説明

2条植落花生用歩行型収穫機

【課題】2条植の落花生株を並行して同時に刈取るとともに、刈取った茎葉束を容易に反転倒立操作ができるコンパクトな構成の2条植落花生用歩行型収穫機を提供する。
【解決手段】2条植落花生用歩行型収穫機1は、圃場の畝Uを跨いで走行可能な機体4と、この機体4に搭載されて刈取対象の列条植の落花生株Pを圃場から引抜いて走行機体の後部上方に向けて傾斜搬送する挟持搬送ベルト装置5eを機体平面視で左右並列配置した引抜搬送部5と、その左右の挟持搬送ベルト装置5eの搬送終端部からそれぞれ刈取物Pを受ける左右の受部材24と、この左右の受部材24の内側位置で機体後方に延設した機体操縦用の操縦ハンドル8とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2条植の落花生株を歩行操縦により刈取る落花生収穫作業に適する2条植落花生用歩行型収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の落花生収穫機が知られている。この落花生収穫機は、1条(1列)ずつ収穫する歩行型収穫機であり、2条植の畝の落花生株の刈取については往復の行程を要し、その往行程で片側条を刈取りした後、復行程で残りの条を刈取りする往復動作により植生落花生株を収穫する。引抜いた落花生株は、3〜4株をまとめた束の実が付いている根元の方が上になるようにオペレータが反転操作して倒立姿勢で圃場に順次載置する。このようにして畝上に倒立して置かれた落花生株の束は、天日乾燥した後に別途回収する。
【0003】
しかし、上記刈取作業における往行程の作業は、隣接する未収穫側の列の落花生株が障害となるので、円滑な収穫作業ができないという問題があり、その解決のために、2条植の落花生株を並行して同時に刈取るとともに、刈取った落花生株を束ねて容易に反転倒置操作ができるコンパクトな構成の歩行型収穫機の開発が待たれていた。
【特許文献1】特開平11−196645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、2条植の落花生株を並行して同時に刈取るとともに、刈取った落花生株を束ねて容易に反転倒立操作ができるコンパクトな構成の2条植落花生用歩行型収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明の2条植落花生用歩行型収穫機は、圃場の畝を跨いで走行可能な機体と、この機体に搭載されて刈取対象の列条植の落花生株を圃場から引抜いて走行機体の後部上方に向けて傾斜搬送する挟持搬送ベルト装置を機体平面視で左右並列配置した引抜搬送部と、その左右の挟持搬送ベルト装置の搬送終端部からそれぞれ刈取物を受ける左右の受部材と、この左右の受部材の内側位置で機体後方に延設した機体操縦用の操縦ハンドルとから構成したことを特徴とする。
上記引抜搬送部は、挟持搬送ベルト装置によって刈取対象の落花生株を挟持することにより隣接2条分を圃場から引抜いて機体の後部上方向に搬送し、刈取物は搬送終端部からそれぞれ左右の受部材に落下する。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記操縦ハンドルは、機体平面視で前記左右の挟持搬送ベルト装置の搬送終端部より内側に配置してなることを特徴とする。
前記操縦ハンドルは、左右の挟持搬送ベルト装置の搬送終端部より内側に位置することから、搬送終端部から落下する刈取物は受部材上に支障なく落下する。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、前記左右の受部材は、後ろ下がりに傾斜して配置してなることを特徴とする。
受部材が後ろ下がりに傾斜することから、この受部材に受けた刈取物は、傾斜に沿って機体後側に向かって移動しやすくなる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る2条植落花生用歩行型収穫機により、圃場に植生する落花生株は、隣接2条につき引抜搬送部の左右の引抜き搬送ベルト装置により茎葉部を挟持して引抜かれ、機体の後部上方に搬送され、搬送終端部から落下してこの刈取物を受部材が受ける。オペレータは、操縦ハンドルで歩行操縦しながら受部材上の刈取物を上下反転させ、実のある根元側を上にして地面に倒置することができる。
本発明においては、受部材を操縦ハンドルの両外側に設けることで、複数条の落花生株を同時に収穫できるものでありながら、操縦ハンドルから近い位置で刈取物を反転して地面に倒置することができるので、能率良く収穫作業を進めることができる。また、受部材を操縦ハンドルの両外側に設けることで、左右の受部材を低位置に設けることができるので、落花生収穫機の機体全体の車高を低くコンパクトに構成することができる。
【0009】
請求項2に係る2条植落花生用歩行型収穫機の左右の操縦ハンドルは、隣接2条の挟持搬送ベルト装置の左右の搬送終端部内側に位置することから、搬送終端部から刈取物が落下する時に操縦ハンドルに当たりにくくなり、受部材上に支障なく落下するので、オペレータによる反転倒置作業が容易となり作業能率を向上することができる。
【0010】
請求項3に係る2条植落花生用歩行型収穫機は、左右の受部材が後ろ下がりに傾斜することから、この受部材に受けた刈取物は、傾斜に沿って機体後側に向かって移動しやすくなるので、オペレータによる反転倒置作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、以下に図面に基づいて詳細に説明する。
2条植落花生用歩行型収穫機(以下において、単に「収穫機」という)の側面図および平面図をそれぞれ図1、図2に示す。収穫機1は、畝Uを跨ぐように左右の前輪2,2と左右の後輪3,3とを備えて直進走行可能にフレーム構成した機体4について、列条植の落花生株Pの茎葉部を挟持して引抜くとともに機体後部上方に搬送する引抜搬送部5、その前側で落花生株Pの茎葉部を所定高さに切り揃える先葉カッタ6および根切り用の左右のソイラ7,7、機体後部に延びる左右の操縦ハンドル8,8等を備えて構成される。
【0012】
機体4は、エンジン11と一体に構成した伝動機ケース12の両側端に後輪伝動部13,13を介して左右の後輪3,3を支持し、また、伝動機ケース12の両側部から前側に延びる左右のサイドフレーム14,14を備え、この左右のサイドフレーム14,14に前輪支軸15,15を取付けるとともに、それぞれの前端部から立ち上がり機体全幅に及ぶ門型フレーム16を先葉カッタ6と一体にフレームを構成する。また、機体中央には伝動機ケース12から前側に延びる不図示のセンターフレームを備える。
【0013】
引抜搬送部5は、隣接2条分の左右の挟持搬送ベルト装置5e,5eにより構成され、各挟持搬送ベルト装置5e,5eは、収穫するべき2条植の落花生株Pのそれぞれの植生位置を中心として左右対称に配置したベースフレーム5f、5fによって左右のベルト21,21を近接対向して支持し、かつ、左右に開いて配置した前プーリ22,22によって落花生株Pの茎葉部を取り込み、後端を搬送終端部として構成する。この搬送終端部の近傍には、伝動機ケース12から計4ヶ所で分岐伝動する搬送伝動部23…を設けて近接対向する左右のベルト21,21をそれぞれ駆動するとともに各ベースフレーム5f、5fを傾斜位置に支持する。また、引抜搬送部5の後半部の下方には、搬送終端部から落下した刈取物を受ける左右の受部材24,24を左右の挟持搬送ベルト装置5e,5eの傾斜に沿って取付ける。この受部材24,24は、受けた刈取物が機体後側に反転移動しやすくなるように、後部を緩やかに逆傾斜してシュータ状に形成する。
【0014】
先葉カッタ6は、畝Uに植生された落花生株Pの子房柄(地中の実部と連結する柄、落下茎ともいう)より上位の株幅全体に及ぶ高さ位置で茎葉部の頂部を切り揃えるべく、機体全幅に及ぶバリカン構造の切断手段であり、上下位置調節可能にハンドル6h等を備えて門型フレーム16と一体に構成し、または、門型フレーム16に取付ける。左右のソイラ7,7は、それぞれ左右のサイドフレーム14,14から畝Uの土壌中に延びて対応する側の条の落花生株Pの根切りをするべき範囲に高さ位置調節可能に屈曲形成する。左右の操縦ハンドル8,8は、左右の受部材24,24に刈取物を受ける際に邪魔にならないように、左右の搬送終端部の幅寸法内に構成する。
【0015】
上記構成の収穫機1により、引抜搬送部5が圃場に植生する落花生株Pの茎葉部を挟持して引抜きつつ機体後部上方に搬送し、搬送終端部から落下した刈取物を受部材24,24に受ける。オペレータは、操縦ハンドル8,8で歩行操縦しながら受部材24,24上の刈取物を数株をまとめて上下反転させ、実が付いている根元側を上にして倒立姿勢の落花生株Pを地面に載置することができる。この場合において、ソイラ7,7が落花生株Pの根を切るとともに、その茎葉頂部を先葉カッタ6が切り揃えることから、引抜きが容易となり、かつ、反転姿勢の落花生株Pの束が地面に安定して倒置される。
【0016】
本発明においては、受部材24,24を操縦ハンドル8,8の両外側に設けることで、複数条の落花生株Pを同時に収穫できるものでありながら、操縦ハンドル8,8から近い位置で落花生株Pを反転して地面に倒置することができるので、能率良く収穫作業を進めることができる。また、受部材24,24を操縦ハンドル8,8の両外側に設けることで、受部材24,24を低位置に設けることができるので、落花生収穫機1の機体全体の車高を低くコンパクトに構成することができる。
【0017】
上記操縦ハンドル8,8が左右の挟持搬送ベルト装置5e,5eの搬送終端部の幅寸法内配置の場合は、搬送終端側から刈取物が落下する時に操縦ハンドル8,8に当たりにくくなり、受部材24,24上に支障なく落下することから、オペレータによる反転倒置作業が容易となり作業能率を向上することができる。さらに、受部材24,24が後ろ下がりに傾斜することにより、この受部材24,24に受けた刈取物は、傾斜に沿って機体後側に向かって移動しやすくなるので、オペレータによる反転倒置作業が容易となる。
【0018】
次に、収穫機の別の構成例について説明する。以下において、前記同様の部材はその符号を付すことによって説明を省略する。
収穫機31の側面図および平面図をそれぞれ図3、図4に示す。収穫機31は、伝動機ケース12の両側端から前傾して立ち上がって機体全幅に及ぶ門型伝動部32を備える。この門型伝動部32から、図5の伝動系統展開図に示すように、計4ヶ所で分岐伝動する搬送伝動部33…を設けて各挟持搬送ベルト装置5e,5eについて左右のベルト21,21をそれぞれ駆動するとともに各ベースフレーム5f、5fの後部を門型伝動部32の下方の所定高さ位置、すなわち、刈取物が引抜搬送部5によって通過しうる高さ位置に吊下げ支持する。左右のサイドフレーム14,14の前部を連結する門型フレーム16には、計4ヶ所の支持材34…を介して各ベースフレーム5f、5fの前部を上記所定高さ位置に吊下げ支持するとともに、機体全幅に及ぶ先葉カッタ6を高さ位置を調節可能に取付ける。
上述の構成とすることにより、左右の挟持搬送ベルト装置5e,5eの上方にその伝動系が配置されていることから、下方を広く確保することができるので、豆がスムーズに通過することができる。
【0019】
機体中央線位置には、畝U上の刈取るべき落花生株P,Pを条毎に左右に分けるブレード状の分草ガイド35を機体前方に突出して中央分離板35cと一体に取付ける。分草ガイド35は、先葉カッタ6より低い範囲で十分であることから門型フレーム16の高さ範囲に形成し、中央分離板35cは、左右の挟持搬送ベルト装置5e,5eより上で門型フレーム16および門型伝動部32の高さ範囲に形成することにより、左右2条の刈取物を分離して搬送をガイドすることができる。また、左右の挟持搬送ベルト装置5e,5eの下方まで中央分離板35cを延ばして形成することにより、圃場から引抜いた刈取物の根元側を左右の条ごとに確実に分離して分豆しやすくすることができる。
【0020】
前輪支持部の構成については、図6の斜視図に示すように、幅広に形成した左右のサイドフレーム14,14に貫通して、または側面に沿ってそれぞれボス15e、15eを取付け、これら左右のボス15e、15eに前輪支軸15,15をピン固定することにより、特段の取付部材を要することなく、左右の前輪2,2を高さ位置調節可能に取付けることができる。
【0021】
刈取物の泥落としについては、収穫機要部の側面図および平面図をそれぞれ図7、図8に示すように、左右の挟持搬送ベルト装置5e,5eの下方の搬送経路中を横断する位置に構成した回転アーム装置41により行う。この回転アーム装置41は、センタフレームに設けた伝動部41tにより左右の回動軸42、42を支持し、豆殻より軟質の弾性材料による複数の可撓腕43…を半径方向に突設して構成する。左右の回動軸42、42は、搬送中の刈取物の根を持ち上げる方向に可撓腕43…を回動することにより、刈取物の姿勢を乱すことなく、かつ、豆殻を損傷することなく干渉して付着泥土を払い落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】2条植落花生用歩行型収穫機の側面図である。
【図2】図1の収穫機の平面図である。
【図3】他の構成例による2条植落花生用歩行型収穫機の側面図である。
【図4】図3の収穫機の平面図である。
【図5】門型伝動部の伝動系統展開図である。
【図6】前輪支持部の斜視図である。
【図7】収穫機要部の側面図である。
【図8】図7の収穫機要部の平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 収穫機(2条植落花生用歩行型収穫機)
2 前輪
3 後輪
4 機体
5 引抜搬送部
5e 挟持搬送ベルト装置
6 先葉カッタ
8 操縦ハンドル
12 伝動機ケース
14 サイドフレーム
16 門型フレーム
23 搬送伝動部
24 受部材
31 収穫機(2条植落花生用歩行型収穫機)
32 門型伝動部
33 搬送伝動部
P 落花生株
U 畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の畝を跨いで走行可能な機体(4)と、この機体に搭載されて刈取対象の列条植の落花生株(P)を圃場から引抜いて走行機体の後部上方に向けて傾斜搬送する2つの挟持搬送ベルト装置(5e,5e)を機体平面視で左右並列配置した引抜搬送部(5)と、その左右の挟持搬送ベルト装置の搬送終端部からそれぞれ刈取物を受ける左右の受部材(24,24)と、この左右の受部材の内側位置で機体後方に延設した機体操縦用の操縦ハンドル(8,8)とから構成したことを特徴とする2条植落花生用歩行型収穫機。
【請求項2】
前記操縦ハンドル(8,8)は、機体平面視で前記左右の挟持搬送ベルト装置(5e,5e)の搬送終端部より内側に配置してなることを特徴とする請求項1記載の2条植落花生用歩行型収穫機。
【請求項3】
前記左右の受部材(24,24)は、後部を低く傾斜して配置してなることを特徴とする請求項1記載の2条植落花生用歩行型収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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