説明

2種の異なる部分構造を有する触媒担体を、触媒活性被覆で被覆する方法及び前記方法により得られた触媒

本発明は、被覆分散液を用いて触媒活性被覆で、被覆分散液に対する吸収性が異なる少なくとも2種の部分構造を有する触媒担体を被覆する方法に関する。この方法は、燃焼可能な材料又は液体で触媒担体を予備被覆することにより部分構造の吸収性を相互に相対的に変更し、その後で触媒被覆を公知の方法でフィルタボディに塗布し、乾燥し及び/又はか焼することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の異なる部分構造を有する触媒担体を、触媒活性被覆で被覆する方法並びに前記方法により得られた触媒に関する。
【0002】
2種の異なる部分構造を有する触媒担体は、自動車排気ガス触媒の分野でますます使用されている。特に、この触媒担体は、特にディーゼルエンジンの排気ガスからカーボン粒子を除去するためのフィルタボディである。
【0003】
これまでに、この使用目的のための多様なタイプのフィルタは公知であった。広く普及しているのはいわゆるウォールフローフィルタである。これは、流入端面から流出端面まで排気ガス用の平行な流路が通されている円柱形のモノリスフィルタボディである。このフィルタボディは一体式の多孔性セラミック材料からなり、例えば押出により製造される。このフィルタ効果を達成するために、この流路は流入端面及び流出端面で交互に目封じされているため、この流路は流入路と流出路とに分けられ、排気ガスはフィルタボディを通過する際に、流入路から流路間の多孔性の分離壁を通過して流出路へと移らなければならない。この場合に、排気ガス中に含まれるカーボン粒子が排気ガス流から濾別され、流入路の壁部に堆積する。
【0004】
他のタイプのフィルタは、例えば刊行物DE 197 04 147 A1及びDE 201 17 873 U1に記載されている。このタイプのフィルタのフィルタボディは、フィルタボディを流通するガス流から粒子を捕捉するために、ガス不透過性の第1の層と、ガス透過性の第2の層とを有し、これらの層は、排気ガスのために流通可能な通路を形成するように配置されている。このガス透過性の第2の層は、多孔性フィルタマットからなり、ガス不透過性の第1の層は複数のブレードが設けられていて、これらのブレードはガス透過性の通路内へ突出し、かつ排気ガスの大部分を多孔性の第2の層へ向け、かつこの多孔性の第2の層を通過させる。このフィルタの特別な利点は、カーボン堆積による閉塞する傾向が少ないことである。このフィルタはつまり2種の異なる部分構造、つまり多孔性のフィルタマットとガス不透過性の第1の層とを有する。このタイプのフィルタボディは、以後、フィルタ触媒と表し、ウォールフローフィルタとは区別する。
【0005】
排気ガスからのカーボン粒子の堆積及び除去に対して付加的に、頻繁に、排気ガス及び/又は排気ガスに添加される成分、例えば尿素の触媒による処理が望ましい。この目的のために、フィルタは触媒により被覆することができる。この被覆は、触媒活性成分として白金及び/又はパラジウムを含有する酸化活性被覆であるか、又は例えば酸化セリウム及び/又は酸化バナジウムを含有するいわゆるカーボン燃焼被覆であることができる。他の触媒作用を備えた被覆、例えば窒素酸化物の吸蔵及び窒素酸化物のアンモニアによる選択的な接触還元も同様に公知である。
【0006】
有利に、このフィルタの触媒被覆はいわゆる分散液被覆であり、前記被覆中では、触媒活性成分は微細粒の担体材料、例えば活性酸化アルミニウム上に高度に分散した形で存在する。この種の被覆は、触媒活性成分の触媒能力の最適な利用を保証する。この触媒活性成分で被覆された担体材料は、以後、触媒材料と表す。
【0007】
フィルタボディの被覆のために、触媒材料をまずキャリア液、大抵は水中に分散させる。被覆のために、まず例えば、フィルタボディに分散液を注ぎかけるか、フィルタボディを分散液中に浸漬するか、又は分散液をフィルタボディ中に吸引するか圧送する。過剰量の被覆分散液は、その後、圧縮空気を用いた吹き飛ばし又は吸い出しにより除去される。引き続き、この被覆を乾燥しかつ/又は300〜900℃の温度でか焼する。有利な実施態様の場合には、この熱処理を300〜700℃で実施する。ここに記載された技術は、自動車排気ガス触媒の分野の当業者に公知であり、従って詳細に記載する必要はない。
【0008】
フィルタ触媒の被覆の場合の本質的な問題は、この触媒の2つの部分構造が、被覆分散液に対して異なる吸収性を示すことにある。フィルタ触媒の場合には、フィルタボディ上に塗布された被覆分散液の大部分が多孔性フィルタマット中に堆積する。それによりこの気孔が閉塞し、従ってフィルタ効果は失われてしまう。このフィルタボディは、それにより、高い排気ガス背圧を示す単純な貫流モノリスとして作用するだけである。
【0009】
本発明の課題は、先行技術の問題及び欠点を克服することである。更に、被覆分散液に対して異なる吸収性を特徴とする2つの異なる部分構造を有する触媒担体を、触媒活性被覆で被覆でき、その際に、部分構造上の被覆濃度は相互に十分に無関係に調節可能である方法を提供することである。特に、触媒担体の多孔性の部分構造は被覆分散液の過剰の堆積により、その機能を損ねるか又は完全に使用不能になることを避けるべきである。
【0010】
前記の課題は、少なくとも一方の部分構造の吸収性を、触媒担体の予備被覆により変更し、その後に触媒被覆を設けることにより解決される。部分構造の吸収性を相互に相対的に変更するのが好ましい。有利な実施態様の場合には、吸収性の変更を、気孔充填、一方又は両方の部分構造体の親水化及び/又は疎水化により行う。有利には、吸収性の変更を、気孔充填及び/又は一方又は両方の部分構造体の疎水化により行う。フィルタボディ上への触媒被覆の塗布は、公知の方法で行うのが有利である。塗布後に、この被覆は乾燥及び/又はか焼される。有利な実施態様の場合に、乾燥及び/又はか焼は、触媒材料の塗布後に及び少なくとも1種の予備被覆媒体で予備被覆した後に行う。
【0011】
有利な本発明による実施態様の場合には、触媒被覆の熱処理の際に、予備被覆媒体は排除される。他の有利な本発明による実施態様の場合には、予備被覆媒体の排除は付加的な手段を用いて、例えば有利に他の熱処理によって行う。
【0012】
触媒担体の予備被覆は、有利に、予備被覆媒体として少なくとも1種の燃焼可能な材料、及び/又は少なくとも1種の蒸発可能もしくは気化可能な材料を用いて行う。
【0013】
蒸発可能もしくは気化可能な材料として、有利に水と混合可能な液体、水と混合不可能な液体又は水が用いられる。
【0014】
燃焼可能な材料として、有利にポリビニルアルコール、ワックス又は他の疎水性物質が使用される。これらは、本発明の有利な実施態様の場合に、溶解させた形で又はエマルションとして塗布され、有利に触媒被覆の塗布の前に乾燥される。この方法により、有利に少なくとも一方の部分構造は疎水化される。
【0015】
有利に、水と混合可能な液体、例えばアルコール、又は水と混合不可能な有機溶剤、例えば炭化水素が予備被覆及び気孔充填のために使用される。特に有利に、水が使用される。
【0016】
この方法は、特に、2種の部分構造により異なる多孔性を特徴とし、それにより被覆分散液に対して異なる吸収性を特徴とする、いわゆるフィルタ触媒の被覆のために適している。フィルタ触媒の第1の部分構造は、例えば多孔性フィルタマットを有し、第2の部分構造は無孔性の、例えば平坦な金属シートを有する。
【0017】
触媒担体の予備被覆は、有利に少なくとも1種の予備被覆媒体との接触により行う。
【0018】
触媒担体の予備被覆は、有利に水又は液状ワックス中への浸漬によって行う。それにより、多孔性部分構造の気孔は予備被覆液で部分的に又は完全に充填されるため、引き続く被覆の際に、被覆分散液はもはや多孔性部分構造の深部にまで浸入できない。この部分的な充填は、触媒担体を完全に浸漬させた後に、相応する吹き飛ばし又は乾燥により調節することができる。更に、有利な適当な方法は吸引であり、その際に、このボディの一方の端面を液体中に置き、この液体を毛管力によって触媒担体の多孔性の部分構造体中で選択的に上昇させる。この手段によって、被覆分散液に対して2つの部分構造の吸収性を、相互に相対的に適切に変更することができる。
【0019】
本発明の特に有利な実施態様の場合には、少なくとも1種の予備被覆媒体が触媒活性材料又はその前駆体を有する。
【0020】
この触媒活性材料もしくはその前駆体は、排除後に、少なくとも一方の、有利に多孔性の部分構造上に少なくとも残留し、従って付加的な触媒被覆を形成する。有利な本発明による実施態様の場合には、2種の部分構造を有する触媒担体を水で予備被覆し、この水に硝酸セリウムを添加し、被覆分散液を有利に無孔性部分構造上に塗布し、乾燥しかつ/又はか焼した後に、酸化セリウムの形で多孔性部分構造上に残留させる。従って、少なくとも一方の部分構造上に及び/又は両方の部分構造上に、異なる成分及び/又は機能の被覆を有する触媒を構成することができる。
【0021】
多孔性部分構造として多様な繊維直径を有する不織布を有しかつ第2の無孔性部分構造として波状の金属箔を有するフィルタ触媒を用いた被覆試験において、22μmの繊維直径を有する不織布の場合に、全体の被覆質量の95%は不織布中に堆積され、5%だけが金属シート上に堆積された。12μmの繊維直径を有する不織布の場合には、98%対2%の割合であった。
【0022】
水を用いたフィルタ触媒の予備被覆により、全体の被覆質量の最大で80%、有利に最大で50%、特に有利に30%だけが不織布上に堆積することを達成することができた。それにより、フィルタ触媒の多孔性部分構造のフィルタ機能の被覆による破壊は阻止される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆分散液に対する吸収性が異なる、少なくとも2種の部分構造を有する触媒担体を、被覆分散液を使用して触媒活性被覆で被覆する方法において、前記触媒担体を予備被覆することにより少なくとも一方の部分構造の吸収性を変更し、その後に触媒被覆を塗布する、触媒担体を被覆する方法。
【請求項2】
燃焼可能な、気化可能な及び/又は蒸発可能な材料で予備被覆を行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
燃焼可能な材料として、ポリビニルアルコール、ワックス又はワックスエマルションを使用する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
水を用いて予備被覆を行う、請求項2記載の方法。
【請求項5】
水と混合可能な液体を用いて予備被覆を行う、請求項2記載の方法。
【請求項6】
水と混合可能な液体としてアルコールを使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
水と混合不可能な有機液体を用いて予備被覆を行う、請求項2記載の方法。
【請求項8】
水と混合不可能な有機液体として炭化水素を使用する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
予備被覆媒体は、触媒活性材料及び/又はその前駆体を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
触媒担体として、第1の部分構造として多孔性フィルタマットを有し、第2の部分構造として無孔性金属箔を有するフィルタ触媒を使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
触媒担体を予備被覆媒体中に浸漬するか、又は予備被覆媒体を触媒担体中に吸引させることにより予備被覆を行う、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
触媒被覆を、塗布後に乾燥及び/又はか焼する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により製造可能な触媒。
【請求項14】
触媒担体と、その上に設けられた触媒活性被覆とを有する触媒において、触媒担体は少なくとも2種の部分構造を有し、前記部分構造の第1の部分構造は高い多孔性を有し、第2の部分構造はわずかな多孔性を有し、かつ触媒活性被覆の全質量が触媒担体上に存在し、その際、前記被覆の全質量の最大80%が高い多孔性を有する部分構造上に存在する、触媒。
【請求項15】
前記被覆の全質量の最大50%が高い多孔性を有する部分構造上に存在する、請求項14記載の触媒。
【請求項16】
前記被覆の全質量の最大30%が高い多孔性を有する部分構造上に存在する、請求項14記載の触媒。

【公表番号】特表2006−507113(P2006−507113A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554316(P2004−554316)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012298
【国際公開番号】WO2004/047958
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【Fターム(参考)】