説明

1つ以上の界面改変剤でコーティングされた、抗癲癇剤または免疫抑制剤を含有する固体粒子

本発明は、薬学的用途のための抗癲癇剤(特に、カルバマゼピン)の微粒子懸濁液処方物に関する。本発明はまた、薬学的用途のための免疫抑制剤(特に、シクロスポリン)の微粒子懸濁液処方物に関する。上記粒子は、1つ以上の界面改変剤でコーティングされる。上記組成物は、1つ以上の界面改変剤でコーティングされた上記薬剤の固体粒子を含有する。上記界面改変剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および界面活性生物学的改変剤から選択され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
該当せず。
【0002】
(政府後援による研究開発)
該当せず。
【0003】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、薬学的用途のための抗癲癇剤(特に、カルバマゼピン)の小粒子懸濁液の処方物に関する。これらの処方物の利点としては、副作用(例えば、嗜眠状態、疲労、眩暈感、眼振または悪心)を最小限に抑える可能性を有する、非常に高い薬物負荷が挙げられる。本発明はまた、薬学的用途のための免疫抑制剤(特に、シクロスポリン)の小粒子懸濁液の処方物に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景技術)
水溶液中でほとんど溶けないかまたは不溶性の、治療効果または診断効果のために処方された絶えず上昇している数の有機化合物が存在する。このような薬物は、上記に詳細に記載された投与経路によってそれらを送達するための課題を提供する。水中で不溶性の化合物は、ミクロン以下の粒子の安定な懸濁液として処方される場合に、かなりの利益を有し得る。粒子サイズの正確な制御は、これらの処方物の安全かつ有効な使用のために不可欠である。粒子は、塞栓を引き起こすことなく毛細管を安全に通過するために、直径7μm未満でなければならない(Allenら,1987;DavisおよびTaube,1978;Schroederら,1978;Yokelら,1981)。この問題に対する1つの解決策は、不溶性薬物候補の小粒子の生成および微粒子懸濁液またはナノ粒子懸濁液の作製である。この方法において、以前は水性ベースの系において処方され得なかった薬物が、静脈内投与に適したものにされ得る。静脈内投与のための適性としては、小さい粒子サイズ(7μm未満)、(例えば、有毒処方物成分または残りの溶媒からの)低い毒性および投与後の上記薬物粒子のバイオアベイラビリティが挙げられる。
【0005】
水不溶性薬物の小粒子の調製はまた、経口投与、肺投与、局所投与、眼投与、鼻投与、頬投与、直腸投与、膣投与、経皮投与または他の投与経路のために適切であり得る。粒子の小さいサイズは、上記薬物の溶解速度を改善し、そして従って、そのバイオアベイラビリティを改善し、そしてその毒性プロファイルを改善するかもしれない。これらの経路により投与される場合、上記薬物の投与経路、処方物、溶解性およびバイオアベイラビリティに依存して、5μm〜100μmの範囲の粒子サイズを有することが所望され得る。例えば、経口投与のためには、約7μm未満の粒子サイズを有することが所望される。肺投与のためには、上記粒子は、好ましくは、約10μm未満のサイズである。
【0006】
本発明は、薬学的用途のための、抗癲癇剤の小粒子懸濁液の処方物に関する。これらの処方物の利点としては、副作用(例えば、嗜眠状態、疲労、眩暈感、眼振または悪心)を最小限に抑える可能性を有する、非常に高い薬物負荷が挙げられる。特に、本発明は、図3に示される一般構造を有する三環系抗癲癇剤の処方物を含む。
【0007】
本発明はまた、薬学的用途のための、シクロスポリンの小粒子懸濁液の処方物に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、抗癲癇剤または免疫抑制剤の組成物を提供する。上記組成物は、1つ以上の界面改変剤でコーティングされた上記薬剤の固体粒子を含有する。上記界面改変剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および界面活性生物学的改変剤から選択され得る。上記粒子は、約10μm〜約100μmの平均有効サイズを有する。好ましい実施形態において、上記抗癲癇剤は、三環系抗癲癇剤である。より好ましい実施形態において、上記三環系抗癲癇剤は、カルバマゼピンである。別の好ましい実施形態において、上記免疫抑制剤は、シクロスポリンである。
【0009】
本発明のこれらの局面および他の局面ならびに特性は、以下の図面および添付の明細書を参照して議論される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、多くの異なる形態における実施形態を許容する。本開示は、本発明の原理の例示として見なされるべきであるという理解とともに、本発明の好ましい実施形態が開示され、そして示される実施形態に本発明の広範な局面を限定することは意図されない。本発明は、有機化合物の小粒子を形成するための組成物および方法を提供する。本発明のプロセスにおける使用のための有機化合物は、その溶解性が、1つの溶媒から別の溶媒で減少する任意の有機化学全体である。この有機化合物は、薬学的に活性な化合物であり、治療剤、診断剤、化粧品、栄養補充剤および農薬から選択され得る。特に、本発明は、抗癲癇剤および抗痴呆剤および免疫抑制剤の小粒子を形成するための組成物および方法を提供する。
【0011】
本明細書中で使用される場合、「抗癲癇剤」とは、痙攣または癲癇を予防するか、軽減するかまたは停止する薬剤をいう。癲癇は、脳からの異常な電気放出である。癲癇は、脳の小さい病巣領域または脳全体(全身性)に影響を与え得る。癲癇によって影響を受ける領域は、その通常の機能能力を失い、そして脳の機能しなくなった部分が制御する運動部位または感覚部位に影響を与え得る。例えば、上腕を制御している脳の領域が癲癇を有する場合、その上腕は、反復的に振られ得る。癲癇が、脳全体に影響を与える場合、末端全体が、制御不可能に振られ得る。いくつかの癲癇は、気の狂いおよび非応答性をもたらし得る。理論的には、脳の任意の機能(運動、嗅覚、視覚または情動)は、独立して、癲癇により影響を受け得る。
【0012】
本明細書中で使用される場合、「抗痴呆剤(antidimentia agent)」とは、痴呆の発達過程を予防、軽減または停止する薬剤をいう。痴呆は、複数の認知領域の機能の損失により特徴付けられる臨床的状態である。診断のために最も一般的に使用される基準は、DSM−IV(Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders,American Psychiatric Association)である。診断上の特徴としては、記憶障害ならびに以下:失語症、行動不能症、認知不能症および実行機能における障害のうちの少なくとも1つが挙げられる。認知障害は、社会機能および職業機能における欠陥を引き起こすのに充分、重篤なはずである。重要なことに、上記衰退は、以前のより高いレベルの機能からの衰退を示さなければならない。約70個〜80個の異なる型の痴呆が存在する。痴呆を引き起こす主要な障害のうちのいくつかは、変性疾患(例えば、アルツハイマー病、ピック病)、血管性痴呆(すなわち、多梗塞性痴呆)、低酸素性痴呆(例えば、心停止)、外傷性痴呆(例えば、拳闘家痴呆[ボクサー痴呆])、感染性痴呆(例えば、クロイツフェルト−ヤーコブ病)、毒性痴呆(例えば、アルコール性痴呆)である。
【0013】
本明細書中で使用される場合、「免疫抑制剤」とは、抗原/アレルゲンの存在に対して身体が免疫応答を発揮する能力を抑制する薬剤をいう。例えば、疾患または移植器官の拒絶と闘う能力。これらの薬剤のための別の用語は、抗拒絶剤である。それらは、移植後の器官の拒絶のみならず、免疫学的病因の多くの他の疾患(例えば、クローン病、慢性関節リウマチ炎、狼瘡、多発性硬化症および乾癬)を処置するために使用される。
【0014】
本発明の組成物は、上記の薬剤を含有し、そして必要に応じて、1つ以上のさらなる治療剤を含有する。
【0015】
上記治療剤は、種々の公知の薬剤(例えば、限定されることなく、鎮痛剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗生物質、抗凝固剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、鎮痙剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗ムスカリン剤、抗菌剤、抗腫瘍剤、抗原虫剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、収れん剤、β−アドレナリン遮断剤、造影用(contrast)媒体、コルチコステロイド、鎮咳剤、診断剤、診断画像化剤、利尿剤、ドパミン作用剤、止血剤、免疫学的薬剤、液体調節剤、筋弛緩剤、副交感神経作用剤、副甲状腺カルシトニン、プロスタグランジン、放射薬剤、性ホルモン、抗アレルギー剤、刺激剤、交感神経作用剤、甲状腺薬剤、血管拡張剤、ワクチンおよびキサンチン)から選択され得る。抗腫瘍剤または抗癌剤としては、パクリタキセルおよび誘導体化合物、ならびにアルカロイド、代謝拮抗剤、アルキル化剤および抗生物質からなる群より選択される他の抗腫瘍剤が挙げられる。
【0016】
診断剤としては、X線造影剤および造影用媒体が挙げられる。X線画像化剤の例としては、ジアトラゾン酸(diatrazoic acid)のエチルエステル(EEDA)としてもまた公知であるWIN−8883(エチル3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート)、WIN 67722(すなわち、6−エトキシ−6−オキシヘキシル−3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾエート);エチル−2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)ブチレート(WIN 16318);エチルジアトリゾキシアセテート(WIN 12901);エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)プロピオネート(WIN 16923);N−エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシアセトアミド(WIN 65312);イソプロピル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセトアミド(WIN 12855);ジエチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシマロネート(WIN 67721);エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)フェニルアセテート(WIN 67585);プロパン二酸、[[3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,5−トリヨードベンゾイル]オキシ]ビス(1−メチル)エステル(WIN 68165);および安息香酸、3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−4−(エチル−3−エトキシ−2−ブテノエート)エステル(WIN 68209)が挙げられる。好ましい造影剤としては、生理学的条件下で比較的迅速に分解し、従って、任意の粒子関連炎症反応を最小限に抑えると予測される造影剤が挙げられる。分解は、酵素的加水分解、生理学的pHでのカルボン酸の可溶化または他のメカニズムから生じ得る。従って、加水分解に不安定なヨウ化された種(例えば、WIN 67721、WIN 12901、WIN 68165およびWIN68209など)に加えて、可溶性の乏しいヨウ化カルボン酸(例えば、ヨージパミド、ジアトリゾン酸およびメトリゾン酸)が、好ましくあり得る。
【0017】
これらのクラスの治療薬および診断薬の説明、ならびに各クラス内の種の列挙は、Martindale、The Extra Pharmacopoeia、第29版、The Pharmaceutical Press、London、1989に見出され得、これは、参考として本明細書中に援用され、そして本明細書の一部をなす。上記治療薬および診断薬は、市販され入手可能であり、そして/または当該技術分野で公知の技法によって調製され得る。
【0018】
化粧剤は、化粧活性を有し得る任意の活性成分である。これらの活性成分の例は、とりわけ、皮膚軟化剤、湿潤剤、フリーラジカル阻害剤、抗炎症剤、ビタミン、脱色剤、抗アクネ剤、抗脂漏剤、角質溶解薬、痩身剤、皮膚着色剤および日焼け止め剤、特にリノール酸、レチノール、レチノイン酸、アルコルビン酸アルキルエステル、多価不飽和脂肪酸、ニコチン酸エステル、ニコチン酸トコフェロール、コメ、大豆またはシアバターノキの非鹸化物、セラミド、グリコール酸のようなヒドロキシ酸、セレン誘導体、抗酸化剤、β−カロチン、γ−オリザノールおよびステアリルグリセレートであり得る。上記化粧品は、市販され入手可能であり、そして/または当該技術分野で公知の技法によって調製され得る。
【0019】
本発明の実施における使用のために企図される栄養補助物の例は、制限されないで、タンパク質、炭水化物、水溶性ビタミン(例えば、ビタミンC、ビタミンB複合体)、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、Kなど)、およびハーブエキスを含む。これらの栄養補助物は、市販され入手可能であり、そして/または当該技術分野で公知の技法によって調製され得る。
【0020】
用語「殺虫剤」は、除草剤、殺昆虫剤、ダニ駆除剤、抗線虫剤、抗外部寄生虫剤および抗真菌剤を含むことが理解される。本発明における殺虫剤が属し得る化合物クラスの例は、尿素、トリアジン、トリアゾール、カルバメート、リン酸エステル、ジニトロアニリン、モルホリン、アシルアラニン、ピレスロイド、ベンジル酸エステル、ジフェニルエーテルおよび多環ハロゲン化炭化水素を含む。これらクラスの各々における殺虫剤の特定の例は、殺虫剤マニュアル、第9版、British Crop Protection Councilに列挙されている。これら殺虫剤、市販され入手可能であり、そして/または当該技術分野で公知の技法によって調製され得る。
【0021】
好ましくは、上記有機化合物または上記薬学的に活性な化合物は、水溶性に乏しい。「水溶性に乏しい」によって意味されるのは、約10mg/mLより少ない、そして好ましくは1mg/mLより少ない水中の化合物の溶解度である。これらの水溶性に乏しい薬剤は、水性懸濁調製物のために最も適している。なぜなら、これら試薬を水性媒体中に処方することの代替物は限られているからである。
【0022】
本発明はまた、水溶性の薬学的に活性な化合物とともに、これら化合物を固体キャリアマトリックス(例えば、ポリ乳酸−ポリグリコール酸コポリマー、アルブミン、スターチ)中に包括することによるか、またはこれら化合物を、上記薬学的化合物に対して不透過性である周辺ベシクル中にカプセル化することにより実施され得る。このカプセル化ベシクルは、ポリアクリレートのようなポリマーコーティングであり得る。さらに、これら水溶性の薬剤から調製した小粒子は、化学的安定性を改良するため、およびこれら粒子からの上記試薬の放出を制御するために改変され得る。水溶性の薬剤の例は、制限されないで、単純有機化合物、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および炭水化物を含む。
【0023】
本発明の粒子は、動的光散乱法、例えば、光相関分光法、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(MALLS)、光掩蔽法(例えば、コールター法)、レオロジー、または顕微鏡法(光または電子)によって測定されたとき、一般に、約100μmより小さい平均有効粒子サイズを有している。しかし、これら粒子は、約20μm〜約10nm、約10μm〜約10nm、約2μm〜約10nm、約1μm〜約10nm、約400nm〜約50nm、約200nm〜約50nmまたは任意の範囲またはその中の範囲の組み合わせのような、広範な範囲のサイズで調製され得る。好ましい平均有効粒子サイズは、上記化合物の投与の意図される経路、処方、溶解度、毒性および生体利用可能性(バイオアベイラビリティ)のような因子に依存する。
【0024】
非経口投与に適切であるために、上記粒子は、好ましくは、約7μmより小さい、より好ましくは約2μmより小さい、そして最も好ましくは約1μm〜約50nm、または任意の範囲もしくはその中の範囲の組み合わせの平均有効粒子サイズを有する。非経口投与は、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、腹腔内、眼内、関節内、硬膜内、筋肉内、皮内または皮下注入を含む。
【0025】
経口投薬形態のための粒子サイズは、2μmを超えても良く、そして代表的には、約7μmより少ない。これら粒子は、これら粒子が十分な生体利用可能性、および経口投薬形態のその他の特徴を有することを条件に、7μmを超え、約100μmまでであり得る。経口投薬形態は、経口投与により薬物を送達するために、錠剤、カプセル、ソフトゲルカプセルおよびハードゲルカプセル、またはその他の送達ビヒクルを含む。
【0026】
本発明は、さらに、肺投与のために適切な形態にある上記有機化合物の粒子を提供するために適切であり得る。肺投薬のための粒子サイズは、2μmを超え、そして代表的には約10μmより少なくあり得る。この懸濁物中の粒子は、エアロゾル化され得、そして肺投与のための噴霧器によって投与される。あるいは、上記粒子は、上記懸濁物から液相を除去した後、乾燥粉末吸入器よって乾燥粉末として投与され得るか、またはこの乾燥粉末は、計測用量吸入器による投与のための非水性噴霧剤中に再懸濁され得る。適切な噴霧剤の例は、HFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)およびHFC−227a(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)のようなヒドロフルオロカーボン(HFC)である。クロロフルオロカーボン(CFC)とは異なり、HFCは、オゾン枯渇能力がほとんど示さないか、またはまったく示さない。
【0027】
鼻、局所、眼、鼻、頬、直腸、膣、経皮などのその他の経路の送達のための投薬形態がまた、本発明から作製される粒子から処方され得る。
【0028】
上記粒子を調製するための好ましい微小沈殿プロセスは、ほぼ3つのカテゴリーに分割され得る。これらプロセスのカテゴリーの各々は、工程(1)水混和性の第1の溶媒中に有機化合物を溶解し、第1の溶液を生成する工程、(2)この第1の溶液を水である第2の溶媒と混合し、上記有機化合物を沈殿し、予備懸濁物を生成する工程、および(3)この予備懸濁物に、高せん断混合または熱の形態にあるエネルギーを印加し、上記で規定された所望のサイズ範囲を有する有機化合物の安定形態を提供する工程を共有する。
【0029】
この3つのカテゴリーのプロセスは、上記エネルギー印加工程の前、および上記エネルギー印加工程の後に実施される、X線回折研究、示差走査熱量測定(DSC)研究またはその他の適切な研究により決定されるとき、上記有機化合物の物理的性質を基に決定される。第1のプロセスカテゴリーでは、上記エネルギー印加工程の前に、前記予備懸濁物中の有機化合物は、無定形形態、半結晶形態または過冷却液体形態をとり、そして平均有効粒子サイズを有する。上記エネルギー印加工程の後、上記有機化合物は、前記予備懸濁物の平均有効粒子サイズと本質的に同じ平均有効粒子サイズを有する結晶形態にある。
【0030】
第2のプロセスカテゴリーでは、上記エネルギー印加工程の前に、上記有機化合物は、結晶形態にあり、そして平均有効粒子サイズを有する。上記エネルギー印加工程の後、上記有機化合物は、上記エネルギー印加工程の前と本質的に同じ平均有効粒子サイズを有する結晶形態にあるが、このエネルギー印加工程の後の結晶は、凝集する可能性がより少ない。
【0031】
この有機化合物が凝集するより低い傾向は、レーザー光動的散乱および光学顕微鏡によって観察される。
【0032】
第3のプロセスカテゴリーでは、上記エネルギー印加工程の前に、上記有機化合物は、砕け易い結晶形態にあり、そして平均有効粒子サイズを有する。用語「砕け易い」によって意味されるのは、これら粒子が脆弱であり、そしてより小さな粒子により容易に壊れることである。上記エネルギー印加工程の後、上記有機化合物は、上記予備懸濁物の結晶より小さいサイズ平均有効粒子サイズを有する結晶形態にある。砕け易い結晶形態に上記有機化合物を配置するために必要な工程をとることにより、次のエネルギー印加工程は、より砕け易くない結晶形態にある有機化合物と比較するとき、より迅速かつ効率的に実施され得る。
【0033】
上記エネルギー印加工程は、前記予備懸濁物が、キャビテーション、せん断または衝撃力にさらされる任意の様式で実施され得る。本発明の1つの好ましい形態では、上記エネルギー印加工程は、アニーリング工程である。アニーリングは、本発明では、熱動力学的に不安定である物質を、熱緩和が続く、エネルギー(直接的な熱または機械的ストレス)の単回印加または繰り返し印加によって、より安定な形態に転換するプロセスとして規定される。このエネルギーの低下は、より少なく整列された格子構造からより整列された格子構造への固体形態の変換によって達成され得る。あるいは、この安定化は、固体−液体界面で界面活性剤分子を再整列することにより生じ得る。
【0034】
これら3つのプロセスカテゴリーは、以下に別個に論議される。しかし、界面活性剤または界面活性剤の組み合わせ、用いられる界面活性剤の量、反応の温度、溶液の混合速度、沈殿速度などの選択のようなプロセス条件は、任意の薬物が、次に論議されるこれらカテゴリーの任意の1つの下で処理されることを可能にするように選択され得ることが理解されるべきである。
【0035】
第1のプロセスカテゴリー、ならびに第2および第3のプロセスカテゴリーは、図1および2に図式的に示される、2つのサブカテゴリーである方法AおよびBにさらに分割され得る。
【0036】
本発明による第1の溶媒は、目的の有機化合物が比較的可溶性であり、そしてこれが第2の溶媒と混和可能である溶媒または溶媒の混合物である。このような溶媒の例は、制限されないで、ポリビニルピロリドン、N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドンとも呼ばれる)、2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、乳酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、n−プロパノール、グリセロール、ブチレングリコール(ブタンジオール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、(グリセリルカプリレートのような)モノアシル化モノグリセリドおよびジアシル化モノグリセリド、ジメチルイソソルビド、アセトン、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150、ポリエチレングリコールエステル(PEG−4ジラウレート、PEG−20ジラウレート、PEG−6イソステアレート、PEG−8パルミトステアレート、PEG−150パルミトステアレートのような例)、ポリエチレングリコールソルビタン(PEG−20ソルビタンイソステアレートなど)、ポリエチレングリコールモノアルキルエステル(PEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテルのような例)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンアルギネート、PPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、プロピレングリコールラウレート)を含む。好ましい第1の溶媒は、N−メチル−2−ピロリジノンである。別の好ましい第1の溶媒は、乳酸である。
【0037】
(方法A)
方法Aでは(図1を参照のこと)、上記有機化合物(「薬物」)は、最初、上記第1の溶媒中に溶解され、第1の溶液を生成する。この有機化合物は、この第1の溶媒中の有機化合物の溶解度に依存して約0.1%(w/v)〜約50%(w/v)添加され得る。約30℃〜約100℃の濃縮物の加熱が、この第1の溶媒中でのこの化合物の全体の溶解を確実にするために必要であり得る。
【0038】
第2の水性溶媒は、それに添加されるアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または生物学的表面活性分子のような1つ以上の随意の表面改変剤とともに提供される。適切なアニオン性界面活性剤は、制限されないで、アルキルスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート、ラウリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシレンサルフェート、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルスルホスクシネートナトリウム、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファジン酸およびそれらの塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸およびその他の胆汁酸(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸)およびそれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなど)を含む。
【0039】
両性イオン界面活性剤は、電気的には中性であるが、同一分子内に局所的に正荷電および負荷電を有する。適切な両性イオン界面活性剤は、制限されないで、両性イオンホスホリピドを含む。適切なホスホリピドは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジアシル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(ジミリストイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびジオレオイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DOPE))を含む。アニオン性ホスホリピドおよび両イオン性ホスホリピドを含むホスホリピドの混合物が、本発明で採用され得る。このような混合物は、制限されないで、リソホスホリピド、卵もしくは大豆ホスホリピド、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。上記ホスホリピドは、アニオン性、両イオン性またはホスホリピドの混合物にかかわらず、塩添加もしくは脱塩、水素化もしくは部分的水素化または半合成もしくは合成であり得る。上記ホスホリピドはまた、水溶性または親水性ポリマーと結合され得、本発明では、マクロファージへの送達を特異的に標的にし得る。しかし、結合ホスホリピドは、その他の適用では、その他の細胞または組織を標的にするために用いられ得る。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、これはまた、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)としても知られる。このPEGの分子量は、例えば、200から50,000まで変動し得る。市販され入手可能であるいくつかの共通して用いられるPEGは、PEG350、PEG550、PEG750、PEG1000、PEG2000、PEG3000、およびPEG5000を含む。1つ以上のPEGに結合したPEGは、本明細書中では、「ペグ化(pegylated)ホスホリピド」と称される。このホスホリピドまたはこのPEG結合ホスホリピドはまた、制限されないで、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖タンパク質、抗体、または薬学的に活性な薬剤を含むリガンドに共有結合し得る官能基を取り込み得る。これらの官能基は、例えば、アミド結合形成、ジスルフィドまたはチオエーテル形成、またはビオチン/ストレプトアビジン結合によりリガンドと結合し得る。リガンド−結合性官能基の例は、制限されないで、ヘキサノイルアミン、ドデカニルアミン、1,12−ドデカンジカルボキシレート、チオエタノール、4−(p−マレイミドフェニル)ブチルアミド(MPB)、4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキシアミド(MCC)、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(PDP)、スクシネート、グルタレート、ドデカノエート、およびビオチンを含む。
【0040】
適切なカチオン性界面活性剤は、制限されずに、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウムのような四級アンモニウム化合物、塩酸アシルカルニチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、ジオレイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、ジミリストイルトリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール(DC−Chol)、1,2−ジアシルグリセロ−3−(O−アルキル)ホスホコリン、O−アルキルホスファチジルコリン、アルキルピリジニウムハライド、または、例えば、n−オクチルアミンおよびオレイルアミンのような長鎖アルキルアミンを含む。
【0041】
適切な非イオン性界面活性剤は、グリセリルエステル、ポリオキシエレチン脂肪アルコールエーテル(MacrogolおよびBrij)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Polysorbate)、ポリオキシエレチン脂肪酸エステル(Myrij)、ソルビタンエステル(Span)、グリセロールモノステアレレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、ポラキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶セルロース、スターチおよびヒドロキシエチルスターチ(HES)のようなスターチ誘導体を含む多糖類、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンを含む。本発明の好ましい形態では、この非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマーであり、そして好ましくは、プロピレングリコールとエチレングリコールとのブロックコポリマーである。このようなポリマーは、商標名POLOXAMER(またしばしばPLURONIC(登録商標)と称される)の下で販売され、そしてSpectrum ChemicalおよびRugerを含む、いくつかの供給元によって販売されている。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの中には、短いアルキル鎖を有するものが含まれる。このような界面活性剤の1つの例は、BASF Aktiengesellschaftによって製造されるSOLUTOL(登録商標)HS15、ポリエチレン−660−ヒドロキシステアレートである。
【0042】
表面活性生物学的分子は、アルブミン、カゼイン、ヒルジンまたはその他の適切なタンパク質を含む。多糖類生物製剤もまた含まれ、そして制限されないで、スターチ、ヘパリン、およびキトサンからなる。その他の適切な界面活性剤は、ロイシン、アラニン、バリン、イソロイシン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、フェニルアラニンのような任意のアミノ酸、または、例えば、アミドまたはエステル誘導体のようなこれらアミノ酸の任意の誘導体、およびこれらアミノ酸から形成されるポリペプチドを含む。
【0043】
上記第2の溶媒にpH調節剤を添加することもまた所望され得る。適切なpH調節剤は、制限されずに、塩酸、硫酸、リン酸、(例えば、酢酸および乳酸のような)モノカルボン酸、(例えば、コハク酸のような)ジカルボン酸、(例えば、クエン酸のような)トリカルボン酸、THAM(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、メグルミン(N−メチルグルコサミン)、水酸化ナトリウム、およびグリシン、アルギニン、リジン、アラニン、ヒスチジンおよびロイシンのようなアミノ酸を含む。上記第2の溶媒は、約3から約11までの範囲内のpHを有するべきである。上記水性媒体は、浸透圧調節剤をさらに含み得、これには、制限されないで、グリセリン、デキストロースのような単糖類、スクロースのような二糖類、ラフィノースのような三糖類、およびマンニトール、キシリトールおよびソルビトールのような糖アルコールが含まれる。
【0044】
経口投薬形態には、1つ以上の以下の賦形剤が利用され得る:ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、アラビアゴム、コレステロール、トラガント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、例えば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、市販され入手可能なTween類(登録商標)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリビニルピロリドン(PVP)。これら賦形剤の大部分は、American Phamaceutical Associationと、The Phamaceutical Society of Great Britainとの連帯により公開された、Handbook of Pharmaceutical Excipients、Pharmaceutical Press、1986に詳細に記載されている。上記表面改変剤は、市販され入手可能であり、そして/または当該技術分野で公知の技法により調製され得る。2つ以上の表面改変剤が組み合わせて用いられ得る。
【0045】
本発明の好ましい形態では、有機化合物の小粒子を調製するための方法は、第1の溶媒を第2の溶媒に添加する工程を含む。添加速度は、バッチサイズ、およびこの有機化合物の沈殿動力学に依存する。代表的には、小スケール実験室プロセス(1リットルの調製)には、添加速度は、約0.05cc/分から約10cc/分である。この添加の間、上記溶液は、一定の撹拌下にあるべきである。光学顕微鏡を用いて、無定型粒子、半結晶固体、または過冷却液体が形成され、予備懸濁物を生成すことが観察された。上記方法は、上記予備懸濁物をアニーリング工程に供する工程をさらに含み、上記無定形粒子、過冷却液体または半結晶固体を結晶のより安定な固体状態に転換する。得られる粒子は、動的光散乱法(例えば、光相関分光法、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(MALLS)、光掩蔽法(例えば、コールター法)、レオロジー、または顕微鏡法(光または電子))によって測定されたとき、上記で提示した範囲内の平均有効粒子サイズを有する。
【0046】
上記エネルギー印加工程は、音波処理、ホモゲナイゼーション、向流流れホモゲナイゼーション、微小流動、または衝撃、せん断またはキャビテーション力を提供するその他の方法によりエネルギーを印加する工程を含む。上記サンプルは、このステージの間に冷却または加熱され得る。本発明の1つの好ましい形態では、上記アニーリング工程は、Avestin Inc.によって、製品名EmulsiFlex−C160の下で販売されているホモゲナイザーのようなピストンギャップホモゲナイザーによって行われる。本
発明の別の好ましい形態では、上記アニーリング工程は、Sonics and Materials,Inc.によって製造されるVibra−Cell Ultrasonic Processor(600W)のような超音波処理機を用いる超音波処理により達成され得る。本発明のなお別の実施形態では、上記アニーリング工程は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部となる米国特許第5、720,551号に記載されるような乳化装置の使用によって達成され得る。
【0047】
アニーリングの速度に依存して、処理されるサンプルの温度を約−30℃〜30℃の範囲内に調節することが所望され得る。あるいは、処理される固体における所望の相変化を行うために、上記予備懸濁物を、このアニーリング工程の間、約30℃から約100℃の範囲内の温度に加熱することもまた必要であり得る。
【0048】
(方法B)
方法Bは、以下の点で方法Aと異なっている。第1の相違点は、第1の溶媒に界面活性剤または界面活性剤の組み合わせが添加されることである。この界面活性剤は、上記で提示されたアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および表面活性生物学的改変剤から選択され得る。
【0049】
(方法Aおよび方法Bと米国特許第5,780,062号の比較例)
米国特許第5,780,062号は、有機化合物の小粒子を調製するためのプロセスであって、最初に、この化合物を適切な水混和性の第1の溶媒中に溶解することによるプロセスを開示している。第2の溶媒は、ポリマーおよび両親媒性物質を水性溶媒中に溶解することにより調製される。上記第1の溶媒は、次いで、上記第2の溶媒に添加され、上記有機化合物とポリマー−両親媒性物質複合体からなる沈殿物を形成する。この’062特許は、本発明の方法AおよびBにおけるエネルギー印加工程を利用することを開示していない。安定性の欠如は、代表的には、迅速凝集および粒子成長により証明される。いくつかの例では、無定形粒子は、大きな結晶として再結晶化する。上記予備懸濁物に上記で記載される様式でエネルギーを印加することは、代表的には、減少した速度の粒子凝集および成長、ならびに製品貯蔵の際の再結晶化の不在を与える。
【0050】
方法AおよびBは、上記’062特許のプロセスとは、沈殿の前にポリマー−両親媒性物質複合体を形成する工程の不在によってさらに区別され得る。方法Aでは、このような複合体は形成され得ない。なぜなら、希釈物(水性)相に添加されるポリマーがないからである。方法Bでは、両親媒性物質としてもまた作用し得る界面活性剤、またはポリマーが、第1の溶媒中で上記有機化合物ととともに溶解される。これは、沈殿の前に任意の両親媒性物質−ポリマー複合体の形成を排除する。上記’062特許では、小粒子の成功した沈殿は、沈殿の前の両親媒性物質−ポリマー複合体の形成に依存する。この’062特許は、上記両親媒性物質−ポリマー複合体が、水性の第2の溶液中で凝集物を形成することを開示する。この’062特許は、疎水性有機化合物が、この両親媒性物質−ポリマー複合体と相互作用し、それによってこれら凝集物の溶解度を減少し、かつ沈殿を引き起こすことを説明する。本発明では、上記第1の溶媒(方法B)中の界面活性剤またはポリマーを含めることが、第2の溶媒への引き続く添加の際に、上記’062特許によって概説されるプロセスによって与えられるより均一で微細な粒子の形成に至る。
【0051】
この目的のために、2つの処方物が調製かつ分析された。これら処方物の各々は、2つの溶液、濃縮物および水性希釈剤を有し、これらは、一緒に混合され、そして次に音波処理される。各処方物における濃縮物は、有機化合物(イトラコナゾール)、水混和性溶媒(N−メチル−2−ピロリジノンまたはNMP)およびおそらくポリマー(ポロキサマー188)を有する。上記水性希釈剤は水、トリス緩衝およびおそらくはポリマー(ポロキサマー188)および/または界面活性剤(デオキシコール酸ナトリウム)を有する。この有機粒子の平均粒子直径は、音波処理前および音波処理後に測定される。
【0052】
第1の処方物Aは、濃縮物としてイトラコナゾールおよびNMPを有する。上記水性希釈剤は、水、ポロキサマー188、トリス緩衝液およびデオキシコール酸ナトリウムを含む。従って、この水性希釈剤は、ポリマー(ポロキサマー188)、および両親媒性物質(デオキシコール酸ナトリウム)を含み、これは、ポリマー/両親媒性物質複合体(そしてそれ故、上記’062特許の開示に従う)を形成し得る。(しかし、ここで再び、上記’062特許はエネルギー印加工程を開示していない。)
第2の処方物Bは、濃縮物としてイトラコナゾール、NMPおよびポロキサマー188を有する。水性希釈剤は、水、トリス緩衝液およびデオキシコール酸ナトリウムを有する。この処方物は、本発明に従って作製される。この水性希釈剤は、ポリマー(ポロキサマー)および両親媒性物質(デオキシコール酸ナトリウム)の組み合わせを含まないので、ポリマー/両親媒性物質複合体は、混合工程の前に形成され得ない。
【0053】
表1は、3連の懸濁液調製物のレーザー回折により測定された平均粒子直径を示す。最初のサイズ決定を行い、その後試料を、1分間超音波処理した。サイズ決定を、その後繰り返した。方法Aの超音波処理時に大きいサイズが減少したことは、粒子の凝集を暗示する。
【0054】
【表1】

本発明に記載されたプロセスの適用から得られた薬物懸濁液は、注射用水(Water for Injection)が、処方に使用され、そして溶液の滅菌のための適切な手段が適用される場合、注入可能な溶液として直接投与され得る。滅菌は、無菌下で行われるその後の工程で、準懸濁液(pre−suspension)を形成するために混合する前に、薬物濃縮物(薬物、溶媒、および任意の界面活性剤)および希釈媒体(水、および任意の緩衝液ならびに界面活性剤)を別々び滅菌することにより達成され得る。滅菌はまた、蒸気滅菌もしくは加熱滅菌、ガンマ線照射などの当該分野において周知の方法により達成され得る。滅菌の別の方法は、高圧滅菌である。他の滅菌方法は、特に、99%以上の粒子が200nm未満である粒子の場合、最初に、3.0ミクロンフィルターに通す予備濾過に引き続き、0.45ミクロン粒子フィルターによる濾過、これに引き続く蒸気滅菌、加熱滅菌または2枚重ねあわした0.2ミクロンフィルターによる滅菌濾過を包含する。
【0055】
必要に応じて、溶媒フリーの懸濁液が、沈殿の後に溶媒を除去することにより産生され得る。これは、当該分野で周知の、遠心分離、透析、ダイアフィルトレーション、力場分画、高圧濾過または他の当該分野で周知の他の分離技術により達成され得る。N−メチル−2−ピロリジノンの完全な除去は、代表的には1〜3回の逐次的遠心分離の実行により行われた;各遠心分離(18,000rpm 30分間)の後、上清がデカントされ、廃棄された。有機溶媒なしの新たな容量の懸濁ビヒクルが、残っている固体に加えられ、そしてその混合物が均質化により分散された。他の高剪断混合技術が、この再構成工程において適用され得ることは、当業者により認識されている。あるいは、溶媒フリーの粒子は、経口、経肺、経鼻、局所、筋肉内などのような種々の投与経路で望まれている種々の投薬形態に処方され得る。
【0056】
さらに界面活性剤のような、あらゆる望ましくない賦形剤は、上の段落で記載されている分離法の使用により、より望ましい賦形剤により置換され得る。上記溶媒および第1賦形剤は、遠心分離または濾過後、その上清と一緒に廃棄され得る。溶媒も第1賦形剤も含まない新たな容量の懸濁ビヒクルが、その後加えられ得る。あるいは、新しい界面活性剤が、加えられ得る。例えば、薬物、N−メチル−2−ピロリジノン(溶媒)、ポロクサマー188(第1賦形剤)、デオキシコール酸ナトリウム塩、グリセリンおよび水からなる懸濁液が、遠心分離および上清の除去後、リン脂質(新しい界面活性剤)、グリセリンおよび水により置換され得る。
【0057】
(I.第1プロセスカテゴリー)
第1プロセスカテゴリーの方法は、一般的に、水混和性の第1溶媒中に有機化合物を溶解する工程、これに続く有機化合物が無定形、半晶質形、もしくは過冷却液体形(X線回折研究、DSC、光学顕微鏡または他の分析技術の使用により決定される)になっており、上で示された有効な粒子サイズ範囲の一つに入る平均有効粒子サイズを有する準懸濁液を形成するように、この溶液を水性溶媒とを混合する工程を包含する。上記混合工程の後に、エネルギー付加工程、および本発明の好ましい形態では、徐冷工程が続く。
【0058】
(II.第2プロセスカテゴリー)
第2プロセスカテゴリーの方法は、本質的に第1プロセスカテゴリーの工程と同じ工程を含むが、以下の観点が異なる。準懸濁液のX線回折、DSC、または他の適切な分析技術により、上記有機化合物が、結晶形であり、かつ平均有効粒子サイズを有するが示される。エネルギー付加工程後の上記有機化合物は、本質的にエネルギー付加工程前と同じ平均有効粒子サイズを有するが、準懸濁液の粒子の傾向と比較すると、より大きな粒子への凝集傾向が小さい。理論に拘束されないで、上記粒子の安定性の差は、固相−液相界面において上記界面活性剤分子の再整列に起因し得ると考えられる。
【0059】
(III.第3プロセスカテゴリー)
第3カテゴリーの方法は、第1プロセスカテゴリーおよび第2プロセスカテゴリーの最初の二つの工程を改変して、準懸濁液中の有機化合物が、平均有効粒子サイズを有する、破砕しやすい形(細長い針状および薄い板状)であることを確実にする。破砕しやすい粒子は、適切な溶媒、界面活性剤または界面活性剤の組合せ、各溶液の温度、混合速度、沈殿速度などの選択により形成され得る。破砕性はまた、第1溶液と上記水性溶媒とを混合する工程の間に格子欠陥(例えば、へき界面(cleavage plane))を導入することにより、高められ得る。これは、例えば沈殿工程で達成されるような迅速な結晶化により起こる。エネルギー付加工程において、これらの破砕しやすい結晶は、動力学的に安定化され、準懸濁液の平均有効粒子サイズより、より小さい平均有効粒子サイズを有する結晶に転換される。動力学的に安定したとは、粒子が、動力学的に安定化されていない粒子と比較して、低い凝集傾向を意味する。そのような例では、エネルギー付加工程は、破砕しやすい粒子を崩壊させる。準懸濁液の粒子が、破砕しやすい状態であることを確実にすることにより、上記有機化合物は、それが破砕しやすい形態になるように上記工程が採られなかった場合の有機化合物を処理する工程と比較して、より容易に、より速く望ましいサイズ範囲内の粒子に調製され得る。
【0060】
上述のマイクロプレシピテーション法に加えて、1μm未満のサイズの粒子またはナノ粒子を調製するための当該分野における他の公知の沈殿方法が、本発明とともに使用され得る。以下は、他の沈殿方法の実施例の記載である。この実施例は、説明する目的のためのものであり、本発明の範囲を限定するよう意図されるものではない。
【0061】
(エマルジョン沈殿法)
一つの適切なエマルジョン沈殿技術が、同時に係属中で同一人に譲渡された米国特許出願第09/964,273号に開示されており、これは本明細書に参考として援用され、本明細書の一部をなす。このアプローチにおいて、上記プロセスは、以下の工程を包含する:(1)有機相と水相を有する多相系を提供する工程であって、その有機相は、薬学的に有効な化合物を有する、工程;そして(2)その系を超音波処理し、有機相の一部を蒸発させ、水相において、その化合物の沈殿を引き起こす工程であって、約2μm未満の平均有効粒子サイズを有する、工程。多相系を提供する工程は、以下の工程を包含する:(1)水混和性溶媒と薬学的に有効な化合物とを混合し、有機溶液を規定する工程、(2)1以上の界面活性化合物で水性ベースの溶液を調製する工程、そして(3)上記有機溶液を、多相系を形成させるために、水性溶液と混合する工程を含む。上記有機相と水相と混合する工程は、ピストンギャップホモジナイザー(piston gap homogenizer)、コロイドミル(colloidal mill)、高速攪拌装置、押出し装置、手動攪拌装置または手動振盪器、ミクロ流動化器(microfluidizer)または高剪断状態を提供する他の装置もしくは技術の使用を含み得る。粗エマルジョンは、水中で直径、約1μm未満のサイズの油滴を有する。その粗エマルジョンは、超音波処理されてミクロエマルジョンを規定し、最終的には1μm未満のサイズの粒子懸濁液を規定する。
【0062】
1μm未満のサイズの粒子を調製する別のアプローチは、同時に係属中で同一人に譲渡された米国特許出願第10/183,035号に開示されており、これは本明細書に参考として援用され、明細書の一部をなす。そのプロセスは、以下の工程を包含する:(1)有機相と水相を有する多相系の粗分散液を提供する工程であって、その有機相は、その中に薬学的化合物を有する、工程;(2)その粗分散液にエネルギーを提供し、細密な分散液を形成する工程;(3)その細密な分散液を凍結する工程;および(4)その細密な分散液を凍結乾燥し、1μm未満のサイズの薬学的化合物の粒子を得る工程。上記多相系を提供する工程は以下の工程を包含する:(1)水混和性溶媒と薬学的に有効な化合物を混合して、有機溶媒を規定する工程;(2)1以上の界面活性化合物で水性ベースの溶液を調製する工程;および(3)有機溶液を水性溶液とを混合して、多相系を形成する工程。上記有機相と水相とを混合する工程は、ピストンギャップホモジナイザー、コロイドミル、高速攪拌装置、押出し装置、手動攪拌装置または手動振盪器、ミクロ流動化器、または高剪断状態を提供する他の装置または技術の使用を含む。
【0063】
(溶媒 対 溶媒沈殿(Solvent Anti−Solvent Precipitation)
適切な溶媒対溶媒沈殿技術は、本明細書に参考として援用され、その一部をなす米国特許第5,118,528号および同第5,100,591号に開示されている。上記プロセスは、以下の工程を包含する:(1)溶媒または1以上の界面活性剤を加え得る溶媒の混合物中に生物学的活性物質の液相を調製する工程;(2)非溶媒の第2液相または非溶媒の混合物を調製する工程であって、その非溶媒は、上記物質の溶媒または溶媒の混合物と混和性がある、工程;(3)攪拌しながら(1)および(2)の溶液を一緒に添加する工程;ならびに(4)望ましくない溶媒を除去して、ナノ粒子のコロイド分散液を産生する工程。上記’528特許は、エネルギーの供給なしで500nm未満の物質の粒子を、産生することを開示している。
【0064】
(相反転沈殿)
1つの適切な相反転沈殿は、本明細書に参考として援用され、その一部をなす米国特許第6,235,224号、同第6,143,211号および米国特許出願第2001/0042932号に開示されている。相反転とは、連続相溶媒系に溶解しているポリマーが、そのポリマーが連続相である固体高分子ネットワークへと反転する物理的現象を記述するのに使用される用語である。相反転を誘導する方法は、上記連続相に非溶媒を添加することによる。上記ポリマーは、単一相から不安定な2相混合物(ポリマーリッチな画分および貧ポリマー画分)へと遷移を受ける。ポリマーリッチ相の非溶媒のミセル小滴は、核形成部位としてはたらき、ポリマーで被覆される。上記’224特許は、特定の条件下でポリマー溶液の相反転が、ナノ粒子を含む不連続なミクロ粒子の自発的な形成を引き起こし得ることを開示している。上記’224特許は、ポリマーを溶媒に溶解または分散する工程を開示する。薬剤はまた、その溶媒に溶解あるいは分散される。このプロセスにおいて効果的な結晶の種形成工程のためには、その薬剤が、その溶媒に溶解することが望ましい。上記ポリマー、上記薬剤、上記溶媒は、一緒になり連続相を有する混合物を形成し、そこでは、その溶媒が連続相である。上記混合物を、その後、少なくとも10倍過剰の混和性非溶媒に導入し、10nm〜10μmの間の平均粒子サイズを有する上記薬剤のマイクロカプセル化されたミクロ粒子の自発的な形成を引き起こす。上記粒子サイズは、溶媒:非溶媒の容量比、ポリマー濃度、ポリマー溶媒溶液の粘度、上記ポリマーの分子量および溶媒、非溶媒の組み合わせの特性に影響される。本プロセスにより、例えばエマルジョンを形成することによって、溶媒の小滴を作製する工程がなくなる。本プロセスにより、攪拌および/または剪断力もまた回避される。
【0065】
(pHシフト沈殿)
pHシフト沈殿技術は、代表的には、薬物が溶け得るpHを有する溶液中にその薬物を溶解する工程、続いて、その薬物がもはや溶けない点にまでpHを変化させる工程を包含する。このpHは、酸性または塩基性であり得、特定の薬学的化合物に依存する。次いで、この溶液を中和して、薬学的に活性な化合物のミクロン未満のサイズの粒子の前懸濁物(presuspension)を形成させる。一つの適切なpHシフト沈殿プロセスは、米国特許第5,665,331号に開示されており、これは、本明細書中で参考として援用され、そして本明細書の一部となされる。このプロセスは、この薬学的因子を結晶成長改変因子(CGM)と共にアルカリ溶液中に溶解する工程、および次いで、適切な表面調節表面活性因子の存在下でこの溶液を酸で中和し、薬学的因子の細かい粒子分散物を形成させる工程を包含する。この沈殿工程に、この分散のダイアフィルトレーションの洗浄の工程、次いでこの分散の濃度を所望のレベルに調節する工程が後続し得る。このプロセスは、報告によれば、光子相関分光学(photon correlation spectroscopy)により測定されると400nmより小さなZ−平均直径の微小結晶粒をもたらす。
【0066】
pHシフト沈殿法の他の例が、米国特許第5,716,642号;同5,662,883号;同5,560,932号;および同4,608,278号に開示されており、これらは、本明細書中で参考として援用され、本明細書の一部となっている。
【0067】
(注入沈殿法)
適切な注入沈殿技術は、米国特許第4,997,454号および同4,826,689号において開示され、これらは、本明細書中に参考として援用され、そして本明細書の一部となされる。まず、適切な固体化合物を、適切な有機溶媒中に溶解して、溶媒混合物を形成させる。次いで、この有機溶媒と混和性の沈殿非溶媒を、約−10℃と約100℃との間の温度で、かつ50mlの容積当たり、1分当たり約0.01ml〜1分当たり約1000mlの注入速度でその溶媒混合物中に注入して実質的に均一な10μmより小さな平均直径を有する化合物の沈殿化非凝集固体粒子の懸濁液を生成する。沈殿非溶媒を用いて注入された溶液の攪拌(agitation)(例えば、乱流(stirring)による)が好ましい。この非溶媒は、凝集に対して粒子を安定化する界面活性剤を含有し得る。次いで、この粒子は、この溶媒から分離される。固体化合物および所望の粒子サイズに依存して、温度のパラメーター、溶媒に対する非溶媒の比率、注入速度、乱流速度、および体積が本発明に従って変えられ得る。粒子サイズは、非溶媒体積:溶媒体積の比率および注入温度に比例し、そして注入速度および攪拌速度に反比例する。沈殿化非溶媒は、水溶性であっても非水溶性であってもよく、その化合物の相対的な溶解度および所望の懸濁ビヒクルに依存する。
【0068】
(温度シフト沈殿)
温度シフト沈殿技術は、熱溶解技術としてもまた公知であり、Dombに対する米国特許第5,188,837号に開示されており、これは、本明細書中に参考として援用され、そして本明細書の一部となされる。本発明の実施形態では、リポスフィア(liposphere)は、以下:(1)送達されるべき物質の液体を形成するための溶解ビヒクル中に物質(例えば、おける送達されるべき薬物)を融解または溶解させる工程;(2)この物質またはビヒクルの融点よりも高い温度で、リン脂質を融解した物質またはビヒクルに水性媒体と共に加える工程;(3)均一な細かい調製物が得られるまで、そのビヒクルの融点より高い温度でこの懸濁液を混合する工程;ならびに(4)この調製物を室温以下に迅速に冷却する工程により調製される。
【0069】
(溶媒エバポレーション沈殿)
溶媒エバポレーション沈殿技術が、米国特許第4,973,465号(これは、本明細書中に参考として援用されて、本明細書の一部を構成する)において開示される。この’465号特許は、微結晶を調製するための方法を開示する。その方法は、(1)一般的有機溶媒または溶媒の組み合わせ中に溶解した、薬学的組成物とリン脂質との溶液を提供する工程;(2)その溶媒(1種または複数種)をエバポレートする工程;および(3)その溶媒のエバポレーションにより得られたフィルムを、激しく攪拌することによって水性溶液中に懸濁する工程、を包含する。その溶媒は、化合物の沈殿を引き起こすのに十分な量の溶媒をエバポレートするためにその溶液にエネルギーを付加することによって、除去され得る。その溶媒はまた、他の周知技術(例えば、減圧をその溶液に適用すること、またはその溶液に窒素を吹き付けること)によっても、除去され得る。
【0070】
(反応沈殿)
反応沈殿は、薬学的化合物を適切な溶媒中に溶解して溶液を形成する工程を包含する。その化合物は、その溶媒中でのその化合物の飽和点以下の量で添加されるべきである。その化合物は、化学物質との反応によって、またはエネルギー(例えば、熱またはUV光など)を付加することに応答した改変によって、改変され、その改変された化合物は、その溶媒中でより低い可溶性を有して、その溶液から沈殿するようになる。
【0071】
(圧縮流体沈殿)
圧縮流体により沈殿するための適切な技術が、Johnstonに対するWO 97/14407(これは、本明細書中に参考として援用されて、本明細書の一部を構成する)において開示される。この方法は、溶媒中に水不溶性薬物を溶解して溶液を形成する工程を包含する。その後、その溶液は、圧縮流体になるように噴霧される。この圧縮流体は、気体、液体、または超臨界流体であり得る。溶媒中の溶質の溶液へとこの圧縮流体を添加すると、その溶質は、過飽和状態を得るかまたは過飽和状態に近づき、微細粒子として沈殿するようにされる。この場合、その圧縮流体は、薬物が溶解する溶媒の凝集エネルギー密度を低下する逆溶剤として作用する。
【0072】
あるいは、その薬物は、圧縮流体中に溶解され得、その後、水相中に噴霧される。圧縮流体の迅速な膨張は、その流体の溶媒力を減少させる。これにより、その溶質が水相中で微細粒子として沈殿するようにされる。この場合、その圧縮流体は、溶媒として作用する。
【0073】
(粒子を調製するための他の方法)
本発明の粒子はまた、活性因子の機械的粉砕によって調製され得る。機械的粉砕としては、ジェットミル、パールミル、ボールミル、ハンマーミル、流体エネルギーミル、または湿式粉砕技術(例えば、米国特許第5,145,684号(これは、本明細書中に参考として援用され、本明細書中を構成する)に開示される技術)のような技術が、挙げられる。
【0074】
本発明の粒子を調製するための別の方法は、活性因子を懸濁することによる。この方法において、その活性因子の粒子は、その粒子を水性媒体に直接添加してプレ懸濁物を誘導することによって、水性媒体中に分散させられる。その粒子は、通常は、表面改質剤でコーティングされて、その粒子の凝集が阻害される。1種以上の他の賦形剤が、その活性因子または水性媒体のいずれかに添加され得る。
【0075】
(多形制御)
本発明は、薬学的に活性な化合物の結晶構造を制御して、望ましいサイズ範囲かつ望ましい結晶構造の状態でその化合物の懸濁物を最終的に生成する追加工程を、さらに提供する。用語「結晶構造」によって意味するところは、その結晶の単位格子内における原子配置である。種々の結晶構造へと結晶化され得る薬学的に活性な化合物は、多形であると呼ばれる。多形の同定は、薬物処方において重要な工程である。なぜなら、同じ薬物の異なる多形は、溶解度、治療活性、バイオアベイラビリティ、および懸濁物安定性において差異を示し得るからである。従って、生成物の純度およびバッチ間再現性を確実にするために、上記化合物の多形形態を制御することが、重要である。
【0076】
上記化合物の多形を制御する工程は、第一溶液、第二溶媒またはプレ懸濁物をシード添加して、望ましい多形の形成を確実にする工程を包含する。シード添加は、シード化合物の使用またはエネルギー添加を包含する。本発明の好ましい形態において、そのシード化合物は、望ましい多形形態にある薬学的に活性な化合物である。あるいは、そのシード化合物はまた、望ましい多形(例えば、胆汁酸塩)の構造と類似する構造を有する、不活性不純物または有機化合物であり得る。
【0077】
そのシード化合物は、第一溶液から沈殿され得る。この方法は、第一溶媒中にある薬学的に活性な化合物の溶解度を超えるのに十分な量の薬学的に活性な化合物を添加して、過飽和溶液を生成する工程を包含する。その過飽和溶液は、望ましい多形形態で上記薬学的に活性な化合物を沈殿するように処理される。過飽和溶液の処理は、結晶の形成がシード添加混合物を形成するのが観察されるまでの時間、上記溶液をエージングする工程を包含する。上記の過飽和溶液にエネルギーを付加して、上記の薬学的に活性な化合物が望ましい多形の状態で溶液から沈殿するようにさせることもまた、可能である。上記エネルギーは、上記のエネルギー付加工程を含む、種々の様式で付加され得る。さらなるエネルギーが、上記のプレ懸濁物を加熱するか、または電磁エネルギー、粒子ビーム、または電子ビーム源にプレ懸濁物を暴露することによって、付加され得る。その電磁エネルギーとしては、レーザービーム、動的電磁エネルギー、または他の放射線源が、挙げられる。超音波、静電場、および静磁場をエネルギー付加源として使用することが、さらに企図される。
【0078】
本発明の好ましい形態において、エージングされた過飽和溶液からシード結晶を生成するための方法は、(i)第一有機溶媒に一定量の薬学的に活性な化合物を添加して、過飽和溶液を生成する工程;(ii)その過飽和溶液をエージングして検出可能な結晶を形成し、シード添加混合物を生成する工程;および(iii)そのシード添加混合物を第二溶媒と混合して、薬学的に活性な化合物を沈殿させてプレ懸濁物を生成する工程、を包含する。その後、このプレ懸濁物は、上記に詳細に記載されたようにさらに処理され、望ましい多形かつ望ましいサイズ範囲で薬学的に活性な化合物の水性懸濁物が提供され得る。
【0079】
シード添加はまた、第一溶液、第二溶液、またはプレ懸濁物にエネルギーを付加することによって達成され得る。但し、暴露される液体は、薬学的に活性な化合物またはシード材料を含む。そのエネルギーは、過飽和溶液について上記されたのと同じ様式で付加され得る。
【0080】
従って、本発明は、不特定の多形を本質的に含まない望ましい多形の状態である、薬学的に活性な化合物の組成物を提供する。本発明の方法は、多数の薬学的に活性な化合物について望ましい多形を選択的に生成するために適用され得ることが、企図される。
【0081】
(鎮痙薬(抗痙攣剤)および抗痴呆剤のための小粒子薬学処方物ならびに免疫抑制療法)
痙攣は、ニューロンの活性化と阻害とにおける化学的不均衡により引き起こされ、過剰な電気放電を生じる。この結果は、正常な機能に影響を及ぼす電気的カスケードである。痙攣制御のための標準的処置は、これらの神経化学的プロセスを調節する薬物を投与することである。主要な鎮痙薬の種類は、これに関して、三環系クラス(カルバマゼピン、オキシカルバゼピンなど)、γアミノ酪酸アナログ(例えば、ビガバトリンおよびガバペンチン)、ベンゾジアゼピン(例えば、ジアゼピン、クロナゼピン)、ヒダントイン(例えば、ジフェニルヒダントイン)、バルビツレート(例えば、フェノバルビタール)、フェニルトリアジン(例えば、ラモトリジン)、ならびにより新規な薬物(例えば、トピラメートおよびレベチラセタム)である。約70%〜約80%の癲癇罹患者が、1種類の薬物を用いて痙攣を完全に制御し得る。その他は、2種以上の薬物の併用を必要とし得る。不幸なことに、約20%の患者は、現在利用可能なすべての薬物に対して抵抗性である痙攣を依然として有する。いくつかの場合においては、より高い薬物負荷を可能にすることによって、これらの抵抗性痙攣の多くは、制御され得ると考えられる。具体的な抗痙攣剤としては、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、オキシカルバゼピン(Trileptal(登録商標))、トピラメート、ビガバトリン、チアガビン、プロガビド、バクロフェン、10,11−ジヒドロ−10−ヒドロキシカルバマゼピン(MHD)、ラモトリジン(Lamictal(登録商標))、フェニトイン(Dilantin(登録商標))、フェノバルビタール、プリミドン、ジアゼパム、クロナゼパム、ロレザパム、クロラゼペート、およびフェルバメートが、挙げられる。多くのCNS(中枢神経系)薬物と同様に、多くの鎮痙薬の活性は、それらの鎮痙薬が血液脳関門(BBB)を通過する能力に関連し、従って、ある程度の疎水性を必要とする。これは、多数のこれらの医薬について、低い水溶性と言い換えられる。例としては、ベンゾジアゼピン、三環系薬物、ヒダントイン、およびバルビツレートが挙げられる。カルバマゼピンは、癲癇だけでなく潜在的に他のCNS障害(例えば、痴呆)をも処置する能力に関して、多大な注意を受けている。
【0082】
抗痙攣剤は、薬学的使用のために小粒子懸濁物として処方され得る。これらの処方物の利点としては、潜在的により高い薬物負荷と同時に副作用(例えば、嗜眠状態、疲労、眩暈感、眼振、または悪心)を最小限にする可能性が、挙げられる。本発明の好ましい実施形態は、図3に示される一般構造を有する三環系抗痙攣剤処方物を包含する。
【0083】
抗痴呆剤としては、精神安定薬、抗鬱薬、および不安軽減剤が、挙げられる。具体的な精神安定薬としては、クロルプロマジン(Largactil)、クロペンチキソール(Clopixol)、フルフェナジン(Modecate)、ハロペリドール(Haldol、Serance)、オランザピン(Zyprexa)、プロマジン(Sparine)、ケチアピン(Seroquel)、リスペリドン(Risperdal)、スルピリド(Dolmatil、Sulparex、Sulpatil)、チオリダジン(Melleril)およびトリフルオロペラジン(Stelazine)が、挙げられる。具体的な抗欝薬としては、アミトリプチリン(Lentizol、Tryptizol)、アモキサピン(Asendis)、シタロプラム(Cipramil)、ドチエピン(Prothiaden)、ドキセピン(Sinequan)、フルオキセチン(Prozac)、フルボキサミン(Faverin)、イミプラミン(Tofranil)、ロフェプラミン(Gamanil)、ミトラジピン(Zispin)、ネファゾドン(Dutonin)、ノルチルプチリン(Allegron)、パロキセチン(Seroxat)、レボキセチン(Edronax)、セルトラリン(Lustral)、およびベンラファキシン(Effexor)が、挙げられる。具体的な不安軽減剤としては、アルプラゾラム(Xanax)、クロルジアゼポキシド(Librium)、ジアゼパム(Valium)、ロラゼパム(Ativan)、およびオキサゼパム(Oxazepam)が、挙げられる。具体的な催眠薬としては、クロルメチアゾール(Heminevrin)、フルラゼパム(Dalmane)、二トラゼパム(Mogadon)、テマゼパム(Normison)、ゾピクロン(Zimovane)、およびゾルピデム(Stilnoct)が、挙げられる。
【0084】
具体的な免疫抑制剤としては、シクロスポリンならびにその誘導体および代謝産物が挙げられ、それには、シクロスポリンA、ミコフェノレートモフェチル(CellCept(登録商標))、タクロリムス(Prograf(登録商標))、シロリムス(Rapamune(登録商標))、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、コルチゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン)、アザチオプリン(Imuran(登録商標))、15−デオキシスペルグアリン、およびレフルノミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0085】
(実施例1:リン脂質表面コーティングした1%カルバマゼピン懸濁物の調製(米国特許出願US2003/031719A1より))
2.08gのカルバマゼピンを、10mLのN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)中に溶解した。1.0mLのこの濃縮物を、1.2%レシチンと2.2%グリセリンとの20mL攪拌溶液中に、0.1mL/分にて順次滴下した。この特許出願において使用される場合、「パーセント」または「%」とは、重量/体積パーセントを指す。このレシチン系の温度を、添加全体の間は2℃〜5℃にて維持した。そのプレ分散物を、次に、15,000psiにて35分間、低温(5℃〜15℃)でホモジナイズした。その圧力は、23,000psiまで増加した。そのホモジナイゼーションを、さらに20分間継続した。このプロセスにより生じた粒子は、平均直径0.881ミクロンを有し、その粒子の99%は、2.4ミクロン未満であった。
【0086】
(実施例2:Solutol(登録商標)(ポリエチレングリコール660,12−ヒドロキシステアレート)を含む1%カルバマゼピン溶液の調製(米国特許出願US2003/031719A1より))
N−メチル−2−ピロリジノン中にある20%カルバマゼピンと5%グリコデオキシコール酸との薬物濃縮物を、調製した。その微量沈殿工程は、この薬物濃縮物を、0.1mL/分にて受容溶液(蒸留水)に添加する工程を包含した。その受容溶液を、500rpmにて攪拌し、そして沈殿の間は約4℃にて維持した。沈殿後、最終成分濃度は、1%カルバマゼピンおよび0.25%グリコデオキシコール酸であった。その薬物結晶を、正位相差(400倍の倍率)を使用して、光学顕微鏡下で検査した。その沈殿物は、直径が約2.5ミクロンでありかつ長さが50ミクロン〜150ミクロンの範囲にある、微細な針状物からなった。その沈殿物を沈殿前の原材料と比較すると、表面改質剤(グルコデオキシコール酸)の存在下における上記沈殿工程によって、出発原材料よりもかなり薄い非常に細い結晶が生成されることが、明らかとなる。この沈殿物を、約20,000psiにて約15分間ホモジナイズ(Avestin C−5ピストンギャップホモジナイザー)すると、大きさが約1ミクロン未満でありかつほぼ凝集していない状態である、小さな粒子が生じた。
【0087】
上記のプロセスを、スケールアップして2L懸濁物を生成した。上記沈殿工程の後、その沈殿物を、約25,000psiにて約20回通過の間ホモジナイズ(Avestin C−160ピストンギャップホモジナイザー)した。このナノ懸濁物のアリコートを、遠心分離し、その上清を、0.125% Solutol(登録商標)(ポリエチレングリコール600,12−ヒドロキシステアリン酸エステル)からなる溶液で置換した。遠心分離して上清を置換した後、その懸濁物の成分濃度は、1%カルバマゼピンおよび0.125% Solutol(登録商標)であった。それらのサンプルを、ピストンギャップホモジナイザーによって再ホモジナイズし、5℃にて保存した。3ヶ月間保存した後、その懸濁物は、平均粒径0.80ミクロンを有し、その粒子の99%は、1.98ミクロン未満であった。報告された数値は、超音波処理を行わなかった2回のHoriba(レーザー回折)測定の平均である。
【0088】
上記処方物の代表的バッチを、6ヶ月間の保存(5℃および25℃)の最後にレーザー回折によって粒径について検査した。そのバッチは、望ましいサイズ範囲200nm〜5ミクロン中に依然としてある粒径であることが明らかとなった。平均(5℃)=0.926ミクロン;平均(25℃)=0.938ミクロン。累積99%直径(5℃)=2.72ミクロン;累積99%直径(25℃)=2.71ミクロン。
【0089】
(実施例3:胆汁酸塩およびポリエーテル界面活性剤を含む、1%カルバマゼピン懸濁物の調製)
N−メチル−2−ピロリジノン中に20%カルバマゼピンと5%グルコデオキシコール酸とを含む薬物濃縮物を、調製した。その微量沈殿工程は、この薬物濃縮物を、10mL/分にて受容溶液(蒸留水)に添加する工程を包含した。その受容溶液を、攪拌し、そして沈殿の間は約5℃にて維持した。沈殿後、最終成分濃度は、1%カルバマゼピンおよび0.25%グリコデオキシコール酸であった。この沈殿物を、その後、約25,000psi0にて約20回通過の間ホモジナイズ(Avestin C−160ピストンギャップホモジナイザー)した。このナノ懸濁物のアリコートを、遠心分離し、その上清を、0.06%グリコデオキシコール酸と0.06% Poloxamer 188とからなる溶液で置換した。遠心分離して上清を置換した後、その懸濁物の成分濃度は、1%カルバマゼピン、0.06%グリコデオキシコール酸および0.06% Poloxamer 188であった。その懸濁物を、ピストンギャップホモジナイザーを使用して再ホモジナイズし、5℃にて保存した。3ヶ月間保存した後、その懸濁物は、平均粒径0.52ミクロンを有し、その粒子の99%は、1.15ミクロン未満であった。報告された数値は、超音波処理を行わなかった2回のHoriba(レーザー回折)測定の平均である。
【0090】
(実施例4:リン脂質界面活性剤を含む1%カルバマゼピン懸濁物の調製)
(成分)
1% カルバマゼピン
1.5% Lipoid E80
0.4% mPEG−DSPE(分子量=2000)
0.14% リン酸二ナトリウム
2.25% グリセリン。
【0091】
蒸留水(80mL)、2.26gグリセリン、1.50g Lipoid E80、0.40g mPEG−DSPE、および0.14gリン酸二ナトリウムを、ビーカーの中で合わせ、全固体が溶解するまで高剪断ミキサーを用いて混合した。1gのカルバマゼピン粉末を、この界面活性剤溶液に添加し、すべての薬物粉末が湿って分散するまで高剪断ミキサーを用いて混合した。その懸濁物のpHを、8.7に調整し、そして蒸留水を用いて容積100mLまで希釈した。その懸濁物を、圧力25,000psiにて94分間または30ホモジナイゼーションサイクルの間、ホモジナイズした。その懸濁物を、ホモジナイゼーション全体の間、約10℃にて維持した。その懸濁物の最終pHは、8.3pH単位であった。その懸濁物を2mLガラスバイアル中に満たし、窒素ガスでフラッシュし、ゴム栓で密封した。サンプルを、5℃および25℃にて保存した。
【0092】
(粒径の安定性)
3つのサンプルを、各間隔および温度において、レーザー光散乱によって、粒径分布について検査した。下記に列挙した結果は、それら3つのサンプルの平均である。
【0093】
(表2:5℃および25℃における保存に対する実施例4からの処方物の粒径)
【0094】
【表2】

(化学的安定性)
2つのサンプルを、各間隔および時間において、高速液体クロマトグラフィーによってカルバマゼピン濃度について分析した。経時的に、その薬物濃度の有意な変化は観察されなかった。
【0095】
(溶解)
ホモジナイズした懸濁物のサンプルは、37℃のセーレンセン緩衝液中において30秒間未満で完全に溶解して、溶解薬物濃度約111ppmを生じることが、示された。
【0096】
(実施例5:アルブミンを含む1%カルバマゼピン懸濁物の調製)
(成分)
1% カルバマゼピン
5% アルブミン(ヒト)。
【0097】
1gのカルバマゼピン粉末を、80mLの5%アルブミン溶液に添加し、そして薬物粉末すべてが湿って分散するまで高剪断ミキサーを用いて混合した。その混合物を、5%アルブミン溶液と用いて100mLまで希釈した。その懸濁物を、圧力25,000psiにて94分間または30ホモジナイゼーションサイクルの間、ホモジナイズした。その懸濁物を、ホモジナイゼーション全体の間、約10℃にて維持した。その懸濁物を2mLガラスバイアル中に満たし、窒素ガスでフラッシュし、ゴム栓で密封した。サンプルを、−20℃にて保存した。
【0098】
(粒径の安定性)
3つのサンプルを、各間隔および温度において、レーザー光散乱によって、粒径分布について検査した。それらのサンプルを、試験する前に周囲条件下で完全に融解させた。下記に列挙した結果は、それら3つのサンプルの平均である。
【0099】
(表3:5℃および−20℃における処方物5の保存に対する粒径)
【0100】
【表3】

(化学的安定性)
2つのサンプルを、各間隔および時間において、高速液体クロマトグラフィーによってカルバマゼピン濃度について分析した。経時的に、その薬物濃度の有意な変化は観察されなかった。
【0101】
(溶解)
ホモジナイズした懸濁物のサンプルは、37℃のセーレンセン緩衝液中において30秒間未満で完全に溶解して、溶解薬物濃度約111ppmを生じることが、示された。
【0102】
(実施例6:シクロスポリンの小粒子処方物)
0.4003gのLipoid E80および1.0154gのグリセリンを、100mLのエタノール中に秤量し、溶解させて、溶液1を形成した。0.4032gのPoloxamer 188を、水で100mLまで希釈して、溶液2を形成した。0.49906gのシクロスポリンを、25mLの溶液1に添加して、溶液3を形成した。溶液3および溶液2の各々10mlを合わせて、混合物を形成した。80mLの水を、この混合物に迅速に添加して、シクロスポリンの小粒子を自然沈殿させた。その懸濁物を、Avestin C−5ホモジナイザーを使用して、約20,000psiにて約7分間ホモジナイズした。ホモジナイズしたナノ懸濁物の平均粒径は、約300nmであり、約5℃にて7日間置いた後に約300nmのままであった。
【0103】
具体的な実施形態が示されかつ記載されているが、多数の改変形が、本発明の趣旨から逸脱することなく思い浮かぶ。保護の範囲は、添付している特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、本発明の1つの方法の概略の提示を示す。
【図2】図2は、本発明の別の方法の概略の提示を示す。
【図3】図3は、三環系抗癲癇薬物の一般構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癲癇剤の薬学的組成物であって、該組成物は、1つ以上の界面改変剤でコーティングされた該薬剤の固体粒子を含有し、該粒子は、約10nm〜約100μmの平均有効粒子サイズを有する、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、界面活性生物学的改変剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、前記陰イオン性界面活性剤は、スルホン酸アルキル、リン酸アルキル、ホスホン酸アルキル、ラウリル酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硫酸アルキル、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、胆汁酸およびそれらの塩、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸ならびにカルボキシメチルセルロースカルシウムからなる群より選択される、組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の組成物であって、前記陽イオン性界面活性剤は、四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシルカルニチン塩酸塩、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジオレイオルトリメチルアンモニウムプロパン、ジミリストイルトリメチルアンモニウムプロパン、ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール、1,2−ジアルキルグリセロ−3−アルキルホスホコリン、アルキルピリジニウムハライド、n−オクチルアミンおよびオレイルアミンからなる群より選択される、組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の組成物であって、前記陰イオン性界面活性剤は、天然リン脂質、合成リン脂質、塩化リン脂質または脱塩リン脂質である、組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、前記リン脂質は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸およびそれらの塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項7】
請求項2に記載の組成物であって、前記陽イオン性界面活性剤は、天然リン脂質、合成リン脂質、塩化リン脂質または脱塩リン脂質である、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物であって、前記リン脂質は、O−アルキル化ホスファチジルコリンからなる群より選択される、組成物。
【請求項9】
請求項2に記載の組成物であって、前記両性イオン性界面活性剤は、リン脂質であり、そして該リン脂質は、天然であるかもしくは合成であるか、塩化されているかまたは脱塩化されている、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、前記両性イオン性リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾリン脂質、卵リン脂質、大豆リン脂質、ジアシル−グリセロ−ホスホエタノールアミン、ジミリストイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン、ジパルミトイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン、ジステアロイル−グリセロ−ホスホエタノールアミンおよびジオレオイルーグリセロ−ホスホエタノールアミンからなる群より選択される、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、前記界面改変剤は、ペグ化リン脂質である、組成物。
【請求項12】
請求項2に記載の組成物であって、前記非イオン性界面活性剤は、グリセリルエステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポラキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非晶質セルロース、ポリサッカリド、デンプン、デンプン誘導体、ヒドロキシエチルデンプン、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンからなる群より選択される、組成物。
【請求項13】
請求項2に記載の組成物であって、前記界面活性生物学的改変剤は、タンパク質、ポリサッカリドおよびその組み合わせからなる群より選択される、組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物であって、前記ポリサッカリドは、デンプン、ヘパリンおよびキトサンからなる群より選択される、組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の組成物であって、前記タンパク質は、アルブミンおよびカゼインからなる群より選択される、組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物であって、前記界面改変剤は、胆汁酸またはその塩を含む、組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の組成物であって、前記胆汁酸またはその塩は、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸およびこれらの酸の塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物であって、前記界面改変剤は、オキシエチレンとオキシプロピレンとのコポリマーを含む、組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物であって、前記オキシエチレンとオキシプロピレンとのコポリマーは、ブロックコポリマーである、組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物であって、pH調整剤をさらに含有する、組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の組成物であって、前記pH調整剤は、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N−メチルグルコサミン、水酸化ナトリウム、グリシン、アルギニン、リジン、アラニン、ヒスチジンおよびロイシンからなる群より選択される、組成物。
【請求項22】
請求項20に記載の組成物であって、前記pH調整剤は、該組成物に添加されて、約3〜約11の範囲内の該組成物のpHをもたらす、組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の組成物であって、前記抗癲癇剤は、三環系抗癲癇剤である、組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の組成物であって、前記三環系抗癲癇剤は、カルバマゼピンである、組成物。
【請求項25】
免疫抑制剤を含有する薬学的組成物であって、該組成物は、1つ以上の界面改変剤でコーティングされた該薬剤の固体粒子を含有し、該粒子は、約10nm〜約100μmの平均有効粒子サイズを有する、組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の組成物であって、前記界面改変剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、界面活性生物学的改変剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の組成物であって、前記陰イオン性界面活性剤は、スルホン酸アルキル、リン酸アルキル、ホスホン酸アルキル、ラウリル酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硫酸アルキル、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、胆汁酸およびそれらの塩、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸ならびにカルボキシメチルセルロースカルシウムからなる群より選択される、組成物。
【請求項28】
請求項26に記載の組成物であって、前記陽イオン性界面活性剤は、四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシルカルニチン塩酸塩、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジオレイオルトリメチルアンモニウムプロパン、ジミリストイルトリメチルアンモニウムプロパン、ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール、1,2−ジアルキルグリセロ−3−アルキルホスホコリン、アルキルピリジニウムハライド、n−オクチルアミンおよびオレイルアミンからなる群より選択される、組成物。
【請求項29】
請求項26に記載の組成物であって、前記陰イオン性界面活性剤は、天然リン脂質、合成リン脂質、塩化リン脂質または脱塩リン脂質である、組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の組成物であって、前記リン脂質は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸およびそれらの塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項31】
請求項26に記載の組成物であって、前記陽イオン性界面活性剤は、リン脂質であり、そして該リン脂質は、天然であるかまたは合成であるか、塩化されているかまたは脱塩化されている、組成物。
【請求項32】
請求項31に記載の組成物であって、前記リン脂質は、O−アルキル化ホスファチジルコリンからなる群より選択される、組成物。
【請求項33】
請求項26に記載の組成物であって、前記両性イオン性界面活性剤は、天然リン脂質、合成リン脂質、塩化リン脂質または脱塩リン脂質である、組成物。
【請求項34】
請求項33に記載組成物であって、前記両性イオン性リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾリン脂質、卵リン脂質、大豆リン脂質、ジアシル−グリセロ−ホスホエタノールアミン、ジミリストイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン、ジパルミトイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン、ジステアロイル−グリセロ−ホスホエタノールアミンおよびジオレオイル−グリセロ−ホスホエタノールアミンからなる群より選択される、組成物。
【請求項35】
請求項25に記載の組成物であって、前記界面改変剤は、ペグ化リン脂質である、組成物。
【請求項36】
請求項26に記載の組成物であって、前記非イオン性界面活性剤は、グリセリルエステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポラキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非晶質セルロース、ポリサッカリド、デンプン、デンプン誘導体、ヒドロキシエチルデンプン、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンからなる群より選択される、組成物。
【請求項37】
請求項26に記載の組成物であって、前記界面活性生物学的改変剤は、タンパク質、ポリサッカリドおよびその組み合わせからなる群より選択される、組成物。
【請求項38】
請求項37に記載の組成物であって、前記ポリサッカリドは、デンプン、ヘパリンおよびキトサンからなる群より選択される、組成物。
【請求項39】
請求項37に記載の組成物であって、前記タンパク質は、アルブミンおよびカゼインからなる群より選択される、組成物。
【請求項40】
請求項25に記載の組成物であって、前記界面改変剤は、胆汁酸またはその塩を含む、組成物。
【請求項41】
請求項40に記載の組成物であって、前記胆汁酸またはその塩は、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸およびこれらの酸の塩からなる群より選択される、組成物。
【請求項42】
請求項25に記載の組成物であって、前記界面改変剤は、オキシエチレンとオキシプロピレンとのコポリマーを含む、組成物。
【請求項43】
請求項42に記載の組成物であって、前記オキシエチレンとオキシプロピレンとのコポリマーは、ブロックコポリマーである、組成物。
【請求項44】
請求項25に記載の組成物であって、pH調整剤をさらに含有する、組成物。
【請求項45】
請求項44に記載の組成物であって、前記pH調整剤は、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N−メチルグルコサミン、水酸化ナトリウム、グリシン、アルギニン、リジン、アラニン、ヒスチジンおよびロイシンからなる群より選択される、組成物。
【請求項46】
請求項45に記載の組成物であって、前記pH調整剤は、該組成物に添加されて、約3〜約11の範囲内の該組成物のpHをもたらす、組成物。
【請求項47】
請求項25に記載の組成物であって、前記免疫抑制剤は、シクロスポリン、シクロスポリンA、シクロスポリン誘導体、シクロスポリン代謝産物およびその組み合わせからなる群より選択される、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−528985(P2006−528985A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533204(P2006−533204)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015621
【国際公開番号】WO2004/103348
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】