説明

2液混合型シーリング材

【課題】シーリング材において、内部に空間があっても膨れが発生し難く、高温においても膨れを抑制できる粘度を有することによって、容易に良好な外観を得られること。
【解決手段】2液混合型シーリング材においては、30℃における放置時間が10分に達した時点で粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)以上に達しており、30分後には10万Pa・s(100万ポアズ)近くに達している。その後、昇温時に一旦10万Pa・s(100万ポアズ)に到達した後、140℃で加熱されることによってやや粘度が低下しているが、引き続き140℃に加熱されても5万Pa・s(50万ポアズ)〜7万Pa・s(70万ポアズ)の高い粘度を保持しているため、膨れ性試験においても、140℃の乾燥機に投入されて、試験体の凹み内の空気が熱膨張しようとしても、大きな粘度(強度)によって熱膨張を抑えて膨れが生じなかったものと考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空間があっても加熱硬化時の空気熱膨張による膨れ等の不良が発生し難い、自動車のドア等の蓋物パネル等に用いられる2液混合型シーリング材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の蓋物パネル等の接合部には、水密・気密等を目的に、加熱硬化タイプのシーリング材が施工されており、コスト面や取扱いの容易性の面等から塩化ビニルプラスチゾル系の加熱硬化タイプのシーリング材が多く用いられている。これらのシーリング材は、室温ではペースト状で、その後の塗装硬化時に併せて硬化(ゲル化)して、エラストマー状となる。
【0003】
一方、ドアやフード等の蓋物パネルは、合わせ部に防錆接着剤を塗布した後、アウターパネルの端部を折り曲げて固定するヘミング工法によって施工されているが、この方法では内部に微小な空間が発生し易く、この上に塗布されたシーリング材が加熱硬化時の空間熱膨張によって膨れ現象を起こし、外観上見栄えが悪くなるばかりでなく大きなものになると破泡して、水密性が確保できなくなって錆が生ずることもあった。
【0004】
そこで、空間を少なくするために防錆接着剤の塗布位置やヘミング圧等で調整を行っているが、このような調整では空間を完全に無くすことはできず、膨れの補修に多大な工数が掛かっている。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1に記載された発明においては、車体パネルのヘム部接着シール工法として、ヘミング工程に用いられる接着剤中に100μm〜300μmのガラスビーズを0.3重量%〜2重量%添加することによって、従来よりも低圧でプレスすることができ、当該板合わせ部に用いられるシーリング材は熱硬化性材料を3%以上添加して、150℃加熱時の強度が50kPa以上になるものを施工すれば、膨れ等を有効に防止または低減できるとしている。
【0006】
また、特許文献2に記載された発明においては、成形シール材およびその製造方法として、プラスチゾルを塗布機によってシールする箇所に合わせた形状を有する予備加熱用鋼板に塗布して、鋼板ごと予備加熱して仮硬化した成形タイプのシール材を作製する。このように作製したシール材を施工することによって、シール材のための焼付け等を低減することができ、容易な作業で垂れや切れ等がない良好な外観が得られるとしている。
【特許文献1】特開2004−26070号公報
【特許文献2】特開2005−54015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、内部の微小な空間による膨れは熱による連続した体積膨張に伴う現象であり、現在用いられている1液加熱硬化タイプでは概ね40℃以上の昇温過程時に発生し始めることが分かっている。従って、150℃加熱時の強度を50kPa以上としても、その前に既に膨れは生じているものと思われ、昇温前のシーリング材の強度や粘度についての制御はされていない。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明においては、シール材の一定膜厚塗布に対しては有効であると考えられるが、このような成形シール材においては粘着テープのように施工時に気泡を巻き込み易いという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、内部に空間があっても膨れが発生し難い室温でプレ硬化するシーリング材であって、高温においても膨れを抑制できる粘度を有するシーリング材とすることによって、容易に良好な外観を得ることができる2液混合型シーリング材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明にかかる2液混合型シーリング材は、主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材であって、混合直後には塗布可能な流動性を有し、20℃〜40℃の範囲内の室温で架橋反応が進行して硬化し、その後の加熱処理時には粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内まで硬化が進行しており、前記加熱処理時においても前記粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内を保持しているものである。
【0011】
請求項2の発明にかかる2液混合型シーリング材は、請求項1の構成において、前記混合直後から10分〜20分の範囲内で前記20℃〜40℃の範囲内の室温で粘度が前記1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内まで硬化が進行するものである。
【0012】
請求項3の発明にかかる2液混合型シーリング材は、主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材であって、前記主剤はポリオール化合物を30重量部〜50重量部、可塑剤を20重量部〜40重量部、熱可塑性樹脂を20重量部〜40重量部、充填剤を45重量部〜65重量部、重合触媒を0.1重量部〜0.5重量部含有し、前記硬化剤はジイソシアネート系プレポリマーを25重量部〜45重量部、可塑剤を25重量部〜45重量部、熱可塑性樹脂を20重量部〜40重量部、充填剤を45重量部〜65重量部含有するものである。
【0013】
ここで、「ポリオール化合物」としては、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリマーポリオール(POP)、ポリエステルポリオール(PEP)、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)、ポリカーボネートジオール(PCD)、ポリブタジエンポリオール(PBP)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(3MPD)、トリメチロールプロパン(TMP)、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,3−プロパンジオール(1,3−PDO)、ポリエーテルポリオール、等があり、「可塑剤」としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、等がある。
【0014】
また、「熱可塑性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、等があり、「充填剤」としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、珪藻土等の一般に充填剤として使用されるものがあり、「重合触媒」としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ラウリレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジフェニル錫ジアセテート、酸化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド等の有機錫化合物や、オクチル酸亜鉛、オクチル酸マンガン、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛等や、トリエチレンジアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、モルフォリン系アミン、トリエチルアミン等の3級アミン、等がある。
【0015】
また、「イソシアネート系プレポリマー」としては例えばHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系プレポリマーを始めとして、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、等をベースとしたプレポリマー類がある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明にかかる2液混合型シーリング材は、主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材であって、混合直後には塗布可能な流動性を有し、20℃〜40℃の範囲内の室温で架橋反応が進行して硬化し、その後の加熱処理時には粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内まで硬化が進行しており、加熱処理時においても粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内を保持している。
【0017】
このような2液混合型シーリング材においては、主剤と硬化剤とを混合した直後には塗布可能な流動性を有しているので、所定の部分に所定の厚さで塗布することができ、塗布後には20℃〜40℃の範囲内の室温でも架橋反応が進行して硬化し、例えば その後の塗装加熱硬化時等の加熱処理時においては、既に粘度が10万P(ポアズ)〜1億P(ポアズ)の範囲内まで硬化が進行している。
【0018】
従って、シーリング材塗布部分の内部に空間が存在して、その部分の空気が加熱硬化時の高温(140℃前後)によって熱膨張しようとしても、シーリング材の粘度が10万P(ポアズ)〜1億P(ポアズ)の範囲内まで硬化しているため空気の熱膨張が抑えられて、膨れが殆ど発生しない。そして、引き続き加熱硬化時の高温(140℃前後)に曝されてもシーリング材の粘度が10万P(ポアズ)より軟化することはないので、膨れが発生したり垂れが生じたりすることもなく、良好な外観を保つことができる。
【0019】
このようにして、内部に空間があっても膨れが発生し難く、高温においても膨れを抑制できる粘度を有するシーリング材とすることによって、容易に良好な外観を得ることができる2液混合型シーリング材となる。
【0020】
請求項2の発明にかかる2液混合型シーリング材は、混合直後から10分〜20分の範囲内で20℃〜40℃の範囲内の室温で粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内まで硬化が進行するものである。
【0021】
このような2液混合型シーリング材においては、混合直後には塗布可能な流動性を有しているので、所定の部分に所定の厚さで塗布することができ、塗布後には20℃〜40℃の範囲内の室温でも架橋反応が進行して硬化し、混合直後から10分〜20分の範囲内で粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内まで硬化が進行する。
【0022】
従って、2液混合型シーリング材の塗布後に直ちに塗装加熱硬化時等の加熱処理が行われても、シーリング材塗布部分の温度が上昇するときには既にシーリング材の粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内に達しているので、シーリング材塗布部分の内部に空間が存在して、その部分の空気が加熱硬化時の高温によって熱膨張しようとしても、空気の熱膨張が抑えられて、膨れが殆ど発生しない。
【0023】
このようにして、内部に空間があっても膨れが発生し難く、高温においても膨れを抑制できる粘度を有するシーリング材とすることによって、容易に良好な外観を得ることができる2液混合型シーリング材となる。
【0024】
請求項3の発明にかかる2液混合型シーリング材は、主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材であって、主剤はポリオール化合物を30重量部〜50重量部、可塑剤を20重量部〜40重量部、熱可塑性樹脂を20重量部〜40重量部、充填剤を45重量部〜65重量部、重合触媒を0.1重量部〜0.5重量部含有し、硬化剤はジイソシアネート系プレポリマーを25重量部〜45重量部、可塑剤を25重量部〜45重量部、熱可塑性樹脂を20重量部〜40重量部、充填剤を45重量部〜65重量部含有する。
【0025】
ここで、「ポリオール化合物」としては、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリマーポリオール(POP)、ポリエステルポリオール(PEP)、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)、ポリカーボネートジオール(PCD)、ポリブタジエンポリオール(PBP)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(3MPD)、トリメチロールプロパン(TMP)、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,3−プロパンジオール(1,3−PDO)、ポリエーテルポリオール、等があり、「可塑剤」としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、等がある。
【0026】
また、「熱可塑性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、等があり、「充填剤」としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、珪藻土等の一般に充填剤として使用されるものがあり、「重合触媒」としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ラウリレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジフェニル錫ジアセテート、酸化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド等の有機錫化合物や、オクチル酸亜鉛、オクチル酸マンガン、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛等や、トリエチレンジアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、モルフォリン系アミン、トリエチルアミン等の3級アミン、等がある。
【0027】
また、「イソシアネート系プレポリマー」としては例えばHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系プレポリマーを始めとして、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、等をベースとしたプレポリマー類がある。
【0028】
かかる配合からなる主剤と硬化剤とを混合すると、混合した直後には塗布可能な流動性を有しているので、所定の部分に所定の厚さで塗布することができ、塗布後には20℃〜40℃の範囲内の室温でも架橋反応が進行して硬化し、例えばその後の塗装加熱硬化時等の加熱処理時においては、既に粘度が10万P(ポアズ)〜1億P(ポアズ)の範囲内まで硬化が進行している。
【0029】
従って、シーリング材塗布部分の内部に空間が存在して、その部分の空気が加熱硬化時の高温(140℃前後)によって熱膨張しようとしても、シーリング材の粘度が10万P(ポアズ)〜1億P(ポアズ)の範囲内まで硬化しているため空気の熱膨張が抑えられて、膨れが殆ど発生しない。そして、引き続き加熱硬化時の高温(140℃前後)に曝されてもシーリング材の粘度が10万P(ポアズ)より軟化することはないので、膨れが発生したり垂れが生じたりすることもなく、良好な外観を保つことができる。
【0030】
このようにして、内部に空間があっても膨れが発生し難く、高温においても膨れを抑制できる粘度を有するシーリング材とすることによって、容易に良好な外観を得ることができる2液混合型シーリング材となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態にかかる2液混合型シーリング材について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0032】
図1は本発明の実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材及び比較例1,比較例2にかかるシーリング材の膨れ性試験に用いる試験体の作製方法を示す説明図である。図2は本発明の実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材における温度変化に対する粘度変化を示したグラフである。図3は比較例1にかかるシーリング材における温度変化に対する粘度変化を示したグラフである。図4は比較例2にかかるシーリング材における温度変化に対する粘度変化を示したグラフである。
【0033】
まず、本実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材、並びに比較例1及び比較例2にかかるシーリング材の配合について説明する。本実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材は、主剤と硬化剤とからなる2液反応タイプシーリング材である。
【0034】
主剤は、ポリオール化合物としてのポリエステルポリオール・F148(King社製)を40重量部、充填剤としての重質炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製)を55重量部、可塑剤としてのトリクレジルフォスフェート(Jプラス社製)を30重量部、熱可塑性樹脂としてのアクリル樹脂・F−320(日本ゼオン(株)製)(アクリル樹脂A)を30重量部、重合触媒としてのジブチル錫ラウリレート・Scat−1を0.2重量部、混合してなる。
【0035】
一方、硬化剤は、ジイソシアネート系プレポリマーとしてのHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系プレポリマー・D−177N(三井武田ケミカル(株)製)を35重量部、充填剤としての重質炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製)を55重量部、可塑剤としてのトリクレジルフォスフェート(Jプラス社製)を35重量部、熱可塑性樹脂としてのアクリル樹脂・F−320(日本ゼオン(株)製)を30重量部、混合してなる。
【0036】
なお、「重質炭酸カルシウム」とは、炭酸カルシウムを約1μm〜2μmの微粒子に微粉砕したものである。これらをそれぞれ計量、混合、脱泡攪拌して、主剤と硬化剤とを作製した。
【0037】
比較例1にかかるシーリング材は、主剤と硬化剤とからなる2液ゾルゲルタイプシーリング材である。主剤は、アクリル樹脂・LP−3104(三菱レイヨン(株)製)(アクリル樹脂B)を60重量部、DINP(フタル酸ジイソノニル)(Jプラス社製)を50重量部、重質炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製)を40重量部、ブロックウレタンプレポリマー・QR−9428(旭電化工業(株)製)を5重量部、混合してなる。
【0038】
硬化剤は、DINP(Jプラス社製)を15重量部、N−メチルピロリドン(三菱化学(株)製)を25重量部、重質炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製)を50重量部、変性ポリアミドアミン・EH−3731S(旭電化工業(株)製)(変性ポリアミドアミンB)を3重量部、混合してなる。これらをそれぞれ計量、混合、脱泡攪拌して、主剤と硬化剤とを作製した。
【0039】
比較例2にかかるシーリング材は、1液ゾルゲルタイプのシーリング材である。PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂・P−38J(新第一塩ビ(株)製)を50重量部、DINP(Jプラス社製)を40重量部、合成炭酸カルシウム・カルファイン200(丸尾カルシウム(株)製)を20重量部、重質炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製)を30重量部、変性ポリアミドアミン・ヌーリーボンド272(エアープロダクツジャパン(株)製)(変性ポリアミドアミンA)を3重量部、混合してなる。
【0040】
以上の本実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材、並びに比較例1及び比較例2にかかるシーリング材の配合について、表1にまとめて示す。
【0041】
【表1】

【0042】
次に、本実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材、並びに比較例1及び比較例2にかかるシーリング材の膨れ性試験について、図1を参照して説明する。試験片としては、70mm×150mm×0.8mmのED鋼板を用いて、図1(a)に示されるように、このED鋼板E1にポンチを用いて深さ1.5mmの凹み1を付ける。
【0043】
続いて、図1(b)に示されるように、同じ大きさのED鋼板E2の、ED鋼板E1の凹み1に対応する位置に、ドリルで内径3.5mmの貫通穴2を開けて、ED鋼板E1とED鋼板E2の間に隙間ができないようにして、エポキシ系接着剤で両者を貼り合わせる。そして、30℃雰囲気において、各シーリング材3を貫通穴2を覆うようにして、内部にシーリング材3を押し込まないように注意しながら、所定の厚さ(1mm,2mm,3mm)になるように塗布する。
【0044】
なお、2液型シーリング材(実施例及び比較例1)の場合には、アドバンテック製2液カートリッジとスタティックミキサーを用いて、混合塗布した。このようにして、図1(c)に示されるように、試験体TPを作製した。この試験体TPを所定時間(10分,30分,60分,90分)30℃雰囲気に放置した後、140℃に調整された乾燥機に10分間投入した。
【0045】
そして、試験体TPを乾燥機から取り出した後、室温まで放冷してから、試験体TPのシーリング材3の塗布面(特に貫通穴2の上)に生じた、凹み1内の空気の熱膨張による膨れの大きさを測定した。その結果、膨れが全くないか膨れの高さが0.5mm未満の場合を○、膨れの高さが0.5mm以上の場合を×と評価した。試験結果を、表2にまとめて示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2に示されるように、実施例にかかる2液混合型シーリング材においては、30℃雰囲気での放置時間が10分間で塗布厚さが1mmの場合のみに膨れが発生したが、他の全ての条件においては○の評価となった。これに対して、比較例1,比較例2においては、全ての条件において膨れが発生し、×の評価となった。なお、比較例2のシーリング材については、1液ゾルゲルタイプであり、塗布後の時間経過によって強度(粘度)が変化するものではないため、30℃雰囲気での放置時間が10分間の場合のみについて試験を行った。
【0048】
次に、表2に示される膨れ性試験の結果と各シーリング材の粘度変化との関係を調べるため、粘度測定試験を行った。粘度測定装置としては、レオメトリックス社製粘弾性測定機を用いて、パラレルプレート振動式(プレート径25mm、間隔1mm)によって時間ごとに粘度を測定した。測定条件としては、30℃に10分,30分,60分,90分放置後に、140℃まで10分間で昇温して、10分間加熱硬化させた。
【0049】
測定結果を、図2,図3,図4に示す。図2に示されるように、実施例にかかる2液混合型シーリング材については、30℃における放置時間が30分,60分の場合について測定を行った。その結果、主剤と硬化剤を混合した時点から10分以内に、粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)を超えており、30分後には10万Pa・s(100万ポアズ)近くに達している。
【0050】
その後、昇温時に一旦10万Pa・s(100万ポアズ)に到達した後、140℃で加熱されることによってやや粘度が低下しているが、依然として5万Pa・s(50万ポアズ)〜7万Pa・s(70万ポアズ)の高い粘度を保持している。
【0051】
このように、本実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材においては、30℃における放置時間が10分に達した時点で粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)以上に達しており、その後140℃に加熱されても1万Pa・s(10万ポアズ)以上の粘度を保持しているため、上述した膨れ性試験において140℃の乾燥機に投入されて、試験体TPの凹み1内の空気が熱膨張しようとしても、大きな粘度(強度)によって熱膨張を抑えて膨れが生じなかったものと考えられる。
【0052】
これに対して、図4に示されるように、比較例2のシーリング材においては、30℃における放置では粘度が殆ど上昇せず(100Pa・s(1000ポアズ)程度)、加熱昇温に伴って粘度が上昇して約110℃で1万Pa・s(10万ポアズ)に到達している。しかし、この時点では既に試験体TPの凹み1内の空気が熱膨張しているため、膨れが生じてしまうものと考えられる。
【0053】
さらに、図3に示されるように、比較例1のシーリング材においては、30℃における放置時間が30分,60分,90分の場合について測定を行った。その結果、主剤と硬化剤を混合した時点から約20分後に、粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)に到達している。しかし、30℃における放置時間が30分,60分,90分のいずれの場合にも、加熱昇温に伴って、粘度が一時的に1万Pa・s(10万ポアズ)未満に低下している。
【0054】
従って、この粘度が低下した時点において、試験体TPの凹み1内の空気の熱膨張を抑えることができず、膨れが発生するものと考えられる。
【0055】
このようにして、本実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材においては、内部に空間があっても膨れが発生し難く、高温においても膨れを抑制できる粘度を有するシーリング材とすることによって、容易に良好な外観を得ることができる。
【0056】
本実施の形態においては、「ポリオール化合物」としてポリエステルポリオール、「可塑剤」としてトリクレジルフォスフェート、「熱可塑性樹脂」としてアクリル樹脂、「充填剤」として重質炭酸カルシウム、「重合触媒」としてジブチル錫ラウリレート、「イソシアネート系プレポリマー」としてHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系プレポリマーを用いた場合について説明したが、同様な特性を有するポリオール化合物、可塑剤、熱可塑性樹脂、充填剤、重合触媒、イソシアネート系プレポリマーであれば、他の化合物を用いることもできる。
【0057】
本発明を実施するに際しては、2液混合型シーリング材の配合、成分、数量、材質、塗布厚さ、塗布面積、加熱曲線等についても、本実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は本発明の実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材及び比較例1,比較例2にかかるシーリング材の膨れ性試験に用いる試験体の作製方法を示す説明図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態の実施例にかかる2液混合型シーリング材における温度変化に対する粘度変化を示したグラフである。
【図3】図3は比較例1にかかるシーリング材における温度変化に対する粘度変化を示したグラフである。
【図4】図4は比較例2にかかるシーリング材における温度変化に対する粘度変化を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材であって、
混合直後には塗布可能な流動性を有し、20℃〜40℃の範囲内の室温で架橋反応が進行して硬化し、その後の加熱処理時には粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内まで硬化が進行しており、
前記加熱処理時においても前記粘度が1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内を保持していることを特徴とする2液混合型シーリング材。
【請求項2】
前記混合直後から10分〜20分の範囲内で前記20℃〜40℃の範囲内の室温で粘度が前記1万Pa・s(10万ポアズ)〜1000万Pa・s(1億ポアズ)の範囲内まで硬化が進行することを特徴とする請求項1に記載の2液混合型シーリング材。
【請求項3】
主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材であって、
前記主剤はポリオール化合物を30重量部〜50重量部、可塑剤を20重量部〜40重量部、熱可塑性樹脂を20重量部〜40重量部、充填剤を45重量部〜65重量部、重合触媒を0.1重量部〜0.5重量部含有し、前記硬化剤はジイソシアネート系プレポリマーを25重量部〜45重量部、可塑剤を25重量部〜45重量部、熱可塑性樹脂を20重量部〜40重量部、充填剤を45重量部〜65重量部含有することを特徴とする2液混合型シーリング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−262184(P2007−262184A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87239(P2006−87239)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】