説明

1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノン及び(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの新しい製造方法

本発明は、化合物5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレートをCH3MgXと反応させる:化合物1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノン
【化1】


の製造方法を提供する。また、本発明は、化合物1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールに還元する化合物(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール
【化2】


の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノン、そして場合により(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの大規模生産の新しい方法に関する。これらの化合物は、薬学的に活性なより大きい化合物を製造するための中間体として有用である。
【背景技術】
【0002】
4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンは、mGluR5受容体のアンタゴニストである。従って、この化合物は、急性及び慢性の神経学的及び精神医学的障害、消化管障害並びに慢性及び急性疼痛障害のようなmGluR5が介在する障害の治療によく適していることが期待される。この化合物及び類似化合物は、特許文献1に記載されている。また、この特許出願1は、4−(5−{(1R)−1−[5−(3−クロロフェニル)イソオキサゾール−3−イル]エトキシ}−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピリジンの合成における中間体化合物、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを8工程の方法で製造する方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO,A1,2007/040982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法は、実験室規模に適した多工程の方法である。従って、より大きな規模で実施することができ、そして理想的には簡単で費用効果が優れており、かつ環境に有害な影響を及ぼさない改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式
【化1】

の化合物1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンの製造方法であって、溶媒に溶解した式
【化2】

の化合物エチル5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレートを、溶媒に溶解したCH3MgX(式中、Xは塩素又は臭素である)と反応させ、それによって前記溶媒に溶解した化合物1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンをもたらす上記方法を提供する。
【0006】
本明細書に記載されたように、「C1-12アルキル」という用語は、1〜12個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基、例えば、制限されるわけではないがメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル又はi−ヘキシル、t−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル及びn−ドデシルのことである。
【0007】
好ましくは、溶媒は、芳香族炭化水素、例えばトルエン及びo−、m−及びp−キシレン)並びにエーテル、例えば2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル又はそれらの混合物の群から選ばれる。
【0008】
試薬CH3MgXは、トルエン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン又はそれらの混合物のような溶媒中の溶液として反応物に入れてもよい。
【0009】
好ましくは、前記エチル5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレートと前記CH3MgXとの反応は、トリエチルアミンのような第三級アミンの存在下で実施される。また、他の第三級脂肪族アミン、直鎖状又は分枝状、例えばトリ−n−ブチルアミン又はN−アルキルピペリジンを、検討することもできる。
【0010】
6M HClのような酸性水溶液を加えることによって反応混合物及び余剰の前記CH3MgXをクエンチすることが好ましい。
【0011】
前記酸水性混合物を除去した後の有機反応混合物を水酸化ナトリウムのような水性塩基で処理することがさらに好ましい。
【0012】
また、好ましい実施態様において、本発明は、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの製造方法を提供する。
【0013】
第1の好ましい別法において、この化合物は、
i)1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを製造するための上記方法を実施し;
ii)溶媒中に溶解した(S)−2−メチル−CBS(Corey, Bakshi, Shibta)オキサボロリジン及びボラン又はボラン錯体をもたらし;
iii)工程ii)で得た溶液に、溶媒中に溶解した1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを加え;そして
iv)(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを反応物から回収する:
工程を含む方法によって製造することができる。
【0014】
本発明の一実施態様では、前記第2の溶媒中に溶解した1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを、4時間までの期間中に工程ii)で得た溶液に加える。
【0015】
好ましくは、工程ii)のボランは、ジメチルスルフィドボランである。別のボラン供給源、例えばボランテトラヒドロフラン、ボラントリエチルアミン及びボランN,N−ジエチルアニリン錯体を方法に用いてもよい。好ましくは、溶媒はテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン又はトルエンである。
【0016】
(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの形成が完了した後メタノールのようなアルコールを加えることによって過剰のボランをクエンチすることが好ましい。
【0017】
好ましくは、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールは、結晶化によって回収される。(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの結晶化に適した溶媒又は溶媒混合物は、単一の結晶化溶媒として又は水の存在といずれかの組み合わせで若しくは水の存在なしでいずれかの組み合わせで芳香族炭化水素、例えばトルエン及びキシレン、エーテル、例えば2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及びtert−ブチルメチルエーテル、アルカン、例えばn−ヘプタン及びシクロヘキサン、極性非プロトン溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドの群から選ぶことができる。
【0018】
第2の別法において、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールは、触媒作用による(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの形成が可能な立体特異的アルコール脱水素酵素をNADH及びNADPHの群から選ばれる適切な補因子と共に使用することを含む酵素的方法であって、
1)1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを製造するための上記の方法を実施し;
2)十分な量の前記アルコール脱水素酵素を前記補因子と共に含む適切な反応媒体に前記1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを加え;そして
3)前記適切な反応媒体から(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを回収する:
工程を含む前記方法によって製造することができる。
【0019】
反応に適した反応媒体は、2−プロパノールのようなアルコールを含む緩衝水溶液であってもよい。前記緩衝水溶液は、7.0〜8.5の範囲内のpHを有するトリエタノールアミン緩衝液であってもよい。適切なアルコール脱水素酵素の例としては、IEP Ox29及びIEP Ox58が含まれ、それらはIEP GmbH, DEによって製造され、そしてDSM Pharmaceutical Products, Geleen, NL.から入手可能である。好ましくは、前記補因子は、NADHである。(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールは、酢酸エチルで抽出し、有機相を回収し、そして溶媒を蒸発させることによって反応媒体から回収してもよい。別法として、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールは、メチル−tert−ブチルエーテルで抽出し、有機相を回収し、そしてメチル−tert−ブチルエーテル及びn−ヘプタンの混合物から生成物を結晶化させることによって反応媒体から回収してもよい。
【0020】
第3の別法において、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールは、
1)1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを製造するための上記方法を実施し;
2)カリウムtertブトキシドのような強塩基の存在下で溶媒及び触媒量の遷移金属ベースの触媒を含む適切な反応媒体に前記1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを加え、そして大気圧又は高められた圧力で水素ガスを適用し、
3)前記適切な反応媒体から(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを回収する:
工程を含む不斉水素化によって製造することができる。
【0021】
第4の別法において、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールは、
1)1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを製造するための上記方法を実施し;
2)強塩基、例えばカリウムtertブトキシド及び2−プロパノール;又はトリエチルアミン及びギ酸の溶液のいずれかの存在下で溶媒及び触媒量の遷移金属ベースの触媒、例えば(R,R)−TsDPEN)(p−シメン)Ru(II)Clを含む適切な反応媒体に前記1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを加え;そして
3)前記適切な反応媒体から(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを回収する:
工程を含む不斉移動水素化によって製造することができる。
【0022】
第5の別法において、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールは、
1)1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを製造するための上記方法を実施し;
2)溶媒及び還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウムを含む反応混合物に前記1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを加え、このようにしてラセミ混合物として1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを製造し;
3)酵素、例えばリパーゼ、ラセミ化剤及びアシル供与体、例えば酢酸ビニルを含む反応混合物に前記(rac)1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを加え、このようにして酢酸(R)−1−5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル−エチルエステルを製造し;
4)溶媒及び塩基、例えば水酸化リチウムを含む適切な反応媒体に前記(R)−1−5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イルエチルエステルを加え;そして
5)前記適切な反応媒体から(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを回収する:
工程を含む動的速度論的分割によって製造することができる。
【0023】
発明の詳述
すでに上に記載したように、本発明の一実施態様は、1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンの製造方法に関する。
【0024】
さらに、本発明の実施態様は、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの製造方法に関する。
【0025】
本発明の新しい製造方法は、以下のようにして記載することができる:
【化3】

【0026】
製造方法の工程a〜cにおいて、式IVの化合物を製造する。
【0027】
工程aにおいて、化合物Iを溶媒及び塩基、特にアルコキシド塩基の存在下で式VII
【化4】

(式中、Rは直鎖状又は分枝状C1−C12アルキルである)の化合物と反応させて(クエンチ及び酸性処理後)式II(式中、Rは直鎖状又は分枝状C1-12アルキルである)の化合物を得;
続いて式II(式中、Rは上記定義された通りである)の化合物を、溶媒中で遊離塩基又は塩のいずれかのヒドロキシルアミン、特に塩酸ヒドロキシルアミンと反応させて式IIIの化合物を得、それを酸の存在下、特に塩酸中に反応混合物を放置して式IVの化合物を得、それを単離してもよいし;又は
式IV(式中、Rは上記定義された通りである)の化合物を、溶媒中でメチルマグネシウムブロミド及びトリエチルアミンの混合物と反応させて(クエンチ及び処理後)式Vの化合物を得、それを単離するか、又は続いて
式Vの化合物を溶媒中でボラン及び(S)−2−Me−CBSオキサボロリジンの混合物と反応させて(クエンチ及び処理後)式VIの化合物を得、それを単離してもよい。
【0028】
別法として、式VIの化合物を製造するために、式Vの化合物を適切な反応媒体中で適切な補因子と共にアルコール脱水素酵素に曝露してもよい。
【0029】
別法として、式Vの化合物を強塩基及び水素ガスの存在下で遷移金属ベースの触媒に曝露して式VIの化合物を製造してもよい。
【0030】
別法として、式Vの化合物を
(i)強塩基、例えばカリウムtertブトキシド及び2−プロパノール;又は
(ii)トリエチルアミン及びギ酸の溶液;
の存在下で遷移金属ベースの触媒に曝露して式VIの化合物を得ることができる。
【0031】
別法として、式Vの化合物は、還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウムを適切な反応媒体に加え、続いてアシル供与体、例えば酢酸ビニルの存在下でリパーゼによる酵素的分割によってVIのラセミ混合物に還元することができる。生成したエステルを、塩基性試薬、例えば水酸化リチウムを用いて切断して式VIの化合物を得てもよい。
【0032】
反応工程a)b)及びc)は、溶媒中で実施してもよい。適切な溶媒は、アルコール、例えばエタノール、メタノール及び2−プロパノール、そしてエーテル、例えばテトラヒドロフラン及び2−メチルテトラヒドロフランである。
【0033】
方法の工程a〜cで用いる溶媒の総量は、出発物質(化合物I)の質量当たり約2〜100(v/w)体積部の範囲、特に出発物質の質量当たり6〜30(v/w)体積部の範囲で変化してもよい。
【0034】
適切な塩基は、アルコキシド塩基、例えばナトリウムエトキシド又はナトリウムメトキシドであってもよい。化合物II〜IVのR基に関して適切な塩基を使用すべきであることは当業者に理解される。
【0035】
工程a〜cの温度は、約0℃〜100℃の範囲、特に50〜80℃の範囲であってもよい。工程d)の温度は、約−10℃〜−50℃の範囲、特に−5℃〜−20℃の範囲でなければならない。
【0036】
工程e)の温度は約−10℃〜−50℃の範囲でなければならない。
【0037】
ここで、本発明を作用実施例に関して記載する。これらの実施例は、説明のために記載したのであって本発明の範囲を制限しようとするものではない。
【0038】
実験研究
下の実施例では、Micromass Q-TOFマイクロ機器を用いて質量スペクトルを記録し、そしてBruker 400 mHz機器を用いてNMRスペクトルを記録した。
【0039】
実施例1:エチル−4−(3−クロロフェニル)−2,4−ジオキソブタノエートの製造
【化5】

ナトリウムエトキシド(97.9g,1.44mol)を0℃でエタノール(1l)中の3−クロロ−アセトフェノン(178.5g,1.15mol)及びシュウ酸ジエチル(195ml,1.44mol)の溶液に少しずつ加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで70℃で2時間加熱した。冷却した後、イソプロピルアルコール中のHCl1.44molで反応をクエンチした。生成した混合物をその後の実施例に用いた。
【0040】
実施例2:4−(3−クロロ−フェニル)−2−[(E)−ニトロソ]−4−オキソ酪酸エチルエステルを経たエチル5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレートの製造
【化6】

エタノール中のエチル−4−(3−クロロフェニル)−2,4ジオキソブタノエート(1)の溶液にヒドロキシルアミン(水中50%)又は塩酸ヒドロキシルアミンのいずれかを加える。前者の試薬を用いた場合、反応は、中間体オキシムエステル(2)で停止する。酸(例えば塩酸)をさらに加えて閉環を行ってエチル5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレート(3)を形成する。塩酸ヒドロキシルアミンを用いる場合、さらに酸を添加することなく閉環する。
【0041】
方法a,ヒドロキシルアミン(水中50%)の使用
前の反応段階からのエタノール(960ml)中に溶解したエチル−4−(3−クロロフェニル)−2,4−ジオキソブタノエート(1)196g(0.76mol)を用いた。この溶液に、ヒドロキシルアミン、水中50%(46.6ml,0.76mol)を60℃で約1時間かけて加えた。添加が完了した後、反応物を撹拌下で15分間保持した。次いで、転換が完了した。塩酸(プロパノール中5M,167.4ml)を0.5時間かけて加え、その後、混合物を撹拌下で1時間保持した。次いで、温度を22℃に調節し、そして水(384ml)を1時間かけて反応混合物に加えて生成物を結晶化させた。次いで、温度を5℃に調節し、そして1時間保持した。最後に、生成物を濾過により単離し、(i)2:1エタノール/水2×360ml、そして(ii)水360mlで洗浄し、そして減圧下、40℃で乾燥した。単離収率79%に相当するエチル5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレート154.1g(アッセイ98.6%)を単離した。
中間体(2)の陰性モードにおけるMS ESI−TOF分析により[M−H]-=268m/zを得た。
【0042】
方法b,塩酸ヒドロキシルアミンの使用
前の反応段階からのエタノール(960ml)中に溶解したエチル−4−(3−クロロフェニル)−2,4−ジオキソブタノエート(1)196g(0.76mol)を用いた。この溶液に、5℃で塩酸ヒドロキシルアミン(55.5g,0.8mol)をひとかたまりで加えた。次いで、反応温度を60℃に調節し、そして1時間保持した。転換が完了した。温度を22℃に調節し、そして水(384ml)を1時間かけて反応混合物に加えて生成物を結晶化させた。次いで、温度を5℃に調節し、そして1時間保持した。最後に、生成物を濾過により単離し、(i)2:1エタノール/水2×360ml、そして(ii)水360mlで洗浄し、そして減圧下、40℃で乾燥した。単離収率84%に相当するエチル5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレート162.3g(アッセイ98.5%)を単離した。
【0043】
実施例3:1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンの製造
【化7】

エチル−5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレート80g(313.4mmol)を乾燥2l反応器中で2−メチル−テトラヒドロフラン(Me−THF)360ml中に懸濁した。温度を−5℃に調節した。反応器中に淡色のスラリーを得た。
メチルマグネシウムブロミド(トルエン−THF中1.4M溶液)447.8ml(626.9mmol)を乾燥滴下ロート中でトリエチルアミン264.8ml(1880.6mmol)と混合した。次いで、グリニャール溶液を少なくとも4時間かけて反応器中の混合物に加えた。滴下ロートをMe−THF40mlですすぎ、そして洗浄溶液を反応器に移した。
6M HCl(水性)459.7mlを注意深く加えて反応混合物をクエンチした。投入は発熱性であり、そしてメタンガスの発生が見られた。クエンチが完了した後、温度を50℃に調節し、そして水相を分離して捨てた。有機相を水160mlで洗浄した。45%NaOH(水性)5.6gを有機相に加えて、クエンチの際に形成されたアルドール縮合した副生物を所望のケトンに転換した。混合物を、50℃で激しい撹拌下に30分間保持した。0.5M塩酸137.9mlを50℃で加えてpH<3にした。水相を分離した。最後に、有機相を水160mlで洗浄した。溶液のアッセイ測定に基づいて収率95%を達成した。
1H NMR (CDCl3) 7.82 (m, 1H), 7.70 (m, 1H), 7.47 (m, 2H), 6.93 (s, 1H), 2.72 (s, 3H);陽性モードの高分解能MS Q−TOF分析により[M+H]+=222m/zを得た;分子式:C119ClNO2が−0.3ppmの正確さで確認された。
【0044】
実施例4:(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール(II)の製造
【化8】

(S)−2−メチル−CBS−オキサボロリジン(トルエン中1M溶液)37.0mL(37.04mmol)及びボランジメチルスルフィド22.4mL(222.25mmol)を混合し、そして2−メチルテトラヒドロフラン82mLで希釈した。生成した溶液を45℃に加熱した。(前の反応段階からの)2−メチルテトラヒドロフラン410mL及びトルエン164mL中溶解した1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノン(I)82.1g(370.4mmol)の溶液を約4時間かけてCBS−ボラン溶液に加えた。ケトン溶液を加えた後、反応は完全に転換した。次いで、内部温度を0℃に設定し、そしてメタノール103mLを加えて過剰ボランをクエンチした。次いで、クエンチした反応混合物を(i)2M HCl 287mL及び(ii)水287mLで抽出した。有機相をさらに蒸発乾固し、そして残留物をトルエン245mL中に溶解した。温度を20℃に調節し、その後、II(種晶)0.2gを加えることによって結晶化を開始した。結晶化混合物を30分間保持し、その後、貧溶媒としてn−ヘプタン492mLを6時間かけて加えた。次いで、結晶化混合物は、6時間かけて20℃から0℃まで冷却した。次いで、結晶を濾過し、そして(i)2/1n−ヘプタン−トルエン165mL及び(ii)n−ヘプタン165mLで洗浄した。最後に、結晶を減圧下、40℃で乾燥した。単離収率80%に相当する生成物66.4gを単離した。エナンチオマー過剰率の測定は>98%であった。
【0045】
実施例5:(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール(II)の酵素的な製造
1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノン(I)12gを50mMトリエタノールアミン緩衝液18ml、pH8.0及び2−プロパノール36mlに加えた。1M NaOHを用いてpHを8.0調節した後、NADH6mgを加えた。反応混合物を35〜40℃に保持し、そしてアルコール脱水素酵素製剤IEP Ox29(IEP GmbH, DEによって製造され、DSM Pharmaceutical Products, Geleen, NLから入手可能である)5.2mlを加えて還元を開始した。定期的にサンプルを採取し、そしてキラルHPLCにより45μmフィルターで濾過した後、分析した。反応18時間後、転換率は99.7%に達した。
酵素反応混合物30gに水25mlを加えた。その結果、生成物の一部が沈殿した。次いで、生成物を抽出するため酢酸エチル50mlを加えた。層の分離は良好であった。この後、酢酸エチル25mlを用いてさらに2回抽出した。合わせた有機層をデカライト(decalite)プレコートフィルターで濾過した。最後に、回転蒸発器において減圧下、45℃で溶媒を除去した。これによりオフホワイトの固形物6gを得た。
【0046】
実施例6:(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを得る1−[5−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンの触媒作用によるエナンチオ選択的移動水素化
不活性雰囲気下で1−[5−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノン8.3g(37.5mmol)を23.8mg(37.4mmol)(R,R)−TsDPEN)(p−シメン)Ru(II)Clと混合した。13.8g(299.6mmol,ギ酸11.3mL)及びトリエチルアミン18.9g(187.2mmol;26.1mL)を含む溶液を加えた。得られたスラリーを撹拌下で一夜保持した。次いで、反応物をサンプリングして出発物質が、エナンチオ選択率95.4%で(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールに実質的に完全に転換されたことがわかった。次いで、反応混合物をトルエン35mLで希釈し、そして水235mLで抽出した。有機層を減圧下で蒸発してさらに濃縮した。残留物をトルエン及びn−ヘプタンの混合物から結晶化によって精製した。最後に、結晶を濾過により単離し、n−ヘプタンで洗浄し、そして減圧下、40℃で乾燥した。
スクリーニング実験を下の表に従って実施した。アルコールのS−異性体についての選択性は、表に示されている。触媒の他の異性体の使用により所望の化合物、(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノール(R−異性体)を得た。
【0047】
スクリーニングプロトコール:
48個の2mLバイアルにそれぞれ入れた:
Et3N 100μL。次いで、48の組み合わせを生じる下の表に従って金属前駆体及びN−モノスルホニル化ジアミンを保存溶液として加えた(DMF中の金属前駆体0.008M溶液40μL、及びiPrOH/トルエン5:3中の0.013MのN−モノスルホニル化ジアミン55μL)。
【0048】
混合物を室温で30分間撹拌して活性な触媒を生成した。次いで、水素化物供与体(Et3N/HCOOH 5:8モル比)200μL、続いてTHF中のケトン(40mg/mL)の溶液500μLをすべてのバイアルに加えた。
【0049】
次いで、混合物を25℃で2時間撹拌した。次いで、混合物をサンプリングして(20μL)、そしてiPrOH 500μL+ヘプタン500μLで希釈した。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノン:
【化1】

の製造方法であって、溶媒に溶解した式
【化2】

の化合物エチル5−(3−クロロフェニル)−イソオキサゾール−3−カルボキシレートを、溶媒に溶解したCH3MgX(式中、Xは塩素又は臭素である)と反応させ、それによって前記溶媒に溶解した化合物1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンをもたらす、上記方法。
【請求項2】
溶媒がトルエン又はo−、m−若しくはp−キシレンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒が2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル又はそれらの混合物から選ばれるエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶媒がトルエン、o−、m−又はp−キシレン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルの1つ又はそれ以上の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
反応を第三級アミンの存在下で行なう、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第三級アミンがトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン又はN−アルキルピペリジンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(i)酸水溶液を加え、続いて(ii)塩基水溶液を加えることによって反応混合物及び余剰のCH3MgXをクエンチする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸水溶液がHClである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
HClが6M HClである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
塩基水溶液が水酸化ナトリウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを2−メチルテトラヒドロフラン及びn−ヘプテンの混合物から結晶化によって単離する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】

【化3】

の(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの製造方法であって、
i)1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを製造する工程;
ii)第1の溶媒中に溶解した(S)−2−メチル−CBSオキサボロリジン及びボラン又はボラン錯体をもたらす工程;
iii)工程ii)で得た溶液に溶媒に溶解した1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノンを加える工程;そして
iv)(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールを回収する工程:
を含む、上記方法。
【請求項13】
(S)−2−メチル−CBSオキサボロリジン及びボラン錯体を工程iiの第1の溶媒に溶解し、そして該第1の溶媒は、テトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランから選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ボラン錯体はボランジメチルスルフィド、ボランテトラヒドロフラン、ボラントリエチルアミン及びボランN,N−ジエチルアニリンのいずれか1つから選ばれる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールの形成が完了した後、アルコールを加えることによって過剰のボランをクエンチする、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アルコールがメタノールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(R)−1−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−エタノールが単一溶媒又は溶媒の混合物からの結晶化によって回収される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
単一溶媒がトルエン又はキシレンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
溶媒がトルエン及びn−ヘプタンの混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
溶媒は、第2の溶媒と組み合わせの2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル又はtert−ブチルメチルエーテルである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
第2の溶媒がアルカンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2の溶媒がn−ヘプタンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
溶媒が第2の溶媒と組み合わせの無極性の非プロトン性溶媒である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
無極性の非プロトン性溶媒がジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第2の溶媒が水である、請求項23又は24に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512867(P2012−512867A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542061(P2011−542061)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051405
【国際公開番号】WO2010/071558
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】