1,2−ジオールからの低級飽和アルデヒド製造方法
【課題】 本発明の課題は、1,2−ジオールを原料とし、低級飽和アルデヒドを効率よく製造する方法を提供することである。
【解決手段】 ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体からなる触媒を用いる、1,2−ジオールから低級飽和アルデヒドを製造する方法。
【解決手段】 ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体からなる触媒を用いる、1,2−ジオールから低級飽和アルデヒドを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低級飽和アルデヒドを製造する方法に関し、特に1,2−ジオールを原料とし、低級飽和アルデヒドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロパナール(プロピオンアルデヒド)に代表される低級飽和アルデヒド類は溶剤原料、化成品中間体、医薬品中間体製造用溶媒などとして用いられ化学工業上重要な物質である。低級飽和アルデヒドは、そのアルデヒドの有する炭素数により製造方法は大きく異なる。例えばC2アルデヒドであるアセトアルデヒドはエチレンのワッカー酸化により工業的に製造され(非特許文献1)、C4アルデヒドであるブチルアルデヒドはプロピレンのヒドロホルミル化反応で製造されるのが一般的である(非特許文献2)。
【0003】
一方、C3のアルデヒドであるプロピオンアルデヒドはエチレンのヒドロホルミル化反応により得られるか(非特許文献2)、プロピレンのアセトキシル化により得られた酢酸アリルを加水分解して得られるアリルアルコール(特許文献1)、あるいはプロピレンオキサイドを原料としてその異性化により得られるアリルアルコールを原料として(特許文献2)、その部分水素化により得ることが出来る。
【0004】
しかしながら、ヒドロホルミル化反応装置の建設には膨大な設備投資が必要であり、プロピレンのアセトキシル化においては反応に酢酸を用いることから耐食性の設備が必要となりこちらも設備投資が膨大になる。一方、プロピレンオキサイドを原料とした場合、反応性の高いプロピレンオキサイドは取扱いが難しく爆発の危険がある。更に、アリルアルコールを原料として部分水素化で飽和アルデヒドを得る場合、一部カルボニル部分も水素化され目的生成物の選択率が低下する場合がある。また、1−プロパノールを脱水素してプロピオンアルデヒドを得る方法もあるが、原料である1−プロパノールの供給に問題がある。更には、これらの低級飽和アルデヒドを製造する際の原料は全て化石燃料である石油由来の化合物であり、近年懸念されている地球環境保全のためにもこれらの使用は好ましくない。
【0005】
一方、再生可能エネルギーとして近年注目を浴びているBDF(Bio Diesel Fuel)は油脂である動植物油をメタノールと触媒によりメチルエステル(FAME)にエステル交換して製造されるが、その際多量にグリセリンが副生する。しかし、現在この副生グリセリンを有効利用する決定的な手段は見つかっておらず、資源の有効利用という観点から非常に大きな問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2662965号
【特許文献2】特公平7−116083号公報
【特許文献3】特開2008−308411号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Industrial Organic Chemistry, Wiley, 4th edition p.165
【非特許文献2】Industrial Organic Chemistry, Wiley, 4th edition p.131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者はこれまで、多価アルコールからのヒドロキシケトン製造用触媒および製造方法(特許文献3)、あるいは、グリセリンからのグリコール製造方法(特願2008−200745号)といったグリセリンの有効利用について種々の有用化合物合成を成功させてきた。そしてグリセリンから製造したグリコールを更に有効利用することが更なる課題とされた。即ち本発明の目的は、上記従来の技術課題を解決することであり、1,2−ジオールを原料とし、低級飽和アルデヒドを効率よく製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、グリセリンから製造した1,2−プロパンジオールの用途として、ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体を触媒として用いることによって1,2−ジオールの脱水反応により隣接する水酸基を持つ水酸基の2級水酸基を選択的に脱水し、エノール体となったものが反応系内で互変異性によりカルボニル体(低級飽和アルデヒド)を生成することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の低級飽和アルデヒド製造方法は、以下の項(1)〜(7)で定義される。
(1) ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体からなる触媒を用いる、1,2−ジオールから低級飽和アルデヒドを製造する方法。
(2) 前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸及びリンモリブデン酸から選ばれるいずれかを含む(1)に記載の製造方法。
(3) 前記ヘテロポリ酸を担持する触媒担体が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、活性炭から選ばれるいずれかを含む(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4) 前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸である(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) 前記ヘテロポリ酸を担持する触媒担体が、酸化ケイ素である(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6) 前記1,2−ジオールが、1,2−プロパンジオールである(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7) 前記低級飽和アルデヒドが、プロパナールである(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の低級飽和アルデヒドの製造方法に用いる触媒は、ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体である。ヘテロポリ酸は、ケイ素、リン、ヒ素などのヘテロ原子と、タングステン、バナジウム、モリブデンなどの金属酸素酸骨格からなり、具体的にはケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸などが好ましく例示でき、ケイタングステン酸であることがより好ましい。ヘテロポリ酸を触媒として用いることで、一般的に用いられる触媒である酸化アルミニウム、酸化ケイ素、シリカ-アルミナなどの触媒と比較して、1,2−ジオールの転化率、アルデヒド選択率ともに高い数値を示し、結果としてアルデヒドを良好な収率で製造することができる。特にケイタングステン酸を触媒に用いた場合には、更に高いアルデヒド選択率を示し、加えて、生成したアルデヒドが原料のジオールと反応することで生成してしまう副生物であるジオキソラン(DXL)の選択率が極めて低い。
【0012】
上記ヘテロポリ酸は、遊離のヘテロポリ酸であってもよく、プロトンの一部もしくは全てを他のカチオンで置き換えて、ヘテロポリ酸の塩として使用することもできる。従って、本発明で言うヘテロポリ酸とはこれらのヘテロポリ酸の塩も含まれる。プロトン置換可能なカチオンとしては、例えば、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。また、ヘテロポリ酸は無水物であっても良く、結晶水含有物であっても良い
。これらのヘテロポリ酸は単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でヘテロポリ酸以外の他の触媒を併用してもよい。
【0013】
また、ヘテロポリ酸は、触媒担体に担持した形態で、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体として用いることもできる。上記触媒担体としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、活性炭などが好ましく例示できる。本発明では触媒担体として酸化ケイ素を用いることがより好ましい。また、上記触媒担体を複数種用いることもできる。なお、ヘテロポリ酸はその分子サイズが大きいため、安定な担体に物理的に固定して使用する場合が多く、後述の実施例でもヘテロポリ酸−触媒担体複合体として用いているが、ヘテロポリ酸自体の触媒活性は、触媒担体の有無に左右されるものではなく、ヘテロポリ酸を担体に担持させることなく使用しても、同様の効果を奏する。
【0014】
上記ヘテロポリ酸−触媒担体複合体の具体例は、ケイタングステン酸−酸化アルミニウム複合体、ケイタングステン酸−酸化ケイ素複合体、ケイタングステン酸−活性炭複合体、ケイモリブデン酸−酸化アルミニウム複合体、ケイモリブデン酸−酸化ケイ素複合体、ケイモリブデン酸−活性炭複合体、リンタングステン酸−酸化アルミニウム複合体、リンタングステン酸−酸化ケイ素複合体、リンタングステン酸−活性炭複合体、リンモリブデン酸−酸化アルミニウム複合体、リンモリブデン酸−酸化ケイ素複合体、リンモリブデン酸−活性炭複合体などが挙げられる。好ましくは、ケイタングステン酸−酸化アルミニウム複合体、ケイタングステン酸−酸化ケイ素複合体、ケイタングステン酸−活性炭複合体、ケイモリブデン酸−酸化ケイ素複合体、リンタングステン酸−酸化ケイ素複合体、リンモリブデン酸−酸化ケイ素複合体であり、より好ましくはケイタングステン酸−酸化ケイ素複合体である。
【0015】
上記ヘテロポリ酸は市販品あるいは公知の方法にて調合したもの等、いずれの形態のものでも触媒として使用することが可能である。同様に上記ヘテロポリ酸−触媒担体複合体についても市販品、市販品を還元したもの、当該ヘテロポリ酸の市販品あるいは公知の方法にて調合したものなどを触媒担体に担持させたもの等、いずれの形態のものでも触媒として使用することが可能である。
【0016】
ヘテロポリ酸−触媒担体複合体における触媒担体へのヘテロポリ酸成分の担持方法は含浸法、共沈法等公知の方法を用いることが可能である。例えば、ケイタングステン酸等のヘテロポリ酸を触媒担体成分である酸化ケイ素に含浸することによって得られる固体を乾燥して得られる複合体が触媒として使用可能である。
【0017】
また、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体における、ヘテロポリ酸:触媒担体の含有比は、重量比で0.5:99.5から、50:50とすることが好ましい。ヘテロポリ酸:触媒担体中のヘテロポリ酸の含有比が0.5から50である場合、十分な触媒活性を得ることができ、触媒活性が短時間で低下することを防げる。
【0018】
本発明の低級飽和アルデヒド製造方法は、隣接する水酸基を持つ1,2−ジオールを上記ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体を触媒として用いることで、1,2−ジオールの二級水酸基のみを選択的に脱離させ、生成したエノール中間体が互変異性によりカルボニル体に異性化することによって低級飽和アルデヒドが生成することが特徴である。
【0019】
本発明の製造方法の原料となる1,2−ジオールの具体例は、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられるが、既に発明者らが見出した技術により、バイオディーゼル燃料を製造す
る際の副生物であるグリセリンから1,2−プロパンジオールを製造することができることから、1,2−プロパンジオールを原料とすることが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法の原料の1,2−ジオールは、原料中に水分を含んでいてもよい。1,2−ジオール中の水分含有量は、0〜95重量%の範囲が好ましく、より収率が高くなり、DXL選択率が低くなることから、20〜95重量%の範囲がより好ましく、50〜95重量%の範囲が更に好ましく、70〜95重量%の範囲が最も好ましい。
【0021】
本発明の低級飽和アルデヒドの製造で使用される反応装置は特に限定されないが、工業的には、原料をガス化して適当な触媒層を通過させておこなう形式の気相流通反応が可能な装置が好ましい。気相流通反応装置を用いる場合、たとえば、気相流通反応装置に所定量の触媒を入れ、これを公知の方法で前処理することにより活性な触媒層を気相流通反応装置内に形成させる。ここに、原料の1,2−ジオールをガス化し、供給することにより低級飽和アルデヒドを製造することが可能である。
【0022】
また、上記触媒の前処理は、触媒層を活性化させることができる公知の方法を用いることができ、例えば、窒素気流中、200℃で1時間程度熱処理を行う等により、触媒層を活性化させることが挙げられる。
【0023】
また、本発明の製造方法で得られる低級飽和アルデヒドとしては、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナールなどが挙げられ、特にプロパナールが好ましい。
【0024】
本発明の低級飽和アルデヒド製造方法の反応温度は、140℃から300℃の温度範囲、すなわち、1,2−ジオールが気相状態として存在する温度が好適である。反応を十分に進行させるためには140℃以上が好ましく、生成物選択率を良好に保つためには300℃以下が好ましい。より好ましい温度範囲としては160℃から240℃の範囲であり、より収率が高くなることから、180℃から240℃の範囲が更に好ましく、200℃から220℃の範囲が最も好ましい。
【0025】
本発明に用いる触媒の量及び低級飽和アルデヒド製造方法の反応時間は、触媒重量に対する単位時間当たりの原料フィード重量(WHSV:Weight Hourly Space Velocity;単位、h-1)で代表され、WHSV値で、0.1から20h-1の範囲で利用可能であり、触媒の寿命及び収率の観点から好ましくはWHSV値で、0.5から7h-1の範囲であり、更に好ましくはWHSV値で、1から6h-1の範囲である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例、比較例に用いた固定床常圧気相流通反応装置は内径17mm、全長300mmの反応器を用いた。該反応器は、その上端にキャリアガス導入口と原料流入口があり下端にガス抜け口を有する反応粗液捕集容器(冷却)を有するものである。捕集容器に捕集された反応粗液は、ガスクロマトグラフィーにて測定し、検量線補正後、1,2−プロパンジオールなどの原料の残量、プロパナールなどの生成物の収量を決定し、この値から転化率(モル%)、選択率(モル%)及び収率(モル%)を求めた。
【0028】
<実施例1>
(触媒の調製)
シリカ(富士シリシア化学製、キャリアクトQ10)に公知の含浸法にて、30重量%のヘテロポリ酸(リンタングステン酸またはケイタングステン酸、共に和光純薬製 特級
試薬)を担持し、シリカ担持リンタングステン酸及びシリカ担持ケイタングステン酸をそれぞれ調製した。これらの触媒におけるリンタングステン酸またはケイタングステン酸の担持量はそれぞれ30重量%であった。
【0029】
(ヘテロポリ酸触媒を用いたプロパナールの製造)
上記調製した各触媒0.3gを固定床常圧気相流通反応装置内に設置した。その後、窒素気流中200℃に触媒層を加熱し、1時間前処理を施した。前処理後、固定床常圧気相流通反応装置の上部からキャリアガスとして窒素を30ml/minの流速で流し、水を含まない1,2−プロパンジオールを1.7ml/hにて窒素と共に供給して気化させて触媒層へ供給し反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率およびプロパナール収率を表1に示す。
【0030】
【表1】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0031】
ヘテロポリ酸を触媒とすると1,2−プロパンジオール転化率が高く、ケイタングステン酸を触媒とすると、1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率共に高いことがわかる。特にケイタングステン酸を触媒とした場合にはプロパナール収率は65%を超え、非常に効率の良い反応であることがわかる。更に、生成したアルデヒドがジオールと反応して生成する副生物であるDXLの選択率も非常に低いこともわかる。
【0032】
<実施例2>
(原料中の水分の影響)
原料に含水量の異なる1,2−プロパンジオールを用い、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸とした以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率及びプロパナール収率を表2に示す。
【0033】
【表2】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−
メチル−1,3−ジオキソラン
【0034】
原料1,2−プロパンジオール中の水分量は多い方が、よりプロパナール選択率が良好であり、DXL選択率が低いことがわかる。
【0035】
<実施例3>
(触媒層温度の影響)
原料1,2−プロパンジオール中の水分量を70重量%とし、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸とし、触媒層温度を変えて実験を行った以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率及びプロパナール収率を表3に示す
【0036】
【表3】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0037】
160℃以上、特に180℃から240℃の温度範囲で良好なプロパナール選択率を有し、DXL選択率が低いことがわかる。
【0038】
<実施例4>
(触媒量の影響)
原料1,2−プロパンジオール中の水分量を70重量%とし、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸とし、触媒量を変えた以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率及びプロパナール収率を表4に示す。
【0039】
【表4】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0040】
触媒量0.3から0.9gの範囲で1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率ともに良好な値を得ることが出来、DXL選択率も低いことがわかった。
【0041】
<実施例5>
(1,2−ブタンジオールからのブタナールの製造)
原料に水を含まない1,2−ブタンジオールを用い、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸としたこと以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−ブタンジオール転化率、ブタナール選択率、ブタナール収率を表5に示す。
【0042】
【表5】
12BD:1,2−ブタンジオール、BA:ブタナール
【0043】
1,2−ブタンジオールからも対応する低級飽和アルデヒドであるブタナールが選択的に生成し、非常に高い収率で得られることがわかる。
【0044】
<実施例6>
(1,2−ブタンジオール水溶液からのブタナールの製造)
原料に1,2−ブタンジオール水溶液(含水率70重量%)を用い、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸としたこと以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−ブタンジオール転化率、ブタナール選択率、ブタナール収率を表6に示す。
【0045】
【表6】
12BD:1,2−ブタンジオール、BA:ブタナール
【0046】
1,2−ブタンジオールを用いた反応においても、水溶液の方が良好な選択率、高い収率を示すことがわかる。
【0047】
<比較例1>
(種々の酸触媒を用いたプロパナールの製造)
触媒に以下の表7に示す市販の固体酸触媒を用いた以外は実施例1に準じて反応を行った。触媒種の相違による1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率およびプロパナール収率を表7に示す。
【0048】
【表7】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0049】
1,2−ジオールを原料とするアルデヒドの生成反応は、一般的な固体酸触媒を用いても反応しないか、あるいは反応しても目的生成物の選択率が低いことがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、低級飽和アルデヒドを製造する方法に関し、特に1,2−ジオールを原料とし、低級飽和アルデヒドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロパナール(プロピオンアルデヒド)に代表される低級飽和アルデヒド類は溶剤原料、化成品中間体、医薬品中間体製造用溶媒などとして用いられ化学工業上重要な物質である。低級飽和アルデヒドは、そのアルデヒドの有する炭素数により製造方法は大きく異なる。例えばC2アルデヒドであるアセトアルデヒドはエチレンのワッカー酸化により工業的に製造され(非特許文献1)、C4アルデヒドであるブチルアルデヒドはプロピレンのヒドロホルミル化反応で製造されるのが一般的である(非特許文献2)。
【0003】
一方、C3のアルデヒドであるプロピオンアルデヒドはエチレンのヒドロホルミル化反応により得られるか(非特許文献2)、プロピレンのアセトキシル化により得られた酢酸アリルを加水分解して得られるアリルアルコール(特許文献1)、あるいはプロピレンオキサイドを原料としてその異性化により得られるアリルアルコールを原料として(特許文献2)、その部分水素化により得ることが出来る。
【0004】
しかしながら、ヒドロホルミル化反応装置の建設には膨大な設備投資が必要であり、プロピレンのアセトキシル化においては反応に酢酸を用いることから耐食性の設備が必要となりこちらも設備投資が膨大になる。一方、プロピレンオキサイドを原料とした場合、反応性の高いプロピレンオキサイドは取扱いが難しく爆発の危険がある。更に、アリルアルコールを原料として部分水素化で飽和アルデヒドを得る場合、一部カルボニル部分も水素化され目的生成物の選択率が低下する場合がある。また、1−プロパノールを脱水素してプロピオンアルデヒドを得る方法もあるが、原料である1−プロパノールの供給に問題がある。更には、これらの低級飽和アルデヒドを製造する際の原料は全て化石燃料である石油由来の化合物であり、近年懸念されている地球環境保全のためにもこれらの使用は好ましくない。
【0005】
一方、再生可能エネルギーとして近年注目を浴びているBDF(Bio Diesel Fuel)は油脂である動植物油をメタノールと触媒によりメチルエステル(FAME)にエステル交換して製造されるが、その際多量にグリセリンが副生する。しかし、現在この副生グリセリンを有効利用する決定的な手段は見つかっておらず、資源の有効利用という観点から非常に大きな問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2662965号
【特許文献2】特公平7−116083号公報
【特許文献3】特開2008−308411号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Industrial Organic Chemistry, Wiley, 4th edition p.165
【非特許文献2】Industrial Organic Chemistry, Wiley, 4th edition p.131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者はこれまで、多価アルコールからのヒドロキシケトン製造用触媒および製造方法(特許文献3)、あるいは、グリセリンからのグリコール製造方法(特願2008−200745号)といったグリセリンの有効利用について種々の有用化合物合成を成功させてきた。そしてグリセリンから製造したグリコールを更に有効利用することが更なる課題とされた。即ち本発明の目的は、上記従来の技術課題を解決することであり、1,2−ジオールを原料とし、低級飽和アルデヒドを効率よく製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、グリセリンから製造した1,2−プロパンジオールの用途として、ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体を触媒として用いることによって1,2−ジオールの脱水反応により隣接する水酸基を持つ水酸基の2級水酸基を選択的に脱水し、エノール体となったものが反応系内で互変異性によりカルボニル体(低級飽和アルデヒド)を生成することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の低級飽和アルデヒド製造方法は、以下の項(1)〜(7)で定義される。
(1) ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体からなる触媒を用いる、1,2−ジオールから低級飽和アルデヒドを製造する方法。
(2) 前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸及びリンモリブデン酸から選ばれるいずれかを含む(1)に記載の製造方法。
(3) 前記ヘテロポリ酸を担持する触媒担体が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、活性炭から選ばれるいずれかを含む(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4) 前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸である(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) 前記ヘテロポリ酸を担持する触媒担体が、酸化ケイ素である(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6) 前記1,2−ジオールが、1,2−プロパンジオールである(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7) 前記低級飽和アルデヒドが、プロパナールである(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の低級飽和アルデヒドの製造方法に用いる触媒は、ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体である。ヘテロポリ酸は、ケイ素、リン、ヒ素などのヘテロ原子と、タングステン、バナジウム、モリブデンなどの金属酸素酸骨格からなり、具体的にはケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸などが好ましく例示でき、ケイタングステン酸であることがより好ましい。ヘテロポリ酸を触媒として用いることで、一般的に用いられる触媒である酸化アルミニウム、酸化ケイ素、シリカ-アルミナなどの触媒と比較して、1,2−ジオールの転化率、アルデヒド選択率ともに高い数値を示し、結果としてアルデヒドを良好な収率で製造することができる。特にケイタングステン酸を触媒に用いた場合には、更に高いアルデヒド選択率を示し、加えて、生成したアルデヒドが原料のジオールと反応することで生成してしまう副生物であるジオキソラン(DXL)の選択率が極めて低い。
【0012】
上記ヘテロポリ酸は、遊離のヘテロポリ酸であってもよく、プロトンの一部もしくは全てを他のカチオンで置き換えて、ヘテロポリ酸の塩として使用することもできる。従って、本発明で言うヘテロポリ酸とはこれらのヘテロポリ酸の塩も含まれる。プロトン置換可能なカチオンとしては、例えば、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。また、ヘテロポリ酸は無水物であっても良く、結晶水含有物であっても良い
。これらのヘテロポリ酸は単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でヘテロポリ酸以外の他の触媒を併用してもよい。
【0013】
また、ヘテロポリ酸は、触媒担体に担持した形態で、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体として用いることもできる。上記触媒担体としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、活性炭などが好ましく例示できる。本発明では触媒担体として酸化ケイ素を用いることがより好ましい。また、上記触媒担体を複数種用いることもできる。なお、ヘテロポリ酸はその分子サイズが大きいため、安定な担体に物理的に固定して使用する場合が多く、後述の実施例でもヘテロポリ酸−触媒担体複合体として用いているが、ヘテロポリ酸自体の触媒活性は、触媒担体の有無に左右されるものではなく、ヘテロポリ酸を担体に担持させることなく使用しても、同様の効果を奏する。
【0014】
上記ヘテロポリ酸−触媒担体複合体の具体例は、ケイタングステン酸−酸化アルミニウム複合体、ケイタングステン酸−酸化ケイ素複合体、ケイタングステン酸−活性炭複合体、ケイモリブデン酸−酸化アルミニウム複合体、ケイモリブデン酸−酸化ケイ素複合体、ケイモリブデン酸−活性炭複合体、リンタングステン酸−酸化アルミニウム複合体、リンタングステン酸−酸化ケイ素複合体、リンタングステン酸−活性炭複合体、リンモリブデン酸−酸化アルミニウム複合体、リンモリブデン酸−酸化ケイ素複合体、リンモリブデン酸−活性炭複合体などが挙げられる。好ましくは、ケイタングステン酸−酸化アルミニウム複合体、ケイタングステン酸−酸化ケイ素複合体、ケイタングステン酸−活性炭複合体、ケイモリブデン酸−酸化ケイ素複合体、リンタングステン酸−酸化ケイ素複合体、リンモリブデン酸−酸化ケイ素複合体であり、より好ましくはケイタングステン酸−酸化ケイ素複合体である。
【0015】
上記ヘテロポリ酸は市販品あるいは公知の方法にて調合したもの等、いずれの形態のものでも触媒として使用することが可能である。同様に上記ヘテロポリ酸−触媒担体複合体についても市販品、市販品を還元したもの、当該ヘテロポリ酸の市販品あるいは公知の方法にて調合したものなどを触媒担体に担持させたもの等、いずれの形態のものでも触媒として使用することが可能である。
【0016】
ヘテロポリ酸−触媒担体複合体における触媒担体へのヘテロポリ酸成分の担持方法は含浸法、共沈法等公知の方法を用いることが可能である。例えば、ケイタングステン酸等のヘテロポリ酸を触媒担体成分である酸化ケイ素に含浸することによって得られる固体を乾燥して得られる複合体が触媒として使用可能である。
【0017】
また、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体における、ヘテロポリ酸:触媒担体の含有比は、重量比で0.5:99.5から、50:50とすることが好ましい。ヘテロポリ酸:触媒担体中のヘテロポリ酸の含有比が0.5から50である場合、十分な触媒活性を得ることができ、触媒活性が短時間で低下することを防げる。
【0018】
本発明の低級飽和アルデヒド製造方法は、隣接する水酸基を持つ1,2−ジオールを上記ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体を触媒として用いることで、1,2−ジオールの二級水酸基のみを選択的に脱離させ、生成したエノール中間体が互変異性によりカルボニル体に異性化することによって低級飽和アルデヒドが生成することが特徴である。
【0019】
本発明の製造方法の原料となる1,2−ジオールの具体例は、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられるが、既に発明者らが見出した技術により、バイオディーゼル燃料を製造す
る際の副生物であるグリセリンから1,2−プロパンジオールを製造することができることから、1,2−プロパンジオールを原料とすることが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法の原料の1,2−ジオールは、原料中に水分を含んでいてもよい。1,2−ジオール中の水分含有量は、0〜95重量%の範囲が好ましく、より収率が高くなり、DXL選択率が低くなることから、20〜95重量%の範囲がより好ましく、50〜95重量%の範囲が更に好ましく、70〜95重量%の範囲が最も好ましい。
【0021】
本発明の低級飽和アルデヒドの製造で使用される反応装置は特に限定されないが、工業的には、原料をガス化して適当な触媒層を通過させておこなう形式の気相流通反応が可能な装置が好ましい。気相流通反応装置を用いる場合、たとえば、気相流通反応装置に所定量の触媒を入れ、これを公知の方法で前処理することにより活性な触媒層を気相流通反応装置内に形成させる。ここに、原料の1,2−ジオールをガス化し、供給することにより低級飽和アルデヒドを製造することが可能である。
【0022】
また、上記触媒の前処理は、触媒層を活性化させることができる公知の方法を用いることができ、例えば、窒素気流中、200℃で1時間程度熱処理を行う等により、触媒層を活性化させることが挙げられる。
【0023】
また、本発明の製造方法で得られる低級飽和アルデヒドとしては、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナールなどが挙げられ、特にプロパナールが好ましい。
【0024】
本発明の低級飽和アルデヒド製造方法の反応温度は、140℃から300℃の温度範囲、すなわち、1,2−ジオールが気相状態として存在する温度が好適である。反応を十分に進行させるためには140℃以上が好ましく、生成物選択率を良好に保つためには300℃以下が好ましい。より好ましい温度範囲としては160℃から240℃の範囲であり、より収率が高くなることから、180℃から240℃の範囲が更に好ましく、200℃から220℃の範囲が最も好ましい。
【0025】
本発明に用いる触媒の量及び低級飽和アルデヒド製造方法の反応時間は、触媒重量に対する単位時間当たりの原料フィード重量(WHSV:Weight Hourly Space Velocity;単位、h-1)で代表され、WHSV値で、0.1から20h-1の範囲で利用可能であり、触媒の寿命及び収率の観点から好ましくはWHSV値で、0.5から7h-1の範囲であり、更に好ましくはWHSV値で、1から6h-1の範囲である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例、比較例に用いた固定床常圧気相流通反応装置は内径17mm、全長300mmの反応器を用いた。該反応器は、その上端にキャリアガス導入口と原料流入口があり下端にガス抜け口を有する反応粗液捕集容器(冷却)を有するものである。捕集容器に捕集された反応粗液は、ガスクロマトグラフィーにて測定し、検量線補正後、1,2−プロパンジオールなどの原料の残量、プロパナールなどの生成物の収量を決定し、この値から転化率(モル%)、選択率(モル%)及び収率(モル%)を求めた。
【0028】
<実施例1>
(触媒の調製)
シリカ(富士シリシア化学製、キャリアクトQ10)に公知の含浸法にて、30重量%のヘテロポリ酸(リンタングステン酸またはケイタングステン酸、共に和光純薬製 特級
試薬)を担持し、シリカ担持リンタングステン酸及びシリカ担持ケイタングステン酸をそれぞれ調製した。これらの触媒におけるリンタングステン酸またはケイタングステン酸の担持量はそれぞれ30重量%であった。
【0029】
(ヘテロポリ酸触媒を用いたプロパナールの製造)
上記調製した各触媒0.3gを固定床常圧気相流通反応装置内に設置した。その後、窒素気流中200℃に触媒層を加熱し、1時間前処理を施した。前処理後、固定床常圧気相流通反応装置の上部からキャリアガスとして窒素を30ml/minの流速で流し、水を含まない1,2−プロパンジオールを1.7ml/hにて窒素と共に供給して気化させて触媒層へ供給し反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率およびプロパナール収率を表1に示す。
【0030】
【表1】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0031】
ヘテロポリ酸を触媒とすると1,2−プロパンジオール転化率が高く、ケイタングステン酸を触媒とすると、1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率共に高いことがわかる。特にケイタングステン酸を触媒とした場合にはプロパナール収率は65%を超え、非常に効率の良い反応であることがわかる。更に、生成したアルデヒドがジオールと反応して生成する副生物であるDXLの選択率も非常に低いこともわかる。
【0032】
<実施例2>
(原料中の水分の影響)
原料に含水量の異なる1,2−プロパンジオールを用い、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸とした以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率及びプロパナール収率を表2に示す。
【0033】
【表2】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−
メチル−1,3−ジオキソラン
【0034】
原料1,2−プロパンジオール中の水分量は多い方が、よりプロパナール選択率が良好であり、DXL選択率が低いことがわかる。
【0035】
<実施例3>
(触媒層温度の影響)
原料1,2−プロパンジオール中の水分量を70重量%とし、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸とし、触媒層温度を変えて実験を行った以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率及びプロパナール収率を表3に示す
【0036】
【表3】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0037】
160℃以上、特に180℃から240℃の温度範囲で良好なプロパナール選択率を有し、DXL選択率が低いことがわかる。
【0038】
<実施例4>
(触媒量の影響)
原料1,2−プロパンジオール中の水分量を70重量%とし、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸とし、触媒量を変えた以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率及びプロパナール収率を表4に示す。
【0039】
【表4】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0040】
触媒量0.3から0.9gの範囲で1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率ともに良好な値を得ることが出来、DXL選択率も低いことがわかった。
【0041】
<実施例5>
(1,2−ブタンジオールからのブタナールの製造)
原料に水を含まない1,2−ブタンジオールを用い、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸としたこと以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−ブタンジオール転化率、ブタナール選択率、ブタナール収率を表5に示す。
【0042】
【表5】
12BD:1,2−ブタンジオール、BA:ブタナール
【0043】
1,2−ブタンジオールからも対応する低級飽和アルデヒドであるブタナールが選択的に生成し、非常に高い収率で得られることがわかる。
【0044】
<実施例6>
(1,2−ブタンジオール水溶液からのブタナールの製造)
原料に1,2−ブタンジオール水溶液(含水率70重量%)を用い、触媒をシリカ担持ケイタングステン酸としたこと以外は実施例1に準じて反応を行った。1,2−ブタンジオール転化率、ブタナール選択率、ブタナール収率を表6に示す。
【0045】
【表6】
12BD:1,2−ブタンジオール、BA:ブタナール
【0046】
1,2−ブタンジオールを用いた反応においても、水溶液の方が良好な選択率、高い収率を示すことがわかる。
【0047】
<比較例1>
(種々の酸触媒を用いたプロパナールの製造)
触媒に以下の表7に示す市販の固体酸触媒を用いた以外は実施例1に準じて反応を行った。触媒種の相違による1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率、DXL選択率およびプロパナール収率を表7に示す。
【0048】
【表7】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0049】
1,2−ジオールを原料とするアルデヒドの生成反応は、一般的な固体酸触媒を用いても反応しないか、あるいは反応しても目的生成物の選択率が低いことがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体からなる触媒を用いる、1,2−ジオールから低級飽和アルデヒドを製造する方法。
【請求項2】
前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸及びリンモリブデン酸から選ばれるいずれかを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ヘテロポリ酸を担持する触媒担体が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び活性炭から選ばれるいずれかを含む請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記ヘテロポリ酸を担持する触媒担体が、酸化ケイ素である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記1,2−ジオールが、1,2−プロパンジオールである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記低級飽和アルデヒドが、プロパナールである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項1】
ヘテロポリ酸あるいは、ヘテロポリ酸−触媒担体複合体からなる触媒を用いる、1,2−ジオールから低級飽和アルデヒドを製造する方法。
【請求項2】
前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸及びリンモリブデン酸から選ばれるいずれかを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ヘテロポリ酸を担持する触媒担体が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び活性炭から選ばれるいずれかを含む請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記ヘテロポリ酸を担持する触媒担体が、酸化ケイ素である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記1,2−ジオールが、1,2−プロパンジオールである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記低級飽和アルデヒドが、プロパナールである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【公開番号】特開2010−180156(P2010−180156A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24712(P2009−24712)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 平成20年度 千葉大学大学院工学研究科 共生応用化学専攻 修士論文発表会 講演要旨集 発行者名 国立大学法人 千葉大学 要旨集発行日 平成21年1月26日
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 平成20年度 千葉大学大学院工学研究科 共生応用化学専攻 修士論文発表会 講演要旨集 発行者名 国立大学法人 千葉大学 要旨集発行日 平成21年1月26日
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】
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