説明

3−フルオロキノリンの新規な製造方法

【課題】本発明の課題は、一般式(I)で表される3−フルオロキノリンの新規な調製方法を提供することである。
【化1】



【解決手段】本発明は、一般式(IV)を有する化合物が、ホフマン分解を受けて、一般式(III)を有する化合物を生成し、一般式(III)を有する化合物が、一般式(II)を有するジアゾニウム塩を形成するような条件下で処理され、次いで一般式(II)を有する化合物が不活性有機溶媒中で加熱されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記一般式(I)で表される3−フルオロキノリンの新規な製造方法に関する。
【化1】

[式中、R、R、R及びRは、同一か異なっていてもよく、
フッ素原子;
1〜3個のフッ素原子、基OR(Rは、直鎖もしくは分枝のアルキル基、水素原子、またはヒドロキシル基の保護基を表す)、または基NR’R”(R’及びR”は、同一か異なっていてもよく、直鎖もしくは分枝のアルキル基、水素原子、またはアミノ基の保護基を表す)で置換されていてもよい、直鎖、分枝または環状のアルキル基;
基OR(Rは、水素原子;フェノール基の保護基;または、1〜3個のフッ素原子、上に定義されるような基ORもしくは基NR’R”で置換されていてもよい、直鎖もしくは分枝のアルキル基を表す);
基NR’R”(R’及びR”は、R’及びR”と同じ意味を有するか、または1〜3個のフッ素原子、上に定義される基OR、もしくは、上に定義される基NR’R”で置換された、直鎖もしくは分枝のアルキル基を表す);
基CO(Rは、水素原子、直鎖もしくは分枝のアルキル基、またはカルボキシル基の保護基を表す);または
1個以上の上記の置換基で置換されていてもよい、フェニル基もしくはヘテロアリール基を表す]
【0002】
上記一般式において、アルキル基は直鎖もしくは分枝鎖中に1〜10個の炭素原子を含み、シクロアルキル基は3〜6個の炭素原子を含むと解される。
【0003】
上記化合物がヘテロアリール置換基を有する場合、ヘテロアリール置換基は、環を構成する5〜10個の原子を含有し、単環式または二環式であってよく、上述の置換基で置換されることがある、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ナフチリジニル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリル、ベンゾキサゾリル及びベンゾイミダゾリルから選ばれるが、これに限定されるものではない。
【発明の開示】
【0004】
本発明によれば、一般式(IV)の化合物:
【化4】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりである]
をホフマン分解して、一般式(III)の化合物:
【化3】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりである]
を得て、一般式(III)の化合物を、一般式(II)のジアゾニウム塩:
【化2】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりである]
を形成可能な条件下で処理し、得られる一般式(II)のジアゾニウム塩を不活性有機溶媒中で35〜120℃の温度で加熱することにより、一般式(I)の生成物が得られる。
【0005】
ホフマン分解は、臭素及び水酸化ナトリウム、さらにピリジンを用いて、水中で約60℃の温度で行われる。
【0006】
ジアゾニウム塩を調製するための条件としては、例えば、亜硝酸アルカリ金属塩または亜硝酸エステル(特に、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸tert−ブチルまたは亜硝酸イソブチル)、及びフルオロホウ酸の存在下で、または、ホウ素トリフルオリドエチルエーテル錯体の存在下で、適切な溶媒中、特にTHF、水またはアルコール中で、+15〜+20℃の温度で行うことがあげられる。
【0007】
式(II)の化合物を式(I)の化合物に変換するための反応は、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、フッ素化溶媒(例えば、ペルフルオロへキサン)、または塩素化溶媒(例えば、モノ−もしくはジクロロベンゼン、クロロブタンまたは塩化メチレン)などの溶媒中で行われるのが好ましい。
【0008】
加熱温度は、好ましくは60〜100℃であるが、もちろん、使用される溶媒に依存する。
【0009】
さらに、本発明の1つの構成は、上記の方法において、式(V)の化合物:
【化5】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりであり、Xは塩素原子または臭素原子をあらわし、alkは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表す]に、水素化分解剤を作用させ、次いで、アンモニア水溶液を作用させることにより、一般式(VI)の化合物:
【化6】

を得て、式(VI)の化合物は単離されてもされなくてもよく、次いで式(IV)の化合物を得ることである。
【0010】
本発明において、上記の2つの反応を逆の順序で行ってもよく、この場合、中間的に形成される化合物は、式(VII)の化合物であり、
【化7】

この化合物は、単離されてもされなくてもよい。
【0011】
水素化分解反応は、アルコール(特に、エタノールまたはメタノール)中、トリエチルアミン及び触媒(例えば、活性炭上のパラジウム)の存在下で、反応媒体中に水素を噴霧(sparge)することにより行われる。
【0012】
ジメチルホルムアミド中、ギ酸ナトリウム及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの存在下で、このプロセスを行うことも可能である。
【0013】
さらに、本発明の一つの構成は、上記の方法において、式(VIII)の化合物:
【化8】

[式中、R、R、R、R及びalkは上に定義されるとおりである]
にオキシ塩化リンまたはオキシ臭化リンを作用させることによって式(V)の化合物を得ることである。
【0014】
この方法は、溶媒なしで、約100℃程度の温度で行われるのが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の一つの構成は、上記に従う方法において、上に定義される式(VIII)の化合物を塩基で処理し、式(IX)で表される対応する酸:
【化9】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりである]
を得て、ついで式(IX)で表される対応する酸にオキシ塩化リンまたはオキシ臭化リンを作用させ、式(X)の化合物:
【化10】

[式中、R、R、R、R及びXは上述の定義を有している]
を得て、式(X)の化合物にアンモニアを作用させ、上に定義されるような式(VII)の化合物を得て、式(VII)の化合物に水素化分解剤を作用させることによって式(IV)の化合物を得ることである。
【0016】
ケン化反応は、当業者に既知の従来の条件下で、特に、水性媒体中で、還流温度で、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを作用させて行われる。
【0017】
オキシ塩化リンまたはオキシ臭化リンを、それらの還流温度で、溶媒なしで作用させるのが好ましい。
【0018】
水素化分解剤は、上述のもののうちの1つである。
【0019】
さらに、本発明の一つの構成は、上記の方法において、五酸化リンの存在下で、式(XI)の化合物
【化11】

[式中、R、R、R、R及びalkは上に定義されるとおりである]
を加熱することによって上に定義される式(IX)の化合物を得て、次いで上述のような合成を行うことによって、式(IV)の化合物を得ることである。
【0020】
五酸化リンと式(XI)の化合物との反応は、好ましくは、ニトロベンゼンなどの溶媒中で約120〜130℃程度の温度で行われる。
【0021】
式(V)の化合物は、上に定義される式(XI)の化合物にオキシ塩化リンまたはオキシ臭化リンを作用させることによって得られることができる。
【0022】
この方法は、好ましくは、式(XI)の化合物(R、R、R及びRの反応性基があらかじめ保護されている)を用いて出発して、溶媒なしで、約100℃程度の温度で行われる。
【0023】
式(VIII)の化合物は、高沸点を有する溶媒中で、上に定義される式(XI)の化合物を加熱することによって得ることができる。
【0024】
式(XI)の化合物の環化は、好ましくは、ジフェニルエーテル中で、還流温度またはそれに近い温度で行われる。
【0025】
一般式(XI)の化合物は、一般式(XII)の化合物
【化12】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりである]
と、一般式(XIII)の化合物
【化13】

[式中、alkは上に定義されるとおりであり、alkはalkと同一か異なっていてもよい直鎖または分枝のアルキル基を表す]
とを反応させることによって得られる。
【0026】
上記反応は、溶媒なしまたは溶媒を添加して、約80〜約120℃の温度に加熱することによって行われるのが好ましい。
【0027】
、R、R及びRの定義に関して、関与する反応の種類によっては、置換基が保護された化合物を使用することが望ましいか、または必要な場合がある。特に、これらの置換基は、OR、またはNR’R”、OR、NR’R”、COで置換された置換アルキル基である。
【0028】
特に、本発明の一つの構成は、上記の方法において、式(IX)の化合物から式(X)の化合物を生成する過程、及び式(IV)の化合物から式(III)の化合物を生成するホフマン分解過程において、反応性置換基が保護された化合物が使用されることである。本発明によれば、関与する化合物は、合成の開始時から保護されるか、重要なステップが行われる直前に保護される。
【0029】
使用可能な保護基及びそれらの使用は、当業者に知られており、例えば、非特許文献1に記載されている。
【非特許文献1】T.W. Greene及びP.G.M. Nuts著,「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」(John Wiley & Sons, inc.刊)
【0030】
特に、本発明の一つの構成は、上に定義される方法において、R、R、R及びRは同一か異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、上に定義されるような、置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキル基、または上に定義されるような基ORを表す場合の化合物が使用される。
【0031】
さらに特定的には、本発明において、R、R、R及びRは同一か異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、または上に定義される基OR、特にアルコキシ基を表す場合の化合物が使用される。
【0032】
最後に、本発明の一つの構成は、上に定義される式(II)の化合物である。
【0033】
式(I)の化合物は、特に、抗菌性活性(antibacterial activity)を有する化合物の製造において有用な中間体化合物であり、例えば、特許文献1及び2に記載されている。
【特許文献1】WO 02/72572号公報
【特許文献2】WO 02/40474号公報
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、以下の実施例により例示されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
3−フルオロ−6−メトキシキノリンの製造
9lのトルエン中の1007gの6−メトキシ−3−キノリンジアゾニウムフルオロボレートの懸濁物を60℃まで85分加熱する。気体の放出が60℃で観察される。次いで、反応媒体を70〜72℃でさらに90分徐々に加熱する。72℃で90分間保持後、次いで、媒体を85℃まで徐々に加熱する。冷却し、一晩攪拌後、氷冷水4lを懸濁物に添加する。15分間攪拌後、酢酸エチル2.5lを添加する。45分間攪拌後、47%水酸化ナトリウム(250ml)を添加することによりpHを7〜7.5に調整する。媒体を30分間攪拌し、次いで、1時間放置することによって分離する。下側の水相を酢酸エチルで再抽出する。有機相をあわせ、水で洗浄する。溶液をろ過し、ついで減圧下で濃縮し、粗3−フルオロ−6−メトキシキノリン655gを得る。粗生成物を減圧下で蒸留する。予想生成物を含有する蒸留画分(1mbarで沸点103〜110℃)をあわせる。3−フルオロ−6−メトキシキノリン498.9g(76%)を51〜53℃で融解する白色固体の形態で得る。
微量分析: C10FNO 計算値C67.79;H4.55;F10.72;N7.91;O9.03 実測値C67.98;H4.54;N7.97。
NMRスペクトル: H(300MHz,(CDSO d6,δ(ppm)):3.92(s:3H);7.40(mt:2H);7.97(d,J=10Hz:1H);8.13(dd,J=10及び3Hz:1H);8.76(d,J=3Hz:1H)。
質量スペクトル: m=177
EI m/z=177 M ベースピーク
m/z=134 [M − COCH
DCI m/z=178 MH ベースピーク
【0036】
3−ジアゾニウムフルオロボレート−6−メトキシキノリン:
3−アミノ−6−メトキシキノリン(10g)をTHF50ml中で懸濁し、20℃で15分攪拌し、その後−15℃に冷却する。次いで、BF−エーテラート(BF3-etherate)11.6gを添加する。反応塊の温度を−15℃に維持する。この温度で15分後、THF25mlのtert−ブチルナイトライト(tert-butyl nitrite)7.5gの90%溶液を10分間かけて添加する。懸濁物を−15℃で1時間攪拌し、その後に1時間かけて+15℃にする。沈殿をろ別し、ヘキサンで洗浄し、重量が一定になるまで、一定圧力下15〜20℃で乾燥する。3−ジアゾニウムフルオロボレート−6−メトキシキノリン14.8g(94.3%)を黄色固体の形態で得る。分解温度:82℃。
【0037】
3−アミノ−6−メトキシキノリン:
32%水酸化ナトリウム溶液104kgを水341kgに添加する。溶液を0℃に冷却し、温度を0℃に維持しながら、臭素22.0kgを1.5時間かけて導入する。溶液をこの温度で1時間攪拌し、次いで、ピリジン409kgを0℃で3時間かけて導入する。次いで、6−メトキシ−キノリン−3−カルボキサミド26.5kgを0℃で50分かけて添加する。反応媒体をこの温度で2時間維持し、次いで、1時間かけて60℃まで徐々に加熱する。60℃の温度で6時間維持後、反応塊を20℃まで冷却し、放置することによって分離する。水相(172kg)をピリジン(60リットル)で洗浄する。有機相(820kg)をプールし、乾燥するまで最大84℃、減圧下(100〜150mbar)で濃縮する。次いで、残渣を水425リットル及びエタノール43リットルに入れる。得られる懸濁物を1時間還流させ、冷却する。生成物は65℃で沈殿し始める。次いで、媒体を0〜5℃に冷却し、この温度で2時間維持する。沈殿をろ別し、冷水で洗浄し、減圧下で50〜55℃で乾燥する。108〜110℃の融点を有する3−アミノ−6−メトキシキノリン16.5kg(72.3%)を褐色固体の形態で得る(HPLC滴定=99.1%)。第2の収穫物3.7kg(13.1%)を母液から得る(HPLC滴定=98%)。
NMRスペクトル: H(300MHz,(CDSO d6,δ(ppm)):3.84(s:3H);5.65(s:2H);6.97(dd,J=9及び3Hz:1H);7.01(d,J=3Hz:1H);7.08(d,J=2.5Hz:1H);7.67(d,J=9Hz:1H);8.29(d,J=2.5Hz:1H)。
IRスペクトル: (KBr)
3454;3312;3204;1630;1619;1607;1504;1383;1251;1239;1216;1167;1027;872;827;627及び479cm−1
質量スペクトル: m=174
EI m/z=174 (M)−ベースピーク
m/z=131 [M−COCH
【0038】
6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド:
エタノール380リットルを、4−クロロ−3−エトキシ−カルボニル−6−メトキシキノリン49.2kgに添加する。懸濁物を45℃で30分加熱し、次いで、20℃に冷却する。トリエチルアミン18.65kgを窒素下で添加し、その後、5%活性炭担持パラジウム(60%含水)1.91kgを添加する。水素を、0.5〜0.8bar、33℃で48時間流す。この時間に、HPLCコントロールは、反応が終了したことを示す。次いで、反応器に窒素を通気し、次いで、反応媒体をろ過し、触媒を除去する。次いで、フィルターをエタノールですすぐ。ろ液をアンモニア水溶液750kgに注ぐ。次いで、反応媒体を25℃で4日間攪拌する。次いで、40〜45℃を超えない温度でエタノールを減圧蒸留によって除去した。このようにして得られた懸濁物を0〜5℃に冷却し、この温度で3時間攪拌する。沈殿をろ別し、冷水で洗浄し、次いで、重量が一定になるまで、減圧下、60〜65℃で乾燥する。93.7〜95.7℃で融解する6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド26.5kg(71%)を白色固体の形態で得る(HPLC%NIS=98.3%)。
NMRスペクトル: H(300MHz,(CDSO d6,δ(ppm)):3.94(s:3H);7.45(d,J=3Hz:1H);7.52(dd,J=9及び3Hz:1H);7.67(broad s:1H);8.00(d,J=9Hz:1H);8.29(broad s:1H);8.74(d,J=2Hz:1H);9.15(d,J=2Hz:1H)。
IRスペクトル: (KBr)
3408;3330;3211;1697;1626;1511;1386;1321;1240;1023;935;826及び693cm−1
質量スペクトル: m=202
EI m/z= 202 [M] − ベースピーク
m/z = 186 [M −NH
m/z = 158 [186 − CO]
【0039】
4−クロロ−3−エトキシカルボニル−6−メトキシキノリン:
ホスホリルクロリド132gをジエチル2−[(4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロネート50gに25℃で添加する。反応媒体をこの温度で15分攪拌し、45分間かけて95〜100℃まで加熱し、次いで、この温度で4時間維持する。次いで、過剰なホスホリルクロリドを125℃で約2時間加熱することによって除去する。次いで、混合物を25℃まで冷却し、ジクロロメタン125mlを添加する。次いで、媒体を25℃で1時間攪拌し、次いで、温度を30℃未満に維持しながら30分かけて水900ml中に注ぐ。次いで、温度を20〜25℃に維持しつつ、47%水酸化ナトリウム溶液172gを添加することによってpHを7.5〜8に調整する。2相に分離し、水相をジクロロメタンで抽出する。有機相をプールし、水で洗浄する。ジクロロメタン相を半分に濃縮し、エタノール190mlを添加する。反応塊の温度が82℃に到達し、蒸気温度が78℃に到達するまで濃縮を続ける。反応塊を0〜5℃まで冷却し、この温度で2時間維持する。沈殿をろ別し、冷エタノールで洗浄し、次いで、減圧下50℃で乾燥する。93.7〜95.7℃で融解する4−クロロ−3−エトキシカルボニル−6−メトキシキノリン27.7g(61%)を黄色固体の形態で得る。
滴定(HPLC):98.0%。
【0040】
ジエチル2−[(4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロネート:
p−アニシジン3.5kgを、反応塊を冷却することなく、ジエチルエトキシメチレンマロネート6.25kgに14℃で85分間かけて添加する。添加終了時に、温度は59℃に達している。温度を59℃で30分間維持し、次いで、反応媒体を90〜95℃に加熱し、この温度で1時間維持する。次いで、形成したエタノールを常圧での蒸留、次いで250mbarでの蒸留によって除去する。45℃まで冷却した後、ジエチル2−[(4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロネート8.4kgが、定量的な収率で褐色粘稠性油状物の形態で回収される。
滴定(HPLC):98.3%
【0041】
参考:
1/分析条件の記載:
方法: HPLC
カラム: Hichrom 100 RP18 5μ(250×4.6mm)
流速: 1ml/分
波長: 210nm
インジェクション体積: 20μl
溶出液: 400ml アセトニトリル
600ml 0.01M リン酸二水素ナトリウム(pH 2.3)
2.88g/l 硫酸ドデシルナトリウム
インジェクション: 0.1mg/ml溶液20μL
【0042】
保持時間:
p−アニシジン 12.16分
2−[(4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステル 25.0分
3−エトキシカルボニル−6−メトキシ−4(1H)−キノリノン 4.15分
4−クロロ−6−メトキシキノリン−3−エチルカルボキシレート 24.1分
6−メトキシキノリン−3−エチル カルボキシレート 16.5分
6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド 6.0分
3−アミノ−6−メトキシキノリン 16.2分
3−フルオロ−6−メトキシキノリン 10.0分
【実施例2】
【0043】
3,7−ジフルオロ−6−メトキシキノリン:
3−アミノ−7−フルオロ−6−メトキシキノリン6.1gを40%フルオロホウ酸水溶液に約−5℃の温度で攪拌しながら添加し、亜硝酸ナトリウム2.6gの水5.2cm溶液を20分かけて添加する。反応混合物を+3℃の範囲の温度で40分間攪拌し、ろ過する。得られる固体を40%フルオロホウ酸水溶液で、−5℃で洗浄し、次いで、イソプロパノール及び40%フルオロホウ酸水溶液の混合物で、−5℃で洗浄し、次いで、エチルエーテルで洗浄し、スピンフィルター乾燥し、減圧下で乾燥する。固体9.95gをこのようにして得て、これを無水トルエン80cmに溶解し、この溶液を激しく攪拌しながら92℃で1時間維持する。周囲温度まで冷却後、トルエン50cmを添加し、その後、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液80cmを添加する。反応媒体を放置することによって分離し、水相をトルエンで抽出し、有機相をプールし、塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥する。ろ過し、減圧下でトルエンが乾燥するまで蒸発後、残渣をシリカカラム上のクロマトグラフィー(100g、粒径20〜46μm、溶出液:ジクロロメタン)にかける。予想生成物を含有する画分を減圧下で蒸発させ、乾燥する。3,7−ジフルオロ−6−メトキシキノリン2.28gを、98℃で融解する白色固体の形態で得る。
【0044】
3−アミノ−7−フルオロ−6−メトキシキノリン:
臭素2.4cmを、0℃に冷却した2N水酸化ナトリウム水溶液133cmの溶液に30分かけて滴下し、ピリジン111cmを添加する。0℃のままで7−フルオロ−6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド10.1gをこの溶液に添加し、この混合物を0℃で2時間30分攪拌する。次いで、反応媒体を周囲温度まで加温し、60℃で18時間攪拌しながら加熱する。次いで、周囲温度まで再び冷却し、水100cm、次いで酢酸エチル100cmを添加する。反応媒体を放置することにより分離し、水相を酢酸エチルで抽出し、水相をプールし、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥するまで減圧下で蒸発させる。固体残渣8.25gを得て、この残渣をイソプロピルエーテル150cm中で磨砕し、ろ過する。固体をイソプロピルエーテルで洗浄し、次いでペンタンで洗浄する。乾燥後、3−アミノ−7−フルオロ−6−メトキシキノリン6.20gを、153℃で融解する明褐色固体の形態で得る。
【0045】
7−フルオロ−6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド:
ギ酸ナトリウム5.58g及びテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム3.16gを、4−クロロ−7−フルオロ−6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド13.9gのジメチルホルムアミド278cm溶液に添加し、この溶液をアルゴン雰囲気下100℃で5時間加熱する。周囲温度まで冷却後、反応媒体をろ過する。ろ液を減圧下で濃縮し、溶液200cmを得て、これに水600cmを添加する。形成される沈殿をろ別し、水で洗浄し、減圧下50℃で乾燥する。得られる固体をトルエンで洗浄し、次いでエチルエーテルで2回洗浄し、次いでペンタンで洗浄する。7−フルオロ−6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド10.7gを、231℃で融解するベージュ色固体の形態で得る。
【0046】
4−クロロ−7−フルオロ−6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド:
7−フルオロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシキノリン−3−カルボン酸15.83gのホスホリルクロリド40cmの攪拌溶液を、100℃で3時間放置する。周囲温度まで冷却後、反応媒体を常圧下で蒸留し、ホスホリルクロリドを除去する。残渣をジクロロメタン70cmに溶解し、次いで、アンモニアをこの溶液に噴霧し、攪拌しながら25℃で5時間維持する。次いで、反応媒体をろ過し、得られる固体をジクロロメタンで洗浄し、減圧下50℃で乾燥する。4−クロロ−7−フルオロ−6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド14.05gを、228℃で融解する灰色ががった白色固体の形態で得る。
【0047】
7−フルオロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシキノリン−3−カルボン酸:
エチル7−フルオロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシキノリン−3−カルボキシレート23.57gの5N水酸化ナトリウム水溶液71cmの攪拌溶液を100℃で3時間放置する。周囲温度まで冷却後、反応媒体を37%塩酸水溶液32.5cmを添加することによって酸性にする。水150cmを添加後、得られる沈殿をろ別し、固体を水で洗浄する。風乾後、7−フルオロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシキノリン−3−カルボン酸22gを、275℃で融解するクリーム色固体の形態で得る。
【0048】
エチル7−フルオロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシキノリン−3−カルボキシレート:
ジエチル2−[(3−フルオロ−4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロネート37.75gのジフェニルエーテル170cmの攪拌溶液を、245℃で3.5時間放置する。周囲温度まで冷却後、シクロヘキサン220cmを添加し、このようにして得られる沈殿をろ別し、シクロヘキサンで洗浄し、次いでペンタンで洗浄し、スピンフィルター乾燥する。エチル7−フルオロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシ−キノリン−3−カルボキシレート24.10gを、280℃で融解する固体の形態で得た。
【0049】
ジエチル2−[(3−フルオロ−4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロネート:
3−フルオロ−4−メトキシアニリン15.61g及びジエチルエトキシメチレンマロネート24.25gの攪拌混合物を100℃で2.5時間維持する。周囲温度まで冷却し、乾燥するまで減圧下で50℃で蒸発後、ジエチル2−[(3−フルオロ−4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロネート35gを、63℃で融解するベージュ色固体の形態で得る。
【実施例3】
【0050】
3,8−ジフルオロ−6−メトキシキノリン:
3−アミノ−8−フルオロ−6−メトキシキノリン2.35gを用いる以外は、実施例2に記載される方法を行うことによって、3,8−ジフルオロ−6−メトキシキノリン1.35gを、122℃で融解する白色固体の形態で得る。
【0051】
合成中間体の特性:
3−アミノ−8−フルオロ−6−メトキシキノリン:135℃で融解する褐色固体。
8−フルオロ−6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド:248℃で融解するベージュ色固体。
4−クロロ−8−フルオロ−6−メトキシキノリン−3−カルボキサミド:220℃で融解する明褐色固体。
8−フルオロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシキノリン−3−カルボン酸:約280℃で融解するベージュ色固体。
エチル8−フルオロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシキノリン−3−カルボキシレート:221℃で融解する明褐色固体。
ジエチル2−[(2−フルオロ−4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロネート:
質量スペクトル EI m/z=311(M)。
2−フルオロ−4−メトキシアニリンから出発する。
【実施例4】
【0052】
3,6−ジフルオロキノリン:
3−アミノ−6−フルオロキノリンを用いる以外は、実施例2に記載される方法を行うことによって、3,6−ジフルオロキノリンを得る。質量スペクトル EI m/z=165(M)。
【0053】
合成中間体の特性:
3−アミノ−6−フルオロキノリン:質量スペクトル EI m/z=162(M)。
6−フルオロキノリン−3−カルボキサミド:質量スペクトル EI m/z=190
(M)。
4−クロロ−6−フルオロキノリン−3−カルボキサミド:質量スペクトル EI m/z=224(M)。
4−ヒドロキシ−6−フルオロキノリン−3−カルボン酸:質量スペクトル EI m/z=207(M)。
エチル4−ヒドロキシ−6−フルオロキノリン−3−カルボキシレート:質量スペクトル EI m/z=235(M)。
ジエチル2−[(2−フルオロ−4−メトキシフェニルアミノ)メチレン]マロネート:
質量スペクトル EI m/z=281(M)。
4−フルオロアニリンから出発する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(IV)の化合物:
【化4】

[式中、R、R、R及びRは、同一か異なっていてもよく、
フッ素原子;
1〜3個のフッ素原子、基OR(Rは、直鎖もしくは分枝のアルキル基、水素原子またはヒドロキシル基の保護基を表す)、または、基NR’R”(R’及びR”は、同一か異なっていてもよく、直鎖もしくは分枝のアルキル基、水素原子またはアミノ基の保護基を表す)で置換されていてもよい直鎖、分枝または環状のアルキル基;
基OR(Rは、水素原子;フェノール基の保護基;または、1〜3個のフッ素原子、上に定義される基OR5、もしくは、上に定義される基NR’R”で置換されていてもよい、直鎖もしくは分枝のアルキル基を表す);
基NR’R”(R’及びR”は、R’及びR”と同じ意味を有するか、または、
1〜3個のフッ素原子、上に定義される基OR、もしくは上に定義される基NR’R”で置換された、直鎖もしくは分枝のアルキル基を表す);
基CO(Rは、水素原子、直鎖もしくは分枝のアルキル基、またはカルボキシル基の保護基を表す);または
1個以上の上記の置換基で置換されていてもよい、フェニル基もしくはヘテロアリール基を表す。]をホフマン分解して生成する、一般式(III)の化合物:
【化3】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりである]
を処理して得られる、一般式(II)のジアゾニウム塩:
【化2】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりである]
を、不活性有機溶媒中で加熱することにより、一般式(I)の3−フルオロキノリン:
【化1】

[式中、R、R、R及びRは上に定義されるとおりである]を製造する方法。
【請求項2】
請求項1において、前記ジアゾニウム塩が、亜硝酸のアルカリ金属塩またはアルキルエステルと、フルオロホウ酸またはホウ素トリフルオリドエチルエーテル錯体との作用によって製造される方法。
【請求項3】
請求項1において、一般式(V)の化合物:
【化5】

[式中、R、R、R及びRは、請求項1に定義されるとおりであり、Xは塩素原子または臭素原子をあらわし、alkは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表す]に水素化分解剤を作用させ、次いで、アンモニア水溶液を作用させて、一般式(VI)の化合物:
【化6】

を得て、一般式(VI)の化合物は単離されてもされなくてもよく、一般式(VI)の化合物から、一般式(IV)の化合物が得られる方法。
【請求項4】
請求項1において、請求項3において定義される一般式(V)の化合物に、アンモニア水溶液を作用させて、一般式(VII)の化合物:
【化7】

[式中、R、R、R及びRは、請求項1、Xは請求項3に定義されるとおりである]
を得て、一般式(VII)の化合物に水素化分解剤を作用させて、一般式(IV)の化合物が得られる方法。
【請求項5】
請求項3または4において、一般式(VIII)の化合物:
【化8】

[式中、R、R、R及びRは、請求項1、alkは請求項3に定義されるとおりである]
にオキシ塩化リンまたはオキシ臭化リンを作用させることによって、式(V)の化合物が得られる方法。
【請求項6】
請求項1において、請求項5において定義される一般式(VIII)の化合物を塩基で処理して、対応する一般式(IX)で表される酸:
【化9】

[式中、R、R、R及びRは請求項1に定義されるとおりである]
を得て、式(IX)で表される酸にオキシ塩化リンまたはオキシ臭化リンを作用させて、一般式(X)の化合物:
【化10】

[式中、R、R、R及びRは上述の定義のとおりであり、Xは請求項3に定義されるとおりである]
を得て、一般式(X)の化合物にアンモニアを作用させて、請求項4に定義される一般式(VII)の化合物を得ることによって、式(IV)の化合物が得られる方法。
【請求項7】
請求項1または6において、反応性の置換基が保護されている一般式(IV)または(IX)の化合物が、スタート時に使用される方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、R、R、R及びRが、同一か異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、請求項1に定義されるように置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキル基、または請求項1に定義されている基ORを表す化合物が使用される方法。
【請求項9】
請求項8において、R、R、R及びRが、同一か異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、または、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝のアルコキシ基を表す化合物が使用される方法。
【請求項10】
請求項1において定義される一般式(II)で表される化合物。

【公表番号】特表2007−511490(P2007−511490A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538900(P2006−538900)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002910
【国際公開番号】WO2005/049575
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506043284)
【Fターム(参考)】