説明

2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾールおよび中間化合物の分割方法

本発明は、化合物(R,S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾールのラセミ混合物を分割し、またはこれをいずれか一方のエナンチオマーで富化する新規方法、および該方法を実施するために用いられる中間化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、化合物(R,S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾールのラセミ混合物をいずれか一方のエナンチオマーへ分割し、またはいずれか一方のエナンチオマーを富化する新規方法、および該方法を実施する上で有用な中間化合物に関する。
【発明の背景】
【0002】
一般式(A)の4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール化合物:
【化1】

は、2‐アミノ‐6‐(R,R)アミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール類とも称され、Rは水素、アルキルまたはアラルキルであり、Rは水素であり、有用な薬剤として知られている。
【0003】
これら化合物の中でも、2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾールのS‐エナンチオマーは、ドーパミンD作動活性を有する市販品であるプラミペキソール(pramipexole)として知られ、特に注目される。この製品は、例えば、Mirapexin(登録商標)のような異なる商標で、パーキンソン病、総合失調症または高血圧の治療のために二塩酸塩の形で販売されている。
【0004】
2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾールは、他の関連化合物およびそれらの用途に加えて、EP186087で最初に記載されている。それが属する特許群の中には、US4,731,374とその分割特許US4,843,086およびUS4,886,812;ES550235とその分割特許ES556873、ES556874およびES556875のような他の文献があり、類似化合物およびそれらを得る方法についても記載されている。
【0005】
一般式(A)の化合物は不斉炭素原子を有し、純粋なエナンチオマー形またはその混合物として存在しうる。しかしながら、上記化合物の薬理活性はそのエナンチオマー形のうち一方でかなり大きいのであり、例えばプラミペキソールの場合、実質的に純粋なS(−)異性体として販売され、該異性体のドーパミン作動活性がR(+)異性体の場合より2倍大きい。前述の技術水準によれば、可能なエナンチオマーについて特許請求されているが、記載例から理解される通り、ラセミ体の製造を行えるだけである。
【0006】
2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾールの異なるエナンチオマーを得る方法が記載された最初の参考文献は、J.Med.Chem.,1987,30,494におけるSchneiderおよびMierauの文献である。該文献では、プラミペキソールはラセミ混合物から直接的に分割されず、分割剤として作用するL(+)‐酒石酸と反応させて、その前駆体、特にR=R=Hの化合物(A)から分割される。該分割後に、光学活性なプラミペキソールは、無水プロピオン酸と反応させ、続いてプロピオニル化中間体を還元することを含んでなる、ジアミノ化前駆体の純粋エナンチオマーの2工程プロピル化により製造される。この文献で記載された、二塩酸プラミペキソールに関する旋光能値(rotatory power value)はα=−67.2°(c=1,CHOH)である。
【0007】
次いで、ES2187249では、下記のような合成経路により、望ましいエナンチオマーで富化された式(A)の化合物を得ることを記載している:
【化2】

【0008】
この方法は、シクロヘキサンジオン(D)をアルコール溶媒中で選択的にモノブロム化し、式(E)の化合物(RおよびRは同一であるか、または各々が1〜4個の炭素原子アルコキシ基を表わし、あるいは一緒になってC‐Cアルキレンジオキシ基またはオキソ基を形成している)を得;チオ尿素と縮合させ、式(F)の化合物を得、さらに該化合物(F)と、適切なアミンとを、還元的アミノ化条件下で反応させることを含んでなる。この方法では、プロピルアミンへの還元的アミノ的化においてキラル触媒を用いるか、または還元アミノ化において、試薬としてプロピルアミンへ変換可能なキラルアミンを用いることにより、望ましいS(−)エナンチオマーで実質的に富化されたプラミペキソールを生産しうる。
【0009】
上記特許の実施例6では、ラセミのプラミペキソール塩基の分割方法についても記載しており、L(+)‐酒石酸を用い、酒石酸プラミペキソールを得、さらに二塩酸プラミペキソールを得ている。しかしながら、得られた結果はα=−48.8°(c=1,MeOH)の旋光能値を示すにすぎず、これは上記先行技術からみて光学的に純粋な生成物ではなく、むしろ(S)‐エナンチオマー富化エナンチオマーの混合物に相当する。
【0010】
特許出願WO02/22591は、プラミペキソールが二塩基性であることを前提として、下記一般式の一塩中間体:
【化3】

(式中、Yは、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびパラトルエンスルホン酸から選択される酸の一価アニオン誘導体である)を形成し、次いで
下記一般式の二塩:
【化4】

(式中、Yは前記の通りであり、Zは、L‐酒石酸、ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸およびジベンゾイル‐D‐酒石酸から選択される光学活性酸のアニオン誘導体である)を形成することからなる、プラミペキソールの分割方法について記載している。「混合」ジアステレオマー塩は、上記方法において結晶化により分割される。二塩酸プラミペキソールについてこの文献で得られた旋光能値はα=−66.5°,c=1,CHOH(最良時、実施例1‐d参照)である。
【0011】
この場合、プラミペキソール(S)異性体のエナンチオマー純度が大きい生成物が得られるとしても、最初の一塩生成物の形成およびそれに続く単離、次いで光学活性酸の添加を含んでなる第二工程、最後に、後の遊離(release)により適切な異性体を供給するジアステレオマー塩の一方をジアステレオ選択的再結晶化により得るのに必要な1以上の追加工程など、数工程を実施することが必要であり、そのことが方法を複雑化および長期化させている。
【0012】
また、得られた旋光能値は先行技術の場合よりも満足しうるものの、それらはプラミペキソールのような薬理活性を有する生成物において必要とされる、高い光学純度の要件を満たす生成物には当たらない。
【0013】
したがって、有機溶媒中でキラル酸、例えば、酒石酸、ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸、マンデル酸などの古典的分割剤を用いる分別結晶化によりラセミのプラミペキソールを分割しうる方法が存在するにもかかわらず、これらは低光学純度の化合物を生じ、再現性がほとんどない。これにより、高光学純度のエナンチオマーを得ることが可能な代替方法を開発する大きな必要性が生じている。
【発明の概要】
【0014】
本発明の一つの目的は、式(I)の化合物:
【化5】

のラセミ体をいずれか一方のエナンチオマーへ分割し、または式(I)の化合物のいずれかのエナンチオマー過剰の混合物を富化する方法からなり、
該方法は、下記工程:
a)有機溶媒または該有機溶媒と水との混合物中で、式(I)の化合物のラセミ体または上記化合物のいずれかのエナンチオマー過剰の混合物と、式(IV)のキラル酸のいずれかのエナンチオマーとを反応させ:
【化6】

(式中、Rは一置換フェニルまたはアルキルフェニルである)、
b)工程a)の反応混合物を結晶化または分別結晶化することにより、一般式(V)の光学的に純粋なジアステレオマー一塩または一般式(V)の2種の可能なジアステレオマー形のうちいずれかで富化された一塩を得ること:
【化7】

(式中、Xは式(IV)のキラル酸の塩のアニオンである)
を含んでなる。
【0015】
本発明の他の目的は、本発明で記載された方法を実施する上で有用な中間化合物を構成している、式(V)のジアステレオマー塩に関する。好ましい態様において、該一塩は(R)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩、(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩、(R)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩および(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩である。
【発明の具体的説明】
【0016】
本発明は、2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール化合物のラセミ体をいずれか一方のエナンチオマーへ分割し、または上記化合物のいずれかのエナンチオマー過剰の混合物を富化するための、新規で有効かつ簡便な方法であって、純粋なジアステレオマー塩またはそれらの2種の可能なジアステレオマーのうち一方で富化された塩に相当する新規中間体を分別結晶化することによる方法について記載している。
【0017】
本文献で提案される分割のため、出発物質として用いられるラセミ化合物塩基は、下記合成経路を有する、スペイン特許出願P200401559で開示された方法等によって得られる。
【化8】

【0018】
下記式(I)の2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール:
【化9】

の分割は、有機溶媒または該有機溶媒と水との混合物中で、化合物(I)のラセミ体または化合物(I)のエナンチオマーの混合物と、一般式(IV)の光学的に純粋なキラル酸:
【化10】

(式中、Rは一置換フェニルまたはアルキルフェニルである)
とを反応させることにより実施される。こうして、下記式(V)の塩:
【化11】

(式中、Xは式(IV)のキラル酸の塩のアニオンである)が得られ、これは分別結晶化によりその純粋なジアステレオマー一塩または2種の可能なジアステレオマーのうち一方で富化された塩に分割される。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、光学的に純粋なキラル酸は下記式のジ‐p‐トルイル酒石酸の2種の可能なエナンチオマー:
【化12】

即ち、(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸および(−)‐ジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸である。
【0020】
ジ‐p‐トルイル酒石酸のエナンチオマーのいずれかを用いた、式(I)の化合物のラセミ混合物からのジアステレオマー塩の形成は、選択される溶媒に応じて、得られる光学純度に関して異なる結果を有する。極性非プロトン溶媒またはアルコール類が有機溶媒として用いうる。それにもかかわらず、常用有機溶媒(アルコール類、アセトン、アセトニトリル)と水との混合物が試みられたとき、結果は向上することが観察された。
【0021】
本発明の具体的態様は、前記されたジアステレオマー塩の分割または富化用の溶媒としての、極性非プロトン溶媒および水混合物、好ましくはジメチルホルムアミド/水混合物の使用である。
【0022】
ジメチルホルムアミド/水混合物は、可能な塩のいずれかを単離する際の選択性、高いエナンチオマー純度、再現性および高収率をもたらす。特に、分割とそれに続く精製において、販売に適した光学純度の二塩酸プラミペキソールを得られるほど純粋な塩が得られる。これら塩用の結晶化溶媒としてのジメチルホルムアミド/水を使用にみられる他の利点の一つは、ジメチルホルムアミド/水比に応じて、可能なジアステレオマーのいずれもがキラル酸のみを用いて単離されることである。
【0023】
したがって、上記方法の一例によれば、(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸と、化合物(I)のラセミ混合物またはいずれかのエナンチオマー過剰な混合物と、含水率が5%v/v未満であるジメチルホルムアミド/水混合物が用いられる場合、(R)‐I 化合物のジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸ジアステレオマー塩(+,+)が主として得られる。上記方法の他の例によれば、(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸と、化合物(I)のラセミ混合物またはいずれかのエナンチオマー過剰な混合物と、含水率が5%v/vより多く40%v/v未満であるジメチルホルムアミド/水混合物が用いられる場合、(S)‐I 化合物のジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸ジアステレオマー塩(−,+)が主として得られる。上記方法の他の例によれば、(−)‐ジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸と、化合物(I)のラセミ混合物またはいずれかのエナンチオマー過剰な混合物と、含水率が20%未満であるジメチルホルムアミド/水混合物が用いられる場合、(R)‐I 化合物のジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸ジアステレオマー塩(+,−)が主として得られる。上記方法の他の例によれば、(−)‐ジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸と、化合物(I)のラセミ混合物またはいずれかでエナンチオマー過剰な混合物と、含水率が40%より多く55%未満であるジメチルホルムアミド/水混合物が用いられる場合、(S)‐I 化合物のジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸ジアステレオマー塩(−,−)が主として得られる。
【0024】
ジ‐p‐トルイル酒石酸エナンチオマーおよびジメチルホルムアミド/水混合物の選択に応じて、2種の可能なジアステレオマー一塩のうち一方が主に最初の結晶化で分割され、他のジアステレオマー塩は母液に溶解したままであるが、これはより高い純度で単離しうる。したがって、本発明の他の態様は、一般式(V)の他の光学的に純粋なジアステレオマー一塩または一般式(V)の他のジアステレオマー形で富化された一塩:
【化13】

(式中、Xは前記の通りである)の追加の単離工程に関する。この他の一塩の追加の単離工程は、最初の一塩を単離する際に生じる母液へ水を添加し、上記他の一塩の沈殿を生じさせることを含んでなる。
【0025】
上記態様のいずれで得られた塩も、適切に選択されたジメチルホルムアミド/水の混合物中で、単純な再懸濁または再結晶化により、それらの光学純度を高める目的で精製しうる。
【0026】
本発明の第二の態様は、式(V)のジアステレオマー的に純粋な塩または2種の可能なジアステレオマーのうち一方で富化された塩に関する:
【化14】

(式中、Xは前記の通りである)。
【0027】
好ましい態様によれば、上記の塩は、(R)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾイミダゾール (+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩、(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾイミダゾール (+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩、(R)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾイミダゾール (−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩および(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾイミダゾール (−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩である。
【0028】
適切な光学純度を有した望ましい塩が得られると、それはジクロロメタンおよび炭酸ナトリウム溶液との処理により、商業的に要求される旋光能をもつ二塩酸化合物(I)の対応エナンチオマーへ変換される。相当な乾燥後に有機溶媒を蒸発させて得られた塩基の旋光能は、メタノール中10mg/mL(c=1.0メタノール)の溶液にて測定される。
【0029】
上記方法によれば、一塩中間体を単離する必要なしに、2種エナンチオマーのいずれかを得ることにより、式(I)の化合物のラセミ混合物を分割しうる。得られる生成物の収率および光学純度、操作の単純性および上記方法の再現性によれば、上記方法は、工業的観点から適用可能である。
【0030】
下記例は本発明の追加説明として示されているにすぎず、その制限の意味とみなすべきではない。
【実施例】
【0031】
合成例
実施例1
N,N‐4‐オキソシクロヘキシル‐n‐プロピル‐アミンの合成
10%HCl(78mL)を、水(470mL)中4‐n‐プロピルアミノシクロヘキサノンエチレンケタール(157g,0.85mol)の溶液へ加える。溶液を不活性雰囲気下95℃〜100℃で3時間加熱する。反応が終わると、pHを50%NaOHで13〜14に調整し、水相をCHClで数回抽出する。抽出液をNaCl飽和水溶液で洗浄し、溶媒を真空下で除去する。84g(99%)を得る。
NMR H(CDCl):0.85(t,3H),1.44(sx,2H),1.53‐1.64(m,2H),1.98‐2.70(m,2H),2.18‐2.28(m,2H),2.36‐2.44(m,2H),2.50‐2.56(dd,2H),2.84‐2.90(m,1H)ppm.
NMR 13C(CDCl):12.02(),23.64,32.28(2C),38.81(2C),49.64,54.09(H),211.83(=O)ppm.
【0032】
実施例2
塩基プラミペキソールの合成
ピロリジン(300g,355mL,4.25mol)およびp‐トルエンスルホン酸・HO(3.23g,0.017mol)をジイソプロピルエーテル(2.7L)中N,N‐4‐オキソシクロヘキシル‐n‐プロピルアミン(133g,0.86mol)の溶液へ加える。反応混合液を40℃で2時間攪拌する。次いで無水MgSO(400g)を加え、さらに10時間攪拌する。
この時間が経過したら、懸濁液を濾過し、固体物をジイソプロピルエーテル(200mL)で洗浄する。溶媒を減圧下で除去する。溶媒が除去されたら、MeOH(270mL)を加える。イオウ(32.9g,1.2mol)を溶液へ加え、1時間攪拌する。この時間が経過したら、混合液を0℃〜5℃で冷却し、MeOH(180mL)中シアナミド(36.5g,0.87mol)の溶液をそれに加える。反応混合液を0℃〜5℃で3時間保ち、この時間が経過したら、それを室温(20℃〜22℃)に戻し、これらの条件をさらに10時間維持する。
反応混合液を0℃〜5℃で冷却し、これらの条件下で2時間攪拌する。得られた懸濁液を濾過し、純度98.5%(HPLC)の塩基プラミペキソール139g(77%)を得る。
【0033】
分割例
実施例3a
(S)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩(メタノール/水)の取得
メタノール/水(8/2)混合液15mLに溶解された(R,S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール(ラセミ塩基プラミペキソール)3.0g(14.18mmol)の溶液を、55〜60℃で加熱されたメタノール/水(8/2)混合液75mL中(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸5.48g(14.18mmol)の溶液へ、その温度範囲を維持しながら加える。混合液を室温で冷却し、懸濁液を攪拌下で少なくとも60分間維持する。濾過で形成された結晶を分離し、メタノール/水(8/2)混合液で洗浄する。得られた固体物を一定重量まで乾燥させ、乾燥させると、(S)‐プラミペキソール ジ‐p‐トルイル酒石酸塩4.0gを得る(47.1%収率)。
NMR H(DMSO):0.87(t,3H),1.6(m,2H),2.2(s,6H),2.7(t,2H),5.6(s,2H),6.9(bs,2H),7.4(d,2H),7.9(d,2H).
【0034】
実施例3b
(S)‐プラミペキソール塩基の遊離
(S)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩2.0g(3.34mmol)を、完全に溶解するまで、7.5%w/v NaCO溶液40mLおよびジクロロメタン60mL中で攪拌する。それらをデカントし、各相を分離させる;下の有機相を水10mLで洗浄する。相当するデカント後に得られた有機相をNaCOで乾燥させ、濾過し、真空下で残渣に濃縮する。得られた残渣を40℃で一定重量まで真空乾燥させる。旋光能α=−43.0°(c=1.0メタノール)の(S)‐プラミペキソール塩基0.42g(2.0mmol,59.9%収率)を得る。
【0035】
実施例4
(R)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩(97.5DMF/2.5水)の取得
(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸9.14g(23.66mmol)をジメチルホルムアミド/水(97.5/2.5)200mLに溶解し、溶液を45〜50℃で加熱する。次いで、(R,S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール(ラセミプラミペキソール塩基)5g(23.66mmol)を加え、溶解するまで攪拌する。混合液を室温で冷却し、これらの条件下で一夜攪拌する。得られた結晶を濾過し、ジメチルホルムアミド/水(97.5/2.5)混合液で洗浄する。生成物を一定重量まで乾燥させ、5.15g(8.61mmol,36.4%収率)を得る。プラミペキソール塩基を実施例3bで示されたように分離させ、旋光能を測定したところ、α=76.6°(c=1.0メタノール)である。
【0036】
実施例5
(R)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩の取得
(R)‐プラミペキソール ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩(遊離された塩基(released base)でα=76.6°,c=1.0メタノール)5.15g(8.61mmol)をジメチルホルムアミド/水(98/2)50mLで再結晶化する。乾燥させて、標題化合物3.86gを得る。遊離塩基の旋光能はα=89.9°(c=1.0メタノール)である。
融点:175.2‐176.3℃
NMR H(DMSO):0.87(t,3H),1.6(m,2H),2.2(s,6H),2.7(t,2H),5.6(s,2H),6.9(bs,2H),7.4(d,2H),7.9(d,2H).
【0037】
実施例6
(S)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩(92.5DMF/7.5水)の取得
(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸9.14g(23.66mmol)をジメチルホルムアミド/水(92.5/7.5)200mLに溶解し、溶液を45〜50℃で加熱する。次いで、(R,S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール(ラセミプラミペキソール塩基)5g(23.66mmol)を加え、溶解するまで攪拌する。混合液を室温で冷却し、これらの条件下で一夜攪拌する。得られた結晶を濾過し、ジメチルホルムアミド/水(97.5/2.5)混合液で洗浄する。生成物を一定重量まで乾燥させ、5.37g(8.98mmol,37.94%収率)を得る。プラミペキソール塩基を実施例3bで示されたように遊離させ、旋光能を測定したところ、α=−65.5°(c=1.0メタノール)である。
【0038】
実施例7
(R)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩の取得
(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸19.14g(23.66mmol)を室温でジメチルホルムアミド/水(98/2)200mLに溶解する。次いで、(R,S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール(ラセミプラミペキソール塩基)5g(23.66mmol)を加え、溶解するまで攪拌する。混合液を室温で一夜攪拌し、得られた結晶を濾過し、ジメチルホルムアミド/水(97.5/2.5)混合液で洗浄する。生成物を一定重量まで乾燥させ、5.38g(9.00mmol,47.0%収率)を得る。プラミペキソール塩基を実施例3で示されたように遊離させ、旋光能を測定したところ、α=66.7°(c=1.0メタノール)である。
【0039】
実施例8
(S)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩の取得
前例の濾過により得られた母液に水15.6mLを加え、室温で一夜攪拌する。得られた結晶を濾過し、ジメチルホルムアミド/水(9/1)混合液で洗浄する。生成物を一定重量まで乾燥させて、標題化合物5.1g(8.53mmol,36.1%収率)を得、上記の場合のように塩基を遊離させると、これはα=−82.6°(c=1.0メタノール)の旋光能を有している。
【0040】
実施例9
(S)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩の取得
(S)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩(遊離された塩基でα=−82.6°,c=1.0メタノール)5.1g(8.53mmol)をジメチルホルムアミド/水(92.5/7.5)51mLで再結晶化する。乾燥させて、標題化合物4.40gを得る。遊離塩基の旋光能はα=−90.6°(c=1.0メタノール)である。
融点:175.2‐176.3℃
NMR H(DMSO):0.87(t,3H),1.6(m,2H),2.2(s,6H),2.7(t,2H),5.6(s,2H),6.9(bs,2H),7.4(d,2H),7.9(d,2H).
【0041】
実施例10
(R)‐プラミペキソール(−)‐ジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸塩の取得
(−)‐ジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸9.14g(23.66mmol)を室温でジメチルホルムアミド/水(95/5)200mLに溶解する。次いで、(R,S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール(ラセミプラミペキソール塩基)5g(23.66mmol)を加え、溶解するまで攪拌する。混合液を室温で一夜攪拌し、得られた結晶を濾過し、ジメチルホルムアミド/水(95/5)混合液で洗浄する。生成物を一定重量まで乾燥させ、6.12g(10.3mmol,43.2%収率)を得る。プラミペキソール塩基を実施例3で示されたように遊離させ、旋光能を測定したところ、α=74.6°(c=1.0メタノール)である。
得られた固体物をDMF/水(95/5)混合液60mLで再結晶化したところ、標題化合物を塩基としてα=89.8°(c=1.0メタノール)の旋光能値で得る。
融点:164.6‐166.3℃
NMR H(DMSO):0.87(t,3H),1.6(m,2H),2.2(s,6H),2.7(t,2H),5.6(s,2H),6.9(bs,2H),7.4(d,2H),7.9(d,2H).
【0042】
実施例11
(S)‐プラミペキソール(−)‐ジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸塩
前例(実施例10)の濾過により得られた母液に水36.0mLを加え、室温で一夜攪拌する。得られた結晶を濾過し、ジメチルホルムアミド/水(75/25)混合液で洗浄する。含水重量9.55gの粗化合物を得、これをDMF/水(75/25)混合液50mLに2回再懸濁する。濾過により得られた結晶を一定重量まで真空乾燥させる。標題化合物5.2g(8.7mmol,36.7%収率)を得、上記の場合のように塩基を遊離させると、これはα=−91.0°(c=1.0メタノール)の旋光能を有している。
融点:177.3‐179.2℃
NMR H(DMSO):0.87(t,3H),1.6(m,2H),2.2(s,6H),2.7(t,2H),5.6(s,2H),6.9(bs,2H),7.4(d,2H),7.9(d,2H).
【0043】
合成例
実施例12
(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール二塩酸塩、二塩酸プラミペキソールの合成
(S)‐プラミペキソール(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩4.40g(7.36mmol)を7.5%NaCO溶液88mLおよびジクロロメタン132mLに溶解する;各相をデカントし、下の有機相を脱イオン水22mLで洗浄する。各相をデカントし、得られた有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で残渣に濃縮する。得られた残渣をメタノール22mLに溶解し、そのpHが2.5〜3.8になるまでHCl(ガス)溶液で泡立てる。それを内容積12mLまで真空蒸留させ、懸濁液を0℃で攪拌する。結晶を濾過し、メタノールで洗浄し、一定重量までオーブン乾燥させる。標題化合物1.32g(4.64mmol,63.1%収率)を得る。α=−66.5°(c=1.0メタノール)
融点:274‐284℃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

のラセミ体をいずれか一方のエナンチオマーへ分割し、または式(I)の化合物のいずれかのエナンチオマー過剰の混合物を富化する方法であって、下記工程:
a)有機溶媒または該有機溶媒と水との混合物中で、前記式(I)の化合物のラセミ体または前記化合物のいずれかのエナンチオマー過剰の混合物と、式(IV)のキラル酸のいずれかのエナンチオマーとを反応させ:
【化2】

(式中Rは一置換フェニルまたはアルキルフェニルである)、
b)工程a)の反応混合物を結晶化または分別結晶化することにより、一般式(V)の光学的に純粋なジアステレオマー一塩または一般式(V)の2種の可能なジアステレオマー形のうちいずれかで富化された一塩を得ること:
【化3】

(式中、Xは式(IV)のキラル酸の塩のアニオンである)
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記式(IV)のキラル酸が、(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(IV)のキラル酸が、(−)‐ジ‐p‐トルイル‐L‐酒石酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)で用いられる有機溶媒が、アルコールまたは極性非プロトン溶媒である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶媒が極性非プロトン溶媒および水混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
溶媒がジメチルホルムアミドおよび水混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(R)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸ジアステレオマー塩(+,+)で富化された固体物を単離する、請求項6に記載の方法であって、式(IV)の化合物が(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸であり、溶媒含水率が5%(v/v)未満である、方法。
【請求項8】
(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸ジアステレオマー塩(+,−)で富化された固体物を単離する、請求項6に記載の方法であって、式(IV)の化合物が(+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸であり、溶媒含水率が5%より多く40%(v/v)未満である、方法。
【請求項9】
(R)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸ジアステレオマー塩(+,−)で富化された固体物を単離する、請求項6に記載の方法であって、式(IV)の化合物が(−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸であり、溶媒含水率が20%(v/v)未満である、方法。
【請求項10】
(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸ジアステレオマー塩(−,−)で富化された固体物を単離する、請求項6に記載の方法であって、式(IV)の化合物が(−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸であり、溶媒含水率が40%より多く55%(v/v)未満である、方法。
【請求項11】
一般式(V)の他の光学的に純粋なジアステレオマー一塩または一般式(V)の他のジアステレオマー形で富化された一塩:
【化4】

(式中、Xは式(IV)のキラル酸の塩のアニオンである)
を単離する追加の単離工程を含んでなる、請求項6、7または9に記載の方法。
【請求項12】
他の一塩の追加の単離工程が、最初の一塩を単離する際に生じる母液へ水を添加し、
前記他の一塩の沈殿を生じさせることを含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
一般式(V)の光学的に純粋なジアステレオマー塩またはその2種の可能なジアステレオマー形のうちいずれかで富化された塩:
【化5】

(式中Xは前記の通りである)。
【請求項14】
下記群から選択される、請求項13に記載の塩:
(R)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩;
(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (+)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩;
(R)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩;および
(S)‐2‐アミノ‐6‐プロピルアミノ‐4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾチアゾール (−)‐ジ‐p‐トルイル‐D‐酒石酸塩。

【公表番号】特表2008−540496(P2008−540496A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510600(P2008−510600)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000226
【国際公開番号】WO2006/120268
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(503084956)ラガクティブス,エス.エル. (5)
【Fターム(参考)】