説明

(4−ブロモフェニル)(4−ピペリジル)メタノン−(Z)−O−エチルオキシムおよび塩の合成

【課題】高い立体化学純度の(4−ブロモフェニル)(4−ピペリジル)メタノン−(Z)−O−エチルオキシムおよびその酸塩および類似化合物を合成すること。
【解決手段】1実施態様では、本発明は、高い立体化学純度(式VII)での(4−ブロモフェニル)(4−ピペリジル)メタノン−(Z)−O−エチルオキシムおよびその酸塩および類似化合物の合成を記述している。「高い立体化学純度」との用語は、少なくとも約90%の所望異性体を意味し、これは、本発明では、式Iの化合物のZ異性体である。実際、本発明の方法により製造される式Iの化合物の立体化学純度は、典型的には、95%を越えるZ異性体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本願は、具体的には、高い立体化学純度で(4−ブロモフェニル)(4−ピペリジル)メタノン−(Z)−O−エチルオキシムおよびその酸塩を合成する新規方法を開示している。それはまた、一般に、高い立体化学純度で上記化合物と類似の化合物を調製する方法を開示している。本発明は、さらに、このようなO−エチルオキシムのZ異性体を主に調製する新規な酸誘導異性化を開示している。本願は、2001年10月15日に出願された米国仮特許出願第60/329,562号から優先権を主張している。本明細書中で開示された発明は、2001年10月15日に出願された米国仮特許出願第60/329,561号で開示された発明と関連している。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(4−ブロモフェニル)(4−ピペリジル)メタノン−(Z)−O−エチルオキシム塩酸塩(式I)は、4−[(Z)−(4−ブロモフェニル)(エトキシイミノ)メチル]−1’−[(2,4−ジメチル−1−オキシド−3−ピリジニル)カルボニル]−4’−メチル−1,4’−ビピペリジン(式II)を調製する際に使用される中間体である。式IIの化合物は、本願と同日に出願された係属中の米国特許出願第60/329,566号(代理人事件整理番号第CD01443P号)で述べられている。
【0003】
【化15】

【0004】
【化16】


【0005】
式IIの化合物はまた、本願出願人が所有する米国特許出願第09/562,815号(これは、2000年5月1日に出願された)でも開示されている。その特許出願は、CCR5レセプタの数種の新規なアンタゴニストを開示しており、これらは、AIDSおよび関連したHIV感染を治療するのに有用である。CCR−5レセプタはまた、炎症疾患(例えば、関節炎、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息およびアレルギー)において細胞移動を媒介することが報告されており、このようなレセプタの阻害は、このような疾患の処置、および他の炎症疾患または状態(例えば、炎症性腸疾患、多発性硬化症、固形臓器移植片拒絶および移植片対宿主病)の処置に有用であると期待される。
【0006】
CCR5レセプタのアンタゴニストが重要であることを考慮すると、このようなアンタゴニストおよび/またはそれらの中間体を製造する新規な方法は、常に関心がもたれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
1実施態様では、本願は、高い立体化学純度および高い収率で(4−ブロモフェニル)(4−ピペリジル)メタノン−(Z)−O−エチルオキシムおよびその酸塩を製造する新規で簡単な方法を教示する。それは、さらに、高い立体化学純度で式Iの化合物を合成する新規で簡単な方法、そのプロセスによって、高い収率および高い立体化学純度で式IIの化合物を製造する方法を教示する。「高い立体化学純度」との用語は、少なくとも約90%の所望異性体を意味し、これは、本発明では、式Iの化合物のZ異性体である。実際、本発明の方法により製造される式Iの化合物の立体化学純度は、典型的には、95%を越えるZ異性体である。「高い収率」との用語は、少なくとも約60%の収率の所望生成物を意味する。このような高い立体化学純度で式Iの化合物を調製する本発明の方法はまた、一般に、式Iの化合物に構造的に類似した化合物を製造するのに適当である。
本発明は、以下を提供する。
(項目1)
式VIIの化合物を調製する方法:
【化1】


ここで、該化合物は、少なくとも約90%の立体化学純度でZ−異性体形状であり、そして「酸」は、酸塩を意味し、該方法は、以下の工程を包含する:
(a)イソニペコ酸(式III)をそのN−保護誘導体(式IIIA)に変換する工程:
【化2】


ここで、Yは、保護基である;
(b)式IIIAの該化合物をその酸ハロゲン化物(式IV)に変換する工程:
【化3】


(c)適当なFriedel−Crafts触媒の存在下にて、式IVの該化合物を適当なハロベンゼンと反応させて、式Vの化合物を得る工程:
【化4】


ここで、Xは、ハロゲンである;
(d)式Vの該化合物をアルコキシアミンおよび酸と反応させて、そのZ異性体およびE異性体の混合物として、式VIの化合物を得る工程:
【化5】


および
(e)式VIの該化合物を強酸で処理して異性化すると同時に、Z異性体に富んだ式VIIの所望の酸塩に変換する工程であって、ここで、該Z異性体は、少なくとも約90:10の比で、そのE異性体よりも多い、
方法。
(項目2)
X=Brであり、式VII中の前記「酸」が、塩酸塩を意味し、そしてYが、−C(O)CF、−C(O)CH、−C(O)OEtまたは−CHOである、項目1に記載の方法。
(項目3)
Yが、−C(O)CFである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記変換工程(a)が、溶媒中にてイソニペコ酸を無水トリフルオロ酢酸と反応させる工程を包含し、ここで、該溶媒が、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、塩化メチレン、塩化エチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記溶媒が、酢酸イソプロピルである、項目4に記載の方法。
(項目6)
工程(b)のGが、塩素であり、そして前記変換工程が、式IIIAの前記化合物を酸塩化物と反応させる工程を包含し、ここで、該酸塩化物が、塩化チオニル、塩化オキサリルおよび塩化ホスホリルからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目7)
工程(c)の前記ハロベンゼンが、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンおよびヨードベンゼンからなる群から選択され、そして前記Friedel−Crafts触媒が、塩化アルミニウムである、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記ハロベンゼンが、ブロモベンゼンである、項目7に記載の方法。
(項目9)
工程(d)の前記アルコキシアミンが、エトキシアミンまたはエトキシアミン塩酸塩であり、該酸が、酢酸であり、そして前記反応が、溶媒中で実行され、ここで、該溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記溶媒が、メタノールである、項目9に記載の方法。
(項目11)
工程(e)の前記強酸が、HClであり、そして式VIの化合物の前記処理が、溶媒中にて、約10〜80℃で、約1〜80時間にわたって、該強酸と反応させる工程を包含し、ここで、該HClが、式VIの該化合物に対して、約1〜8モル当量で存在している、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記溶媒が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、アセトニトリル、ベンゾニトリルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記溶媒が、イソプロピルアルコールおよびメチルtert−ブチルエーテルの混合物である、項目12に記載の方法。
(項目14)
次式の化合物を調製する方法:
【化6】


該方法は、以下の工程を包含する:
(a)イソニペコ酸を次式のトリフルオロアセチル化合物に変換する工程:
【化7】


(b)工程(a)の該トリフルオロアセチル化合物を次式のその対応する酸塩化物に変換する工程
【化8】


(c)AlClの存在下にて、該酸塩化物をブロモベンゼンと反応させて、次式のブロモ化合物を得る工程:
【化9】


(d)工程(c)の該ブロモ化合物を次式のオキシムに変換する工程:
【化10】


および
(e)そのZ異性体の立体化学純度が少なくとも約90%の式Iの所望生成物を得るのに適当な条件下にて、工程(d)の該オキシムを強酸で処理する工程。
(項目15)
工程(a)の前記変換が、酢酸イソプロピル溶媒の存在下にて、イソニペコ酸を無水トリフルオロ酢酸と反応させる工程を包含する、項目14に記載の方法。
(項目16)
工程(b)の前記変換が、工程(a)の前記トリフルオロアセチル化合物を塩化チオニルと反応させることにより起こる、項目14に記載の方法。
(項目17)
工程(d)の前記変換が、溶媒中にて、前記ブロモ化合物を(i)エトキシアミンまたはエトキシアミン塩酸塩および(ii)酢酸と反応させることにより実行され、ここで、該溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目18)
工程(e)の前記強酸が、HClであり、そして前記オキシムの前記処理が、溶媒中にて、約10〜80℃で、約1〜80時間にわたって、該オキシムを該強酸と反応させる工程を包含し、ここで、該HClが、該オキシムに対して、約1〜8モル当量で存在している、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記溶媒が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、アセトニトリル、ベンゾニトリルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記溶媒が、イソプロパノールおよびメチルtert−ブチルエーテルの混合物である、項目19に記載の方法。
(項目21)
工程(e)の前記酸塩が、さらに、塩基と反応されて次式の遊離塩を形成する、項目1に記載の方法:
【化11】


ここで、該遊離塩基は、Z異性体に富んでおり、該Z異性体は、少なくとも約90:10の比で、そのE異性体よりも多い、
方法。
(項目22)
X=Brである、項目21に記載の方法。
(項目23)
項目21に記載の方法により調製される、次式の化合物:
【化12】


ここで、該化合物は、Z異性体に富んでおり、該Z異性体は、少なくとも約90:10の比で、そのE異性体よりも多い、
化合物。
(項目24)
X=Brである、項目23に記載の方法。
(項目25)
次式の化合物の異性体を含む、次式の化合物:
【化13】



(項目26)
次式の化合物の異性体を含む、次式の化合物:
【化14】



【0008】
それゆえ、本発明の方法は、市販のイソニペコ酸(式III)から一般式VIIの化合物を合成する工程を包含する:
【0009】
【化17】


【0010】
式IIIの化合物から式VIIの形式の一般化合物を製造する方法は、以下の工程を包含する:
(a)イソニペコ酸(式III)からN−保護誘導体(式IIIA)を調製する工程:
【0011】
【化18】

ここで、Yは、保護基である;
(b)式IIIAの該化合物をその酸ハロゲン化物(式IV)に変換する工程:
【0012】
【化19】

(c)適当なFriedel−Crafts触媒の存在下にて、式IVの該化合物を適当なハロベンゼンと反応させて、式Vの化合物を得る工程:
【0013】
【化20】

ここで、Xは、該ハロベンゼンから誘導されたハロゲンである;
(d)式Vの該化合物を(a)適当なアルコキシアミンおよび(b)酸と反応させることに続いて塩基性条件下にて脱保護して、そのZ異性体およびE異性体の混合物として、式VIの化合物を得る工程:
【0014】
【化21】

および
(e)式VIの該化合物を強酸で処理して異性化すると同時に、Z異性体に富んだ式VIIの所望の酸塩に変換する工程であって、ここで、該Z異性体は、少なくとも90:10の比で、そのE異性体よりも多い。このように得た酸塩は、必要に応じて、当業者が認識できるような適当な塩基で処理することにより、その遊離塩基に変換され得る。
【0015】
式VIIの化合物を製造する本発明の方法は、以下のいくつかの利点がある:経済的であり、簡単に規模を拡大でき、高い収率および高い立体化学純度で所望のZ異性体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
1実施態様では、本発明は、高い収率および高い立体化学純度で式VIIの化合物を調製する新規で使い易い方法を開示している。式VIIにおいて、XがBrであり、そして「酸」がHClのとき、その化合物は、式Iの化合物と同じであり、これは、本願と同日に出願された係属中の米国特許第 号(代理人事件整理番号第CD01443P号)で開示されているように、式IIの化合物を調製するのに有用な中間体である。式VIIの化合物を調製する本発明の方法は、スキームIにて、概略的に記述する。
【0017】
【化22】


式VIおよびVIIの化合物およびそれらの異性体は、新規化合物であると考えられている。式V、VIおよびVIIのX部分の実体は、同じである。上述のように、純粋なZ異性体の酸塩(式VII)は、必要に応じて、適当な塩基で処理され、次式の遊離塩基に変換され得る:
【0018】
【化23】


上記スキーム1の工程4は、主にZ異性体を生じる新規な酸触媒異性化方法を含む。酸触媒による異性体混合物からのsyn−またはanti−アミノアリールアルキルケトキシムの調製は、T.Zsuzsannaら、Hung.Magy.Km.Foly.,74
3(1968),116〜119で述べられている。Z−およびE−異性体形状の[R−(Z)]−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン,O−[3−(3−メトキシフェニル)−2−プロピニル]−オキシムおよびそれらの酸触媒異性化は、米国特許第5,534,522号で述べられている。本発明の方法における種々の工程に好ましい試薬および反応条件は、実施例の節で詳細に記述されているのに対して、以下では、その詳細を要約する。
【0019】
現在開示した方法は、式IIIの公知化合物(これは、市販のイソニペコ酸である)を使って開始する。工程1では、イソニペコ酸は、N−保護されている。その保護基は、当業者に周知であるように、化合物IIIを、適当な酸、酸塩化物、酸無水物、カルボン酸エステルなどと反応させることにより、導入される。使用され得る有用な保護基には、トリフルオロアセチル(−C(O)CF)、アセチル(−C(O)CH)、ホルミル(−CHO)、−C(O)OEtなどがある;トリフルオロアセチルが好ましく、これは、無水トリフルオロ酢酸と反応させることにより、導入される。この無水トリフルオロ酢酸は、一般に、(イソニペコ酸のモル数を基準にして)、約1〜約5モル当量、好ましくは、約1〜約3モル当量、典型的には、約1.5〜約2モル当量で、使用される。溶媒、例えば、炭化水素(例えば、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソプロピルなど)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジグリムなど)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトンなど)だけでなく、これらの溶媒の混合物が使用され得る。これらのエステル、特に、酢酸イソプロピルが好ましい。一般に、イソニペコ酸は、選択した溶媒に溶解、懸濁または分散され、また、無水トリフルオロ酢酸は、約0〜30℃の温度で、約0.5〜5時間にわたって、加えられ維持される。その反応が完結した後、式IIIAの生成物は、通常の手順(例えば、残留している酸の中和および溶媒抽出)により、単離され得る。
【0020】
次いで、N−保護したイソニペコ酸(IIIA)は、適当な試薬(例えば、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化ホスホリル、ハロゲン化オキサリルなど)と反応させることにより、その酸ハロゲン化物(IV)に変換される;ハロゲン化オキサリル、塩化チオニルは、特に好ましい。その酸ハロゲン化物は、一般に、約1〜約4モル当量、好ましくは、約1〜約3モル当量で、典型的には約1〜約1.5モル当量で使用され得る。そのように調製した式IVの酸ハロゲン化物は、次いで、工程2にて、ハロベンゼンを用いたFriedel−Craftsアルキル化を受ける。Friedel−Craftsアルキル化は、有機合成の技術分野で周知である。一般に、使用される触媒は、典型的には、金属ハロゲン化物(例えば、AlCl)である。例として有用なハロベンゼンには、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンまたはヨードベンゼンがあり、クロロベンゼンおよびブロモベンゼンが好ましい。このハロベンゼンは、式IVの化合物に対して、一般に、約3〜8容量、好ましくは、約3〜7容量、典型的には、約4〜6容量である。このAlCl触媒は、一般に、式IVの化合物に対して、約2〜5モル当量、好ましくは、約2〜4モル当量、典型的には、約2〜3モル当量で使用される。一般に、それらの成分は、混合され、そして5〜80℃で、約1〜5時間維持される。ワークアップ後の式Vの生成物は、一般に、溶媒抽出、沈殿、または当業者に周知の類似の方法により、単離される。
【0021】
次いで、式Vの化合物は、通常、水溶液形態で、エトキシアミン(またはその塩酸塩)と反応させることにより、式VIのエトキシオキシムに変換される。エトキシアミン(またはその塩酸塩)は、一般に、約1〜約4モル当量、好ましくは、約1〜約3モル当量、典型的には、約1〜約2モル当量で使用される。一般に、この反応は、溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなど、またはそれらの混合物)中にて、弱酸(例えば、酢酸、ギ酸など、またはそれらの混合物)で触媒される。式VIの生成物は、ワークアップ後、そのZ−異性体およびE−異性体の混合物であり、その比は、当該技術分野で周知の技術(例えば、HPLC)を使用して、その立体化学的構成について分析され得る。
【0022】
所望の異性体は、化合物VIIのZ−異性体であるので、式VIの化合物が所望のZ−異性体に富んでいることが有利である。出願人は、驚くべきことに、特定の反応条件下にて式VIの化合物を強酸で処理すると、このZ−異性体およびE−異性体の混合物が主にZ−異性体に異性化されることを発見した。一般に、式VIの化合物は、溶媒、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなど、エーテル(例えば、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、炭化水素(例えば、ヘプタン、ヘキサン、トルエンなど)、ニトリル(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、またはこのような溶媒の混合物に溶解され得る。それは、次いで、10〜80℃の範囲の温度で、約1〜80時間にわたって、強酸(例えば、HCl、HBr、HSOなど)で処理される。この酸は、一般に、約1.1〜約8モル当量、好ましくは、約1.1〜約6モル当量、典型的には、約2〜約4モル当量で、使用される。ワークアップにより、典型的には、主に、式VIIの化合物のZ−異性体の酸塩が形成される。実施例の節で示したような典型的な反応手順の後にHPLC分析を行うと、(X=Brであり、その酸塩がHClのとき)、一般に、約90%以上の立体化学純度、典型的には、約95%以上の立体化学純度で、そのZ−異性体の存在が明らかとなった。さらに、このような立体化学純度の所望化合物の収率は、非常に高く、このことは、強酸を使用するこのような異性化反応が、このようなオキシムのZ−異性体を高収率かつ高立体化学純度で調製するのに適応可能であり得ることを立証している。
【0023】
本明細書中で記述した反応スキームの種々の工程の生成物は、当業者に周知であるように、通常の技術(例えば、濾過、再結晶、溶媒抽出、蒸留、沈殿、昇華など)により、単離され精製され得る。それらの生成物は、当業者に周知の通常の方法(例えば、薄層クロマトグラフィー、NMR、HPLC、融点、質量分析、元素分析など)により、純度について分析および/または検査され得る。
【0024】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために、提供する。これらの実施例は、本明細書中にて、式IIIの化合物からの式Iの化合物の調製として記述されているものの、物質、方法および反応条件に対して、本開示に多くの改良、変形および変更を実行し得ることは、当業者に明らかである。このような全ての改良、変形および変更は、本発明の精神および範囲内であると解釈される。
【実施例】
【0025】
特に明記しない限り、以下の略語は、下記の実施例では、以下で述べる意味を有する:
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
M.pt:融点
NMR=核磁気共鳴スペクトル
DMSO=ジメチルスルホキシド
mL=ミリリットル
g=グラム
rt=室温(常温)
(実施例1.式IIIの化合物からの式VIの化合物の調製)
この化合物は、M.F.Hibertら、J.Med.Chem.,33(1990),1594〜1600に類似した手順に従って、調製した。イソニペコ酸440gの酢酸イソプロピル1760mL懸濁液に、その温度を30℃未満に維持しつつ、0〜10℃で、少なくとも2時間にわたって、トリフルオロ酢酸880mLを加えた。完全に添加した後、その反応混合物を、55〜65℃に加熱した。約2時間後、この反応混合物をほぼ室温まで冷却し、そして酢酸イソプロピル1760mLを加えた。この反応混合物を−10℃と0℃の間の温度まで冷却し、それから、その温度を15℃未満に維持しつつ、水1320mLを加えた。これに続いて、その温度を15℃未満で維持しつつ、25%水酸化ナトリウム溶液1364gを加えた。その二相混合物を、室温で、約3時間攪拌した。その水層を除去し、そして酢酸イソプロピル880mLで抽出した。合わせた酢酸イソプロピル溶液を、15%塩化ナトリウム溶液(各880mL)で2回洗浄した。反応混合物を約1320mLに濃縮した。冷却すると、その生成物は、結晶化し始めた。この混合物を室温まで冷却し、そしてヘプタン1760mLを加えた。その懸濁液を−5℃と5℃の間の温度まで冷却し、1時間攪拌し、次いで、濾過した。集めた固形物をヘプタン440mLで洗浄し、次いで、減圧下にて、55〜65℃で乾燥して、式IVの化合物(融点113.5℃)613.6gを得た。
【0026】
(実施例2.式IVの化合物からの式Vの化合物の調製)
ブロモベンゼン1900mL中に式IVの化合物477gを含有する懸濁液に、塩化チオニル257gを加えた、その反応混合物を、約1時間にわたって、60〜65℃まで加熱した。さらに1〜2時間後、この反応混合物を10〜15℃まで冷却し、それから、塩化アルミニウム588gを、5つの部分で、加えた。各添加中にて、その温度を10〜15℃で維持した。塩化アルミニウムの添加が完了した後、この反応混合物を、3時間にわたって、65〜70℃まで加熱した。約1時間後、塩化アルミニウム70gをさらに加えた。約1時間後、この反応混合物を6N塩酸溶液(これは、5℃と10℃の間の温度まで予め冷却した)2370mLに移した。この移動中にて、その温度を40℃未満で維持した。反応フラスコを、ブロモベンゼン470mLおよび水470mLでリンスした。その二相混合物を分離した。この有機溶液を、減圧下にて、約820mLまで濃縮した。この混合物に、メタルtert−ブチルエーテル1320mLおよびヘプタン1790mLを加えた。結晶化が開始した後、ヘプタン860mLをさらに加えた。その懸濁液を0〜5℃の間の温度まで冷却し、少なくとも30分間攪拌し、次いで、濾過した。集めた固形物を冷ヘプタン530mLで洗浄し、減圧下にて、40〜50℃で乾燥して、式Vのケトン化合物(融点96.1℃)537gを得た。
【0027】
(実施例3.式Vの化合物からの式VIの化合物の調製)
メタノール1170mL中に式Vの化合物293g、30%エトキシアミン水溶液336gおよび酢酸9mLを含有する溶液を、還流下にて、約65℃で、約3時間保持した。その反応混合物を室温まで冷却し、25%水酸化ナトリウム450mLを加えた。その二相混合物を激しく攪拌した。少なくとも10分後、この反応混合物を、メチルtert−ブチルエーテル1470mLの混合物に加えた。層分離し、その有機層を水147mLで洗浄し、続いて、10%塩化ナトリウム溶液147mLで洗浄した。その有機溶液を、約730mLまで濃縮した。この濃縮物をメチルtert−ブチルエーテル880mLで希釈し、そして再度、約730mLまで濃縮した。再度、メチルtert−ブチルエーテルで蒸留を繰り返し、その濃縮物を、さらに精製することなく、次の工程で直接使用した。
【0028】
(実施例4.式VIの化合物からの式Iの化合物(主に、Z−異性体)の調製)
式VIの化合物の溶液(実施例3で調製したように、メチルtert−ブチルエーテル中に活性化合物247gを含有する全体で600mLの溶液)に、イソプロピルアルコール(「IPA」)758mLおよびメチルt−ブチルエーテル(「MTBE」)2280mLを充填した。HCl(4.8N、382mL)の無水IPA溶液を滴下した。得られたスラリーを12時間攪拌し、次いで、0℃まで冷却した。2時間攪拌した後、その粗生成物を濾過し、そしてIPAおよびMTBE(1:2)200mLで洗浄し、続いて、MTBE(200mL)で洗浄した。得られた粗生成物を、減圧下にて、55℃で、2日間乾燥して、白色固形物(294g、92%)を得た。この粗生成物は、HPLC分析により、それぞれ、91:9のE−オキシムおよびZ−オキシムを含有していることが分かった。その粗混合物を5Lの丸底フラスコに加え、続いて、IPA(1420mL)およびMTBE(1420mL)を加え、次いで、65℃まで加熱した。得られたスラリーを、機械攪拌機を使用することにより、68時間かき混ぜ、次いで、10℃まで冷却した。2時間攪拌した後、その最終生成物を濾過し、そして1:2のIPAおよびMTBE(370mL)で洗浄し、続いて、MTBE(370mL)で洗浄した。式Iの生成物を、減圧下にて、55℃で乾燥して、白色固形物(258g、収率90%、それぞれ、96:4の比のE−異性体およびZ−異性体(HPLC分析による))を得た。
【0029】
【化24】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2009−173688(P2009−173688A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119322(P2009−119322)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【分割の表示】特願2003−536205(P2003−536205)の分割
【原出願日】平成14年10月15日(2002.10.15)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】