説明

2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法

【課題】R−1214yaを水素と反応させて得られる生成物等、R−1234yfを主成分とし、種々のハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物が含まれる混合物から、前記不純物を効率的に除去する。
【解決手段】R−1234yfを主成分とし、R−1234yfを除くハイドロハロアルケン不純物、およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物を、有効細孔径が5〜10Åの分子篩に接触させて前記不純物の少なくとも一部を除去する精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFCF=CH、R−1234yf)は、塩素を含まないため、冷媒等に使用されるクロロフルオロカーボン類等のフロン類の代替化合物として有用である。
R−1234yfの製造方法としては、例えば、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFCF=CCl、R−1214ya)を水素と反応させて還元することでR−1234yfを得る方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、R−1214yaを水素と反応させて還元した生成物には、R−1234yfに加えて、3,3−ジフルオロプロペン等のハイドロハロアルケン不純物、および1,1,1,2−テトラフルオロプロパン等のハイドロハロアルカン不純物が含まれている。生成物からR−1234yfを精製する方法としては、蒸留精製が広く使用されている。しかし、前記不純物のうち、R−1234yfと構造が似ているものは沸点が近いため、蒸留精製による分離が困難である。
【0004】
一方、ハイドロハロアルケン、ハイドロハロアルカン等を含む混合物から、目的の化合物を蒸留精製以外の方法で精製する方法として、分子篩を使用する方法が知られている。具体的には、特許文献2に、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等の飽和ハイドロフルオロカーボンと、R−1234yf等のハイドロハロアルケン不純物を含む生成物を、最大寸法が7Åより大きく10Åまでの気孔を有する分子篩に接触させ、前記ハイドロハロアルケン不純物を除去する精製方法が示されている。しかし、特許文献2に示されている方法は、R−1234yfの精製方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/060614号
【特許文献2】特許第4121745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、R−1214yaを水素と反応させて得られる生成物等、R−1234yfを主成分とし、種々のハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物が含まれる混合物から、前記不純物を効率的に除去できるR−1234yfの精製方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主成分とし、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを除くハイドロハロアルケン不純物、およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物を、
有効細孔径が5〜10Åの分子篩に接触させて前記不純物の少なくとも一部を除去する、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
[2]前記ハイドロハロアルケン不純物がハイドロハロプロペンを含む前記[1]に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
[3]前記ハイドロハロアルカン不純物がハイドロハロプロパンおよびハイドロハロエタンの少なくとも一方を含む前記[1]または[2]に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
[4]前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、3,3−ジフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペンおよび1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンからなる群から選ばれる1種以上の少なくとも一部を除去する前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
[5]前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンの少なくとも一部を除去する前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
[6]前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、3,3,3−トリフルオロプロペンの少なくとも一部を除去する前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
[7]前記混合物から、前記ハイドロハロアルカン不純物として、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン、1,1,1−トリフルオロプロパンおよび1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンからなる群から選ばれる1種以上の少なくとも一部を除去する前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
[8]前記分子篩に接触させる混合物がガス状である前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のR−1234yfの精製方法によれば、R−1234yfを主成分とし、種々のハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物が含まれる混合物から、前記不純物を効率的に除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(R−1234yf)の精製方法は、R−1234yfを主成分とし、R−1234yfを除くハイドロハロアルケン不純物(以下、単に「ハイドロハロアルケン不純物」という。)、およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物を、有効細孔径が5〜10Åの分子篩(以下、「分子篩A」という。)に接触させて、前記不純物の少なくとも一部を除去する方法である。
【0010】
本発明の精製方法は、分子篩Aに接触させる際の前記混合物の状態の違いにより、下記方法(α)または方法(β)が挙げられる。
(α)分子篩Aに、ガス状の前記混合物を接触させる方法。
(β)分子篩Aに、液状の前記混合物を接触させる方法。
【0011】
(方法(α))
方法(α)としては、例えば、分子篩Aを充填した吸着層を形成し、該吸着層に混合物ガスを接触させる方法が挙げられる。
方法(α)における精製は、回分式でもよく、連続式でもよい。
分子篩Aの有効細孔径は、5〜10Åである。分子篩Aの有効細孔径が前記範囲内であれば、混合物から不純物を効率的に除去でき、高純度なR−1234yfが得られる。分子篩Aの有効細孔径は、不純物の除去効率が高い点から、7〜10Åが好ましい。分子篩Aの有効細孔径が前記範囲内において大きいほど不純物の除去効率が高くなる。
分子篩Aの有効細孔径は、定容量式ガス吸着法により測定される細孔径である。前記定容量式ガス吸着法に使用する吸着ガスとしては、N、CO、CH、H等が挙げられる。
【0012】
分子篩Aとしては、活性炭、セライト、シリカゲル、ゼオライト等の分子篩等が挙げられる。なかでも、不純物の除去効率の点から、ゼオライトが好ましい。
ゼオライトが有するカチオン種は、ナトリウムイオン、カルシウムイオンが好ましい。
ゼオライトとしては、例えば、ゼオライトMS−13X(有効細孔径(公称気孔直径):10Å、NaX型)、ゼオライトMS−5A(有効細孔径(公称気孔直径):5Å、CaA型)、ゼオライトF−9(有効細孔径(公称気孔直径):9Å、CaX型)等が挙げられる。
【0013】
分子篩Aは、精製に使用する前に、100〜400℃の乾燥ガスにより加熱処理するか、減圧下での加熱処理することが好ましい。これにより、分子篩Aが活性化され、不純物の除去効率が向上する。
【0014】
吸着層における分子篩Aの充填密度は、0.1g/cm以上が好ましく、0.25g/cm以上がより好ましい。分子篩Aの充填密度が下限値以上であれば、単位容積あたりの分子篩Aの充填量が多くなり、混合物ガスの処理量を多くできるため処理効率が向上する。
吸着層は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。吸着層が2つ以上の場合、それらの吸着層は並列であっても直列であってもよい。
【0015】
精製時の吸着層の温度は、−10〜70℃が好ましく、−10〜30℃がより好ましい。吸着層の温度が下限値以上であれば、冷却に要するエネルギーがより少なくてすみ、設備等も簡便になる。吸着層の温度が上限値以下であれば、分子篩Aの吸着効率が向上し、高純度なR−1234yfが得られやすい。
【0016】
精製時の圧力(絶対圧、以下同様)は、10〜2000kPaが好ましく、100〜1000kPaがより好ましい。圧力が下限値以上であれば、不純物の吸着効率が向上する。圧力が上限値以下であれば、取り扱い性がよく、設備等が簡便ですむ。
【0017】
吸着層に流通させる混合物ガスの流量は、5〜100mL/分が好ましく、20〜50mL/分がより好ましい。混合物ガスの流量が下限値以上であれば、精製により得られるR−1234yfの量がより多くなる。混合物ガスの流量が上限値以下であれば、不純物の除去効率が向上する。
【0018】
また、不純物の除去効率の点から、吸着層に流通させる混合物ガス中に含まれる不純物の総量は、吸着層中の分子篩Aの総量に対して、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。つまり、方法(α)においては、吸着層への混合物ガスの総流通量を、前記不純物の分子篩Aに対する割合が前記上限値以下となるように調節して精製することが好ましい。
【0019】
方法(α)に使用する反応器としては、分子篩Aを充填して吸着層を形成できる公知の反応器が挙げられる。
反応器の材質としては、例えば、ガラス、鉄、ニッケル、またはこれらを主成分とする合金、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素樹脂等が挙げられる。
【0020】
(方法(β))
方法(β)では、分子篩Aに、前記混合物を液体の状態で接触させる。
方法(β)における分子篩Aは、方法(α)で挙げたものと同じものが使用できる。
方法(β)における精製は、回分式でもよく、連続式でもよい。
【0021】
精製時の温度は、−30〜70℃が好ましく、−30〜40℃がより好ましい。精製時の温度が下限値以上であれば、不純物の除去速度が向上する。精製時の温度が上限値以下であれば、不純物の除去効率が向上する。
精製時の圧力は、100〜2000kPaが好ましく、100〜1000kPaがより好ましい。精製時の圧力が下限値以上であれば、不純物の除去速度が向上する。精製時の圧力が上限値以下であれば、不純物の除去効率が向上する。
精製時の分子篩Aと混合物との接触時間は、回分式でも連続式でも2時間以上が好ましい。
【0022】
また、不純物の除去効率が向上する点から、分子篩Aに接触させる混合物中の不純物の総量は、分子篩Aの総量に対して、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。つまり、方法(β)においては、分子篩Aに接触させる混合物の液量を、前記不純物の分子篩Aに対する割合が前記上限値以下となるように調節して精製することが好ましい。
【0023】
精製に使用する反応器としては、所望の温度、圧力で、分子篩Aに混合物を液体状態で接触させられるものであればよく、オートクレーブ等が挙げられる。
【0024】
本発明の精製方法では、不純物の除去効率がより高い点から、方法(β)よりも方法(α)の方が好ましい。また、設備が簡便になる点では、精製対象となる混合物がガス状で得られる場合は方法(α)、混合物が液状で得られる場合は方法(β)を採用することが有利である。
【0025】
本発明の精製方法の精製の対象となる混合物は、R−1234yfを主成分として含む。混合物がR−1234yfを主成分とするとは、混合物中のR−1234yfの含有量が90体積%以上であることを意味する。
前記混合物中のR−1234yfの含有量は、高純度なR−1234yfが得られやすい点から、95体積%以上が好ましく、98体積%以上がより好ましい。
【0026】
また、前記混合物は、ハイドロハロアルケン不純物とハイドロハロアルカン不純物を含む。ハイドロハロアルケンとは、水素原子とハロゲン原子の両方を有する、R−1234yf以外のアルケンである。また、ハイドロハロアルカンとは、水素原子とハロゲン原子の両方を有するアルカンである。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0027】
混合物中のハイドロハロアルケン不純物は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
本発明の精製方法は、R−1234yf(沸点:−29℃)と沸点が近い不純物であっても効率的に除去できるため、ハイドロハロアルケン不純物として、R−1234yfと沸点が近いハイドロハロプロペンを除去対象とすることが有効である。なかでも、前記ハイドロハロプロペンとして、3,3,3−トリフルオロプロペン(CFCH=CH、R−1243zf:沸点−22℃)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(CFCF=CHF、R−1225ye:沸点−19℃)および3,3−ジフルオロプロペン(CHFCH=CH、R−1252zf:沸点−27℃)からなる群から選ばれる1種以上を除去対象とすることが有効である。特に、本発明の精製方法は、R−1225yeの除去効率が高いので、ハイドロハロアルケン不純物として、R−1225yeを除去対象とすることが有効である。また、本発明の精製方法は、R−1234yfと沸点が非常に近く蒸留精製で分離不可能なR−1243zfを除去対象とすることが有効である。
【0028】
混合物中のハイドロハロアルカン不純物は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
また、本発明の精製方法は、R−1234yfと沸点が近い不純物であっても効率的に除去できるため、ハイドロハロアルカン不純物として、ハイドロハロプロパンおよびハイドロハロエタンの少なくとも一方を除去対象とすることが有効である。ハイドロハロプロパンとしては、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(CFCHFCH、R−254eb:沸点−6℃)、1,1,1−トリフルオロプロパン(CFCHCH、R−263fb:沸点−13℃)等が挙げられる。ハイドロハロエタンとしては、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(CFCHClF、R−124:沸点−12℃)等が挙げられる。本発明の精製方法は、ハイドロハロアルカン不純物として、R−254eb、R−263fbおよびR−124からなる群から選ばれる1種以上の少なくとも一部を除去対象とすることが好ましい。
【0029】
R−1234yfを主成分とし、前記ハイドロハロアルケン不純物およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物としては、例えば、公知の方法により、触媒の存在下、R−1214yaを水素と反応させて還元することにより得られる生成物等が挙げられる。
【0030】
R−1214yaを水素還元した生成物等、目的とするR−1234yfにハイドロハロアルケン不純物とハイドロハロアルカン不純物が含まれている場合、前述のように、蒸留精製では沸点の近い不純物の除去が困難である。これに対し、本発明者等は、有効細孔径が5〜10Åの分子篩Aが、R−1234yfは吸着せず、他のハイドロハロアルケン不純物とハイドロハロアルカン不純物を吸着することを見出した。本発明の精製方法によれば、R−1234yfを主成分とする混合物を分子篩Aに接触させることで、該混合物に含まれるR−1234yfと沸点の近い不純物も吸着除去でき、R−1234yfを精製できる。
【0031】
また、本発明の精製方法に使用する分子篩Aは、水分も吸着除去できる。そのため、本発明の精製方法は、ハイドロハロアルケン不純物とハイドロハロアルカン不純物に加えて、不純物として水分が含まれている混合物を精製の対象とすることも有効である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1〜3は実施例であり、例4は比較例である。
[ガス組成]
本実施例で使用した混合物ガス、および精製後のガスの組成は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0033】
[例1]
内径4mm、長さ1mのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)製のチューブに、分子篩AとしてゼオライトMS−13X(有効細孔径(公称気孔直径):10Å)の粒状ペレット3.6gを充填した。その後、前記チューブ内の吸着層に、表1に示す組成のR−1234yfを主成分とする混合物ガスの3gを流量30mL/分で流通させてR−1234yfを精製した。精製時の吸着層の温度は20℃、圧力は101kPaとした。精製後のガスの組成を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1における略号は、それぞれ以下の化合物を意味する。以下の表についても同様である。
R−1234yf:2,3,3,3−テトラフルオロプロペン
R−1243zf:3,3,3−トリフルオロプロペン
R−1225ye:1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン
R−1252zf:3,3−ジフルオロプロペン
R−254eb:1,1,1,2−テトラフルオロプロパン
R−263fb:1,1,1−トリフルオロプロパン
R−124:1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン
【0036】
[例2]
内径4mm、長さ1mのPFA製のチューブに、分子篩AとしてゼオライトMS−5A(有効細孔径(公称気孔直径):5Å)の粒状ペレット3.8gを充填した。その後、前記チューブ内の吸着層に、表2に示す組成のR−1234yfを主成分とするガスの3gを流量30mL/分で流通させてR−1234yfを精製した。精製時の吸着層の温度は20℃、圧力は101kPaとした。精製後のガスの組成を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
[例3]
50mLのSUS製オートクレーブに、分子篩AとしてゼオライトMS−13X(有効細孔径(公称気孔直径):10Å)の粒状ペレット3.8gを充填し、該オートクレーブ内に、表3に示す組成のR−1234yfを主成分とする液の15.8gを加え、2時間、前記分子篩に接触させてR−1234yfを精製した。精製時の温度は20℃、圧力は600kPaとした。精製後のガスの組成を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
[例4]
内径5mm、長さ1mのPFA製のチューブに、分子篩としてゼオライトMS−3A(有効細孔径(公称気孔直径):3Å)の粒状ペレット8.68gを充填し、該チューブ内に、表4に示す組成のHFO−1234yfを主成分とするガスの3gを流量30mL/分で流通させた。また、その時の吸着層の温度は20℃、圧力は101kPaとした。前記流通後のガスの組成を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表1および表2に示すように、分子篩Aに混合物ガスを接触させた例1および例2では、R−1243zf、R−1225ye、R−1252zf、R−254eb、R−263fbおよびR−124の少なくとも一部が除去されており、高純度なR−1234yfが得られた。特にR−1225yeの除去効率が高かった。また、有効細孔径が10Åのゼオライトを使用した例1の方が、有効細孔径が5Åのゼオライトを使用した例2に比べて不純物の除去効率が高かった。
また、表3に示すように、分子篩Aに混合物を液体状態で接触させた例3でも、不純物が効率的に除去され、高純度なR−1223yfが得られた。
一方、有効細孔径3Åのゼオライトを使用した例4では、不純物がほとんど除去されず、R−1234yfの純度が変化しなかった。
以上のように、有効細孔径が5〜10Åの分子篩Aに混合物を接触させることで、不純物を効率的に除去してR−1234yfを精製できた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の精製方法は、R−1234yfと沸点が近い不純物も除去できるため、R−1214yaを水素還元した生成物の精製等に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主成分とし、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを除くハイドロハロアルケン不純物、およびハイドロハロアルカン不純物を含む混合物を、
有効細孔径が5〜10Åの分子篩に接触させて前記不純物の少なくとも一部を除去する、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【請求項2】
前記ハイドロハロアルケン不純物がハイドロハロプロペンを含む請求項1に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【請求項3】
前記ハイドロハロアルカン不純物がハイドロハロプロパンおよびハイドロハロエタンの少なくとも一方を含む請求項1または2に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【請求項4】
前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、3,3−ジフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペンおよび1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンからなる群から選ばれる1種以上の少なくとも一部を除去する請求項1〜3のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【請求項5】
前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンの少なくとも一部を除去する請求項1〜3のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【請求項6】
前記混合物から、前記ハイドロハロアルケン不純物として、3,3,3−トリフルオロプロペンの少なくとも一部を除去する請求項1〜3のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【請求項7】
前記混合物から、前記ハイドロハロアルカン不純物として、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン、1,1,1−トリフルオロプロパンおよび1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンからなる群から選ばれる1種以上の少なくとも一部を除去する請求項1〜6のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【請求項8】
前記分子篩に接触させる混合物がガス状である請求項1〜7のいずれか一項に記載の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。