説明

3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体の製造方法

【課題】工業的に有利な、3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体又はその塩を、不活性溶媒中、4級アンモニウム塩及び塩基の存在下、アルキル化剤と反応させる、一般式


(式中、R1は水素原子、オキシル基(−O・)等を示し、R2はC6〜C18アルキル基である。)で表される3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度、高耐久性及び良好な成形加工性を有する合成樹脂は、例えば、自動車、電気・電子、建築等の広範な産業分野において汎用されているが、実際の使用条件下においては、熱、光、酸素、窒素酸化物等によって、劣化や変色を受け、分子量が低下し、ひいては強度が低下し、また、着色を起こすという欠点を有している。
【0003】
合成樹脂の実使用条件下での耐久性及び耐候性を向上させるために、光安定化剤を添加することが行われている。このような光安定化剤として、例えば、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン−2,4−ジオン(商品名:SANOL(登録商標)LS−440、三共ライフテック(株)製)等がある。
【0004】
この光安定化剤として有用な、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン−2,4−ジオン等の原料である3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体等は、工業的に、7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体等をアルキル化剤(例えば、塩化ドデシル等)と反応させることによって製造されている。このアルキル化は、塩基(例えば、水酸化カリウム等)の存在下に行われるが、反応が不均一系となるため、溶媒として、例えば、キシレンとジメチルスルホキシドの混合溶媒を用い、還流下に、長時間(例えば、11時間)反応させることにより行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体等をアルキル化剤(例えば、塩化ドデシル等)と反応させるアルキル化反応が、上述したような、工業的方法として改善すべき課題、すなわち、反応時間を短縮させること、高価なジメチルスルホキシドの回収の煩雑さを回避すること等の課題を解決し、新規な3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカンデカン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体の製造方法について、鋭意研究を重ねた結果、触媒量の4級アンモニウム塩及び塩基の存在下、7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体又は塩基とのその塩をアルキル化剤と反応させることにより、新たに、工業的に有利な、3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体の製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、一般式
【化3】


(式中、Rは、水素原子、オキシル基(−O・)、C〜Cアルキル基又はC〜C脂肪族アシル基を示す。)
で表される7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体(I)又は塩基とのその塩を、
一般式
−X (II)
(式中、Rは、C〜C18アルキル基を示し、Xは、脱離基を示す。)
で表されるアルキル化剤(II)と、不活性溶媒中、一般式
(R(III)
(式中、Rは、独立に、アルキル基およびアラルキル基からなる群から選択される基を示し、Yは、アニオンを示す)
で表される4級アンモニウム塩(III)及び塩基の存在下、反応させることを特徴とする、一般式
【化4】


(式中、R及びRは、前述したものと同意義を示す。)
で表される3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体(IV)の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体(IV)の製造方法は、反応時間を短縮させること、高価なジメチルスルホキシドの回収の煩雑さを回避することができ、かつ操作が簡便であることから、工業的に極めて有利なデカン誘導体(IV)の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、Rの「C−Cアルキル基」は、炭素数が1乃至6個である直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基であり得、好適には、C−Cアルキル基であり、より好適には、メチル基又はエチル基であり、さらにより好適には、メチル基である。
【0010】
本発明において、Rの「C−C脂肪族アシル基」は、炭素数が2乃至7個である直鎖又は分岐鎖脂肪族アシル基であり、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、sec-ブチリル基、ペンタノイル基又はヘキサノイル基であり得、好適には、C−C脂肪族アシル基であり、より好適には、アセチル基又はプロピオニル基であり、さらにより好適には、アセチル基である。
【0011】
の「C−C18アルキル基」は、炭素数が6乃至18個である直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、例えば、ヘキシル基、イソペンチル基、ヘプチル基、イソヘキシル基、オクチル基、イソヘプチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基又はオクタデシル基であり得、好適には、C−C18アルキル基であり、より好適には、C10−C14アルキル基であり、さらにより好適には、ドデシル基である。
【0012】
化合物(II)の使用量は、化合物(I)1モルに対して、約0.7〜1.5モルであり得、好適には、約当1モルである。
【0013】
Xの「脱離基」は、脱離基として、アルキル化反応に関与するものであれば、特に限定されないが、例えば、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、プロパンスルホニルオキシ基、ブタンスルホニルオキシ基、イソブタンスルホニルオキシ基、ペンタンスルホニルオキシ基、ヘキサンスルホニルオキシ基等のC−Cアルカンスルホニルオキシ基、又はベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、クロロベンゼンスルホニルオキシ基、メトキシベンゼンスルホニルオキシ基、ナフタレンスルホニルオキシ基等の、C−Cアルキル基、ハロゲン原子及びC−Cアルコキシ基(C−Cアルキル−O−基)からなる群から選択される、1〜3個の置換基で置換されていてもよいC−C10アリールスルホニルオキシ基であり得、好適には、塩素原子、臭素原子、沃素原子、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基又はトルエンスルホニルオキシ基であり、より好適には、塩素原子、臭素原子又は沃素原子であり、さらにより好適には、塩素原子である。
【0014】
の「アルキル基」は、4級アンモニウム塩に通常使用されるアルキル基であれば、特に限定されないが、例えば、C−C18アルキル基であり得、好適には、C−C12アルキル基であり、より好適には、C−Cアルキル基であり、さらにより好適には、C−Cアルキル基であり、特に好適には、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、最も好適には、メチル基、エチル基又はブチル基(特に、ブチル基)である。
【0015】
の「アラルキル基」は、4級アンモニウム塩に通常使用されるアラルキル基であれば、特に限定されないが、例えば、1〜2個の、C−Cアルキル基、ハロゲン原子及びC−Cアルコキシ基(C−Cアルキル−O−基)からなる群から選択される、1〜3個の置換基で置換されていてもよいC−C10アリールで置換されるC−Cアルキル基であり得、好適には、1個の、フェニル、トリル又はナフチルで置換されるC−Cアルキル基であり、より好適には、ベンジル基、フェネチル基、トリルメチル基又はトリルエチル基であり、さらにより好適には、ベンジル基、フェネチル基又はトリルメチル基であり、最も好適には、ベンジル基である。
【0016】
の「アニオン」は、4級アンモニウム塩に通常使用されるアニオンであれば、特に限定されないが、例えば、ハロゲンアニオン、硝酸アニオン、1/2の硫酸アニオン、1/3のリン酸アニオン等の無機アニオン;又は酢酸アニオン、クロル酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、安息香酸アニオン、トルイック酸アニオン、ナフトイル酸アニオン等のカルボン酸アニオン若しくはメタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、ベンゼンンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン等のスルホン酸アニオン等の有機アニオンであり得、好適には、無機アニオン又はカルボン酸アニオンであり、より好適には、クロルアニオン、ブロムアニオン、ヨードアニオン、酢酸アニオン、クロル酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン又は安息香酸アニオンであり、さらにより好適には、フルオロアニオン、クロルアニオン、ブロムアニオン又はヨードアニオンであり、最も好適には、フルオロルアニオン又はクロルアニオンである。
【0017】
本発明の反応に使用される4級アンモニウム塩(III)の量は、化合物(I)に対して触媒量であるが、経済的観点も考慮すれば、好適には、化合物(I)1モルに対して、約0.01〜0.5モルであり、より好適には、約0.02〜0.2モルである。
【0018】
本発明の反応に使用される塩基は、酸 H−Y(Y-)(ここで、Y-は、前述したアニオンである)と反応して塩を生成するものであれば、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩類;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩類;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類;メチルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、リチウムジイソプロピルアミド等の有機金属類;又はトリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機アミンであり得、好適には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩類又はアルカリ金属重炭酸塩類であり、より好適には、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩類であり、さらにより好適には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであり、最も好適には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム(特に、水酸化カリウム)である。
【0019】
また、無機塩基は、無水物又は水和物を用いてもよい。
さらに、本発明の反応に使用される塩基の量は、化合物(I)1モルに対して、約0.8〜1.5モルであり得、好適には、約当モルである。
【0020】
さらにまた、原料のデカン誘導体(I)を塩基と反応させて得られる、デカン誘導体(I)と塩基の塩を、塩基の存在下又は不存在下(好適には、不存在下)、アルキル化反応に付すこともできる。
本発明の反応に使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はなく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;又は水;或はこれらの混合溶媒であり得、好適には、芳香族炭化水素類、アミド類、スルホキシド類又は水或はこれらの混合溶媒であり、より好適には、芳香族炭化水素類(特に、トルエン、キシレン又はクロロベンゼン)、アミド類(特に、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド)、スルホキシド類(特に、ジメチルスルホキシド)又は水或はこれらの混合溶媒であり、さらにより好適には、芳香族炭化水素類とアミド類、スルホキシド類及び水からなる群から選択される1〜3種の極性溶媒との混合溶媒であり(また、芳香族炭化水素類と極性溶媒の容量比は、好適には、約1:1〜1:0.05であり、より好適には、約1:0.2〜1:0.1である)、特に好適には、トルエン又はキシレンと、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及び水からなる群から選択される1〜3種の極性溶媒との混合溶媒であり、最も好適には、キシレンと、ジメチルスルホキシド及び水からなる群から選択される1〜2種の極性溶媒との混合溶媒である。また、経済的な観点から、最も好適には、キシレンと水の混合溶媒(キシレンと水の容量比は、約1:1〜1:0.1)又はキシレンとジメチルスルホキシドの混合溶媒(キシレンとジメチルスルホキシドの容量比は、約1:1〜1:0.1)である。
【0021】
使用される溶媒の使用量は、化合物(I)に対して、1〜10ml/gであり得、好適には、3〜6ml/gである。
【0022】
本発明の反応の反応温度は、原料化合物、アンモニウム塩、溶媒等の種類等により異なるが、通常、0℃〜180℃であり、好適には、40℃〜140℃である。
【0023】
本発明の反応の時間は、原料化合物、アンモニウム塩、溶媒等の種類及び反応温度等により異なるが、30分間〜10時間であり、好適には、1時間〜5時間である。
【0024】
本発明の反応に使用される化合物(I)は、既知の方法(例えば、三共年報、第35巻、1〜37頁(1983年)等に記載の方法)に従って製造される。
【0025】
本発明の反応終了後、得られた目的物は、常法により、反応混合物から採取される。例えば、反応混合物が不溶物を含む場合は、適宜、不溶物を濾去し、溶媒を減圧で留去することにより、又は、反応混合物又は上記の溶媒を減圧で留去したものに水を加え、水不混和性有機溶媒で抽出し、抽出液を乾燥し、抽出溶媒を減圧で留去することにより、目的物を得ることができる。また、必要に応じて、常法、例えば、再結晶法、カラムクロマトグラフィー等を用いて、目的物をさらに精製することができる。
【0026】
本発明において、
化合物(I)は、(1a)好適には、Rが、水素原子、オキシル基、メチル基又はアセチル基である化合物であり、
(1b)より好適には、Rが、水素原子又はメチル基である化合物であり、
化合物(II)は、(2a)好適には、Rが、C−C18アルキル基であり、Xが、塩素原子、臭素原子、沃素原子、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基又はトルエンスルホニルオキシ基である化合物であり、
(2b)より好適には、Rが、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基又はオクタデシル基であり、Xが、塩素原子、臭素原子又は沃素原子である化合物であり、
(2c)さらにより好適には、Rが、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリドデシル基又はテトラデシル基であり、Xが、塩素原子、臭素原子又は沃素原子である化合物であり、
(2d)最も好適には、Rが、ドデシル基であり、Xが、塩素原子又は臭素原子(特に、塩素原子)である化合物であり、
化合物(III)は、(3a)好適には、Rが、独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びベンジル基からなる群から選択される基であり、Yが、クロルアニオン、ブロムアニオン、ヨードアニオン、酢酸アニオン、クロル酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン又は安息香酸アニオンである化合物であり、
(3b)より好適には、(Rが、テトラメチル基、テトラエチル基、テトラプロピル基、テトラブチル基、トリメチルエチル基、トリメチルブチル基又はトリメチルベンジル基であり、Yが、フルオロアニオン、クロルアニオン、ブロムアニオン又はヨードアニオンである化合物であり、
(3c)さらにより好適には、(Rが、テトラメチル基、テトラエチル基、テトラブチル基又はトリメチルベンジル基であり、Yが、フルオロルアニオン又はクロルアニオンである化合物であり、
(3d)最も好適には、(Rが、テトラメチル基又はテトラブチル基(特に、テトラブチル基)であり、Yが、フルオロルアニオン又はクロルアニオンである化合物である。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例参考例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
実施例1
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
キシレン54ml及びジメチルスルホキシド40mlの混合溶媒に、7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン20,0g、ドデシルクロリド18.4g、85%水酸化カリウム5.9g及びテトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加え、混合物を5時間加熱還流した。
反応混合物をろ過し、水を加えて、分液した。得られた有機層にメチレンクロリドを加え、正確に250mlとして、定量分析用の検体を得た。該検体を、別途合成した標準品を用いる高速液体クロマトグラフィー(HLPC)により、定量し、標記化合物の収率を求め、収率88.3%を得た。
高速液体クロマトグラフィー(HLPC)の測定条件
カラム:inertsil ODS-3(4.6φ x 250 mm)
移動相:アセトニトリル/水/トリエチルアミン/酢酸=800/200/1/1
検出器:UV 230nm
カラム温度:40℃付近の一定温度
【0029】
実施例2
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
ジメチルスルホキシド40mlの代わりに、ジメチルスルホキシド10mlを用いる他、実施例1と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率89.9%を得た。
【0030】
実施例3
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gの代わりに、テトラn−ブチルアンモニウムフルオリド1.2gを用いる他、実施例2と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率94.2%を得た。
【0031】
実施例4
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
85%水酸化カリウム5.9gの代わりに、95%水酸化ナトリウム3.8gを用いる他、実施例2と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率87.6%を得た。
【0032】
実施例5
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
85%水酸化カリウム5.9gの代わりに、95%水酸化ナトリウム3.8gを用い、テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gの代わりに、テトラn−ブチルアンモニウムフルオリド1.2gを用いる他、実施例2と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率92.3%を得た。
【0033】
実施例6
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
水30mlに95%水酸化ナトリウム3.8gを加えた後、7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン2,4−ジオン20.0g、ドデシルアイオデド26.6g、キシレン80ml及びテトラn−ブチルアンモニウムフロリド2.2gを順次加え、混合物を6時間加熱還流した。
実施例1と同様に、後処理をして、標記化合物の収率83.1%を得た。
【0034】
実施例7
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
キシレン54ml及びジメチルスルホキシド10mlの混合溶媒に、7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンのカリウム塩23,4g、ドデシルクロリド18.4g及びテトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加え、混合物を5時間加熱還流した。
実施例1と同様に、後処理をして、収率85.2%を得た。
【0035】
実施例8
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
キシレン54ml、ジメチルスルホキシド10ml及び水1.6mlの混合溶媒に、7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンのカリウム塩23,4g、ドデシルクロリド18.4g及びテトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加え、混合物を5時間加熱還流した。
実施例1と同様に、後処理をして、収率98.4%を得た。
【0036】
実施例9
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gの代わりに、テトラn−ブチルアンモニウムフルオリド1.2gを用いる他、実施例8と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率94.0%を得た。
【0037】
実施例10
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンのカリウム塩23,4gの代わりに、7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンのナリウム塩22.0gを用いる他、実施例8と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率84.4%を得た。
【0038】
実施例11
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン20,0gをメタノール40mlに加えた後、85%水酸化カリウム6.0gを加え、混合物を80℃に加熱し、大気圧下、溶媒(メタノール)20mlを留去した。混合物にキシレン60mlを加えた後、混合物を80〜140℃に加熱し、大気圧下、溶媒(メタノール及びキシレンの混合溶媒)35mlを留去し、7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンのカリウム塩の懸濁液(約45ml)を得た。
この懸濁液を室温まで冷却した後、キシレン9ml、ジメチルスルホキシド10ml、ドデシルクロリド18.4g、テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3g及び水1.6mlを加え、混合物を5時間加熱還流した。混合物を約70℃まで冷却し、約70℃の温水40mlで4回洗浄した後、不溶物を濾過した。
実施例1と同様に、後処理をして、標記化合物の収率95.0%を得た。
また、定量分析の終了後、該濾液を減圧で濃縮乾固し、含水メタノール(76%)10mlを添加し、加熱溶解し、徐冷晶出して、標記化合物31.4g(収率90%)を得た。
融点 110.0−112.1℃。
【0039】
実施例12
8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
実施例11と同様にして得た3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンを含む、キシレン混合物(収率:95%)を共沸脱水した後、無水酢酸16mlを加えた。混合物を、減圧下(〜40mmHg)、留出物が留出しなくなるまで、122℃〜125℃に加熱した。次に、混合物に無水酢酸8mlを加え、混合物を、減圧下(〜40mmHg)、留出物が留出しなくなるまで、122℃〜125℃に加熱した。さらに、この操作を、留出物中に酢酸が認められなくなるまで、2回繰り返した。
得られた混合物を室温まで冷却した後、含水メタノール(76%)175mlを加え、次いで、活性炭1.7g及びラジオライト0.5gを加え、混合物を、加熱還流下に、濾過した。濾液を5℃以下まで冷却し、析出した結晶を、濾過して、標記化合物28.8g(収率79%)得た。
融点 76.5℃〜77.8℃。
【0040】
参考例1
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンのカリウム塩の製造
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン120.0gに、85%水酸化カリウム36.0gをメタノール240mlに溶解した溶液を加え、混合物を20分間還流した。冷却した後、混合物を濾過し、濾液を減圧で濃縮した後、キシレン240mlを加え、再度減圧で濃縮し、乾固し、乾燥して、標記化合物147.6g(含量94.6%)を得た。
【0041】
参考例2
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンのナリウム塩の製造
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン50.0gに、95%水酸化ナリウム9.5gをメタノール100mlに溶解した溶液を加え、混合物を30分間還流した。冷却した後、混合物を参考例1と同様に後処理して、標記化合物57.2gを得た。
【0042】
比較例1
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加えない他、実施例1と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率75%を得た。
【0043】
比較例2
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加えない他、実施例2と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率20.4%を得た。
【0044】
比較例3
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加えない他、実施例4と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率3.0%を得た。
【0045】
比較例4
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムフロリド2.2gを加えない他、実施例6と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率6.0%を得た。
【0046】
比較例5
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加えない他、実施例7と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率24.0%を得た。
【0047】
比較例6
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加えない他、実施例8と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率46.3%を得た。
【0048】
比較例7
3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオンの製造
テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1.3gを加えない他、実施例10と同様に、反応及び後処理をして、標記化合物の収率4.9%を得た。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体(IV)の製造方法は、反応時間を短縮させること、高価なジメチルスルホキシドの回収の煩雑さを回避することができ、かつ操作が簡便であることから、工業的に極めて有利なデカン誘導体(IV)の製造方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】


(式中、Rは、水素原子、オキシル基(−O・)、C〜Cアルキル基又はC〜C脂肪族アシル基を示す。)
で表される7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体(I)又は塩基とのその塩を、
一般式
−X (II)
(式中、Rは、C〜C18アルキル基を示し、Xは、脱離基を示す。)
で表されるアルキル化剤(II)と、不活性溶媒中、一般式
(R(III)
(式中、Rは、独立に、アルキル基およびアラルキル基からなる群から選択される基を示し、Yは、アニオンを示す)
で表される4級アンモニウム塩(III)及び塩基の存在下、反応させることを特徴とする、一般式
【化2】


(式中、R及びRは、前述したものと同意義を示す。)
で表される3−アルキル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体(IV)の製造方法。
【請求項2】
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体(I)が、Rが水素原子、オキシル基(−O・)、メチル基又はアセチル基である化合物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン誘導体(I)が、Rが水素原子又はメチル基である化合物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
アルキル化剤(II)が、Rがデシル基、ウンデシル記、ドデシル基、トリドデシル基又はテトラデシル基であり、Xが塩素原子、臭素原子又は沃素原子である化合物である、請求項1乃至3記載の製造方法。
【請求項5】
アルキル化剤(II)が、Rがドデシル基であり、Xが塩素原子又は臭素原子である化合物である、請求項1乃至3記載の製造方法。
【請求項6】
4級アンモニウム塩(III)が、(Rがテトラメチル基、テトラエチル基、テトラプロピル基、テトラブチル基、トリメチルエチル基、トリメチルブチル基又はトリメチルベンジル基であり、Yがフルオロアニオン、クロルアニオン、ブロムアニオン又はヨードアニオンである化合物である、請求項1乃至5記載の製造方法。
【請求項7】
4級アンモニウム塩(III)が、(Rがテトラメチル基又はテトラブチル基であり、Yがフルオロルアニオン又はクロルアニオンである化合物である、請求項1乃至5記載の製造方法。
【請求項8】
不活性溶媒が、芳香族炭化水素類と、アミド類、スルホキシド類及び水からなる群から選択される1〜3種の極性溶媒との混合溶媒であり、芳香族炭化水素類と極性溶媒の容量比が、約1:1〜1:0.05である、請求項1乃至7記載の製造方法。
【請求項9】
不活性溶媒が、トルエン又はキシレンと、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及び水からなる群から選択される1〜3種の極性溶媒との混合溶媒であり、トルエン又はキシレンと極性溶媒の容量比が、約1:1〜1:0.05である、請求項1乃至7記載の製造方法。
【請求項10】
塩基が、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩類である、請求項1乃至9記載の製造方法。
【請求項11】
塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項1乃至9記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−195697(P2008−195697A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35742(P2007−35742)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】