説明

2−(アミノメチリデン)−4,4−ジフルオロ−3−オキソ酪酸エステルの製造方法

本発明は式(I)
【化1】


[式中、
R1、R2とR3はそれぞれ、互いに独立してC1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C2-C6-アルケニル、C3-C10-シクロアルキルもしくはベンジルであり、またはNR2R3は5〜10員複素環基である]
の2-(アミノメチリデン)-4,4-ジフルオロ-3-オキソ酪酸エステル、式(I)の化合物の調製方法であって、対応する3-アミノアクリル酸エステルをジフルオロアセチルフルオリドと反応させる前記方法、ならびにジフルオロメチル置換ピラゾール-4-イルカルボン酸およびそのエステルの調製方法における式(I)の化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-(アミノメチリデン)-4,4-ジフルオロ-3-オキソ酪酸エステルの製造方法ならびにジフルオロメチル置換ピラゾール-4-イルカルボン酸およびそのエステルを調製する方法におけるその使用に関する。本発明は新規な2-(アミノメチリデン)-4,4-ジフルオロ-3-オキソ酪酸エステルにも関する。
【背景技術】
【0002】
WO 92/12970には(3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イル)カルボキサミドおよびその殺菌剤としての使用が記載されている。その調製は4,4-ジフルオロ-3-オキソ酪酸エステルから始まり、これをオルトギ酸トリエチルおよびメチルヒドラジンと連続的に反応させると、3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-カルボン酸エステルが得られる。その後、これを加水分解すると、対応するカルボン酸が得られる。これは対応する酸塩化物に変換された後、好適なアミンを使用して対応するアミドへと変換される。しかし、出発原料として必要である4,4-ジフルオロ-3-オキソ酪酸エステルの提供は比較的費用がかかるとともに困難である。
【0003】
WO 2005/044804にはフルオロメチル置換複素環カルボン酸のアルキルエステル、および対応するクロロメチル置換複素環カルボン酸エステルのフッ素化剤を使用するハロゲン交換によるその調製について記載されている。しかし、フッ素化剤の使用は高価であり、取られるべき安全対策および使用する装置に関し特定の必要条件を満たさなければならない。
【0004】
WO 2005/042468にはジアルキルアミノアクリル酸エステルとジハロアセチルハロゲン化物を塩基の存在下で反応させる2-(ジアルキルアミノメチリデン)-4,4-ジハロ-3-オキソ酪酸エステルの調製について記載されている。ここで、ジハロケテンの形成を防止するため、使用する塩基は、特にアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物の水溶液である。しかし、この反応では満足できる収率が得られない。得られる2-(ジアルキルアミノメチリデン)-4,4-ジハロ-3-オキソ酪酸エステルはC1-C4-アルキルヒドラジンを使用し、対応するN-アルキル化ジハロメチル-置換ピラゾール-4-イルカルボン酸エステルへと変換される。しかし、この反応では対応する5-ジハロメチル化合物に対する3-ジハロメチル化合物の満足のいく選択性が得られない。その後の形成する二つの異性体の分離は比較的複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 92/12970
【特許文献2】WO 2005/044804
【特許文献3】WO 2005/042468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、出発原料が低コストかつ高収率で得ることができる、(3-ジフルオロメチルピラゾール-4-イル)カルボン酸エステルおよびその誘導体を調製するための別の方法を提供することである。さらに、これらの出発原料からは、(3-ジフルオロメチルピラゾール-4-イル)カルボン酸エステルが高収率で、かつ通常副反応として起こる(5-ジフルオロメチルピラゾール-4-イル)カルボン酸エステルへの反応に対して可能な限り高い選択性で調製され得るべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、この目的は式(I)
【化1】

【0008】
[式中、
R1はC1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C2-C6-アルケニル、C3-C10-シクロアルキルまたはベンジルであって、最後に記載した2つの置換基は非置換であるかまたはハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有し;
R2およびR3は互いに独立してC1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C2-C6-アルケニル、C3-C10-シクロアルキルまたはベンジルであって、最後に記載した2つの置換基は非置換であるかまたはハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有し;または
R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含むことができる]
の化合物の調製方法であって、
式(II)
【化2】

【0009】
(式中、R1、R2およびR3は上記の意味の1つを有する)
の化合物をジフルオロアセチルフルオリドと反応させる、前記方法により達成されることが見出された。
【0010】
本発明によるこの方法により、(3-ハロメチルピラゾール-4-イル)カルボン酸エステルを調製する方法に特に好適な出発原料を低コストかつ高収率で提供することが可能である。
【0011】
したがって、本発明はさらに、式(I)
【化3】

【0012】
[式中、R1は上記の意味の1つを有し、かつ
R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含むことができる]
の化合物を提供する。
【0013】
これらの式(I)の化合物は、優れた収率で得ることができ、また、N-置換ヒドラジン化合物を使用する、(3-ジフルオロメチルピラゾール-4-イル)カルボン酸エステルへの変換に、特に収率と、(5-ジフルオロメチル-ピラゾール-4-イル)カルボン酸エステル副生成物に対する所望の異性体の選択性とに関して特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書ならびに以下の式で示される化合物IおよびIIのC=C二重結合のE立体配置は化合物IおよびIIの可能な実施形態の1つにすぎない。本発明は示されるE異性体およびZ異性体の双方、特にこれら異性体の混合物に関する。
【0015】
可変基の定義中に使用される有機基についての用語(例えば「ハロゲン」等)は有機質部分のこれらの基の個々のメンバーを表す総称である。
【0016】
いずれの場合にも、接頭語「Cx-Cy」は可能な炭素原子の数を示す。
【0017】
いずれの場合にも、「ハロゲン」の用語はフッ素、臭素、塩素またはヨウ素(特にフッ素、塩素または臭素)を示す。
【0018】
本明細書中で使用される、およびC1-C6-アルコキシのアルキル部分における「C1-C6-アルキル」の用語は1〜6個の炭素原子(特に1〜4個の炭素原子)を含む直鎖または分岐飽和炭化水素基を示し、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピルおよびその異性体である。C1-C4-アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピルおよび1,1-ジメチルエチルを含む。
【0019】
「C1-C6-アルコキシ」の用語は酸素原子を経由して結合する、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐の飽和アルキル基を表す。C1-C6-アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、n-ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、n-ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、n-ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシおよび1-エチル-2-メチルプロポキシを含む。C1-C4-アルコキシの例はメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、n-ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシおよび1,1-ジメチルエトキシを含む。
【0020】
本明細書中で使用される、およびC1-C6-アルコキシのハロアルキル部分における「C1-C6-ハロアルキル」の用語は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基であって、これらの基の一部または全部の水素原子がハロゲン原子により置換されている前記アルキル基を表す。これらの例は、C1-C4-ハロアルキル、例えば、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチルおよびペンタフルオロエチルである。
【0021】
「C1-C6-ハロアルコキシ」の用語は酸素原子を経由して結合する、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐飽和ハロアルキル基を表す。これらの例は、C1-C4-ハロアルコキシ、例えばクロロメトキシ、ブロモメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、1-クロロエトキシ、1-ブロモエトキシ、1-フルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2-フルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、2,2-ジクロロ-2-フルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシおよびペンタフルオロエトキシである。
【0022】
「C2-C6-アルケニル」の用語は2〜6個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖および分岐不飽和炭化水素基、例えばエテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニルおよび1-エチル-2-メチル-2-プロペニルを表す。
【0023】
本明細書中で使用される「C3-C10-シクロアルキル」の用語は、3〜10個の炭素原子(特に3〜6個の炭素原子)を含む単環式、二環式または三環式炭化水素基を表す。単環式基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルを含む。二環式基の例はビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルおよびビシクロ[3.2.1]オクチルを含む。三環式基の例はアダマンチルおよびホモアダマンチルである。
【0024】
-NR2R3基の定義に関連して、「5〜10員複素環基」の用語は式(I)または(II)の化合物の残りの部分に窒素原子を経由して結合する、5、6、7、8、9もしくは10員環を有する窒素含有単環式-または二環式基を示し、該基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として有することができ、かつ非置換であるかまたは1、2もしくは3個の置換基を有することができる。置換基は複素環基の炭素原子に結合する場合には、好ましくはハロゲン、CN、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から選択され、複素環基の別の窒素原子に結合する場合には、好ましくは、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-ハロアルキルからなる群から選択される。5〜10員複素環基の例は、ピロール-1-イル、ピロリジン-1-イル、オキサゾリジン-3-イル、チアゾリジン-3-イル、イミダゾール-1-イル、イミダゾリン-1-イル、3-メチルイミダゾリン-1-イル、3-エチルイミダゾリン-1-イル、3-プロピルイミダゾリン-1-イル、3-(1-メチルエチル)イミダゾリン-1-イル、3-ブチルイミダゾリン-1-イル、3-(1,1-ジメチルエチル)イミダゾリン-1-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾリジン-1-イル、2-メチルピラゾリジン-1-イル、2-エチルピラゾリジン-1-イル、2-プロピルピラゾリジン-1-イル、2-(1-メチルエチル)ピラゾリジン-1-イル、2-ブチルピラゾリジン-1-イル、2-(1,1-ジメチルエチル)ピラゾリジン-1-イル、ピペリジン-1-イル、モルホリン-4-イル、チアモルホリン-4-イル、ピペラジン-1-イル、4-メチルピペラジン-1-イル、4-エチルピペラジン-1-イル、4-プロピルピペラジン-1-イル、4-(1-メチルエチル)ピペラジン-1-イル、4-ブチルピペラジン-1-イル、4-(1,1-ジメチルエチル)ピペラジン-1-イル、インドール-1-イル、インドリン-1-イル、イソインドール-1-イル、イソインドリン-1-イル、インダゾール-1-イル、インダゾリン-1-イル、2-メチルインダゾリン-1-イル、インダゾリン-2-イルおよび1-メチルインダゾリン-1-イルであって、上記複素環基は非置換であるか、または1、2もしくは3個の環炭素原子がハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から選択される1個の置換基を有する。
【0025】
式(I)および(II)の化合物中の炭素-炭素二重結合はEまたはZ立体配置(すなわち、NR2R3基と-C(O)OR1基の相対配置に基づいてシス型またはトランス型立体配置)を有することができる。
【0026】
本明細書中に記載される反応はかかる反応に慣用の反応槽中で行い、反応は連続的に、またはバッチ式で行うことができる。一般に、対象となる反応は大気圧下で行う。しかし、反応を大気圧よりも高い圧力(superatmospheric pressure)下で行うこともできる。
【0027】
式(I)および(II)の化合物において、R1は好ましくはC1-C6-アルキル、C3-C10-シクロアルキルまたはベンジルであって、最後に記載した2つの置換基は非置換であるかまたは1、2もしくは3個の置換基を有する。好ましくは、式(I)および(II)の化合物中のR1はC1-C4-アルキル、C3-C6-シクロアルキルまたはベンジルである。非常に特に好ましくは、式(I)および(II)の化合物中のR1はC1-C4-アルキルである。
【0028】
式(I)および(II)の化合物において、R2およびR3は互いに独立して好ましくはC1-C4-アルキル、またはR2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えてO、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含むことができる。
【0029】
特に好ましくは、R2およびR3はこれら二つの置換基が結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えてO、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含むことができる(すなわちNR2R3基は窒素原子を介して結合する5〜10員複素環基である)。これらの好ましいものは式(I)および(II)の化合物自体およびそれらの、(3-ジフルオロメチルピラゾール-4-イル)カルボン酸エステルを調製するための本発明による方法における使用の両方に適用される。
【0030】
式(I)および(II)の化合物において、NR2R3基は非常に特に好ましくは、任意で置換された5または6員飽和複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別のヘテロ原子を環原子として含むことができる。特に、NR2R3基はピロリジン-1-イル、オキサゾリジン-3-イル、3-メチルイミダゾリン-1-イル、ピペリジン-1-イル、モルホリン-4-イルまたは4-メチルピペラジン-1-イルである。特に、式(I)および(II)の化合物中のNR2R3基はピペリジン-1-イル、モルホリン-4-イルまたは4-メチルピペラジン-1-イルである。
【0031】
式(I)の化合物を調製するための本発明による方法において、式(II)の化合物は、通常0.2〜3mol、好ましくは0.3〜1.5mol、特に0.5〜1.0mol、特に好ましくは0.9〜1.0molの量で用いられ、いずれの場合にもジフルオロアセチルフルオリドの1molに基づく。
【0032】
反応は出発原料(すなわち式(II)の化合物およびジフルオロアセチルフルオリド)を反応槽中で、好ましくは好適な溶媒中で互いに接触させることにより行い、一般に、式(II)の化合物および適宜溶媒を反応槽中に最初に入れる。
【0033】
式(II)の化合物とジフルオロアセチルフルオリドの反応は、通常-70〜+50℃、好ましくは-30〜+20℃、特に好ましくは-10〜0℃の範囲の温度で行う。特定の実施形態において、温度は最初に-50〜-10℃に調節し、反応の経過中に、+10〜+40℃、特に室温に上昇させる。
【0034】
式(II)の化合物とジフルオロアセチルフルオリドの反応は、通常、大気圧下で行う。しかし、ジフルオロアセチルフルオリドの沸点が低いため、選択される反応温度に応じて、高圧下で反応を行うことが有利であり得る。好適な反応圧力は、例えば0.5〜10barの範囲である。好適な耐圧反応器も当業者に知られており、例えばUllmanns Enzyklopadie der technischen Chemie[Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry],第1巻, 第3版, 1951, p.769ffに記載されている。
【0035】
式(I)の化合物を調製するための本発明による製造方法において、式(II)の化合物とジフルオロアセチルフルオリドの反応は、好ましくは、本質的に無水で(すなわち乾燥有機溶媒中で)行う。
【0036】
以下、「乾燥溶媒」は溶媒の含水量が500ppm未満(特に100ppm未満)であることを意味する。
【0037】
好適な有機溶媒の例は非極性非プロトン性溶媒、例えば芳香族炭化水素化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレンまたは(環式)脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン等、および上記溶媒の混合物である。
【0038】
同様に好適な有機溶媒の例は、非プロトン性極性溶媒、例えば環状および非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン、環状または非環状アミド、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、尿素、例えばN,N'-ジメチル-N,N'-エチレン尿素(DMEU)、N,N'-ジメチル-N,N'-プロピレン尿素(DMPU)もしくはテトラメチル尿素または脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリルもしくはプロピオニトリルならびに上記溶媒の混合物である。
【0039】
上記非極性非プロトン性有機溶媒と極性非プロトン性溶媒の混合物も好適である。
【0040】
本発明による方法の具体的な実施形態において、式(II)の化合物を式(II)の化合物と異なる塩基を加えることなく、ジフルオロアセチルフルオリドと反応させる。
【0041】
本発明による方法の別の具体的な実施形態において、式(II)の化合物を式(II)の化合物と異なる塩基の存在下でジフルオロアセチルフルオリドと反応させる。
【0042】
式(II)の化合物と異なる好適な塩基は有機塩基、例えば非環状第三級アミン、例えばトリ-C1-C6-アルキルアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、tert-ブチルジメチルアミン、N-C3-C6-シクロアルキル-N,N-ジ-C1-C6-アルキルアミンまたはN,N-ビス-C3-C6-シクロアルキル-N-C1-C6-アルキルアミン、例えばエチルジシクロヘキシルアミン、環状第三級アミン、例えばN-C1-C6-アルキル-窒素複素環、例えばN-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N'-ジメチルピペラジン、ピリジン化合物、例えばピリジン、コリジン、ルチジンまたは4-ジメチルアミノピリジンおよび二環式アミン、例えばジアザビシクロウンデセン(DBU)またはジアザビシクロノネン(DBN)である。
【0043】
同様に式(II)の化合物と異なる塩基として好適なのは無機化合物、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸リチウムまたは炭酸カルシウム、アルカリ金属重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属酸化物、例えば酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウムまたは酸化マグネシウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属水素化物、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムまたは水素化カルシウム、またはアルカリ金属アミド、例えばリチウムアミド、ナトリウムアミドまたはカリウムアミドである。
【0044】
好ましくは、式(I)の化合物を調製するための本発明による方法における式(II)の化合物と異なる塩基は有機塩基から選択される。特に好ましくは、塩基は非環状第3級アミンから選択され、特にトリエチルアミンである。
【0045】
式(II)の化合物と異なる塩基は化合物(II)に対して約等モル量で(例えば化合物(II)の1mol当たり約0.8〜1.2molの量で)、または化合物(II)に対して触媒量で(例えば化合物(II)の1mol当たり約0.001〜0.2molの量で)用いることができる。しかし、塩基は式(II)の化合物に対して大過剰で(例えば溶媒として)用いることもできる。
【0046】
通常、式(I)の化合物は、-C(O)OR1基の過剰な加水分解を防止するため、およそ中性pH条件(すなわち4〜10の範囲のpH)で、または非水性条件下で単離される。
【0047】
しかし、以下に記載する対応するピラゾール-4-イルカルボン酸エステルへの変換については、式(I)の化合物の単離は必要でない。それどころか、化合物(I)の単離を省略し、粗生成物として、または本発明による方法において得られる反応混合物の形態で対応するピラゾール-4-イルカルボン酸エステルへと変換することが有利であることが見出された。
【0048】
本発明による方法では、式(II)の化合物から式(I)の化合物が優れた〜非常に優れた収率(すなわち、一般に少なくとも70%、多くは、少なくとも80%の収率)で得られる。
【0049】
一般式(II)で表される化合物は市販されており、または、例えばスキーム1または2に例示するように、公知の化合物と同様に調製できる。
【0050】
スキーム1
【化4】

【0051】
スキーム1は、式(VI.a)のα,β-不飽和エステル(式中、R1は上記の意味の1つを有し、LGは脱離基、例えばアルコキシ基、例えばC1-C6-アルコキシである)と式NHR2R3のアミン(式中、R2およびR3は上記の意味の1つを有する)を塩基(例えばK2CO3)の存在下で反応させることによる式(II)の化合物の調製を示す。この反応を行う好適な方法は当業者に知られている。
【0052】
スキーム2
【化5】

【0053】
また、式(II)の化合物は式(VI.b)のβ-ヒドロキシアクリル酸エステル塩(式中、R1は上記の意味の1つを有し、M+は、例えばアルカリ金属陽イオン、例えばNa+またはK+である)と式NHR2R3・HClの塩化アンモニウムの反応によりEP 0388744と同様に得ることができる。
【0054】
式(VI.b)の化合物は、例えば、対応する酢酸エステルとCOおよび式M+-O-Alkのアルコキシド(式中、Alkは、例えばC1-C4-アルキルである)の反応により提供できる。
【0055】
式(I)の化合物のジフルオロメチルピラゾリルカルボン酸エステルへの変換の際、式NHR2R3のアミンが副生成物として得られ、反応後、それらを有利に回収することができ、適宜その塩酸塩であるNHR2R3*HClへと変換することができ、スキーム1または2による式(II)の化合物の提供に再使用する。
【0056】
本発明に従った方法により調製される式(I)の化合物(式中、R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に複素環基である)は同様に新規である。
【0057】
したがって、本発明の別の主題は、式(I)
【化6】

【0058】
[式中、R1は上記の意味の1つを有し、R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含むことができる]
の化合物に関する。
【0059】
式(I)の化合物(式中、R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に複素環基である)はジフルオロメチル-置換ピラゾール-4-イルカルボン酸エステルの調製について、特に有利に好適である。
【0060】
したがって、本発明の別の主題は式(III)
【化7】

【0061】
[式中
R1はC1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C2-C6-アルケニル、C3-C10-シクロアルキルまたはベンジルであって、最後に記載した2つの置換基は非置換であるかまたはハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有し;
R4は水素、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C3-C10-シクロアルキル、フェニルまたはベンジルであって、最後に記載した3つの置換基は非置換であるかまたはハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有する]
のジフルオロメチル-置換ピラゾール-4-イルカルボン酸エステルの調製方法であって
a)式(I)
【化8】

【0062】
[式中、R1は上記の意味の1つを有し、R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含むことができる]
の化合物を提供するステップ、および
b)ステップa)において得られた式(I)の化合物を式(IV)
R4HN-NH2 (IV)
(式中、R4は上記の意味の1つを有する)
のヒドラジン化合物と反応させるステップ
を含む、上記調製方法に関する。
【0063】
式(III)の化合物を調製するための本発明による方法は多くの利点を伴う。本発明による方法は式(III)の化合物を高収率で提供する。さらに、R4がHと異なる意味を有する場合には、式(III)の化合物は副生成物として形成する(5-ジフルオロメチルピラゾール-4-イル)カルボン酸エステルに対して高い選択性で調製される。したがって、異性体の混合物の複雑な分離を省略することができ、または少なくとも制限できる。さらに、本発明による方法は無水、および水の存在下の両方で行うことができ、同時に式(III)の化合物の十分な収率および過剰を達成する。
【0064】
好ましくは、式(III)の化合物中のR1基は式(I)および(II)の化合物中のR1基の好ましい意味として上記した意味の1つを有する。
【0065】
本発明による方法の具体的な実施形態おいて、式(III)および(IV)の化合物中のR4基は水素とは異なる意味を有する。本発明による方法により、式(III)(式中、R4は水素とは異なる意味である)の化合物を対応する5-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステルに対して特に高い選択性で調製できる。
【0066】
好ましくは、式(III)および(IV)の化合物中のR4基はC1-C4-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、フェニルまたはベンジルであって、最後に記載した3つの置換基は非置換であるかハロゲン、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-アルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有する。特に好ましくは、式(III)および(IV)の化合物中のR4はC1-C6-アルキル、特にC1-C4-アルキル、特にメチルである。
【0067】
好ましくは、式(III)および(IV)の化合物中のR4基はC1-C4-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、フェニルまたはベンジルであって、最後に記載した3つの置換基は非置換であるかハロゲン、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-アルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有する。特に好ましくは、式(III)および(IV)の化合物中のR4はC1-C6-アルキル、特にC1-C4-アルキル、特にメチルである。
【0068】
好ましくは、式(III)の化合物を調製するための本発明による方法における式(I)の化合物の提供(ステップa)は、式(I)の化合物を調製するための上記方法により行う。
【0069】
式(III)の化合物を調製するための本発明による方法の具体的な実施形態において、反応混合物を式(I)の化合物を事前に単離することなく、式(IV)のヒドラジン化合物と反応させる(反応混合物は式(I)の化合物を含み、上記に記載の方法により調製される)。
【0070】
ステップb)
好ましくは、式(IV)のヒドラジン化合物は式(I)の成分に対して等モル量または過剰に用いられ、比較的に大過剰の化合物(IV)(例えば、20mol%より多く)は一般的には必要でない。好ましくは、化合物(I)の1mol当たり1.0〜1.2mol(特に約1.01〜1.15mol)のヒドラジン化合物(IV)が用いられる。
【0071】
式(IV)のヒドラジン化合物は、好ましくはC1-C6-アルキルヒドラジン(特にC1-C4-アルキルヒドラジン)である。特に、一般式(IV)の化合物はメチルヒドラジンである。
【0072】
式(III)の化合物中のR4が水素である場合には、使用される式(IV)の化合物は、好ましくはヒドラジン水和物である。
【0073】
式(I)の化合物とヒドラジン化合物(IV)の反応は、通常、式(IV)のヒドラジン化合物を最初に好適な溶媒中に入れ、所望の反応温度に設定し、その後、式(I)の化合物を、適宜溶液および/または前記提供中に得られた反応混合物の形態で加えるように行う。
【0074】
好ましくは、式(IV)のヒドラジン化合物を最初に、有機溶媒または溶媒/水の混合物中の溶液として入れる。また、式(IV)のヒドラジン化合物を(好ましくは有機溶媒または溶媒/水の混合物中の溶液として)、適宜有機溶媒または溶媒/水の混合物中の溶液の形態の式(I)の化合物に加えることもできる。
【0075】
式(I)の化合物とヒドラジン化合物(IV)の反応に好適な有機溶媒は、例えば極性プロトン性溶媒、例えば好ましくは1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、特にメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールまたはtert-ブタノール、非極性非プロトン性溶媒、例えば芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンまたはtert-ブチルベンゼン、極性非プロトン性溶媒、例えば環状または非環状エーテル、特にジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン、環状または非環状アミド、特にジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、尿素、例えばN,N'-ジメチル-N,N'-エチレン尿素(DMEU)、N,N'-ジメチル-N,N'-プロピレン尿素(DMPU)もしくはテトラメチル尿素、または脂肪族ニトリル、特にアセトニトリルもしくはプロピオニトリルまたは上記の溶媒の混合物である。
式(I)の化合物とヒドラジン化合物(IV)の反応は、適宜、塩基の存在下で行うことができる。
【0076】
この目的で好適な塩基は有機塩基、例えば上記の非環状第三級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、tert-ブチルジメチルアミンまたはエチルジシクロヘキシルアミン、上記の環状第三級アミン、例えばN-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N'-ジメチルピペラジン、ピリジン、コリジン、ルチジンまたは4-ジメチルアミノピリジン、または二環式アミン、例えばジアザビシクロウンデセン(DBU)もしくはジアザビシクロノネン(DBN)である。
【0077】
同様に塩基として好適なのは無機化合物、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属酸化物、例えば酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウムまたは酸化マグネシウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸リチウムまたは炭酸カルシウム、アルカリ金属重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属水素化物、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムもしくは水素化カルシウムまたはアルカリ金属アミド、例えばリチウムアミド、ナトリウムアミドまたはカリウムアミドである。
【0078】
塩基は化合物(I)に対して約等モル量(例えば化合物(I)の1mol当たり約0.8〜1.2molの量)で、または化合物(I)に対して触媒量(例えば化合物(I)の1mol当たり約0.001〜0.2molの量)で用いることができる。しかし、塩基は式(II)の化合物に対して大過剰で(例えば溶媒として)用いることもできる。
【0079】
塩基を加えることにより、場合によって、副生成物として形成する5-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステルに対して相対的に大過剰の式(III)の3-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステルを得ることができる。
【0080】
式(III)の化合物を調製するための本発明による方法の具体的な実施形態において、式(I)の化合物と式(IV)のヒドラジン化合物の反応は水の存在下で行う。ここで、反応混合物中の少量の水(1000ppm)でさえ十分である。含水量を記載する場合には、反応中に放出される水は考慮しない。
【0081】
一般に、反応混合物の含水量は、50容量%、多くは30容量%、特に15容量%を超えず、多くは0.1〜50容量%の範囲、好ましくは0.5〜30容量%の範囲、特に1〜15容量%の範囲である。
【0082】
式(I)の化合物の反応は、通常、水の存在下、-80〜+100℃の温度で行う。具体的な実施形態において、反応の初めに温度を-50〜+20℃(特に-15〜+10℃)に設定し、反応の経過中に+10〜+40℃の温度(特に室温)まで上昇させる。
【0083】
式(I)の化合物の反応を水と塩基の存在下で行う場合には、塩基は、好ましくは上記無機化合物、特に上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基、特にアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、例えばNaOHまたはKOHから選択される。使用量については上記に記載したことを適用する。
【0084】
本発明による方法では、式(I)の化合物を水の存在下で反応させると、式(III)の化合物が優れた収率(すなわち、一般に、少なくとも60%、多くは、少なくとも70%の収率)で得られる。さらに、R4がHと異なる意味を有する場合には、本方法のこの実施形態は式(III)の化合物を対応する5-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステルに対して高い選択性で(すなわち、一般に、3-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステル対5-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステルの比が、少なくとも2.5:1、多くは、少なくとも5:1で)生じさせる。好適な塩基の存在下で、少なくとも10:1または20:1の比がしばしば得られる。
【0085】
式(III)の化合物を調製するための本発明による方法の別の具体的な実施形態において、式(I)の化合物と式(IV)のヒドラジン化合物の反応は本質的に無水で行われ、すなわち反応混合物が500ppm未満、特に100ppm未満の含水量を有する。反応中に放出される水は記載する含水量に考慮しない。
【0086】
通常、式(I)の化合物の反応を本質的に無水で行う本発明による方法は-80〜+100℃の温度で行う。具体的な実施形態において、反応の初めに温度を-80〜-10℃(特に-60〜-30℃)に設定し、反応中に+10〜+40℃(特に室温)まで上昇させる。
【0087】
式(I)の化合物の反応を本質的に無水で行う本発明による方法を塩基の存在下で行う場合には、この塩基は、好ましくはアルカリ土類金属およびアルカリ金属炭酸塩ならびに上記有機塩基、特に有機塩基、特に上記ピリジンおよび非環状第三級アミン、例えばピリジンまたはトリエチルアミンから選択される。使用量については、上記で記載したことを適用する。
【0088】
式(I)の化合物の反応を本質的に無水で行う本発明による方法では式(III)の化合物が優れた〜非常に優れた収率(一般に、少なくとも80%、多くは、少なくとも90%の収率)で得られる。さらに、R4がHと異なる意味を有する場合には、本方法のこの実施形態は式(III)の化合物を、対応する5-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステルに対して非常に高い選択性(一般に、3-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステル対5-ジフルオロメチルピラゾール-4-イルカルボン酸エステルの比が、少なくとも10:1、多くは、少なくとも20:1で)で生じさせる。
【0089】
得られた反応混合物の後処理(Work-up)および式(III)の化合物の単離は、慣用の方法、例えば、溶媒を(例えば減圧下で)除去することにより、水性抽出後処理(work-up)により、またはこれらの手段の組み合わせにより行う。さらなる精製を、例えば、結晶化またはクロマトグラフィーにより行ってもよい。多くの場合、生成物はさらなる精製ステップが不必要である純度で得られる。
【0090】
式(I)の化合物をジフルオロメチルピラゾリルカルボン酸エステルへと変換する際に、式NHR2R3のアミンが副生成物として得られる。これらのアミンは当業者に公知の好適な手段により単離でき、式(II)の化合物を提供するために使用できる。式NHR2R3のアミンの単離は例えば、慣用の分離方法により(例えばpH調節による沈澱または抽出により)行うことができる。
【0091】
式(III)の化合物を加水分解し、対応するジフルオロメチル-置換ピラゾール-4-イルカルボン酸を与えることができる。
【0092】
したがって、本発明の別の主題は式(V)
【化9】

【0093】
(式中、R4は上記の意味の1つを有する)
のピラゾール-4-カルボン酸を調製するための方法であって、本発明に従った方法による上記で定義した式(III)の化合物の提供と提供された式(III)の化合物中のエステル基の加水分解を含み、式(V)のピラゾールカルボン酸が得られる前記方法に関する。
【0094】
式(V)の化合物を調製するための本発明による方法の具体的な実施形態において、式(III)の化合物を調製するための本発明に従った方法により提供され、式(III)の化合物を含む反応混合物は式(III)の化合物を事前に単離することなく、加水分解される。
【0095】
化合物(III)中のエステル基の加水分解は酸触媒または塩基性または他の条件下で行うことができる。化合物(III)はそのもの(すなわち、単離後のもの)を用いることができる。しかし、ステップb)で得られた反応混合物を、適宜、溶媒などの揮発成分の除去後に、式(III)の化合物の単離を行うことなく反応させることもできる。
【0096】
化合物(III)の塩基性加水分解において、式(III)の化合物は、通常、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウム、好ましくはアルカリ金属水酸化物の水溶液またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液、特にNaOH水溶液またはKOH水溶液と、好ましくは加熱しながらエステルが完全に加水分解するまで処理する。
【0097】
塩基性加水分解において、式(III)の化合物対塩基のモル比は、通常、0.8:1〜1:10の範囲、特に約等モル、例えば0.8:1〜1.2:1の範囲である。しかし、相対的に大過剰の塩基(例えば、化合物(III)の1mol当たり5mol以下)も有利であり得る。
【0098】
通常、塩基性加水分解は希釈剤または溶媒中で行う。好適な希釈剤または溶媒は、水に加えて、アルカリ側で安定性のある有機溶媒と水の混合物である。アルカリ側で安定性のある有機溶媒の例は、特に上記C1-C4-アルコール、ならびに上記非環状および環状エーテルである。
【0099】
同様に好適なのは非極性溶媒、例えば芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレンまたは(環式)脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサンなどと水の混合物である。
【0100】
塩基性加水分解は、好ましくは20〜100℃の温度で行う。一般に、温度の上限は、反応を大気圧下で行なうならば、使用する溶媒の沸点である。好ましくは、反応温度は100℃(特に90℃)を超えない。ここで、反応時間は反応温度、対象のエステル化合物の濃度と安定性に依存する。一般に、反応条件は、反応時間が0.5〜12時間の範囲(特に1〜6時間の範囲)となるように選択される。
【0101】
化合物(III)のエステル基の酸加水分解は公知の酸エステル加水分解と同様にして(すなわち、触媒量または化学量論量の酸および水の存在下で)行なうことができる(例えば、J. March, Advanced Organic Chemistry, 第2版, 334-338, McGraw-Hill, 1977、およびそこで引用されている文献を参照されたい)。多くの場合、反応は水と非プロトン性有機溶媒(例えば、上記エーテル)の混合物中で行う。好適な酸の例は、ハロゲン化水素酸、硫酸、有機スルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、および酸性のイオン交換樹脂などである。
【0102】
好適な加水分解触媒は、さらにアルカリ金属ヨウ化物、ヨウ化リチウム、トリメチルヨードシラン、またはトリメチルクロロシランとアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウムもしくはヨウ化カリウム)の混合物である。
【0103】
酸(V)は慣用の分離方法によって、例えばpH調節による沈澱または抽出などにより単離される。
【0104】
非極性溶媒と水の混合物を反応媒体として使用すると、式(V)の酸を塩基性pH条件下で水相中の溶液として、続いて酸性pHに調節することによりその水溶液から固体として沈殿させることにより分離するのに特に有利であることが見出された。式(III)の化合物を本発明による方法により提供される反応混合物の形態で、事前の式(III)の化合物の単離をすることなく加水分解すると、この手順により前駆体の副生成物として式NHR2R3のアミンが分離された有機相中の溶液として得られ、そのアミンは式(II)の化合物を提供するために使用できる。
【0105】
一般式(III)および(V)の化合物は活性化合物として興味深い多数の化合物を合成するために、例えば3-ジフルオロメチルピラゾール-4-カルボキサミド、特に3-ジフルオロメチルピラゾール-4-カルボキシアニリド(carboxanilide)を調製するために好適である。
【0106】
カルボン酸またはハロゲン化カルボニルと芳香族アミンを反応させることによるアニリドを調製するために好適な方法は、例えば冒頭で引用した先行技術およびJ. March, Advanced Organic Chemistry, 第2版, 382f, McGraw-Hill, 1977とOrganikum, 第21版, Wiley-VCH, Weinheim 2001, pp. 481-484およびそこで引用されている文献から当業者に知られている。
【0107】
このルートにより調製できる3-ジフルオロメチルピラゾール-4-カルボキサミドの例は:
N-(2-ビシクロプロピル-2-イルフェニル)-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3',4',5'-トリフルオロビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(2',4',5'-トリフルオロビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3',4'-ジクロロ-3-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3',4'-ジフルオロ-3-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3'-クロロ-4'-フルオロ-3-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3',4'-ジクロロ-4-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3',4'-ジフルオロ-4-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3'-クロロ-4'-フルオロ-4-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3',4'-ジクロロ-5-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3',4'-ジフルオロ-5-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3'-クロロ-4'-フルオロ-5-フルオロビフェニル-2-イル)-1-メチル-3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-[2-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-[4'-(トリフルオロメチルチオ)ビフェニル-2-イル]-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-N-[1,2,3,4-テトラヒドロ-9-(1-メチルエチル)-1,4-メタノナフタレン-5-イル]-1H-ピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3'-クロロ-5-フルオロビフェニル-2-イル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(4'-クロロ-5-フルオロビフェニル-2-イル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(4'-クロロビフェニル-2-イル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(4'-ブロモビフェニル-2-イル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(4'-ヨードビフェニル-2-イル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(3',5'-ジフルオロビフェニル-2-イル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(2-クロロ-4-フルオロフェニル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
N-(2-ブロモ-4-フルオロフェニル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミドおよび
N-(2-ヨード-4-フルオロフェニル)-3-(ジフルオロメチル)-1-メチルピラゾール-4-イルカルボキサミド
である。
【0108】
以下、本発明をより詳細に例示するが、実施例に限定されない。
【実施例】
【0109】
1.式(I)の化合物の調製
調製例I.1: エチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート(代替手段1)
初めに、エチル3-ピペリジン-1-イルアクリレート(94%, 9.4g, 48mmol)とトリエチルアミン(5.2g, 51mmol)を100mlのトルエンに入れ、-30℃に冷却した。その後、この温度でジフルオロアセチルフルオリド(5g, 51mmol)を導入した。反応混合物を-30℃で3時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(50ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。エチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレートがオレンジ色の油(量:13.0g; GCによる純度:91.2%; 収率:94%)として得られた。1H-NMR(CDCl3):δ=1.3(t,3H), 1.75(m,6H), 3.3 (m,2H), 3.6 (m,2H), 4.25 (q,2H), 6.6(t,1H), 7.85ppm(s,1H)。
【0110】
調製例I.2: エチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート(代替手段2)
初めに、エチル3-ピペリジン-1-イルアクリレート(94%, 9.4g, 48mmol)をトルエン(100ml)に入れ、-30℃に冷却した。この温度で、ジフルオロアセチルフルオリド(5.0g, 51mmol)を反応混合物に導入した。その後、トリエチルアミン(5.2g, 51mmol)を反応混合物に加えた。反応混合物を-30℃で3時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(50ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。エチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレートがオレンジ色の油(量:12.6g; GCによる純度:85.5%; 収率: 85.5%)として得られた。
【0111】
調製例I.3: エチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート(代替手段3)
初めに、エチル3-ピペリジン-1-イルアクリレート(94%, 9.4g, 48mmol)をトルエン(100ml)に入れ、-30℃に冷却した。この温度で、ジフルオロアセチルフルオリド(5.0g, 51mmol)を導入した。その後、トリエチルアミン(7.7g, 77mmol)を反応混合物に加えた。反応混合物を-30℃で3時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(50ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。エチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレートがオレンジ色の油(量:12.3 g; GCによる純度: 85.4%; 収率:83.4%)として得られた。
【0112】
調製例I.4: エチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート(代替手段4)
初めに、エチル3-ピペリジン-1-イルアクリレート(94%, 9.4g, 48mmol)をトルエン(100ml)に入れ、-30℃に冷却した。この温度で、ジフルオロアセチルフルオリド(5.0g, 51mmol)を導入した。その後、トリブチルアミン(9.5g, 51mmol)を反応混合物に加えた。反応混合物を-30℃で3時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(50ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。エチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレートがオレンジ色の油(量:12.7g; GCによる純度: 82.15%; 収率:82.8%)として得られた。
【0113】
調製例I.5: メチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート
初めに、メチル3-ピペリジン-1-イルアクリレート(96.7%, 50.7g, 289mmol)とトリエチルアミン(31.07g, 307mol)をトルエン(300ml)に入れ、-30℃に冷却した。この温度で、ジフルオロアセチルフルオリド(30.1g 307mmol)を導入した。反応混合物を-30℃で3時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(150ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。メチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレートがオレンジ色の油(量:69.7g; GCによる純度:92.3%; 収率:90%)として得られた。1H-NMR(CDCl3):δ=1.75(m,6H), 3.3(m,2H), 3.62(m,2H), 3.75(s,3H), 6.62(t,1H), 7.89ppm(s,1H)。
【0114】
調製例I.6: メチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート(I.5についての比較例(本発明によらない))
初めに、メチル3-ピペリジン-1-イルアクリレート(99%, 26.6g, 155mmol)とトリエチルアミン(17.3g, 171mmol)をトルエン(300ml)に入れ、-30℃に冷却した。この温度で、ジフルオロアセチルクロリド(20g, 171mmol)を導入した。反応混合物を-30℃で3時間撹拌し、別の200mlのトルエンを加え、懸濁液を攪拌可能な状態に保ち、その後、混合物を1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(200ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。メチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレートがオレンジ色の油(量:37.6g; 定量NMRによる純度:82.2%; 収率:80.3%)として得られた。
【0115】
調製例I.7: メチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート
初めに、メチル3-ピペリジン-1-イルアクリレート(99%, 8.7g, 51mmol)とピリジン(4.26g, 54mmol)をトルエン(150ml)に入れ、-30℃に冷却した。この温度で、ジフルオロアセチルフルオリド(10g, 61mmol)を導入した。反応混合物を-30℃で3時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(200ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。メチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレートがオレンジ色の油(量:12.0g; GCによる純度:97.7%; 収率:93.2%)として得られた。
【0116】
調製例I.8: メチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(モルホリン-4-イルメチリデン)ブチレート
初めに、メチル3-モルホリン-4-イルアクリレート(96.3%, 8.5g, 50mmol)とトリエチルアミン(5.2g, 50mmol)をトルエン(250ml)に入れ、-30℃に冷却した。この温度で、ジフルオロアセチルフルオリド(5.0g, 50mmol)を導入した。反応混合物を-30℃で3時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。減圧下、反応混合物から溶媒を除去した。得られた残留物は15.5gのオレンジ色の固体であって、66.4%(定量1H-NMRによる)のメチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(モルホリン-4-イルメチリデン)ブチレート(収率:82%)からなった。1H-NMR(CDCl3):δ= 3.4(m,2H), 3.7(m,2H), 3.75(s,3H), 3.85(m,2H), 6.6(t,1H), 7.85ppm(s,1H)。
【0117】
調製例I.9: メチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(2,6-ジメチルモルホリン-4-イルメチリデン)ブチレート
初めに、メチル3-(2,6-ジメチルモルホリン-4-イル)アクリレート(93.5%, 17.5g, 82mmol)とトリエチルアミン(8.8g, 87mmol)をトルエン(150ml)に入れ、-30℃に冷却した。この温度で、ジフルオロアセチルフルオリド(10.0g, 100mmol)を導入した。反応混合物を-30℃で3時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(100ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物は21.4gのオレンジ色の固体であって、90.8%(GC分析による)のメチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(2,6-ジメチルモルホリン-4-イルメチリデン)ブチレート(収率:85.3%)からなった。1H-NMR(CDCl3):δ=1.2(s,3H), 1.25(s,3H), 2.95(m,1H), 3.25(m,1H), 3.5(m,1H), 3.75(m,2H), 3.8(s,3H), 6.6(t,1H), 7.85ppm(s,1H)。
【0118】
2.式(III)の化合物の調製例
調製例III.1: エチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(代替手段1)
メチルヒドラジン(0.33g, 7mmol)をトルエン(50ml)に溶解させ、-50℃に冷却した。この温度でトルエン(50ml)中のエチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート溶液(85.5%, 2.0g, 6.5mmol)を反応混合物に滴下して加えた。反応混合物を-50℃で2時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。減圧下で反応混合物から溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル(50ml)中に溶解させ、脱イオン水(50ml)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させた後、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物はエチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(量:1.7g; GCによる純度:76.3%(3-異性体に基づく); 収率:97%)であった。残留物中の3-異性体対5-異性体の異性体比は97:3であった。1H-NMR (CDCI3):δ=1.35(t,3H), 3.95(s,2H), 4.3(q,2H), 7.12(t,1H), 7.9ppm(s,1H)。
【0119】
調製例III.2: エチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(代替手段2)
メチルヒドラジン水溶液(35%, 0.95g, 7mmol)をトルエン(50ml)と混合し、-50℃に冷却した。この温度でトルエン(50ml)中のエチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート溶液(85.5%, 2.0g, 6.5mmol)を反応混合物に滴下して加えた。反応混合物を-50℃で2時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。減圧下で反応混合物から溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル(50ml)中に溶解させ、脱イオン水(50ml)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させた後、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物はエチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(量:1.7g; GCによる純度:59.3%(3-異性体に基づく); 収率:75.4%)であった。残留物中の3-異性体対5-異性体の異性体比は76:24であった。
【0120】
調製例III.3:エチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(代替手段3)
メチルヒドラジン水溶液(35%, 0.95g, 7mmol)をトリエチルアミン(0.66g, 6.5mol)およびトルエン(50ml)と混合し、-50℃に冷却した。この温度でトルエン(50ml)中のエチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)-ブチレート溶液(85.5%, 2.0g, 6.5mmol)を滴下して加えた。反応混合物を-50℃で2時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。減圧下で反応混合物から溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル(50ml)に溶解させ、脱イオン水(50ml)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させた後、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物はエチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(量: 1.8g; GCによる純度:64.5%(3-異性体に基づく); 収率:73.4%)であった。残留物中の3-異性体対5-異性体の異性体比は84:16であった。
【0121】
調製例III.4: エチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(代替手段4)
メチルヒドラジン水溶液(35%, 0.95g, 7mmol)を分子篩(5.0g)およびトルエン(50ml)と混合し、-50℃に冷却した。この温度でトルエン(50ml)中のエチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート溶液(85.5%, 2.0g, 6.5mmol)を滴下して加えた。反応混合物を-50℃で2時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。その後、反応混合物をろ過し、減圧下で溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル(50ml)中に溶解させ、脱イオン水(50ml)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させた後、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物はエチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(量:1.3g; GCによる純度:72.9%(3-異性体に基づく); 収率:71.0%)であった。残留物中の3-異性体対5-異性体の異性体比は88:12であった。
【0122】
調製例III.5: エチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(代替手段5)
メチルヒドラジン水溶液(35%, 1.03g, 8mmol)を水酸化ナトリウム水溶液(10%, 2.6g, 6.5mmol)およびエタノール(50ml)と混合し、-3℃に冷却した。この温度でトルエン(50ml)中のエチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート溶液(85.5%, 2.0g, 6.5mmol)を滴下して加えた。反応混合物を-3℃で2時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。その後、減圧下で反応混合物から溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル(50ml)中に溶解させ、脱イオン水(50ml)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させた後、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物はエチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(量:1.0g; GCによる純度:80.6%(3-異性体に基づく); 収率:66.3%)であった。残留物中の3-異性体対5-異性体の異性体比は98:2であった。
【0123】
調製例III.6: メチル3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イル-カルボキシレート
-50℃で、トルエン(150ml)中のメチル4,4-ジフルオロ-3-オキソ-2-(1-ピペリジン-1-イルメチリデン)ブチレート溶液(97.9%, 20.0g, 79mmol)をトルエン(150ml)中のヒドラジン水和物溶液(100%, 4.36g, 87mmol)に滴下して加えた。反応混合物を-50℃で2時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(100ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(100ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、NaClの飽和水溶液(100ml)で洗浄した後、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物(9.2g)は65.3%(GC分析による)のメチル3-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イル-カルボキシレート(収率:66%)からなった。1H-NMR(CDCl3):δ= 3.9(s,3H), 7.25(t,1H), 8.2ppm(s,1H)。
【0124】
3.式(V)の化合物の調製
調製例V.1: 3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボン酸
エチル3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボキシレート(1.4g, 52mmol)と水酸化ナトリウム水溶液(10%濃度, 3.1g, 8mmol)の混合物を60℃で2時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却した後、濃塩酸を使用してpH1に調節した。反応混合物をさらに0℃に冷却すると、固体の沈殿物が得られた。沈殿した固体をろ過し、シクロヘキサンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボン酸が固体(量:0.8g; 収率:87%)として得られた。1H-NMR(DMSO-d6):δ=3.9(s,2H), 7.2(t,1H), 8.35ppm(s,1H)。
【0125】
調製例V.2: 3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボン酸(ワンポットバッチ)
-30℃でジフルオロアセチルフルオリド(18.7g, 0.187mol ;98%)をトルエン(250ml)中のメチル3-ピペリジン-1-イルアクリレート(99%, 29.05g, 0.17mol)とトリエチルアミン (25.8g, 0.255mol)の溶液に導入した。反応混合物を-30℃で3時間撹拌し、その後、混合物を1時間かけて室温に加温した。反応混合物を脱イオン水(250ml)で洗浄した。相分離後、水相をトルエン(200ml)で1度抽出した。トルエン相を混合し、減圧下で約350mlに濃縮した。このようにして得られた反応溶液を-50℃で、トルエン中(150ml)のメチルヒドラジン溶液(8.78g, 0.187mol)に滴下して加えた。反応混合物を-50℃で2時間撹拌した後、1時間かけて室温に加温した。その後、水酸化ナトリウム水溶液(10%, 105.3g, 0.263mol)を加え、反応混合物をリフラックス条件下で2時間加熱した。室温に冷却後、相を分離した。トルエン相を水酸化ナトリウム水溶液(10%濃度, 100ml)で抽出した。水相を混合し、(濃)塩酸を使用してpH1に調節し、0℃に冷却した。沈殿した固体をろ過し、シクロヘキサンで洗浄し、60℃、減圧下で乾燥させた。3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルカルボン酸が21.1gの量(収率:65%)、91%の純度(定量HPLCによる)で得られた。1H-NMR(CDCl3):δ= 3.85(s,2H), 3.95(s,3H), 7.12(t,1H), 7.9ppm(s,1H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
R1はC1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C2-C6-アルケニル、C3-C10-シクロアルキルまたはベンジルであって、最後に記載した2つの置換基は非置換であるかまたはハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有し;
R2およびR3は互いに独立してC1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C2-C6-アルケニル、C3-C10-シクロアルキルまたはベンジルであって、最後に記載した2つの置換基は非置換であるかまたはハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有し;または
R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含んでいてもよい]
の化合物の調製方法であって、
式(II)
【化2】

(式中、R1、R2およびR3は上記の意味の1つを有する)
の化合物をジフルオロアセチルフルオリドと反応させる前記方法。
【請求項2】
R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含んでいてもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
NR2R3が任意で置換された5-または6員飽和複素環基であって、窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別のヘテロ原子を環原子として含むことができる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
NR2R3がピロリジン-1-イル、オキサゾリジン-3-イル、3-メチルイミダゾリン-1-イル、ピペリジン-1-イル、モルホリン-4-イルまたは4-メチルピペラジン-1-イルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(II)の化合物とジフルオロアセチルフルオリドの反応を本質的に無水で行う、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(II)の化合物をジフルオロアセチルフルオリドと塩基を加えることなく反応させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式(II)の化合物をジフルオロアセチルフルオリドと塩基の存在下で反応させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
塩基が有機塩基から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塩基が第3級アミンから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(I)
【化3】

[式中、
R1は上記の意味の1つを有し、R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含むことができる]
の化合物。
【請求項11】
式(III)
【化4】

[式中、
R1はC1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C2-C6-アルケニル、C3-C10-シクロアルキルまたはベンジルであって、最後に記載した2つの置換基は非置換であるかまたはハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有し;
R4は水素、C1-C6-アルキル、C1-C6-ハロアルキル、C3-C10-シクロアルキル、フェニルまたはベンジルであって、最後に記載した3つの置換基は非置換であるかまたはハロゲン、CN、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシからなる群から互いに独立して選択される1、2もしくは3個の置換基を有する;]
のジフルオロメチル-置換ピラゾール-4-イルカルボン酸エステルの調製方法であって、
a)式(I)
【化5】

[式中、R1は上記の意味の1つを有し、R2およびR3はこれらが結合する窒素原子と一緒に、任意で置換された5〜10員複素環基であり、該複素環基は窒素原子に加えて、O、NおよびSからなる群から選択される別の1、2もしくは3個のヘテロ原子を環原子として含むことができる]
の化合物を提供するステップ、および
b)ステップa)において提供された式(I)の化合物を式(IV)
R4HN-NH2 (IV)
(式中、R4は上記の意味の1つを有する)
のヒドラジン化合物と反応させるステップ
を含む、前記方法。
【請求項12】
式(III)および(IV)の化合物中のR4がC1-C4-アルキルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(I)の化合物が請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法により提供される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
式(I)の化合物の事前の単離をすることなく、式(I)の化合物が請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法により得られる反応混合物の形態で提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(I)の化合物と式(IV)のヒドラジン化合物の反応を本質的に無水で行う、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の化合物と式(IV)のヒドラジン化合物の反応を水の存在下で行う、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
式(V)
【化6】

(式中、R4は上記の意味の1つを有する)
のピラゾール-4-カルボン酸の調製方法であって、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法による式(III)の化合物の提供および提供された式(III)の化合物の加水分解を含む、前記方法。
【請求項18】
式(III)の化合物の事前の単離をすることなく、式(III)の化合物を請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法により提供される反応混合物の形態で加水分解する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
加水分解をアルカリ金属水酸化物の水溶液またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液の存在下で行う、請求項17または18に記載の方法。

【公表番号】特表2011−519841(P2011−519841A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506724(P2011−506724)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055283
【国際公開番号】WO2009/133178
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany