説明

2段階乾燥供給ガス化装置および方法

炭素質材料などの如き原料をガス化させるための乾燥供給2段階ガス化装置および方法を開示し、この方法はエネルギー効率が改善されていることに加えて原料消費量および二酸化炭素発生放出量が低い方法である。その原料を最初に本ガス化装置の上部の中で熱合成ガスを用いて乾燥させかつ余熱することで揮発物含有量が低い乾燥したチャーを生じさせる。その乾燥したチャーを2段階ガス化装置の1番目の段階に送り込んでそれと酸素を水蒸気の存在下で反応させることで熱合成ガス流れを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2009年4月1日付けで出願した表題が「Two Stage Dry Feed Gasification System And Process」の米国仮出願連続番号61/165,784(これは全体が本明細書に組み入れられる)に対する利点を35 USC §119(e)の下で請求する非仮出願である。
【0002】
政府支援研究開発に関する供述
なし。
【0003】
本発明は、一般に固体状の原料、例えば炭素質材料などを好ましい気体状生成物、例えば合成ガスなどに変化させるためのガス化装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ガス化方法は固体状もしくは液状の原料、例えば石炭、石油コークスおよび石油残渣などを合成ガス(syngas)に変化させる目的で幅広く用いられている。合成ガスは化学品、例えば水素、メタノール、アンモニア、合成天然ガスまたは合成輸送用油などを製造するための重要な中間原料である。合成ガスはまたガス化複合発電(IGCC)として知られる方法で電気を発生させる目的でも用いられ得る。
【0005】
ガス化方法では、原料と酸素を燃料の自然発火温度より直ぐ上の温度で接触させることが一般的に実施されている。そのような実施の欠点は、燃焼熱の一部が原料の加熱および原料によって持ち込まれた水分の蒸発で消費される結果として最終的に工程のエネルギー効率が低い点にある。エネルギー効率が低いことは原料の消費量および温室ガスの放出量が高いと解釈される。従って、前記欠点を克服するガス化装置を開発する必要性が存在する。
【0006】
要約
本開示は、炭素質材料などの如き原料をガス化させるための乾燥供給2段階ガス化装置および方法に関し、この方法はエネルギー効率が改善されていることに加えて原料消費量およびCO放出量がより低い方法である。
【0007】
特定の態様では炭素質材料をガス化させる方法を記述し、この方法は、(a)反応槽上部と反応槽下部を含んで成るガス化反応槽を準備し、(b)固体状炭素質原料流れを前記反応槽上部の中に導入して、その中で反応槽下部から来た1番目の混合生成物と反応させることで2番目の混合生成物を生じさせるが、前記1番目の混合生成物は合成ガスを含有して成り、かつ前記2番目の混合生成物は2番目の固体状生成物および2番目の気体状生成物を含有して成り、(c)前記2番目の混合生成物を1番目の分離装置に送ることで、前記2番目の固体状生成物を前記2番目の気体状生成物から分離し、(d)その分離した2番目の固体状生成物を前記反応槽下部の中に送り、(e)前記1番目の分離装置から出た前記2番目の気体状生成物流れを熱回収装置に通すことで、前記2番目の気体状生成物流れの温度を低下させかつ水蒸気を発生させ、(f)段階(e)で発生させた前記水蒸気を前記反応槽下部の中に送り、(g)パート(e)の前記熱回収装置から出た前記2番目の気体状生成物を微粒子濾過装置に送ることで、残存固体、微粉および微粒子を含有する前記流れを取り出して前記反応槽下部の中に送り、(h)気体流れ、段階(c)の前記2番目の固体状生成物流れおよび段階(e)の前記熱回収装置の中で発生させた前記水蒸気を前記反応槽下部の中で一緒にしてそれらを反応させることで、熱を発生させかつ合成ガ
スを含有して成る1番目の混合生成物を生じさせるが、前記気体流れは酸素含有ガス、水蒸気およびこれらの混合物から成る群より選択した酸素供給材料を含有して成り、(i)前記反応槽下部から来た段階(h)の前記1番目の混合生成物を前記反応槽上部の中に送り込んで、前記固体状原料流れを前記反応槽上部の中で2番目の混合生成物に変化させることで、段階(h)で発生させた前記熱を回収する段階を含んで成る。
【0008】
この上に詳述し方法の特定態様では、パート(b)の前記固体状原料を段階(c)の前記2番目の気体状生成物と混合することで、温固体−気体混合物を生じさせかつ前記原料を実質的に乾燥させ、特定の態様では、前記温固体−気体混合物を2番目の分離装置に通すことで、前記固体状原料を前記2番目の気体状生成物から分離する。特定の態様では、前記2番目の分離装置から出た前記固体状原料を前記反応槽上部の中に送りかつ前記2番目の分離装置から出た前記2番目の気体状生成物流れを微粒子濾過装置に向かわせることで、残存固体、微粉および微粒子を取り出す。特定の態様では、前記微粒子濾過装置から出た前記残存固体、微粉および微粒子を前記反応槽上部の中に送る。
【0009】
前記固体状炭素質原料および前記残存固体、微粉および微粒子を1個以上の供給装置で前記反応槽上部に導入してもよい。前記気体流れ、1番目の分離装置から出た前記2番目の固体状生成物および前記熱回収装置から発生した前記水蒸気を1個以上の分散装置で前記反応槽下部の中に導入してもよい。前記炭素質材料を石炭、褐炭、石油コークスおよびこれらの混合物から成る群より選択する。前記酸素含有ガスは空気、酸素が豊富な空気、酸素およびこれらの混合物から選択可能である。前記熱回収装置は放射熱型ボイラー、水管ボイラー、煙管ボイラーおよびこれらの組み合わせから成る群より選択可能である。前記1番目および2番目の分離装置は各々がサイクロンを含有して成っていてもよい。本ガス化装置の上部から出て前記1番目の分離装置の中に入る前の前記2番目の混合生成物の温度は、約1200度Fから2500度Fの範囲であってもよく、好適には1500度Fから2000度Fの範囲である。前記温固体−気体混合物を300度Fから1000度Fの範囲、好適には500度Fから800度Fの範囲内の温度に維持する。
【0010】
特定の態様は炭素質材料をガス化させるための装置に関し、この装置には、a)固体状炭素質原料、再循環して来た残存固体、微粉および微粒子の流れ、および反応槽下部から来た1番目の混合生成物(この1番目の混合生成物は合成ガスを含有する)を反応させて2番目の混合生成物(この2番目の混合生成物は2番目の固体状生成物流れおよび2番目の気体状生成物流れを含有して成る)を生じさせるための反応槽上部、b)前記2番目の固体状生成物流れ(この2番目の固体状生成物を前記反応槽下部の中に導入する)を前記2番目の気体状生成物流れから分離するための1番目の分離装置、c)前記2番目の気体状生成物流れの温度を低くしかつ水蒸気(この水蒸気を前記反応槽下部の中に送り込む)を発生させるための熱回収装置、d)前記熱回収装置から出た前記2番目の気体状生成物流れから前記残存固体、微粉および微粒子を分離(その分離した残存固体、微粉および微粒子を前記反応槽上部の中に送る)するための微粒子濾過装置、e)前記1番目の分離装置から出た前記2番目の固体状生成物、前記熱回収装置の中で発生した前記水蒸気および気体流れ(この気体流れは酸素含有ガス、水蒸気およびこれらの混合物から成る群より選択した酸素供給材料を含有して成る)を含有して成る混合物を反応(この反応で熱が発生しかつ前記1番目の混合生成物が生じ、かつ前記固体状原料流れを前記反応槽上部の中で2番目の混合生成物に変化させることで前記発生した熱を回収する)させるための反応槽下部が備わっている。
【0011】
本発明に従う装置に更に前記固体状原料流れを前記2番目の気体状生成物流れと混合して温固体−気体混合物を生じさせるための固体−気体混合装置、および前記温固体−気体混合物を2番目の固体状原料流れ(この2番目の固体状原料流れを前記反応槽下部の中に送る)と2番目の気体状生成物流れに分離するための2番目の分離装置も含めてもよい。
【0012】
本装置の特定の態様では、前記1番目の分離装置から出た前記2番目の固体状生成物流れ、前記熱回収装置から出た前記水蒸気およびパート(e)の前記気体流れを1個以上の分散装置で前記反応槽下部の中に送ってもよい。前記炭素質原料は石炭、褐炭、石油コークスまたはこれらの混合物から選択可能である。前記酸素含有ガスは空気、酸素が豊富な空気、酸素またはこれらの混合物であってもよい。前記熱回収装置は放射熱型ボイラー、水管ボイラー、煙管ボイラーまたはこれらの組み合わせであってもよい。前記1番目の分離装置の中に入る前の前記2番目の混合生成物の温度は1200度Fから2500度Fの範囲、好適には1500度Fから2000度Fの範囲である。前記温固体−気体混合物を300度Fから1000度Fの範囲の温度に維持、好適には500度Fから800度Fの範囲に維持する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本態様のより詳細な説明を行う目的で、ここに、添付図を言及する。
【図1】図1は、本発明の1つの態様で用いるに有用な装置および絵入り工程流れ図を示す略図である。
【図2】図2は、本発明の代替態様で用いるに有用な装置および絵入り工程流れ図を示す略図である。
【0014】
詳細な説明
以下に行う様々な態様の詳細な説明では、本発明の実施を可能にする具体的態様を例示する添付図を参照する。本態様は本発明の面を当業者が本発明を実施することを可能にするに充分なほど詳細に説明することを意図したものである。しかしながら、他の態様も使用可能であり、本発明の範囲から逸脱しない限り変更を行ってもよい。このように、本発明の範囲を本明細書に開示する具体的態様のみに限定するものでなく、むしろ、添付請求項に加えて当該請求項によって権利が与えられる相当物の全範囲によってのみ範囲を限定する。
【0015】
図1および2を参照して、本発明の様々な態様において参照番号10で一般的に示すガス化反応槽を準備し、これは反応槽下部30と反応槽上部40を有する。本ガス化方法の1番目の段階を反応槽下部30の中で起こさせそして本ガス化方法の2番目の段階を反応槽上部40の中で起こさせる。反応槽下部30が1番目の段階の反応ゾーンを限定していることから、別法として、それを1番目の段階の反応ゾーンと呼ぶこともある。反応槽上部40が2番目の段階の反応ゾーンを限定していることから、別法として、それを2番目の段階の反応ゾーンと呼ぶこともある。
【0016】
図1に示す態様に従い、固体状原料を供給装置100、例えばこれらに限定するものでないが、ロックホッパー装置などに入れる前に、それを粉砕しておく(当該技術分野で公知であるが、本開示の範囲外である方法によって)。その粉砕した固体状流れ(これは供給装置100から来た微粒子状の炭素質材料を含有して成る)を供給装置80および/または80aまたは追加的供給装置(示していない)によってガス化反応槽10の上部40の中に注入する。次に、その炭素質材料はガス化反応槽10の下部30から上昇して来る熱合成ガスと接触する。その炭素質材料は乾燥を受け、それの一部は熱分解反応、例えば炭素と水蒸気の反応(C+HO→CO+H)などによってガス化する。熱分解反応は吸熱反応であり、従って炭素質材料と合成ガスの混合物が上部40の中を上方に移動するにつれてその混合物の温度が低下する。未反応の固体状微粒子(例えばチャー)と2番目の気体状生成物流れ(例えば合成ガス)を含有して成る2番目の混合生成物がガス化装置10の上部40の頭頂から出る時までに、その2番目の混合生成物の温度が1200度F
から2500度Fの範囲、好適には1500度Fから2000度Fの範囲にまで降下する。
【0017】
更に、図1に示す如き態様に従い、未反応の固体状微粒子と2番目の気体状生成物流れを含有して成る2番目の混合生成物は反応槽上部40から出て1番目の分離装置50に送られる。その1番目の分離装置50によって前記2番目の混合生成物が2番目の固体状生成物流れと2番目の気体状生成物流れに分割され、その2番目の気体状生成物流れの中に残存する残存固体状微粉の分率は僅かのみである。その2番目の固体状生成物流れは重力によって降下した後、1番目の分離装置50から出口70を通って出る。次に、その2番目の固体状生成物流れは分散装置60および/または60aによってガス化装置10の反応槽下部30に再循環して戻る。そのような装置によって、その再循環した固体と気体状酸化剤を反応槽の1番目の段階に添加している間にその固体と酸化剤が混ざり合う。平均的当業者はそのような分散装置の構成を一般に理解するであろう。
【0018】
更に、図1に示す如き態様に従い、ガス化装置10の下部30(または1番目の段階の反応ゾーン)の中で前記2番目の固体状生成物流れ(主にチャーを含有)と酸素が過熱水蒸気の存在下で反応する。その1番目の段階で起こる主な反応はC+O→COおよびC+1/2 O→COである。その発熱反応によって1番目の段階における気体の温度が2000度Fから3500度Fの範囲に上昇する。反応槽下部30の中で生じた熱合成ガスは反応槽上部40に向かって上方に流れて、炭素質原料と接触する。その原料の粒子が前記熱合成ガスによって乾燥および加熱されて高温になった後、その乾燥した粒子が水蒸気と反応することでCOと水素が生じる。この2番目の段階で起こる主な反応は炭素と水蒸気の反応、即ちC+HO→CO+Hおよび水とガスの反応、即ちCO+HO→CO+Hである。その炭素と水蒸気の反応によってCOとHが生じ、従ってそのような利用可能なガスの収率が高くなる。
【0019】
再び、図1に示す如き態様を参照して、1番目の段階の温度を灰融点よりも高くする。従って、飛沫同伴して来た灰粒子が凝集して粘性のある溶融スラグになり、それがガス化装置の側面に沿って下方に流れて、タップホール20を通って反応槽から出て急冷室の中に入る。そのスラグは水で急冷された後、最終的に固体状スラグ生成物として集められる。典型的には、反応槽下部30に添加する水蒸気は熱回収装置180の中で発生させた水蒸気である。水170を熱回収装置180の中に供給すると、それはガス化装置10の上部40から出て来た熱合成ガスで加熱される。次に、その発生した水蒸気を分散装置60および/または60aによってガス化装置10の下部30に送る。
【0020】
更に、図1を参照して、前記1番目の分離装置50から出て来た前記2番目の気体状生成物流れは、水素、一酸化炭素、少量のメタン、硫化水素、アンモニア、窒素、二酸化炭素および少量の残存固体状微粉を含有して成る。その後、熱回収装置180の中を通ることで冷却された合成ガスを微粒子濾過装置110の中に導入することによって残存固体状微粉および微粒子を取り出して、ガス化装置10の下部30に再循環させて戻す。
【0021】
図2に示す態様では、固体状原料を供給装置100、例えばこれらに限定するものでないが、ロックホッパー装置などに入れる前に、それを粉砕しておく。その粉砕した固体状流れ(これは供給装置から来た微粒子状の炭素質材料を含有して成る)を固体−気体混合装置160に送ると、それは熱回収装置180から出て来た温合成ガスと接触する。その混合装置160の機能は、原料の水分含有量を低下させるに充分な滞留時間をもたらすことで実質的に乾燥した原料を生じさせることにある。混合装置160の中にタールが生じることがないように、熱回収装置180から来る温合成ガスの温度を約300度Fから1000度Fの範囲、好適には約500度Fから800度Fの範囲に維持する。タールが生じると合成ガスが汚染されることで下流で行うガスおよび廃水の処理がより高価になるこ
とからそれの生成は好ましくない。
【0022】
更に、図2を参照して、混合装置160から出た温固体−気体混合物を1番目の分離装置150に通すことで、温固体−気体混合物を2番目の固体状生成物流れと2番目の気体状生成物流れに分割させ、その気体流れの中に残存する残存固体状微粉の分率は僅かのみである。特定の態様として、その1番目の分離装置はサイクロンまたは粒子を気体流れから分離するに適した他の商業的に利用可能な方法を含有して成っていてもよい。1番目の分離装置150から出て来た2番目の固体状生成物流れを分散装置80および/または80aまたは追加的供給装置(示していない)によってガス化装置10の反応槽上部40に再循環させて戻す。次に、1番目の分離装置150から出て来た2番目の気体状生成物流れを微粒子濾過装置110の中に導入することで、残存する固体状の微粉および微粒子を取り出して、供給装置80および/または80a(または追加的供給装置)によってガス化装置10の上部40に2番目の段階の反応用の原料として再循環させて戻す。濾過装置110から出て来た気体状生成物は生合成ガスを含有して成り、それにはほとんど微粒子が入っていない。次に、本開示の範囲外の方法を用いて、その生合成ガスを更に浄化してもよい。
【0023】
更に、図2を参照して、次に、1番目の分離装置150から出て来た2番目の固体状生成物および微粒子濾過装置110から出て来た残存固体状微粉および微粒子は両方ともガス化装置10の下部30から上昇して来た熱合成ガスと接触する。その炭素質材料から揮発物が除去されかつその固体の一部は熱分解反応によってガス化することで、HとCOが生じる。未反応の固体は本質的にチャーと灰である。ガス化装置10の上部40の中で主に起こる熱分解反応は非常に吸熱的な反応である。従って、炭素質材料と合成ガスの混合物が上部40の中を上方に向かって移動するにつれてそれの温度が低下する。2番目の固体状生成物流れ(例えばチャー)と2番目の気体状生成物流れ(例えば合成ガス)を含有して成る2番目の混合生成物がガス化装置10の上部40の頭頂から出るまでに、その2番目の混合生成物の温度が1200度Fから2500度Fの範囲、より好適には1500度Fから2000度Fの範囲内になる。
【0024】
更に、図2を参照して、反応槽上部40から出て来た2番目の固体状生成物流れと2番目の気体状生成物流れを含有して成る2番目の混合生成物を1番目の分離装置50に送ることで、その混合物を2番目の固体状生成物流れと2番目の気体状生成物流れに分割させ、その2番目の気体状生成物流れの中に残存する残存固体状微粉の分率は僅かのみである。分離装置50から出て来た2番目の固体状生成物流れを分散装置60および/または60aに通してガス化装置10の反応槽下部30に1番目の段階の反応用の原料として再循環させて戻す。
【0025】
更に、図2に示す如き態様に従い、ガス化装置10の下部30の中で起こさせる1番目の段階として、前記2番目の固体状生成物流れ(主にチャーを含有)と酸素が過熱水蒸気の存在下で反応する。その1番目の段階で起こる主な反応にはC+O→COおよびC+1/2 O→COが含まれ、両方とも非常に発熱的である。その結果として、1番目の段階の中の温度が2000度Fから3500度Fの範囲内に維持される。その1番目の段階の反応ゾーン30の中で発生して気体流れによって上方に運ばれた熱を2番目の段階の熱分解反応(この反応は主に非加熱反応槽上部40の中で起こる)で用いるが、それには、供給材料によって持ち込まれた水分の蒸発、炭素と水蒸気の反応およびCOとHOの間で起こる水−ガス反応が含まれる。
【0026】
再び、図2に示す如き態様を参照して、1番目の段階の温度を灰の融点よりも高くする。従って、飛沫同伴して来た灰粒子が凝集して粘性のある溶融スラグになり、それがガス化装置の側面に沿って下方に流れて、タップホール20を通って反応槽から出て急冷室の
中に入る。そのスラグは水で急冷された後、最終的に固体状スラグ生成物として集められる。反応槽下部30に添加する水蒸気は、ガス化装置10の2番目の段階(上部)から出て来た熱合成ガスによる熱を用いて熱回収装置180から発生させた水蒸気であってもよい。
【0027】
更に、図2を参照して、1番目の分離装置50から出て来た2番目の気体状生成物流れは、水素、一酸化炭素、少量のメタン、硫化水素、アンモニア、窒素、二酸化炭素および少量の残存固体状微粉を含有して成る。熱回収装置180の中を通った後の温合成ガスを混合装置160に送ると、それは粉砕された固体状原料と接触することで、その原料を乾燥させる役割を果たす温固体−気体混合物が生じる。タールの生成量が最小限になるように、前記混合装置160の中の温固体−気体混合物の温度を約300度Fから1000度Fの範囲、好適には約500度Fから800度Fの範囲内に維持する。次に、混合装置160から出て来た温固体−気体混合物を微粒子濾過装置110の中に導入することで、残存する固体状微粉および微粒子を取り出して、この上に上述したように、ガス化装置10の上部40に再循環させて戻す。
【0028】
特定の態様では、図1および2に例示するように、再循環させたチャー、酸素含有ガスの流れおよび水蒸気を分散装置60および/または60a(下部30の水平に伸びた部分のいずれかの末端に位置させた)に通してガス化反応槽10の下部30の中に入らせる。分散装置を3個以上、例えば4個用いることも可能であり、それらを90度離して配置してもよい。また、組になった分散装置を異なる高さの所に位置させることも可能であり、同じ面に存在させる必要はない。
【0029】
再び、図1および2に示した態様を参照して、熱反応生成物が反応槽下部30から反応槽上部40に直接移動するように、非加熱反応槽上部40を加熱反応槽下部30の上部に直接つなげる。それによって気体状反応生成物および飛沫同伴固体の中に入り込んで失われる熱の量が最小限になることで工程の効率が高くなる。
【0030】
更に、図1および2に示した態様を参照して、分散装置60および/または60aを用いることで微粒子状固体、例えばチャーなどを霧状にして供給することができる。その分散装置の種類は、固体用の中心管および前記中心管を取り巻いていてその霧状にするガスが入る環状空間部を有する種類のものであってもよく、それは共通の混合ゾーンに内的または外的に開放されている種類のものである。更に、また、非加熱反応槽上部40の供給装置80および/または80aも本明細書の上に記述した分散装置と同様であってもよい。分散装置60および/または60aまたは供給装置80および/または80aは当業者に通常公知の如き装置であってもよい。
【0031】
ガス化反応槽10の構成で用いる材料は決定的ではない。必要ではないが好適には、反応槽の壁を鋼製にし、そして熱損失の度合を低くしかつ槽を高温および腐食性溶融スラグから保護するばかりでなく温度制御をより良好にする目的で、反応槽下部30を絶縁性キャスタブルまたはセラミック繊維または耐火性ブリック、例えば高クロム含有量のブリックなどで内張りしそして反応槽上部40を高密度媒質、例えば高炉および非スラグ用途などで用いられる高密度媒質で内張りするが、それらは全部いくつかの給源から商業的に入手可能である。この種類の装置を用いると、本方法で用いる炭素質固体による発熱量を回収する率が高くなる。別法として、場合により、加熱反応槽下部30および場合により非加熱上部40を「冷壁」装置にすることで壁の内張りをしないことも可能である。本明細書で用いる如き用語「冷壁」は、従来技術の石炭ガス化装置に関する技術で通常知られているように、冷媒を用いた冷却用ジャケットを用いて壁を冷却することを意味する。そのような装置の場合、スラグがその冷えた内壁の所で凍結することで、冷却用ジャケットの金属壁が熱劣化から保護される。
【0032】
粘度が約250ポイズ以下の溶融灰から融解スラグを生じさせる目的で、チャーが灰の融点を超える温度で迅速にガス化するのが確保されるように反応槽下部30の中で起こさせる本方法の1番目の段階における反応の物理的条件を制御かつ維持する。そのスラグをタップホール20によって反応槽から排出させた後、本資料の範囲外の装置の中で更に処理する。
【0033】
迅速なガス化が起こりかつ石炭が可塑化範囲以上に加熱されることが確保されるように反応槽上部40の中で起こさせる本ガス化方法の2番目の段階における反応の物理的条件を制御する。反応槽下部30の温度を1500度Fから3500度Fの範囲、好適には2000度Fから3200度Fの範囲、最も好適には2200度Fから3000度Fの範囲内に維持する。ガス化装置10の反応槽上部40と下部30の両方の内側の圧力を大気圧以上に維持する。
【0034】
本明細書で用いる如き用語「酸素含有ガス」(これを反応槽下部30に送り込む)は酸素含有量が少なくとも20パーセントのガスのいずれかであると定義する。好適な酸素含有ガスには酸素、空気および酸素が豊富な空気が含まれる。
【0035】
本明細書に記述する態様では、微粒子状の炭素質材料のいずれも原料として使用可能である。しかしながら、好適には、そのような微粒子状の炭素質材料は石炭であり、それには、これらに限定するものでないが、褐炭、瀝青炭、亜瀝青炭およびこれらの任意組み合わせが含まれる。追加的炭素質材料は、石炭から生じたコークス、石炭チャー、石炭液化残留物、微粒子状炭素、石油コークス、油頁岩から生じた炭素質固体、タールサンド、ピッチ、バイオマス、下水スラッジ濃縮物、廃物の破片、ゴムおよびこれらの混合物である。この上に例示した材料の形態は細かく砕かれた固体の形態であってもよい。
【0036】
石炭または石油コークスが原料の場合、それを反応槽上部に添加する前に粉砕しておいてもよい。一般に、微粉状の如何なる炭素質材料も使用可能であり、微粒子状固体の粒径を小さくする公知方法のいずれも使用可能である。そのような方法の例には、ボール、ロッドおよびハンマーミルの使用が含まれる。粒径は決定的ではないが、微粉状の炭素粒子が好適である。石炭供給発電所で燃料として用いられる粉末状の石炭が典型的である。そのような石炭が示す粒径分布は、石炭の90%(重量)が200メッシュのふるいを通り抜けるような分布である。また、反応性がより高い材料の場合には平均粒径が100メッシュのより粗いサイズも使用可能であるが、但し沈降しない安定なスラリーを生じさせることができることを条件とする。
【0037】
本明細書で用いる如き用語「チャー」は、様々な製品を製造した後にガス化装置の中に飛沫同伴して残存する未燃焼の炭素および灰粒子を指す。
【0038】
本明細書で用いる如き用語「実質的に乾燥」は、大きな影響を与える水分が入っていないことを意味するが、必ずしも絶対的乾燥と同義語ではない。
【実施例】
【0039】
表1に、本明細書に記述する如き2段階乾燥供給方法および装置の性能を示す。本明細書に記述する如き方法のコンピューターシミュレーションをIllinois 6石炭を基にしてガス化装置の圧力を523psiaに設定して実施し、ガス化装置の2番目の段階から出るガスの温度が1890度Fになるように設定した。表1に示す如き工程パラメーターを用いると、この工程の計算冷ガス効率は84.6%であった。この計算した冷ガス効率は現在のスラリー供給E−Gas(商標)ガス化方法(ConocoPhillips Co.)が達成するそれよりも10%高いと同時に計算した酸素消費量もE−Ga
s(商標)方法に比べて15%低い。
【0040】
【表1】

【0041】
得ようとする保護の範囲をこの上に示した説明でも実施例でも限定することを意図するものでなく、以下の本請求項によってのみ限定し、それの範囲には当該請求項の主題事項の相当物の全部が含まれる。これによって、各々および全ての請求項は本発明の態様として本明細書に組み入れられる。従って、本請求項は本発明の好適な態様のさらなる説明でありかつそれに対する追加である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料をガス化させる方法であって、
(a)反応槽上部と反応槽下部を含んで成るガス化反応槽を準備し、
(b)固体状炭素質原料流れを前記反応槽上部の中に導入して、その中で反応槽下部から来た1番目の混合生成物と反応させることで2番目の混合生成物を生じさせるが、前記1番目の混合生成物は合成ガスを含有して成り、かつ前記2番目の混合生成物は2番目の固体状生成物および2番目の気体状生成物を含有して成り、
(c)前記2番目の混合生成物を1番目の分離装置に送ることで、前記2番目の固体状生成物を前記2番目の気体状生成物から分離し、
(d)その分離した2番目の固体状生成物を前記反応槽下部の中に送り、
(e)前記1番目の分離装置から出た前記2番目の気体状生成物流れを熱回収装置に通すことで、前記2番目の気体状生成物流れの温度を低下させかつ水蒸気を発生させ、
(f)段階(e)で発生させた前記水蒸気を前記反応槽下部の中に送り、
(g)パート(e)の前記熱回収装置から出た前記2番目の気体状生成物を微粒子濾過装置に送ることで、残存固体、微粉および微粒子を含有する前記流れを取り出して前記反応槽下部の中に送り、
(h)気体流れ、段階(c)の前記2番目の固体状生成物流れおよび段階(e)の前記熱回収装置の中で発生させた前記水蒸気を前記反応槽下部の中で一緒にしてそれらを反応させることで、熱を発生させかつ合成ガスを含有して成る1番目の混合生成物を生じさせるが、前記気体流れは酸素含有ガス、水蒸気およびこれらの混合物から成る群より選択した酸素供給材料を含有して成り、そして
(i)前記反応槽下部から来た段階(h)の前記1番目の混合生成物を前記反応槽上部の中に送り込んで、前記固体状原料流れを前記反応槽上部の中で2番目の混合生成物に変化させることで、段階(h)で発生させた前記熱を回収する、
段階を含んで成る方法。
【請求項2】
更に、
i)パート(b)の前記固体状原料を段階(c)の前記2番目の気体状生成物と混合することで、温固体−気体混合物を生じさせかつ前記原料を実質的に乾燥させ、
ii)前記温固体−気体混合物を2番目の分離装置に通すことで、前記固体状原料を前記2番目の気体状生成物から分離し、
iii)前記2番目の分離装置から出た前記固体状原料を前記反応槽上部の中に送りかつ前記2番目の分離装置から出た前記2番目の気体状生成物流れを微粒子濾過装置に送ることで、残存固体、微粉および微粒子を取り出し、そして
iv)前記微粒子濾過装置から出た前記残存固体、微粉および微粒子を前記反応槽上部の中に送る、
段階も含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記固体状原料および前記残存固体、微粉および微粒子を1個以上の供給装置で前記反応槽上部の中に送る請求項2記載の方法。
【請求項4】
パート(h)の前記気体流れ、1番目の分離装置から出た前記2番目の固体状生成物および前記熱回収装置の中で発生させた前記水蒸気を1個以上の分散装置で前記反応槽下部の中に送る請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
炭素質材料を含有して成る前記原料流れを石炭、褐炭、石油コークスおよびこれらの混合物から成る群より選択する請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記酸素含有ガスを空気、酸素が豊富な空気、酸素およびこれらの混合物から成る群よ
り選択しかつ前記熱回収装置を放射熱型ボイラー、水管ボイラー、煙管ボイラーおよびこれらの組み合わせから成る群より選択する請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記1番目の分離装置の中に入る前の前記2番目の混合生成物の温度を1200度Fから2500度Fの範囲にする請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記1番目の分離装置の中に入る前の前記2番目の混合生成物の温度を1500度Fから2000度Fの範囲にする請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記温固体−気体混合物を300度Fから1000度Fの範囲内の温度に維持する請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記温固体−気体混合物を500度Fから800度Fの範囲内の温度に維持する請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記1番目および2番目の分離装置の各々がサイクロンを含有して成る請求項2記載の方法。
【請求項12】
炭素質材料をガス化させるための装置であって、
(a) i)固体状炭素質原料、
ii)再循環して来た残存固体、微粉および微粒子、および
iii)反応槽下部から来た合成ガスを含有する1番目の混合生成物、
を反応させて2番目の固体状生成物流れおよび2番目の気体状生成物流れを含有して成る2番目の混合生成物を生じさせるための反応槽上部、
(b)前記2番目の固体状生成物流れを前記2番目の気体状生成物流れから分離した後にその分離した2番目の固体状生成物を前記反応槽下部の中に導入するための1番目の分離装置、
(c)前記2番目の気体状生成物流れの温度を低くしかつ水蒸気を発生させて前記水蒸気を前記反応槽下部の中に送り込むための熱回収装置、
(d)前記熱回収装置から出た前記2番目の気体状生成物流れから前記残存固体、微粉および微粒子を分離してその分離した残存固体、微粉および微粒子を前記反応槽上部の中に送るための微粒子濾過装置、
(e) i)前記1番目の分離装置から出た前記2番目の固体状生成物、
ii)前記熱回収装置の中で発生した前記水蒸気、
iii)酸素含有ガス、水蒸気およびこれらの混合物から成る群より選択した酸素供給材料を含有して成る気体流れ、
を含有して成る混合物を反応させて熱を発生させかつその発生させた熱の回収を前記固体状原料流れを前記反応槽上部の中で前記2番目の混合生成物に変化させることで起こさせかつパート(a)の前記1番目の混合生成物を生じさせるための反応槽下部、
を含有して成る装置。
【請求項13】
更に、
i)前記固体状原料流れをパート(c)の前記2番目の気体状生成物流れと混合して温固体−気体混合物を生じさせるための固体−気体混合装置、および
ii)前記温固体−気体混合物を分離して温固体状原料流れと前記2番目の気体状生成物流れを生じさせて前記温固体状原料流れを前記反応槽上部の中に送るための2番目の分離装置、
も含有して成る請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記1番目の分離装置から出た前記2番目の固体状生成物流れ、前記熱回収装置から出
た前記水蒸気およびパート(e)の前記気体流れを1個以上の分散装置で前記反応槽下部の中に送る請求項12または13記載の装置。
【請求項15】
前記炭素質原料が石炭、褐炭、石油コークスおよびこれらの混合物から成る群より選択される請求項12または13記載の装置。
【請求項16】
前記酸素含有ガスが空気、酸素が豊富な空気、酸素およびこれらの混合物から成る群より選択されかつ前記熱回収装置が放射熱型ボイラー、水管ボイラー、煙管ボイラーおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される請求項12または13記載の装置。
【請求項17】
前記1番目の分離装置の中に入る前の前記2番目の混合生成物の温度を1200度Fから2500度Fの範囲にする請求項12または13記載の装置。
【請求項18】
前記1番目の分離装置の中に入る前の前記2番目の混合生成物の温度を1500度Fから2000度Fの範囲にする請求項12または13記載の装置。
【請求項19】
前記温固体−気体混合物を300度Fから1000度Fの範囲の温度に維持する請求項13記載の装置。
【請求項20】
前記温固体−気体混合物を500度Fから800度Fの範囲の温度に維持する請求項13記載の装置。
【請求項21】
前記1番目および2番目の分離装置の各々がサイクロンを含有して成る請求項13記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522870(P2012−522870A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503617(P2012−503617)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029217
【国際公開番号】WO2010/120495
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(502259425)コノコフイリツプス・カンパニー (11)
【氏名又は名称原語表記】ConocoPhillips Company