説明

2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法

【課題】急激な固化等がなく製造が容易で、副生成物が抑制され収率低下が少なく、さらに、低触媒量での合成が可能で廃棄物量を少なくできる2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(2)、


(式中、X1はハロゲン原子を表し、X2及びX3は各々独立にハロゲン原子又はヒドロキシフェニル化合物のフェニル環の水素原子と置換した置換基を示す)で表されるハロゲン化シアヌル化合物と、ヒドロキシフェニル化合物との反応を、ハロゲン化シアヌル化合物のハロゲン原子1当量に対してルイス酸が0.3〜0.7当量の存在下で、反応溶媒としてスルホランを主成分とする溶媒を用いて行う2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法に関し、詳しくは、急激な固化等がなく製造が容易で、副生成物が抑制され収率低下が少なく、さらに、低触媒量での合成が可能で廃棄物量を少なくできる2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省電力化、軽量化等の目的で、液晶やプラズマ等によるフラットパネルディスプレイが普及してきている。これらディスプレイ関連の材料は光学特性をもつ機能フィルムが多数使用されており、これらの材料は紫外線で劣化しやすいため、耐光性向上のために種々の波長域に対して優れた吸収能を持つ紫外線吸収剤への要望が高まっている。
【0003】
このような紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシアリール)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジンや2、4−ビス(2−ヒドロキシアリール)−6−アリール−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジン及び2,4,6−トリス(2,4−ジヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物が知られ、特に、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジンや2,4,6−トリス(2,4−ジヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジンは、長波長域での紫外線吸収能に優れた紫外線吸収剤となるため、偏光板保護フィルム等の長波長域での吸収能が要求される用途に期待されている。
【0004】
そこで、このようなトリアジン化合物を提供することを目的として、特許文献1〜7には、かかるトリアジン化合物の製造方法が開示され、例えば、特許文献1には、ルイス酸として塩化アルミニウムを使用した製造方法が開示され、特許文献2には、溶媒としてベンゼンを用いた製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平09−323980号公報
【特許文献2】英国特許第884802号明細書
【特許文献3】特公昭39−004307号公報
【特許文献4】特公昭42−015700号公報
【特許文献5】特開平09−188666号公報
【特許文献6】特表2006−523197号公報
【特許文献7】特許第2857219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜7に記載の方法で2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンを製造すると、副生成物による目的物の収率が低下したり、生成物の急激な固化により製造が困難であったり、また、精製が困難になったりする問題があった。さらに、これまでの合成方法では、触媒を多量に要するために廃棄物量が多くなり、環境上の問題も懸念されていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、急激な固化等がなく製造が容易で、副生成物が抑制され収率低下が少なく、さらに、低触媒量での合成が可能で廃棄物量を少なくできる2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ハロゲン化シアヌル化合物とヒドロキシフェニル化合物との反応において、溶媒にスルホランを用い、触媒としてルイス酸をハロゲン化シアヌル化合物のハロゲン原子1当量に対して0.3〜0.7当量を使用することにより、急激な固化等がなく製造が容易で、副生成物が抑制され収率低下が少なく、さらに、低触媒量での合成が可能な故に廃棄物量を少なくできる2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法は、
下記一般式(1)、

(式中、R、R及びRは各々独立に水素原子、ヒドロキシル基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、T、T及びTは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表し、Y、Y及びYは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)で表される2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)、

(式中、Xはハロゲン原子を表し、X及びXは各々独立にハロゲン原子又は下記一般式(3)で表される化合物のフェニル環の水素原子と置換した置換基を示す)で表されるハロゲン化シアヌル化合物と、
下記一般式(3)、

(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Tは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表し、Yは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)で表されるヒドロキシフェニル化合物との反応を、
前記ハロゲン化シアヌル化合物のハロゲン原子1当量に対してルイス酸が0.3〜0.7当量の存在下で、反応溶媒としてスルホランを主成分とする溶媒を用いて行うことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法は、前記一般式(1)及び(3)におけるR〜Rがヒドロキシ基であり、T〜Tが水素原子又はメチル基であり、さらにY〜Yが水素原子であることが好ましい。さらにまた、T〜Tがメチル基であることがより好ましい。
【0010】
さらにまた、本発明の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法は、前記一般式(2)におけるX〜Xが塩素原子であることが好ましく、前記ルイス酸が、三塩化アルミニウム(AlCl)であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法は、前記ルイス酸の量が、前記ハロゲン化シアヌル化合物のハロゲン原子1当量に対して、0.4〜0.5当量であることが好ましく、反応温度が60〜100℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、急激な固化等がなく製造が容易で、副生成物が抑制され収率低下が少なく、さらに、低触媒量での合成が可能で廃棄物量を少なくできる2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき、具体的に説明する。
【0014】
先ず、本発明において製造する2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物について説明する。
本発明において、上記一般式(1)におけるR、R及びRは、各々独立に水素原子、ヒドロキシル基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表すものである。かかるR、R及びRにおける炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0015】
また、本発明において、上記一般式(1)におけるT、T及びTは、各々独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表すものである。T、T及びTで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、上記R、R及びRにおける炭素原子数1〜4のアルキル基と同じものが例示される。
【0016】
さらに、上記一般式(1)におけるT、T及びTで表される炭素原子数2〜4のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基及びブテニル基等が挙げられる。
【0017】
本発明において、上記一般式(1)におけるY、Y及びYは、各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表すものである。Y、Y及びYで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、上記R、R及びRにおける炭素原子数1〜4のアルキル基と同じものが例示される。
【0018】
本発明において、上記一般式(1)で表される2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物(以下、「トリアジン化合物」とも称す)としては、より具体的には以下の化合物No.1〜6が挙げられる。ただし、以下の化合物により本発明はなんら制限を受けるものではない。
【0019】
化合物No.1

【0020】
化合物No.2

【0021】
化合物No.3

【0022】
化合物No.4

【0023】
化合物No.5

【0024】
化合物No.6

【0025】
次に、本発明のトリアジン化合物の製造方法に使用する出発物質化合物である上記一般式(2)および(3)で表される化合物について説明する。
本発明において、上記一般式(2)におけるXは、ハロゲン原子を表し、X及びXは、各々独立にハロゲン原子又は上記一般式(3)で表される化合物のフェニル環の水素原子と置換した置換基を示すものである。X、X及びXで表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、特に塩素が反応性及び入手容易性の面で好ましい。
【0026】
また、本発明において、上記一般式(3)におけるRは、水素原子、ヒドロキシル基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Tは、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表し、Yは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表すものである。R,T及びYで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、上記R〜R、T〜T又はY〜Yにおける炭素原子数1〜4のアルキル基と同じものが例示される。
【0027】
さらに、本発明において、上記一般式(3)におけるTで表される炭素原子数2〜4のアルケニル基としては、上記T〜Tにおける炭素原子数2〜4のアルケニル基と同じものが例示される。
【0028】
本発明において、上記一般式(2)で表されるハロゲン化シアヌル化合物としては、より具体的には以下の化合物No.7が挙げられる。
【0029】
化合物No.7

【0030】
また、本発明において、上記一般式(3)で表されるヒドロキシフェニル化合物としては、より具体的には以下の化合物No.8〜13が挙げられる。
【0031】
化合物No.8

【0032】
化合物No.9

【0033】
化合物No.10

【0034】
化合物No.11

【0035】
化合物No.12

【0036】
化合物No.13

【0037】
本発明において、例えば、ハロゲン化シアヌル化合物として上記化合物No.7を使用し、ヒドロキシフェニル化合物として上記化合物No.8〜13のいずれかの化合物を使用し、上記化合物No.7のハロゲン原子1当量に対してルイス酸が0.3〜0.7当量の存在下で、反応溶媒としてスルホランを主成分とする溶媒を用いて、上記化合物No.7と上記化合物No.8〜13のいずれかの化合物とを反応させることで、上記化合物No.1〜6の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物を製造することができる。
【0038】
本発明に用いられる反応溶媒としては、スルホランを主成分として用いていれば他の溶媒を反応の選択性が損なわれない程度であれば併用してもよい。他の溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、グライム、ジグライム等が挙げられる。
【0039】
反応溶媒は、理論収量の200質量部以上用いることが好ましく、より好ましくは200〜500質量部、経済性の点から特に好ましくは200質量部である。200質量部未満では三塩化アルミニウム等のルイス酸の溶解が十分に行われずに反応時間が長くなったり、反応液が高粘稠化し、流動性を失って攪拌器を破損したり、処理液への投入ができない等の問題が生じるおそれがあるため好ましくない。
【0040】
また、本発明の製造方法における一般式(3)で表されるヒドロキシフェニル化合物の添加方法は、一般式(2)のハロゲン化シアヌル化合物との一括仕込みによる反応では反応速度(及び温度)の制御が困難となる傾向があるため、上記ヒドロキシフェニル化合物を予め反応溶媒と同様の溶媒に溶解させた後、このヒドロキシフェニル化合物溶液を反応液中へ滴下する方法が好ましい。溶媒使用量に特に制限はないが、理論収量の150質量部以上用いることが好ましく、より好ましくは150〜300質量部、経済性の点から特に好ましくは150質量部である。150質量部未満ではヒドロキシフェニル系原料の溶解が困難になったり、反応液が高粘稠化し、流動性を失って攪拌器を破損したり、処理液への投入ができない等の問題が生じるおそれがあるため好ましくない。
【0041】
反応温度は、60〜100℃が好ましく、70〜80℃がより好ましい。60℃より低温では初期反応が遅いため反応中期の急激な発熱反応により生成物が固化し製造を困難にする傾向があり、100℃より高温では着色したり選択性が低下して副生物が増えたりするおそれがあるため好ましくない。
【0042】
反応時の圧力は、反応溶媒が揮散しない常圧又は加圧が好ましい。簡易な装置で実施できるので常圧が特に好ましい。
【0043】
本発明に用いられるルイス酸(触媒)としては、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化錫、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化鉛、ハロゲン化マンガン、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化銅、ハロゲン化チタン、ハロゲン化アルミニウムアルキル、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化鉄、ハロゲン化砒素、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化タリウム、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化タングステン、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化ニオブ又はそれらの混合物が挙げられ、具体的には三塩化アルミニウム(AlCl)、三臭化アルミニウム、トリメチルアルミニウム、三弗化ホウ素、三塩化ホウ素、二塩化亜鉛、四塩化チタン、二塩化錫、四塩化錫、塩化第二鉄又はそれらの混合物が挙げられ、中でも三塩化アルミニウムを用いることが触媒活性、コスト及びハンドリングの面で好ましい。
【0044】
ルイス酸は、通常のフリーデル・クラフツ反応においては、ハロゲン化シアヌル化合物のハロゲン原子1当量に対し1当量以上を用いることが一般的であるが、本発明においては、ハロゲン化シアヌル化合物のハロゲン原子1当量に対しルイス酸は0.3〜0.7当量であり、これにより高純度の目的物が得られるものである。また、触媒であるルイス酸の吸湿を考慮すると0.4〜0.5当量を用いることが好ましい。0.3当量未満では反応活性が少なすぎるため好ましくなく、一方、0.7当量を超えるルイス酸の使用は不必要に廃棄物を増やすことになり、工業的に好ましくない。
【0045】
本発明で得られるトリアジン化合物は、紫外線吸収剤として種々の有機物又は合成樹脂の安定化、あるいはその紫外線吸収剤の中間体として好適に用いられ、特に、ヒドロキシトリアジン化合物誘導体を合成する中間体として好適に用いられる。
【0046】
上記合成樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン及びこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリメチルアクリレートやポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、セルローストリアセテートやセルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル系樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、シクロオレフィン、ノルボルネンやポリウレタン等の熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物、又は、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム等のエラストマーであってもよい。特に、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂等の透明性に優れた樹脂に用いることで配合した樹脂そのものの安定化以外にも他の部材の紫外線による劣化防止に好適に用いられる。
【0047】
本発明で得られるトリアジン化合物の合成樹脂への配合方法は特に制限されず、押出し機等で溶融混練する方法やキャスト法等の溶媒を用いて液状化して混合する方法、乳化重合、懸濁重合や溶液重合等の重合時、重合直後への添加、他の添加剤成分と予め混合し顆粒状としたり、高濃度で樹脂に溶融混練してマスターバッチ化してから樹脂へ配合する等の樹脂の重合方法や溶融粘度、他の配合材の有無や種類等から最適の配合方法を適宜選択する。
【0048】
上記他の添加剤成分としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、他の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、可塑剤、造核剤、難燃剤、難燃助剤、重金属不活性化剤、帯電防止剤、滑剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、顔料、染料、抗菌剤、防カビ剤、防鼠剤、界面活性剤、充填剤等が挙げられる。
【0049】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、トコフェノール等が挙げられ、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部用いられる。
【0050】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられ、樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜5質量部が用いられる。
【0051】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられ、樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜5質量部が用いられる。
【0052】
上記他の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、他のトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられ、これら他の紫外線吸収剤の使用量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0053】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類が挙げられる。
【0054】
上記他のトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−トリデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−[3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジビフェニル−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−[1−(i−オクチルオキシカルボニル)エチルオキシ]フェニル]−4,6−ジビフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類等が挙げられる。
【0055】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類が挙げられる。
【0056】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられ、樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜5質量部が用いられる。
【0057】
上記可塑剤としては、適用される樹脂に応じて公知の種々の可塑剤を用いることができる。例えば、エステル系可塑剤としては、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸等の二塩基酸とオクタノール、イソノニルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等のアルキルアルコールやジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール等のジエステル化合物が挙げられる。ポリエステル系可塑剤としては、上記二塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等のグリコールからなるポリエステル及びその末端を上記モノアルコールやプロピオン酸、オクチル酸、安息香酸等のモノカルボン酸化合物で封止したポリエステルが挙げられ、ポリエーテル可塑剤としては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテルが、ポリエーテルエステル系可塑剤としてはポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテルと上記二塩基酸のポリエステルが挙げられる。
【0058】
上記造核剤としては、安息香酸ナトリウム、p−tert−ブチル安息香酸アルミニウム等の芳香族酸金属塩;ナトリウム−2,2’−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェイト、リチウム−2,2’−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェイト、アルミニウム−ヒドロキシ−ビス(2,2’−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェイト)等のリン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール類;グリセリン亜鉛等の金属アルコラート類;グルタミン酸亜鉛等のアミノ酸金属塩;ビシクロヘプタンジカルボン酸又はその塩等のビシクロ構造を有する脂肪族二塩基酸及びその金属塩;鎖状又は環状ヒドラジド化合物や鎖状又は環状アミド化合物等が挙げられ、樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜5質量部が用いられる。
【0059】
上記難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル、ハロゲン系難燃剤、赤燐、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン、リン酸トリフェニル、レゾルシノール・フェノール・リン酸縮合物、レゾルシノール・2,6−ジメチルフェノール・リン酸縮合物、ビスフェノールA・フェノール・リン酸縮合物、ビフェノール・フェノール・リン酸縮合物、ナフタレンジオール・フェノール・リン酸縮合物、ペンタエリスリトール・フェノール・リン酸縮合物、1,3−ジアミノメチルベンゼン・フェノール・リン酸縮合物、ホスファゼン化合物等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物が挙げられ、樹脂100質量部に対して、0.1〜200質量部、より好ましくは、1〜100質量部が用いられる。
【0060】
上記難燃助剤としては、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、タルク等の無機化合物及びその表面処理品、メラミンシアヌレート、ペンタエリスリトール、シリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0061】
上記重金属不活性化剤としては、サリチルアミド−1,2,4−トリアゾール−3−イル、ビスサリチル酸ヒドラジド、ドデカンジオイルビス(2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド)、ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸)ヒドラジド等が挙げられ、樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部が用いられる。
【0062】
上記帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤等の両性帯電防止剤が挙げられる。かかる帯電防止剤は単独で用いてもよく、また、2種類以上の帯電防止剤を組み合わせて用いてもよい。樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜5質量部が用いられる。
【0063】
上記滑剤としては、ラウリルアミド、ミリスチルアミド、ステアリルアミド、ベヘニルアミド等の脂肪酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、ポリエチレンワックス、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート等の金属石鹸、ジステアリルリン酸エステルマグネシウム、ステアリルリン酸エステルマグネシウム等のリン酸エステル金属塩等が挙げられ、樹脂100質量部に対して、0.001〜20質量部、より好ましくは、0.01〜10質量部が用いられる。
【0064】
上記金属石鹸としては、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛等の金属と、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪酸の塩が用いられる。含水率、融点、粒径、脂肪酸の組成、製造方法がアルカリ金属の脂肪酸塩と金属(水)酸化物の反応による複分解法であるか脂肪酸と金属(水)酸化物の溶媒存在下もしくは不存在下に中和反応する直接法であるかによらず、また、脂肪酸か金属のいずれかが過剰であってもよく、樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.01〜5質量部が用いられる。
【0065】
上記ハイドロタルサイトとしては、天然物でも合成品でもよく、リチウム等のアルカリ金属で変性されたものや炭酸アニオンの一部を過塩素酸で置換したものでもよい。特に、下記一般式(4)、
ZnMgAl(OH)(x+y+2)CO・nHO (4)
(式中、xは0〜3を示し、yは1〜6を示し、また、x+yは4〜6を示し、nは0〜10を示す)で示される組成のものが好ましく、結晶水の有無や表面処理の有無によらず用いることができる。また、粒径は特に限定されるものではないが、ハイドロタルサイトとしての特性を失わない範囲で小さいことが望ましい。粒径が大きいと分散性が低下して安定化効果が小さくなり、さらに、得られる樹脂組成物の機械的強度や透明性等の物性を低下させることになる。樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.005〜5質量部が用いられる。
【0066】
上記充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、ケブラー繊維、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等やこれらの混合物が用いられる。また、これらの強化用繊維は長繊維でも短繊維でもよく、特に、長繊維のガラス繊維を用いる場合に、樹脂組成物がガラス繊維を破壊しないので好ましい。さらに、充填剤は樹脂との親和性を改善するために表面処理されたものが好ましい。充填剤は樹脂100質量部に対して5〜200質量部、好ましくは10〜100質量部である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
上記化合物No.7で表される塩化シアヌル18.4g(0.1モル)、三塩化アルミニウム20g(0.15モル)及びスルホラン89.5gを攪拌機付きの反応容器に入れ、攪拌しながら80℃まで昇温した後、上記化合物No.8で表される2−メチルレゾルシノール/スルホラン(43.4g(0.35モル)/67g)溶液を滴下し、80℃にて1.5時間保持後、90℃にて7.5時間反応させた。攪拌機付きの反応容器に90℃の希塩酸(濃塩酸/水=20g/1リットル)を作製しておき、攪拌しながら上記反応液をゆっくりと滴下し、90℃を保ちながら1時間保持して塩化アルミニウム錯体の分解を行った。室温まで冷却し、吸引濾過器にて濾過を行い、減圧乾燥器にて乾燥後、淡黄色粉末を得た。
【0069】
収量37.2g(収率83%)で、HPLC(カラム;(株)センシュー科学製PEGASIL ODS、展開溶媒;メタノール:0.3%リン酸=90:10)での面積比による純度は91.6%であった。また、以下の副生成物と考えられる化合物は7.4%であった。
【0070】
<副生成物1>

【0071】
<副生成物2>

【0072】
得られた化合物の赤外吸収スペクトルは、(KBr,cm−1):3364,2924,1612,1542,1501,1423,1300,1080であり、H−NMRは、(400MHz,DMSO−d,ppm):12.65(s,−OH),9.49(s,−OH),6.82(d,Ph),5.76(d,Ph),1.24(s,−CH)であり、上記化合物No.1であることを確認した。
【0073】
(実施例2)
三塩化アルミニウムの量を13.6g(0.102モル)に変えた以外は、実施例1と同様にして淡黄色粉末を得た。収量43.7g(収率98%)で、純度91.8%であった。また副生物は4.6%であった。
【0074】
(比較例1)
溶媒をスルホランからジグライムに変えた以外は、実施例1と同様にして黄色粉末を得た。収量19.7g(収率44%)で、純度29.1%であった。また副生物は19.4%であった。
【0075】
(比較例2)
三塩化アルミニウムの量を4g(0.03モル)に換えた以外は、実施例1と同様にしたが、反応は殆ど進行しなかった。
【0076】
(比較例3)
比較例2と同量の触媒量で、反応温度を120℃に上げて反応を行った。反応進行に伴うHClの発生が認められた。反応液を実施例1と同様に処理したが、粉末ではなく赤褐色粘稠物質が得られた。純度は22%であり、通常では観察されない分子量の大きい副生成物が主成分であった。
【0077】
実施例1及び比較例1の結果から、従来用いられていた溶媒では制御が困難であった副生物の生成が、本発明のようにスルホラン溶媒を用いることにより抑制することが可能となり、且つ収率、純度の良い製造方法を提供できることがわかる。また、実施例1、2及び比較例2から、本発明の範囲における触媒量のみで収率及び純度の高いトリアジン化合物が製造できることは明らかである。さらに、本発明は、通常のフリーデル・クラフツ反応で必要とされるルイス酸量の半量程度で、高収率及び高純度の目的物の製造が可能となり、廃棄物産出量の少ない工業的価値のある製造方法である。さらにまた、実施例1及び2においては、急激な固化等がなく製造及び精製が容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、

(式中、R、R及びRは各々独立に水素原子、ヒドロキシル基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、T、T及びTは各々独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表し、Y、Y及びYは各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)で表される2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)、

(式中、Xはハロゲン原子を表し、X及びXは各々独立にハロゲン原子又は下記一般式(3)で表される化合物のフェニル環の水素原子と置換した置換基を示す)で表されるハロゲン化シアヌル化合物と、
下記一般式(3)、

(式中、Rは水素原子、ヒドロキシル基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Tは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表し、Yは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)で表されるヒドロキシフェニル化合物との反応を、
前記ハロゲン化シアヌル化合物のハロゲン原子1当量に対してルイス酸が0.3〜0.7当量の存在下で、反応溶媒としてスルホランを主成分とする溶媒を用いて行うことを特徴とする2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(1)及び(3)におけるR〜Rがヒドロキシル基であり、T〜Tが水素原子又はメチル基であり、さらにY〜Yが水素原子である請求項1に記載の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記T〜Tがメチル基である請求項2に記載の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(2)におけるX〜Xが塩素原子である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ルイス酸が、三塩化アルミニウムである請求項1〜4のうちいずれか一項記載の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ルイス酸の量が、前記ハロゲン化シアヌル化合物のハロゲン原子1当量に対して、0.4〜0.5当量である請求項1〜5のうちいずれか一項記載の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法。
【請求項7】
反応温度が60〜100℃である請求項1〜6のうちいずれか一項記載の2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物の製造方法。