説明

1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法

【課題】用いる溶媒量が少なく、簡便に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル誘導体を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(II)で表される化合物と下記一般式(III)で表される化合物とを反応させる工程を含み、前記工程において反応系中に発生する酸の全部または一部を中和せずに反応を進行させることを特徴とする下記一般式(I)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法である。式中Arは芳香族基を表し、Zは1,4−シクロヘキサンジイルを表し、Xはハロゲン原子を表す。
一般式(I) Ar−OC(=O)−Z−C(=O)O−Ar
一般式(II) X−C(=O)−Z−C(=O)−X
一般式(III) Ar−OH

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体(以下、「本発明の誘導体」という場合がある)の製造方法に関する。本発明の誘導体は、特開平11−185272号および特表2002−509282号等の公報に記載の光学材料およびその中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体、特にtrans−1,4−シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル誘導体には液晶性を示す化合物が知られており、液晶表示装置や位相差板の材料として多くの用途を有している。これら1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法としては、塩基存在下対応するフェノール誘導体と1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロリドとの反応によって製造する方法(Mol. Cryst. Liq.Cryst., 45巻, 111頁 (1987))が開示されている。塩基の量としては反応時に発生する酸、即ち、ハロゲン化水素1モルに対し1モル以上の塩基を用いている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者が開示の方法に従って1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体を製造したところ、確かに反応は進行し目的のエステル体は得られたが、反応の進行に伴って発生する塩(ハロゲン化水素と塩基によって生成する塩)が析出し、反応系の攪拌が妨げられることがわかった。特に、大量に製造する場合は、反応溶媒の量を低減することが生産性を上げる観点から要求されるが、溶媒量を減らすと、反応系の攪拌が顕著に困難となり、大量生産化の妨げとなる。
【0004】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、反応系中に発生する塩の量を低減し、少ない溶媒量でも製造でき、特に大量に製造する場合に効率的な製造を可能とする1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と対応するフェノール誘導体から簡便に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体を製造する方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(II)で表される化合物と下記一般式(III)で表される化合物とを反応させる第1の反応工程を含み、前記第1の反応工程において反応系中に発生する酸の全部または一部を中和せずに反応を進行させることを特徴とする下記一般式(I)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法。
一般式(I)
Ar−OC(=O)−Z−C(=O)O−Ar
一般式(II)
X−C(=O)−Z−C(=O)−X
一般式(III)
Ar−OH
(式中Arは芳香族基を表し、Zは1,4−シクロヘキサンジイルを表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【0006】
<2> 前記第1の反応工程において、反応系中に塩基を添加しないことを特徴とする<1>に記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法。
<3> 前記第1の反応工程において、前記反応系中に生成する酸の理論モル量に対して、それよりも少ないモル量の塩基を反応系に添加することを特徴とする<1>に記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法。
<4> 前記第1の工程において、前記反応系中に生成する酸の理論モル量を1モルとした場合、反応系中に塩基を1モル未満(好ましくは0.5モル以下、より好ましくは0.2モル以下)添加することを特徴とする<1>に記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法。
【0007】
<5> 前記第1の反応工程の前に、チオニルハライドと下記一般式(IV)で表される化合物とを反応させて前記一般式(II)で表される化合物を反応系中に生成させる第2の反応工程を含むことを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法。
一般式(IV)
HOC(=O)−Z−C(=O)OH
(式中、Zは1,4−シクロヘキサンジイルを表す。)
<6> 前記前記一般式(II)で表される化合物が生成した反応系中に前記一般式(III)で表される化合物を添加して前記第1の反応工程を行うことを特徴とする<5>に記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法。
<7> 前記前記一般式(II)で表される化合物が発生した反応系の溶媒を濃縮せずに、前記反応系に前記一般式(III)で表される化合物を添加して前記第1の工程を行うことを特徴とする<5>または<6>に記載の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる下記一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物、ならびに所望により用いられる下記一般式(IV)で表される化合物について説明する。
一般式(I)
Ar−OC(=O)−Z−C(=O)O−Ar
一般式(II)
X−C(=O)−Z−C(=O)−X
一般式(III)
Ar−OH
一般式(IV)
HOC(=O)−Z−C(=O)OH
【0009】
式中Arは芳香族基を表し、Zは1,4−シクロヘキサンジイルを表し、Xはハロゲン原子(F、Cl、Br、I)を表す。
Arで表される芳香族基としては、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性へテロ環基、および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
前記芳香族性ヘテロ環基のヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。芳香族性へテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0010】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N,N,N’−トリメチルウレイド)、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、s−ブチル、t−アミル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、アルケニル基(例、ビニル、アリル、ヘキセニル)、アルキニル基(例、エチニル、ブチニル)、アシル基(例、ホルミル、アセチル、ブチリル、ヘキサノイル、ラウリル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウリルオキシ)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ、ヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ)、アリールチオ基(例、フェニルチオ)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル)、アミド基(例、アセトアミド、ブチルアミド基、ヘキシルアミド、ラウリルアミド)および非芳香族性複素環基(例、モルホリル、ピラジニル)が含まれる。
【0011】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキル基が好ましい。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
【0012】
以下に本発明の製造方法によって製造可能な、前記一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0013】
【化1】



【0014】
【化2】



【0015】
本発明の製造方法では、前記一般式(II)で表される化合物と前記一般式(III)で表される化合物とを反応させて、前記一般式(I)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体を製造する。その際、反応系中にはハロゲン化水素である酸が生成するが、この酸の全部または一部を中和せずに反応を進行させることを特徴とする。
【0016】
本発明の製造方法には、反応系中に塩基を全く添加せずに(即ち、発生した酸の全部を中和せずにそのまま)反応を進行させる態様、および反応系中に生成する酸の理論モル量に対して、それよりも少ないモル量の塩基を反応系に添加して反応を進行させる(即ち、反応系中に生成した酸の一部のみを塩基によって中和しつつ、反応を進行させる)態様の双方が含まれる。
【0017】
反応系中に塩基を添加する態様において使用可能な塩基としては、反応の進行に伴って発生するハロゲン化水素を中和する目的で使用されるので、ハロゲン化水素よりも酸解離定数が小さい共役酸を生じる塩基を用いることが好ましい。有機および無機の塩基を使用することができるが、用いる塩基と酸ハライドが反応して、前記一般式(I)で表される化合物以外の化合物が、反応系中に析出するのは好ましくない。好ましい塩基としては、N,N−ジメチルアニリン、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、イミダゾール、ジイソプロピルエチルアミン、などが挙げられる。
【0018】
反応系中に塩基を添加するのは、発生する酸、即ち、ハロゲン化水素を中和するのが目的であるが、塩基は反応系中に生成する酸の理論モル量よりも少ないモル量だけ添加して塩の生成量を軽減し、反応系中に塩が析出するのを防止する。本発明では、反応系中に生成する酸の理論モル量を1モルとした場合、反応系中に添加する塩基のモル量は1モル未満であり、好ましくは0.5モル以下であり、より好ましくは0.2モル以下である。塩の発生を抑えるためには塩基を用いないことが最も好ましい。
なお、2価以上の塩基を使用する際も、反応系中に生成する酸を完全に中和するのには満たない化学量論比で塩基を添加する。
【0019】
前記一般式(II)と一般式(III)との反応の際に用いられる反応溶媒は、双方の化合物が溶解し、且つ双方の化合物と反応することのない溶媒が好ましい。具体的には脂肪族炭化水素(ペンタン、ヘキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)が好ましい。
【0020】
反応温度は−20℃〜200℃が好ましい。塩基を用いる場合は反応が早く進行するので冷却しつつ、反応を進行させるのが好ましく、塩基を用いない場合は室温あるいは加熱下で反応させることが好ましい。
【0021】
前記一般式(II)で表される化合物は、既知の方法(例えば、新実験化学講座に記載されている方法など)によって製造することができる。前記一般式(II)で表される化合物は、チオニルハライドと前記一般式(IV)で表される化合物との反応により製造することができる。本発明の製造方法の好ましい態様は、チオニルハライドと前記一般式(IV)で表される化合物との反応により前記一般式(II)で表される化合物を反応系中に生成させた後、前記反応系中に前記一般式(III)で表される化合物を添加し、前記一般式(II)で表される化合物と前記一般式(III)で表される化合物とを反応させて、前記一般式(I)で表される化合物を製造する態様である。この様に、2つの反応工程を続け行うことでより効率的に前記一般式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0022】
チオニルハライドと前記一般式(IV)で表される化合物との反応により前記一般式(II)で表される化合物を反応系中に生成させた後、反応溶媒を濃縮せずに、前記反応系に前記一般式(II)で表される化合物を添加して、前記一般式(II)で表される化合物と前記一般式(III)で表される化合物とを反応させるのがより好ましく、さらに反応系中に塩基を添加させずに反応を進行させるのがさらに好ましい。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
(I−1)の合成
trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 19.3g(0.11mol)をトルエン84mLに懸濁させ、N,N−ジメチルホルムアミド 1mLを加えた後、チオニルクロリド 30.4g(0.23mol)を滴下した。滴下後、内温が60℃になるように加熱して2時間放置し、さらに85℃で1時間加熱した。室温に冷却後、4−ヘプチルフェノール 51.6g(0.27mol)のトルエン溶液 39mLを滴下して、滴下後、内温が90℃になるように加熱して2時間放置した。室温に冷却後、反応液をメタノール430mLに注ぎ、白色結晶53.1g(0.1mol)を得た。
1H−NMRスペクトル、Massスペクトルより目的物であることを確認した。
【0024】
[実施例2]
(I−2)の合成
cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 4.48g(0.026mol)をトルエン20mLに懸濁させ、N,N−ジメチルホルムアミド 0.2mLを加えた後、チオニルクロリド6.5g(0.0546mol)を滴下した。滴下後、内温が60℃になるように加熱して2時間放置し、さらに85℃で1時間加熱した。室温に冷却後、4−ヘプチルフェノール 10.6g(0.055mol)のトルエン溶液40mLを滴下して、滴下後、内温が90℃になるように加熱して2時間放置した。室温に冷却後反応液をメタノール250mLに注ぎ、白色結晶9.3g(0.018mol)を得た。
1H−NMRスペクトル、Massスペクトルより目的物であることを確認した。
【0025】
[実施例3]
(I−2)の合成
cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 4.48g(0.026mol)をトルエン20mLに懸濁させ、N,N−ジメチルホルムアミド 0.2mLを加えた後、チオニルクロリド 6.5g(0.0546mol)を滴下した。滴下後、内温が60℃になるように加熱して2時間放置し、さらに85℃で1時間加熱した。室温に冷却後、トリエチルアミン 2.73g(0.026mol)を加えた後、5℃以下にて4−ヘプチルフェノール 10.6g(0.055mol)のトルエン溶液40mLを滴下して、滴下後、内温が90℃になるように加熱して2時間放置した。室温に冷却後反応液をメタノール250mLに注ぎ、白色結晶9.3g(0.018mol)を得た。
1H−NMRスペクトル、Massスペクトルより目的物であることを確認した。
【0026】
[参考例]
trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 19.3g(0.11mol)をトルエン84mLに懸濁させ、N,N−ジメチルホルムアミド 1mLを加えた後、チオニルクロリド 30.4g(0.23mol)を滴下した。滴下後、内温が60℃になるように加熱して2時間放置し、さらに85℃で1時間加熱した。室温に冷却後、トリエチルアミン 25.2g(0.24mol)を添加後、5℃以下にて4−ヘプチルフェノール51.6g(0.27mol)のトルエン溶液39mLを滴下した。滴下開始直後から塩が析出し始め、半分ほど滴下したところで攪拌できなくなってしまった。トルエンを200mL加えて攪拌できるようにして残りのフェノールを滴下した。滴下後、室温にて2時間放置した。反応液を水400mLに注いで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下に濃縮して、白色結晶53.1g(0.1mol)を得た。
1H−NMRスペクトル、Massスペクトルより目的物であることを確認した。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、用いる溶媒が少なく、より少ない工程で、簡便に、目的とする前記一般式(I)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル誘導体を合成することができる。即ち、従来の方法よりも安価に前記一般式(I)で表される化合物が製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(II)で表される化合物と下記一般式(III)で表される化合物とを反応させる工程を含み、前記工程において反応系中に発生する酸の全部または一部を中和せずに反応を進行させることを特徴とする下記一般式(I)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸フェニルエステル誘導体の製造方法。
一般式(I)
Ar−OC(=O)−Z−C(=O)O−Ar
一般式(II)
X−C(=O)−Z−C(=O)−X
一般式(III)
Ar−OH
(式中Arは芳香族基を表し、Zは1,4−シクロヘキサンジイルを表し、Xはハロゲン原子を表す。)

【公開番号】特開2004−51501(P2004−51501A)
【公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−208268(P2002−208268)
【出願日】平成14年7月17日(2002.7.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】