説明

1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法

【課題】新規な1,2,4−オキサジアゾール誘導体ならびに硝酸鉄(III)を利用するニトリルから該誘導体を高収率でかつ廃棄物を排出せずに製造する新規な方法。
【解決手段】
式(2)
【化2】


[式中、R2は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。]で表されるニトリルとアセトンまたはアセトフェノンとを、硝酸鉄(III)の存在下で反応させることにより、
式(1)
【化3】


[式中、R1はメチル基またはフェニル基を示す。R2は前記と同じ意味である。]で表される新規な1,2,4−オキサジアゾール誘導体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1,2,4−オキサジアゾール誘導体およびその製造方法に関し、特に、新規化合物である1,2,4−オキサジアゾール誘導体に関し、さらにニトリルおよび硝酸鉄(III)を利用することにより、高収率で、かつ廃棄物を排出しない、1,2,4−オキサジアゾール誘導体の新規な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1,2,4−オキサジアゾール誘導体骨格をもった類似化合物は、抗キネトプラスチド活性、抗炎症作用等を示し、β3アドレナリン受容体作動薬、ムスカリン作動薬、セロトニン拮抗薬や非ステロイド系抗炎症薬として知られている。
【0003】
従来、1,2,4−オキサジアゾール誘導体は、アミドキシムにニトリルオキサイドを付加環化することにより、またアシル化されたアミドキシムをNaH、NaOEtまたはピリジンのような塩基で処理することにより、さらには活性化されたカルボン酸誘導体、例えばエステルまたは酸クロライドによりアミドキシムをアシル化し、次いで環化脱水することにより製造されている(例えば、非特許文献1〜3参照。)。
【0004】
また、硝酸セリウムアンモニウム(CAN)を用いて3−アセチルおよび3−ベンゾイルイソオキサゾール誘導体を1段階で製造する方法が知られている(例えば、非特許文献4参照。)。
【0005】
また、アルケンまたはアルキンといった炭素−炭素不飽和二重結合あるいは三重結合をもつ化合物に、硝酸セリウム(IV)アンモニウム(以下、CAN(IV)と略す。)を、アセトン中還流条件下またはアセトフェノン中80℃において、作用させると、溶媒分子のニトロ化、ニトリルオキシドの生成を経由し1,3−双極子環化付加反応によりイソオキサゾール誘導体が1段階で高収率にて得られること、ならびに、CAN(IV)の代わりに硝酸セリウム(III)アンモニウム(以下、CAN(III)と略す。)とギ酸を用いても同様の反応が進行し、副生成物の生成を抑え、さらに収率が向上することなどが知られている(例えば、非特許文献5参照。)。
【0006】
さらに、非毒性の硝酸鉄(III)を用いる反応により同様のイソオキサゾール誘導体が得られることが知られている(例えば、非特許文献6、7参照。)。
【非特許文献1】Quardrelli,P.;Invernizzi,A.G.;Falzoni,M.;Caramella,P.Tetrahedron1997,53,1787.
【非特許文献2】Korbonits,D.;Horvath,K.Heterocycles1994,37,2051.
【非特許文献3】Mathvink,R.J.;Barrtta,A.M.;Candelore,M.R.;Cascieri,M.A.;Deng,L.;Tota,L.;Strader,C.D.;Wyvratt,M.J.;Fisher,M.H.;Weber,A.E.Bioorg.Med.Chem.Lett.1999.9,1869.
【非特許文献4】Itoh,K.;Takahashi,S.;Ueki,T.;Sugiyama,T.;Takahashi,T.T.;Horiuchi,C.A.Tetrahedron Lett.2002,43,7035.
【非特許文献5】Itoh,K.;Horiuchi,C.A.Tetrahedron2004,60,1671.
【非特許文献6】Tegeler,J.T.;Diamond,C.J.J.Heterocycl.Chem.1987,24,697.
【非特許文献7】Diaz−Ortiz,A.;Diez−Barra,E.;Hoz,A.D.L.;Moreno,A.;Gomez−Escalonilla,M.J.;Loupy,A.Heterocycles 1996,43,1021.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1〜3に記載される方法は、複数の工程を必要とするため煩雑であり経済的でなく、また目的化合物の収率が良くないという問題があった。
【0008】
また、非特許文献4、5に記載されるようなCAN(IV)あるいはCAN(III)などを用いる合成法は、環境汚染につながるセリウムを含む有毒な廃棄物等が排出され、廃棄物処理などコスト面で高くつき、また収率の点でも必ずしも十分ではないなど数々の問題があった。
【0009】
このような状況に鑑み、本発明者らは、非毒性の硝酸鉄(III)を用いて1,2,4−オキサジアゾール誘導体が得られるかどうかの検討を行った。その結果、出発基質としてアルキンの代わりにニトリルを用いることにより、3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体および3−ベンゾイル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体が1段階で製造することができることを見出した。
【0010】
この発明の目的は、硝酸鉄(III)を利用するニトリルからの新規な1,2,4−オキサジアゾール誘導体を提供することにある。
【0011】
また、この発明の目的は、高収率で、かつ廃棄物を排出しない、ニトリルを出発化合物として硝酸鉄(III)を利用する1,2,4−オキサジアゾール誘導体の新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、前記課題を解決するために、硝酸鉄(III)を利用するニトリルからの新規な1,2,4−オキサジアゾール誘導体、ならびに高収率で、かつ廃棄物を排出しない、ニトリルを出発化合物として硝酸鉄(III)を利用する1,2,4−オキサジアゾール誘導体の新規な製造方法において、以下に述べる構成を有することを特徴とする。
【0013】
(1)式(1)
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、R1はメチル基またはフェニル基を示す。R2は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。]で表される1,2,4−オキサジアゾール誘導体。
【0016】
(2)前記1,2,4−オキサジアゾール誘導体が、3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体または3−ベンゾイル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体である前項(1)に記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体。
【0017】
(3)前記1,2,4−オキサジアゾール誘導体が、3−アセチル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾールまたは3−ベンゾイル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾールである前項(1)または(2)に記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体。
【0018】
(4)式(2)
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、R2は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。]で表されるニトリルとアセトンまたはアセトフェノンとを、硝酸鉄(III)の存在下で反応させる、
式(1)
【0021】
【化6】

【0022】
[式中、R1はメチル基またはフェニル基を示す。R2は前記と同じ意味である。]で表される1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法。
【0023】
(5)前記ニトリルが、アセトニトリル、プロピオニトリルまたはブチロニトリルである前項(4)に記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法。
【0024】
(6)前記1,2,4−オキサジアゾール誘導体が、3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体または3−ベンゾイル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体であることを特徴とする前項(4)または(5)に記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法。
【0025】
(7)前記1,2,4−オキサジアゾール誘導体が、3−アセチル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾールまたは3−ベンゾイル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾールである前項(4)〜(6)のいずれかに記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
請求項1〜3に記載される発明の構成によれば、β3アドレナリン受容体作動薬、ムスカリン作動薬、セロトニン拮抗薬や非ステロイド系抗炎症薬としての薬理作用が期待される有用な新規構造の1,2,4−オキサジアゾール誘導体を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
請求項4に記載される発明の構成によれば、反応において用いる硝酸鉄(III)は安価で環境に順応した金属であり、処理もしやすい優れた試薬であることから、環境にやさしい方法により、1,2,4−オキサジアゾール誘導体が得られるという効果を奏する。また、1段階で1,2,4−オキサジアゾール環の合成ができる。さらに、アセトンよりアセトフェノンを用いた場合にはより高収率で目的化合物を得ることができる。また、廃棄物処理なく、高収率で目的化合物を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の1,2,4−オキサジアゾール誘導体およびその製造方法の各構成要件について詳細に説明する。
【0029】
この発明の新規な1,2,4−オキサジアゾール誘導体は、前記式(1)で表される。
【0030】
前記式(1)において、R1はメチル基またはフェニル基を示す。R2は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。
【0031】
この発明において用いることができる、R2の置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数1〜9のアルキル基が挙げられる。
【0032】
該アルキル基の具体例としては、メチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、ヨードメチル基、ブロモメチル基、エチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1,1−ジエチルペンチル基、1,4−ジエチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1−エチル−2,2−ジメチルプロピル基、n−オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1,1−ジメチルへキシル基、1−エチル−1−メチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、n−ノニル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、1−メチルノニル基、1,1−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ウンデカニル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基などが挙げられる。
【0033】
前記置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよいメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチルなどのアルキル基、置換されていてもよいシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、置換されていてもよいメチルチオ、置換されていてもよいフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどのナフチル基、置換されていてもよい1−ピロリジル、ピペリジン、モルホリノなどの非芳香族複素環基、置換されていてもよい2−フリル、3−フリル、2−チエニル、2−ピリジル、1−ピロリル、1−イミダゾイル、1−ピラゾリルなどの芳香族複素環基、置換されていてもよいメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、ノニルオキシなどのアルコキシル基、置換されていてもよいカルボキシル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイルなどのアシル基、置換されていてもよいメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、フェニルアミノなどのアミノ基、置換されていてもよいメトキシ、エトキシ、プロポシキ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシヘキシルオキシなどのヒドロキシル基、エチルチオ、シクロブチルチオ、フェニルチオ、2−ピリジンチオなどのチオール基、カルボニル、エトキシカルボニルなどのエステル化もしくはアミド化されていてもよいカルボキシル基などが挙げられる。
【0034】
また、この発明の製造方法によれば、前記式(2)で表されるニトリルとアセトンまたはアセトフェノンとを、硝酸鉄(III)の存在下で反応させる。
【0035】
前記式(2)において、R2は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。R2の置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数1〜9のアルキル基が挙げられる。該アルキル基の具体例としては、上述した基が用いられ、該置換基も上述した置換基と同一である。
【0036】
この発明において用い得る反応温度は、ニトリルの種類などに応じて適当に選択することができるが、好ましくは50〜150℃であり、特に好ましくは約56〜80℃であるが、通常、ケトンとしてアセトンを用いる場合には、アセトンの還流下で行うことが好ましく、また、アセトフェノンを用いる場合には、80℃で行うことが好ましい。反応温度が上記温度範囲未満でも上記温度範囲を超えても、目的の1,2,4−オキサジアゾール誘導体を高収率に得ることは難しく好ましくない。
【0037】
この反応に用いられる圧力は、常圧または公知の任意の加圧下で行うことができる。
【0038】
この発明において用いうる反応時間は、反応温度及び圧力に応じて定められるが、例えば、約10〜30時間が好ましく、18〜22時間がさらに好ましい。反応時間が10時間未満でも、また30時間を超えても、収率が悪化するので好ましくない。
【0039】
この発明において用いられるニトリルの使用量は、硝酸鉄(III)1.0モル当量に対して好ましくは10.0〜50.0モル当量である。上記使用量が10.0〜50.0モル当量の範囲外では収率が悪化するので好ましくない。
【0040】
また、ケトンの使用量は、硝酸鉄(III)1.0モル当量に対して好ましくは2.5〜10.0モル当量である。上記使用量が2.5〜10.0モル当量の範囲外では収率が悪化するので好ましくない。
【0041】
この発明において反応に用い得るケトンとしては、アセトン又はアセトフェノンであるが、アセトンよりもアセトフェノンを用いた方が高収率で目的の1,2,4−オキサジアゾール誘導体を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げてこの発明の実施態様をさらに具体的に説明するが、この発明はその要旨を超えない限りこの実施例に記載される範囲に限定されるものではない。
【0043】
なお、この発明の実施例において使用したニトリル、硝酸鉄(III)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸アンモニウム、アセトンおよびアセトフェノンは、すべて市販されているものを用いた。
【0044】
また、この発明の生成物である1,2,4−オキサジアゾール誘導体の構造ならびに物性などの測定には下記の測定装置を使用した。
【0045】
IR:FT−IR−230スペクトロメーター(日本分光製)
1Hおよび13CNMR:JEOL GSX400(日本電子製)
GC:島津ガスクロマトグラフGC−14A(島津製作所製)
GC−MS:GCMS−QP5050(島津製作所製)
HRMS:JEOL JMS−01SG−2
GCL:HP5890(Hewlett Packerd社製)
【0046】
(例1〜14)
<アセトニトリル(1)およびアセトフェノンと硝酸鉄(III)との反応条件の検討>
下記化7で示される反応式において、アセトニトリル(1)およびアセトフェノンを硝酸鉄(III)と80℃にて反応させることにより、3−ベンゾイル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール(1a)を得た。該化合物(1a)は、IRスペクトルにおいて1713,1681および1581cm-1に吸収を示した。1HNMRスペクトルは、δ=2.71(3H,CH3)に吸収を示した。13CNMRは、公知のカルボニル炭素とそれぞれの1,2,4−オキサジアゾール環の炭素に基づくδ=182.5,177.3および165.4にシグナルを示した。したがって、化合物1aは3−ベンゾイル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾールであることを確認した。
【0047】
これらの反応条件を下記表1に示す。
【0048】
下記表1の例1〜5に示されるように、その反応において、アセトニトリル(1)は溶媒として使用された。その理由は、アセトニトリル(1)は1,3−双極環化付加において反応性が低いからである。そして、その生成物の収率は、反応が硝酸鉄(III)に対して過剰のケトンとニトリルを必要とするので、硝酸鉄(III)の使用量に基づいている。
【0049】
下記表1の例9にみるように、アセトフェノン(5.0mmol)、アセトニトリル(1;4.5mL)、および硝酸鉄(III)(1.0mmol)が使用される場合、これに対応する1,2,4−オキサジアゾール誘導体1aを95%の高収率で得られたことが分かる。
【0050】
【化7】

【0051】
なお、上記化7中の次の表記はそれぞれ下記の基を表す。
【0052】
Me:メチル基
Et:エチル基
n−Pr:ノルマルプロピル基
i−Pr:イソプロピル基
Ph:フェニル基
【0053】
【表1】

【0054】
(例15〜24)
<硝酸鉄(III)を利用したケトンと種々のニトリルとの反応>
上記反応条件の検討に基づき、上記化7で示される反応式において下記表2の例15〜17に示すように、種々のニトリル2〜4を用いて反応を実施した。その結果、対応する3−ベンゾイル−1,2,4−オキサジアゾール2a〜4aが44〜95%の収率で得られた。
【0055】
また、下記表2の例18〜21に示すように、アセトンを用いた反応から3−アセチル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール(1b)を得た。該1bのIRスペクトルは、1731,1699および1601cm-1に吸収を示した。1HNMRスペクトルはδ=2.70(3H,CH3)に吸収を示した。.13CNMRスペクトルは、公知のカルボニル炭素とそれぞれの1,2,4−オキサジアゾール環の炭素に基づくδ=188.8,178.5および165.8ppmにシグナルを示した。
【0056】
下記表2の例19にみるように、アセトン(5.0mmol)およびアセトニトリル(1;4.5mL)を、硝酸鉄(III)(1.0mmol)と還流下反応させることにより、対応する1,2,4−オキサジアゾール誘導体1bを収率61%で得た。
【0057】
同様にして、下記表2の例22〜24にみるように、これらの反応条件の下で、ニトリル2〜4から3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール2b〜4bが25〜62%の収率で得られた。
【0058】
その結果、種々のニトリルおよびアセトフェノンからの3−ベンゾイル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体1a〜4aの製造は、3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体1b〜4bの製造の場合に比べて、より順調に進行すると考えられる。
【0059】
【表2】

【0060】
(例25〜28)
<アセトフェノンとアセトニトリルとの反応への種々の金属硝酸塩の適用>
下記表3に示されるように、反応機構を検討するために、アセトフェノンおよびアセトニトリル(1)と種々の金属硝酸塩との反応が実施された。
【0061】
下記表3の例25に示されるように、CAN(IV)を使用した場合、対応する1,2,4−オキサジアゾール誘導体1aは収率78%で得られたが、CAN(IV)を使用する方法は、有毒金属セリウムを含む廃棄物が発生するので、環境汚染の点から好ましくない。
【0062】
しかしながら、下記表3の例26〜28に示されるように、NaNO3、Mg(NO32およびNH4NO3を用いる方法では反応は進行しなかった。
【0063】
先頃、本発明者は、CAN(IV)がケトン類のエノール化を促進することを報告した。その報告から、下記化8に示す反応機構を提案した。この反応機構によれば、ケトン類のエノール化は、Fe(NO33またはCAN(IV)により促進され、その後、ケトン類はニトロ化された。ニトリルオキサイドの形成は、酸触媒により、α−ニトロケトンの脱水素化を生じ、3−ベンゾイル−および3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体が1,3−双極環化付加により得られた。それ故、生成物の収率は、ニトリルオキサイドの安定性ならびに1,3−双極環化付加におけるニトリルの反応性に依存した。
【0064】
結論として、非毒性でかつ低費用の硝酸鉄(III)を利用するこの発明の方法は、3−ベンゾイル−および3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造のために簡便であり、高収率であり、かつクリーンである。
【0065】
【化8】

【0066】
【表3】

【0067】
次に、この発明において用いられた製造方法ならびに得られた生成物1a〜4aおよび1b〜4bのスペクトルデータを示す。
【0068】
<製造方法1>
<アセトニトリル(1)およびアセトフェノンと硝酸鉄(III)との反応>
アセトニトリル(1;4.5mL)、アセトフェノン(0.6008g、5.0mmol)および硝酸鉄(III)(0.4040g、1.0mmol)の混合液を80℃において18時間攪拌しながら反応させる。反応終了後、反応混合液を濾過し、反応混合液を酢酸エチル(50ml)にて抽出した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×2.0mL)、飽和食塩水(2×2.0mL)、蒸留水(2×2.0mL)の順で洗浄した。溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸留にて残留アセトフェノンを除去し減圧下濃縮した。得られた淡黄色の油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。ヘキサン−酢酸エチル(4:1)によって単離を行った結果、3−ベンゾイル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール(1a)の淡黄色油状物(0.1504g)を得た。
【0069】
<スペクトルデータ1>
3−ベンゾイル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール(1a):淡黄色油状物
IR(NaCl):1713,1681,1581cm-1
1HNMR(CDCl3):δ=8.25−8.27(m,2H),7.50−7.68(m,3H),2.71(s,3H).
13CNMR(CDCl3):δ=182.5,177.3,165.4,134.7,134.3,130.3,128.4,12.0.
HRMS:m/z[M]calcd for C10822:188.0586;found[M]+:188.0583

3−ベンゾイル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール(2a):淡黄色油状物
IR(NaCl):1711,1679,1577cm1-
1HNMR(CDCl3):δ=8.25−8.30(m,2H),7.46−7.61(m,3H),3.06(q,J=7.68Hz,2H),1.49(t,J=7.68Hz,3H).
13CNMR(CDCl3):δ=183.0,165.6,154.3,135.3,134.6,130.6,128.7,20.3,10.7.
HRMS:m/z[M]calcd for C111022:202.0742;found[M]+:202.0749.

3−ベンゾイル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾール(3a):淡黄色油状物
IR(NaCl):1712,1679,1580cm-1
1HNMR(CDCl3):δ=8.28−8.33(m,2H),7.46−7.62(m,3H),3.01(t,J=7.56Hz,2H),1.90−1.99(m,2H),1.07(t,J=7.56Hz,3H).
13CNMR(CDCl3):δ=183.0,171.3,165.6,135.1,134.6,130.6,128.7,28.4,20.1,13.6.
HRMS:m/z[M]calcd for C121222:216.0899;found[M]+:216.0898.

3−ベンゾイル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾール(4a):淡黄色油状物
IR(NaCl):1711,1677,1569 cm-1
1HNMR(CDCl3):δ=8.27−8.30(m,2H),7.46−7.61(m,3H),3.34−3.41(m,1H),1.50(d,J=6.83Hz,6H).
13CNMR(CDCl3):δ=183.1,171.1,165.5,135.2,134.5,130.6,128.7,27.6,20.1.
HRMS:m/z[M]calcd for C121222:216.0899;found[M]+:216.0892.
【0070】
<製造方法2>
<アセトニトリル(1)およびアセトンと硝酸鉄(III)との反応>
アセトニトリル(1;4.5mL)、アセトン(0.2904g、5.0mmol)および硝酸鉄(III)(0.4040g、1.0mmol)の混合液を還流下16時間攪拌しながら反応させる。反応終了後、反応混合液を濾過し、反応混合液を酢酸エチル(50ml)にて抽出した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×2.0mL)、飽和食塩水(2×2.0mL)、蒸留水(2×2.0mL)の順で洗浄した。溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸留にて残留アセトンを除去し減圧下濃縮した。得られた淡黄色の油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。ヘキサン−酢酸エチル(4:1)によって単離を行った結果、3−アセチル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール(1b)の淡黄色油状物(0.0504g)を得た。
【0071】
<スペクトルデータ2>
3−アセチル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール(1b):淡黄色油状物
IR(NaCl):1731,1699,1601cm-1
1HNMR(CDCl3):δ=2.70(s,6H).
13CNMR(CDCl3):δ=188.8,178.5,165.8,27.8,12.4.
HRMS:m/z[M]calcd for C5622:126.0429;found[M]+:126.0433.

3−アセチル−5−エチル7−1,2,4−オキサジアゾール(2b):淡黄色油状物
IR(NaCl):1738,1688,1599cm-1
1HNMR(CDCl3):δ=3.02(q,J=7.56Hz,2H),2.70(s,3H),1.45(t,J=7.56Hz,3H).
13CNMR(CDCl3):δ=189.1,182.7,165.7,27.8,20.3,10.6.
HRMS:m/z[M]calcd for C6822:140.0586;found[M]+:140.0587.

3−アセチル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾール(3b):淡黄色油状物
IR(NaCl):1733,1691,1589cm-1
1HNMR(CDCl3):δ=2.96(t,J=7.44Hz,2H),2.70(s,3H),1.86−1.95(m,2H),1.04 t,J=7.44Hz,3H).
13CNMR(CDCl3):δ=189.0,181.7,165.8,28.4,27.9,20.1,13.6.
HRMS:m/z[M]calcd for C71022:154.0742:found[M]+:154.0733.

3−アセチル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾール(4b):淡黄色油状物
IR(NaCl):1732,1694,1593 cm-1
1HNMR(CDCl3):δ=3.28−3.35(m,1H),2.70(s,3H), 1.45(d,J=6.83Hz,6H).
13CNMR(CDCl3):δ=189.1,185.7,165.8,27.9,27.6,20.1.
HRMS:m/z[M]calcd for C71022:154.0742;found[M]+:154.0733.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

[式中、R1はメチル基またはフェニル基を示す。R2は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。]で表されることを特徴とする1,2,4−オキサジアゾール誘導体。
【請求項2】
前記1,2,4−オキサジアゾール誘導体が、3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体または3−ベンゾイル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体であることを特徴とする請求項1に記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体。
【請求項3】
前記1,2,4−オキサジアゾール誘導体が、3−アセチル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾールまたは3−ベンゾイル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾールであることを特徴とする請求項1または2に記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体。
【請求項4】
式(2)
【化2】

[式中、R2は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。]で表されるニトリルとアセトンまたはアセトフェノンとを、硝酸鉄(III)の存在下で反応させることを特徴とする、
式(1)
【化3】

[式中、R1はメチル基またはフェニル基を示す。R2は前記と同じ意味である。]で表される1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記ニトリルが、アセトニトリル、プロピオニトリルまたはブチロニトリルであることを特徴とする請求項4に記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法。
【請求項6】
前記1,2,4−オキサジアゾール誘導体が、3−アセチル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体または3−ベンゾイル−1,2,4−オキサジアゾール誘導体であることを特徴とする請求項4または5に記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法。
【請求項7】
前記1,2,4−オキサジアゾール誘導体が、3−アセチル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾール、3−アセチル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−エチル−1,2,4−オキサジアゾール、3−ベンゾイル−5−プロピル−1,2,4−オキサジアゾールまたは3−ベンゾイル−5−イソプロピル−1,2,4−オキサジアゾールであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載される1,2,4−オキサジアゾール誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2008−63223(P2008−63223A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142692(P2005−142692)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【特許番号】特許第3776112号(P3776112)
【特許公報発行日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(300071579)学校法人立教学院 (42)
【Fターム(参考)】