説明

2線式伝送器

【課題】電源投入後の起動及び初期化が完了するまでの立ち上げ時間を早めることを可能にする。
【解決手段】信号処理回路23が、電源電圧VDDが所定値以下の場合にはオフし、所定値以上の場合にはオンとなる半導体スイッチSW1と、電源電圧VDDが半導体スイッチSW1を介して供給される第1コンデンサとして電源安定化コンデンサC1と、電源安定化コンデンサC1よりも静電容量が小さく、電源電圧VDDが直接供給される第2コンデンサとしての起動コンデンサC2とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷側から2本の伝送線を介して電流信号の供給を受け測定すべき物理量に応じて信号処理を行うことにより電流信号を変更し、これを負荷側に伝送する、2線式伝送器に関する。
【背景技術】
【0002】
2線式伝送器は、プラント等のプロセス変数である圧力や温度等の物理量を、電気信号に変換して受信側に伝送するものである。電気信号は2線式伝送器により電流信号として受信計器へ伝送され、受信計器の抵抗負荷の両端に生じる電圧変化を検出してプロセス変数を知るようになっている。電流信号は、2線式伝送器により、測定指示範囲(スパン)の0%の場合に4mA、100%の場合に20mAに変換され伝送される。また、測定指示範囲はユーザが設定するようになっている。
【0003】
近年の2線式伝送器は、マイクロプロセッサや通信回路を有し、4〜20mAのアナログ信号に種々の情報を含んだデジタル信号を重畳して伝送させる、いわゆるスマート型の2線式伝送器が用いられている。このような2線式伝送器として図6に示す構成が記載された特許文献1がある。
【0004】
図6は、従来の2線式伝送器の構成を示すブロック図である。この2線式伝送器1は、外部装置である受信計器2に伝送路19で接続されており、センサ回路11と、A/D(アナログ/デジタル)変換回路12と、信号処理回路13と、メモリ回路14と、表示回路15と、定電圧回路16と、D/A(デジタル/アナログ)変換回路17と、電圧/電流変換回路18とを備えて構成されている。
【0005】
受信計器2は、電源2aから2線式伝送器1へ電力を供給し、また、負荷抵抗器2bを使用して電流信号を電圧信号に変換しプロセス変数を読み取る。
【0006】
センサ回路11は、圧力、温度、流量等の物理量を測定し、この測定により得られた信号を出力する。また当該センサ回路11に備えられたセンサからのアナログ信号を増幅、波形整形する役割も果たす。A/D変換回路12は、センサ回路11からのアナログ信号をデジタル信号に変換して信号処理回路13へ出力する。信号処理回路13は、プロセス変数を4〜20mAの統一信号に対応するデジタル信号をD/A変換回路17へ出力し、また、表示回路15に表示する内容の指示や、メモリ回路14に対してデータの読み出し、書き込みを行う。この信号処理回路13はマイクロプロセッサが用いられて、それぞれの機能を実現している。
【0007】
メモリ回路14は、マイクロプロセッサの動作を規定するプログラムの格納や補正値、設定値データの格納を行う。表示回路15は、LCD(Liquid Crystal Display)表示器等によって構成され、信号処理回路13から出力される表示データを取り込んで表示する。定電圧回路16は、DC/DC(直流/直流)コンバータ、レギュレータ回路などにより構成され、定電圧を生成して2線式伝送器1内の各回路へ電圧を供給する。
【0008】
D/A変換回路17は、信号処理回路13から4〜20mAに対応するデジタル信号を受けて、その指示電流になるように出力回路を制御する。例としてデジタル信号である矩形波をフィルタを通してアナログ信号に変換する機能が挙げられる。電圧/電流変換回路18は、D/A変換回路17からの出力電圧を受け、伝送線19に流れる電流が指示電流となるように制御する。例としては演算増幅器とトランジスタを使用し、内部回路全体に供給する電流を制御する。
【0009】
このような構成おいて、まず、受信計器2の電源2aから2線式伝送器1へ電力が供給される。この供給により定電圧回路16で定電圧が生成されて2線式伝送器1内の各回路へ電圧が供給される。この供給により、センサ回路11で圧力、温度、流量等の物理量が測定され、この測定により得られた信号がA/D変換回路12へ出力される。
【0010】
A/D変換回路12では、そのセンサ回路11からのアナログ信号がデジタル信号に変換されて信号処理回路13へ出力される。信号処理回路13では、プロセス変数が4〜20mAの統一信号に対応するデジタル信号に変換されてD/A変換回路17へ出力されると共に、表示回路15に表示される内容の指示や、メモリ回路14に対してデータの読み出し、書き込みが行われる。
【0011】
その表示回路15では、信号処理回路13から出力される表示データが取り込まれて表示される。D/A変換回路17では、信号処理回路13から4〜20mAの出力指示信号に対応するデジタル信号が入力されると、その指示信号で指示される指示電流になるように出力回路が制御され、これによってアナログ信号が電圧/電流変換回路18へ出力される。
【0012】
電圧/電流変換回路18では、そのアナログ信号による電流指示を受け、伝送線19に流れる電流が4〜20mAの指示電流となるように制御する。この指示電流が受信計器2に入力されると、負荷抵抗器2bに流れる電流信号が電圧信号に変換されてプロセス変数が読み取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−135295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示された2線式伝送器1によれば、センサ回路11の測定精度の観点から、電源の安定度が必要になる。この場合、電源安定度を得るために、電源に数十μF程度の容量の大きなバイパスコンデンサが接続されるのが一般的である。
【0015】
このバイパスコンデンサが満充電となって電源が安定した後に、2線式伝送器1が起動されて初期化が行われる。この初期化とは、2線式伝送器の起動時にクロックが安定化するための時間、メモリ領域のクリア、使用するレジスタの初期化、使用する入出力ポートの処理、プログラムのロードなどの伝送器内部回路の初期化である。
【0016】
しかし、電源投入後にバイパスコンデンサが満充電となるまでは、2線式伝送器1を起動することはできないため、起動時間が長くなってしまい必然的に初期化が完了するまでの立ち上げ時間が長くなるという問題があった。
【0017】
特に、プロセス値を4〜20mAの小電流信号に変換して受信計器2へ伝送する2線式伝送器1では、当該伝送器内への流入電流も4〜20mAの範囲で制限される。このため、バイパスコンデンサへの充電電流も少量となるので、バイパスコンデンサが満充電となるまでにより長い時間が掛かり、これに対応して起動時間も長くなってしまう。
【0018】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、電源投入後の起動及び初期化が完了するまでの立ち上げ時間を早めることができる、2線式伝送器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した課題を解決するために本発明は、負荷側から2本の伝送線を介して電流信号の供給を受け各内部回路手段に供給するための一定の電源電圧を生成する定電圧手段と、各種の物理量を測定し、この測定値に応じたアナログ信号を出力するセンサ手段と、このセンサ手段からのアナログ信号を第1デジタル信号に変換するA/D変換手段と、このA/D変換手段からの第1デジタル信号を所定の信号処理を行って第2デジタル信号に変換するプロセッサである信号処理手段と、この信号処理手段からの第2デジタル信号をアナログの電圧信号に変換するD/A変換手段と、このD/A変換手段からの電圧信号を前記電流信号に変換する電圧/電流変換手段とを有し、この電圧/電流変換手段からの電流信号が前記伝送線を介して前記負荷側に伝送される2線式伝送器において、前記信号処理手段は、前記電源電圧が所定値以下の場合にはオフし、前記所定値以上の場合にはオンとなるスイッチと、前記電源電圧がスイッチを介して供給される第1コンデンサと、前記第1コンデンサよりも静電容量が小さく、前記電源電圧が直接供給される第2コンデンサと、を備えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、2線式伝送器が負荷側から2本の伝送線を介して電流信号の供給を受け、定電圧手段からの電源電圧が上昇中に、第2コンデンサに充電が行われる。この第2コンデンサへの充電は、第1コンデンサに比べ容量が小さいのでその分早く行われ、満充電となるのも早い。この満充電によって、2線式伝送器の起動時にクロックが安定化するための時間、メモリ領域のクリア、使用するレジスタの初期化、使用する入出力ポートの処理、プログラムのロードなどの伝送器内部回路の初期化動作を早く行うことが可能となる。つまり、従来の第1コンデンサのみの場合よりも電源起動時の初期化を早く行うことができる。
【0021】
また、電源電圧が所定値以上になると入出力ポート出力電圧が「L」から「H」となってスイッチがオンするので、電源電圧が第1コンデンサに供給され、充電が行われる。この充電により第1コンデンサが満充電になると、電源電圧が安定状態となり、信号処理手段が所定の処理動作を開始する。
【0022】
本発明において、前記スイッチと前記第1コンデンサとの間に抵抗器を接続したことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、スイッチのオンによって第1コンデンサに電源電圧が供給される際に、第1コンデンサへの流入電流が抵抗器によって制限されるので、第1コンデンサに急激に充電電流が流れて電源電圧が低下するといったことを防止することができる。
【0024】
本発明は、負荷側から2本の伝送線を介して電流信号の供給を受け各内部回路手段に供給するための一定の電源電圧を生成する定電圧手段と、各種の物理量を測定し、この測定値に応じたアナログ信号を出力するセンサ手段と、このセンサ手段からのアナログ信号を第1デジタル信号に変換するA/D変換手段と、このA/D変換手段からの第1デジタル信号を所定の信号処理を行って第2デジタル信号に変換するプロセッサである信号処理手段と、この信号処理手段からの第2デジタル信号をアナログの電圧信号に変換するD/A変換手段と、このD/A変換手段からの電圧信号を前記電流信号に変換する電圧/電流変換手段とを有し、この電圧/電流変換手段からの電流信号が前記伝送線を介して前記負荷側に伝送される2線式伝送器において、前記信号処理手段は、制御信号の出力レベルに応じてオフ又はオンとなるスイッチと、前記電源電圧が前記スイッチ又は抵抗器を介して供給される第1コンデンサと、前記第1コンデンサの充電電圧が基準電圧よりも高くなった場合に前記制御信号としての出力レベルを切り替える比較器と、前記第1コンデンサよりも静電容量が小さく、前記電源電圧が直接供給される第2コンデンサと、を備えることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、2線式伝送器の起動時に、第1コンデンサよりも容量が小さいことで第2コンデンサは第1コンデンサよりも早い時間で満充電となることによって、2線式伝送器内部回路の初期化動作を早く行うことが可能となる。この第2コンデンサへの充電中に、第1コンデンサの充電電圧が基準電圧よりも高くなるとオペアンプの出力側の制御信号が「H」となり、スイッチがオンとなる。この時、スイッチをオンにして第1コンデンサを直接電源電圧のラインに接続することで、そのラインには見かけ上、第1コンデンサと第2コンデンサとが並列接続された状態となるので、電源電圧も安定する。つまり、信号処理手段であるプロセッサを介さず、電源起動後に自動的にスイッチをオンすることができる。従って、マイクロプロセッサの誤動作等に影響されることがない。また、起動時は抵抗器により第1コンデンサへの流入電流を制限し、充電完了後は、使用回路に対して、この抵抗器を介さないで電力供給するので損失が小さい供給系統を実現できる利点も得られる。従って、起動を早めて、信号処理手段による各回路の初期化動作を早く開始できるため、2線式伝送器全体としての起動時間を早めることができる。
【0026】
本発明において、前記電源電圧が供給される各種回路と当該電源電圧の出力部との間に第2スイッチを接続し、当該第2スイッチは、前記電源電圧が前記所定値以下の場合にはオフし、前記所定値以上の場合にはオンとなる電源制御手段、を更に備えることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、信号処理手段による電源電圧の安定化確認後に、第2スイッチをオンとして電源制御手段に接続される各種回路を動作開始状態とするので、これを信号処理手段の初期化動作と共に行うことができ、このため起動処理を更に早めることができる。
【0028】
本発明において、前記電源電圧が供給される各種回路と当該電源電圧の出力部との間に、前記制御信号の出力レベルに応じてオフ又はオンとなる第2スイッチを接続し、当該第2スイッチは、前記比較器によって切り替えられた前記制御信号としての出力レベルに応じてオフ又はオンとなる電源制御手段、を更に備えることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、信号処理手段であるプロセッサを介さず、電源起動後に自動的にスイッチをオンとして電源電圧を各種回路に供給することができる。これを信号処理手段の初期化動作と共に行うことができ、このため起動処理を更に早めることができる。また、マイクロプロセッサを用いないのでマイクロプロセッサの誤動作等に影響されることがない。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、電源投入後の起動及び初期化が完了するまでの立ち上げ時間を早めることができる2線式伝送器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る2線式伝送器の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る2線式伝送器の容量充電制御機能の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る2線式伝送器の充電時の動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る2線式伝送器の容量充電制御機能の他の構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態に係る2線式伝送器の電源制御回路の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の2線式伝送器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。但し、本明細書の全図において同一部分には同一符号を付し、その説明を適時省略する。
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る2線式伝送器20の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る2線式伝送器20は、外部装置である受信計器2に2本の伝送路19で接続されており、センサ回路11と、A/D変換回路12と、容量充電制御機能23aを有する信号処理回路23と、メモリ回路14と、表示回路15と、定電圧回路16と、D/A変換回路17と、電圧/電流変換回路18と、電源制御回路24と、リセット回路25とを備えて構成されている。
【0033】
ここで、一般的に2線式伝送器は、その起動時にクロックが安定化するための時間、メモリ領域のクリア、使用するレジスタの初期化、使用する入出力ポートの処理、プログラムのロードなどの伝送器内部回路の初期化の時間が必要になる。この初期化の間は、センサ回路11で高精度の測定を行なうわけではないので、電源安定度は必要にならない。
【0034】
そこで、本実施形態の2線式伝送器20では、起動時に内部回路初期化のための電源電圧VDDを出来るだけ早く起動させ、回路の初期化処理を早く開始させ、回路初期化開始後に電源を安定化させるためのバイパスコンデンサに充電させることで、回路初期化完了時までに電源電圧VDDを安定化させるようにする。これによって2線式伝送器20全体としての起動時間を高速化することを目的とする。
【0035】
本実施形態の2線式伝送器20が従来構成と比べて異なる点は、従来の信号処理回路13に代え、容量充電制御機能23aを有する信号処理回路23を備え、更に電源制御回路24及びリセット回路25を備えた点にある。
【0036】
電源制御回路24は、2線式伝送器20の各回路の電源のオン/オフを指示するものであり、2線式伝送器20の起動時に電源を投入する必要の無い回路、例えば表示回路15やセンサ回路11等を停止させておく制御を行う。
【0037】
リセット回路25は、信号処理回路23としてのマイクロプロセッサの起動又は停止を行うトリガとしてのリセット信号RSを出力するものであり、信号処理回路23が停止時にリセット信号RTが入力されると起動する。一方、信号処理回路23が動作時にリセット信号RTが入力されると停止するようになっている。
【0038】
信号処理回路23は、例えばマイクロプロセッサによって実現され、センサ回路11で測定されるプラント等の圧力や温度等の物理量であるプロセス変数を、4〜20mAの統一信号に対応するデジタル信号に変換してD/A変換回路17へ出力し、また、表示回路15に表示する内容の指示や、メモリ回路14に対してデータの読み出し、書き込みを行う。また、信号処理回路23は、図2に示すように、外部にクロック発振器23bを備える。
【0039】
容量充電制御機能23aは、信号処理回路23の初期化動作を従来よりも速く行うための制御を行うものであり、図2に示すように、プルダウン抵抗器R1と、半導体スイッチSW1と、流入電流制限抵抗器R2と、電源安定化コンデンサ(単にコンデンサともいう)C1と、起動コンデンサ(単にコンデンサともいう)C2とを備えて構成されている。
【0040】
電源安定化コンデンサC1は1〜10μFの静電容量(単に容量ともいう)を持ち、起動コンデンサC2は、電源安定化コンデンサC1の1/10以下の0.1μF程度の容量を持つ。半導体スイッチSW1は、例えば電界効果トランジスタ(FET)を使用して構成され、信号処理回路23のI/Oポートの出力電圧VS0の「H」又は「L」レベルに応じてオン又はオフ動作を行う。プルダウン抵抗器R1は、I/Oポートの出力電圧VS0を「L」に固定するためのものであり、ノイズなどによって「L」のスイッチング信号VS0が「H」とならないように「L」状態を安定化させるものである。
【0041】
従来であれば、起動コンデンサC2がないので電源安定化コンデンサC1に充電が行われ、信号処理回路23に接続される回路の動作可能電圧に達しなければ、回路は起動できないようになっていた。この起動可能とする容量まで充電する時間は、電源安定化コンデンサC1の容量値に比例している。
【0042】
本実施形態では、起動直後から電源安定化コンデンサC1には充電せず、起動コンデンサC2に充電するようにした。このコンデンサC2への充電は、容量がコンデンサC1に比べ1/10以下なので、コンデンサC2への充電時間はコンデンサC1に比べ10倍以上早い。このコンデンサC2への満充電よって、2線式伝送器の起動時にクロックが安定化するための時間、メモリ領域のクリア、使用するレジスタの初期化、使用する入出力ポートの処理、プログラムのロードなどの伝送器内部回路の初期化動作を行うことを可能とした。
(実施形態の動作)
以下、図3に示す本実施形態に係る2線式伝送器20の動作について、図3のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0043】
まず、受信計器2の図示せぬスイッチオンにして電源2aを2線式伝送器20に供給する(ステップS1)。この際、信号処理回路23が起動していないのでI/Oポートの出力電圧VS0は「L」レベルとなっており、半導体スイッチSW1はオフ状態となっている。上記電源2aの供給によって2線式伝送器20の定電圧回路16の電源電圧VDDが徐々に上昇する(ステップS2)。この上昇する電源電圧VDDが起動コンデンサC2に充電される(ステップS3)。ここで、コンデンサC2の容量はコンデンサC1の1/10以下なので素早い充電が行われ、早く満充電となる(ステップS4)。この満充電よって、信号処理回路23としてのマイクロプロセッサにおいて、クロック信号CKが安定化するための時間、メモリ回路14のメモリ領域のクリア、使用するレジスタの初期化、使用するI/Oポートの処理、プログラムのロードなどの初期化動作が行われる。
【0044】
次に、電源電圧VDDの上昇によって電源電圧VDDが所定値以上となったか否かが判定される(ステップS5)。所定値以上になると、クロック発振器23bからクロック信号CKが安定し、この安定した例えば20MHzのクロック信号CKが信号処理回路23に供給される(ステップS6)。
【0045】
一方、電源電圧VDDが所定値以上になるとリセット回路25がリセット信号RTを出力する(ステップS7)。この出力されたリセット信号RTが信号処理回路23に入力されると、信号処理回路23としてのマイクロプロセッサが一旦リセットされた後、プログラムに従って動作する(ステップS8)。
【0046】
この動作によって信号処理回路23のI/Oポートの出力電圧VS0が「H」となり(ステップS9)、半導体スイッチSW1がオン状態となる(ステップS10)。この半導体スイッチSW1のオンによって流入電流制限抵抗器R2を介して電源安定化コンデンサC1に電源電圧VDDが供給され、充電が開始される(ステップS11)。この際、コンデンサC1への流入電流が流入電流制限抵抗器R2によって制限されるので、コンデンサC1に急激に充電電流が流れないことにより電源電圧VDDの低下が防止される。そして、電源安定化コンデンサC1が満充電になると、電源電圧VDDが安定化状態となる(ステップS12)。
【0047】
この電源電圧VDDが安定状態となると、信号処理回路23は所定の処理動作を開始する。この際、上記ステップS4での起動コンデンサC2の満充電よって、マイクロプロセッサにおいて、クロック信号CKが安定化するための時間、メモリ回路14のメモリ領域のクリア、使用するレジスタの初期化、使用するI/Oポートの処理、プログラムのロードなどの初期化動作が行われているので、この初期化がステップS12の電源電圧VDDの安定化状態となる前に終わっている場合もある。
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る2線式伝送器20は、負荷側である受信計器2から2本の伝送線19を介して電流信号の供給を受け各内部回路に供給するための一定の電源電圧VDDを生成する定電圧回路16と、各種の物理量を測定し、この測定値に応じたアナログ信号を出力するセンサ回路11と、このセンサ回路11からのアナログ信号を第1デジタル信号に変換するA/D変換回路12と、このA/D変換回路12からの第1デジタル信号を所定の信号処理を行って第2デジタル信号に変換するマイクロプロセッサである信号処理回路23と、この信号処理回路23からの第2デジタル信号をアナログの電圧信号に変換するD/A変換回路17と、このD/A変換回路17からの電圧信号を電流信号に変換する電圧/電流変換回路18とを有し、この電圧/電流変換回路18からの電流信号が伝送線19を介して受信計器2に伝送されるものである。
【0048】
本実施形態の特徴は、信号処理回路23が、電源電圧VDDが所定値以上となった際に「L」から「H」レベルとなる入出力ポート出力電圧としてのI/Oポート出力電圧VS0の「L」でオフ、「H」でオンとなる半導体スイッチSW1と、電源電圧VDDが半導体スイッチSW1を介して供給される第1コンデンサとして電源安定化コンデンサC1と、電源安定化コンデンサC1よりも静電容量が小さく、電源電圧VDDが直接供給される第2コンデンサとしての起動コンデンサC2とを備える構成としてことにある。
【0049】
この構成によれば、2線式伝送器20が受信計器2から2本の伝送線19を介して電源電圧VDDに応じた電流信号の供給を受け、定電圧回路16からの電源電圧VDDが上昇中に、起動コンデンサC2に充電が行われる。この起動コンデンサC2への充電は、電源安定化コンデンサC1に比べ容量が小さいのでその分早く行われ、満充電となるのも早い。この満充電によって、2線式伝送器の起動時にクロックが安定化するための時間、メモリ領域のクリア、使用するレジスタの初期化、使用する入出力ポートの処理、プログラムのロードなどの伝送器内部回路の初期化動作を早く行うことが可能となる。つまり、従来の電源安定化コンデンサC1のみの場合よりも電源起動時の初期化を早く行うことができる。
【0050】
また、電源電圧VDDが所定値以上になるとI/Oポートの出力電圧VS0が「L」から「H」となって半導体スイッチSW1がオンするので、電源電圧VDDが電源安定化コンデンサC1に供給され、充電が行われる。この充電により電源安定化コンデンサC1が満充電になると、電源電圧VDDが安定状態となり、信号処理回路23が所定の処理動作を開始する。
【0051】
また、半導体スイッチSW1と電源安定化コンデンサC1との間に流入電流制限抵抗器R2を接続した。この構成によれば、半導体スイッチSW1のオンによって電源安定化コンデンサC1に電源電圧VDDが供給される際に、電源安定化コンデンサC1への流入電流が流入電流制限抵抗器R2によって制限されるので、電源安定化コンデンサC1に急激に充電電流が流れて電源電圧VDDが低下するといったことを防止することができる。
(実施形態の変形例1)
図4は、本実施形態の変形例1に係る2線式伝送器20の容量充電制御機能23cの構成を示すブロック図である。即ち、上記実施形態の図2に示した容量充電制御機能23aを図4に示した構成の容量充電制御機能23cとした。
【0052】
容量充電制御機能23cは、定電圧回路16の電源電圧VDDの出力部に、一端が接地されている起動コンデンサC2の他端が接続され、また、その電源電圧VDDの出力部と、一端が接地されている電源安定化コンデンサC1の他端との間に、半導体スイッチSW1及び流入電流制限抵抗器R2が並列に接続されている。電源安定化コンデンサC1と流入電流制限抵抗器R2との接続点にはオペアンプ(比較器)U1の非反転入力端が接続され、反転入力端には負極側が接地された直流電源B1の正極側が接続されている。オペアンプU1の出力端は、プルダウン抵抗器R1を介して接地されると共に半導体スイッチSW1のオン/オフの切替制御部に接続され、この切替制御部にオペアンプU1からの「L」又は「H」レベルの制御信号としてのスイッチング信号VS1が供給されるようになっている。
【0053】
また、信号処理回路23の電源端子が、電源電圧VDDの出力部、半導体スイッチSW1、流入電流制限抵抗器R2及び起動コンデンサC2に接続されている。
【0054】
このような構成において、起動時には電源電圧VDDで起動コンデンサC2が最初に充電される。同時に流入電流制限抵抗器R2を介して電源安定化コンデンサC1も充電されるが、この際、抵抗器R2と電源安定化コンデンサC1との時定数によって徐々に充電される。このコンデンサC1が徐々に充電されることと、コンデンサC1よりも容量が大幅に小さいことでコンデンサC2はC1よりも大幅に早い時間で満充電となる。この満充電によって、2線式伝送器の起動時にクロックが安定化するための時間、メモリ領域のクリア、使用するレジスタの初期化、使用する入出力ポートの処理、プログラムのロードなどの伝送器内部回路の初期化動作を早く行うことが可能となる。
【0055】
このコンデンサC2への充電中は、オペアンプU1の非反転入力側のコンデンサC1の電圧よりも基準電圧VRが高いので、オペアンプU1の出力側のスイッチング信号VS1は「L」となっている。このため半導体スイッチSW1はオフのままである。その後、コンデンサC1の充電が進み充電電圧が高くなると、基準電圧VRよりも高くなってオペアンプU1の出力側のスイッチング信号VS1が「H」となり、半導体スイッチSW1がオンとなる。
【0056】
この時、コンデンサC1の電圧は安定しており、且つ電源電圧VDDの充電も完了している。従って、半導体スイッチSW1をオンにしてコンデンサC1を直接電源電圧VDDのラインに接続することで、そのラインには見かけ上、コンデンサC1とC2とが並列接続された状態となるので、電源電圧VDDも安定する。つまり、コンデンサC1は流入電流制限抵抗器R2を介さない通常の容量として機能する。
【0057】
このような容量充電制御機能23cのメリットは、信号処理回路23であるマイクロプロセッサを介さず、電源起動後に自動的に半導体スイッチSW1をオンすることができる点にある。従って、マイクロプロセッサの誤動作等に影響されることがない。
【0058】
また、起動時は流入電流制限抵抗器R2によりコンデンサC1への流入電流を制限し、充電完了後は、使用回路に対して、この抵抗器R2を介さないで電力供給するので損失が小さい供給系統を実現できる利点も得られる。従って、この変形例1でも起動を早めて、信号処理回路23による各回路の初期化動作を早く開始できるため、2線式伝送器20全体としての起動時間を早めることができる。
(実施形態の変形例2)
図5は、本実施形態の変形例2に係る2線式伝送器20の電源制御回路24の構成を示すブロック図である。この図5に示す電源制御回路24は、定電圧回路16の一方のDC/DCコンバータ16aの出力端と表示回路15との間に接続された半導体スイッチSW2と、同出力端とセンサ回路11との間に接続された半導体スイッチSW3と、各々の半導体スイッチ(第2スイッチ)SW2,SW3の制御信号が入力される端子側に接続されたプルダウン抵抗器R4,R3とを備えて構成されている。各制御信号としては、信号処理回路23の各I/Oポートの出力電圧VS2,VS3が制御信号として供給されるようになっている。
【0059】
このような構成において、各出力電圧VS2,VS3は「L」の場合に、各半導体スイッチSW2,SW3はオフとなっており、「H」に切り替わった場合にオンとなる。このオンとするタイミングは、信号処理回路23の初期化処理が終了し、電源安定化コンデンサC1への受電が満充電となって完了した後、言い換えれば信号処理回路23による電源電圧VDDの安定化確認後に、各半導体スイッチSW2,SW3をオンとして電源制御回路24に接続される表示回路15及びセンサ回路11を動作開始状態とする。
【0060】
このように信号処理回路23の各I/Oポートの出力電圧VS2,VS3で半導体スイッチSW2,SW3をオン/オフして、電源制御回路24に接続された表示回路15及びセンサ回路11を動作/未動作状態とするので、これを信号処理回路23の初期化動作と共に行うことができ、このため起動処理を更に早めることができる。
【0061】
また、上記では信号処理回路23と容量充電制御機能23aとを図2に示した構成を前提としたが、図4に示した容量充電制御機能23cの構成で半導体スイッチSW2,SW3をオン/オフするようにしてもよい。この場合、図5と同様に接続された各半導体スイッチSW2,SW3を、図4に示した電源安定化コンデンサC1の充電電圧が基準電圧VRよりも高くなった場合に出力電圧のレベルが切り替わるオペアンプU1の出力電圧(VS1)に応じてオン/オフする。
【0062】
この構成によれば、信号処理回路23であるプロセッサを介さず、電源起動後に自動的に各半導体スイッチSW2,SW3をオンとして電源電圧VDDを表示回路15及びセンサ回路11に供給することができる。これを信号処理回路23の初期化動作と共に行うことができ、このため起動処理を更に早めることができる。また、信号処理回路23としてのマイクロプロセッサを用いないのでマイクロプロセッサの誤動作等に影響されることがない。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲予測は上記実施形態に記載の範囲予測には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲予測に含まれ得ることが、特許請求の範囲予測の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0064】
11・・センサ回路、12・・A/D変換回路、14・・メモリ回路、15・・表示回路、16・・定電圧回路、17・・D/A変換回路、18・・電圧/電流変換回路、23・・信号処理回路、23a,23c・・容量充電制御機能、23b・・クロック発振器、24・・電源制御回路、25・・リセット回路、R1,R4,R3・・プルダウン抵抗器、R2・・流入電流制限抵抗器、SW1,SW2,SW3・・半導体スイッチ、C1・・電源安定化コンデンサ、C2・・起動コンデンサ、VDD・・電源電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷側から2本の伝送線を介して電流信号の供給を受け各内部回路手段に供給するための一定の電源電圧を生成する定電圧手段と、各種の物理量を測定し、この測定値に応じたアナログ信号を出力するセンサ手段と、このセンサ手段からのアナログ信号を第1デジタル信号に変換するA/D変換手段と、このA/D変換手段からの第1デジタル信号を所定の信号処理を行って第2デジタル信号に変換するプロセッサである信号処理手段と、この信号処理手段からの第2デジタル信号をアナログの電圧信号に変換するD/A変換手段と、このD/A変換手段からの電圧信号を前記電流信号に変換する電圧/電流変換手段とを有し、この電圧/電流変換手段からの電流信号が前記伝送線を介して前記負荷側に伝送される2線式伝送器において、
前記信号処理手段は、
前記電源電圧が所定値以下の場合にはオフし、前記所定値以上の場合にはオンとなるスイッチと、
前記電源電圧がスイッチを介して供給される第1コンデンサと、
前記第1コンデンサよりも静電容量が小さく、前記電源電圧が直接供給される第2コンデンサと、
を備えることを特徴とする2線式伝送器。
【請求項2】
前記スイッチと前記第1コンデンサとの間に抵抗器を接続したことを特徴とする請求項1に記載の2線式伝送器。
【請求項3】
負荷側から2本の伝送線を介して電流信号の供給を受け各内部回路手段に供給するための一定の電源電圧を生成する定電圧手段と、各種の物理量を測定し、この測定値に応じたアナログ信号を出力するセンサ手段と、このセンサ手段からのアナログ信号を第1デジタル信号に変換するA/D変換手段と、このA/D変換手段からの第1デジタル信号を所定の信号処理を行って第2デジタル信号に変換するプロセッサである信号処理手段と、この信号処理手段からの第2デジタル信号をアナログの電圧信号に変換するD/A変換手段と、このD/A変換手段からの電圧信号を前記電流信号に変換する電圧/電流変換手段とを有し、この電圧/電流変換手段からの電流信号が前記伝送線を介して前記負荷側に伝送される2線式伝送器において、
前記信号処理手段は、
制御信号の出力レベルに応じてオフ又はオンとなるスイッチと、
前記電源電圧が前記スイッチ又は抵抗器を介して供給される第1コンデンサと、
前記第1コンデンサの充電電圧が基準電圧よりも高くなった場合に前記制御信号としての出力レベルを切り替える比較器と、
前記第1コンデンサよりも静電容量が小さく、前記電源電圧が直接供給される第2コンデンサと、
を備えることを特徴とする2線式伝送器。
【請求項4】
前記電源電圧が供給される各種回路と当該電源電圧の出力部との間に第2スイッチを接続し、当該第2スイッチは、前記電源電圧が前記所定値以下の場合にはオフし、前記所定値以上の場合にはオンとなる電源制御手段、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の2線式伝送器。
【請求項5】
前記電源電圧が供給される各種回路と当該電源電圧の出力部との間に、前記制御信号の出力レベルに応じてオフ又はオンとなる第2スイッチを接続し、当該第2スイッチは、前記比較器によって切り替えられた前記制御信号としての出力レベルに応じてオフ又はオンとなる電源制御手段、を更に備えることを特徴とする請求項3記載の動作2線式伝送器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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