液を精製のために氷冷メタノール300mL中で滴加により沈殿させる。生じたPMMAは白色固体として沈殿し、これを濾別し、メタノールで3回洗浄し、かつ真空乾燥棚中で60℃でかつ20ミリバールで恒量になるまで乾燥させる。この白色固体はPMMAのみであることができる。検出を、1H−NMR分光法により行う。PMMAの存在は、重合が行われたことを裏付けるものである。生じたポリマーの個別の特性決定は、この場合行わなかった。実施例39〜42及び比較例V1〜V4において、それぞれメチルメタクリレート2.5g(2.65mL、25ミリモル)を使用する。これは6モル当量に相当し、これに対して、それぞれ1モル当量のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及び1モル当量の1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG、18)ないし1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、14)を使用する。結果は第4表を参照のこと。
【0057】
実施例37〜42に関する共通の実施規定
25mL丸底フラスコ中に、メチルメタクリレート(MMA)2.5g(2.65mL、25ミリモル)及び1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG、(18)、MMAに対するモル比:第5表を参照のこと)を装入し、25℃で撹拌する。氷−食塩−混合物を用いて外部冷却し、それに対して絶え間なく撹拌しながら、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、(29)、MMAに対するモル比:第5表を参照のこと)を添加する。25℃で撹拌下に7日間が経過した後、得られた混合物をクロロホルム15mL中に溶解させ、濾過する。その後、この溶液を精製のために氷冷ヘキサン300mL中で滴加により沈殿させる。生じたPMMAは白色固体として沈殿し、これを濾別し、ヘキサンで3回洗浄し、かつ真空乾燥棚中で60℃でかつ20ミリバールで恒量になるまで乾燥させる。結果は第5表を参照のこと。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
実施例1〜25に関して、第1表には、本発明による成分A及びBは多様であり、その上さらに、部分的にすでに室温で溶液でか又は塊状で、メタクリレートのための開始剤として使用できることが示されている。
【0064】
実施例26〜32(第2表)に関しても、成分AとBとの組合せが示されており、該組合せはより高い温度で塊状で開始剤として使用できる。実施例33〜38(第3表)に関しては、相応する組合せが、溶液でより高い温度で示されている。
【0065】
ここで、実施例20は、成分AとBが同一のカルボジイミドである系であり、該系は一回のチャージで添加される。実施例23ないし24において、トリチオカーボネートを塩基として使用した。
【0066】
実施例39〜42(第4表)に関して、本発明による重合開始法が、モノマーと成分A又はBを装入し、かつそれぞれもう一方の成分を後から添加した場合に機能することが示されている。成分A(比較例V2)又は成分B(比較例V1)のいずれかが欠けている場合には、該開始は機能しない。成分A及びBを装入し、かつモノマーをこの混合物に添加した場合(比較例V3及びV4)にも、該開始は常に機能しない。これに関する例外は、例えば実施例32からの開始である。
【0067】
実施例43〜48は、本発明による方法を用いて特に高い分子量が実現可能であることを好適に証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始法において、
ビニル系モノマーMの重合を成分A及び成分Bを用いて開始し、
該成分Aがイソシアネート又はカルボジイミドであり、
該成分Bが有機塩基であり、かつ
該成分Aと該成分Bとを互いに別々に該モノマーMに添加することを特徴とする方法。
【請求項2】
重合を開始する際に、成分Aとビニル系モノマーMとの混合物に成分Bを添加する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
重合を開始する際に、成分Bとビニル系モノマーMとの混合物に成分Aを添加する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
成分Aが、ドデシルイソシアネート、エチルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDI三量体、シクロヘキシルイソシアネート、tert−ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はIPDI三量体である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
成分Bが、3級有機塩基、有利には、炭素−窒素−二重結合を有する有機塩基であるか、又はトリチオカーボネートである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
塩基がイミンである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
塩基がオキサゾリン又はイソキサゾロンである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
塩基がチアゾリンである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
塩基がアミジン又はグアニジンである、請求項5記載の方法。
【請求項10】
塩基がカルボジイミドである、請求項5記載の方法。
【請求項11】
塩基がイミダゾールである、請求項5記載の方法。
【請求項12】
重合を、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、ミニエマルション重合又はマイクロエマルション重合として実施する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
イソシアネートが二官能性イソシアネートである、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法から得られたポリマーが、ポリスチレン標準に対するGPC測定において、5000〜10000000g/モルの質量平均分子量を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
ビニル系モノマーMが、アクリレート、メタクリレート、スチレン、スチレンから誘導されたモノマー、α−オレフィン又は前記モノマーからの混合物である、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
重合開始法において、ビニル系モノマーMの重合をカルボジイミドを用いて開始することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法から得られたポリマーが、ポリスチレン標準に対するGPC測定において、5000〜10000000g/モルの分子量を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ビニル系モノマーMが、アクリレート、メタクリレート、スチレン、スチレンから誘導されたモノマー、α−オレフィン又は前記モノマーからの混合物である、請求項16又は17記載の方法。

【公表番号】特表2013−515111(P2013−515111A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545193(P2012−545193)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068363
【国際公開番号】WO2011/085856
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】