説明

1,2,4−トリアゾール化合物及びグアニジン誘導体の合成方法

【課題】通常のアミンをはじめ、ジイソプロピルアミンのような立体障害が予想されるかさ高い第2級アミンへも、グアニジン骨格を導入することができる1,2,4−トリアゾール化合物の提供。並びに、この1,2,4−トリアゾール化合物を原料とするグアニジン誘導体の合成方法の提供。
【解決手段】化学式(I)で示される1,2,4−トリアゾール化合物。


(式中、RおよびRは、同一または異なって、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、ベンゾイル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基またはパラトルエンスルホニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な1,2,4−トリアゾール化合物及びこれを原料としたグアニジン誘導体の合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1級アミンまたは第2級アミンにグアニジン骨格を導入する方法として、非特許文献1〜2には、各々反応スキーム(A)〜(B)で示される方法が開示されている。
尚、各反応スキーム中、置換基Bocは、tert−ブトキシカルボニル基を表す。
【0003】
反応スキーム(A):
【0004】
【化1】

【0005】
反応スキーム(B):
【0006】
【化2】

【0007】
前記の反応スキーム(A)で示される合成方法においては、速やかに反応が進行するものの、第1級アミンの代わりにジイソプロピルアミン等のかさ高い置換基を有する第2級アミンを使用した場合には、反応が進行しないという難点があった。また、反応スキーム(B)で示される合成方法においては、かさ高い第2級アミンの場合でも反応が進行するものの、触媒として環境負荷の大きい塩化第二水銀を用いなければならないという問題点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Synthesis,第6号,579〜582頁(1994)
【非特許文献2】Tetrahedron Lett.,第34巻,第48号,7677〜7680頁(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、通常のアミンをはじめ、ジイソプロピルアミンのような立体障害が予想されるかさ高い第2級アミンへも、グアニジン骨格を導入することができる1,2,4−トリアゾール化合物を提供することを目的とする。また、この1,2,4−トリアゾール化合物を原料とするグアニジン誘導体の合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、化3の化学式(I)で示される新規な1,2,4−トリアゾール化合物をグアニジン骨格を導入するための試剤として使用することにより、所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完遂するに至ったものである。
【0011】
【化3】

(式中、RおよびRは、同一または異なって、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、ベンゾイル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基またはパラトルエンスルホニル基を表す。)
【0012】
即ち、第1の発明は、化学式(I)で示される1,2,4−トリアゾール化合物である。
第2の発明は、第1の発明の1,2,4−トリアゾール化合物と、第1級アミンまたは第2級アミンを反応させることを特徴とするグアニジン誘導体の合成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の1,2,4−トリアゾール化合物は、一般的な第1級アミン、第2級アミンはもちろん、立体障害が予想されるかさ高いアミンに対しても、グアニジン骨格を導入するための試剤として有用である。また、本発明のグアニジン誘導体の合成方法は、医農薬中間体や香料、液晶等の原料の合成において有用なものであり、また、有害な触媒を使用しないため、環境保護の観点においても有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、前記の化学式(I)で示される1,2,4−トリアゾール化合物について説明する。
【0015】
本発明の1,2,4−トリアゾール化合物は、
(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
(ベンジロキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ベンジルエステル、
N,N’−ジベンジル−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
N,N’−ビス−(4−メトキシ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
N,N’−ジベンゾイル−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
[(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
(アリルオキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 アリルエステル、
N,N’−ビス−(パラトルエンスルホニル)−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステル、
(ベンジルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
[(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
(ベンゾイルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
(アリルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
[(トルエン−4−スルホニルアミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
(ベンジロキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
(ベンジルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 ベンジルエステル、
[(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン]−カルバミン酸 ベンジルエステル、
(ベンゾイルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 ベンジルエステル、
(ベンジロキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
(アリルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 ベンジルエステル、
[(トルエン−4−スルホニルアミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン]−カルバミン酸 ベンジルエステル、
(ベンジルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
(ベンジルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステル、
N−ベンジル−N’−(4−メトキシ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
N−(ベンジルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−ベンズアミジン、
(ベンジルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
N−アリル−N’−ベンジル−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
N−(ベンジルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
[(4−メトキシ−ベンジルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
[(4−メトキシ−ベンジルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−カルバミン酸 ベンジルエステル、
N−ベンジル−N’−(4−メトキシ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
N−[(4−メトキシ−ベンジルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−ベンズアミジン、
[(4−メトキシ−ベンジルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
N−アリル−N’−(4−メトキシ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
N−[(4−メトキシ−ベンジルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−ベンゼンスルホンアミド、
(ベンゾイルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
(ベンゾイルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステル、
N−(ベンジルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−ベンズアミド、
N−[(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン]−ベンズアミド、
(ベンゾイルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
N−(アリルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−ベンズアミド、
N−(ベンゼンスルホニルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−ベンズアミド、
[(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−イル−メチル]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
[(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−カルバミン酸 ベンジルエステル、
(ベンジルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
[(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン]−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
(ベンゾイルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
(アリルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
(ベンゼンスルホニルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
(アリルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
(アリルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステル、
N−アリル−N’−ベンジル−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
N−アリル−N’−(4−メトキシ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾル−1−カルボキシアミジン、
N−(アリルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−ベンズアミド、
(アリルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
N−(アリルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−ベンゼンスルホンアミド、
[(トルエン−4−スルホニルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル、
[(トルエン−4−スルホニルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−カルバミン酸 ベンジルエステル、
N−(ベンジルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
N−[(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
N−[(トルエン−4−スルホニルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−ベンズアミド、
[(トルエン−4−スルホニルイミノ)−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル]−カルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステル、
N−(アリルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドを包含する。
【0016】
本発明の1,2,4−トリアゾール化合物は、例えば、化4の反応スキーム(C)に示されるように、適宜の反応溶媒および塩基(Base)の存在下、適宜の反応温度および
反応時間にて、[1,2,4]トリアゾール−1−カルボキシアミジン塩酸塩とハロゲン化物または無水物を反応させることにより、一旦、化学式(II)で示される中間体を得て、続いて、適宜の反応溶媒および塩基の存在下、適宜の反応温度および反応時間にて、該中間体とハロゲン化物または無水物を反応させることにより合成することができる。
【0017】
反応スキーム(C):
【0018】
【化4】

(但し、式中のRおよびRは、前記と同様であり、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子を表す。)
【0019】
前記のハロゲン化物としては、ベンジルオキシカルボニルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、パラメトキシベンジルクロライド、パラメトキシベンジルブロマイド、ベンゾイルクロライド、9−フルオレニルメトキシカルボニルクロライド、アリルクロライド、アリルブロマイド、パラトルエンスルホニルクロライド、パラトルエンスルホニルブロマイド等が挙げられる。
【0020】
また、前記の無水物としては、例えば、二炭酸ジ−tert−ブチルが挙げられる。
【0021】
前記の塩基としては、公知のものを制限なく使用することができる。例えば、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムのような無機アルカリ類、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)のような有機塩基類、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシドのような金属アルコキシド化合物等が挙げられる。
【0022】
前記の反応溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば公知のものを制限なく使用することができる。例えば、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)等のアミド類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。なお、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0023】
前記の反応温度は0℃〜還流温度の範囲で、また、前記の反応時間は1〜10時間の範囲で各々適宜設定すればよい。また、反応は、通常大気圧下で行うことができる。
【0024】
以上の反応条件で生成した本発明の1,2,4−トリアゾール化合物は、通常の後処理によって単離することができる。
【0025】
次に、本発明のグアニジン誘導体の合成方法について説明する。
化5の反応スキーム(D)に示されるように、前記の1,2,4−トリアゾール化合物と、第1級アミン(A−NHと表す)または第2級アミン(A−NH−Bと表す)を、反応溶媒の存在下もしくは非存在下、適宜の反応温度および反応時間にて反応させることにより、グアニジン誘導体を合成することができる。
【0026】
反応スキーム(D):
【0027】
【化5】

【0028】
前記の第1級アミンおよび第2級アミンには特に制限はなく、AおよびBは有機基を表す。有機基としては、例えば、(1)置換基を有していてもよいアルキル基、(2)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、(3)置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基や(4)置換基を有していてもよい芳香族複素環基が挙げられる。
【0029】
(1)「置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基(以下、第1のアルキル基と云うことがある)とは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−メチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルプロピル等のC1〜6のアルキル基である。
【0030】
また、(1)「置換基を有していてもよいアルキル基」の置換基とは、例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等のC1〜6のアルコキシ基)、
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、
アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル等のC1〜6のアルキル基、以下、第2のアルキル基と云うことがある)、
アルケニル基(例えば、ビニル、アリル等のC2〜6のアルケニル基)、
アルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル等のC2〜6のアルキニル基)、
芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、スルホニル基、スルホニルアミノ基、アミジノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、
アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のC1〜6のアルコキシカルボニル基)等である。これらの任意の置換基は、第1のアルキル基の置換可能な位置に1〜3個置換していてもよい。
【0031】
(2)「置換基を有していてもよいシクロアルキル基」のシクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル等のC3〜7のシクロアルキル基である。
【0032】
また、(2)「置換基を有していてもよいシクロアルキル基」の置換基は、前述の(1)「置換基を有していてもよいアルキル基」の置換基と同様である。
【0033】
(3)「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の芳香族炭化水素基とは、単環式芳香族炭素環や縮合多環式芳香族炭素環であり、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントリル、アズレニル、フェナントリル、アセナフチレニル等を挙げることができる。
なお、芳香族炭化水素基は、C6〜14であることが好ましく、C6〜10であることがより好ましく、C6であることがさらに好ましい。
【0034】
また、(3)「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の置換基は、前述の(1)「置換基を有していてもよいアルキル基」の置換基と同様である。
【0035】
(4)「置換基を有していてもよい芳香族複素環基」の芳香族複素環基とは、単環式芳香族複素環や縮合多環式芳香族複素環であり、環を構成する原子(環原子)として、酸素原子、硫黄原子および窒素原子等から選ばれたヘテロ原子を少なくとも1個含んでいる。
単環式芳香族複素環としては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、フラザニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル等を挙げることができる。
また、縮合多環式芳香族複素環としては、例えば、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ〔b〕チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンズインダゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2−ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピラニル、1,2−ベンゾイソチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、ブテリジニル、カルバゾリル、α−カルボリニル、β−カルボリニル、γ−カルボリニル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、フェナトリジニル、フェナトロリニル、インドリジニル、ピロロ〔1,2−b〕ピリダジニル、ピラゾロ〔1,5−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,5−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2−b〕ピリダジニル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリミジニル、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−a〕ピリジル、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−b〕ピリダジニル等を挙げることができる。
なお、芳香族複素環基は、C5〜14であることが好ましく、C5〜10であることがより好ましく、C5〜6であることがさらに好ましい。
【0036】
また、(4)「置換基を有していてもよい芳香族複素環基」の置換基は、前述の(1)「置換基を有していてもよいアルキル基」の置換基と同様である。
【0037】
また、第1級アミンまたは第2アミンに対する1,2,4−トリアゾール化合物の使用量(仕込み量)は、所定の反応活性が得られる限り特に制限はないが、第1級アミンまたは第2級アミン1モルに対して、0.2〜10モルの割合、好ましくは0.5〜5モルの割合、より好ましくは0.8〜2モルの割合とすればよい。
【0038】
前記の反応溶媒としては、反応に関与しないものであれば公知のものを制限なく使用することができる。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等のアミド類、ギ酸、酢酸等の有機酸類、そして、これらの他、ジメチルイミダゾリジノン、アセトニトリル、N−メチルピペリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、水等が挙げられる。なお、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記の反応温度は、−80〜200℃の範囲、好ましくは25℃〜150℃の範囲において適宜設定すればよく、また、前記の反応時間は、設定した反応温度に対応して1時間〜60時間の範囲において適宜設定すればよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例、比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これらにおいて使用した主な原料は、以下のとおりである。
【0041】
[原料]
・[1,2,4]トリアゾール−1−カルボキシアミジン塩酸塩(特開平7−300450号に記載された合成方法に準拠して合成した。)
・ジイソプロピルエチルアミン(和光純薬工業社製)
・ジクロロメタン(和光純薬工業社製)
・二炭酸ジ−tert−ブチル(和光純薬工業社製)
・ベンジルクロロホルメート(和光純薬工業社製)
・水素化ナトリウム(和光純薬工業社製)
・ベンジルブロマイド(和光純薬工業社製)
・ベンゾイルクロライド(和光純薬工業社製)
・パラメトキシアニリン(和光純薬工業社製)
・ジイソプロピルアミン(和光純薬工業社製)
・トリエチルアミン(和光純薬工業社製)
・テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製)
・N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製)
・(tert−ブトキシカルボニルイミノ−ピラゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル(商品名:「N,N’-Di-Boc-1H-pyrazole-1-carboxamidine,98%」、ALDRICH社製)
【0042】
〔実施例1〕
<(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステルの合成>
[1,2,4]トリアゾール−1−カルボキシアミジン塩酸塩1.5g(10.0ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン2.2g(17.0ミリモル)、ジクロロメタン7.5ml、N,N−ジメチルホルムアミド7.5mlの混合物を常温下で攪拌しながら、該混合物に二炭酸ジ−tert−ブチル4.6ml(20.0ミリモル)を添加した。
この混合物を窒素気流中、常温下で2時間攪拌後、減圧濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン30mlと水30mlを添加し、生成物をジクロロメタンに溶解させて、ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン30mlによる抽出操作を更に3回行った。
これらのジクロロメタンを混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた濃縮物にヘキサン30mlを添加し、氷冷下で1時間攪拌した後、析出した結晶を濾取し、ヘキサン5mlで洗浄して、続いて、50℃で減圧乾燥を行って、白色結晶の化6の化学式(III)で示される(イミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル1.7g(収率:81%)を得た。
【0043】
【化6】

【0044】
次いで、(イミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル1.7g(8.1ミリモル)とテトラヒドロフラン30mlの混合物を氷冷下にて攪拌しながら、水素化ナトリウム(60%)340mg(8.5ミリモル)を30分かけて添加した。
この反応液を窒素気流中、氷冷下にて30分間攪拌後、二炭酸ジ−tert−ブチル2.0ml(8.9ミリモル)を添加した。続いて、還流下にて2時間攪拌した後、この反応液に常温下で酢酸730mg(12.0ミリモル)を添加し、減圧濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン30mlと水30mlを添加し、生成物をジクロロメタンに溶解させて、ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン30mlによる抽出操作を更に3回行った。
これらのジクロロメタンを混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、黄白色の結晶1.3g(収率:51%)を得た。
【0045】
得られた結晶の融点、H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
融点:77.0〜79.5℃
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.97(s,1H),8.02(s,1H),1.55(br,18H)
また、この結晶のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化7の化学式(IV)で示される(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステルであるものと同定した。
【0046】
【化7】

【0047】
〔実施例2〕
<(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステルの合成>
実施例1と同様にして合成した(イミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル1.6g(7.5ミリモル)とテトラヒドロフラン40mlの混合物を氷冷下にて攪拌しながら、水素化ナトリウム(60%)315mg(7.9ミリモル)を30分かけて添加した。
この反応液を窒素気流中、氷冷下にて30分間攪拌後、ベンジルクロロホルメート1.4g(8.3ミリモル)を添加した。続いて、還流下にて2時間攪拌した後、この反応液に常温下で酢酸667mg(11.1ミリモル)を添加し、減圧濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン30mlと水30mlを添加し、生成物をジクロロメタンに溶解させて、ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン30mlによる抽出操作を更に3回行った。
これらのジクロロメタンを混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、無色液体1.6g(収率:62%)を得た。
【0048】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.86(s,1H),7.95(s,1H),7.12-7.37(m,5H),5.22(s,2H),1.34(s,9H)
また、この液体のIRスペクトルデータは、図2に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化8の化学式(V)で示される(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステルであるものと同定した。
【0049】
【化8】

【0050】
〔実施例3〕
<(ベンジルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 tert−ブチルエステルの合成>
実施例1と同様にして合成した(イミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル1.6g(7.5ミリモル)とテトラヒドロフラン20mlの混合物を氷冷下にて攪拌しながら、水素化ナトリウム(60%)315mg(7.9ミリモル)を30分かけて添加した。
この反応液を窒素気流中、氷冷下にて30分間攪拌後、ベンジルブロマイド1.4g(8.3ミリモル)を添加した。続いて、還流下にて6時間攪拌した後、この反応液に常温下で酢酸667mg(11.1ミリモル)を添加し、減圧濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン30mlと水30mlを添加し、生成物をジクロロメタンに溶解させて、ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン30mlによる抽出操作を更に3回行った。
これらのジクロロメタンを混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)により精製し、無色液体1.3g(収率:59%)を得た。
【0051】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.26-7.14(m,7H),4.60(s,2H),1.53(s,9H)
また、この液体のIRスペクトルデータは、図3に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化9の化学式(VI)で示される(ベンジルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 tert−ブチルエステルであるものと同定した。
【0052】
【化9】

【0053】
〔実施例4〕
<(ベンゾイルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 tert−ブチルエステルの合成>
実施例1と同様にして合成した(イミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル1.6g(7.5ミリモル)とテトラヒドロフラン20mlの混合物を氷冷下にて攪拌しながら、水素化ナトリウム(60%)315mg(7.9ミリモル)を30分かけて添加した。
この反応液を窒素気流中、氷冷下にて30分間攪拌後、ベンゾイルクロライド1.2g(8.5ミリモル)を添加した。続いて、室温下にて12時間攪拌した後、この反応液に常温下で酢酸667mg(11.1ミリモル)を添加し、減圧濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン30mlと水30mlを添加し、生成物をジクロロメタンに溶解させて、ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン30mlによる抽出操作を更に3回行った。
これらのジクロロメタンを混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1)により精製し、黄色粘性物1.0g(収率:42%)を得た。
【0054】
得られた粘性物のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 9.07(s,1H),8.07(s,1H),7.40-7.73(m,5H),1.18(s,9H)
また、この粘性物のIRスペクトルデータは、図4に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた粘性物は、化10の化学式(VII)で示される(ベンゾイルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 tert−ブチルエステルであるものと同定した。
【0055】
【化10】

【0056】
〔実施例5〕
<(ベンジロキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステルの合成>
[1,2,4]トリアゾール−1−カルボキシアミジン塩酸塩2.1g(14.2ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン3.1g(24.1ミリモル)、ジクロロメタン12.8ml、N,N−ジメチルホルムアミド12.8mlの混合物を常温下で攪拌しながら、該混合物にベンジルクロロホルメート5.8g(34.0ミリモル)を添加した。
この混合物を窒素気流中、常温下で3時間攪拌後、減圧濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン50mlと水50mlを添加し、生成物をジクロロメタンに溶解させて、ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン50mlによる抽出操作を更に3回行った。
これらのジクロロメタンを混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた濃縮物にヘキサン50mlと酢酸エチル50mlを添加し、氷冷下で1時間攪拌した後、析出した結晶を濾取し、ヘキサン10mlで洗浄して、続いて、50℃で減圧乾燥を行って、白色結晶の化11の化学式(VIII)で示される(イミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステル2.0g(収率:57%)を得た。
【0057】
【化11】

【0058】
次いで、(イミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステル2.0g(8.1ミリモル)とテトラヒドロフラン30mlの混合物を氷冷下にて攪拌しながら、水素化ナトリウム(60%)340mg(8.5ミリモル)を30分かけて添加した。
この反応液を窒素気流中、氷冷下にて30分間攪拌後、ベンジルクロロホルメート1.5g(8.9ミリモル)を添加した。続いて、還流下にて2時間攪拌した後、この反応液に常温下で酢酸730mg(12ミリモル)を添加し、減圧濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン30mlと水30mlを添加し、生成物をジクロロメタンに溶解させて、ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン30mlによる抽出操作を更に3回行った。
これらのジクロロメタンを混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)により精製し、白色結晶2.5g(収率:82%)を得た。
【0059】
得られた結晶の融点、H−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
融点:86.2〜89.6℃
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.82(s,1H),8.06(s,1H),7.37-7.50(m,10H),5.52(s,2H),5.21(s,2H)
また、この結晶のIRスペクトルデータは、図5に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた結晶は、化12の化学式(IX)で示される(ベンジロキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステルであるものと同定した。
【0060】
【化12】

【0061】
〔実施例6〕
<(ベンゾイルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 ベンジルエステルの合成>
実施例5と同様にして合成した(イミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 ベンジルエステル1.2g(5.0ミリモル)とテトラヒドロフラン20mlの混合物を氷冷下にて攪拌しながら、水素化ナトリウム(60%)210mg(5.3ミリモル)を30分かけて添加した。
この反応液を窒素気流中、氷冷下にて30分間攪拌後、ベンゾイルクロライド773mg(5.5ミリモル)を添加した。続いて、還流下にて4時間攪拌した後、この反応液に常温下で酢酸450mg(7.5ミリモル)を添加し、減圧濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン30mlと水30mlを添加し、生成物をジクロロメタンに溶解させて、ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン30mlによる抽出操作を更に3回行った。
これらのジクロロメタンを混合して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、無色液体890mg(収率:51%)を得た。
【0062】
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 9.10(s,1H),8.13(s,1H),7.31-7.72(m,10H),4.71(s,2H)
また、この液体のIRスペクトルデータは、図6に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化13の化学式(X)で示される(ベンゾイルアミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチレン)−カルバミン酸 ベンジルエステルであるものと同定した。
【0063】
【化13】

【0064】
〔実施例7〕
<N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−N’−パラメトキシフェニルグアニジンの合成(化14の反応スキーム(E)参照)>
実施例1で合成した(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル311mg(1.0ミリモル)と、トリエチルアミン111mg(1.1ミリモル)およびN,N−ジメチルホルムアミド0.5mlの混合物に、パラメトキシアニリン123mg(1.0ミリモル)を添加し反応液を調製した。
この反応液を30℃で4時間攪拌した後、常温下にて減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、黄白色の結晶を318mg(収率:87%)得た。
【0065】
この結晶のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであり、反応スキーム(E)中の化学式(XI)で示されるグアニジン誘導体、即ち、N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−N’−パラメトキシフェニルグアニジンが合成されたものと認められる。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 11.64(br,1H),10.18(br,1H),7.46(d,2H,J=9.0Hz),6.85(d,2H,J=9.0Hz),3.70(s,3H),1.53(s,9H),1.49(s,9H)
【0066】
反応スキーム(E):
【0067】
【化14】

【0068】
〔実施例8〕
<N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−N,N’−ジイソプロピルグアニジンの合成(化15の反応スキーム(F)参照)>
実施例1で合成した(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル311mg(1.0ミリモル)と、トリエチルアミン101mg(1.0ミリモル)およびジクロロメタン1.0mlの混合物に、ジイソプロピルアミン121mg(1.2ミリモル)を添加し反応液を調製した。
この反応液を30℃で48時間攪拌した後、常温下にて減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、黄白色の結晶を274mg(収率:82%)得た。
【0069】
この結晶のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであり、反応スキーム(F)中の化学式(XII)で示されるグアニジン誘導体、即ち、N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−N,N’−ジイソプロピルグアニジンが合成されたものと認められる。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.28(br,1H),3.85-3.90(m,2H),1.47(s,18H),1.34(s,6H),1.30(s,6H)
【0070】
反応スキーム(F):
【0071】
【化15】

【0072】
〔比較例1〕
<N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−N,N’−ジイソプロピルグアニジンの合成(化16の反応スキーム(G)参照)>
(tert−ブトキシカルボニルイミノ−[1,2,4]トリアゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル311mg(1.0ミリモル)の代わりに、(tert−ブトキシカルボニルイミノ−ピラゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル310mg(1.0ミリモル)を使用した以外は、実施例8と同様にして、グアニジン誘導体の合成試験を行った。
得られた濃縮物のH−NMRスペクトルを測定したところ、原料の(tert−ブトキシカルボニルイミノ−ピラゾル−1−イル−メチル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステルと、ジイソプロピルアミンであることがわかり、反応スキーム(G)で示した反応は進行しなかった。
【0073】
反応スキーム(G):
【0074】
【化16】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1で得られた結晶のIRスペクトルチャートである。
【図2】実施例2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
【図3】実施例3で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
【図4】実施例4で得られた粘性物のIRスペクトルチャートである。
【図5】実施例5で得られた結晶のIRスペクトルチャートである。
【図6】実施例6で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、グアニジン骨格の効率的な導入が可能となるので、医農薬中間体、香料、液晶等原料に好適なグアニジン誘導体の合成に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1の化学式(I)で示される1,2,4−トリアゾール化合物。
【化1】

(式中、RおよびRは、同一または異なって、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、ベンゾイル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基またはパラトルエンスルホニル基を表す。)
【請求項2】
請求項1記載の1,2,4−トリアゾール化合物と、第1級アミンまたは第2級アミンを反応させることを特徴とするグアニジン誘導体の合成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10735(P2013−10735A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284789(P2011−284789)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】