説明

1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法

【課題】医農薬や機能性材料の合成中間体として有用な1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルを、簡便で安全な操作で、高収率かつ高選択的に製造できる新しい方法を提供する
【解決手段】2−ヒドロキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルを水溶媒中または水と有機溶媒の混合溶媒中でアルカリ金属塩基と反応させ、2−(アルカリ金属オキシメチレン)フルオロアシル酢酸エステルとし、次いでヒドラジン類と反応させる、一般式(4)


(式中、Rは水素原子またはハロゲン原子を表し、Rは水素原子、塩素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を表す。)で示される1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬や機能性材料の合成中間体として有用な下記一般式(4)で示される1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、Rは水素原子またはハロゲン原子を表し、Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を表す。)
【背景技術】
【0004】
一般的に、2−アルコキシメチレンアシル酢酸エステルと置換ヒドラジン類との反応においては、それぞれの反応基質に複数の反応点が存在するために反応の選択性が劣り、1,3−二置換ピラゾール−4−カルボン酸エステルと1,5−二置換ピラゾール−4−カルボン酸エステルが併産されることが知られている。従って目的とするピラゾール誘導体を得るためには、工業的に実施が困難なシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどによる精製工程が通常必要となる。特開2000−128763号公報(特許文献1)には、混合物として得られる1,3−および1,5−二置換ピラゾール−4−カルボン酸エステルを加水分解の後、晶析法により、1,3−二置換ピラゾール−4−カルボン酸が得られる旨、記載されているが、高純度の目的物を得るためには厳密なpHコントロール下で晶析させる必要があり、工業的には煩雑な操作を必要とするものである。さらに、本特許文献1には、本発明に係わる1,5−二置換ピラゾール−4−カルボン酸エステルあるいはそのカルボン酸を得る方法については記載されていない。
【0005】
特開平1−113371号公報(特許文献2)には、2−エトキシメチレンアシル酢酸エステル類と置換ヒドラジン類との反応による1,3−二置換ピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法が記載されているが、本発明に係わる1−置換−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステルの収率や選択性についての詳細な記載はない。
本発明者らは、特許文献2に記載の方法を用いて2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチルとメチルヒドラジンとの反応を行ったところ、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと本発明に係わる1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルの生成比は76:24となり、本製造方法は選択性が良い方法とは言い難いものである(下記比較例2参照)。
【0006】
また、特開平6−199803号公報(特許文献3)の実施例1には、2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチルとメチルヒドラジンとをエタノール中で所定の温度で反応させ、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと本発明に係わる1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造する方法について記載されているが、本発明に係わる1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルの生成比は15%であることが明記されている。さらに、本公報記載の方法は、−40〜−35℃の低温で反応を仕込む必要があり、工業的には経済性に欠ける。
【0007】
また、特開2000−212166号公報(特許文献4)には、2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エステルと置換ヒドラジンを用いた1−置換−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法が記載されている。本方法(実施例2〜4)によれば、1−置換−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステルが85%程度の収率で得られる旨記載されている。一方、本発明に係わる1−置換−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステルの生成に関する記載はないが、明細書中には、2−エトキシメチレンアシル酢酸エステル類とアルキルヒドラジン類を酢酸エステル中で10℃で反応させると、1,3−ジアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステル類(収率80〜85%)と、本発明に係わる1,5−ジアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステル類(収率10〜15%)との混合物が得られる旨、明記されている。また本公報記載の方法は、使用できる溶媒が限定され、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチルまたは炭酸ジメチル)中で反応を行うことが必須である。さらに反応開始時は5〜10℃の低温で、その後は溶媒還流温度で反応を実施する必要があり、必ずしも工業的に有利な製造方法とは言えない。
【0008】
さらに、上記の特開平1−113371号公報(特許文献2)、特開平6−199803号公報(特許文献3)および特開2000−212166号公報(特許文献4)に記載の製造方法においては、無水ヒドラジン類を原料として使用しているが、周知の通り、無水ヒドラジン類は爆発性が高く、工業的規模で大量に使用することは極めて危険性が高い。従って、爆発性の低いヒドラジン水和物類やヒドラジン水溶液を使用して、目的とする1,5−二置換ピラゾール−4−カルボン酸エステルを高収率かつ高選択的に製造することができれば、工業的製造方法として極めて優れた方法となりうると考えられるが、上記特許文献2〜4のいずれにおいても、反応系中に水が共存した場合に、1,5−二置換ピラゾール−4−カルボン酸エステルの収率や選択性に水が及ぼす影響については一切述べられていない。しかしながら、実際に水存在下に本反応を行った結果、選択性は大幅に低下することが明らかとなり、単に水存在下に反応を行っただけでは、必ずしも選択性よく目的とする1,5−二置換ピラゾール−4−カルボン酸エステルを得ることができないことが判った。(下記比較例1、3、4、5参照)
【0009】
特表2003−518110号公報(実施例30)(特許文献5)には、2−ヒドロキシメチレントリフルオロアセト酢酸エチルと4−ニトロフェニルヒドラジンとをピリジンの50%エタノール溶液中で反応させ、1−(4−ニトロフェニル)−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルが得られる旨、記載されているが、詳細な実験の記載は無く、異性体である1−(4−ニトロフェニル)−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルとの生成比については一切触れられていない。
【0010】
本発明者らは、1−置換−3−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルを選択的に得る方法について、特願2005−052004、特願2005−052006として出願をし、これらについて、優先権主張をしたPCT出願(PCT/JP2006/303269)をしている。
【特許文献1】特開2000−128763号公報
【特許文献2】特開平1−113371号公報
【特許文献3】特開平6−199803号公報(DE4231517A1)
【特許文献4】特開2000−212166号公報
【特許文献5】特表2003−518110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、2−ヒドロキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルとヒドラジン類との反応により、医薬農あるいは機能性材料の中間体として有用な1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルを、簡便で安全な操作で、高収率かつ高選択的に製造できる新しい方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記反応において、一般式(1)で示される2−ヒドロキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルを水溶媒中または水と有機溶媒の混合溶媒中でアルカリ金属塩基と反応を行った後、ヒドラジン類と反応させることにより、所望の1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルを選択的にかつ高収率で製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、一般式(1)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R、RおよびRは上記と同じ意味を表す。)で示される2−ヒドロキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルを、水溶媒中または水と有機溶媒の混合溶媒中でアルカリ金属塩基と反応させ、一般式(2)
【0016】
【化3】

【0017】
(一般式(2)中、R、RおよびRは上記と同じ意味を表す。Mはアルカリ金属を表す。)で示される2−(アルカリ金属オキシメチレン)フルオロアシル酢酸エステルとし、次いで一般式(3)
【0018】
【化4】

【0019】
(一般式(3)中、Rは置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を表す。)で示されるヒドラジン類と反応させることを特徴とする、一般式(4)


【0020】
【化5】

【0021】
(式中、R、R、RおよびRは上記と同じ意味を表す。)で示される1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法に関するものである。
【0022】
ここで、上記一般式中のRは、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基であることが好ましい。
また、上記アルカリ金属塩基は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであることが好ましい。
さらに、上記アルカリ金属塩基の使用量は、反応基質である上記一般式(1)で示される2−ヒドロキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルに対して0.01当量以上であるが好ましい。
またさらに、上記有機溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒およびハロゲン系溶媒の群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
さらに、反応温度は、−30〜60℃であることが好ましい。
また、一般式(2)で示される2−(アルカリ金属オキシメチレン)フルオロアシル酢酸エステルは、一般式(5)
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、R、RおよびRは上記と同じ意味を表す。)で示される2−アルコキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルを水溶液中でアルカリ金属塩基と反応させることにより得られるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法によると、従来の問題点を克服し、簡便で安全な操作で、高収率かつ高選択的に目的物を製造することができる。本発明の製造方法により製造できる1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルは、医農薬あるいは機能性材料の中間体として特に有用であり、本発明は産業上極めて有用な製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の製造方法についてさらに詳細に説明する。
本発明の製造方法において原料として用いる2−ヒドロキシメチレンフルオロアシル酢酸エステル(一般式(1))の一部は公知の化合物(特開平11−119373号公報、特表2003−518110号公報)であり、通常の有機合成の手法により容易に製造することができる。例えば、また、2−アルコキシメチレンフルオロアシル酢酸エステル(一般式(5))のアルコキシ基をアルカリ水溶液中で加水分解しても製造することができるが、酢酸銅を用いた加水分解反応によっても製造することができる。(下記合成例1参照)
【0027】
ここで、本発明において、上記一般式(1)〜(5)中のR、R、RおよびRで表される置換基の例示を以下に示す。
【0028】
で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子あるいは臭素原子などを例示することができる。
【0029】
で表される塩素原子またはフッ素原子で置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、ペルフルオロドデシル基などを例示することができる。
中でも、Rはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基のような炭素数1〜4の直鎖状アルキル基が好ましい。
【0030】
一般式(1)中のRで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。
【0031】
また一般式(3)で示されるヒドラジン類のRで示される置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピルメチル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを例示することができる。さらに、これらのアルキル基は、ハロゲン原子などで一個以上置換されていてもよく、具体的には2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−クロロプロピル基などを挙げることができる。
また、Rで示される置換されていても良いフェニル基としては、ベンゼン環上がハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルキルオキシ基、低級ハロアルキル基、低級ハロアルキルオキシ基、低級アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、置換スルホニル基等で置換されていてもよいフェニル基を例示することができる。
【0032】
本製造方法における原料であるヒドラジン類は、一部は容易に入手可能であり、また既存の方法により容易に製造することができる。また、これらのヒドラジン類は、塩酸塩や硫酸塩のような塩、無水物、含水物あるいは水溶液のいずれでも使用することができる。
【0033】
本発明の製造方法においては、反応をアルカリ金属塩基と水の存在下に比較的低温下で実施することが収率及び選択性が良い点で好ましい。
アルカリ金属塩基としては、水酸化リチウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを使用することができる。中でも、目的物の収率や選択性が良く、安価である点で水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好ましい。
【0034】
アルカリ金属塩基は、その使用量や水溶液濃度に特に制限はなく、反応基質である上記2−アルコキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルに対して0.01当量以上、好ましくは0.05当量以上用いることにより、収率および選択性よく目的物を得ることができる。
【0035】
また、上記一般式(2)におけるMは、アルカリ金属を示し、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。
【0036】
また、水の使用量は、特に制限はないが、本製造法はアルカリ金属塩基水溶液中で反応を行なうため、反応条件によっては、原料や生成物のエステル部位の加水分解反応が起こる。そのため、水の添加量を制御して反応を行うことが好ましい。水の使用量としては、2−アルコキシメチレンフルオロアシル酢酸エステル(1)と水の重合割合が、1/0.25〜1/100、望ましくは1/1〜1/50であることが、収率および選択性が良い点で好ましい。
【0037】
また、本発明の製造方法においては、反応を有機溶媒の共存下に実施することもできる。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジメチルなどのエステル系溶媒、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒などを例示することができるが、好ましくは芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ハロゲン系溶媒またはエステル系溶媒である。有機溶媒の使用量に特に制限はない。
【0038】
また、本製造法はアルカリ金属塩基水溶液中で反応を行なうため、反応条件によっては、原料や生成物のエステル部位の加水分解反応が起こる。特に反応温度が高い場合はエステル加水分解が起こりやすいため、反応は、−30〜60℃、好ましくは−20〜50℃から適宜選ばれた反応温度で実施することにより、収率および選択性よく目的物を得ることができる。ただし、水溶媒中での反応では、水が凝固しない温度以上で反応を実施することが好ましい。
【0039】
また、本発明において、上記一般式(2)で示される2−(アルカリ金属オキシメチレン)フルオロアシル酢酸エステルが、一般式(5)
【0040】
【化7】

【0041】
(式中、R、RおよびRは上記と同じ意味を表す。)で示される2−アルコキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルを水溶液中でアルカリ金属塩基と反応させることにより得られるものであってもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1
下記反応式に従い、目的とする1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造した。
【0044】
【化8】

【0045】
2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(163mg,0.77mmol)を氷水上で冷却し、水(0.8mL)、1N水酸化ナトリウム水溶液(0.08mL,0.08mmol)を加えて撹拌した。これにメチルヒドラジン(67mg,1.45mmol)を加えた後、このままの温度で10分間攪拌した。反応液に水(30mL)を加え、クロロホルム(10mL×3)で抽出した。さらに、分離した水層に2N塩酸(1mL)を加えた後、クロロホルム(10mL×3)で抽出した。全ての有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤を瀘別し、瀘液から溶媒を減圧下留去して、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる黄色油状物(92mg,収率54%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は19:81であることが判った。
1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.35(t,J=7.1Hz,3H),3.97(s,3H),4.32(q,J=7.1Hz,2H),7.96(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−62.3.
1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.36(t,J=7.2Hz,3H),4.08(q,J=1.8Hz,3H),4.33(q,J=7.2Hz,2H),7.91(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−57.4.
【0046】
実施例2
下記反応式に従い、目的とする1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造した。
【0047】
【化9】

【0048】
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.98g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液にメチルヒドラジン(1.43g,31.0mmol)を滴下にて加えた後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加えた後、水層をクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(4.01g,収率87%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は33:67であることが判った。
【0049】
実施例3
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.98g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて20分間攪拌した。この溶液にメチルヒドラジン(1.43g,31.0mmol)を滴下にて加えた後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加えた後、水層をクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(3.93g,収率85%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は21:79であることが判った。
【0050】
実施例4
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.98g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて30分間攪拌した。この溶液にメチルヒドラジン(1.43g,31.0mmol)を滴下にて加えた後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加えた後、水層をクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(4.11g,収率89%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は21:79であることが判った。
【0051】
実施例5
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.95g,20.6mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したクロロホルム(25mL)を加え、さらにメチルヒドラジン(1.43g,31.0mmol)を滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(3.64g,収率80%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は23:77であることが判った。
【0052】
実施例6
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.98g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて20分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したクロロホルム(25mL)を加え、さらにメチルヒドラジン(1.43g,31.0mmol)を滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(4.21g,収率92%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は26:74であることが判った。
【0053】
実施例7
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.98g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したトルエン(25mL)を加え、さらにメチルヒドラジン(1.43g,31.0mmol)を滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(3.43g,収率75%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は21:79であることが判った。
【0054】
実施例8
下記反応式に従い、目的とする1−エチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造した。
【0055】
【化10】

【0056】
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.97g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液にエチルヒドラジン(1.87g,31.1mmol)を滴下にて加えた後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加えた後、水層をクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−エチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−エチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(4.42g,収率90%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は34:66であることが判った。
1−エチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.35(t,J=7.2Hz,3H),1.54(t,J=7.4Hz,3H),4.23(q,J=7.4Hz,2H),4.32(q,J=7.2Hz,2H),8.00(q,J=0.8Hz,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−62.3.
1−エチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.35(t,J=7.1Hz,3H),1.49(t,J=7.3Hz,3H),4.33(q,J=7.1Hz,2H),4.40(qq,J=7.3Hz,J=0.8Hz,2H),7.94(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−57.4.
【0057】
実施例9
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.96g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したクロロホルム(25mL)を加え、さらにエチルヒドラジン(1.87g,31.1mmol)を滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−エチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−エチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる淡褐色油状物(4.02g,収率82%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は20:80であることが判った。
【0058】
実施例10
下記反応式に従い、目的とする1−n−プロピル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造した。
【0059】
【化11】

【0060】
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.97g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したクロロホルム(25mL)を加え、さらにn−プロピルヒドラジン(2.30g,31.0mmol)を滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−n−プロピル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−n−プロピル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる淡褐色油状物(4.04g,収率78%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は36:64であることが判った。
1−n−プロピル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ0.95(t,J=7.3Hz,3H),1.35(t,J=7.1Hz,3H),1.93(sextet,J=7.3Hz,2H),4.13(t,J=7.3Hz,2H),4.32(q,J=7.1Hz,2H),7.97(q,J=0.8Hz,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−62.3.
1−n−プロピル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ0.94(t,J=7.5Hz,3H),1.35(t,J=7.1Hz,3H),1.90(sextet,J=7.5Hz,2H),4.30(tq,J=7.5Hz,J=0.5Hz,2H),4.32(q,J=7.1Hz,2H),7.93(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−57.0.
【0061】
実施例11
下記反応式に従い、目的とする1−イソプロピル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造した。
【0062】
【化12】

【0063】
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.97g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したクロロホルム(25mL)を加え、さらにイソプロピルヒドラジン(2.30g,31.0mmol)を滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−イソプロピル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−イソプロピル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(3.79g,収率73%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は16:84であることが判った。
1−イソプロピル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.35(t,J=7.1Hz,3H),1.55(d,J=6.8Hz,6H),4.32(q,J=7.1Hz,2H),4.56(septet,J=6.8Hz,1H)8.02(q,J=0.8Hz,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−62.3.
1−イソプロピル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.35(t,J=7.1Hz,3H),1.54(d,J=6.5Hz,6H),4.32(q,J=7.1Hz,2H),4.80(septet,J=6.5Hz,1H)7.94(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−56.8.
【0064】
実施例12
下記反応式に従い、目的とする1−イソブチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造した。
【0065】
【化13】

【0066】
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.97g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したクロロホルム(25mL)を加え、さらにイソブチルヒドラジン(2.71g,31.7mmol)を滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−イソブチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−イソブチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(4.30g,収率79%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は44:56であることが判った。
1−イソブチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ0.94(d,J=6.8Hz,6H),1.36(t,J=7.1Hz,3H),2.25(m,1H),3.95(d,J=7.3Hz,2H),4.32(q,J=7.1Hz,2H),7.95(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−62.2.
1−イソブチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ0.92(d,J=6.5Hz,6H),1.36(t,J=7.1Hz,3H),2.25(m,1H),4.14(dq,J=7.5Hz,J=0.8Hz,2H),4.33(q,J=7.1Hz,2H),7.94(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−56.6.
【0067】
実施例13
下記反応式に従い、目的とする1−tert−ブチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造した。
【0068】
【化14】

【0069】
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.97g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したクロロホルム(25mL)を加え、さらに、tert−ブチルヒドラジン塩酸塩(3.89g,31.2mmol)を8N水酸化ナトリウム水溶液(4.0mL,32.0mmol)およびクロロホルム(4.0mL)の混液に溶解したものを滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(20mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−tert−ブチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−tert−ブチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる褐色油状物(4.46g,収率82%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は8:92であることが判った。
1−tert−ブチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.35(t,J=7.1Hz,3H),1.69(s,9H),4.32(q,J=7.1Hz,2H),8.10(q,J=0.9Hz,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−62.2.
1−tert−ブチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.35(t,J=7.2Hz,3H),1.69(s,9H),4.32(q,J=7.2Hz,2H),7.79(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−52.8.
【0070】
実施例14
下記反応式に従い、目的とする1−フェニル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルを製造した。
【0071】
【化15】

【0072】
1N水酸化ナトリウム水溶液(23.0mL,23.0mmol)に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(4.97g,20.7mmol)を氷冷下に滴下し、同温にて10分間攪拌した。この溶液に、予め氷水上で冷却したクロロホルム(25mL)を加え、さらに、フェニルヒドラジン(3.40g,31.4mmol)を滴下した後、10分間攪拌した。反応液に2N塩酸(30mL)を加え、有機層を回収した後、水層をクロロホルム(20mL×2)で抽出した。有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去することにより、1−フェニル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−フェニル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる濃褐色油状物(5.48g,収率93%)を得た。19F−NMR分析より、前者と後者の生成比は15:85であることが判った。
1−フェニル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.39(t,J=7.1Hz,3H),4.37(q,J=7.1Hz,2H),7.42(m,1H),7.52(m,2H),7.72(m,2H)8.48(q,J=1.0Hz,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−62.5.
1−フェニル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチル;H−NMR(CDCl,TMS,ppm):δ1.39(t,J=7.1Hz,3H),4.38(q,J=7.1Hz,2H),7.43(m,2H),7.51(m,3H),8.12(s,1H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−55.6.
【0073】
合成例1(2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチルの製造方法)
下記方法に従い、反応を行った。
【0074】
【化16】

【0075】
水(100mL)に無水酢酸銅第二(7.00g,38.5mmol)を加え、懸濁溶液とした。これに2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(19.9g,82.9mmol)を室温にてゆっくり加えた後、3時間20分攪拌した。析出した固体を濾取し、約5℃に冷却したジエチルエーテル(100mL)で洗浄した。得られた緑色固体(5.84g)をジエチルエーテル(40mL)に懸濁し、2N硫酸(18mL)を室温にて滴下した。さらに20分攪拌した後、有機層を回収した。水層をジエチルエーテル(10mL×2)で抽出した後、有機層を合一して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下留去して緑色油状物(3.61g)を得た。これを減圧蒸留で精製し、40〜60℃/10mmHgの留分を集めることにより、2−ヒドロキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチルの無色油状物(266mg,収率1.5%)を得た。
H−NMR(CDCl,ppm):δ.1.34(t,J=7.1Hz,0.6H),1.39(t,J=7.1Hz,2.4H),4.31(q,J=7.1Hz,0.4H),4.40(q,J=7.1Hz,1.6H),8.37(s,0.8H),8.69(s,0.2H),14.1(br.s,0.8H),14.5(br.s,0.2H).19F−NMR(CDCl,ppm):δ−72.9,−73.9.
【0076】
参考例1(PCT/JP2006/303269の実施例1)
下記方法に従い、反応を行った。
【0077】
【化17】

【0078】
水酸化カリウム(28mg,0.5mmol)の水(5.0mL)溶液に35wt%メチルヒドラジン水溶液(0.197mL,1.5mmol)を加え撹拌した。この溶液に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(0.097mL,120mg,0.5mmol)を氷冷下に滴下し、この温度のまま1時間攪拌した。反応混合物に1N塩酸を加えて中和し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)を加え、クロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液を減圧乾固することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる白色固体(90mg,収率81%)を得た。ガスクロマトグラフィー(GC)分析より、前者と後者の生成比は93:7であることが判った。
上記方法では、本願発明の目的物である1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルではなく、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルの収量の方が多かった。
【0079】
参考例2(PCT/JP2006/303269の実施例1)
下記方法に従い、反応を行った。
水酸化ナトリウム(20mg,0.5mmol)の水(5.0mL)溶液に35wt%メチルヒドラジン水溶液(0.197mL,2.3mmol)を加え撹拌した。この溶液に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(0.097mL,120mg,0.5mmol)を氷冷下に滴下し、この温度のまま1時間攪拌した。反応混合物に1N塩酸を加えて中和し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)を加え、クロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液を減圧乾固することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる白色固体(96mg,収率86%)を得た。GC分析より、前者と後者の生成比は98:2であることが判った。
上記方法では、本願発明の目的物である1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルではなく、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルの収量の方が多かった。
【0080】
比較例1
水(5.0mL)に35wt%メチルヒドラジン水溶液(0.197mL,2.3mmol)を加え撹拌した。この溶液に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(0.097mL,120mg,0.5mmol)を氷冷下に滴下し、この温度のまま1時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)を加え、クロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液を減圧乾固することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる白色固体(101mg,収率91%)を得た。GC分析より、前者と後者の生成比は66:34であることが判った。
【0081】
比較例2(引用文献2に記載の方法)
エタノール(5.0mL)にメチルヒドラジン(69mg,1.5mmol)を加え撹拌した。この溶液に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(0.097mL,120mg,0.5mmol)を氷冷下に滴下し、この温度のまま1時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)を加え、クロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液を減圧乾固することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる白色固体(103mg,収率93%)を得た。GC分析より、前者と後者の生成比は76:24であることが判った。
【0082】
比較例3
酢酸エチル(5.0mL)と水(5.0mL)の混合溶液にメチルヒドラジン(69mg,1.5mmol)を加え撹拌した。この溶液に2−エトキシメチレン−4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル(0.097mL,120mg,0.5mmol)を室温で滴下し、1時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)を加え、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を瀘別した後、瀘液を減圧乾固することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる白色固体(103mg,収率93%)を得た。GC分析より、前者と後者の生成比は79:21であることが判った。
【0083】
比較例4
メチルヒドラジン(0.19mL,3.61mmol)の水(5.0mL)溶液に、2−エトキシメチレントリフルオロアセト酢酸エチル(1.0g,4.16mmol)のトルエン(5.0mL)溶液を氷冷下に10分間で滴下し、同温で10分間撹拌した。反応混合物に1N塩酸(10mL)を加え、トルエン(30mL×3)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下で留去することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる混合物をほぼ定量的に得た。GC分析より、前者と後者の生成比は81:19であることが判った。
【0084】
比較例5
メチルヒドラジン(0.19mL,3.61mmol)の水(5.0mL)溶液に、2−エトキシメチレントリフルオロアセト酢酸エチル(1.0g,4.16mmol)のトルエン(5.0mL)溶液を50℃で滴下し、同温で10分間撹拌した。反応混合物に1N塩酸(10mL)を加え、トルエン(30mL×3)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を瀘別した後、瀘液から溶媒を減圧下で留去することにより、1−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルと1−メチル−5−トリフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸エチルからなる混合物をほぼ定量的に得た。GC分析より、前者と後者の生成比は74:26であることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の製造方法により製造できる1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルは、医農薬や機能性材料の合成中間体として特に有用であり、本発明は産業上極めて有用な製造方法を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子またはハロゲン原子を表し、Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子、またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で示される2−ヒドロキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルを水溶媒中または水と有機溶媒の混合溶媒中でアルカリ金属塩基と反応させ、一般式(2)
【化2】

(式中、R、RおよびRは上記と同じ意味を表す。Mはアルカリ金属を表す。)で示される2−(アルカリ金属オキシメチレン)フルオロアシル酢酸エステルとし、次いで一般式(3)
【化3】

(式中、Rは置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を表す。)で示されるヒドラジン類と反応させることを特徴とする、一般式(4)
【化4】

(式中、R、R、RおよびRは上記と同じ意味を表す。)で示される1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
が炭素数1〜4の直鎖状アルキル基である請求項1に記載の1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属塩基が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである請求項1または2のいずれかに記載の1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項4】
アルカリ金属塩基の使用量が、反応基質である上記一般式(1)で示される2−ヒドロキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルに対して0.01当量以上である請求項1から3のいずれかに記載の1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項5】
有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒およびハロゲン系溶媒の群より選ばれた少なくとも1種である請求項1から4のいずれかに記載の1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
反応温度が、−30〜60℃である請求項1から5のいずれかに記載の1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
一般式(2)
【化5】

(式中、Rは水素原子またはハロゲン原子を表し、Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子またはフッ素原子で置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。Mはアルカリ金属を表す。)で示される2−(アルカリ金属オキシメチレン)フルオロアシル酢酸エステルが、一般式(5)
【化6】

(式中、R、RおよびRは上記と同じ意味を表す。)で示される2−アルコキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルを水溶液中でアルカリ金属塩基と反応させることにより得られる請求項1から6のいずれかに記載の1−置換−5−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。

【公開番号】特開2007−326784(P2007−326784A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156836(P2006−156836)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)