説明

2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体の製造方法

【課題】新規の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】相間移動触媒およびオキシ化剤の存在下、相間始動触媒として4級ホスホニウムイオンを使用することによる、およびオキシ化剤としてOYイオンを使用することによる、下記式(2)の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体における基Xの、基OYへの変換方法。[Xはハロゲンを表し、RおよびRおよびRはそれぞれ独立にC1−4アルキル基を表し、またはRおよびRはそれらが結合するC−原子と一緒になって、5または6員シクロアルキルを表し;YはR−CO−またはR−SO−を表し、ここでR、Rは1〜12のC−原子を有するアルキル基またはアリール基の群から選択される。]

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
本発明は、式1の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体:
【0002】
【化1】

【0003】
[式中、R、RおよびRは、各々独立に、C1−4アルキル基であり、または式中、RおよびRは、それらが結合するC−原子と一緒になって、5または6員シクロアルキルを形成し、および式中、Yは、R−CO−またはR−SO−を表し、ここでR、Rは、1〜12のC−原子を有するアルキルまたはアリールの群から選択される]
の、相間移動触媒およびオキシ化剤(oxylating agent)の存在下、その対応する式2の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体:
【0004】
【化2】

【0005】
[式中、R、RおよびRは既に定義したとおりであり、およびXはハロゲンを表す]
からの製造方法に関する。
【0006】
式2の化合物からの式1の化合物の製造は、4級アンモニウム塩(相間移動触媒)およびカルボン酸塩(アシルオキシ化剤)の存在下達成され、当該方法はEP1024139により知られている。
【0007】
本発明の目的は、式1の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体の、その対応する式2の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体からの代替の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、当該目的は、相間移動触媒として式3の4級ホスホニウムイオン:
【0009】
【化3】

【0010】
[式中、R、R、R、Rは、各々独立に、1〜12のC−原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アラルキルまたはアリールを表す]
およびオキシ化剤として式4のイオン
YO (4)
[式中、Yは既に定義したとおりである]
を使用することにより達成される。当該反応は高収率である。
【0011】
相間移動触媒として使用される式3の4級ホスホニウムイオンおよびオキシ化剤として使用される式4のイオンは、式5の4級ホスホニウム塩:
【0012】
【化4】

【0013】
[式中、Y、R、R、RおよびRは、既に定義したとおりである]
として存在してもよい。式5の4級ホスホニウム塩は、相間移動触媒およびオキシ化剤の両方として使用されうる。式5の4級ホスホニウム塩は、当該技術分野の当業者に知られた(例えば、US5278313に記載されたテトラ−n−ブチルアンモニウムアセテートの調製に類似する)方法により調製されうる。
【0014】
本発明の好ましい実施態様においては、相間移動触媒およびオキシ化剤は同じ分子内に存在しない。この実施態様において、式3aの4級ホスホニウム塩:
【0015】
【化5】

【0016】
[式中、R、R、RおよびRは、既に定義したとおりであり、および式中Aは、当該4級ホスホニウム塩のアニオンを表し、ハロゲン(例えばCl、Br、Iなど)の群から選択される]
は、相間移動触媒として使用され、および式4aの酸塩:
(YOn+ (4a)
[式中Yは既に定義したとおりであり、式中Mは、例えばLi、K、Na、Mg、Ca、Baなどのアルカリ金属またはアルカリ性金属を表し、および式中nは、Mの価数に依存して1または2の整数を表す]
は、オキシ化剤として使用される。好ましくは、Mは、KまたはNaである。
【0017】
本発明の方法において、ハロゲンXは、好ましくはCl、BrまたはIであり、より好ましくはClである。
本発明の方法において、R、RおよびRは、好ましくはC1−4アルキル基であり、より好ましくはRおよびRは、メチルまたはエチル基であり、より好ましくはメチル基である。Rは、好ましくはメチルまたはブチルであり、最も好ましくはt−ブチルである。
【0018】
本発明の方法において、Y基は、好ましくはR−CO−またはR−SO−により表され、ここで、R、Rは、C−Cアルキルまたは6〜10のC−原子を有するアリールの群から選択される。好ましい実施態様において、Yは、アシルの群から選択され、より好ましくはアセチル(RはCHである)、ベンゼンスルホニル(Rはベンゼンである)、より好ましくはニトロで置換されたベンゼンスルホニル(Rはp−ニトロ−ベンゼンである)、トシル(Rはp−メチル−ベンゼンである)またはメシル(Rはメチルである)から選択される。
【0019】
本発明の方法において、好ましくは、4つのR基のうちの少なくとも3つが同じである式3aまたは式5のホスホニウム塩(例えば、R、R、RがブチルでありRがメチルであるか、またはR、R、RがフェニルでありRがブチルである)、より好ましくは4つのすべてのR基が同じであるホスホニウムが使用される。
【0020】
およびR、ならびにR、R、R、Rがアリールまたはアラルキルの場合のR、R、R、Rは、例えばハロゲン、1〜6のC−原子を有するアルコキシ(例えばメトキシまたはエトキシ)、1〜6のC−原子を有するアルキル(例えば、Rがトルエンの場合はメチル)またはニトロの群から選択される置換基により置換されていてもよく、好ましくは、RまたはRのみが置換される。
【0021】
式3aの4級ホスホニウム塩は、式2の化合物の量に対して、好ましくは0.01〜1.0、より好ましくは0.05〜0.7、最も好ましくは0.1〜0.5のモル当量で使用される。
【0022】
式5の4級ホスホニウム塩は、好ましくは0.8〜5、好ましくは1〜3、最も好ましくは1〜1.5のモル当量で使用される。
式4aの酸塩は、存在する式2の化合物の量に対して、好ましくは1〜5のモル当量で使用される。より好ましくは、式4aの酸塩の酸塩は1〜4、最も好ましくは2〜3のモル当量で使用される。
【0023】
本発明における使用に適した溶媒は、当該技術分野の当業者に知られた種々の有機溶媒である。使用されうる有機溶媒は、例えばベンゼン、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;例えばエチルアセテート、ブチルアセテートなどのエステル系溶媒;例えばメチレンクロリド、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタンなどの含ハロゲン溶媒;例えばアセトアミド、ホルムアミド、アセトニトリルなどの含窒素溶媒;および例えばジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどの非プロトン性極性溶媒である。好ましくは、使用される溶媒は非プロトン性極性溶媒であり、より好ましくは、使用される溶媒はN−メチルピロリドンまたはN,N−ジメチルホルムアミドである。溶媒は、単独で、または、例えばトルエンと組み合わせたN−メチルピロリドンなどの、1以上の他の溶媒種との組み合わせにおいて使用されうる。
【0024】
本発明の方法が好ましく実施される温度は、80〜200℃の間、より好ましくは100℃〜160℃の間、最も好ましくは110〜150℃の間である。
反応生成物は、望まれる場合は、当該技術分野の当業者に知られた方法(例えば、US5278313に記載された方法)により、反応媒体から単離されうる。
【0025】
本発明は、以下の実施例の方法により説明される。しかし、これらの実施例は本発明の限定を意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】式1〜5を示す図である。
【実施例】
【0027】
実施例1
0.5モル当量のテトラブチルホスホニウムブロミド(TBPB)および2.5当量の酢酸カリウムを、I(tert−ブチル 2−[(4R,6S)−6−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート)の溶媒N−メチルピロリドン(1g/3ml)中の溶液に100℃で加えた。20時間の反応時間の経過後、TBPBの存在下でのIの変換は、87.6%であった。IのII(tert−ブチル 2−{(4R,6S)−2,2−ジメチル−6−[(メチル−カルボニルオキシ)メチル]−1,3−ジオキサン−4−イル}アセテート)への変換は、その内の90.3%であった。
【0028】
実施例2
IからIIへの変換のための反応温度を115℃に保つことにより実施例1を繰り返した。3時間の反応時間の経過後、TBPBの存在下でのIの変換は95.1%であり、IのIIへの変換はその内の91%であった。
【0029】
実施例3
0.1モル当量のテトラフェニルホスホニウムブロミド(TTB)および2.5モル当量の酢酸カリウムを、I(tert−ブチル 2−[(4R,6S)−6−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート)の溶媒N−メチルピロリドン(1g/3ml)中の溶液に140℃で加えた。20時間の反応時間の経過後、Iの変換は97%であり、IのIIへの変換はその内の77.2%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体:
【化1】

[式中、R、RおよびRは、各々独立に、C1−4アルキル基であり、または式中、RおよびRは、それらが結合するC−原子と一緒になって、5または6員シクロアルキルを形成し、および式中、YはR−CO−またはR−SO−を表し、ここでR、Rは、1〜12のC−原子を有する、アルキルまたはアリールの群から選択される]
の、その対応する式2の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体:
【化2】

[式中、R、RおよびRは既に定義したとおりであり、およびXはハロゲンを表す]
からの、相間移動触媒およびオキシ化剤の存在下での製造方法であって、式3の4級ホスホニウムイオン:
【化3】

[式中、R、R、R、およびRは、各々独立に、1〜12のC−原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アラルキルまたはアリールを表す]
を相間移動触媒として使用し、および式4のイオン
YO (4)
[式中、Yは既に定義したとおりである]
をオキシ化剤として使用することにより特徴づけられる前記方法。
【請求項2】
、およびRは、C−Cアルキルまたは6〜10のC−原子を有するアリールの群から選択されることにより特徴づけられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
相間移動触媒として式3aの4級ホスホニウム塩:
【化4】

[式中、R、R、RおよびRは、既に定義したとおりであり、および式中、Aはハロゲンを表す]
が使用され、および式4aの酸塩:
(YOn+ (4a)
[式中Yは既に定義したとおりであり、式中Mはアルカリ金属またはアルカリ性金属を表す]
がオキシ化剤として使用されることにより特徴づけられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式3aの4級ホスホニウム塩が、式2の化合物の量に対して、0.05〜0.7のモル当量で使用されることにより特徴づけられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式3aの4級ホスホニウム塩が、式2の化合物の量に対して、0.1〜0.5のモル当量で使用されることにより特徴づけられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
方法が100〜160℃の間の温度において実施されることにより特徴づけられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
方法が110〜150℃の間の温度において実施されることにより特徴づけられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式1の化合物がtert−ブチル 2−{(4R,6S)−2,2−ジメチル−6−[(メチル−カルボニルオキシ)メチル]−1,3−ジオキサン−4−イル}アセテートであること、および式2の化合物がtert−ブチル 2−[(4R,6S)−6−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテートであることにより特徴づけられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−132690(P2010−132690A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26513(P2010−26513)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【分割の表示】特願2003−560004(P2003−560004)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】