2台車式走行車両
【課題】凹凸傾斜面を走行する大型の2台車式走行車両を提供すること。
【解決手段】単線レールR上に跨持しながら走行すべく構成した台車を、前台車11と後台車12とに分離して構成し、各前後の台車11,12には、電動モータMに連動連結した駆動軸13を架設し、駆動軸13先端に設けたピニオン14と単線レールRに沿って敷設したラック15とを噛合することにより、ラック15とピニオン14とを介して前後の台車11,12が単線レールRに沿って走行すべく構成し、前後の台車11,12の上部に乗用車両16を搭載すると共に、乗用車両16の底部フレーム17と前後の台車11,12との間に台車連結フレーム18を配設し、更には、台車連結フレーム18の前後部と前後の台車11,12の上部とをそれぞれ水平方向に回転自在に枢支すると共に前後台車のいずれかは他の台車に対して相対的に左右に揺動自在に枢支連結した2台車式走行車両10である。
【解決手段】単線レールR上に跨持しながら走行すべく構成した台車を、前台車11と後台車12とに分離して構成し、各前後の台車11,12には、電動モータMに連動連結した駆動軸13を架設し、駆動軸13先端に設けたピニオン14と単線レールRに沿って敷設したラック15とを噛合することにより、ラック15とピニオン14とを介して前後の台車11,12が単線レールRに沿って走行すべく構成し、前後の台車11,12の上部に乗用車両16を搭載すると共に、乗用車両16の底部フレーム17と前後の台車11,12との間に台車連結フレーム18を配設し、更には、台車連結フレーム18の前後部と前後の台車11,12の上部とをそれぞれ水平方向に回転自在に枢支すると共に前後台車のいずれかは他の台車に対して相対的に左右に揺動自在に枢支連結した2台車式走行車両10である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面視で上下に起伏した凹凸状かつ平面視で左右に蛇行した湾曲状の傾斜面に敷設した単線レール上を搭乗車両が1台で下部駆動台車が2台で構成された車両で、常に搭乗車両がほぼ水平状態で走行することができる2台車式走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜面に敷設した直線状のレール上を走行する走行車両(斜行昇降機)がある。例えば、特許文献1に示すように、傾斜面にレールを直線状に敷設し、そのレールに沿って台車車輪を走行させながら台車上に配設した乗用車両は、常に水平状態を保持すべく、台車上で乗用車両を揺動して絶対水平状態を保持し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−048009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、斜行昇降機が大型車両になると、乗用車両を支持する台車部分も大きくなり荷重も集中して、しかも重量が大きくなってしまう。また、台車部分の駆動を行う駆動モータ、減速機の出力も大きくなり、台車全体の重量が大きくなってしまう問題が生じてしまう。これにより、レールの構造を大きくしたり、レールの強度を高めたりする必要が生じる。
【0005】
また、最近の傾斜面走行車両においては、凹凸傾斜面に直線状のレールを敷設するためには、レール支持用の橋桁を長短で多数にわたって傾斜地面に立設し、レールを支持する構造としなければならない。このため、レール敷設作業が煩雑で構造的にも複雑となり、支持強度の面においても、多種の工夫をこらされなければならず、コスト上不利となる欠点がある。
【0006】
しかも、平面的にも折曲状にレールを敷設することにより、凹凸傾斜面へのレールの支持を簡便な支持構造とすることにより、レールの支持強度も確保し、支持構造も簡易にすることによりコスト上も有利となる2台車式走行車両が出現した。
【0007】
しかし、かかる凹凸傾斜面に沿って敷設したレールは、レール全般に高低差部分が多数現れるので、走行車両に多数の人員や物品を搭載する大型車両とする場合は走行車両の前後長さが可及的に長くなり、その分前輪と後輪との間隔が広くなり、高低差の大きいうねりを有するレール上を走行する場合は、前輪と後輪との間の走行機体にレールのうねりの頂部が当接する、いわゆる腹這現象が生起するおそれがあり、走行に支障を生起するため、凹凸傾斜に沿ったレールのうねりの角度を小さくして平坦に近い敷設レールとする必要が生じ、前述の凹凸傾斜面に直線状のレールを敷設する支持構造における欠点と同様の問題が生起していた。
【0008】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、側面視で上下に起伏した凹凸状かつ平面視で左右に蛇行した湾曲状の傾斜面に敷設したレール上を大型の搭乗車両が走行できる2台車式走行車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)そこで、本発明では、単線レール上に跨持しながら走行すべく構成した下方開放状の略コの字状の台車を、前台車と後台車とに分離して構成し、各前後の台車の一側壁には、モータに連動連結した駆動軸を架設し、駆動軸先端に設けたピニオンと単線レールに沿って敷設したラックとを噛合することにより、ラックとピニオンとを介して前後台車が単線レールに沿って走行すべく構成し、しかも、前後台車の上部に乗用車両を搭載すると共に、乗用車両の底部フレームと前後台車との間に台車連結フレームを配設し、しかも、台車連結フレームの一端は底部フレームに枢支すると共に、台車連結フレームの中途と乗用車両の底部フレームとの間にはシリンダを伸縮自在に介設し、更には、台車連結フレームの前後部と前後台車の上部とをそれぞれ回動自在に枢支連結したことを特徴とする2台車式走行車両を提供する。
【0010】
(2)また、本発明では、(1)において、前後台車のいずれかは、他の台車に対して相対的に左右揺動自在に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、乗用車両を搭載する台車を、前台車と後台車とに分割しているので、前台車と後台車との間に空間部を形成することができ、車両全体に亘って1つで構成した場合に比べて、台車自体の荷重を小さくすることができる。また、荷重を小さくすることによって、台車を載置するレール構造も軽量化でき、既にレールが敷設してある場合には既存のものを使用することができる。
【0012】
すなわち、従来の昇降機の2倍の重量の車両を、下部駆動台車を2台にすることで、駆動部、走行車輪の荷重を分散させることにより、従来のレール、ラック、支柱等を使用できるようにして、コスト上有利となる。
【0013】
また、前台車及び後台車は、台車連結フレームに対して水平方向の軸線廻りに回動自在に設けているので、側面視で凹凸状のレール上の円滑な走行が可能となる。さらに、上下方向の軸線廻りに回動自在に設けているので、平面視で湾曲状の傾斜面に敷設したレール上の円滑な走行が可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、前後台車のいずれかは、他の台車に対して相対的に左右揺動自在に構成しているので、例えば、側面視で凹凸状かつ平面視で湾曲状の傾斜面に敷設したレール上に対しても円滑な走行が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における2台車式走行車両の全体構成を示す側面図である。
【図2】実施例1における2台車式走行車両の台車連結フレームの構成を示す平面図である。
【図3】実施例1における2台車式走行車両の前台車の断面構造を示す断面図である。
【図4】図3に示す底部フレーム及び台車連結フレームの拡大断面構造を示す断面図である。
【図5】実施例1における2台車式走行車両の揺動緩衝部材の全体構造を示す正面図である。
【図6】実施例1における2台車式走行車両の後台車の断面構造を示す断面図である。
【図7】図6に示す底部フレーム及び台車連結フレームの拡大断面構造を示す断面図である。
【図8】実施例1における平面視で湾曲状のレール上を走行する2台車式走行車両の前台車及び後台車の構成を示す平面図である。
【図9】実施例1における側面視で凹凸状のレール上を走行する2台車式走行車両の前台車及び後台車の構成を示す側面図である。
【図10】実施例1における2台車式走行車両の制御構成を示すブロック図である。
【図11】実施例1における2台車式走行車両の前台車の天井部の側面構造を示す斜視図である。
【図12】実施例1における2台車式走行車両の前台車の天井部の正面構造を示す斜視図である。
【図13】実施例1における2台車式走行車両の後台車の断面構造を示す断面図である。
【図14】実施例2における2台車式走行車両の全体構成を示す側面図である。
【図15】実施例2における2台車式走行車両の台車連結フレームの構成を示す平面図である。
【図16】実施例2における2台車式走行車両の前台車の断面構造を示す断面図である。
【図17】実施例2における2台車式走行車両の後台車の断面構造を示す断面図である。
【図18】実施例2におけるカプラの構造を示す平面図である。
【図19】実施例2における側面視で凹凸状のレール上を走行する2台車式走行車両の前台車及び後台車の構成を示す側面図である。
【図20】実施例2における平面視で湾曲状のレール上を走行する2台車式走行車両の前台車及び後台車の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に好適な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態における2台車式走行車両10(2台車式大型斜行昇降機)は、前後の台車11,12を台車連結フレームにターンテーブル(旋回ベアリング)を用いて連結するターンテーブル方式と、旋回軸とカプラを用いて台車連結フレームに連結するカプラ方式とを有する。
【0017】
(実施例1)
実施例1では、ターンテーブル方式を有する2台車式走行車両10について詳細に説明する。
【0018】
本実施例における2台車式走行車両10は、単線レールR上に跨持しながら走行すべく構成した下方開放状の略コの字状の台車を、前台車11と後台車12とに分離して構成し、各前後の台車11,12の一側壁には、電動モータMに連動連結した駆動軸13を架設し、駆動軸13先端に設けたピニオン14と単線レールRに沿って敷設したラック15とを噛合することにより、ラック15とピニオン14とを介して前後の台車11,12が単線レールRに沿って走行すべく構成し、しかも、前後の台車11,12の上部に乗用車両16を搭載すると共に、乗用車両16の底部フレーム17と前後の台車11,12との間に台車連結フレーム18を配設し、しかも、台車連結フレーム18の一端は底部フレーム17に枢支すると共に、台車連結フレーム18の中途と乗用車両16の底部フレーム17との間には油圧シリンダ19を伸縮自在に介設し、更には、台車連結フレーム18の前後部と前後の台車11,12の上部とをそれぞれ回動自在に枢支連結している。
【0019】
また、本実施例における2台車式走行車両10は、前後の台車11,12のいずれかは、他の台車に対して相対的に左右揺動自在に構成している。なお、本実施形態では、前台車11が後台車12に対して相対的に左右揺動自在としている。
【0020】
単線レールRは、図1に示すように、地上の凹凸面に沿って敷設されており、すなわち、側面視で凹凸状、かつ平面視でジグザグ状の傾斜面に沿って敷設されている。
【0021】
単線レールRは、図1、図3に示すように、走行方向に伸延した略正方形断面の上下角パイプ20a、20bを所定の上下間隔を保持し、ラチス構造を有して敷設されている。また、単線レールRの上角パイプ20aの下面には、歯を下方向に突出させたラック15が付設されている。また、単線レールRの上角パイプ20aには、導体よりなる給電ケーブル21が長手方向に延伸させている。
【0022】
かかる単線レールRは、図1に示すように、上記した傾斜状の地上面に橋梁を介して敷設されており、単線レールR上には、下方開放の略コ字状の前後の台車11,12が跨持されている。なお、前後の台車11,12はそれぞれ別体に構成されて一体となって走行する。このように、前後の台車11,12を別体に構成することにより、車両の大型化に対して台車の構造を大きくすることなく、台車部の荷重を小さくすることができるので単線レールの構造も小さくなって軽量化でき、既にレールが敷設されている場合にあっては既存の単線レールRをそのまま使用することができる。
【0023】
図3及び図6に示すように、前台車11及び後台車12の外側壁22には電動モータMを装着し、電動モータMの出力軸は減速機を介して駆動軸13に連結されている。電動モータMは、各台車の駆動軸13毎に外側壁22に装着されており、特に、前後の台車11,12の前後長さより外方に電動モータM外形が突出して走行障害とならないように、前後の台車11,12の前後端に位置する電動モータMは、装置本体を斜めにして上記外側壁22に装着している。
【0024】
前後台車の各駆動軸13は、図3及び図6に示すように、各台車11,12のコ字状内方に突出し、その突出した先端にピニオン14を連設し、ピニオン14は単線レールRの下部に敷設したラック15と噛合している。各台車11,12には、2個の走行車輪47が、単線レールRの上方から当接するように、走行方向に所定の間隔を隔てて配設されている。
【0025】
すなわち、図3及び図6に示すように、各台車11,12は、電動モータMの駆動により駆動軸13先端のピニオン14とラック15との噛合により、単線レールRに沿って走行可能に構成されている。給電ケーブル21及び電動モータMは、給電ケーブル21から台車の電動モータMと反対側の側壁に配設したコントローラ23を介して電動モータMに通電可能としている。
【0026】
図3に示すように、図中、24は、台車の側壁に挿貫して設けた駆動軸ケース24であり、25は駆動軸ケース24と駆動軸13の始端及び終端との間に介設したベアリング25である。
【0027】
また、図4及び図7に示すように、前台車11及び後台車12は台車連結フレーム18により各台車に配設されたターンテーブル35,35´を介して枢支連結されている。
【0028】
すなわち、台車連結フレーム18は、図2に示すように、平面視で左右一対の縦フレーム57a,57aと、その左右の縦フレーム57a,57a間に架設した複数本の横フレーム57b,57bとにより略枠形状に構成されている。
【0029】
また、図1及び図2の図中、28、28´は台車連結フレーム18の前後部において、それぞれ架設した台車連結フレーム枢軸である。そして、この台車連結フレーム枢軸28、28´に台車の前台車側支持ブラケット40及び後台車側支持ブラケット27が枢着されて、前後の台車11,12は、この台車連結フレーム枢軸28、28´を中心に上下に揺動可能としている。
【0030】
そして、その台車連結フレーム18の前後部にそれぞれ上下方向に回転自在に装着された台車連結フレーム枢軸28、28´を、図6に示すように、各台車11,12の上部に配設されたターンテーブル35,35´の上板52に固設した前台車側支持ブラケット40で支持することにより前台車11が、図3に示すように、後台車側支持ブラケット27で支持することにより後台車12が台車連結フレーム18と連結している。
【0031】
また、ターンテーブル35,35´は、図3及び図6に示すように、台車上面の台座50,50´とターンテーブル35,35´の上板52との間に、ベアリング48を介することにより、台車の天井部26に配設されている。
【0032】
すなわち、図4及び図7に示すように、前台車11の天井部26には、環状の支持枠51が固設されており、この支持枠51の外周面には、ターンテーブル35,35´の下面に垂設したドーナツ状の摺動枠54がベアリング48を介して遊嵌されており、従って、ターンテーブル35,35´は、ドーナツ状の摺動枠54を介して環状の支持枠51を中心に回動可能に構成されている。
【0033】
これにより、前後の台車11,12は、単線レールRの蛇行に伴い、ターンテーブル35,35´の旋回により水平方向に回動するようにしている。
【0034】
そして、図8に示すように、単線レールRが平面視で湾曲している場合に、前後の台車11,12はそれぞれのターンテーブル35,35´を介して水平回動して、各前後の台車11,12が単線レールRのカーブに適合した向きとなり、その上部に搭載した長手状の乗用車両16にもかかわらず、単線レールRの湾曲に沿って円滑に走行できるようにしている。
【0035】
また、図3及び図6に示すように、前後の台車11,12の各ターンテーブル35,35´の上板52にはそれぞれ前台車側支持ブラケット40及び後台車側支持ブラケット27が固設されており、同各支持ブラケット40,27は前後の台車11,12と乗用車両16の間に介在した前後長手矩形フレームに形成した台車連結フレーム18の前後部を枢支している。
【0036】
次に、乗用車両16の底部フレーム17は、平面視で略枠形状に構成され、図6に示すように、後側を台車連結フレーム枢軸28、28´に装着した底部フレーム支持ブラケット30を介して、台車連結フレーム枢軸28、28´の両端部に上下回転自在に枢支している。
【0037】
一方、底部フレーム17の前側は、図1に示すように、台車連結フレーム18の中央部下面に軸支した油圧シリンダ19の先端部と連結し、油圧シリンダ19の伸縮に応じて後台車12の台車連結フレーム枢軸28、28´を中心にして前部が上下に揺動可能としている。すなわち、台車連結フレーム18の中央部下面にシリンダブラケット33を架設し、シリンダブラケット33と乗用車両16の底部フレーム17の前側中央部に架設した油圧シリンダ19の先端連結ブラケット34との間に油圧シリンダ19を伸縮自在に介設している。
【0038】
従って、前後の台車11,12は、図1に示すように、台車連結フレーム18の前後部との枢支部分28,28において、前後回動可能に連結されていると共に、台車連結フレーム18の後部の枢支部分28を中心にして、乗用車両16は油圧シリンダ19により前側が上下回動自在となって単線レールRや前後の台車11,12の前後の傾斜にかかわらず、常に絶対的水平を保持するようにしている。
【0039】
そして、図1に示すように、乗用車両16の底部シャーシ29と底部フレーム17との間には複数の空気ばね31が配設されている。これら複数の空気ばね31は、鉛直方向に弾性を有する。また、この空気ばね31は、ベローズ型の空気ばね31である。このように、鉛直方向に弾性を有する複数の空気ばね31を設けているので、乗用車両16の鉛直方向に対する固有振動数を低くめ、良好な防振効果を得ることができ、乗用車両16における振動を緩和させることができる。
【0040】
また、図1に示すように、乗用車両16の底部シャーシ29と底部フレーム17との間にはオイルダンパー32が配設されている。このオイルダンパー32は、鉛直方向に弾性を有するダンパーであり、空気ばね31の余振動と左右方向の揺れを緩和するようにしている。
【0041】
図1,3,4,11,12に示すように、前台車11は、その天井部26に配設したターンテーブル35,35´の上板52の中心部に揺動ブラケット39を立設し、該揺動ブラケット39は台車連結フレーム18に装着した台車連結フレーム枢軸28、28´の中心部から直交する方向に突設した揺動軸38を枢支している。
【0042】
すなわち、前台車11の天井部26の上面には、図11、12に示すように、揺動ブラケット39を介して揺動軸38が配設されており、この揺動軸38は台車連結フレーム枢軸28の中央を直交する方向に貫通しており、従って、台車連結フレーム枢軸28は軸芯を中心に回転すると共に、中央を貫通した揺動軸38を中心に長手左右方向に揺動するように構成されている。
【0043】
そして、図11及び図12に示すように、台車連結フレーム18の前部を枢支する前台車11側の台車連結フレーム枢軸28は、その中央中心部を当該軸と直角方向に貫通して連結した揺動軸38により軸支され、この揺動軸38を介して左右に揺動自在に構成されている。
【0044】
さらに、図4,5,11,12に示すように、前台車11側の台車連結フレーム枢軸28、28´の左右両側は、前台車11のターンテーブル35,35´の上板に台座41を介して固設された支持ブラケット40により軸支されている。この前台車側支持ブラケット40は、台座41上にピン形状の筒体42を前後に2本立設し、そして筒体42を方形体状の揺動受部材45に挿通させると共に、その揺動受部材45の中央に台車連結フレーム枢軸28、28´を左右方向に挿貫している。そして、筒体42に挿通した揺動受部材45の上側及び下側には皿ばね46を挿通し、上側の皿ばね46を押さえ板43を介してナット44で締め付けることにより、台車連結フレーム枢軸28、28´を軸支している。
【0045】
従って、前台車11は台車連結フレーム18に対して揺動軸38を中心に左右方向に回動し、この回動に対して台車連結フレーム18の前側は前台車側支持ブラケット40を介して僅かであるが左右に揺動自在であるため、曲線走行時に生じる台車と台車連結フレーム18とのひねりを吸収することができ、単線レールRのねじれや傾斜に伴って発生する各台車11,12の走行負荷を低減することができる。
【0046】
このような構成により、左右曲線の単線レールR上を走行するとき、前台車11は後台車12及び台車連結フレーム18に対しレール形状に合わせて左右に傾きながら走行するので、車両全体は曲線をスムーズに曲がりながら走行する。
【0047】
以上のように、本実施形態のおける2台車式走行車両10は、上記のように構成されているので、例えば、上下に凹凸の起伏のある地面に沿って敷設された単線レールR上を、2台車式走行車両10が走行する場合は、まず、前後の台車11,12が走行車輪47を介して走行する。
【0048】
この際に、単線レールRに凹凸の起伏がある場合は、図9に示すように、前後の台車11,12は単線レールRの起伏に沿って、前後別々に傾斜した状態となり、特に起伏の頂部を境に前後の台車11,12が位置する状態になった時には、台車連結フレーム18との枢支部である台車連結フレーム枢軸28、28´を介して、前後の台車11,12は前後傾状態に揺動して単線レールR上を走行するものであり、このように、長尺に形成された前後の台車11,12であっても、台車連結フレーム18の台車枢軸を中心に前後の台車11,12が揺動して起伏状の単線レールRの頂部に沿って走行しうる。
【0049】
しかも、このように前後の台車11,12が揺動して傾斜しても、その上方に載置した乗用車両16は、台車連結フレーム18の略中央部から延設した油圧シリンダ19によって、台車連結フレーム18の傾きとは拘らず絶対水平状態を保持する。すなわち、図10に示すように、前後の台車11,12の傾きに伴い、台車連結フレーム18も傾動するが、この傾動を角度検出センサ55にて検知し、走行位置検出部56によるエンコーダ情報に基づいて現在の走行位置を検出し、コントローラ23を介して油圧シリンダ19の作動を制御して、常に台車連結フレーム18の傾動に対して乗用車両16が水平を保つようにしている。
【0050】
また、図8に示すように、単線レールR上が左右に蛇行し、平面視で湾曲している場合でも、前後の台車11,12はそれぞれのターンテーブル35,35´を介して水平回動して、各前後の台車11,12が単線レールRのカーブに適合した向きとなり、その上部に搭載した長手状の乗用車両16にもかかわらず、単線レールRの湾曲に沿って円滑に走行可能となる。
【0051】
更には、上記左右の蛇行に加え、単線レールRが上下に傾斜している場合には、前台車11は、台車連結フレーム18に枢支した揺動軸38と、前台車11のターンテーブル35,35´の上板52に配設した揺動ブラケット39とを介して、台車連結フレーム18に対して左右に回動しながら前後走行可能となる。
【0052】
従って、前後の台車11,12は、単線レールRの蛇行に伴い、ターンテーブル35,35´を介して水平回動し、さらに、前台車11は前述したように台車連結フレーム枢軸28、28´と揺動軸38とを介して前後回動、左右回動を行うようにしている。
【0053】
なお、前後の台車11,12は、その後端部にレールキャッチ式の図示しない非常停止装置を具備している。すなわち、平面視で外周を歯切形状とし半径を漸次拡大したレール挟持体(図示せず)を有し、非常時には図示しないモータを駆動してレール挟持体の外周面によって単線レールRのフランジを挟持して、2台車式走行車両10を強制的に停止させるようにしている。
【0054】
上記では、台車連結フレーム枢軸28、28´の中心部から直交する方向に突設した揺動軸38を設けていたが、図13に示すように、この揺動軸38を省略することもできる。揺動軸38を設けなくても、台車連結フレーム18の前側は前台車側支持ブラケット40を介して左右に揺動自在であるため、曲線走行時に生じる前後の台車11,12と台車連結フレーム18とのひねりを吸収することができる。
【0055】
(実施例2)
本実施例では、カプラ方式の2台車式走行車両100について詳細に説明する。
【0056】
本実施例では、図14及び図15に示すように、前台車11を実施例1のターンテーブル(旋回ベアリング)の代わりに通常の牽引自動車の連結装置(カプラ)を利用した構成とし、後台車12を実施例1のターンテーブルの構造を変更した構成とした。
【0057】
すなわち、前台車11は、カプラ60を介して、台車連結フレーム18に鉛直方向の軸線廻りに回動自在とすると共に、左右側で揺動しながら単線レールR上を走行可能としている。後台車12は、後台車取付フレーム62を介して台車連結フレーム18に鉛直方向の軸線廻りに回動自在とすると共に、水平方向の軸線廻りに前後傾状態に揺動して単線レールR上を走行可能としている。
【0058】
その他の構造については実施例1と同じであり、図14〜図20で用いる符号は、実施例1の図1〜図13に示した2台車式走行車両10と同じ構成要素については同一の符号を用いている。
【0059】
実施例2においても、図14に示すように、乗用車両16の底部フレーム17の下方に前後の台車11,12を連結する台車連結フレーム18を配設している。台車連結フレーム18は、図15に示すように、平面視で左右一対の縦フレーム57a,57aと、その左右の縦フレーム57a,57a間に架設した複数本の横フレーム57b,57b,57bにより略枠形状に構成されている。
【0060】
乗用車両16の底部フレーム17は、その後側において台車連結フレーム枢軸28a,28bに装着した底部フレーム支持ブラケット64a,64bを介して、台車連結フレーム18を上下回動自在に枢支している。具体的には、図16に示すように、底部フレーム17の後側下部に左右一対の底部フレーム支持ブラケット64a,64bを下方に向かって突出させ、各底部フレーム支持ブラケット64a,64bに、台車連結フレーム18の各縦フレーム57a,57aに固設した台車連結フレーム枢軸28a,28bの一端側をそれぞれ枢支連結している。
【0061】
また、図14に示すように、台車連結フレーム18の中央部下面に軸支した油圧シリンダ19の先端部と連結し、油圧シリンダ19の伸縮に応じて後台車12の台車連結フレーム枢軸28a,28bを中心にして前部が上下に揺動可能としている。すなわち、台車連結フレーム18の中央部下面にシリンダブラケット33を架設し、シリンダブラケット33と乗用車両16の底部フレーム17の前側中央部に架設した油圧シリンダ19の先端連結ブラケット34との間に油圧シリンダ19を伸縮自在に介設している。
【0062】
従って、乗用車両16は、図14及び図15に示すように、上記台車連結フレーム枢軸28a,28bを軸として、油圧シリンダ19により前側が上下回動自在となって、単線レールRや前後の台車11,12の前後の傾斜にかかわらず、常に絶対的水平を保持するようにしている。
【0063】
次に、台車連結フレーム18と前後の台車11,12との連結構造について説明する。まず、台車連結フレーム18と後台車12との連結構造について詳細に説明する。
【0064】
台車連結フレーム18の後側下方には、図14及び図16に示すように、後台車12を連結するための後台車取付フレーム62が配設される。後台車取付フレーム62は、図14に示すように、一対の縦フレーム63a,63aと、その縦フレーム63a,63a間に上下および中央に3本の横フレーム63b,63b,63bとで枠形状に構成され、後台車取付フレーム62は台車連結フレーム18の前部下方に取り付けられている。
【0065】
また、図16に示すように、後台車取付フレーム62の天井部には、その上面部にピロー形のベアリングユニット65a,65bが複数個配設されている。ベアリングユニット65a,65bは、後台車取付フレーム62を構成する各縦フレーム63aの左右側に左右一対で配設されている。
【0066】
そして、図16に示すように、左右の縦フレーム63a,63aの中央部に上記台車連結フレーム枢軸28a,28bを一体に形成すると共に、各台車連結フレーム枢軸28a,28bの両端を前記左右一対のベアリングユニット65a,65bで回動自在にそれぞれ支持する。これにより、後台車取付フレーム62は、台車連結フレーム18に対して、前記台車連結フレーム枢軸28a,28bを軸として水平方向の軸線廻りに回動自在としている。
【0067】
また、図16に示すように、後台車取付フレーム62の下部には、旋回軸本体66が下方に凸状に突出して配設されている。旋回軸本体66は、円柱形状を有する。これに対して、後台車12本体の天井部には前記旋回軸本体66を嵌め込むための嵌め込み凹部67が配設されている。その嵌め込み凹部67の内周面には、軸受68が配設されている。
【0068】
そして、図16に示すように、後台車取付フレーム62側の旋回軸本体66を、後台車12本体側に装着させることにより、後台車12本体は、旋回軸本体66を軸として、後台車取付フレーム62に対して鉛直方向の軸線廻りに回動自在としている。
【0069】
このようにして、図20に示すように、後台車12本体は、台車連結フレーム18に対して旋回軸本体66を介して鉛直方向の軸線廻りに回動自在とし、これにより、後台車12は、単線レールRが平面視で湾曲している場合に水平回動しながら走行可能となる。
【0070】
また、図19に示すように、後台車12は、台車連結フレーム枢軸28a,28bを軸として、台車連結フレーム18に水平方向の軸線廻りに回動自在に枢支連結されている。これにより、単線レールRが側面視で湾曲している場合に、後台車12は前後に傾斜状態しながら単線レールR上を走行可能となる。
【0071】
次に、台車連結フレーム18と前台車11との連結構造について説明する。実施例2では、前台車11は、カプラ60を介して台車連結フレーム18に連結されている。ここで、カプラ60は、通常の牽引自動車でのトラクタとトレーラとの連結を行う連結装置と同じものを使用している。
【0072】
カプラ60は、図18に示すように、本体となるカプラベース71と、キングピン61を挟持又は開放する一対のジョー70a,70bと、ジョー70a,70bを挟持又は開放するように操作する操作部材と、ジョー70a,70bを挟持位置で固定する固定部材により構成されている。
【0073】
図18に示すように、各ジョー70a,70bは、対向面の中央に半円形の凹部69a,69bを有すると共に、ジョー回動ピン83を軸にしてカプラベース71に回動自在に枢支されている。また、各ジョー70a,70bの両側端部同士を挟持用ばね(図示せず)で連結し、この挟持用ばねが対向面に向かって付勢することによって、ジョー70a,70bの対抗面に位置する凹部69a,69bでキングピン61を挟持するようにしている。
【0074】
図18に示すように、固定部材は、上記ジョー70a,70bを挟持位置で固定する略コの字形状を有するヨーク73を備えている。このヨーク73は、操作部材の操作により、各ジョー70a,70bの両側端部に掛合し、キングピン61を挟持位置でジョー70a,70bにより固定するようにしている。また、ヨーク73への掛合を開放することによって、キングピン61をジョー70a,70bから開放離脱するようにしている。
【0075】
図18に示すように、操作部材は、略コの字形状を有する上記ヨーク73を上下に摺動させてジョー70a,70bに掛合させ又は開放させるものである。操作部材は、ヨーク73の基端側とカプラベース71の上端側との間にヨークシャフト74を設け、このヨークシャフト74の周囲には、ヨークシャフト用ばね75を巻回している。ヨークシャフト用ばね75は、ヨーク73がジョー70a,70bを挟持して固定する方向に付勢している。
【0076】
また、図18に示すように、ヨークシャフト74とヨーク73の基端部との間に下方に突出させたガイドピン79を備え、そのガイドピン79をガイド板76のガイド孔77に挿通させている。また、ガイド板76は、カプラベース71側にガイド板固定ピン82を軸として回動自在に枢支されている。さらに、ガイド板76には、ガイド板76を回動させるリリースバー78を取り付けている。
【0077】
そして、図18に示すように、リリースバー78を鉛直方向の軸線廻りに回動すると、ガイド孔77内でガイドピン79が摺動することによって、ヨークシャフト74が軸方向(図18における上下方向)に摺動する。このようにして、ヨーク73のジョー70a,70bの挟持を固定したり、開放したりするようにしている。
【0078】
さらに、カプラ60は、左右両端に板状のカプラブラケット72,72を備え、この左右のカプラブラケット72,72にピッチング軸80を介してカプラベース71を上下に揺動自在としている。
【0079】
そして、図17に示すように、上記構造を有するカプラ60を前台車11の天井部に取り付けている。すなわち、カプラ60のキングピン61との連結面を走行方向とは垂直にして、カプラ60のカプラブラケット72,72を前台車11の天井部にネジで固設している。
【0080】
また、図14に示すように、台車連結フレーム18の前側下部にキングピン61を下方に突出させている。キングピン61は、基部に設けられた大径の台座部と、その台座部の下部に配設された円柱部と、その円柱部の下部に配設された小径の係合部と、最下部に配設されたフランジ部とにより構成されている。
【0081】
そして、本実施例では、カプラ60の操作部材の操作によりジョー70a,70bの凹部69a,69bでキングピン61の係合部を挟持させ、この挟持をヨーク73等の固定部材により固定している。このように、製造時ではカプラ60を介して前台車11を台車連結フレーム18に連結するようにし、通常の走行時ではカプラ60を介して台車連結フレーム18から前台車11の連結が解除しないようにしている。
【0082】
また、カプラ60を取り付けた前台車11は、カプラ60を介してキングピン61を軸として台車連結フレーム18に対して回動自在に連結されている。従って、前台車11は、図19に示すように、台車連結フレーム18に対してキングピン61を軸として鉛直方向の軸線廻りに回動しながら単線レールR上を走行可能としている。また、前台車11は、図20に示すように、台車連結フレーム18に対してキングピン61を軸として水平方向の軸線廻りに回動しながら単線レールR上を走行可能としている。
【0083】
さらに、カプラ60を取り付けた前台車11は、そのカプラ60のピッチング軸80を軸として台車連結フレーム18にローリング自在に連結されている。すなわち、牽引自動車ではトラクタに対してトレーラが前後揺動のピッチング動作を行うようにするカプラ60を、本実施例の2台車式走行車両100では横向きに位置させることにより、前台車11が台車連結フレーム18に対して左右揺動のローリング動作を行うようにしている。
【0084】
従って、前台車11は台車連結フレーム18に対してカプラ60を介してピッチング軸80を軸として左右方向に回動し、この回動に対して台車連結フレーム18の前側はカプラ60を介して僅かであるが左右に揺動自在であるため、曲線走行時に生じる台車と台車連結フレーム18とのひねりを吸収することができ、単線レールRのねじれや傾斜に伴って発生する各台車11,12の走行負荷を低減することができる。
【0085】
本実施例における2台車式走行車両100は、上記のように構成されているので、例えば、上下に凹凸の起伏のある地面に沿って敷設された単線レールR上を、2台車式走行車両100が走行する場合は、まず、前後の台車11,12が走行車輪47を介して走行する。
【0086】
この際に、単線レールRに凹凸の起伏がある場合は、図19に示すように、前後の台車11,12は単線レールRの起伏に沿って、前後別々に傾斜した状態となり、特に起伏の谷部を境に前後の台車11,12が位置する状態になった時には、前台車11でカプラ60とキングピン61とを介して、後台車12では台車連結フレーム枢軸28a,28bを介して、前後の台車11,12は前後傾状態に揺動して単線レールR上を走行するものである。
【0087】
また、図20に示すように、単線レールR上が左右に蛇行し、平面視で湾曲している場合でも、前台車11は旋回軸本体66を介して水平回動し、後台車12はキングピン61とカプラ60とを介して、各前後の台車11,12が単線レールRのカーブに適合した向きとなり、その上部に搭載した長手状の乗用車両16にもかかわらず、単線レールRの湾曲に沿って円滑に走行可能となる。
【0088】
更には、上記左右の蛇行に加え、図19に示すように、単線レールRが上下に傾斜している場合には、前台車11は、カプラのピッチング軸80を介して、台車連結フレーム18に対して左右に回動しながら前後走行可能となる。
【0089】
従って、前後の台車11,12は、単線レールRの蛇行に伴い、旋回軸本体66を介して水平回動し、さらに、前台車11は前述したようにキングピン61とカプラ60とを介して前後回動、左右回動を行うようにしている。
【0090】
以上のようにして、本実施例における2台車式走行車両100は、乗用車両16を搭載する台車を、前台車11と後台車12とに分割しているので、前台車11と後台車12との間に空間部を形成することができ、車両全体に亘って1つで構成した場合に比べて、台車自体の荷重を小さくすることができる。また、荷重を小さくすることによって、台車を載置するレール構造も軽量化でき、既にレールが敷設してある場合には既存のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0091】
R 単線レール
M 電動モータ
10 100 2台車式走行車両
11 前台車
12 後台車
13 駆動軸
14 ピニオン
15 ラック
17 底部フレーム
18 台車連結フレーム
19 油圧シリンダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面視で上下に起伏した凹凸状かつ平面視で左右に蛇行した湾曲状の傾斜面に敷設した単線レール上を搭乗車両が1台で下部駆動台車が2台で構成された車両で、常に搭乗車両がほぼ水平状態で走行することができる2台車式走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜面に敷設した直線状のレール上を走行する走行車両(斜行昇降機)がある。例えば、特許文献1に示すように、傾斜面にレールを直線状に敷設し、そのレールに沿って台車車輪を走行させながら台車上に配設した乗用車両は、常に水平状態を保持すべく、台車上で乗用車両を揺動して絶対水平状態を保持し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−048009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、斜行昇降機が大型車両になると、乗用車両を支持する台車部分も大きくなり荷重も集中して、しかも重量が大きくなってしまう。また、台車部分の駆動を行う駆動モータ、減速機の出力も大きくなり、台車全体の重量が大きくなってしまう問題が生じてしまう。これにより、レールの構造を大きくしたり、レールの強度を高めたりする必要が生じる。
【0005】
また、最近の傾斜面走行車両においては、凹凸傾斜面に直線状のレールを敷設するためには、レール支持用の橋桁を長短で多数にわたって傾斜地面に立設し、レールを支持する構造としなければならない。このため、レール敷設作業が煩雑で構造的にも複雑となり、支持強度の面においても、多種の工夫をこらされなければならず、コスト上不利となる欠点がある。
【0006】
しかも、平面的にも折曲状にレールを敷設することにより、凹凸傾斜面へのレールの支持を簡便な支持構造とすることにより、レールの支持強度も確保し、支持構造も簡易にすることによりコスト上も有利となる2台車式走行車両が出現した。
【0007】
しかし、かかる凹凸傾斜面に沿って敷設したレールは、レール全般に高低差部分が多数現れるので、走行車両に多数の人員や物品を搭載する大型車両とする場合は走行車両の前後長さが可及的に長くなり、その分前輪と後輪との間隔が広くなり、高低差の大きいうねりを有するレール上を走行する場合は、前輪と後輪との間の走行機体にレールのうねりの頂部が当接する、いわゆる腹這現象が生起するおそれがあり、走行に支障を生起するため、凹凸傾斜に沿ったレールのうねりの角度を小さくして平坦に近い敷設レールとする必要が生じ、前述の凹凸傾斜面に直線状のレールを敷設する支持構造における欠点と同様の問題が生起していた。
【0008】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、側面視で上下に起伏した凹凸状かつ平面視で左右に蛇行した湾曲状の傾斜面に敷設したレール上を大型の搭乗車両が走行できる2台車式走行車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)そこで、本発明では、単線レール上に跨持しながら走行すべく構成した下方開放状の略コの字状の台車を、前台車と後台車とに分離して構成し、各前後の台車の一側壁には、モータに連動連結した駆動軸を架設し、駆動軸先端に設けたピニオンと単線レールに沿って敷設したラックとを噛合することにより、ラックとピニオンとを介して前後台車が単線レールに沿って走行すべく構成し、しかも、前後台車の上部に乗用車両を搭載すると共に、乗用車両の底部フレームと前後台車との間に台車連結フレームを配設し、しかも、台車連結フレームの一端は底部フレームに枢支すると共に、台車連結フレームの中途と乗用車両の底部フレームとの間にはシリンダを伸縮自在に介設し、更には、台車連結フレームの前後部と前後台車の上部とをそれぞれ回動自在に枢支連結したことを特徴とする2台車式走行車両を提供する。
【0010】
(2)また、本発明では、(1)において、前後台車のいずれかは、他の台車に対して相対的に左右揺動自在に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、乗用車両を搭載する台車を、前台車と後台車とに分割しているので、前台車と後台車との間に空間部を形成することができ、車両全体に亘って1つで構成した場合に比べて、台車自体の荷重を小さくすることができる。また、荷重を小さくすることによって、台車を載置するレール構造も軽量化でき、既にレールが敷設してある場合には既存のものを使用することができる。
【0012】
すなわち、従来の昇降機の2倍の重量の車両を、下部駆動台車を2台にすることで、駆動部、走行車輪の荷重を分散させることにより、従来のレール、ラック、支柱等を使用できるようにして、コスト上有利となる。
【0013】
また、前台車及び後台車は、台車連結フレームに対して水平方向の軸線廻りに回動自在に設けているので、側面視で凹凸状のレール上の円滑な走行が可能となる。さらに、上下方向の軸線廻りに回動自在に設けているので、平面視で湾曲状の傾斜面に敷設したレール上の円滑な走行が可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、前後台車のいずれかは、他の台車に対して相対的に左右揺動自在に構成しているので、例えば、側面視で凹凸状かつ平面視で湾曲状の傾斜面に敷設したレール上に対しても円滑な走行が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における2台車式走行車両の全体構成を示す側面図である。
【図2】実施例1における2台車式走行車両の台車連結フレームの構成を示す平面図である。
【図3】実施例1における2台車式走行車両の前台車の断面構造を示す断面図である。
【図4】図3に示す底部フレーム及び台車連結フレームの拡大断面構造を示す断面図である。
【図5】実施例1における2台車式走行車両の揺動緩衝部材の全体構造を示す正面図である。
【図6】実施例1における2台車式走行車両の後台車の断面構造を示す断面図である。
【図7】図6に示す底部フレーム及び台車連結フレームの拡大断面構造を示す断面図である。
【図8】実施例1における平面視で湾曲状のレール上を走行する2台車式走行車両の前台車及び後台車の構成を示す平面図である。
【図9】実施例1における側面視で凹凸状のレール上を走行する2台車式走行車両の前台車及び後台車の構成を示す側面図である。
【図10】実施例1における2台車式走行車両の制御構成を示すブロック図である。
【図11】実施例1における2台車式走行車両の前台車の天井部の側面構造を示す斜視図である。
【図12】実施例1における2台車式走行車両の前台車の天井部の正面構造を示す斜視図である。
【図13】実施例1における2台車式走行車両の後台車の断面構造を示す断面図である。
【図14】実施例2における2台車式走行車両の全体構成を示す側面図である。
【図15】実施例2における2台車式走行車両の台車連結フレームの構成を示す平面図である。
【図16】実施例2における2台車式走行車両の前台車の断面構造を示す断面図である。
【図17】実施例2における2台車式走行車両の後台車の断面構造を示す断面図である。
【図18】実施例2におけるカプラの構造を示す平面図である。
【図19】実施例2における側面視で凹凸状のレール上を走行する2台車式走行車両の前台車及び後台車の構成を示す側面図である。
【図20】実施例2における平面視で湾曲状のレール上を走行する2台車式走行車両の前台車及び後台車の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に好適な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態における2台車式走行車両10(2台車式大型斜行昇降機)は、前後の台車11,12を台車連結フレームにターンテーブル(旋回ベアリング)を用いて連結するターンテーブル方式と、旋回軸とカプラを用いて台車連結フレームに連結するカプラ方式とを有する。
【0017】
(実施例1)
実施例1では、ターンテーブル方式を有する2台車式走行車両10について詳細に説明する。
【0018】
本実施例における2台車式走行車両10は、単線レールR上に跨持しながら走行すべく構成した下方開放状の略コの字状の台車を、前台車11と後台車12とに分離して構成し、各前後の台車11,12の一側壁には、電動モータMに連動連結した駆動軸13を架設し、駆動軸13先端に設けたピニオン14と単線レールRに沿って敷設したラック15とを噛合することにより、ラック15とピニオン14とを介して前後の台車11,12が単線レールRに沿って走行すべく構成し、しかも、前後の台車11,12の上部に乗用車両16を搭載すると共に、乗用車両16の底部フレーム17と前後の台車11,12との間に台車連結フレーム18を配設し、しかも、台車連結フレーム18の一端は底部フレーム17に枢支すると共に、台車連結フレーム18の中途と乗用車両16の底部フレーム17との間には油圧シリンダ19を伸縮自在に介設し、更には、台車連結フレーム18の前後部と前後の台車11,12の上部とをそれぞれ回動自在に枢支連結している。
【0019】
また、本実施例における2台車式走行車両10は、前後の台車11,12のいずれかは、他の台車に対して相対的に左右揺動自在に構成している。なお、本実施形態では、前台車11が後台車12に対して相対的に左右揺動自在としている。
【0020】
単線レールRは、図1に示すように、地上の凹凸面に沿って敷設されており、すなわち、側面視で凹凸状、かつ平面視でジグザグ状の傾斜面に沿って敷設されている。
【0021】
単線レールRは、図1、図3に示すように、走行方向に伸延した略正方形断面の上下角パイプ20a、20bを所定の上下間隔を保持し、ラチス構造を有して敷設されている。また、単線レールRの上角パイプ20aの下面には、歯を下方向に突出させたラック15が付設されている。また、単線レールRの上角パイプ20aには、導体よりなる給電ケーブル21が長手方向に延伸させている。
【0022】
かかる単線レールRは、図1に示すように、上記した傾斜状の地上面に橋梁を介して敷設されており、単線レールR上には、下方開放の略コ字状の前後の台車11,12が跨持されている。なお、前後の台車11,12はそれぞれ別体に構成されて一体となって走行する。このように、前後の台車11,12を別体に構成することにより、車両の大型化に対して台車の構造を大きくすることなく、台車部の荷重を小さくすることができるので単線レールの構造も小さくなって軽量化でき、既にレールが敷設されている場合にあっては既存の単線レールRをそのまま使用することができる。
【0023】
図3及び図6に示すように、前台車11及び後台車12の外側壁22には電動モータMを装着し、電動モータMの出力軸は減速機を介して駆動軸13に連結されている。電動モータMは、各台車の駆動軸13毎に外側壁22に装着されており、特に、前後の台車11,12の前後長さより外方に電動モータM外形が突出して走行障害とならないように、前後の台車11,12の前後端に位置する電動モータMは、装置本体を斜めにして上記外側壁22に装着している。
【0024】
前後台車の各駆動軸13は、図3及び図6に示すように、各台車11,12のコ字状内方に突出し、その突出した先端にピニオン14を連設し、ピニオン14は単線レールRの下部に敷設したラック15と噛合している。各台車11,12には、2個の走行車輪47が、単線レールRの上方から当接するように、走行方向に所定の間隔を隔てて配設されている。
【0025】
すなわち、図3及び図6に示すように、各台車11,12は、電動モータMの駆動により駆動軸13先端のピニオン14とラック15との噛合により、単線レールRに沿って走行可能に構成されている。給電ケーブル21及び電動モータMは、給電ケーブル21から台車の電動モータMと反対側の側壁に配設したコントローラ23を介して電動モータMに通電可能としている。
【0026】
図3に示すように、図中、24は、台車の側壁に挿貫して設けた駆動軸ケース24であり、25は駆動軸ケース24と駆動軸13の始端及び終端との間に介設したベアリング25である。
【0027】
また、図4及び図7に示すように、前台車11及び後台車12は台車連結フレーム18により各台車に配設されたターンテーブル35,35´を介して枢支連結されている。
【0028】
すなわち、台車連結フレーム18は、図2に示すように、平面視で左右一対の縦フレーム57a,57aと、その左右の縦フレーム57a,57a間に架設した複数本の横フレーム57b,57bとにより略枠形状に構成されている。
【0029】
また、図1及び図2の図中、28、28´は台車連結フレーム18の前後部において、それぞれ架設した台車連結フレーム枢軸である。そして、この台車連結フレーム枢軸28、28´に台車の前台車側支持ブラケット40及び後台車側支持ブラケット27が枢着されて、前後の台車11,12は、この台車連結フレーム枢軸28、28´を中心に上下に揺動可能としている。
【0030】
そして、その台車連結フレーム18の前後部にそれぞれ上下方向に回転自在に装着された台車連結フレーム枢軸28、28´を、図6に示すように、各台車11,12の上部に配設されたターンテーブル35,35´の上板52に固設した前台車側支持ブラケット40で支持することにより前台車11が、図3に示すように、後台車側支持ブラケット27で支持することにより後台車12が台車連結フレーム18と連結している。
【0031】
また、ターンテーブル35,35´は、図3及び図6に示すように、台車上面の台座50,50´とターンテーブル35,35´の上板52との間に、ベアリング48を介することにより、台車の天井部26に配設されている。
【0032】
すなわち、図4及び図7に示すように、前台車11の天井部26には、環状の支持枠51が固設されており、この支持枠51の外周面には、ターンテーブル35,35´の下面に垂設したドーナツ状の摺動枠54がベアリング48を介して遊嵌されており、従って、ターンテーブル35,35´は、ドーナツ状の摺動枠54を介して環状の支持枠51を中心に回動可能に構成されている。
【0033】
これにより、前後の台車11,12は、単線レールRの蛇行に伴い、ターンテーブル35,35´の旋回により水平方向に回動するようにしている。
【0034】
そして、図8に示すように、単線レールRが平面視で湾曲している場合に、前後の台車11,12はそれぞれのターンテーブル35,35´を介して水平回動して、各前後の台車11,12が単線レールRのカーブに適合した向きとなり、その上部に搭載した長手状の乗用車両16にもかかわらず、単線レールRの湾曲に沿って円滑に走行できるようにしている。
【0035】
また、図3及び図6に示すように、前後の台車11,12の各ターンテーブル35,35´の上板52にはそれぞれ前台車側支持ブラケット40及び後台車側支持ブラケット27が固設されており、同各支持ブラケット40,27は前後の台車11,12と乗用車両16の間に介在した前後長手矩形フレームに形成した台車連結フレーム18の前後部を枢支している。
【0036】
次に、乗用車両16の底部フレーム17は、平面視で略枠形状に構成され、図6に示すように、後側を台車連結フレーム枢軸28、28´に装着した底部フレーム支持ブラケット30を介して、台車連結フレーム枢軸28、28´の両端部に上下回転自在に枢支している。
【0037】
一方、底部フレーム17の前側は、図1に示すように、台車連結フレーム18の中央部下面に軸支した油圧シリンダ19の先端部と連結し、油圧シリンダ19の伸縮に応じて後台車12の台車連結フレーム枢軸28、28´を中心にして前部が上下に揺動可能としている。すなわち、台車連結フレーム18の中央部下面にシリンダブラケット33を架設し、シリンダブラケット33と乗用車両16の底部フレーム17の前側中央部に架設した油圧シリンダ19の先端連結ブラケット34との間に油圧シリンダ19を伸縮自在に介設している。
【0038】
従って、前後の台車11,12は、図1に示すように、台車連結フレーム18の前後部との枢支部分28,28において、前後回動可能に連結されていると共に、台車連結フレーム18の後部の枢支部分28を中心にして、乗用車両16は油圧シリンダ19により前側が上下回動自在となって単線レールRや前後の台車11,12の前後の傾斜にかかわらず、常に絶対的水平を保持するようにしている。
【0039】
そして、図1に示すように、乗用車両16の底部シャーシ29と底部フレーム17との間には複数の空気ばね31が配設されている。これら複数の空気ばね31は、鉛直方向に弾性を有する。また、この空気ばね31は、ベローズ型の空気ばね31である。このように、鉛直方向に弾性を有する複数の空気ばね31を設けているので、乗用車両16の鉛直方向に対する固有振動数を低くめ、良好な防振効果を得ることができ、乗用車両16における振動を緩和させることができる。
【0040】
また、図1に示すように、乗用車両16の底部シャーシ29と底部フレーム17との間にはオイルダンパー32が配設されている。このオイルダンパー32は、鉛直方向に弾性を有するダンパーであり、空気ばね31の余振動と左右方向の揺れを緩和するようにしている。
【0041】
図1,3,4,11,12に示すように、前台車11は、その天井部26に配設したターンテーブル35,35´の上板52の中心部に揺動ブラケット39を立設し、該揺動ブラケット39は台車連結フレーム18に装着した台車連結フレーム枢軸28、28´の中心部から直交する方向に突設した揺動軸38を枢支している。
【0042】
すなわち、前台車11の天井部26の上面には、図11、12に示すように、揺動ブラケット39を介して揺動軸38が配設されており、この揺動軸38は台車連結フレーム枢軸28の中央を直交する方向に貫通しており、従って、台車連結フレーム枢軸28は軸芯を中心に回転すると共に、中央を貫通した揺動軸38を中心に長手左右方向に揺動するように構成されている。
【0043】
そして、図11及び図12に示すように、台車連結フレーム18の前部を枢支する前台車11側の台車連結フレーム枢軸28は、その中央中心部を当該軸と直角方向に貫通して連結した揺動軸38により軸支され、この揺動軸38を介して左右に揺動自在に構成されている。
【0044】
さらに、図4,5,11,12に示すように、前台車11側の台車連結フレーム枢軸28、28´の左右両側は、前台車11のターンテーブル35,35´の上板に台座41を介して固設された支持ブラケット40により軸支されている。この前台車側支持ブラケット40は、台座41上にピン形状の筒体42を前後に2本立設し、そして筒体42を方形体状の揺動受部材45に挿通させると共に、その揺動受部材45の中央に台車連結フレーム枢軸28、28´を左右方向に挿貫している。そして、筒体42に挿通した揺動受部材45の上側及び下側には皿ばね46を挿通し、上側の皿ばね46を押さえ板43を介してナット44で締め付けることにより、台車連結フレーム枢軸28、28´を軸支している。
【0045】
従って、前台車11は台車連結フレーム18に対して揺動軸38を中心に左右方向に回動し、この回動に対して台車連結フレーム18の前側は前台車側支持ブラケット40を介して僅かであるが左右に揺動自在であるため、曲線走行時に生じる台車と台車連結フレーム18とのひねりを吸収することができ、単線レールRのねじれや傾斜に伴って発生する各台車11,12の走行負荷を低減することができる。
【0046】
このような構成により、左右曲線の単線レールR上を走行するとき、前台車11は後台車12及び台車連結フレーム18に対しレール形状に合わせて左右に傾きながら走行するので、車両全体は曲線をスムーズに曲がりながら走行する。
【0047】
以上のように、本実施形態のおける2台車式走行車両10は、上記のように構成されているので、例えば、上下に凹凸の起伏のある地面に沿って敷設された単線レールR上を、2台車式走行車両10が走行する場合は、まず、前後の台車11,12が走行車輪47を介して走行する。
【0048】
この際に、単線レールRに凹凸の起伏がある場合は、図9に示すように、前後の台車11,12は単線レールRの起伏に沿って、前後別々に傾斜した状態となり、特に起伏の頂部を境に前後の台車11,12が位置する状態になった時には、台車連結フレーム18との枢支部である台車連結フレーム枢軸28、28´を介して、前後の台車11,12は前後傾状態に揺動して単線レールR上を走行するものであり、このように、長尺に形成された前後の台車11,12であっても、台車連結フレーム18の台車枢軸を中心に前後の台車11,12が揺動して起伏状の単線レールRの頂部に沿って走行しうる。
【0049】
しかも、このように前後の台車11,12が揺動して傾斜しても、その上方に載置した乗用車両16は、台車連結フレーム18の略中央部から延設した油圧シリンダ19によって、台車連結フレーム18の傾きとは拘らず絶対水平状態を保持する。すなわち、図10に示すように、前後の台車11,12の傾きに伴い、台車連結フレーム18も傾動するが、この傾動を角度検出センサ55にて検知し、走行位置検出部56によるエンコーダ情報に基づいて現在の走行位置を検出し、コントローラ23を介して油圧シリンダ19の作動を制御して、常に台車連結フレーム18の傾動に対して乗用車両16が水平を保つようにしている。
【0050】
また、図8に示すように、単線レールR上が左右に蛇行し、平面視で湾曲している場合でも、前後の台車11,12はそれぞれのターンテーブル35,35´を介して水平回動して、各前後の台車11,12が単線レールRのカーブに適合した向きとなり、その上部に搭載した長手状の乗用車両16にもかかわらず、単線レールRの湾曲に沿って円滑に走行可能となる。
【0051】
更には、上記左右の蛇行に加え、単線レールRが上下に傾斜している場合には、前台車11は、台車連結フレーム18に枢支した揺動軸38と、前台車11のターンテーブル35,35´の上板52に配設した揺動ブラケット39とを介して、台車連結フレーム18に対して左右に回動しながら前後走行可能となる。
【0052】
従って、前後の台車11,12は、単線レールRの蛇行に伴い、ターンテーブル35,35´を介して水平回動し、さらに、前台車11は前述したように台車連結フレーム枢軸28、28´と揺動軸38とを介して前後回動、左右回動を行うようにしている。
【0053】
なお、前後の台車11,12は、その後端部にレールキャッチ式の図示しない非常停止装置を具備している。すなわち、平面視で外周を歯切形状とし半径を漸次拡大したレール挟持体(図示せず)を有し、非常時には図示しないモータを駆動してレール挟持体の外周面によって単線レールRのフランジを挟持して、2台車式走行車両10を強制的に停止させるようにしている。
【0054】
上記では、台車連結フレーム枢軸28、28´の中心部から直交する方向に突設した揺動軸38を設けていたが、図13に示すように、この揺動軸38を省略することもできる。揺動軸38を設けなくても、台車連結フレーム18の前側は前台車側支持ブラケット40を介して左右に揺動自在であるため、曲線走行時に生じる前後の台車11,12と台車連結フレーム18とのひねりを吸収することができる。
【0055】
(実施例2)
本実施例では、カプラ方式の2台車式走行車両100について詳細に説明する。
【0056】
本実施例では、図14及び図15に示すように、前台車11を実施例1のターンテーブル(旋回ベアリング)の代わりに通常の牽引自動車の連結装置(カプラ)を利用した構成とし、後台車12を実施例1のターンテーブルの構造を変更した構成とした。
【0057】
すなわち、前台車11は、カプラ60を介して、台車連結フレーム18に鉛直方向の軸線廻りに回動自在とすると共に、左右側で揺動しながら単線レールR上を走行可能としている。後台車12は、後台車取付フレーム62を介して台車連結フレーム18に鉛直方向の軸線廻りに回動自在とすると共に、水平方向の軸線廻りに前後傾状態に揺動して単線レールR上を走行可能としている。
【0058】
その他の構造については実施例1と同じであり、図14〜図20で用いる符号は、実施例1の図1〜図13に示した2台車式走行車両10と同じ構成要素については同一の符号を用いている。
【0059】
実施例2においても、図14に示すように、乗用車両16の底部フレーム17の下方に前後の台車11,12を連結する台車連結フレーム18を配設している。台車連結フレーム18は、図15に示すように、平面視で左右一対の縦フレーム57a,57aと、その左右の縦フレーム57a,57a間に架設した複数本の横フレーム57b,57b,57bにより略枠形状に構成されている。
【0060】
乗用車両16の底部フレーム17は、その後側において台車連結フレーム枢軸28a,28bに装着した底部フレーム支持ブラケット64a,64bを介して、台車連結フレーム18を上下回動自在に枢支している。具体的には、図16に示すように、底部フレーム17の後側下部に左右一対の底部フレーム支持ブラケット64a,64bを下方に向かって突出させ、各底部フレーム支持ブラケット64a,64bに、台車連結フレーム18の各縦フレーム57a,57aに固設した台車連結フレーム枢軸28a,28bの一端側をそれぞれ枢支連結している。
【0061】
また、図14に示すように、台車連結フレーム18の中央部下面に軸支した油圧シリンダ19の先端部と連結し、油圧シリンダ19の伸縮に応じて後台車12の台車連結フレーム枢軸28a,28bを中心にして前部が上下に揺動可能としている。すなわち、台車連結フレーム18の中央部下面にシリンダブラケット33を架設し、シリンダブラケット33と乗用車両16の底部フレーム17の前側中央部に架設した油圧シリンダ19の先端連結ブラケット34との間に油圧シリンダ19を伸縮自在に介設している。
【0062】
従って、乗用車両16は、図14及び図15に示すように、上記台車連結フレーム枢軸28a,28bを軸として、油圧シリンダ19により前側が上下回動自在となって、単線レールRや前後の台車11,12の前後の傾斜にかかわらず、常に絶対的水平を保持するようにしている。
【0063】
次に、台車連結フレーム18と前後の台車11,12との連結構造について説明する。まず、台車連結フレーム18と後台車12との連結構造について詳細に説明する。
【0064】
台車連結フレーム18の後側下方には、図14及び図16に示すように、後台車12を連結するための後台車取付フレーム62が配設される。後台車取付フレーム62は、図14に示すように、一対の縦フレーム63a,63aと、その縦フレーム63a,63a間に上下および中央に3本の横フレーム63b,63b,63bとで枠形状に構成され、後台車取付フレーム62は台車連結フレーム18の前部下方に取り付けられている。
【0065】
また、図16に示すように、後台車取付フレーム62の天井部には、その上面部にピロー形のベアリングユニット65a,65bが複数個配設されている。ベアリングユニット65a,65bは、後台車取付フレーム62を構成する各縦フレーム63aの左右側に左右一対で配設されている。
【0066】
そして、図16に示すように、左右の縦フレーム63a,63aの中央部に上記台車連結フレーム枢軸28a,28bを一体に形成すると共に、各台車連結フレーム枢軸28a,28bの両端を前記左右一対のベアリングユニット65a,65bで回動自在にそれぞれ支持する。これにより、後台車取付フレーム62は、台車連結フレーム18に対して、前記台車連結フレーム枢軸28a,28bを軸として水平方向の軸線廻りに回動自在としている。
【0067】
また、図16に示すように、後台車取付フレーム62の下部には、旋回軸本体66が下方に凸状に突出して配設されている。旋回軸本体66は、円柱形状を有する。これに対して、後台車12本体の天井部には前記旋回軸本体66を嵌め込むための嵌め込み凹部67が配設されている。その嵌め込み凹部67の内周面には、軸受68が配設されている。
【0068】
そして、図16に示すように、後台車取付フレーム62側の旋回軸本体66を、後台車12本体側に装着させることにより、後台車12本体は、旋回軸本体66を軸として、後台車取付フレーム62に対して鉛直方向の軸線廻りに回動自在としている。
【0069】
このようにして、図20に示すように、後台車12本体は、台車連結フレーム18に対して旋回軸本体66を介して鉛直方向の軸線廻りに回動自在とし、これにより、後台車12は、単線レールRが平面視で湾曲している場合に水平回動しながら走行可能となる。
【0070】
また、図19に示すように、後台車12は、台車連結フレーム枢軸28a,28bを軸として、台車連結フレーム18に水平方向の軸線廻りに回動自在に枢支連結されている。これにより、単線レールRが側面視で湾曲している場合に、後台車12は前後に傾斜状態しながら単線レールR上を走行可能となる。
【0071】
次に、台車連結フレーム18と前台車11との連結構造について説明する。実施例2では、前台車11は、カプラ60を介して台車連結フレーム18に連結されている。ここで、カプラ60は、通常の牽引自動車でのトラクタとトレーラとの連結を行う連結装置と同じものを使用している。
【0072】
カプラ60は、図18に示すように、本体となるカプラベース71と、キングピン61を挟持又は開放する一対のジョー70a,70bと、ジョー70a,70bを挟持又は開放するように操作する操作部材と、ジョー70a,70bを挟持位置で固定する固定部材により構成されている。
【0073】
図18に示すように、各ジョー70a,70bは、対向面の中央に半円形の凹部69a,69bを有すると共に、ジョー回動ピン83を軸にしてカプラベース71に回動自在に枢支されている。また、各ジョー70a,70bの両側端部同士を挟持用ばね(図示せず)で連結し、この挟持用ばねが対向面に向かって付勢することによって、ジョー70a,70bの対抗面に位置する凹部69a,69bでキングピン61を挟持するようにしている。
【0074】
図18に示すように、固定部材は、上記ジョー70a,70bを挟持位置で固定する略コの字形状を有するヨーク73を備えている。このヨーク73は、操作部材の操作により、各ジョー70a,70bの両側端部に掛合し、キングピン61を挟持位置でジョー70a,70bにより固定するようにしている。また、ヨーク73への掛合を開放することによって、キングピン61をジョー70a,70bから開放離脱するようにしている。
【0075】
図18に示すように、操作部材は、略コの字形状を有する上記ヨーク73を上下に摺動させてジョー70a,70bに掛合させ又は開放させるものである。操作部材は、ヨーク73の基端側とカプラベース71の上端側との間にヨークシャフト74を設け、このヨークシャフト74の周囲には、ヨークシャフト用ばね75を巻回している。ヨークシャフト用ばね75は、ヨーク73がジョー70a,70bを挟持して固定する方向に付勢している。
【0076】
また、図18に示すように、ヨークシャフト74とヨーク73の基端部との間に下方に突出させたガイドピン79を備え、そのガイドピン79をガイド板76のガイド孔77に挿通させている。また、ガイド板76は、カプラベース71側にガイド板固定ピン82を軸として回動自在に枢支されている。さらに、ガイド板76には、ガイド板76を回動させるリリースバー78を取り付けている。
【0077】
そして、図18に示すように、リリースバー78を鉛直方向の軸線廻りに回動すると、ガイド孔77内でガイドピン79が摺動することによって、ヨークシャフト74が軸方向(図18における上下方向)に摺動する。このようにして、ヨーク73のジョー70a,70bの挟持を固定したり、開放したりするようにしている。
【0078】
さらに、カプラ60は、左右両端に板状のカプラブラケット72,72を備え、この左右のカプラブラケット72,72にピッチング軸80を介してカプラベース71を上下に揺動自在としている。
【0079】
そして、図17に示すように、上記構造を有するカプラ60を前台車11の天井部に取り付けている。すなわち、カプラ60のキングピン61との連結面を走行方向とは垂直にして、カプラ60のカプラブラケット72,72を前台車11の天井部にネジで固設している。
【0080】
また、図14に示すように、台車連結フレーム18の前側下部にキングピン61を下方に突出させている。キングピン61は、基部に設けられた大径の台座部と、その台座部の下部に配設された円柱部と、その円柱部の下部に配設された小径の係合部と、最下部に配設されたフランジ部とにより構成されている。
【0081】
そして、本実施例では、カプラ60の操作部材の操作によりジョー70a,70bの凹部69a,69bでキングピン61の係合部を挟持させ、この挟持をヨーク73等の固定部材により固定している。このように、製造時ではカプラ60を介して前台車11を台車連結フレーム18に連結するようにし、通常の走行時ではカプラ60を介して台車連結フレーム18から前台車11の連結が解除しないようにしている。
【0082】
また、カプラ60を取り付けた前台車11は、カプラ60を介してキングピン61を軸として台車連結フレーム18に対して回動自在に連結されている。従って、前台車11は、図19に示すように、台車連結フレーム18に対してキングピン61を軸として鉛直方向の軸線廻りに回動しながら単線レールR上を走行可能としている。また、前台車11は、図20に示すように、台車連結フレーム18に対してキングピン61を軸として水平方向の軸線廻りに回動しながら単線レールR上を走行可能としている。
【0083】
さらに、カプラ60を取り付けた前台車11は、そのカプラ60のピッチング軸80を軸として台車連結フレーム18にローリング自在に連結されている。すなわち、牽引自動車ではトラクタに対してトレーラが前後揺動のピッチング動作を行うようにするカプラ60を、本実施例の2台車式走行車両100では横向きに位置させることにより、前台車11が台車連結フレーム18に対して左右揺動のローリング動作を行うようにしている。
【0084】
従って、前台車11は台車連結フレーム18に対してカプラ60を介してピッチング軸80を軸として左右方向に回動し、この回動に対して台車連結フレーム18の前側はカプラ60を介して僅かであるが左右に揺動自在であるため、曲線走行時に生じる台車と台車連結フレーム18とのひねりを吸収することができ、単線レールRのねじれや傾斜に伴って発生する各台車11,12の走行負荷を低減することができる。
【0085】
本実施例における2台車式走行車両100は、上記のように構成されているので、例えば、上下に凹凸の起伏のある地面に沿って敷設された単線レールR上を、2台車式走行車両100が走行する場合は、まず、前後の台車11,12が走行車輪47を介して走行する。
【0086】
この際に、単線レールRに凹凸の起伏がある場合は、図19に示すように、前後の台車11,12は単線レールRの起伏に沿って、前後別々に傾斜した状態となり、特に起伏の谷部を境に前後の台車11,12が位置する状態になった時には、前台車11でカプラ60とキングピン61とを介して、後台車12では台車連結フレーム枢軸28a,28bを介して、前後の台車11,12は前後傾状態に揺動して単線レールR上を走行するものである。
【0087】
また、図20に示すように、単線レールR上が左右に蛇行し、平面視で湾曲している場合でも、前台車11は旋回軸本体66を介して水平回動し、後台車12はキングピン61とカプラ60とを介して、各前後の台車11,12が単線レールRのカーブに適合した向きとなり、その上部に搭載した長手状の乗用車両16にもかかわらず、単線レールRの湾曲に沿って円滑に走行可能となる。
【0088】
更には、上記左右の蛇行に加え、図19に示すように、単線レールRが上下に傾斜している場合には、前台車11は、カプラのピッチング軸80を介して、台車連結フレーム18に対して左右に回動しながら前後走行可能となる。
【0089】
従って、前後の台車11,12は、単線レールRの蛇行に伴い、旋回軸本体66を介して水平回動し、さらに、前台車11は前述したようにキングピン61とカプラ60とを介して前後回動、左右回動を行うようにしている。
【0090】
以上のようにして、本実施例における2台車式走行車両100は、乗用車両16を搭載する台車を、前台車11と後台車12とに分割しているので、前台車11と後台車12との間に空間部を形成することができ、車両全体に亘って1つで構成した場合に比べて、台車自体の荷重を小さくすることができる。また、荷重を小さくすることによって、台車を載置するレール構造も軽量化でき、既にレールが敷設してある場合には既存のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0091】
R 単線レール
M 電動モータ
10 100 2台車式走行車両
11 前台車
12 後台車
13 駆動軸
14 ピニオン
15 ラック
17 底部フレーム
18 台車連結フレーム
19 油圧シリンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線レール上に跨持しながら走行すべく構成した下方開放状の略コの字状の台車を、前台車と後台車とに分離して構成し、各前後の台車の一側壁には、モータに連動連結した駆動軸を架設し、駆動軸先端に設けたピニオンと単線レールに沿って敷設したラックとを噛合することにより、ラックとピニオンとを介して前後台車が単線レールに沿って走行すべく構成し、
しかも、前後台車の上部に乗用車両を搭載すると共に、乗用車両の底部フレームと前後台車との間に台車連結フレームを配設し、
しかも、台車連結フレームの一端は底部フレームに枢支すると共に、台車連結フレームの中途と乗用車両の底部フレームとの間にはシリンダを伸縮自在に介設し、
更には、台車連結フレームの前後部と前後台車の上部とをそれぞれ回動自在に枢支連結したことを特徴とする2台車式走行車両。
【請求項2】
前後台車のいずれかは、他の台車に対して相対的に左右揺動自在に構成したことを特徴とする請求項1に記載の斜面昇降機の2台車式走行車両。
【請求項1】
単線レール上に跨持しながら走行すべく構成した下方開放状の略コの字状の台車を、前台車と後台車とに分離して構成し、各前後の台車の一側壁には、モータに連動連結した駆動軸を架設し、駆動軸先端に設けたピニオンと単線レールに沿って敷設したラックとを噛合することにより、ラックとピニオンとを介して前後台車が単線レールに沿って走行すべく構成し、
しかも、前後台車の上部に乗用車両を搭載すると共に、乗用車両の底部フレームと前後台車との間に台車連結フレームを配設し、
しかも、台車連結フレームの一端は底部フレームに枢支すると共に、台車連結フレームの中途と乗用車両の底部フレームとの間にはシリンダを伸縮自在に介設し、
更には、台車連結フレームの前後部と前後台車の上部とをそれぞれ回動自在に枢支連結したことを特徴とする2台車式走行車両。
【請求項2】
前後台車のいずれかは、他の台車に対して相対的に左右揺動自在に構成したことを特徴とする請求項1に記載の斜面昇降機の2台車式走行車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−68337(P2011−68337A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150232(P2010−150232)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000140731)株式会社嘉穂製作所 (12)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000140731)株式会社嘉穂製作所 (12)
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