説明

2液注射装置

【課題】 皮膚内に2種類の薬液を容易に順次注射することができ、安価、且つ、容易に製造することができる2液注射装置を提供すること。
【解決手段】 液体流出口を備えたケースと、ケース内に設置され流体排出口を備えるとともに該流体排出口と内部空間を連通する流体排出路を備えたシリンダ部と、シリンダ部内に摺動可能に設置された第1ピストンと、シリンダ部内において第1ピストンの反流体排出口側に摺動可能に設置された第2ピストンと、第2ピストンを上記流体排出口側に向けて常時付勢する弾性部材と、シリンダ部内であって第1ピストンの流体排出口側の空間内に充填された第1液体と、シリンダ部内であって第1ピストンと第2ピストンの間の空間に充填された第2液体と、を具備するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マイクロニードルを介して皮膚内に2種類の薬液を順次注射することができる2液注射装置に係り、特に、単純な構成により容易に注射が可能であり、容易、且つ、安価に製造できるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2種類の薬液を順次注射することのできる注射器として、特許文献1に記載されたようなものが存在していた。これは、注射針が設けられたシリンダ内に中間摺動弁とプランジャ摺動弁が摺動可能に挿入された構成になっている。注射針から中間摺動弁の間に第1の薬液が充填されており、中間摺動弁からプランジャ摺動弁の間に第2の薬液が充填されている。また、シリンダ内にはプランジャ操作部がその一端側を外部に突き出した状態で挿入されている。
【0003】
プランジャ操作部を、例えば、手で操作して注射針側に押し込むことにより、プランジャ摺動弁を注射針の側に付勢させ、第2の薬液を介して中間摺動弁が移動させられると、まず、第1の薬液が中間摺動弁によって注射針から外部に放出される。そして、第1の薬液が全て放出されて中間摺動弁がシリンダ内部の注射針側の端に当接すると、プランジャ摺動弁の移動によって第2の薬液が注射針から外部へと放出される。このとき、第2の薬液は中間摺動弁の外周面とシリンダ外壁に設けられた凹部による空間と上記中間摺動弁に設けられた溝を通過して、注射針から外部へと放出される。
この注射器は、上記のようにして2種類の薬液を順次外部へ放出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−129695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成によると、次のような問題があった。
まず、前述したような作用を実現するために、中間摺動弁やシリンダ等に溝や凹凸を設けている。そのため、摺動弁やシリンダの形状が複雑であり、製造に多くの労力を要することになってしまう。よって、このような構成のものは使い捨て注射器には不向きである。
また、この注射器はピストンを手で押し込むことにより注射するものであり、よって、患者が自ら注射を行う場合は扱い難いものである。
【0006】
本願発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、単純な構成により皮膚内に2種類の薬液を容易に順次注射することができ、容易、且つ、安価に製造することができる2液注射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく請求項1に記載された2液注射装置は、液体流出口を備えたケースと、上記ケース内に設置され流体排出口を備えるとともに該流体排出口と内部空間を連通する流体排出路を備えたシリンダ部と、上記シリンダ部内に摺動可能に設置された第1ピストンと、上記シリンダ部内において上記第1ピストンの反流体排出口側に摺動可能に設置された第2ピストンと、上記第2ピストンを上記流体排出口側に向けて常時付勢する弾性部材と、上記シリンダ部内であって上記第1ピストンの上記流体排出口側の空間内に充填された第1液体と、上記シリンダ部内であって上記第1ピストンと上記第2ピストンの間の空間に充填された第2液体と、を具備し、上記弾性部材の付勢力により上記第1ピストンと上記第2ピストンと上記第2液体が上記流体排出口側に移動することにより上記第1液体が上記流体排出口及び上記流体流出口を介して上記ケース外部へと押し出され、上記第1ピストンが上記シリンダ部に当接した後上記第2ピストンのみが移動にすることよって上記第2液体が上記流体排出路及び上記流体排出口及び上記流体流出口を介して上記ケース外部へと押し出されることを特徴とするものである。
又、請求項2に記載された2液注射装置は、請求項1記載の2液注射装置において、上記シリンダ部はシリンダと該シリンダの先端に被冠されたキャップとから構成されており、上記シリンダには流体排出溝が形成されていて、該流体排出溝と上記キャップの内壁とにより上記流体排出路を構成するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3に記載された2液注射装置は、請求項1又は請求項2記載の2液注射装置において、上記ケースにはガイド孔が形成されており、上記第2ピストンの後端側には上記ガイド孔を貫通して突出・形成されたレバーが設けられており、非使用時には上記レバーの移動及び回動が上記ガイド孔により規制されることによって上記弾性部材による付勢が規制されており、使用時には上記レバーを移動及び回動させて上記ガイド孔による規制を解除することによって上記弾性部材による付勢を許容するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項4に記載された2液注射装置は、請求項3記載の2液注射装置において、上記ガイド孔は上記レバーを保管状態と準備状態と注射状態の3つの状態に保持可能に構成されており、上記レバーを上記保管状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を完全に規制し、上記レバーを上記準備状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を所定量許容してエア抜きを行い、上記レバーを注射状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を許容して2液の注射を可能にするものであることを特徴とするものである。
又、請求項5に記載された2液注射装置は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の2液注射装置において、上記ケースにはマイクロニードルが突出・配置されており上記流体流出口はこのマイクロニードルの先端側に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、請求項1記載の2液注射装置によると、流体排出口を備えるとともに該流体排出口と内部空間を連通する流体排出路を備えたシリンダ部と、上記シリンダ部内に摺動可能に設置された第1ピストンと、上記シリンダ部内において上記第1ピストンの反流体排出口側に摺動可能に設置された第2ピストンと、上記第2ピストンを上記流体排出口側に向けて常時付勢する弾性部材と、上記シリンダ部内であって上記第1ピストンの上記流体排出口側の空間内に充填された第1液体と、上記シリンダ部内であって上記第1ピストンと上記第2ピストンの間の空間に充填された第2液体と、を具備し、上記弾性部材の付勢力により上記第1ピストンと上記第2ピストンと上記第2液体が上記流体排出口側に移動することにより上記第1液体が上記流体排出口及び上記流体流出口を介して上記ケース外部へと押し出され、上記第1ピストンが上記シリンダ部に当接した後上記第2ピストンのみが移動にすることよって上記第2液体が上記流体排出路及び上記流体排出口及び上記流体流出口を介して上記ケース外部へと押し出されるため、第1液体と第2液体を順次注射することができる。
また、請求項1記載の2液注射装置は、流体排出口及び流体排出路を備えたシリンダ部と、上記シリンダ部内に摺動可能に設置された第1ピストンと、上記シリンダ内において上記第1ピストンの反流体排出口側に摺動可能に設置された第2ピストンと、上記第2ピストンを上記シリンダの先端側に向かって常時付勢する弾性部材とからなる構成によって第1液体と第2液体を順次上記シリンダ内から押し出すものであるため、単純な形状からなる部材によって構成されており、その製造が容易且つ安価に行うことができるものである。
又、請求項1記載の2液注射装置は、弾性部材を動力としているため、電源や電気的制御手段等が不要で安価に構成することができ、故障などの不具合も少ないものである。
又、弾性部材で上記第1ピストン及び第2ピストンを動かすため、患者が一人で注射する場合でも扱い易いものである。
又、請求項2記載の2液注射装置によると、上記シリンダ部はシリンダと該シリンダの先端に被冠されたキャップとから構成されており、上記シリンダには流体排出溝が形成されていて、該流体排出溝と上記キャップの内壁とにより上記流体排出路を構成するようになっているため、シリンダには開放された流体排出溝を形成すれば済むので、上記2液注射装置の製造をより容易に行うことができる。
又、請求項3記載の2液注射装置によると、ケースにガイド孔が形成されており、上記第2ピストンの後端側には上記ガイド孔を貫通して突出・形成されたレバーが設けられており、上記レバーの移動及び回動が上記ガイド孔によって規制されることで上記第2ピストンの移動及び回動が規制されるため、上記レバーと上記ガイド孔の相互作用により上記弾性部材の付勢による上記第2ピストンの移動の規制とその解除を行うことができ、上記第1液体及び第2液体のケース外部への放出を制御することができる。また、上記レバーの移動及び回動が上記ガイド孔によって規制されるため、上記レバーによって上記第2ピストンの操作を容易、且つ、確実に行うことができる。
又、請求項4記載の2液注射装置によると、上記ガイド孔は上記レバーを保管状態と準備状態と注射状態の3つの状態に保持可能に構成されており、上記レバーを上記保管状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を完全に規制し、上記レバーを上記準備状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を所定量許容してエア抜きを行い、上記レバーを注射状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を許容して2液の注射を可能にするものであるため、上記2液注射装置の操作を容易、且つ、確実に行うことができる。
又、請求項5記載の2液注射装置によると、上記ケースには流体流出口が設けられたマイクロニードルが突出・配置されているため、このマイクロニードルを皮膚に突き刺すことにより、容易に上記第1液体と第2液体を皮膚内に順次注射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による2液注射装置を示す斜視図である。
【図2】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による2液注射装置を示す底面図である。
【図3】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による2液注射装置を部分的に破断して示す平面図である。
【図4】本願発明の一実施の形態を示す図で、図3のIV−IV断面図であって、一部の図示を省略した図である。
【図5】本願発明の一実施の形態を示す図で、本実施の形態による2液注射装置のポンプを示す分解斜視図である。
【図6】本願発明の一実施の形態を示す図で、図6(a)は本実施の形態による2液注射装置を保管状態とした場合の操作レバー付近の拡大図であり、図6(b)は本実施の形態による2液注射装置を注射準備状態とした場合の操作レバー付近の拡大図であり、図6(c)は本実施の形態による2液注射装置を注射状態とした場合の操作レバー付近の拡大図である。
【図7】本願発明の一実施の形態を示す図で、図7(a)は図6(a)におけるa−a断面図であり、図7(b)は図6(b)におけるb−b断面図であり、図7(c)は図6(c)におけるc−c断面図である。
【図8】本願発明の一実施の形態を示す図で、図8(a)は本実施の形態による2液注射装置を保管状態とした場合の断面図であり、図8(b)は本実施の形態による2液注射装置を注射準備状態とした場合の断面図であり、図8(c)は本実施の形態による2液注射装置を注射状態とし第1ピストンの前進が終了し第1薬液を全て放出した状態を示す断面図であり、図8(d)は本実施の形態による2液注射装置を注射状態とし第2ピストンの前進が終了し第2薬液を全て放出した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1乃至図8を参照して、本願発明の一実施の形態を説明する。
【0011】
本実施の形態による2液注射装置1は、まず、図1に示すように、ケース3を備えている。上記ケース3は、蓋3aとケース本体3bとからなる。上記蓋3aには複数個の貫通孔5が穿孔されている。本実施の形態では上記貫通孔5の数は6個となっている。また、それぞれの上記貫通孔5の周囲には図1中上側に開口した凹部7が形成されている。
【0012】
上記ケース本体3bは、平板状の底壁8aと、この底壁8aの各辺から垂直に立設された側壁8b、8c、8d、8eとから構成されている。また、上記ケース本体3bの底壁8aには、図2に示すように、ガイド孔としての操作レバー用ガイド孔9が形成されている。上記操作レバー用ガイド孔9は上記底壁8aを貫通して形成され、図2中左右方向に形成された操作レバー前進ガイド9aと図2中上下方向に形成された操作レバー回動ガイド9bと、この操作レバー回動ガイド9bの図2中左側に形成された注射準備操作用凹部9cとからなっている。また、上記注射準備操作用凹部9cと上記操作レバー前進ガイド9aの間には凸部9dが形成されている。
【0013】
また、上記ケース本体3bには、図3に示すように、中空部11が形成されている。上記中空部11は上記底壁8aと上記側壁8b、8c、8d、及び、8eにより囲まれた空間で、上記蓋3a側に開口されており、その内部にはポンプ収納部13が設けられている。上記ポンプ収納部13は、上記底壁8aから垂直に立設されたポンプ収納部側壁13a、13aと上記側壁8cによって囲まれた空間である。
また、上記中空部11内には内部ブロック収納部15、15が設けられている。上記内部ブロック収納部15は、上記底壁8aから垂直に立設された内部ブロック収納部側壁15a、15aと上記側壁8bによって囲まれた空間である。
【0014】
上記ケース3には6つのマイクロニードルユニット17が設置されている。上記マイクロニードルユニット17は、略円柱形状のマイクロニードルユニット本体17aと、このマイクロニードルユニット本体17aの一方の端面から突出・形成された基部17bと、この基部17bの反マイクロニードルユニット本体17a側の端面から突出・形成されたマイクロニードル17cとからなる。上記マイクロニードル17cの先端付近には流体流出口17dが形成されている。
【0015】
上記マイクロニードルユニット17c内には流路17eが形成されている。上記流路17eは上記マイクロニードル17cの流体流出口17dと連通され、上記マイクロニードルユニット本体17aの反マイクロニードル17c側の面に開口されている。また、上記マイクロニードルユニット17は上記マイクロニードルユニット17を均等に分割した分割要素18aと分割要素18bを貼り合わせたものであり(半割り形状)、上記マイクロニードル17cの先端付近を非接着とすることにより生じる隙間が上記流体流出口17dとなっている。
【0016】
上記マイクロニードルユニット17は、上記基部17bを上記蓋3aの貫通孔5に挿入された状態で上記ケース3に取り付けられている。また、上記マイクロニードルユニット本体17aは上記ケース3の中空部11内に設置されており、上記マイクロニードル17cは上記蓋3aの凹部7から上記ケース3の外側に向けて突出されている。
【0017】
又、上記ケース3の2つの内部ブロック収納部15それぞれには内部ブロック19が一つずつ設置されている。上記内部ブロック19は略直方体形状をなしており、マイクロニードルユニット収納部19aが形成されている。上マイクロニードルユニット収納部19aは上記蓋3a側に開口された略円柱形状の凹部であり、上記マイクロニードルユニット本体17aの反マイクロニードル17c側の端部が挿入・固定されている。2つの上記内部ブロック19の向かい合った側面の中央付近には、接続用凹部19bが形成されている。
【0018】
又、上記内部ブロック19内には流路19cが形成されている。上記流路19cは上記マイクロニードルユニット収納部19a内及び上記接続用凹部19b内に開口されている。また、上記流路19cは上記マイクロニードルユニット1の流路17eと連通されている。
【0019】
又、上記ケース3の中空部11内には接続部材21が設置されており、この接続部材21の両端は上記内部ブロック19、19の接続用凹部19b、19b内に挿入されている。上記接続部材21は略四角柱形状をなしており、その中心軸の位置を通る貫通孔である流路21aが形成されている。上記流路21aは、上記内部ブロック19、19の流路19c、19cと連通されている。また、上記接続部材29の長さ方向の中央付近には上記流路21aと連通した接続用孔21bが形成されている。
【0020】
上記ポンプ収納部13内にはポンプ23が設置されており、このポンプ23は上記接続部材29の接続用孔21に接続されている。上記ポンプ23は、図4及び図5に示すように、まず、シリンダ25を備えている。上記シリンダ25は中空の略円筒形形状をなしており、その一端が開口されている。又、上記シリンダ25の外周面の先端側(図4中左側)には流体排出溝25aが形成されている。又、上記流体排出溝25aの先端(図4中上端)には貫通孔25bが穿孔されており、上記流体排出溝25aの後端(図4中右端)には貫通孔25cが穿孔されている。
【0021】
又、上記シリンダ25の先端側(図4中左側)にはキャップ27が被冠されている。上記キャップ27は中空の略円筒形形状をなしており、その一端が開口されている。又、上記キャップ27の内径は上記シリンダ25の外径と略同一である。又、上記キャップ27の他端には略円柱形状の接続用凸部27aが形成されており、この接続用凸部27aの中心軸に沿って流体排出口27bが形成されている。図3に示すように、上記接続用凸部27aが上記接続部材21の接続用孔21b内に挿入されることによって、上記ポンプ23と上記接続部材21が接続されている。又、上記流体排出口27bと上記接続部材21の流路21aが連通されている。
【0022】
又、上記キャップ27を上記シリンダ25の先端側(図4中左側)に被冠させると、上記流体排出溝25aの開口部は上記キャップ27によって覆われ、上記キャップ27の内周面と上記流体排出溝25aによって流体排出路28が構成される。上記流体排出口27bと上記流体排出路28とは連通されており、上記流体排出路28と上記シリンダ25内部は上記流体排出溝25aの貫通孔25b、25cによって連絡されている。
又、上記貫通孔25bは上記流体排出口27bの後端側(図4中右側)近傍に位置している。
【0023】
又、前述のように、上記マイクロニードルユニット17の流路17eと上記内部ブロック19の流路19cと上記接続部材21の流路21aと上記キャップ27の流体排出口27bが連通されているため、上記シリンダ25の内部は上記流体排出路28及び上記キャップ27の流体排出口27bを介してこれらの流路21a、19c、17eと連通されていることになる。
【0024】
また、上記シリンダ25と上記キャップ27によってシリンダ部24が構成されている。
【0025】
上記シリンダ25の内部には、図4に示すように、第1ピストン29が前後(図4中左右方向)に摺動可能に設置されている。上記第1ピストン29は、図5に示すように、背の低い略円柱形状の頭部29aと、この頭部29aよりも径の小さい略円柱形状の軸部29bとから構成されている。上記第1ピストン29は、上記頭部29aの外周面を上記シリンダ25の内周面に当接させ、上記軸部29bを上記シリンダ25の後端側(図4中右側)に向けた状態で、上記シリンダ25内に設置されている。
【0026】
上記シリンダ25内部の先端(図4中左端)から上記第1ピストン29の頭部29aまでの空間内には第1液体としての第1薬液31が充填されている。上記第1薬液31は上記2液注射装置1によって最初に注射される薬液であり、痛み止め、殺菌剤、凝固防止剤などが考えられる。
【0027】
上記シリンダ25の内部には、図4に示すように、第2ピストン33が前後(図4中左右方向)に摺動可能に設置されている。上記第2ピストン33は略円柱形状をなしており、その先端側(図4中左側)に開口される第1ピストン用ガイド33aが形成されている。上記第1ピストン用ガイド33aは、上記第1ピストン29の軸部29bと略同一の内径となる略円柱形状の穴である。上記第1ピストン用ガイド33a内には上記第1ピストン29の軸部29bが摺動可能に挿入されている。
【0028】
又、上記第2ピストン33には、その後端側(図4中右側)に開口し上記第1ピストン用ガイド33aと連通される空気抜き穴33bが形成されている。上記第1ピストン29の軸部29bが上記第1ピストン用ガイド33a内において図4中右側へ移動する際に、上記空気抜き穴33bによって上記第1ピストン用ガイド33a内の空気が上記ポンプ23外へ排出される。一方、上記第1ピストン29の軸部29bが上記第1ピストン用ガイド33a内において図4中左側へ移動する際には、上記空気抜き穴33bによって上記ポンプ23外部から上記第1ピストン用ガイド33a内へ空気が流入される。それによって、上記第1ピストン用ガイド33a内の気圧を一定に保ち、上記第1ピストン29の移動が円滑に行われるようにすることができる。
【0029】
又、上記第2ピストン33の後端側(図4中右側)には、その外周方向に向けて操作レバー33cが突出・形成されている。上記操作レバー33cは上記ケース本体3bの操作レバー用ガイド孔9を貫通し、上記ケース3外部に突出されている。又、上記操作レバー33cを、例えば、手などによって把持して操作することにより、上記第2ピストン33を上記第1ピストン29の軸部29bを回転中心として回動させることができるとともに、上記シリンダ25内における前進(図4中左側への移動)や後退(図4中左側への移動)を行わせることができる。上記第2ピストン33の回動や移動は、上記操作レバー33cが上記操作レバー用ガイド孔9の内周面に当接することによって一定の範囲に規制されている。
【0030】
又、図4に示すように、上記第2ピストン33の後端面(図4中右側端面)には、環状のばね係合溝33dが形成されている。
【0031】
上記シリンダ25内部の上記第1ピストン29の頭部29aから上記第2ピストン33までの間の空間には、第2液体としての第2薬液35が充填されている。上記第2薬液35は上記第1薬液31が全て注射された後に注射されるものであり、治療薬など様々な種類のものが考えられる。
【0032】
上記第2ピストン33の後方(図4中右側)には弾性部材としてのばね37が圧縮された状態で設置されている。上記ばね37は上記第2ピストン33を前進させる方向(図4中左方向)へと常時付勢している。しかし、前述したように、上記第2ピストン33の移動は上記操作レバー33cと上記操作レバー用ガイド孔9の内周面が当接することによって一定の範囲に規制されている。
なお、上記2液注射装置1を組み立てた直後の未使用の状態では、図2に示すように、上記操作レバー33cは上記操作レバー回動ガイド9bの反操作レバー前進ガイド9a側(図2中下側)の端に位置した状態となっている。そのため、上記第2ピストン33が上記ばね37の弾性力により図2中左側に移動しようとしても、上記操作レバー33cが上記操作レバー回動ガイド9bの図2中左側の内面に当接し、上記第2ピストン33の図中左側への移動が規制されている。
【0033】
次に、図2、及び、図6乃至図8を参照して、本実施の形態による2液注射装置1の作用について説明する。
【0034】
まず、上記2液注射装置1は、組み立て直後の状態においては、図2、図6(a)及び、図7(a)に示すように、操作レバー33cの先端側がケース3の操作レバー用ガイド孔9の操作レバー回動ガイド9bの下端(図2中下端)に当接した状態となっている。このとき、ポンプ23の第2ピストン33がばね37によって前進する方向(図6(a)中左側)に付勢されているが、上記操作レバー33cが上記操作レバー回動ガイド9bの図6(a)中左側の内面に当接しているため、上記第2ピストン33の前進(図6(a)中左側への移動)が規制されている。この状態が上記2液注射装置1の保管状態であり、上記ポンプ23内の第1ピストン29及び第2ピストン33の位置は図8(a)に示すようになっている。
【0035】
次に、上記2液注射装置1による注射を行う前の準備操作について説明する。ます、上記操作レバー33cを図6(a)中上側に回動操作する。すると、上記第2ピストン33は上記ばね37によって図6(a)中左側に付勢されているため、図6(b)に示すように上記操作レバー33cは上記操作レバー用ガイド孔9の注射準備操作用凹部9cに係合し、上記第2ピストン33の回動と前進(図6(b)中左側への移動)が制限された状態になる。このとき、図8(b)に示すように、上記2液注射装置1の保管状態に比べ、上記第2ピストン33及び第1ピストン29が少し前進(図6(b)中左側へ移動)した状態となる。
【0036】
上記操作レバー33cが上記注射準備操作用凹部9cに係合する際、上記第2ピストン33は上記ばね37の弾性力により少し前進(図6(b)中左側へ移動)される。その際、第2薬液35を介して上記第1ピストン29が付勢されて少し前進(図6(b)中左側へ移動)する。そして、上記第1ピストン29の移動により、少量の第1薬液31が貫通孔25bを通過してシリンダ25内から押し出され、キャップ27の流体排出口27bから上記ポンプ23の外部へと放出される。そして、上記少量の第1薬液31は、接続部材21の流路21a、内部ブロック19の流路19c、及び、マイクロニードルユニット17の流路17eを満たす。これにより、上記ポンプ23内、及び、上記ポンプ23から流体流出口17dに至るまでの流路内の空気が押し出されてエア抜きが行われ、上記2液注射装置1による注射の準備が完了する。この状態が、上記2液注射装置1の注射準備状態である。
なお、このとき、上記操作レバー33cは、不用意に操作レバー前進ガイド9a側に回動されないように、凸部9dによって図6(b)中上側への回動を規制されている。
【0037】
次に、上記2液注射装置1によって、注射を行う操作について説明する。
まず、上記マイクロニードル17c、17c、17c、17c、17c、17cを皮膚に突き刺した状態で、注射準備状態となった上記2液注射装置1を皮膚上に取り付ける。その際、例えば、ケース3の上記マイクロニードル17cが突出している側の面に設けられた図示しない接着剤などによって、上記2液注射装置1が皮膚上に固定される。
【0038】
上記操作レバー33cを、さらに図6(b)中上側に回動操作し、凸部9dを乗り越えさせ、図6(c)に示すように上記操作レバー前進ガイド9aに当接させる。すると、上記第2ピストン33の前進(図8(b)中左側への移動)の規制が解除され、上記第2ピストン33は上記ばね37によって付勢され前進(図8(b)中左側へ移動)する。そして、第2ピストン33の前進により、上記第2薬液35を介して上記第1ピストン29が図6(c)中左側へ付勢される。そのため、上記第1ピストン29も上記シリンダ25内を前進し、上記シリンダ25内の上記第1薬液31が上記貫通孔25bを通過して上記流体排出口27bから押し出され、上記接続部材21の流路21a、上記内部ブロック19の流路19c、及び、上記マイクロニードルユニット17の流路17eを経て、上記マイクロニードル17cの流体流出口17dから皮膚内へ放出される。
【0039】
なお、上記貫通孔25bや上記貫通孔25cが上記第1ピストン29の頭部29aの先端側(図8(b)中左側)にあること、又は、上記第1ピストン29の頭部29aによって上記貫通孔25cが塞がれることによって、上記第1ピストン29の頭部29aと上記第2ピストン33との間の第2薬液35が充填された空間と上記流体排出路28は上記第1ピストン29が上記シリンダ25内部の先端(図8(b)中左端)に当接するまで連通しないようになっている。そのため、上記第1ピストン29が上記シリンダ25内部の先端(図8(b)中左端)に当接するまでは、第1薬液31のみが上記ポンプ23によって押し出されることになる。
【0040】
そして、上記第1ピストン29が上記シリンダ25内部の先端(図8(b)中左端)に当接すると、上記シリンダ25内の全ての上記第1薬液31が押し出されたことになる。このとき、上記第1ピストン29及び上記第2ピストン33は、図8(c)に示すような状態となっている。上記第1ピストン29の前進(図8(c)中左方向への移動)は上記シリンダ25の先端側(図8(c)中左側)の内壁によって規制されるため、これ以降は上記第2ピストン33のみが前進することになる。また、上記第1ピストン29の頭部29aの後ろ側(図8(c)中右側)には上記流体排出溝25aの貫通孔25cが開口されており、ここから上記流体排出路28へと第2薬液35が押し出されることになる。
【0041】
上記第2ピストン33が上記ばね37によって付勢されて前進することで、上記第2薬液35が上記流体排出溝25aの貫通孔25cから上記流体排出路28へと押し出されていき、上記流体排出口27b、上記接続部材21の流路21a、上記内部ブロック19の流路19c及び上記マイクロニードルユニット17の流路17eを通過して、上記マイクロニードル17cの流体流出口17dから皮膚内へと放出される。
上記第2ピストン33の先端(図8(c)中左端)が上記第1ピストン29の頭部29aの後端(図8(c)中右端)に当接すると、上記シリンダ25内の全ての上記第2薬液35が押し出され、上記第1薬液31と上記第2薬液35の注射が完了する。このときの上記第1ピストン29と第2ピストン33は図8(d)に示すような位置関係となっている。
このようにして、上記2液注射装置1によって、上記第1薬液31と第2薬液35が順次注射される。
【0042】
以上本実施の形態による2液注射装置1によると以下のような効果を奏することができる。
まず、上記2液注射装置1は、単純な形状の部品により構成されているものであるため、安価に製造することができ、使い捨ての注射装置に適している。
また、ばね37を用いて第1ピストン29及び第2ピストン33を前進させているため、患者自身が上記2液注射装置1を用いて注射を行う場合でも、簡単に安全、且つ、正確な注射が可能となる。
又、上記ばね37を動力として用いるため、電源や電気的制御手段などの複雑な構成が不要で安価に構成することができ、このことによっても上記2液注射装置1を使い捨て用途に適したものとすることができる。
また、故障などの不具合も少ないものである。
また、操作レバー33をガイドする操作レバー用ガイド孔9が設けられているため、操作を容易、且つ、正確に行うことができる。
また、上記操作レバー用ガイド孔9には、操作レバー回動ガイド9bが設けられているため、この操作レバー回動ガイド9b内に上記操作レバー33を保持することで、不用意に上記第2ピストン33が前進し注射状態となってしまうことを防止することができる。
また、上記操作レバー用ガイド孔9には、注射準備操作用凹部9cが設けられているため、確実にエア抜きを行い、上記2液注射装置1を注射準備状態とすることができる。
また、上記操作レバー用ガイド孔9には、凸部9dが設けられているため、上記2液注射装置1が不用意に注射準備状態から注射状態となるのを防ぐことができる。
また、上記2液注射装置1にはマイクロニードル17cが設けられているため、容易に第1薬液31と第2薬液35を皮膚内に順次注射することができる。
【0043】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
例えば、マイクロニードルの数や配列は様々な場合が考えられる。
前記一実施の形態の場合には複数のマイクロニードルが設けられたが、マイクロニードルが一つである場合も考えられる。
又、マイクロニードルの数や配列に対応して、ケースに設けられた貫通孔と凹部の数や配列についても様々な場合が考えられる。
又、マイクロニードルの形状、突出角度も様々な場合が考えられる。
又、シリンダ部をキャップとシリンダの2つの部材からなる構成とせず、一体の部材によって構成することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば、マイクロニードルを介して皮膚内に2種類の薬液を容易に順次注射することができる2液注射装置に係り、特に、単純な構成により容易且つ安価に製造できるように工夫したものに係り、例えば、まず痛み止めを注射し、その後、治療薬を注射する2液注射装置に好適である。
【符号の説明】
【0045】
1 2液注射装置
3 ケース
9 操作レバー用ガイド孔
17c マイクロニードル
17d 流体流出口
25 シリンダ
25a 流体排出溝
27 キャップ
27b 流体排出口
28 流体排出路
29 第1ピストン
31 第1薬液(第1液体)
33 第2ピストン
33c 操作レバー
35 第2薬液(第2液体)
37 ばね(弾性部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流出口を備えたケースと、
上記ケース内に設置され流体排出口を備えるとともに該流体排出口と内部空間を連通する流体排出路を備えたシリンダ部と、
上記シリンダ部内に摺動可能に設置された第1ピストンと、
上記シリンダ部内において上記第1ピストンの反流体排出口側に摺動可能に設置された第2ピストンと、
上記第2ピストンを上記流体排出口側に向けて常時付勢する弾性部材と、
上記シリンダ部内であって上記第1ピストンの上記流体排出口側の空間内に充填された第1液体と、
上記シリンダ部内であって上記第1ピストンと上記第2ピストンの間の空間に充填された第2液体と、
を具備し、
上記弾性部材の付勢力により上記第1ピストンと上記第2ピストンと上記第2液体が上記流体排出口側に移動することにより上記第1液体が上記流体排出口及び上記流体流出口を介して上記ケース外部へと押し出され、上記第1ピストンが上記シリンダ部に当接した後上記第2ピストンのみが移動にすることよって上記第2液体が上記流体排出路及び上記流体排出口及び上記流体流出口を介して上記ケース外部へと押し出されることを特徴とする2液注射装置。
【請求項2】
請求項1記載の2液注射装置において、
上記シリンダ部はシリンダと該シリンダの先端に被冠されたキャップとから構成されており、上記シリンダには流体排出溝が形成されていて、該流体排出溝と上記キャップの内壁とにより上記流体排出路を構成するようにしたことを特徴とする2液注射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の2液注射装置において、
上記ケースにはガイド孔が形成されており、
上記第2ピストンの後端側には上記ガイド孔を貫通して突出・形成されたレバーが設けられており、
非使用時には上記レバーの移動及び回動が上記ガイド孔により規制されることによって上記弾性部材による付勢が規制されており、
使用時には上記レバーを移動及び回動させて上記ガイド孔による規制を解除することによって上記弾性部材による付勢を許容するようにしたことを特徴とする2液注射装置。
【請求項4】
請求項3記載の2液注射装置において、
上記ガイド孔は上記レバーを保管状態と準備状態と注射状態の3つの状態に保持可能に構成されており、
上記レバーを上記保管状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を完全に規制し、
上記レバーを上記準備状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を所定量許容してエア抜きを行い、
上記レバーを注射状態で保持する場合は上記弾性部材による付勢を許容して2液の注射を可能にするものであることを特徴とする2液注射装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の2液注射装置において、
上記ケースにはマイクロニードルが突出・配置されており上記流体流出口はこのマイクロニードルの先端側に設けられていることを特徴とする2液注射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−125315(P2012−125315A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277636(P2010−277636)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】