説明

2箇所吊りチェーン巻上装置における下フック取り付け金具

【課題】吊り荷が昇降する間隔を十分確保することができる2箇所吊りチェーン巻上装置における下フック取付金具を提供する。
【解決手段】2箇所吊りチェーン巻上装置における下フック取り付け金具であって、前記下フック取り付け金具20は所定の高さと重量を有し、本体下部に下フックの棒状係合部21が嵌合する挿入穴22と、挿入穴22の上部に前記棒状係合部21に嵌合するスラストベアリング26を嵌装する第1段部23と、前記棒状係合部21の上部に設けた溝部29に嵌合する座金27、28を嵌装する第2段部24を備え、本体上部から前記第2段部24に連通し、ロードチェーンと連結するチェーン取付金具33が螺嵌されるねじ穴25を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンブロックを用いたチェーン巻上装置に適用される下フック取り付け金具に関するもので、さらに詳しくは、荷を2箇所で吊って昇降搬送する2箇所吊りチェーン巻上装置におけるロードチェーンと下フックの取り付け間隔を調整可能とする下フック取り付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、チェーンブロックから繰出される2本のロードチェーンを用いて、ロール等の荷を前後2箇所で水平に吊り上げる吊り上げ装置は公知である。(例えば特許文献1参照)
以下、公知の2点水平式電気チェーンブロックについて、図3及び図4を参照して説明する。
【0003】
図3において、1は天井等に横設された走行レール、2a、2bは走行レール1上を走行する走行車輪3をそれぞれ備えた後方及び前方トロリ、4aは巻上装置の主フレーム、4bは従動フレーム、4cは主フレーム4aと従動フレーム4bを連結する連結フレームである。5は主フレーム4aに取設されたチェーンブロックで、荷を昇降する後方ロードチェーン6aと前方ロードチェーン6bを同時に巻き上げ、巻き降しするための一対のロードシーブ(図示せず)を備えている。前記一対のロードシーブは一つのモータにより駆動され、前後2本のロードチェーン6a、6bを同時に昇降動作させるように構成されている。
前記後方ロードチェーン6aは、前記チェーンブロック5のロードシーブ(図示せず)から、チェーンブロック5の下方で主フレーム4aに備えられた下部シーブ8、及びチェーンブロック5の側方で主フレーム4aの上部に備えられたガイドシーブ8aに巻き掛けられ、前記連結フレーム4cに備えられた後方シーブ7aに巻き掛けられ下方に垂下し、一方、前記前方ロードチェーン6bは、前記後方ロードチェーン6aと同様に前記チェーンブロック5のロードシーブ(図示せず)から、チェーンブロック5の下方で主フレーム4aに備えられた下部シーブ8、及びチェーンブロックの側方で主フレーム4aの上部に備えられたガイドシーブ8aに巻き掛けられたのち、前記従動フレームに備えられた前方シーブに巻き掛けられ下方に垂下している。チェーンブロック5のロードシーブから後方シーブまでの間、前後2本のロードチェーン6a、6bは並列して張設されている。
後方トロリ2aは、後方ロードチェーン6aを後方シーブ7aから垂下する位置の上方で連結フレーム4cの上部と後方トロリ2aの下部で連結され、前方トロリ2bは、前方ロードチェーン6bを前方シーブ7bから垂下する位置の上方で従動フレーム4bの上部と前方トロリ2bの下部で連結され、2点水平電気チェーンブロックは走行レール1に沿って走行する。
【0004】
9はチェーンブロック5から繰出される無負荷側チェーンが収容されるバケットである。10a、10bはロードチェーン6a、6bの下端に取設された下フックで、前方ロードチェーン6bの下端には下フック取付金具11と高さ調整用連結金具12が設けられている。この高さ調整用連結金具12は、下フック10bとロードチェーン6b下端の間隔を調整することで、各シーブに掛け回され前方及び後方シーブから垂下されたロードチェーン6a、6bの下端高さ位置の差分を調整し、ロードチェーンによる荷の昇降動作時における荷の傾きを防止する。13は操作用押釦スイッチである。
【0005】
次に図4を参照して従来の高さ調整用連結金具12について説明する。高さ調整用連結金具12は、下部が下フック取付金具11と連結チェーン14で連結され、上部に設けたネジ穴12aにはチェーン取付金具15が螺着され、チェーン取付金具15はロードチェーン6bの下端部と鎖ピン16で連結している。17は連結チェーン14を高さ調整用連結金具12に連結するボルト、18はチェーン取付金具15を高さ調整用連結金具12に固定するロックナット、19はネジ穴12aに螺合するチェーン取付金具15に設けた雄ネジである。
【0006】
2点水平式電気チェーンブロックでの吊り荷の搬送を行う場合、吊り荷の吊り位置幅に合わせてロードチェーン6a,6b間のピッチ幅が決定され、ロードチェーン6b側の下フック10bがロードチェーン6aの下フック10aと水平位置となるようにチェーンのリンク長単位でロードチェーン6bのチェーン長が調整され、ロードチェーン6bのリング長単位では調整しきれないチェーン長を調整するため、前記した高さ調整用連結金具12がロードチェーン6bに装着される。また、ロードチェーン6bは後方シーブ7a、前方シーブ7b間でたるみが生ずるため、ロードチェーン6bの下フック10bにはロードチェーン6bのたるみ発生を防止するため、ウエイトが負荷されており、高さ調整用連結金具12は、ロードチェーン6bのたるみ発生を防止するため所定の重量を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−117427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来技術の下フックの取り付け高さ位置調整用金具の構造では、下フック取付金具11の上部に連結チェーン14を介して高さ調整用連結金具12が連結される構造であるため、ロードチェーン6bの下端の取り付け部と下フック6b間の間隔が長くなり、前記高さ調整用連結金具12の長さ分だけ吊り荷が昇降する間隔が短縮するという課題を有していた。
【0009】
また、下フック16bに下フック取付金具11を連結し、さらに下フック取付金具11に連結チェーン14を介して高さ調整用連結金具12を連結する構造であるため、部品点数が多く、かつ高さ調整用金具の取付操作が複雑になるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するもので、2箇所吊りチェーン巻上装置における下フック取り付け金具であって、前記下フック取り付け金具は下部に下フックの棒状係合部が嵌合する挿入穴と、挿入穴の上部に前記棒状係合部に嵌合するスラストベアリングを嵌装する第1段部と、前記棒状係合部の上部に設けた溝部に嵌合する座金を嵌装する第2段部を備え、本体上部に前記第2段部に連通し、ロードチェーンと連結するチェーン取付金具が螺嵌されるねじ穴を備えたことを特徴とする2箇所吊りチェーン巻上装置における下フック取り付け金具である。
【0011】
また、前記座金は前記棒状係合物の溝部に嵌合する2つ割り座金と前記2つ割り座金に外嵌する固定座金であることを特徴とする。
【0012】
また、前記2つ割り座金を棒状係合部の頭部で固定し、固定座金を浮き上り防止用ピンで固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、下フック取り付け金具にロードチェーンと下フックを取り付ける間隔を調整する機構を備えているので、従来技術の課題であった、ロードチェーンの下端の取り付け部と下フック間の間隔を従来技術より短縮できるため、吊り荷の昇降間隔を十分に確保することができる。さらに、部品点数が少なく、かつ下フックの取り付けまたは取り外し操作も、下フック取り付け金具の上部に設けたねじ穴からスラストベアリング、座金を挿入することで容易に前記部品を下フックの棒状係合部に嵌合することができるため、組み立て・調整作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の下フック取り付け金具の縦断面図。
【図2】図1の横断面図。
【図3】2箇所吊りチェーン巻上装置の正面図。
【図4】従来のチェーン高さ調整用下金具。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の下フック取り付け金具について図1及び図2を参照して説明する。
【0016】
図1において、20は所定の高さと重量を有する下フック取り付け金具で、この下フック取り付け金具の下部には、下フック10bの上端部に形成された棒状係合部21が嵌合する挿入穴22が設けられており、挿入穴22の上部には、スラストベアリング26が嵌装される第1段部23が設けられ、第1段部23の上部には、後記する座金が嵌装される第2段部24が設けられている。さらに、下フック取り付け金具20の本体上部中心から下方に向けて後記するチェーン取付金具33を螺嵌するねじ穴25が設けられている。前記ねじ穴25は下フック取り付け金具の上部から第2段部24に連通し、その内径は第2段部24と同径以上としている。前記第2段部24に嵌装される座金は、2つ割り座金27と2つ割り座金27に外嵌される固定座金28からなり、2つ割り座金27は下フック10bの棒状係合部21の上部に設けた溝部29に嵌合され、2つ割り座金27に固定座金28を外嵌し、固定座金28を第2段部24に嵌装することで、下フック10bはその頭部30で2つ割座金27に支持され、2つ割座金27はスラストベアリング26によって回転可能に支持されるので下フック10bは下フック取り付け金具に回転可能に支持される。31は下フック取り付け金具20の側部に設けたねじ挿入穴32から横方向に螺挿され、固定座金28の上面に接合して固定座金の浮き上りを防止する浮き上り防止用ピンである。チェーン取付金具33には下フック取り付け金具20に設けたねじ穴25に螺嵌する雄ねじ34が設けられており、チェーン取付金具33とロードチェーン6bは鎖ピン35で連結されている。36はチェーン取付金具33の下フック取り付け金具に対する回り止め用ロックボルトである。
【0017】
本実施の形態の下フック取り付け金具における下フック10bの取付操作について説明する。
【0018】
下フック取り付け金具20の下部に設けた挿入穴22に下フック10bの棒状係合部21を嵌挿し、上部に設けたねじ穴25からスラストベアリング26を挿入して棒状係合部21に嵌合し、スラストベアリング26を第1段部に嵌装する。次に、ねじ穴25から2つ割り座金27を挿入して棒状係合部21の溝部29に嵌合し、次に、ねじ穴25から固定座金28を挿入して、2つ割り金具27に外嵌し、2つ割り座金27が棒状係合部21の溝部29から外側にはずれるのを防止し、固定座金28を第2段部24に嵌装し、浮き上り防止用ピン31で固定座金28をスラストベアリング26と挟んで固定することで、下フック10bを下フック取り付け金具に回転可能に固定する。次に、ロードチェーン6bの下端を鎖ピン35で連結したチェーン取付金具33を下フック取り付け金具20のねじ穴25に螺嵌し、チェーン取付金具33のねじ込み量を調整することで、前方の下フック10bの取り付け高さ位置を後方の下フック10aの取り付け高さ位置に一致させ、ロックボルト36でチェーン取付金具33を下フック取り付け金具20に固設する。
【0019】
以上の通り、本実施の形態の下フック取り付け金具20は、簡単な操作により下フック10bとロードチェーン6bを連結することができ、ロードチェーン6bの下フック10bをロードチェーン6aの下フック10aと水平位置となるように、ロードチェーン6bと下フック10bの間隔を調整することができる。
【0020】
なお上記実施の形態において、2つ割り座金27を用いた形態として説明したが、前記座金に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0021】
20 フック取り付け金具
21 棒状係合部
22 挿入穴
23 第1段部
24 第2段部
25 ねじ穴
26 スラストベアリング
27 2つ割り座金
28 固定座金
29 溝部
30 頭部
31 浮き上り防止用ピン
33 チェーン取付金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2箇所吊りチェーン巻上装置における下フック取り付け金具であって、前記下フック取り付け金具の下部に下フックの棒状係合部が嵌合する挿入穴と、挿入穴の上部に前記棒状係合部に嵌合するスラストベアリングを嵌装する第1段部と、前記棒状係合部の上部に設けた溝部に嵌合する座金を嵌装する第2段部を備え、本体上部に前記第2段部に連通し、ロードチェーンと連結するチェーン取付金具が螺嵌されるねじ穴を備えたことを特徴とする2箇所吊りチェーン巻上装置における下フック取り付け金具。
【請求項2】
前記座金は前記棒状係合物の溝部に嵌合する2つ割り座金と前記2つ割り座金に外嵌する固定座金であることを特徴とする請求項1記載の2箇所吊りチェーン巻上装置における下フック取り付け金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−189179(P2010−189179A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37678(P2009−37678)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)
【Fターム(参考)】